(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ラックアンドピニオン機構のみでラックシャフトの回転を抑制しようとすると、回転トルクによってラック歯とピニオン歯との間の接触面圧が不均一となり、これらの歯の偏摩耗によってがたつきや異音が生じるおそれがある。特に、より大きな回転トルクを必要とする大型車向けのEPSでは、より大きな回転トルクによって、これらの歯の偏摩耗がさらに進むおそれがある。これに対応するための方策の1つとして、ラックシャフトの周方向におけるラック歯と反対側の背面をY字形状に設け、ラックガイドのサポートヨークもこのY字形状を受けるような形状に設けることにより、ラックシャフトを回転不能に支持することが考えられる。しかし、この場合、ラックガイドのサポートヨークの軸方向および径方向のクリアランスの設計や調整の精度が要求されるなどの手間が生じていた。このため、回転トルクがラックシャフトに作用した場合であっても、より簡易な構成でラックシャフトを回転不能に支持する構成が求められていた。
【0005】
本発明の目的は、転舵シャフトの周方向の回転角度を抑制できるステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成しうるステアリング装置は、ピニオン歯を有するピニオンシャフトを含むステアリングシャフトと、外周にねじ溝が設けられた部分と前記ピニオン歯と噛み合うラック歯の設けられた部分とを、軸方向において異なる位置に有する転舵シャフトであって、前記転舵シャフトの中心軸回りの周方向において、前記ラック歯
がある側および前記転舵シャフトにおける前記ラック歯がある側とは反対側から前記周方向に外れた位置に、かつ前記転舵シャフトの軸方向において前記ねじ溝から外れた位置に、第1の当接部が設けられた、軸方向に往復移動する転舵シャフトと、前記ピニオン歯および前記ラック歯の噛み合いによって、前記ステアリングシャフトの回転を前記転舵シャフトの往復直線運動に変換するラックアンドピニオン機構と、前記ねじ溝に複数のボールを介して螺合された円筒状のナットを有し、前記ナットの回転に基づき前記転舵シャフトに軸方向の力を付与するボールねじ機構と、前記ナットに回転トルクを付与するモータと、前記転舵シャフトが挿通される挿通部を有するラックハウジングと、前記転舵シャフトの両端部にそれぞれ装着されて転舵輪に連結されるラックエンドと、前記転舵シャフトの外周面と前記挿通部の内周面との間、かつ前記転舵シャフトの軸方向において前記
ラックエンドにおける前記ラックハウジング側の端面と前記ラックアンドピニオン機構との間には、前記第1の当接部に隙間を介して対向し、前記転舵シャフトが前記周方向に回転した際に当接する第2の当接部を有する回り止め部材と、を備え、前記第1の当接部は、互いに平行な2つの平面部であり、前記第2の当接部は、互いに平行な2つの平面部であり、前記転舵シャフトに設けられた2つの前記平面部と前記ラック歯とは、前記転舵シャフトの前記周方向において離間して設けられている。
【0007】
この構成によれば、転舵シャフトが周方向に回転するとき、
転舵シャフトに設けられた第1の当接部
としての2つの平面部が、回り止め部材に設けられた第2の当接部
としての2つの平面部に当接することにより、転舵シャフトが周方向に回転する角度が抑制される。
【0009】
上記のステアリング装置において、前記転舵シャフトの前記背面は円筒面であり、前記転舵シャフトに設けられた2つの
前記平面部は、軸方向から見たとき、それぞれ前記転舵シャフトの前記背面の円筒面の延長曲面よりも内側に設けられ、前記回り止め部材に設けられた2つの前記平面部の間の距離は、前記転舵シャフトに設けられた2つの
前記平面部の間の距離よりも長く、軸方向から見たとき、前記転舵シャフトの前記背面の円筒面の前記延長曲面の外径よりも短く設定されていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、転舵シャフトと回り止め部材との間の隙間を確保しつつも、転舵シャフトが周方向に回転したときには回り止め部材に当接することで、転舵シャフトの周方向の回転角度を抑制できる。また、転舵シャフトと回り止め部材との間の隙間が確保されているので、転舵シャフトが隙間の範囲内である程度移動することもできる。
【0013】
上記のステアリング装置において、前記転舵シャフトの前記周方向において、前記ラック歯
がある位置と2つの前記平面部
がある位置とが直交することが好ましい。
この構成によれば、ラック歯および背面から離れるような形で第1の当接部を設けることができるため、ラック歯および背面の面積を十分に確保することが容易である。
【0014】
上記のステアリング装置において、前記回り止め部材は、前記
ラックエンドにおける前記ラックアンドピニオン機構に近い側の端面と、前記ラックアンドピニオン機構との間に設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、転舵シャフトにおける回り止め部材とラックアンドピニオン機構との間の部分のねじれを抑制することができる。
上記のステアリング装置において、前記回り止め部
材は、
ケースと、前記ケースの内周面に配置されているとともに前記ラックハウジングよりも摩擦抵抗が低い材料からなる低摩擦部材
とを有している前記回り止め部材の内周面には、前記ラックハウジングよりも摩擦抵抗が低い材料からなる低摩擦部材が配置されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、低摩擦部材を設けることにより、転舵シャフトが軸方向に移動する際の回り止め部材と転舵シャフトとの間の摺動抵抗が低減される。
上記のステアリング装置において、前記回り止め部材と、前記ラックハウジングとは、同程度の熱膨張率を有していることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、温度変化が生じた場合であっても、回り止め部材とラックハウジングとの間の固定が緩むことが抑制されている。
上記のステアリング装置において、前記挿通部には、前記ラックハウジングの外部へ貫通する収容孔が設けられ、前記収容孔の中心線は、前記挿通部の中心線と直交するように設けられ、前記収容孔の内壁部分、かつ前記収容孔の前記外部側の端部に取り付けられるプラグと、前記プラグに対して進退移動可能に設けられて、前記転舵シャフトを軸方向に摺動可能に支持するサポートヨークと、前記サポートヨークと前記プラグとの間に配置されて前記サポートヨークを前記転舵シャフトへ向けて付勢する付勢部材とを含むラックガイドを有している。前記回り止め部材により前記転舵シャフトの前記周方向の回転角は許容回転角以下に制御され、第1の因子である前記サポートヨークと前記プラグとの間の軸方向における隙間および前記サポートヨークと前記収容孔との間の径方向における隙間、第2の因子である前記ラックハウジングに対して前記ピニオンシャフトの軸方向のがたつき、第3の因子である前記ラックハウジングに対して前記ピニオンシャフトの径方向のがたつき、ならびに第4の因子である前記ピニオンシャフトと前記転舵シャフトとの噛み合い部分の隙間から決定される角度であり、前記隙間および前記がたつきが詰まるまで前記転舵シャフトが前記周方向に回転した角度である最大つれ回り角度に対し、前記第1の当接部と前記第2の当接部との間の隙間により決定される前記転舵シャフトの前記許容回転角が、前記最大つれ回り角度よりも小さくなるように設定されていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、転舵シャフトの許容回転角が、第1〜第4の因子によって決定される転舵シャフトの最大つれ回り角度よりも小さくなるように回り止め部材が設けられている。このため、転舵シャフトが周方向に回転する角度が抑制される。
【0019】
上記のステアリング装置において、前記第2の因子および前記第3の因子は、前記ピニオンシャフトを前記ラックハウジングに対して回転可能に支持する軸受自身のがたつきと、前記ピニオンシャフトと前記軸受との間の隙間と、前記軸受と前記ラックハウジングとの間の隙間とにより決定される。
【発明の効果】
【0020】
本発明のステアリング装置によれば、転舵シャフトの周方向の回転角度を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、ステアリング装置の一実施形態にかかるEPSについて説明する。
図1に示すように、EPS1は運転者のステアリングホイール10の操作に基づいて転舵輪16を転舵させる操舵機構2、および運転者のステアリング操作を補助するアシスト機構3を備えている。
【0023】
操舵機構2は、ステアリングホイール10およびステアリングホイール10と一体回転するステアリングシャフト11を備えている。ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール10と連結されたコラムシャフト11aと、コラムシャフト11aの下端部に連結されたインターミディエイトシャフト11bと、インターミディエイトシャフト11bの下端部に連結されたピニオンシャフト11cとを有している。ピニオンシャフト11cの下端部はラックアンドピニオン機構13を介してラックシャフト12に連結されている。ピニオンシャフト11cの下端部(ピニオン歯)は、ラックシャフト12(ラック歯)に噛み合わされている。したがって、ステアリングシャフト11の回転運動は、ピニオンシャフト11cの先端に設けられたピニオン歯とラックシャフト12に設けられたラック歯からなるラックアンドピニオン機構13を介して、ラックシャフト12の軸方向X(
図1の左右方向)の往復直線運動に変換される。当該往復直線運動は、ラックシャフト12の両端にそれぞれ連結されたラックエンド14を介してタイロッド15に伝達される。これらタイロッド15の運動が左右の転舵輪16にそれぞれ伝達されることにより、転舵輪16の転舵角が変更される。ラックシャフト12はラックハウジング17に収容されている。ラックハウジング17の両端とタイロッド15との間には、蛇腹筒状体のラックブーツ18がそれぞれ配置されている。また、ピニオンシャフト11cは、軸受19を介して、ラックハウジング17におけるピニオンシャフト11cを収容している部分の内周面に対して回転可能に支持されている。
【0024】
また、ラックシャフト12は、ラックハウジング17に設けられたラックガイド20により、ピニオンシャフト11c側へ向けて付勢された状態で、その軸方向Xに沿って往復移動できるようにラックハウジング17の内部に支持されている。
【0025】
アシスト機構3は、ラックシャフト12の周囲に設けられている。アシスト機構3は、アシスト力の発生源であるモータ30と、ラックシャフト12の周囲に一体的に取り付けられたボールねじ機構40と、モータ30の回転軸31の回転力をボールねじ機構40に伝達する減速機50からなる。アシスト機構3は、モータ30の回転軸31の回転力を、減速機50およびボールねじ機構40を介してラックシャフト12の軸方向の往復直線運動に変換することにより、運転者のステアリング操作を補助する。
【0026】
ボールねじ機構40、減速機50、ピニオンシャフト11c、およびラックシャフト12はラックハウジング17により覆われている。ラックハウジング17には、ラックシャフト12が挿通される挿通部17aが軸方向Xにおいて貫通して設けられている。また、ラックハウジング17はラックシャフト12の延びる方向に対して交わる方向(
図1中の下方)へ突出する部分である減速機ハウジング17bを有している。減速機ハウジング17bの内部には、減速機50の一部が収容される。減速機ハウジング17bの外壁(
図1中の減速機ハウジング17bの右側壁)には、貫通孔33が設けられている。モータ30の回転軸31は、減速機ハウジング17bに設けられた貫通孔33を通じて減速機ハウジング17bの内部に延びている。回転軸31はラックシャフト12に対して平行となるように、モータ30はボルト32により減速機ハウジング17bに固定されている。挿通部17aとラックシャフト12との径方向における間には、わずかに隙間が設けられている。
【0027】
つぎに、アシスト機構3について詳細に説明する。
図2に示すように、ボールねじ機構40は、ラックシャフト12に多数のボール42を介して螺合する円筒状のナット41を備えている。ナット41は、円筒状の軸受44を介してラックハウジング17の内周面に対して回転可能に支持されている。ラックシャフト12の外周面には螺旋状のねじ溝12aが設けられている。ナット41の内周面には、ラックシャフト12のねじ溝12aに対応する螺旋状のねじ溝43が設けられている。ナット41のねじ溝43とラックシャフト12のねじ溝12aとにより囲まれる螺旋状の空間は、ボール42が転動する転動路Rとして機能する。また、図示しないが、ナット41には、転動路Rの2箇所に開口して、当該2箇所の開口を短絡する循環路が設けられている。したがって、ボール42はナット41内の循環路を介して転動路R内を無限循環することができる。
【0028】
減速機50は、モータ30の回転軸31に一体的に取り付けられた駆動プーリ51、ナット41の外周に一体的に取り付けられた従動プーリ52、および駆動プーリ51と従動プーリ52との間に巻き掛けられたベルト53を備えている。減速機ハウジング17bの内部空間には、モータ30の回転軸31と、回転軸31に取り付けられた駆動プーリ51と、ベルト53の一部が配置される。また、ベルト53は、たとえば芯線を含むゴム製の歯付きベルトが採用される。
【0029】
このような構成からなるアシスト機構3では、モータ30の回転軸31が回転すると、回転軸31と一体となって駆動プーリ51が回転する。駆動プーリ51の回転は、ベルト53を介して従動プーリ52に伝達されて、これにより従動プーリ52は回転する。このため、従動プーリ52と一体的に取り付けられたナット41も一体回転する。ナット41はラックシャフト12に対して相対回転するため、ナット41とラックシャフト12との間に介在される多数のボール42は双方から負荷を受けて転動路R内を無限循環する。ボール42が無限循環することにより、ナット41に付与された回転トルクがラックシャフト12の軸方向Xに付与される力に変換される。このため、ラックシャフト12はナット41に対して軸方向Xに移動する。このラックシャフト12に付与される軸方向Xの力がアシスト力となり、運転者のステアリング操作を補助する。
【0030】
つぎに、ラックシャフト12の端部に設けられたラックエンド14の構成を説明する。なお、ラックシャフト12の2つの端部の構成(ラックエンド14)は同じであって、左右の向きが異なるだけである。
【0031】
図3に示すように、ラックエンド14はいわゆるボールジョイントであり、先端にボール部61aが設けられたボールスタッド61と、そのボール部61aを回動、屈曲自在に収容するソケット62とを有している。ソケット62の内部には、ボール部61aの球面形状に対応した球面座62aが装着されている。ボールスタッド61は、そのボール部61aが球面座62aに嵌合されることで、ソケット62に対して屈曲自在に連結されている。このボールスタッド61におけるボール部61aと反対側の端部に、タイロッド15における転舵輪16と反対側の端部が固定されることにより、タイロッド15がラックシャフト12に対して屈曲自在に連結される。
【0032】
ラックエンド14は、ソケット62がラックシャフト12の端部に螺合されることにより、ラックシャフト12に固定されている。ソケット62におけるラックシャフト12側の端面63には、ラックシャフト12側に突出する円柱部64が設けられている。円柱部64の外周面には、雄ねじ部65が設けられている。一方、ラックシャフト12の端部には、ラックシャフト12と同心の円形孔66が設けられている。円形孔66の内周面には、雄ねじ部65と対応する雌ねじ部67が設けられている。雄ねじ部65が雌ねじ部67に螺合されることにより、ソケット62はラックシャフト12の端部に固定されている。なお、ソケット62の端面63は、ラックシャフト12の端面に当接している。
【0033】
ラックハウジング17の端部には、ソケット62が挿入される拡径部17cが設けられている。拡径部17cの内径は、挿通部17aの内径よりも大きく設定されている。挿通部17aと拡径部17cとの境界部分には、軸方向Xと直交する規制面17dが設けられている。ソケット62の外径は、ラックハウジング17の挿通部17aの内径より大きく、拡径部17cの内径より小さく設定されている。このため、ラックシャフト12の移動に伴い端面63が規制面17dに当接する(正確には、本実施形態では衝撃吸収部材70および回り止め部材80を介して端面63が規制面17dに当接する)、いわゆるエンド当てが発生する。そこで、エンド当て時の衝撃を緩和するために、ラックハウジング17の規制面17dとラックエンド14の端面63との間には、衝撃吸収部材70が設けられている。
【0034】
衝撃吸収部材70は、円筒状の弾性部71と、円環状のエンドプレート72とを有している。エンドプレート72は、弾性部71における規制面17dと反対側の端面である第1の端面に接触した状態に維持される。弾性部71の第2の端面は、規制面17dに接触した状態に維持される。
【0035】
つぎに、ラックガイド20について説明する。
図3および
図4に示すように、ラックアンドピニオン機構13は、ピニオンシャフト11cの先端に設けられたピニオン歯11dと、ラックシャフト12に設けられたラック歯12bとが噛み合うことによって構成されている。ラックシャフト12におけるラック歯12bと反対側の背面12cは、半円筒形状(断面半円弧状)に設けられている。
【0036】
ラックハウジング17の外周面において、ラックシャフト12の背面12cに対応する部分には、筒状のガイド取付部17eが設けられている。ガイド取付部17eには、ラックハウジング17の内部と外部とを連通する収容孔17fが設けられている。ガイド取付部17eには、ラックガイド20が、収容孔17fに収容された状態で固定される。ラックガイド20は、プラグ21と、サポートヨーク22と、付勢部材23とを有している。
【0037】
プラグ21は、収容孔17fの開口部に位置する。プラグ21の外周面には、雄ねじ21aが設けられている。雄ねじ21aを収容孔17fの内周面に設けられた雌ねじ17gに螺合することにより、プラグ21はラックハウジング17(ガイド取付部17e)に固定される。雌ねじ17gと雄ねじ21aとの螺合量を調整することにより、プラグ21の収容孔17fへの挿入位置は調整される。
【0038】
サポートヨーク22は、付勢部材23を介してプラグ21に押されている。サポートヨーク22は、プラグ21に対して進退移動可能に設けられている。サポートヨーク22は、ラックシャフト12を軸方向Xに移動できるように支持する。サポートヨーク22は、ラックシャフト12の背面12cの形状に対応するガイド面22aを有している。ガイド面22aは、サポートヨーク22がラックシャフト12と当接する際の当接面となり、ラックシャフト12の受け部として機能する。また、ガイド面22aと背面12cとの間には、シート部材22bが設けられている。シート部材22bを介することにより、ラックシャフト12が軸方向Xに移動する場合の、ラックシャフト12とガイド面22aとの間の摺動抵抗が低減される。なお、シート部材22bには耐摩耗性に優れた(たとえば自己潤滑性の高い)樹脂等の材料が採用される。これにより、ラックシャフト12およびサポートヨーク22が摩耗することが抑制される。
【0039】
付勢部材23としては、たとえばコイルばねが採用される。サポートヨーク22は、付勢部材23の弾性力により常に背面12cへ向けて付勢される。付勢部材23の弾性力により、ガイド面22aはシート部材22bを介して常に背面12cに当接した状態に維持される。また、付勢部材23は、サポートヨーク22を介してラックシャフト12をピニオンシャフト11cに押し付ける方向へ付勢する。これにより、サポートヨーク22がラックシャフト12に押し付けられ、ラックシャフト12のラック歯12bとピニオンシャフト11cのピニオン歯11dとの間の噛み合いが確保される。なお、プラグ21の収容孔17fへの挿入位置を調整することにより、付勢部材23の付勢力、すなわちサポートヨーク22がラックシャフト12に押し付けられる力を調整することができる。
【0040】
つぎに、ラックシャフト12の周方向の回転を抑制するための回り止め部材について説明する。
図3に示すように、回り止め部材80は、挿通部17aの内壁面とラックシャフト12の外周面(外壁面)との間、かつラックシャフト12の軸方向において規制面17dと衝撃吸収部材70との間に設けられている。別の表現をすると、回り止め部材80は、ラックシャフト12の軸方向において、ラックハウジング17におけるラックエンド14の当接する端面(正確には本来ならば当接するであろう端面)と、ラックアンドピニオン機構13(ラックガイド20)との間に設けられている。また、回り止め部材80は、ラックハウジング17の内壁面に嵌合することにより、ラックハウジング17に固定されている。
【0041】
なお、ラックハウジング17が複数個の分割されたハウジングを組み付けることによって構成されている場合、そのうち1つの分割されたハウジングに、ラックガイド20、ラックエンド14、および回り止め部材80が設けられることが好ましい。また、回り止め部材80は、ラックガイド20の近傍に設けられることが好ましい。回り止め部材80とラックガイド20とが離れている場合、ラックシャフト12における回り止め部材80とラックガイド20との間の部分でねじれが生じるおそれがあるためである。
【0042】
図5(a),(b)に示すように、回り止め部材80は、ケース81と、低摩擦部材82とを有している。ケース81は略円筒形状を呈している。ラックシャフト12の軸方向から見て、ケース81の外周面は円形状をなしており、ケース81の内面には四隅にアールをつけた長方形状の中空部81aが設けられている。中空部81aは、方向Y(
図1における奥行き方向)において平行である2つの平面部83と、方向Z(
図1における上下方向)において平行である2つの平面部84とを有している。平面部83と平面部84とは、互いに直交している。中空部81aのアールをつけた四隅(平面部82と平面部83とが交わる部分)には、低摩擦部材82を固定するための固定部材85が設けられている。低摩擦部材82は、ケース81(正確には、ケース81および固定部材85)の内周形状に沿うように、その全周に設けられている。すなわち、低摩擦部材82の外周形状は、ケース81の内周形状に対応している。低摩擦部材82には、四隅にアールをつけた長方形状の中空部82aが設けられている。中空部82aのアールをつけていない部分の方向Yにおける長さは、長さy1に設定されている。また、中空部82aのアールをつけていない部分の方向Zにおける長さは、長さz1に設定されている。
【0043】
ところで、一例としてケース81の材料は、ラックハウジング17と熱膨張率がほとんど等しい(熱膨張率の差が閾値よりも小さい)材料である。このため、温度変化が生じた場合であっても、ケース81とラックハウジング17との間の固定が緩むことが抑制されている。
【0044】
なお、低摩擦部材82の方向Zにおけるアールをつけていない部分の厚さは、一方(
図5(a)の上側)が厚さaであり、他方(
図5(a)の下側)が厚さbである。厚さaは、厚さbよりも大きく設定されている。また、低摩擦部材82の方向Yにおけるアールをつけていない部分の厚さは、共に厚さcに設定されている。なお、ケース81の2つの平面部83の間の距離は、長さy1と厚さcの2倍との和で表される。低摩擦部材82は、耐摩耗性に優れた低摩擦な(摩擦抵抗が低い)樹脂等の材料が採用される。一例としては、自己潤滑性の高い結晶性のプラスチックなどが採用される。また、ケース81は、たとえばラックハウジング17と同じ材料が採用される。なお、
図5(a),(b)において、低摩擦部材82は誇張して大きく図示されている。
【0045】
なお、回り止め部材80の軸方向の長さ(厚さ)は、ラックシャフト12を支持する観点からはできる限り長いことが好ましい。しかし、回り止め部材80の軸方向の長さが長すぎると、ラックシャフト12と回り止め部材80(低摩擦部材82)との間の摺動抵抗が増大してしまう。この反面、回り止め部材80の軸方向の長さが短すぎると、回り止め部材80がラックシャフト12を支持するための強度を確保することが困難となる。回り止め部材80の軸方向の長さは、これらの観点によって最適な値に設定される。
【0046】
図6(a)に示すように、ラックシャフト12の周方向において、ラック歯12bおよび背面12cから外れた部分には、2つの平面部12dが設けられている。2つの平面部12dは互いに平行である。すなわち、2つの平面部12dは二面幅のような形状を有している。また、2つの平面部12dは、ラック歯12bと直交するような形で設けられている。このため、2つの平面部12dは、ラック歯12bおよび背面12cから離れるような形で設けることができ、ラック歯12bおよび背面12cの面積を確保することが容易になる。平面部12dは、
図1に示すように、ラックシャフト12の右端部を基準としてラックシャフト12が軸方向Xに移動することが想定される一定の範囲にわたって設けられる。一例としては、
図6(a)に1点鎖線で示されるラックシャフト12の本来の円筒形状(円筒面)Sを、方向Zに沿って削ることによって、平面部12dが設けられる。この場合、平面部12dは、ラックシャフト12の本来の円筒形状S(背面12cの半円筒形状を延長した延長曲面)よりも内側に設けられる。このため、ラックシャフト12の方向Yにおける最大の長さは、本来のラックシャフト12では長さy3であったものが、平面部12dが設けられたラックシャフト12では長さy2となっている。長さy2は長さy3よりも小さく設定されている。
【0047】
ラックシャフト12の外周面には、回り止め部材80が配置される。すなわち、回り止め部材80の低摩擦部材82に設けられた中空部82aに、ラックシャフト12が挿入される。このとき、ラックシャフト12の平面部12dは、ケース81の平面部83と一致するように組み付けられる。
【0048】
回り止め部材80(低摩擦部材82)の中空部82aの方向Yにおける長さy1は、ラックシャフト12の2つの平面部12dの間の方向Yにおける長さy2よりもわずかに大きく設定されている。また、長さy1は、ラックシャフト12の本来の円筒形状Sの方向Yにおける最大の長さy3よりも小さく設定されている。また、回り止め部材80(低摩擦部材82)の中空部82aの方向Zにおける長さz1は、ラックシャフト12のラック歯12bと背面12cとの間の方向Zにおける長さz2よりもわずかに大きく設定されている。すなわち、ラックシャフト12の外面(外周面)と、回り止め部材80(低摩擦部材82)の内面(内周面)との間には、わずかに隙間clが設けられている。なお、
図6(a)では、一例としてラックシャフト12の外面と回り止め部材80の内面との間にある程度一様に隙間clがある状態を示している。
【0049】
図6(b)に示すように、ラックシャフト12が周方向に回転したとき、ラックシャフト12は低摩擦部材82を介してケース81に当接することにより、ラックシャフト12の周方向への回転は規制される。すなわち、ラックシャフト12の外面と回り止め部材80の内面との間に設けられる隙間clの範囲内でラックシャフト12は周方向に回転し、ラックシャフト12が低摩擦部材82を介してケース81に当接することにより、隙間clが埋められると、ラックシャフト12の周方向への回転は規制される。また、平面部12dが設けられることにより、ラックシャフト12が回転したときに、ラックシャフト12は低摩擦部材82を介して平面部83に当接すると、ラックシャフト12の回転することが抑制される。すなわち、第1の当接部である平面部12dが、第2の当接部である平面部83に当接することにより、ラックシャフト12の回転が抑制される。たとえば、ラックシャフト12の本来の円筒形状Sでは、ラックシャフト12が回転して平面部83に当接したとしても、引っかかる部分がないためラックシャフト12の回転は抑制されない。なお、回り止め部材80は、ラックハウジング17に対して固定されているため、ラックシャフト12が回転しようとするのに伴って回り止め部材80が回転することが規制されている。
【0050】
ところで、
図7に示すように、便宜上、回り止め部材80の規制により、ラックシャフト12が周方向に回転できる最大の回転角のことを許容回転角θと定義する。回り止め部材80は、回り止め部材80がない従来の構成に比べて、許容回転角θが、より小さくなるように設けられている。詳しくは後述するが、
図6(b)に示すように、回り止め部材80は、許容回転角θがより小さくなるように、隙間clを調整している。なお、隙間clを完全に無くす場合、サポートヨーク22とプラグ21との間の隙間の調整ができなくなる不都合が生じてしまう。これらを含め、様々な要因から推定される許容回転角θをより小さくすべく、隙間clが決定されている。
【0051】
なお、回り止め部材80のない従来の構成では、ラックシャフト12は、通常の状況下においてモータ30による回転トルクによって周方向に回転するのみならず、異常な状況下においても、より大きく周方向に回転する。なお、通常の状況下とはたとえばエンド当てなどが生じていない状況のことであり、異常な状況とはたとえば縁石乗り上げによってステアリングホイールが急速に回された後に、エンド当てが生じている状況のことである。このため、回り止め部材80は、操舵する度に継続的に発生するラックシャフト12の周方向へ向けた回転も、ごく稀にしか生じない縁石乗り上げ後のエンド当て時のラックシャフト12の周方向へ向けた大きな回転も、ともに抑制するように設けられている。
【0052】
ここで、ラックシャフト12が回転しうる状況について詳しく説明する。まず、通常の状況下で操舵を行っている場合に生じるラックシャフト12の回転について説明する。
図2に示すように、モータ30から付与される回転トルクは、減速機50を介して、ボールねじ機構40(ナット41)に伝達される。回転トルクが付与されることによりナット41が回転する際、回転トルクの大部分は、ラックシャフト12を軸方向Xに移動させる力に変換される。しかし、回転トルクの残るわずかな部分は、ナット41の回転に伴って、ラックシャフト12を周方向に回転(つれ回り回転)させる力として作用する。
【0053】
図8に破線で示すように、比較例として回り止め部材80が設けられていない場合、モータ30から付与される回転トルクによって、ラックシャフト12は周方向につれ回り回転する。すなわち、モータ30から付与される回転トルクに起因して、ラックシャフト12にはトルクTが作用し、トルクTの作用する方向にラックシャフト12は回転しようとする。比較例では、ラックシャフト12は周方向に支持されていないことにより、ラックシャフト12は周方向に回転する(傾く)。このとき、ラック歯12bの一部分はピニオン歯11dと強く噛み合う反面、ラック歯12bの他の一部分はピニオン歯11dとの噛み合いが弱くなってしまう。なお、
図8では、ラックシャフト12が回転することにより付勢部材23を圧縮する方向へと移動した場合であっても、付勢部材23はほとんど圧縮しない程度に図示している。
【0054】
これに対して、
図8に実線で示すように、本実施形態では回り止め部材80が設けられていることにより、モータ30から回転トルクが付与された場合であっても、ラックシャフト12は許容回転角θまでしかつれ回り回転しない。ラックシャフト12が周方向につれ回り回転しようとすると、ラックシャフト12は回り止め部材80(低摩擦部材82)に当接することにより、許容回転角θを超えて周方向に回転することが抑制される。このため、ラック歯12bとピニオン歯11dとの噛み合いが極端に強い部分が生じることが抑制される。
【0055】
つぎに、異常な状況下に生じるラックシャフト12の回転について説明する。異常な状況下では、
図8の通常の状況下での操舵によって生じるトルクTよりも大きなトルクT2がラックシャフト12に作用する。トルクT2が作用する場合としては、たとえば縁石乗り上げ後のエンド当てによって、ラックシャフト12に大荷重が作用するときが挙げられる。
【0056】
図9に実線で示すように、ラックシャフト12にトルクT2が作用した場合、ラックシャフト12は回転しようとする。そして、ラックシャフト12が回転することに伴い、ラックシャフト12は付勢部材23を圧縮するようにサポートヨーク22に押し付けられる。そして、付勢部材23の伸縮範囲内でラックシャフト12はサポートヨーク22へ向けて移動し、サポートヨーク22がプラグ21に押し付けられたとき、ラックシャフト12は周方向にこれ以上回転しなくなる。なお、
図9では、トルクT2が作用することにより、ラックシャフト12が回転し、ラックシャフト12が付勢部材23を十分に圧縮する程度に移動した場合を図示している。このとき、ラック歯12bとピニオン歯11dとの間に、噛み合っている部分と噛み合っていない部分とが生じてしまう。言い換えれば、ラック歯12bとピニオン歯11dとは、歯の設けられた範囲の一部分で片当たりしている。そして、さらにラックシャフト12が周方向に回転すると、ラック歯12bおよびピニオン歯11dが変形するおそれがある。ラック歯12bおよびピニオン歯11dの変形を抑制するために、ラック歯12bやピニオン歯11dを大型にする必要があり、重量やコストが増大してしまう。本実施形態では、ラック歯12bおよびピニオン歯11dが変形する前に、ラックシャフト12は回り止め部材80に当接することにより、ラックシャフト12の周方向の回転が規制される。このため、ラック歯12bおよびピニオン歯11dの変形が抑制され、ラック歯12bおよびピニオン歯11dの大型化に伴う重量およびコストの増加が抑えられる。
【0057】
つぎに、
図7を参照して、操舵機構2の各部のがたつきにより決まる最大つれ回り角度θ1について詳しく説明する。最大つれ回り角度θ1は、各種の因子によって決定される角度である。最大つれ回り角度θ1は、特に第1〜第4の因子によって決定される。
【0058】
第1の因子は、ラックハウジング17およびプラグ21で囲まれる空間における、サポートヨーク22のがたつき(移動量)である。このがたつきは、ラックハウジング17の収容孔17fの内壁面(内周面)とサポートヨーク22の外壁面(外周面)との間の径方向における隙間と、プラグ21とサポートヨーク22との間の軸方向における隙間とにより決定される。
【0059】
第2の因子は、ラックハウジング17に対するピニオンシャフト11cの軸方向のがたつき(移動量)である。このがたつきは、軸受19そのもののがたつき、ピニオンシャフト11cと軸受19との間のがたつき(隙間)、および軸受19とラックハウジング17との間のがたつき(隙間)によって決定される。
【0060】
第3の因子は、ラックハウジング17に対するピニオンシャフト11cの径方向のがたつき(移動量)である。このがたつきは、第2の因子と同様に、軸受19そのもののがたつき、ピニオンシャフト11cと軸受19との間のがたつき(隙間)、および軸受19とラックハウジング17との間のがたつき(隙間)によって決定される。
【0061】
第4の因子は、ラックアンドピニオン機構13において、ラック歯12bおよびピニオン歯11dの噛み合い状態(正確にはその間の局所的な隙間)である。たとえば、ラック歯12bおよびピニオン歯11dの間にがたつき(隙間)がある場合、ラックシャフト12はピニオンシャフト11cに対して移動(たとえばラックシャフト12が周方向に回転)することができる。なお、ラックガイド20によって、ラックシャフト12はピニオンシャフト11cに押し付けられているので、第4の因子により発生する移動量はわずかである。
【0062】
これら第1〜第4の因子によって、ラックシャフト12の最大つれ回り角度θ1は決定される。一般的に、これら第1〜第4の因子が大きくなるほど、最大つれ回り角度θ1は大きくなる。これらの因子によって決定される最大つれ回り角度θ1よりラックシャフト12の周方向の回転角度を小さくするために、ラックシャフト12に平面部12dを設け、ラックシャフト12が回転したときに当接する回り止め部材80が設けられている。
【0063】
本実施形態によれば、以下の作用および効果を得ることができる。
(1)モータ30から付与される回転トルクに伴って、ラックシャフト12が回転しようとすると、ラックシャフト12の平面部12dが回り止め部材80に当接する。このため、ラックシャフト12の回転は抑制される。回り止め部材80を設けていない場合のラックシャフト12の最大つれ回り角度θ1よりも、回り止め部材80を設ける場合の許容回転角θは小さくなる。そのため、ラックシャフト12の回転によってラック歯12bおよびピニオン歯11dへ負荷される不均一な荷重が小さくなり、長期間使用した場合であっても、ラック歯12bおよびピニオン歯11dの偏摩耗が抑制される。
【0064】
また、回り止め部材80とラックシャフト12との間に隙間clが設けられていることにより、わずかにラックシャフト12が移動(回転および平行移動)することができ、サポートヨーク22が進退移動しながらラックシャフト12を支持することもできる。
【0065】
(2)たとえば縁石乗り上げ後のエンド当てによって、ラックシャフト12に大荷重が作用する場合であっても、ラックシャフト12の平面部12dは回り止め部材80の平面部83に当接することにより、ラックシャフト12の周方向の回転が規制される。このため、ラック歯12bおよびピニオン歯11dが破壊されることが抑制される。
【0066】
(3)ケース81の内面に低摩擦部材82を設けることにより、回り止め部材80とラックシャフト12との間の摺動抵抗を低減することができる。
(4)ケース81の材料は、ラックハウジング17と熱膨張率がほとんど等しい材料が用いられる。このため、温度変化が生じた場合であっても、回り止め部材80(ケース81)とラックハウジング17との間の固定が緩むことが抑制される。
【0067】
なお、本実施形態は次のように変更してもよい。以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・本実施形態において、衝撃吸収部材70が設けられたが、設けなくてもよい。たとえば、エンド当て時の衝撃がアシスト機構3に作用しても問題とならないのであれば、衝撃吸収部材70は設けなくてよい。
【0068】
・本実施形態において、ラックシャフト12の背面12cが半円筒に設けられたが、これに限らない。同様に、ガイド取付部17eも背面12cの形状に対応した形状を有していたが、これに限らない。たとえば、背面12cを三角柱形状に設け、背面12cの三角柱形状を受けるような形状のガイド取付部17eを設けてもよい。
【0069】
・本実施形態において、サポートヨーク22にシート部材22bが設けられたが、これに限らない。ラックシャフト12とガイド面22aとの摺動抵抗が問題とならない場合、シート部材22bは設けなくてもよい。
【0070】
・本実施形態では、回り止め部材80はラックガイド20(ラックアンドピニオン機構13)の近傍に設けられたが、これに限らない。回り止め部材80をラックガイド20の近傍に設ける場合、ラックシャフト12における回り止め部材80とラックガイド20との間の部分でねじれが生じることが抑制されるが、特にねじれが問題とならないのであれば、回り止め部材80とラックガイド20とは離れていてもよい。すなわち、回り止め部材80は、ラックハウジング17におけるラックエンド14の当接する両端面の一方と、ラックガイド20との間に設けられていればよい。
【0071】
・本実施形態では、回り止め部材80に低摩擦部材82が設けられたが、設けなくてもよい。たとえば、ラックシャフト12とケース81との間の摺動抵抗が問題とならない(たとえば十分低い)場合、ラックシャフト12にケース81が直接当接するような形で、回り止め部材80をラックシャフト12の周りに配置してもよい。
【0072】
・本実施形態では、2つの平面部12dは互いに平行に設けられたが、これに限らない。すなわち、2つの平面部12dは、互いに非平行に設けられてもよい。たとえば、一方の平面部12dに対して、他方の平面部12dをわずかに平行な状態からずらして設けられてもよい。また、2つの平面部83も互いに非平行であってもよいし、2つの平面部84も互いに非平行であってもよい。
【0073】
・本実施形態では、長さy1を長さy2よりも大きくすることにより、回り止め部材80とラックシャフト12との間に隙間clが設けられたが、隙間clは設けなくてもよい。
【0074】
・本実施形態では、回り止め部材80は、2つの平面部83を有していたが、これに限らない。
図10(a)に示すように、回り止め部材80は、1つの平面部83のみを有していてもよい。この場合であっても、ラックシャフト12が回転したときに、ラックシャフト12の平面部12dは平面部83に当接するため、許容回転角θを小さくすることができる。
【0075】
・本実施形態では、ラックシャフト12は、2つの平面部12dを有していたが、これに限らない。
図10(b)に示すように、ラックシャフト12は、1つの平面部12dのみを有していてもよい。
【0076】
・本実施形態では、平面部12d,83,84は平面であったが、曲面であってもよい。たとえば、
図10(c)に示すように、ラックシャフト12の平面部12dは曲面であってもよい。ただし、平面部12d,83,84が曲面の場合であっても、ラックシャフト12が回転したときに、平面部12dが平面部83に当接するように設定される。たとえば、
図10(c)の平面部12dは、ラックシャフト12の本来の円筒形状Sと異なる曲率の曲面である。
【0077】
・本実施形態では、平面部12dはラックシャフト12の本来の円筒形状Sよりも内側に設けられたが、これに限らない。たとえば、
図10(d)に示すように、本来の円筒形状Sよりも外側に突出する平面部が設けられてもよい。
【0078】
・本実施形態では、ケース81は、ラックハウジング17とほとんど同じ熱膨張率の材質が用いられたが、これに限らない。たとえば、ケース81とラックハウジング17との間に熱膨張率の差がある場合であっても、ラックハウジング17に対するケース81の固定に関して熱膨張率の差が問題にならないときには、ケース81とラックハウジング17とは異なる熱膨張率の材質であってもよい。
【0079】
・本実施形態では、ラックシャフト12に対して平行に配置された回転軸31を有するモータ30によってラックシャフト12にアシスト力を付与するEPS1に具体化して示したが、これに限らない。すなわち、ボールねじ機構40を備えるステアリング装置であればよい。また、ステアリング操作に連動するラックシャフト12の直線運動を、モータ30の回転力を利用して補助する電動パワーステアリング装置を例に挙げたが、ステアバイワイヤ(SBW)用操舵アクチュエータに適用してもよい。なお、SBW用操舵アクチュエータに具体化する場合には、前輪操舵装置としてだけでなく、後輪操舵装置あるいは4輪操舵装置(4WS)として具体化することもできる。