特許第6759668号(P6759668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6759668蓄電素子管理装置、蓄電装置、及び蓄電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759668
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】蓄電素子管理装置、蓄電装置、及び蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20200910BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20200910BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20200910BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20200910BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20200910BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20200910BHJP
【FI】
   H02J7/02 H
   H02J7/34 D
   H01M10/48 P
   H01M10/44 Q
   H01M10/42 P
   H01M4/58
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-71469(P2016-71469)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-184534(P2017-184534A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 敦史
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−217169(JP,A)
【文献】 特開2007−018871(JP,A)
【文献】 特開2011−041452(JP,A)
【文献】 特開2009−044946(JP,A)
【文献】 特開昭51−085437(JP,A)
【文献】 特表2001−526877(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/025307(WO,A1)
【文献】 特開2000−133318(JP,A)
【文献】 特開2011−004509(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/166908(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0156647(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H01M 4/58
H01M 10/42
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の蓄電素子に対する充電電圧を決定する制御部を備える蓄電素子管理装置であって、
前記複数の蓄電素子間の充電量差を小さくする均等化処理を行う均等化回路を備え、
前記制御部は、
蓄電素子間の電圧差が所定値以上の場合、前記均等化処理を実行し、
前記均等化処理が完了した以降に生じる前記複数の蓄電素子間の充電量差又は電圧差に基づいて、前記充電電圧を決定する決定処理を実行する蓄電素子管理装置。
【請求項2】
直列に接続された複数の蓄電素子に対する充電電圧を決定する制御部を備える蓄電素子管理装置であって、
前記複数の蓄電素子間の充電量差を小さくする均等化処理を行う均等化回路を備え、
前記制御部は、
前記複数の蓄電素子間の充電量差又は電圧差に基づいて、前記充電電圧を決定する決定処理を実行し、
前記制御部は、
前記充電量差を推定する推定処理を実行し、
前記推定処理は、
前回前記均等化処理が完了してからの経過時間に基づいて、前記決定処理に用いる前記充電量差を推定する処理である、蓄電素子管理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蓄電素子管理装置であって、
前記充電電圧は、前記充電量差又は前記電圧差が大きい程小さい値で設定される蓄電素子管理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の蓄電素子管理装置であって、
前記充電量差又は前記電圧差のうちいずれか一方と前記充電電圧とを対応付けた電圧決定用データが記憶された記憶部を備える蓄電素子管理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄電素子管理装置であって、
前記制御部は、
前記充電量差又は前記電圧差のうちいずれか一方と、前記記憶部に記憶された前記電圧決定用データに基づいて、前記充電電圧を決定する蓄電素子管理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の蓄電素子管理装置であって、
前記制御部は、
前記充電量差を推定する推定処理を実行する蓄電素子管理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の蓄電素子管理装置であって、
前記推定処理は、
前回前記均等化処理が完了してからの経過時間に基づいて、前記決定処理に用いる前記充電量差を推定する処理である蓄電素子管理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の蓄電素子管理装置であって、
前記蓄電素子は、リン酸鉄系のリチウムイオン電池である蓄電素子管理装置。
【請求項9】
請求項2から請求項8のいずれか一項に記載の蓄電素子管理装置であって、
前記推定処理は、前記複数の蓄電素子それぞれの自己放電電流の値に基づき充電量を推定する蓄電素子管理装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の蓄電素子管理装置であって、
前記決定処理は、前記充電量差が蓄電素子の容量に対して0.35%以下の場合には充電電圧を14.8Vに決定する蓄電素子管理装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の蓄電素子管理装置と、
前記複数の蓄電素子と、を備える蓄電装置。
【請求項12】
請求項11に記載の蓄電装置と、
前記複数の蓄電素子に対して充電を行う充電器と、を備える蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、蓄電素子管理装置、蓄電装置、及び蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の蓄電素子を直列に接続した組電池においては、各蓄電素子の初期容量の差や劣化度の差などに起因して、各蓄電素子の充電量にばらつき(充電量差)が生じる場合がある。蓄電素子に充電量差が生じると、充電時において、充電量の大きい蓄電素子が過電圧になる事態が懸念される。従来、充電電圧を所定の電圧よりも低く設定することで、蓄電素子が過電圧となる事態を抑制する技術が知られている(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4461114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、充電電圧を低く設定すると充電できる充電量や充電効率が低下してしまう。また、蓄電素子の充電量差を少なくする均等化制御を行ったり、過電圧にならないように充電電圧を制御したりすることで、蓄電素子が過電圧になる事態を抑制することも考えられるが、この場合、均等化制御や電圧制御を行うための装置が必要となる。また、蓄電素子によっては、満充電付近で電圧が急激に上昇する特性を有するものもあり、このような特性を有する蓄電素子では、均等化制御や電圧制御が間に合わない事態も懸念される。
【0005】
本明細書では、複数の蓄電素子間に充電量差がある場合において、特定の蓄電素子が過電圧になる事態を抑制することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される技術は、直列に接続された複数の蓄電素子に対する充電電圧を決定する制御部を備える蓄電素子管理装置であって、前記制御部は、前記複数の蓄電素子間の充電量差に基づいて、前記充電電圧を決定する決定処理を実行する構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本明細書によって開示される技術によれば、複数の蓄電素子間に充電量差がある場合において、特定の蓄電素子が過電圧になる事態を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る車両の側面図
図2】バッテリモジュールの斜視図
図3】バッテリモジュールの分解斜視図
図4】蓄電システムの電気的構成を示すブロック図
図5】放電回路の回路図
図6】二次電池のSOC−OCV相関特性を示すグラフ
図7】電圧決定用データを示す図
図8】電圧決定用データを作成するための試験結果をまとめた図表
図9】電圧決定用データを作成するための試験結果の一例を示すグラフ
図10】電圧決定用データを作成するための試験結果の一例を示すグラフ
図11】電圧決定用データを作成するための試験結果の一例を示すグラフ
図12】電圧決定用データを作成するための試験結果の一例を示すグラフ
図13】充電電圧の決定に係るCPUの処理を示すフローチャート図
図14】電圧決定用データを作成するための試験結果をまとめた図表の変形例1
図15】電圧決定用データを作成するための試験結果をまとめた図表の変形例2
図16】回生充電時の二次電池の電流及び電圧の時間推移の一例を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本実施形態の概要)
初めに、本実施形態にて開示する技術の概要について説明する。
本明細書により開示される蓄電素子管理装置は、直列に接続された複数の蓄電素子に対する充電電圧を決定する制御部を備える蓄電素子管理装置であって、前記制御部は、前記複数の蓄電素子間の充電量差又は電圧差に基づいて、前記充電電圧を決定する決定処理を実行するものとされる。充電量差に基づいて充電電圧を決定することで蓄電素子が過電圧となる事態を抑制することができる。また、蓄電素子においては、充電量と電圧には相関関係がある。このため、充電量差の代わりに電圧差に基づいて充電電圧を決定することでも蓄電素子が過電圧となる事態を抑制することができる。
【0010】
また、本明細書により開示される技術の一実施態様として、前記充電電圧は、前記充電量差又は前記電圧差が大きい程小さい値で設定されるものとしてもよい。充電量差が大きい場合には、充電電圧は、より小さい値で設定されるから、蓄電素子が過電圧となる事態を抑制することができる。また、充電量差(又は電圧差)が小さい場合には、充電電圧は、より大きい値で設定されるから、充電可能な充電量を多くすることができる。
【0011】
また、本明細書により開示される技術の一実施態様として、前記充電量差又は前記電圧差のうちいずれか一方と前記充電電圧を対応付けた電圧決定用データが記憶された記憶部を備える構成としてもよい。
【0012】
また、本明細書により開示される技術の一実施態様として、前記制御部は、前記充電量差又は前記電圧差のうちいずれか一方と、前記記憶部に記憶された前記電圧決定用データに基づいて、前記充電電圧を決定する構成としてもよい。記憶部に記憶されている電圧決定用データに基づいて充電電圧を決定することで、例えば充電電圧を計算によって求める処理を行う場合と比べて、容易に充電電圧を決定することができる。
【0013】
また、本明細書により開示される技術の一実施態様として、前記制御部は、前記充電量差を推定する推定処理を実行する構成としてもよい。これにより、充電電圧を決定する時点の蓄電素子の状態に基づいた充電量差を推定することができ、例えば予め記憶された充電量差を用いる場合と比べて、より正確な充電量差によって充電電圧を決定することができる。
【0014】
また、本明細書により開示される技術の一実施態様として、前記複数の蓄電素子間の充電量差を小さくする均等化処理を行う均等化回路を備え、前記推定処理は、前回前記均等化処理が完了してからの経過時間に基づいて、前記決定処理に用いる前記充電量差を推定する処理としてもよい。
【0015】
複数の蓄電素子に対する均等化処理が完了した時点から次回の均等化処理が開始されるまでの間には、各蓄電素子の自己放電容量の差に起因して複数の蓄電素子間に充電量差が生じる。自己放電によって生じる充電量差は、均等化処理が完了してからの経過時間が長い程、大きくなる。このため、制御部は、前回均等化処理が完了してからの経過時間に基づいて充電量差を推定することができる。
【0016】
また、本明細書により開示される技術の一実施態様として、前記蓄電素子は、リン酸鉄系のリチウムイオン電池としてもよい。リン酸鉄系のリチウムイオン電池では、満充電付近で急激に電圧が上昇する特性があるため、均等化制御や充電電圧の制御が間に合わず過電圧となる場合がある。上記技術では、充電量差に基づいて、過電圧にならない充電電圧を予め決定するため、リチウムイオン電池のような充電終了付近で急激に電圧が上昇する特性を有する電池であっても、過電圧を確実に防止することができる。
【0017】
また、本明細書により開示される蓄電装置は、前記蓄電素子管理装置と、前記複数の蓄電素子と、を備える構成とした。
【0018】
また、本明細書により開示される蓄電システムは、前記蓄電装置と、前記複数の蓄電素子に対して充電を行う充電器と、を備える構成とした。
【0019】
また、本明細書により開示される技術は、例えば、複数の蓄電素子の充電量差に基づいて充電電圧を決定するための決定方法、及び充電電圧を決定するためのコンピュータプログラムに適用することも可能である。
【0020】
本明細書で開示される技術を蓄電システム10に適用した実施形態について図1から図13を参照して説明する。
1.蓄電システム10の構成
本実施形態の蓄電システム10は、図1に示すように、自動車1(車両)に搭載されるもので、バッテリモジュール20(蓄電装置)と、車両発電機15(充電器)と、を備えている。
【0021】
バッテリモジュール20は、図2に示すように、ブロック状の電池ケース21を有している。電池ケース21内には、複数の二次電池31からなる組電池30や制御基板28が収容されている(図3参照)。なお、以下の説明において、図2及び図3を参照する場合、電池ケース21が設置面に対して傾きなく水平に置かれた時の電池ケース21の上下方向をY方向とし、電池ケース21の長辺方向に沿う方向をX方向とし、電池ケース21の奥行き方向をZ方向として説明する。
【0022】
電池ケース21は、図3に示すように、上方に開口する箱型のケース本体23と、複数の二次電池31を位置決めする位置決め部材24と、ケース本体23の上部に装着される中蓋25と、中蓋25の上部に装着される上蓋26と、を備える。ケース本体23内には、各二次電池31が個別に収容される複数のセル室23AがX方向に並んで設けられている。
【0023】
位置決め部材24の上面には、図3に示すように、複数のバスバー27が配置されている。位置決め部材24がケース本体23内に配置された複数の二次電池31の上部に配置されることで、複数の二次電池31が位置決めされると共に複数のバスバー27によって直列に接続されるようになっている。
【0024】
中蓋25は、図3に示すように、平面視略矩形状をなし、Y方向に高低差を付けた形状とされている。中蓋25のX方向両端部には、図示しないハーネス端子が接続される一対の端子部22P,22Nが設けられている。一対の端子部22P,22Nは、例えば、鉛合金等の金属からなり、端子部22Pが正極側端子部、端子部22Nが負極側端子部である。
【0025】
また、中蓋25は、図3に示すように、制御基板28が内部に収容可能とされており、中蓋25がケース本体23に装着されることで、二次電池31と制御基板28とが接続されるようになっている。
【0026】
次に図4を参照して、蓄電システム10の電気的構成を説明する。図4に示すように、バッテリモジュール20及び車両発電機15は、自動車1に搭載された電気負荷11及び車両ECU14に対して電源ライン36P、グランドライン36Nを介して接続されている。電気負荷11としては、セルモータ等のエンジン始動装置、ヘッドライド、車内灯、オーディオ、時計、セキュリティ装置などを例示することができる。
【0027】
これら電気負荷11は、バッテリモジュール20及び車両発電機15(オルタネータ)と接続されており、バッテリモジュール20及び車両発電機15から電力供給される。すなわち、駐車中や停車中など、車両発電機15が発電していない時は、バッテリモジュール20から電力が供給される。また、例えば、走行中で、負荷を発電量が上回っている時は、車両発電機15から電力が供給され、その余剰の電力によりバッテリモジュール20は充電される。また、負荷を発電量が下回っている時は、その不足分を補うため、車両発電機15だけでなく、バッテリモジュール20からも電力が供給される。
【0028】
車両ECU14(Electronic Control Unit)は、自動車1に搭載された各機器の制御を行うものとされる。車両発電機15は、図示しない充電回路を備えており、車両ECU14は、充電回路を介して、車両発電機15からバッテリモジュール20に供給される電力の制御を行う構成となっている。
【0029】
バッテリモジュール20は、組電池30と、電流センサ41と、サーミスタ43と、電流遮断装置45と、組電池30を管理する電池管理装置50(以下、BMU50)と、を備える。組電池30は、直列に接続された複数の二次電池31(蓄電素子)から構成されている。なお、BMU50は、蓄電素子管理装置の一例である。
【0030】
組電池30、電流センサ41、電流遮断装置45は、接続ライン35を介して、直列に接続されている。本実施形態では、電流センサ41を負極側、電流遮断装置45を正極側に配置しており、電流センサ41は負極側端子部22N、電流遮断装置45は、正極側端子部22Pにそれぞれ接続されている。
【0031】
電流センサ41は、電池ケース21の内部に設けられており、二次電池31に流れる電流を検出する機能を果たす。サーミスタ43は接触式あるいは非接触式で、二次電池31の温度[℃]を測定する機能を果たす。
【0032】
電流センサ41とサーミスタ43は、信号線によって、BMU50に電気的に接続されており、電流センサ41やサーミスタ43の検出値は、BMU50に取り込まれる構成になっている。電流センサ41は、電池ケース21内に設けられている。
【0033】
電流遮断装置45は、電池ケース21の内部に設けられている。電流遮断装置45は、例えば、FET等の半導体スイッチやリレーであり、BMU50からの指令(制御信号)に応答して、正極側の電力ラインを開放することで、二次電池31の電流を遮断する機能を果たす。
【0034】
BMU50は、電圧検出回路60と、放電回路65と、中央処理装置であるCPU71(制御部)と、メモリ73(記憶部)と、通信部75と、計時部76と、を備えている。上述した制御基板28は、電圧検出回路60、CPU71、メモリ73などを主に構成するものとされる。また、図4に示すように、BMU50の電源ラインは組電池30の正極側の接続点J1に接続され、グランドラインは負極側の接続点J2に接続されており、BMU50は組電池30から電力の供給を受ける。
【0035】
電圧検出回路60は、検出ラインを介して、各二次電池31の両端にそれぞれ接続され、CPU71からの指示に応答して、各二次電池31の電圧及び組電池30の総電圧を測定する機能を果たす。放電回路65は、図5に示すように、放電抵抗Rと放電スイッチSWとを備え、二次電池31に対して並列に接続されている。CPU71から指令を与えて、放電スイッチSWをオンすることで二次電池31を個別に放電することができ、二次電池31の充電量差を少なくする処理(均等化処理)を行うことができる。
【0036】
CPU71は、電流センサ41、電圧検出回路60、サーミスタ43の出力から、二次電池31の電流、電圧、温度を監視しており、異常を検出した場合には、電流遮断装置45を作動して二次電池31が危険な状態になることを防いでいる。
【0037】
また、メモリ73は、例えばフラッシュメモリやEEPROM等の不揮発性メモリである。メモリ73には、二次電池31を管理するためのプログラムや、プログラムの実行に必要なデータが記憶されている。また、メモリ73には、二次電池31間の充電量差を推定する充電量差推定処理(後述)を行うためのプログラムや、二次電池31の充電電圧を決定する充電電圧決定処理(後述)を行うためのプログラムや、充電電圧決定処理を行うために用いる電圧決定用データ(後述)が記憶されている。通信部75は、車両ECU14と通信線17を介して接続されている。これにより、BMU50は、車両ECU14との間で通信可能となっている。計時部76は、現在時刻を計時するものとされる。
【0038】
二次電池31は、例えば、正極活物質にリン酸鉄リチウム(LiFePO4)、負極活物質にグラファイトを用いたリン酸鉄系のリチウムイオン二次電池とされる。図6に二次電池31のSOC−OCV相関特性を示す。二次電池31は、図6に示すように、SOCの変化量に対するOCVの変化量が相対的に低い低変化領域と、相対的に高い高変化領域とを有している。
【0039】
具体的には、二次電池31は、図6に示すように、SOCが10%未満である充電初期(放電末期)、及びSOCが90%以上である充電末期においてSOCの増加に対してOCV(開放電圧)が急激に上昇する領域(高変化領域)を有する。また、二次電池31は、SOCが10%以上90%未満である充電中期(放電中期)においてSOCの増加に対してOCVが略一定である領域(低変化領域、プラトー領域)を有する。
【0040】
複数の二次電池31において充電量差があると、充電末期に相対的に充電量の大きい二次電池31が過電圧となり、劣化する可能性がある。そこで、本実施形態のCPU71は、複数の二次電池31間の充電量差に基づいて、複数の二次電池31の充電電圧を決定する充電電圧決定処理(決定処理)を行う。
【0041】
2.電圧決定用データ
CPU71は、複数の二次電池31間の充電量差、及び電圧決定用データ(図7参照)に基づいて充電電圧を決定する。電圧決定用データは、図7に示すように、複数の二次電池31について、充電量差と充電電圧とを対応付けたデータであり、メモリ73に記憶されている。電圧決定用データは、複数の二次電池31(組電池30)に対して試験的に充電を行った結果に基づいて作成される。
【0042】
電圧決定用データを作成するためには、組電池30に対して充電量差及び充電電圧をそれぞれ変えて試験的に充電を行い、二次電池31の各電圧が、規定の電圧(例えば4V)に達するか否かを調べる。その試験結果を図8に示す。なお、以下の説明では、組電池30が4つの二次電池31を備え、4つの二次電池31のうち、1つの二次電池31の充電量が相対的に高く、残りの3つの二次電池31の充電量がほぼ等しい値で相対的に低い場合を例示する。なお、4つの二次電池31の充電量がこのような関係を有する場合には、充電末期において充電量が高い1つの二次電池31の電圧が、相対的に充電量が低い他の3つの二次電池31の電圧に比べて高くなり、過電圧になる。また、以下の説明では「充電量差」とは、4つの二次電池31のうち、最も充電量が高い二次電池31と、最も充電量が低い二次電池31の充電量の差のことを言うものとする。
【0043】
図8においては、複数の二次電池31の各電圧のうち、いずれかの電圧が規定の電圧に達したものを網掛けの欄で図示してあり、規定の電圧に達しなかったものを空欄で図示してある。なお、本実施形態では、規定の電圧を例えば4Vとし、二次電池31の電圧が4Vを超えた状態を過電圧であると判定しているが、規定の電圧は4Vに限定されず適宜変更可能である。また、図8では、充電量差を例えば0〜800mAhの範囲内で設定し、充電電圧を14.4〜14.8Vの範囲内で設定した場合の結果を図示しているが、この数値範囲に限定されるものではない。なお、上記充電量差の範囲(0〜800mAh)は、二次電池31の定格容量が70Ahである場合の値であり、定格容量の0〜1.14%に相当する。また、二次電池31の定格容量はこれに限定されない。例えば、二次電池31の定格容量が35Ahである場合には、充電量差の範囲は0〜400mAh(定格容量の0〜1.14%に相当)となる。
【0044】
図8に示す充電量差と充電電圧の組み合わせ(図8では計50種類)のうち、3種類の組み合わせにおける試験結果をそれぞれ図9から図11に示す。なお、本実施形態では、いずれも定電圧充電時の試験結果を用いて電圧決定用データを作成する。なお、定電圧充電では、組電池30の電圧が所定の充電電圧に到達した以降は、その充電電圧を維持しつつ、時間経過に伴って充電電流が垂下していく。図9では、充電量差が700mAh、充電電圧が14.4Vの条件で充電した場合の試験結果を示している。図9によれば、時間経過に伴って充電電流が垂下する過程で、相対的に充電量の高い1つの二次電池31の電圧(符号31Hを付す)が大きくなり、他の3つの二次電池31の電圧(符号31Lを付す)がわずかに小さくなるものの、電圧31Hが4Vを超えることがない。つまり、この充電量差と充電電圧の組み合わせは、図8において空欄で図示される。
【0045】
また、充電量差が300mAh、充電電圧が14.6Vで設定されている場合の試験結果を図10に示し、充電量差が250mAh、充電電圧が14.8Vで設定されている場合の試験結果を図11に示す。図10及び図11の試験結果によれば、図10及び図11で例示する充電量差と充電電圧の組み合わせでは、いずれも二次電池31の電圧が4Vを超えないことから、図8においていずれも空欄で図示されている。なお、図10図12では、図9と同様に、相対的に充電量の高い1つの二次電池31の電圧に符号31Hを付し、相対的に充電量の低い3つの二次電池31の電圧に符号31Lを付している。
【0046】
図8に示す試験結果から、図7に示す電圧決定用データを作成する際には、例えば次のようにする。図8に示すように、充電量差が0〜250mAhの範囲では、充電電圧が14.4V〜14.8Vのいずれの値であっても、二次電池31の電圧が4Vを超えることがないから、図7に示すように、充電電圧を最も高い値である14.8Vとする。また、充電量差が250〜300mAhの範囲では、充電電圧が14.4V〜14.6Vのいずれの値であっても、二次電池31の電圧が4Vを超えることがないから、充電電圧を14.6Vとする。そして、充電量差が300〜800mAhの範囲では、充電電圧が14.5V以上になると二次電池31の電圧が4Vを超える場合があるため、充電電圧を14.4Vとする。つまり、図7に示す充電電圧は、ある充電量差において二次電池31が過電圧にならない(4Vを超えない)充電電圧のうち、最も高い電圧のことである。
【0047】
また、図12には、充電量差が20000mAh、充電電圧が14.0Vで設定された場合の定電圧充電の試験結果を示す。図12に示すように、充電電圧14.0Vであれば、充電量差が800mAhよりも十分大きい場合であっても、二次電池31の各電圧が4Vを超えることがない。この結果に基づいて、充電量差が800mAhより大きい場合には、充電電圧を例えば14.0Vとする(図7参照)。なお、本実施形態の電圧決定用データでは、図7に示すように、充電量差の範囲を4つに分け、各範囲について充電電圧をそれぞれ設定した場合を例示したが、充電量差の範囲の分け方はこれに限定されず適宜変更可能である。
【0048】
3.充電電圧の決定に係るCPUの処理
次に充電電圧の決定に係るCPU71の処理について説明する。本実施形態では、複数の二次電池31間の充電量差を推定し、推定した充電量差と、上述した電圧決定用データに基づいて充電電圧を決定する。充電電圧の決定に係るCPU71の処理は、図13に示すように、S110〜S130のステップから構成されている。
【0049】
<充電量差推定処理(推定処理)>
本実施形態では、充電量差推定処理として、放電回路65が動作していない時間(非動作時間)に基づいて、複数の二次電池31間の充電量差を推定する処理を例示する。本実施形態では、CPU71は、各二次電池31の電圧の差が所定値以上になると、放電回路65を動作させ、相対的に充電量が多い(電圧が高い)二次電池31を放電することで、二次電池31間の充電量差を少なくする均等化処理を行う。プラトー領域においては、各二次電池31の電圧の差が小さいことから、放電回路65は動作せず、各二次電池31の電圧の差が大きくなる満充電付近において、放電回路65が動作する。
【0050】
均等化処理が完了した時点では、複数の二次電池31の充電量は、ほぼ等しいものとなっているが、その後、放電回路65が動作していない状態が続くことで、各二次電池31の充電量は、それぞれ自己放電によって減少する。この時、各二次電池31の自己放電容量(ひいては自己放電電流)のばらつきに起因して充電量差が生じる。そして、放電回路65が動作していない期間が長い程、自己放電に起因した充電量差は大きくなる。このため、放電回路65が動作していない時間(均等化処理が実行されていない時間)を求めることで、複数の二次電池31間の充電量差を推定することができる。
【0051】
具体的には、CPU71は、放電回路65が停止した際に、その時刻T1を計時部76から取得し、メモリ73に記憶する。充電量差推定処理を行う際には、CPU71は、現在時刻T2と、その直前に放電回路65が停止した時刻T1との時間差DTを算出する。つまり、時間差DTは、放電回路65が動作していない時間(前回均等化処理が完了してからの経過時間)である。
【0052】
続いて、CPU71は、メモリ73に記憶されている各二次電池31の自己放電電流[mA]の値に、時間差DTを乗算することで、放電回路65の非動作時間(時間差DT)における各二次電池31の自己放電容量[mAh]をそれぞれ算出する。次に、CPU71は、算出された各二次電池31の自己放電容量のうち、例えば、最も大きい自己放電容量と、最も小さい自己放電容量の差を算出することで充電量差を推定する(S110)。なお、CPU71は、二次電池31間の自己放電電流の差と、時間差DTとを乗算することで、充電量差を推定してもよい。また、各二次電池31の自己放電電流の値は、例えば、二次電池31の製造時などに測定したものを、メモリ73に予め記憶しておけばよい。
【0053】
<充電電圧決定処理(決定処理)>
次に、CPU71は、充電量差推定処理によって推定した複数の二次電池31の充電量差と、メモリ73に記憶されている電圧決定用データ(図7参照)に基づいて、組電池30の充電電圧V1を決定する(S120)。例えば、充電量差が、200mAhである場合には、図7に基づいて、充電電圧V1は、14.8Vと決定され、充電量差が500mAhである場合には、充電電圧V1は、14.4Vと決定される。図7に示すように、充電電圧V1は、充電量差が、所定範囲(例えば、0〜800mAh)内にある場合には、充電量差が大きい程小さい値で設定され、所定範囲以上(例えば、800mAh以上)である場合には、充電量差に関わらず一定の電圧(図7では14.0V)で決定される。このように、本実施形態では、図7の電圧決定用データを用いて充電電圧を決定することで、二次電池31が過電圧にならない(4Vを超えない)充電電圧のうち、最も高い電圧を充電電圧V1として決定することができる。
【0054】
そして、CPU71は、充電電圧決定処理で決定した充電電圧V1の値(指令値)を、通信部75を介して車両ECU14に送信する(S130)。車両ECU14は、例えば、車両発電機15に設けられた充電回路(例えば電圧レギュレータ)を動作させることで、車両発電機15の出力電圧(組電池30に印加される充電電圧)がBMU50から送信された充電電圧V1となるように制御を行う。
【0055】
次に、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、複数の二次電池31間の充電量差に基づいて充電電圧を決定することで二次電池31が過電圧となる事態を抑制することができる。具体的には、充電量差が大きい場合には、充電電圧は、より小さい値で設定されるから、二次電池31が過電圧となる事態を抑制することができる。また、充電量差が小さい場合には、充電電圧は、より大きい値で設定されるから、充電可能な充電量を多くすることができる。
【0056】
また、本実施形態では、充電量差と充電電圧とを対応付けた電圧決定用データが記憶されたメモリ73を備えており、CPU71は、充電量差と電圧決定用データに基づいて、充電電圧を決定する。メモリ73に記憶されている電圧決定用データに基づいて充電電圧を決定することで、例えば充電電圧を計算によって求める処理を行う場合と比べて、容易に充電電圧を決定することができる。
【0057】
また、CPU71は、充電量差を推定する充電量差推定処理を実行する。これにより、充電電圧を決定する時点の二次電池31の状態に基づいた充電量差を推定することができ、例えば予め記憶された充電量差を用いる場合と比べて、より正確な充電量差によって充電電圧を決定することができる。
【0058】
また、複数の二次電池31間の充電量差を小さくする均等化処理を行う放電回路65を備え、充電量差推定処理は、前回均等化処理が完了してからの経過時間に基づいて充電量差を推定する処理とされる。
【0059】
複数の二次電池31に対する均等化処理が完了した時点から次回の均等化処理が開始されるまでの間(放電回路65の非動作時間)には、各二次電池31の自己放電容量の差に起因して複数の二次電池31間の充電量差が生じる。自己放電によって生じる充電量差は、前回の均等化処理が完了してからの経過時間が長い程、大きくなる。このため、CPU71は、前回均等化処理が完了してからの経過時間に基づいて充電量差を推定することができる。
【0060】
また、二次電池31は、例えば、リン酸鉄系のリチウムイオン電池とされる。リン酸鉄系のリチウムイオン電池では、満充電付近(充電終了付近)で急激に電圧が上昇する特性があるため、放電回路65による均等化処理が間に合わず、二次電池31が過電圧となる事態が懸念される。本実施形態では、充電量差に基づいて、過電圧にならない充電電圧を予め決定するため、リチウムイオン電池のような充電終了付近で急激に電圧が上昇する特性を有する電池であっても、過電圧を防止することができる。
【0061】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0062】
(1)上記実施形態では、蓄電素子の一例としてリン酸鉄系の正極活物質を使用したリチウムイオン二次電池を示したが、これに限定されない。蓄電素子としては、リチウムイオン二次電池以外の二次電池や、電気化学現象を伴うキャパシタ等でもよい。なお、リチウムイオン二次電池の正極活物質は、リン酸鉄系に限定されず、適宜変更可能であり、例えば、三元系の正極活物質を使用してもよい。なお、三元系のようにSOCに対してOCVが一義的に定まる特性(SOCの変化量に対するOCVの変化量が大きい特性)を有する二次電池31を用いる場合には、リン酸鉄系に比べて、各二次電池31のOCVからSOCを容易に推定することができる。このような場合には、各二次電池31のOCVを測定することで、SOCを推定し、SOCから二次電池31の充電量差を推定してもよい。また、各二次電池31のSOC差と充電電圧とを対応付けた電圧決定用データを用いて、SOC差から充電電圧を直接的に決定してもよい。なお、各二次電池31のSOCの推定方法は、OCVから求める方法(OCV法)に限定されず、例えば、電流積算法などを用いてもよい。
【0063】
(2)上記実施形態では、制御部としてCPU71を例示したが、これに限定されない。制御部は、複数のCPUを備える構成や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハード回路であってもよく、FPGA、MPU、また、それらが組み合わされた構成であってもよい。つまり、制御部は、上記実施形態で例示した各処理を、ソフトウェア又はハード回路を利用して実行するものであればよい。
【0064】
(3)上記実施形態では、バッテリモジュール20が搭載される車両として自動車1を例示したが、これに限定されない。本明細書で開示される技術は、電車など自動車以外の車両に適用することも可能である。また、上記実施形態では、充電器として、車両に搭載されているもの(車両発電機15)を例示したが、充電器は、車両の外部に設置されているものであってもよい。例えば、本明細書で開示される技術を電車に適用した場合には、充電器は駅などに設置されていてもよい。また、電車に搭載された二次電池が架線から供給される電力によって充電される構成であってもよい。また、バッテリモジュール20は、車両に搭載されるものに限定されず、産業用の電源装置(非常用電源など)として広く用いることができる。
【0065】
(4)上記実施形態では、組電池30が4つの二次電池31を備える構成を例示したが、これに限定されない。二次電池31の個数は2つ以上であればよく、その個数は適宜変更可能である。
【0066】
(5)上記実施形態では、4つの二次電池31のうち、1つの二次電池31の充電量が相対的に高く、他の3つの二次電池31の充電量が相対的に低い場合を例示したが、これに限定されない。例えば、2つの二次電池31の充電量が相対的に高く、他の2つの二次電池31の充電量が相対的に低い場合の試験結果(図14参照)に基づいた電圧決定用データや、3つの二次電池31の充電量が相対的に高く、残りの1つの二次電池31の充電量が相対的に低い場合の試験結果(図15参照)に基づいた電圧決定用データなど、様々なパターンに対応した電圧決定用データがメモリ73に記憶されていてもよい。このようにすれば、CPU71は、充電電圧決定処理において、数種類の電圧決定用データのうち、該当する充電量差のパターンに対応する電圧決定用データを使用して充電電圧を決定することができる。
【0067】
また、複数の二次電池31の各充電量が全て異なる場合であっても、本明細書で開示される技術は適用可能である。なお、電圧決定用データを作成する際には、充電量が最も高い二次電池31と、充電量が最も低い二次電池31の充電量差に基づいて、電圧決定用データを作成することが好ましいが、これに限定されない。
【0068】
(6)本明細書で開示される技術は、定電圧充電の場合に限定されず、例えば、車両減速時における回生充電について適用することも可能である。回生充電時における二次電池31の電流及び電圧の時間推移の一例を図16に示す。図16に示すように、回生充電では、例えば、定電流充電時に電流が短時間で急激に上昇し、各二次電池31の電圧がそれぞれ上昇する。この時、相対的に充電量が高い二次電池31の電圧(符号31H1)は、充電量が低い二次電池31の電圧(符号31L1)に比して上昇量が大きく、過電圧となる事態が懸念される。本明細書で開示される技術を回生充電に適用する場合には、上述した回生充電時の状況と同じ状況で試験的な充電を予め行い、その試験結果に基づいて電圧決定用データを作成し、この電圧決定用データを用いて充電電圧を決定すればよい。
【0069】
(7)上記実施形態では、充電電圧決定処理をBMU50側で行い、充電器(車両発電機15)の制御を車両ECU14側で行う構成を例示したが、これに限定されない。充電電圧決定処理及び、充電器の制御を一つの制御部で行う構成としてもよい。
【0070】
(8)上記実施形態では、均等化処理として、相対的に充電量が多い二次電池31を放電する処理を例示したが、これに限定されない。例えば、相対的に充電量が少ない二次電池31を充電することで複数の二次電池31の充電量差を少なくしてもよい。
【0071】
(9)上記実施形態では、充電量差推定処理によって推定された充電量差に基づいて、充電電圧を決定する技術を例示したが、これに限定されない。例えば、複数の二次電池31の製造時などに測定した各二次電池31の初期容量をメモリ73に記憶しておき、この初期容量の差を充電量差として充電電圧決定処理を行ってもよい。
【0072】
(10)上記実施形態では、充電量差推定処理として放電回路65の非動作時間を用いて充電量差を推定するものを例示したが、これに限定されない。充電量差推定処理としては、二次電池31について電圧と充電量の相関関係を示すデータを予めメモリ73に記憶させておき、そのデータと、充電中に計測した各二次電池31間の電圧差に基づいて充電量差を推定し、その充電量差から充電電圧を決定してもよい。また、各二次電池31間の電圧差から直接的に充電電圧を決定してもよい。具体的には、充電量差を用いる場合と同様に各二次電池31間の電圧差と充電電圧とを対応付けた電圧決定用データをメモリ73に記憶させておき、その電圧決定用データと電圧差に基づいて充電電圧を決定すればよい。
【0073】
(11)上記実施形態では、充電量差推定処理において、メモリ73に記憶されている二次電池31の自己放電電流の値を用いて充電量差を推定する処理を例示したが、これに限定されない。例えば、放電回路65の動作時間に基づいて二次電池31間の自己放電電流の差を算出し、これに基づいて充電量差を推定してもよい。例えば、一つの二次電池31についてのみ放電回路65が動作する場合、その二次電池31(以下、符号31A)は、他の二次電池31(以下、符号31B)に比べて充電量が高いことになる。言い換えると、二次電池31Aは、放電回路65の非動作時間(上記実施形態における時間差DTに対応)における自己放電容量(ひいては自己放電電流)の値が相対的に小さいものであると考えることができる。
【0074】
このような場合、CPU71は、放電回路65による二次電池31Aの放電電流を、その放電回路65の動作時間(放電回路65による放電時間)について積算することで、他の二次電池31との自己放電容量の差DXを算出する。この差DXは、直前の放電回路65の非動作時間における自己放電によって生じたものであると考えることができる。このため、自己放電容量の差DXを、直前の放電回路65の非動作時間で割ることで、二次電池31Aと他の二次電池31Bとの自己放電電流の差DIを算出することができる。自己放電電流の差DIを算出し、これをメモリ73に記憶させておけば、これ以降は、自己放電電流の差DIに放電回路65の非動作時間を乗算することで、二次電池31Aと他の二次電池31Bとの充電量差を推定することができ、この充電量差に基づいて最適な充電電圧を決定することができる。
【0075】
(12)上記実施形態では、各二次電池31の自己放電電流のばらつきに起因して充電量差が生じる場合を例示したが、充電量差が生じる原因は、これに限定されない。例えば、各二次電池31の電圧を検出するための各IC(電圧検出回路60の構成部品)の消費電流のばらつきに起因して、充電量差が生じる場合がある。このような場合には、例えば、各二次電池31の自己放電電流に対して、対応する各ICの消費電流を加算することで各二次電池31の放電電流を求め、この放電電流の差と、放電回路65の非動作時間とを乗算することで、二次電池31の充電量差を求めることができる。
【符号の説明】
【0076】
10:蓄電システム
15:車両発電機(充電器の一例)
20:バッテリモジュール(蓄電装置の一例)
31:二次電池(蓄電素子の一例)
50:BMU(蓄電素子管理装置の一例)
65:放電回路(均等化回路の一例)
71:CPU(制御部の一例)
73:メモリ(記憶部の一例)
DT:時間差(前回均等化処理が完了してからの経過時間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16