(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば農機またはオートバイなどの、小型の原動機付装置で、原動機(エンジン)の始動等に用いられる蓄電装置は、設置スペースが比較的に小さく、交換の容易さが求められ、また、一部が外部に露出した状態で配置される場合もある。
【0006】
従って、このような環境に置かれる蓄電装置に対し、上記従来の組電池のように、蓄電装置の内部で発生したガスを、パイプ等を介して蓄電装置から離れた位置まで導く仕組みを採用することは現実的ではない。その一方、蓄電装置の外装体に、蓄電素子の安全弁から出されたガス(排気)を外部に放出するための開口を単に設けた場合、この開口から雨水等が外装体内部に浸入し、蓄電素子等の構成要素に不具合を生じさせることも考えられる。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、蓄電素子と蓄電素子を収容する外装体とを備える蓄電装置であって、安全性が向上された蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子を収容する外装体とを備える蓄電装置であって、前記外装体には排気部が設けられており、前記排気部は、前記外装体の上面以外の外面に形成された開口部、および、前記外装体の内部と前記開口部とを連通する通路を形成する通路形成部を有し、前記通路形成部は、前記上面から前記開口部に向かう第一方向に沿った通路を形成する第一通路形成部を含む。
【0009】
この構成によれば、蓄電素子の安全弁から放出されるガス(排気)を、排気部を介して外装体の外部に導くことができるため、安全弁が開放した場合における外装体の内圧の上昇が抑制される。また、排気部における排気の通路の一部は、上面から開口部に向かう方向である第一方向に沿って形成される。そのため、例えば、上面が上方を向く姿勢で、蓄電装置が配置された場合に、雨水などの水が開口部を介して外装体の内部に浸入することが抑制される。
【0010】
つまり、本態様に係る蓄電装置では、外装体の外部への排気を行うための排気部が、外装体の内部への水の浸入を抑制する構造を有しており、これにより、蓄電装置の安全性が向上される。
【0011】
また、本発明の一態様に係る蓄電装置において、前記通路形成部はさらに、前記第一方向と交差する第二方向に沿った前記通路を形成する第二通路形成部を含むとしてもよい。
この構成によれば、通路形成部が、互いに異なる方向の通路を形成する2つの部分を有するため、開口部から外装体内部への水の浸入抑制効果が向上する。
【0012】
また、本発明の一態様に係る蓄電装置において、前記通路形成部はさらに、前記第一方向および前記第二方向を含む平面に交差する第三方向に沿った前記通路を形成する第三通路形成部を含むとしてもよい。
【0013】
この構成によれば、通路形成部により、立体的な排気の通路が形成されるため、開口部から外装体内部への水の浸入抑制効果がさらに向上する。
【0014】
また、本発明の一態様に係る蓄電装置において、前記通路形成部はさらに、前記通路を折り返す折り返し部を有するとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、排気の通路においてUターンする箇所が設けられるため、蓄電装置の姿勢を反転させた場合における反転の前後において、外装体内部への水の浸入抑制効果が発揮される。例えば、開口部と第一通路形成部との間に折り返し部が設けられた場合、蓄電装置が、外装体の上面が上方を向く姿勢である場合、及び、下方を向く姿勢である場合のいずれであっても、水が外装体の内部に浸入することが抑制される。
【0016】
また、本発明の一態様に係る蓄電装置において、前記外装体には、複数の前記蓄電素子が収容されており、前記開口部は、前記外装体における、複数の前記蓄電素子の並び方向に存在する前記外面に形成されているとしてもよい。
【0017】
この構成によれば、例えば、複数の蓄電素子の安全弁を通る直線上に、開口部を含む排気部を配置することができ、その結果、排気効率が向上される。また、例えば複数の蓄電素子それぞれの電極端子が、各蓄電素子からの排気の流れの妨げとならない態様で、排気部を設けることができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る蓄電装置において、前記外装体には、複数の前記蓄電素子のうちの隣り合う2つの前記蓄電素子の間を仕切る仕切部材が配置されており、前記仕切部材には、中央部分を含む所定の領域に、厚み方向に貫通する空隙部が設けられているとしてもよい。
【0019】
この構成によれば、仕切部材によって、例えば、蓄電素子の位置規制、または、蓄電素子の容器同士の電気的な絶縁が図られ、かつ、蓄電素子の膨らみを空隙部で吸収することができる。これにより、蓄電素子が膨らんだ場合における安全弁の開放の可能性を低減することができる。また、空隙部があることで、仕切部材が、各蓄電素子からの排気の流れの妨げとなることが抑制される。
【0020】
また、本発明の一態様に係る蓄電装置において、前記外装体は、前記蓄電素子を収容する本体と、前記本体の開口を塞ぐように配置され、前記上面を形成する蓋体とを有し、前記排気部は、前記蓋体に設けられているとしてもよい。
【0021】
この構成によれば、蓋体に排気部が設けられるため、例えば、外装体における蓄電素子の収容のための空間の容積を消費せずに、外装体に排気部を設けることができる。
【0022】
また、本発明の一態様に係る蓄電装置において、前記外装体は、前記蓄電素子を収容する本体と、前記本体の開口を塞ぐように配置され、前記上面を形成する蓋体とを有し、前記排気部は、前記蓋体の一部と前記本体の一部とによって形成されているとしてもよい。
【0023】
この構成によれば、蓋体の一部と本体の一部との組み合わせによって、雨水等の浸入を抑制する構造を有する排気部を形成することができるため、例えば、蓄電装置の部品点数の増加の抑制、または、蓄電装置の製造効率の向上等が図られる。
【0024】
また、例えば、周縁の一部に切り欠きが形成された蓋体と本体とを接続することで開口部を外装体に設けることができる。従って、例えば、外装体に孔あけのための加工または成形を行わずに、排気のための開口部を設けることができる。このことは、外装体の作製効率の向上に寄与する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、安全性が向上された蓄電装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電装置について説明する。なお、各図は、実施の形態またはその変形例に係る蓄電装置の説明のための図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0028】
また、以下で説明する実施の形態及び変形例のそれぞれは、本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態及び変形例で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、組み立て方法、組み立ての順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態及び変形例に係る構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0029】
(実施の形態)
まず、実施の形態に係る蓄電装置1の構成概要について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0030】
図1は、実施の形態に係る蓄電装置1の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る蓄電装置1の分解斜視図である。
【0031】
なお、これらの図では、Z軸方向を上下方向として示しており、以下ではZ軸方向を上下方向として説明するが、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるため、Z軸方向は上下方向となることには限定されない。
【0032】
蓄電装置1は、1以上の蓄電素子を備え、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる装置である。例えば、蓄電装置1は、電力貯蔵用途や電源用途などに使用される電池モジュールである。
【0033】
これらの図に示すように、蓄電装置1は、蓄電素子100と、蓄電素子100を収容する外装体10とを備える。本実施の形態では、
図2に示すように、4つの蓄電素子100が外装体10に収容されている。なお、外装体10には、例えば、各蓄電素子100の状態を監視し制御する制御基板等の他の要素が収容されていてもよいが、これら他の要素についての図示及び説明は省略する。
【0034】
外装体10は、矩形状(箱状)の容器(モジュールケース)であり、複数の蓄電素子100等の収容物を所定の位置に保持し、かつ、衝撃等から保護する役目を担う。外装体10は、たとえば、ポリカーボネートまたはポリプロピレン(PP)等の絶縁性の樹脂で形成される。
【0035】
具体的には、外装体10は、蓄電素子100を収容する本体12と、本体12の開口を塞ぐように配置された蓋体11とを有する。本体12の開口の周縁と、蓋体11の周縁とは、開口部51を除いて、熱溶着等の手法によって気密が維持されるよう接合されている。
【0036】
開口部51は、外装体10に設けられた排気部50の一部である。蓄電素子100の安全弁170が開放した場合、安全弁170から排出されるガス(排気)は、排気部50の開口部51を介して外装体10の外部に放出される。本実施の形態では、蓋体11の切り欠き部51aと、本体12の上端面51bとによって、開口部51が形成されている。排気部50の詳細については、
図3及び
図4を用いて後述する。
【0037】
蓋体11は、外装体10の上面13を形成する部材であり、正極外部端子21と負極外部端子22とが設けられている。蓄電装置1は、この正極外部端子21と負極外部端子22とを介して、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電する。
【0038】
なお、外装体10の上面13は、例えば、外装体10が有する複数の外面のうちの、蓄電素子100の電極端子(120、130)側の外面、または、蓄電素子100の安全弁170側の外面であると定義される。また、外装体10の上面13は、例えば、一般的に、蓄電装置1の使用時において、上方を向くように置かれる面である、と定義することもできる。また、外装体10の上面13は、例えば、外装体10が本体12と蓋体11とで構成される場合の、蓋体11の、本体12とは反対側の面である、と定義することもできる。さらに、外装体10の上面13は、例えば、外装体10の、外部端子(21、22)が配置された面である、と定義することもできる。
【0039】
また、本実施の形態では、正極外部端子21を形成する部分を含むバスバーと、負極外部端子22を形成する部分を含むバスバーとが、インサート成形によって、樹脂製の蓋体11に一体に設けられている。これにより、蓋体11の、2つの外部端子(21、22)が露出した部分における気密が維持されている。
【0040】
ここで、本実施の形態では、4つの蓄電素子100は、
図2に示すように、3つのバスバー30によって直列に接続されている。また、直列接続における両端の蓄電素子100の一方(
図2では、Y軸方向で最もマイナス側の蓄電素子100)と、正極外部端子21とが電気的に接続されている。さらに、当該両端の蓄電素子100の他方(
図2では、Y軸方向で最もプラス側の蓄電素子100)と、負極外部端子22とが電気的に接続されている。
【0041】
より詳細には、蓋体11にインサート成形された、正極外部端子21を一端に有するバスバー、及び、負極外部端子22を一端に有するバスバーは、蓋体11が本体12に配置された状態で、上面13に設けられた開口を介して上記両端の蓄電素子100と締結される。
【0042】
また、これら開口のそれぞれは、上記締結の後に蓋板11a及び11bによって封止される。これにより、これら開口から外装体10の内部への雨水等の浸入は防止される。
【0043】
蓄電素子100は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子100は、扁平形状の容器110と、容器110に配置された正極端子120及び負極端子130とを備える。なお、蓄電素子100は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
【0044】
蓄電素子100において、容器110の内部には、電極体、電極体と正極端子120とを接続する正極集電体、及び、電極体と負極端子130とを接続する負極集電体が配置されている。また、容器110の内部には電解液などの液体が封入されている。
【0045】
容器110は、金属からなる矩形筒状で底を備える容器本体と、容器本体の開口を閉塞する金属製の蓋部とで構成されている。容器110は、電極体等を内部に収容後、蓋部と容器本体とが溶接等されることにより、内部を密封することができるものとなっている。
【0046】
容器110の、電極端子(120、130)が配置された面には安全弁170が備えられている。複数の蓄電素子100は、例えば
図2に示されるように、各安全弁170が、複数の蓄電素子100の並び方向(Y軸方向)に並ぶように配置される。
【0047】
安全弁170は、容器110の内圧が上昇した場合に開放し、容器110の内部のガスを放出する安全機構として、各蓄電素子100に備えられている。なお、蓄電装置1が備える複数の蓄電素子100の全てが安全弁170を備えていることには限定されず、少なくとも1つの蓄電素子100が安全弁170を備えていればよい。
【0048】
蓄電素子100が有する電極体は、例えば、正極と負極との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものを巻回されて形成された巻回型の電極体である。なお、電極体は、巻回型には限定されず、例えば、平板状極板を積層した積層型の電極体であってもかまわない。
【0049】
正極は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などからなる長尺帯状の導電性の正極集電箔の表面に正極活物質層が形成された電極板である。負極は、銅または銅合金などからなる長尺帯状の導電性の負極集電箔の表面に負極活物質層が形成された電極板である。セパレータは、微多孔性のシートである。
【0050】
なお、蓄電素子100に用いられる正極、負極及びセパレータの材料としては、蓄電素子100の性能を損なうものでなければ適宜公知の材料を使用できる。また、容器110に封入される電解液(非水電解質)としても、蓄電素子100の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく様々なものを選択することができる。
【0051】
正極端子120及び負極端子130は、容器110に収容された電極体に蓄えられている電気を蓄電素子100の外部空間に導出し、また、電極体に電気を蓄えるために蓄電素子100の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。
【0052】
本実施の形態では、正極端子120及び負極端子130のそれぞれには、バスバーと接続するためのボルトが配置されており、ボルト及びナットによって、正極端子120及び負極端子130のそれぞれとバスバーとが締結される。
【0053】
上記構成を有する蓄電素子100は、本実施の形態では、仕切部材40に隣接して配置されている。つまり、外装体10には、複数の蓄電素子100のうちの隣り合う2つの蓄電素子100の間を仕切る仕切部材40が配置されている。また、仕切部材40には、中央部分(厚み方向(Y軸方向)から見た場合における中央部分)を含む所定の領域に、厚み方向に貫通する空隙部41が設けられている。
【0054】
この仕切部材40によって、例えば、蓄電素子100の位置規制、または、蓄電素子100の容器110同士の電気的な絶縁が図られ、かつ、容器110の膨らみを空隙部41で吸収することができる。これにより、容器110が膨らんだ場合における安全弁170の開放の可能性を低減することができる。
【0055】
なお、仕切部材40は、例えばポリカーボネートやポリプロピレン(PP)等の絶縁性の樹脂により形成されているが、絶縁性を有する素材であればどのような素材で形成されていてもかまわない。また、仕切部材40は、外装体10の本体12と一体に設けられていてもよく、外装体10の本体12とは別体の部品として作製され、本体12に後付けされてもよい。
【0056】
次に、本実施の形態に係る蓄電装置1の外装体10に備えられた排気部50について、
図3及び
図4を用いて説明する。
【0057】
図3は、実施の形態に係る排気部50の構成を示す斜視図であり、
図4は、実施の形態に係る排気部50の構成を示す断面図である。具体的には、
図3では、外装体10の一部を切り取り、かつ、本体12と蓋体11とを分離して図示している。また、
図4では、
図3におけるIV−IV断面(一点鎖線を通るYZ平面における断面)の一部が図示されている。なお、
図3及び
図4では、蓄電装置1が備える、外装体10以外の構成要素についての図示は省略している。
【0058】
図3及び
図4に示すように、外装体10には排気部50が設けられており、排気部50は、外装体10の上面13以外の外面14に形成された開口部51、および、外装体10の内部と開口部51とを連通する通路を形成する通路形成部55を有する。通路形成部55は、上面13から開口部51に向かう第一方向(本実施の形態では、Z軸マイナス方向)に沿った通路を形成する第一通路形成部55aを含む。
【0059】
このように、本実施の形態に係る蓄電装置1では、蓄電素子100を収容する外装体10に、排気部50が設けられている。これにより、蓄電素子100の安全弁170が開放した場合に、安全弁170から放出されるガス(排気)を、排気部50を介して外装体10の外部に導くことができる。その結果、1以上の蓄電素子100のいずれかの安全弁170が開放した場合における外装体10の内圧の上昇が抑制される。
【0060】
また、排気部50における排気の通路の一部は、上面13から開口部51に向かう方向である第一方向に沿って形成されるため、例えば、上面13が上方を向く姿勢で配置された場合に、雨水などの水が外装体10の内部に浸入することが抑制される。
【0061】
つまり、本態様に係る蓄電装置1では、外装体10の外部への排気を行うための排気部50が、外装体10の内部への水の浸入を抑制する構造を有しているため、蓄電装置1の安全性が向上される。また、比較的に簡素な構造の排気部50が外装体10に設けられるため、蓄電装置1の小型化が容易である。言い換えると、蓄電装置1の設置に必要なスペースの縮小化が図られる。
【0062】
そのため、本実施の形態に係る蓄電装置1は、例えば、オートバイのエンジン始動用のバッテリーなどの、小型の原動機付装置に搭載される蓄電装置であって、通常の使用時において雨水がかかり得る環境に置かれる蓄電装置として採用することができる。
【0063】
また、排気部50は、外装体10に一体に設けられているため、例えば、排気部50が存在することによる、蓄電装置1の組み立ての工程の煩雑化が抑制される。
【0064】
また、本実施の形態に係る排気部50は、具体的には、
図4及び
図5に示されるように、蓋体11の一部と本体12の一部とによって形成されている。より詳細には、蓋体11の周縁には、開口部51の一部を形成する切り欠き部51aと、本体12に向けて突設された周縁壁部52とが設けられている。また、本体12の開口周縁の端面である上端面51bには、周縁壁部52が挿入される溝部53が設けられている。
【0065】
なお、周縁壁部52は、例えば、蓋体11の周縁の全域に渡って延設されており、この場合、溝部53も、本体12の開口周縁の全域に渡って延設される。また、溝部53の横幅(Y軸方向の幅)は、周縁壁部52の厚み(Y軸方向の幅)よりも大きく、かつ、溝部53の深さ(Z軸方向の幅)は、周縁壁部52の高さ(蓋体11の周縁の、本体12と接続される端面からのZ軸方向の高さ)よりも小さい。
【0066】
そのため、
図4に示されるように、周縁壁部52と溝部53との間には隙間が形成され、開口部51が存在する位置において、この隙間が排気の通路として機能する。
【0067】
なお、蓋体11の周縁の端面と、本体12の開口周縁の端面とは、開口部51を除いて、熱溶着等の手法によって接続されるため、実質的に、開口部51のみが、外装体10の外部と内部とを連通する開口を形成する部分として、外装体10に存在する。言い換えると、蓋体11と本体12とによって密閉された外装体10の一部に、開口部51が設けられている。具体的には、蓋体11と本体12との境界部に開口部51が設けられている。
【0068】
このように、本実施の形態では、排気部50の開口部51は、蓋体11の切り欠き部51aと、本体12の上端面51bとで形成されている。また、排気部50の通路形成部55は、蓋体11の周縁壁部52及び本体12の溝部53によって形成されている。
【0069】
すなわち、本実施の形態に係る排気部50は、蓋体11の一部と本体12の一部とによって形成されている。そのため、例えば、蓄電装置1の部品点数の増加の抑制、または、蓄電装置1の製造効率の向上等が図られる。また、外装体10への開口部51の形成のために、外装体10に対する孔あけ加工等の作業が不要であるため、例えば、外装体10の作製を効率よく行うことができる。
【0070】
また、本実施の形態では、排気部50の通路形成部55はさらに、
図4に示すように、排気の通路を折り返す折り返し部56を有している。
【0071】
つまり、排気部50が有する排気の通路において、Uターンする箇所が設けられるため、蓄電装置1の姿勢を反転させた場合における反転の前後において、外装体10内部への水の浸入抑制効果が発揮される。具体的には、蓄電装置1が、上面13が上方(Z軸方向プラス側)を向く姿勢である場合、及び、上面13が下方(Z軸方向マイナス側)を向く姿勢である場合のいずれであっても、排気部50を介した水の浸入は抑制される。
【0072】
また、本実施の形態では、開口部51は、外装体10における、複数の蓄電素子100の並び方向(Y軸方向)に存在する外面14に形成されている。具体的には、例えば
図2に示されるように、4つの蓄電素子100の安全弁170を通る直線上に、開口部51を含む排気部50が配置されており、これにより、排気効率が向上される。また、例えば4つの蓄電素子それぞれの電極端子(120、130)が、各安全弁170からの排気の流れの妨げとならない態様で、排気部50が設けられている。このことも、排気効率の向上に寄与する。
【0073】
なお、本実施の形態では、隣り合う蓄電素子100の間に、仕切部材40が配置されているが、仕切部材40には空隙部41が設けられているため、仕切部材40が、各蓄電素子100からの排気の流れの妨げとなることが抑制される。
【0074】
ここで、仮に、各仕切部材40に空隙部41がないとした場合、例えば1以上の蓄電素子100が膨張することで、外装体10の本体12の側壁に圧力がかかり、これにより、開口部51が変形するおそれがある。しかしながら、本実施の形態では、各仕切部材40には空隙部41が存在し、かつ、これら空隙部41と同一直線上に開口部51が配置されている(例えば
図2参照)。これにより、本体12の側壁の変形が抑制され、ひいては開口部51の変形も抑制される。
【0075】
また、本実施の形態では、開口部51は、外装体10が有する複数の外面のうちの、2つの長側面の一方である、Y軸方向マイナス側の外面14に形成されているが、開口部51の位置はこれに限定されない。例えば、外装体10の2つの短側面の一方に、開口部51が設けられてもよい。
【0076】
また、排気部50はさらに、溝部53から外面14に到達する貫通孔を有してもよい。この場合、例えば、貫通孔が水抜きの孔として機能し、その結果、開口部51から溝部53に入った雨水等が溝部53にたまることが抑制される。また、例えば、
図4において、溝部53の右側(Y軸プラス側)の壁の上端が、上端面51bの位置よりも高くなるように本体12が形成されてもよい。これにより、仮に、雨水等の水が溝部53にたまった場合であっても、水の外装体10の内部への浸入が抑制される。
【0077】
また、切り欠き部51aは、蓋体11の一部が実際に切り欠かれることで形成される必要はなく、例えば、樹脂成形によって蓋体11を作製する際に用いる金型によって、切り欠き部51aが蓋体11に形成されてもよい。
【0078】
また、蓄電装置1は、
図3及び
図4に示す排気部50とは異なる構成の排気部を備えてもよい。そこで、以下に、実施の形態に係る排気部50に関する変形例を、上記実施の形態との差分を中心に説明する。
【0079】
(変形例1)
図5は、実施の形態の変形例1に係る排気部60の構成を示す斜視図であり、
図6は、実施の形態の変形例1に係る排気部60の構成を示す断面図である。また、
図7は、実施の形態の変形例1に係る排気部60の構成を示す分解斜視図である。
【0080】
具体的には、
図5では、外装体10の一部を切り取り、かつ、本体12と蓋体11とを分離して図示している。また、
図6では、
図5におけるVI−VI断面(一点鎖線を通るYZ平面における断面)の一部が図示されている。なお、
図5〜
図7では、本変形例に係る蓄電装置1が備える、外装体10以外の構成要素についての図示は省略している。
【0081】
図5〜
図7に示すように、外装体10には排気部60が設けられており、排気部60は、外装体10の上面13以外の外面14に形成された開口部61、および、外装体10の内部と開口部61とを連通する通路を形成する通路形成部65を有する。通路形成部65は、上面13から開口部61に向かう第一方向(本変形例では、Z軸マイナス方向)に沿った通路を形成する第一通路形成部65aを含む。
【0082】
本変形例に係る開口部61は、蓋体11の切り欠き部61aと、本体12の上端面61bとによって形成されている。また、本体12の上端面61bには、開口部61の位置を除いて溝部17が形成されており、蓋体11の周縁には、本体12に向けて突設された周縁壁部18が設けられている。これら溝部17と周縁壁部18とが嵌めあわされた状態で、蓋体11の周縁の端面と、本体12の開口周縁の上端面61bとが、開口部51を除いて熱溶着等の手法によって接続される。なお、本変形例では、溝部17及び周縁壁部18は、主として、蓋体11の本体12に対する位置決め、または、蓋体11と本体12との接続部分の、開口部51を除く範囲における気密性向上のための部位として機能する。
【0083】
また、本変形例では、通路形成部65は、蓋体11の作製時には、蓋体11の主要部分(本体12の開口を覆う部分)とは別体として作製されており、
図5〜
図7に示されるように、蓋体11の切り欠き部61aが形成された位置に、通路形成部65が取り付けられる。この取り付けの手法としては、熱溶着、または、接着剤による接着等が例示される。
【0084】
つまり、外装体10の組み立て時(蓋体11と本体12との接続時)には、通路形成部65は、蓋体11に一体の構造物として扱われる。そのため、例えば、通路形成部65が存在することによる、外装体10の組み立て作業の煩雑化が抑制される。また、通路形成部65の、本体12と接触する部分は、例えば熱溶着によって本体12と接続されることで、通路形成部65と本体12との間の気密は維持される。
【0085】
このように、本変形例に係る排気部60は、蓋体11に設けられている。つまり、本体12の内方の空間を消費しない態様で、排気部60が外装体10に設けられている。これにより、例えば、外装体10における蓄電素子100の収容のための空間の容積を消費せずに、外装体10に排気部60を設けることができる。
【0086】
また、本変形例に係る排気部60では、上記実施の形態に係る排気部50と同じく、排気の通路の一部が、上面13から開口部61に向かう方向である第一方向に沿って形成されている。そのため、例えば、上面13が上方を向く姿勢で、蓄電装置1が配置された場合に、雨水などの水が開口部61を介して外装体10の内部に浸入することが抑制される。
【0087】
また、本変形例に係る排気部60では、開口部61に第一通路形成部65aの下端が接続されているため、例えば、排気部60の内部に雨水等の水がたまることが抑制される。なお、この効果を高めるために、例えば、通路形成部65は、第一通路形成部65aの下端の位置に、開口部61に近づくほど下方に向かう斜面部を有してもよい。また、本体12の上端面61bも同様に、外面14に近づくほど下方に向かう斜面部を有してもよい。これらの補足事項については、後述する変形例2及び3に係る排気部についても適用される。
【0088】
また、本変形例では、通路形成部65が、蓋体11の内面から外装体10の内部に向けて突出して配置される。しかし、排気部60を、例えば上記実施の形態に係る排気部50と同じく、4つの蓄電素子100の安全弁170を通る直線上に配置することで(
図2参照)、電極端子(120、130)の間の空間を利用して通路形成部65を配置することができる。つまり、外装体10の内部空間を有効に利用して、外装体10に排気部60を設けることができる。この補足事項については、後述する変形例2及び3に係る排気部についても適用される。
【0089】
(変形例2)
図8は、実施の形態の変形例2に係る排気部70の構成を示す分解斜視図である。なお、
図8では、蓋体11及び通路形成部75のみを図示し、他の要素の図示は省略されている。
【0090】
図8に示すように、本変形例に係る排気部70が有する通路形成部75は、蓋体11の作製時には、蓋体11の主要部分とは別体として作製されており、蓋体11の切り欠き部71aが形成された位置に取り付けられる。また、本変形例に係る開口部71は、蓋体11の切り欠き部71aと、本体12の上端面(図示せず)とによって形成されている。これらの点については、上記変形例1に係る排気部60と共通する。
【0091】
本変形例に係る排気部70は、通路形成部75が、互いに異なる方向の通路を形成する2つの部分を有する点で、上記変形例1に係る排気部60と異なる。具体的には、本変形例に係る排気部70は、通路形成部75を有し、通路形成部75は、第一方向(本変形例では、Z軸マイナス方向)に沿った通路を形成する第一通路形成部75aと、第一方向と交差する第二方向(本変形例では、X軸マイナス方向)に沿った通路を形成する第二通路形成部75bとを含む。なお、開口部71の横幅(切り欠き部71aのX軸方向の幅)は、第二通路形成部75bの長さ(X軸方向の幅)よりも小さい。
【0092】
例えば、雨水が、開口部71から外装体10の内部に浸入する場合、開口部71からX軸プラス方向に移動し、かつ、Z軸プラス方向に移動する必要がある。従って、蓄電装置1の外装体10が排気部70を備えることで、外装体10の上面13が上方(Z軸方向プラス側)を向く姿勢である場合、及び、上面13が側方(X軸方向マイナス側)を向くように傾けられた場合のいずれであっても、排気部70を介した水の浸入は抑制される。
【0093】
このように、本変形例に係る排気部70は、通路形成部75が、互いに異なる方向の通路を形成する2つの部分(第一通路形成部75a、第二通路形成部75b)を有するため、開口部71から外装体10内部への水の浸入抑制効果が向上する。
【0094】
(変形例3)
図9は、実施の形態の変形例3に係る排気部80の構成を示す分解斜視図である。なお、
図9では、蓋体11及び通路形成部85のみを図示し、他の要素の図示は省略されている。
【0095】
図9に示すように、本変形例に係る排気部80が有する通路形成部85は、蓋体11の作製時には、蓋体11の主要部分とは別体として作製されており、蓋体11の切り欠き部81aが形成された位置に取り付けられる。また、本変形例に係る開口部81は、蓋体11の切り欠き部81aと、本体12の上端面(図示せず)とによって形成されている。これらの点については、上記変形例1に係る排気部60と共通する。
【0096】
本変形例に係る排気部80は、通路形成部85が、互いに異なる方向の通路を形成する3つの部分を有する点で、上記変形例1に係る排気部60と異なる。具体的には、本変形例に係る排気部80は、通路形成部85を有し、通路形成部85は、第一方向(本変形例では、Z軸マイナス方向)に沿った通路を形成する第一通路形成部85aと、第一方向と交差する第二方向(本変形例では、X軸マイナス方向)に沿った通路を形成する第二通路形成部85bとを含む。通路形成部85はさらに、第一方向及び第二方向を含む平面(本変形例では、XZ平面)に交差する第三方向(本変形例では、Y軸マイナス方向)に沿った通路を形成する第三通路形成部85cを含む。なお、開口部81の横幅(切り欠き部81aのX軸方向の幅)は、第二通路形成部85bの長さ(X軸方向の幅)よりも小さい。
【0097】
例えば、雨水が、開口部81から外装体10の内部に浸入する場合、開口部81からX軸プラス方向に移動し、Y軸プラス方向に移動し、さらに、Z軸プラス方向に移動する必要がある。従って、蓄電装置1の外装体10が排気部80を備えることで、外装体10の上面13が上方(Z軸方向プラス側)を向く姿勢である場合、上面13が側方(X軸方向マイナス側)を向くように傾けられた場合、及び、上面13が奥方(Y軸方向プラス側)を向くように傾けられた場合のいずれであっても、排気部80を介した水の浸入は抑制される。
【0098】
このように、本変形例に係る排気部80では、通路形成部85により、立体的な排気の通路が形成されるため、開口部81から外装体10内部への水の浸入抑制効果がさらに向上する。
【0099】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る蓄電装置について、実施の形態及びその変形例に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態またはその変形例に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0100】
例えば、上記変形例1に係る排気部60において、通路形成部65はさらに、第一通路形成部65aの上端に接続された折り返し部を有してもよい。これにより、蓄電装置1が、上面13が上方(Z軸方向プラス側)を向く姿勢である場合、及び、上面13が下方(Z軸方向マイナス側)を向く姿勢である場合のいずれであっても、排気部60を介した水の浸入は抑制される。
【0101】
また、例えば、排気部50等の排気部が有する開口部は、蓋体11の切り欠き部と本体12の上端面とで形成される必要はない。開口部は、例えば、蓋体11及び本体12のいずれか一方のみの外面14に貫通孔を形成することで、外装体10に設けられてもよい。
【0102】
図10は、外面14に形成された貫通孔を開口部91として有する排気部90の構成例を示す斜視図である。
【0103】
例えば
図10に示すように、外装体10の蓋体11及び本体12のいずれか一方のみの外面14に貫通孔を形成することで開口部91を設け、外面14の裏側の面(内面)における開口部91の位置に、上記変形例1に係る通路形成部65を取り付ける。この場合であっても、排気の通路の一部が第一方向(Z軸マイナス方向)に沿って形成されるため、例えば、上面13(例えば
図1参照)が上方を向く姿勢で、蓄電装置1が配置された場合に、雨水などの水が開口部91を介して外装体10の内部に浸入することが抑制される。
【0104】
また、上記変形例1〜3において、通路形成部65、75及び85のそれぞれは、蓋体11の内面から突出するように配置されているが、これら通路形成部は、少なくとも一部が蓋体11の肉厚内に収まるように構成されてもよい。
【0105】
例えば、上記変形例1に係る排気部60において、蓋体11の切り欠き部61aの上方の肉を薄くして、かつ切り欠き部61aから上方に延びる溝を形成する。さらに、その溝の上端以外を覆うように、薄板状の通路形成部を配置する。こうすることでも、第一方向に沿った通路を形成する排気部60が、外装体10に備えられる。
【0106】
また、例えば、蓋体11の、各蓄電素子100の安全弁170と対向する位置に、蓋体11を、各安全弁170から放出されるガスの熱または衝撃から保護するための、グラスウール等の断熱材、または、セラミクス等の耐熱材を配置してもよい。
【0107】
また、第一方向、第二方向及び第三方向は互いに直交している必要はなく、第二方向は、第一方向に交差していればよく、第三方向は、第一方向及び第二方向を含む平面に交差していればよい。