(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
操舵機構に付与される動力の発生源であるアクチュエータを、自車両の動作状態を表す状態量に基づき外部制御装置により演算される自動操舵指令値に基づいて制御するステアリング制御装置において、
前記操舵機構の操舵シャフトに付与される操舵トルクを前記操舵シャフトの回転角である操舵角で微分することにより操舵特性を演算する操舵特性演算部と、
前記操舵特性に基づいて、前記状態量に応じて決定される自動操舵制御の意図と運転者の意図とが一致するか否かを判定する運転者意図判定部と、を備えるステアリング制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動操舵システムが車両を自動操舵している場合であっても、運転者はその自動操舵制御に対して修正を加えたいと感じるときもある。また、自動操舵システムも、より運転者の好みを反映した自動操舵を行うために、運転者がどのような操舵を行いたいか(運転者の意図)を把握して自動操舵を行うことが考えられる。このため、運転者の意図をより確実に検出する方法が求められていた。
【0006】
本発明の目的は、運転者の意図をより確実に検出することができるステアリング制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成しうるステアリング制御装置は、操舵機構に付与される動力の発生源であるアクチュエータを、自車両の動作状態を表す状態量に基づき外部制御装置により演算される自動操舵指令値に基づいて制御するステアリング制御装置において、前記操舵機構の操舵シャフトに付与される操舵トルクを前記操舵シャフトの回転角である操舵角で微分することにより操舵特性を演算する操舵特性演算部と、前記操舵特性に基づいて、前記状態量に応じて決定される自動操舵制御の意図と運転者の意図とが一致するか否かを判定する運転者意図判定部と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、操舵トルクを操舵角で微分した微分値である操舵特性に基づいて、運転者の意図と自動操舵制御の意図とが一致するか否かを判定することにより、運転者の意図をより確実に検出することができる。たとえば操舵トルクがある閾値よりも大きいか否かに基づいて運転者の意図を検出する場合には、自動操舵制御によって運転者の意図しない操舵トルクが生じる場合もあった。このため、操舵トルクのみでは、運転者の意図を確実に検出することが困難であった。
【0009】
上記のステアリング制御装置において、前記自動操舵指令値を前記操舵特性に応じて補正するための補償量を演算する補償部を有し、前記運転者意図判定部が運転者の意図と自動操舵制御の意図とが一致しない旨判定することを条件に、前記補償部は、前記自動操舵指令値を低減させるように前記補償量を演算することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、運転者の意図と自動操舵制御の意図とが一致しないとき、自動操舵指令値を操舵特性に応じて低減させることにより、より運転者の意図を自動操舵制御に反映することができる。たとえば、運転者の意図が自動操舵制御の意図と異なる場合には、自動操舵指令値を低減することにより、運転者の意図を自動操舵制御に反映しやすくできる。
【0011】
上記のステアリング制御装置において、前記補償部は、前記操舵特性が正であるとき、前記操舵特性が負であるときよりも、前記自動操舵指令値を大きく低減させるように前記補償量を演算することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、操舵特性が正である場合には運転者の意図が自動操舵制御の意図よりも強いと考えられるため、操舵特性が負である場合よりも、自動操舵指令値をより大きく低減するよう補償値を演算する。このため、運転者の意図が自動操舵制御の意図よりも強いと考えられる場合には、自動操舵指令値が低減され、より運転者の意図を自動操舵制御に反映できる。
【0013】
上記のステアリング制御装置によれば、前記運転者意図判定部は、運転者の複数の意図状態に対応して予め定められる操舵特性の時系列データと、前記操舵特性演算部により演算される操舵特性の時系列データとをクラスタリングすることにより、運転者の意図が予め分類された複数の意図状態のうちの、いずれの意図状態であるかを判定することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、複数の意図状態に対応して予め定められる操舵特性の時系列データと、操舵特性の時系列データとをクラスタリングすることにより、運転者の意図を判定することができる。この際、操舵特性に基づいてクラスタリングを行うため、運転者の意図をより確実に検出することが可能である。
【0015】
上記のステアリング制御装置によれば、前記運転者意図判定部は、前記操舵特性演算部により演算される操舵特性が正であるとき、運転者の意図が自動操舵制御の意図に対してより強い第1の意図状態である旨判定し、前記操舵特性演算部により演算される操舵特性が負であるとき、運転者の意図が第1の意図状態よりも弱い他の意図状態である旨判定することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、運転者意図判定部は、操舵特性が正であるとき第1の意図状態である旨判定し、操舵特性が負であるとき他の意図状態である旨判定できる。
上記のステアリング制御装置によれば、前記運転者意図判定部は、前記操舵特性演算部により演算される操舵特性が正であり、かつ操舵特性が負から正へと変化しているとき、前記他の意図状態として、運転者の意図が自動操舵制御の意図に対してより強い第2の意図状態である旨判定することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、運転者意図判定部は、操舵特性が正であり、かつ操舵特性が負から正へと変化しているとき、第2の意図状態である旨判定できる。
上記のステアリング制御装置によれば、前記運転者意図判定部は、前記操舵特性演算部により演算される操舵特性が負、かつ当該操舵特性の変化率が操舵開始直後に負である場合、前記他の意図状態として、運転者の意図が自動操舵制御の意図に対してより弱い第3の意図状態である旨判定し、前記操舵特性演算部により演算される操舵特性が負、かつ当該操舵特性の変化率が操舵開始直後に正である場合、前記他の意図状態として、運転者の意図が自動操舵制御の意図に対してより弱い第4の意図状態である旨判定することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、運転者意図判定部は、操舵特性が負かつ操舵開始直後の操舵特性の変化率が負である場合には第3の意図状態である旨判定し、操舵特性が負かつ操舵開始直後の操舵特性の変化率が正である場合には第4の意図状態である旨判定できる。このため、運転者意図判定部は、操舵開始直後の操舵特性の変化率も用いて判定することにより、より運転者の意図状態を的確に判定することができる。
【0019】
上記のステアリング制御装置によれば、前記自動操舵指令値を、前記操舵角と、外部情報検出部により検出されるヨー角との差であるステアリング角偏差で微分することにより、自動操舵特性を演算する自動操舵特性演算部と、前記操舵特性演算部により演算される操舵特性と、前記自動操舵特性演算部により演算される自動操舵特性との差に基づいて、前記自動操舵指令値を増減する特性差異判定部と、を備えることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、操舵特性と自動操舵特性との差に基づいて自動操舵指令値を増減することにより、運転者の意図と自動操舵制御の意図とのずれが大きいときに、より好ましい自動操舵制御を実現することができる。たとえば、運転者の意図を優先する状況下で、運転者の意図と自動操舵制御の意図とのずれが大きいとき、自動操舵指令値を低減することもできる。また、自動操舵制御の意図を優先する状況下であれば、運転者の意図と自動操舵制御の意図とのずれが大きいとき、自動操舵指令値を維持または増大させることもできる。
【0021】
上記のステアリング制御装置によれば、前記操舵特性演算部は、演算される前記操舵特性の高周波成分を低減するローパスフィルタを有していることが好ましい。
この構成によれば、運転者の意図がほとんど含まれない操舵特性の高周波成分をローパスフィルタにより低減することにより、操舵特性から運転者の意図を検出する際のノイズを低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のステアリング制御装置によれば、運転者の意図をより確実に検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
以下、ステアリング制御装置を自動操舵装置(ステアリング装置)に適用した一実施形態について説明する。
【0025】
図1に示すように、自動操舵装置1は、運転者のステアリングホイール10の操作に基づいて転舵輪15を転舵させる操舵機構2と、運転者のステアリング操作を補助する転舵アクチュエータ3と、上位ECU30と、ステアリングECU40(ステアリング制御装置)とを備えている。
【0026】
操舵機構2は、ステアリングホイール10およびステアリングホイール10と一体回転するステアリングシャフト11を備えている。ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール10と連結されたコラムシャフト11a、コラムシャフト11aの下端部に連結されたインターミディエイトシャフト11b、およびインターミディエイトシャフト11bの下端部に連結されたピニオンシャフト11cを有している。ピニオンシャフト11cの下端部はラックアンドピニオン機構13を介してラックシャフト12に連結されている。したがって、操舵機構2では、ステアリングシャフト11の回転運動は、ピニオンシャフト11cの先端に設けられたピニオン歯と、ラックシャフト12に形成されたラック歯からなるラックアンドピニオン機構13を介してラックシャフト12の軸方向(
図1の左右方向)の往復直線運動に変換される。当該往復直線運動が、ラックシャフト12の両端にそれぞれ連結されたタイロッド14を介して左右の転舵輪15にそれぞれ伝達されることにより、転舵輪15の転舵角が変更される。
【0027】
転舵アクチュエータ3は、ラックシャフト12に設けられている。転舵アクチュエータ3は、ステアリング操作を補助する力の発生源であるモータ20と、ラックシャフト12の周囲に一体的に取り付けられるボールねじ機構22と、モータ20の回転軸21の回転力をボールねじ機構22に伝達する減速機構23からなる。転舵アクチュエータ3は、モータ20の回転力を減速機構23およびボールねじ機構22を介してラックシャフト12の軸方向の往復直線運動に変換して、ラックシャフト12に軸方向の力を付与することにより運転者のステアリング操作を補助する。
【0028】
上位ECU30は、自動操舵を実行するために、ステアリングECU40に対するスタートトリガtrigを生成する。また、上位ECU30は、舵角センサ50および視覚センサ52を通じて検出されるステアリング角θmおよびヨー角θvに基づいて、ステアリング角偏差dθsを演算する。
【0029】
舵角センサ50は、コラムシャフト11aに設けられている。舵角センサ50は、運転者のステアリング操作に連動するステアリングシャフト11の回転角であるステアリング角θmを検出する。外部検出部としての視覚センサ52には、たとえばカメラが用いられる。視覚センサ52は、取り込んだ車両周辺の情報に基づいてヨー角θvを演算する。ヨー角θvは、車両の直進方向に対する転舵輪15の角度(転舵角)であり、たとえば道路に対する車両の相対的な方向を示している。
【0030】
ステアリングECU40は、車両に設けられる各種のセンサ(舵角センサ50など)の検出結果、並びに上位ECU30から取り込まれるスタートトリガtrigおよびステアリング角偏差dθsに基づいて、モータ20を制御する。すなわち、ステアリングECU40は、各種のセンサの出力に基づいて、目標の回転力を設定し、実際の回転力が目標の回転力となるように、モータ20に供給される電流を制御する。
【0031】
つぎに、ステアリングECU40について詳しく説明する。
図2に示すように、上位ECU30は、ステアリング角偏差dθsを演算するステアリング角偏差演算部31を有している。ステアリング角偏差演算部31は、舵角センサ50および視覚センサ52を通じて検出されるステアリング角θmおよびヨー角θvに基づいて、ステアリング角偏差dθsを演算する。ステアリング角偏差dθsは、ステアリング角θmとヨー角θvとの差であり、車両が目標とする運行軌跡と車両が実際に運行する運行軌跡との差である。
【0032】
ステアリングECU40は、自動操舵制御部60および運転者意図補償制御部70を有している。自動操舵制御部60は、ステアリング角偏差dθsに基づいて、自動操舵する際にモータ20が発生させるべきトルクの指令値である最終自動操舵トルク指令値Tm**(自動操舵指令値)を演算する。具体的には、自動操舵制御部60は、自動操舵トルク指令値Tm*(自動操舵指令値)を演算する自動操舵トルク指令値演算部61と、運転者意図補償制御部70からの出力に基づいて、自動操舵トルク指令値Tm*を補償することで最終自動操舵トルク指令値Tm**を演算する自動操舵トルク指令値補償部62とを有している。自動操舵トルク指令値演算部61は、次式(1)に示すように、ステアリング角偏差dθsに予め定められた係数aを乗算することにより、自動操舵トルク指令値Tm*を演算する。
【0033】
Tm*=a・dθs …(1)
ステアリングECU40は、このように演算される自動操舵トルク指令値Tm*(正確には、最終自動操舵トルク指令値Tm**)に基づいて、モータ20を制御することにより、車両の自動操舵を制御する。
【0034】
ところで、
図3に示すように、たとえば車両が障害物に衝突することを回避する自動操舵において、上位ECU30は、実線で表される経路Aを辿って車両と障害物との衝突を回避させるとする。しかし、運転者はたとえば破線で表される経路Bを辿って障害物を回避したい場合もあるし、破線で表される経路Cを辿って障害物を回避したい場合もあるはずである。経路Bを辿るときの運転者の意図は、障害物を回避する際に隣の車線に出来る限りはみ出したくないことであると考えられる。経路Cを辿るときの運転者の意図は、余裕をもって障害物を回避したいことであると考えられる。このような障害物の回避をはじめとする様々な運転者の意図を把握することができれば、より運転者の意図を反映した自動操舵制御(オーバーライド制御)を実行することができる。
【0035】
このため、
図2に示すように、ステアリングECU40に運転者意図補償制御部70が設けられている。
運転者意図補償制御部70は、トルクセンサ51を通じて検出される操舵トルクTmおよび舵角センサ50を通じて検出されるステアリング角θmに基づいて、自動操舵トルク指令値Tm*に対する補償値である運転者意図補償値Gm*を演算する。具体的には、運転者意図補償制御部70は、運転者意図検出部71、運転者意図判定部72、および運転者意図補償値演算部73を有している。
【0036】
運転者意図検出部71は、操舵トルクTmおよびステアリング角θmに基づいて、運転者の意図がどのような状態にあるかを検出するための意図パターンを生成する。運転者意図検出部71は、インピーダンス演算部71aおよびローパスフィルタ71bを有している。インピーダンス演算部71は、ステアリング角θmに対する操舵トルクTmの微分値であるインピーダンスIを演算する。インピーダンスIは、あるステアリング角θmだけステアリングシャフト11を回転させるのに必要な操舵トルク、ならびにステアリングシャフト11およびステアリングホイール10の操舵特性(剛性)を示している。インピーダンスIは、次式(2)で表される。
【0037】
I=dTm/dθm …(2)
インピーダンス演算部71aは、一定の制御周期でインピーダンスIの演算を実行し、演算結果であるインピーダンスIをローパスフィルタ71bに出力する。
【0038】
ローパスフィルタ71bは、入力されるインピーダンスIに対してローパスフィルタ処理を行うことにより、インピーダンスIにおける高周波成分を低減させる。ローパスフィルタ処理されたインピーダンスIは、運転者意図判定部72に出力される。
【0039】
図4は、インピーダンスIの周波数特性を示している。実線は、運転者が自動操舵へ介入する意図が低いときのインピーダンスIの周波数特性を示している。破線は、運転者が自動操舵へ介入する意図が高いときのインピーダンスIの周波数特性を示している。運転者が自動操舵へ介入する意図が低いときと高いときのいずれも、周波数F0に至るまでは周波数fの増大に伴い、より大きく減少し、周波数F0を超えたあとは、周波数fの増大に伴いインピーダンスIはほぼ一定または微増する。なお、インピーダンスIに対してローパスフィルタ処理を実行するのは、運転者の操作によって発生するインピーダンスIは高周波成分側ではなく、低周波成分側に多く含まれていることが過去の知見から分かっているからである。
【0040】
図2に示されるように、運転者意図判定部72は、運転者意図検出部71により一定の制御周期で演算されたインピーダンスIに基づいて、インピーダンスIの時系列データを生成する。そして、生成したデータに基づいて、運転者の自動操舵への介入意図が大きい状態にあるか否か、すなわち予め運転者の意図を分類した意図パターンのうち、いずれに該当するかを判定する。より具体的には、インピーダンスIの時系列データと、予め分類された意図パターンとの類似度に基づいて、分類(クラスタリング)することにより、運転者の意図がいずれの意図パターンに該当するかを判定する。
【0041】
運転者意図補償値演算部73は、運転者意図判定部72により判定された運転者意図パターンに応じて、運転者意図補償値Gm*(第1〜第4の運転者意図補償値Gm1*〜Gm4*)を生成する。運転者意図補償値Gm*は、運転者の自動操舵制御へ介入する意図が強いほど、より値の小さな運転者意図補償値Gm*が演算される。
【0042】
自動操舵トルク指令値補償部62は、自動操舵トルク指令値演算部61により演算された自動操舵トルク指令値Tm*に運転者意図補償値Gm*を乗算することにより、最終自動操舵トルク指令値Tm**を演算する。すなわち、最終自動操舵トルク指令値Tm**は、次式(3)によって表される。
【0043】
Tm**=Tm*・Gm* …(3)
すなわち、運転者の意図が大きいほど、より最終自動操舵トルク指令値Tm**の絶対値は小さくなる。自動操舵トルク指令値補償部62は、演算される最終自動操舵トルク指令値Tm**に基づいて、モータ20の動作を制御する。
【0044】
つぎに、運転者の各意図状態について説明する。
まず、
図5に示すように、運転者の意図を4つの意図状態に分類している。
図5の横軸は時間tであり、縦軸はインピーダンスIである。なお、時間tは、ステアリングホイール10の回転と関係しており、時間tが進むほどステアリングホイール10は回転される。ここでは、ある操舵角になる時間Tまでの、運転者の各意図状態でのインピーダンスIの時間変化を示す。なお、時間tが「0」のとき、運転者または自動操舵制御による操舵が開始される。
【0045】
2点鎖線で示される第1の意図状態は、運転者の意図が強く、自動操舵制御に対して先行するような操舵を行っている状態である。1点鎖線で示される第2の意図状態は、運転者の意図は強いが、自動操舵制御に対して出遅れた状態である。破線で示される第3の意図状態は、運転者の意図は弱いが、自動操舵制御に対して緊張や懐疑的な操舵を行っている状態である。実線で示される第4の意図状態は、運転者の意図が弱く、自動操舵制御に対して運転者が受動的な操舵を行っている状態である。これらの各意図状態に対応したインピーダンスIの時間変化が、予め実験などに基づいて求められている。
【0046】
第1の意図状態では、インピーダンスIが操舵開始直後から正の状態であり、時間が経過するのに伴って徐々に平衡点E(I=0)へと収束する。すなわち、第1の意図状態では、インピーダンスIの時間に対する変化量dI/dtは負(dI/dt<0)である。第1の意図状態は、たとえば車両の進行方向に障害物があるために、運転者が自動操舵制御に介在して、当初から運転者の意図に沿った経路になるよう操舵している状態である。
【0047】
第2の意図状態では、操舵開始直後のインピーダンスIが負(I<0)の状態から、時間が経過するにつれてインピーダンスIが増加し、インピーダンスIが「0」をまたいで正に変化したのちに、最終的に時間Tで平衡点Eに収束する。すなわち、操舵開始直後の時間T0では、インピーダンスIは負であり、かつインピーダンスIの時間に対する変化量dI/dtは正(dI/dt>0)である。なお、第2の意図状態は、たとえば車両の進行方向に障害物があるために自動操舵制御が回避しようとする際に、当初は運転者は自動操舵制御の経路が自らの意図に沿っていると考えていたが、実際は車両が運転者の意図とは異なる経路で回避しようとしているために、運転者が自動操舵に介入して運転者の意図に沿った経路で回避しようとしている状態である。すなわち、自動操舵制御の意図の通りに回避していた初期の状態と、一定時間が経過してから運転者の意図に沿った経路で回避する状態との間では、自動操舵制御に対して運転者の意図が出遅れているために、インピーダンスIは負の値になる。しかし、運転者の意図に沿った経路になるように、運転者がその意図を介在させるために、インピーダンスIは「0」をまたいで正の値になる。
【0048】
第3の意図状態では、インピーダンスIが操舵開始直後から負の状態であり、操舵開始から一定の時間までインピーダンスIは減少し(負の方向に大きくなり)、一定の時間が経過してからは、平衡点Eに向けてインピーダンスIが増加している。すなわち、操舵開始直後の時間T0(T0<<T)では、インピーダンスIは負であり、かつインピーダンスIの時間に対する変化量dI/dtは負(dI/dt<0)である。なお、第3の意図状態は、たとえば車両の進行方向に障害物があるために、運転者が自動操舵制御に介入しなければ障害物に接触する可能性があると考えているような状態である。運転者は自動操舵制御に対して、当初は緊張や懐疑的に反応していたが、ある程度の時間が経過しても問題が生じなかったために緊張や懐疑的な反応が和らいだことによって、このような変化が生じている。
【0049】
第4の意図状態では、時間Tまでの全領域でインピーダンスIは負である。また、インピーダンスIは、時間の経過に伴って、自動操舵制御の意図と運転者の意図とが釣り合う平衡点Eに近づく。すなわち、第4の意図状態では、インピーダンスIの時間に対する変化量dI/dtは正(dI/dt>0)である。なお、第4の意図状態は、たとえば車両の進行方向に障害物がないため、運転者が何ら自動操舵制御に介入する必要を感じておらず、自動操舵制御を継続すればよいと考えているような状態である。
【0050】
つぎに、運転者意図判定部72による運転者の意図の判定方法を概念的に説明する。
図6に示すように、運転者意図判定部72は、運転者の意図が、インピーダンスIと、時間T0でのインピーダンスIの変化量dI/dtとに基づいて、第1の意図状態〜第4の意図状態のいずれの状態かを判定する。すなわち、第1の状態はインピーダンスIが大きく(I>閾値th1)、時間T0でのインピーダンスIの変化量dI/dtが小さい(dI/dt<閾値th2)状態である。第2の状態はインピーダンスIが大きく(I>th1のときがある)、時間T0でのインピーダンスIの変化量dI/dtが大きい状態である。第3の状態はインピーダンスIが小さく、時間T0でのインピーダンスIの変化量dI/dtが小さい(dI/dt<th2)状態である。第4の状態はインピーダンスIが小さく(I<th1)、時間T0でのインピーダンスIの変化量dI/dtが大きい(dI/dt>th2)状態である。
【0051】
ところで、運転者の意図を予め決められた4つの状態に分けることが困難なことも考えられる。たとえば、運転者の意図が各意図状態の境界にある場合(
図6中の領域A1)や、運転者の意図がいずれの意図状態にも該当しないと考えられる場合(
図6中の領域A2)もある。しかし、たとえば
図6の領域A2に運転者の意図があるときは、第1〜第4の意図状態からの距離や類似度に基づいて、第1〜第4の意図状態のいずれかに分類することができる。
【0052】
つぎに、運転者意図判定部72による運転者の意図の判定処理手順を、
図7のフローチャートに従って説明する。当該フローチャートの各処理は、ステアリングECU40(正確には、運転者意図判定部72)により実行される。なお、運転者の意図(インピーダンスI)が明確に各ステップを満たさない場合も想定されるが、クラスタリングを行うことによって、そのステップを満たすくらいに類似度が高いのであれば、そのステップを満たしたと推定される。
【0053】
図7のフローチャートに示すように、まず、ステアリングECU40は、インピーダンスIが正か否かを判定する(ステップS10)。
ステアリングECU40は、インピーダンスIが正である場合(ステップS1のYES)、時間T0でインピーダンスIの変化量dI/dtが正か否かを判定する(ステップS11)。時間T0でインピーダンスIが正である場合には、ステップS1での判定をより迅速に行うことができる。
【0054】
ステアリングECU40は、時間T0でインピーダンスIの変化量dI/dtが正である場合(ステップS11のYES)、運転者の意図は第1の意図状態にある旨判定する(ステップS12)。
【0055】
ステアリングECU40は、時間T0でインピーダンスIの変化量dI/dtが負である場合(ステップS11のNO)、運転者の意図は第2の意図状態にある旨判定する(ステップS13)。
【0056】
つぎに、ステアリングECU40は、先のステップS10の判定処理において、インピーダンスIが負である場合(ステップS10のNO)、時間T0でインピーダンスIの変化量dI/dtが正か否かを判定する(ステップS14)。
【0057】
ステアリングECU40は、時間T0でインピーダンスIの変化量dI/dtが正である場合(ステップS14のYES)、運転者の意図は第3の意図状態にある旨判定する(ステップS15)。
【0058】
ステアリングECU40は、時間T0でインピーダンスIの変化量dI/dtが負である場合(ステップS14のNO)、運転者の意図は第4の意図状態にある旨判定する(ステップS16)。
【0059】
なお、この
図7のフローチャートに係る処理は繰り返し実行される。すなわち、運転者意図検出部71により生成されるインピーダンスIの時系列データが、運転者の意図の判定に必要なだけ運転者意図判定部72に蓄積される度に、新たな時間T0が設定されて運転者の意図が第1〜第4の意図状態のいずれであるかが判定される。なお、
図7のステップS10では、時間TまでにインピーダンスIが正になる場合もインピーダンスIが正の場合(I>0)に含まれる。
【0060】
つぎに、運転者意図補償部73により演算される運転者意図補償値Gm*について説明する。
図8に示すように、運転者意図補償部73は第1の意図状態〜第4の意図状態に基づいて、これら意思状態に対応した第1〜第4の運転者意図補償値Gm1*〜Gm4*を演算する。なお、第1〜第4の運転者意図補償値Gm1*〜Gm4*は、この順にその絶対値が小さい。このため、運転者意図補償部73は、運転者の意図がより大きいときにはより絶対値の小さな運転者意図補償値Gm*(たとえば第1の運転者意図補償値Gm1*)を演算する。したがって、自動操舵トルク指令値補償部62では、より絶対値の小さな最終自動操舵トルク指令値Tm**を演算する。
【0061】
本実施形態の効果を説明する。
(1)運転者意図判定部72は、運転者意図検出部71によって演算されるインピーダンスIの時間変化に基づいて、運転者の意図が第1〜第4の意図状態のいずれに該当するかを判定することにより、運転者の意図を的確に検出することができる。
【0062】
(2)運転者意図補償部73は、運転者の意図が第1〜第4の意図状態のどの意図状態に該当するかに基づいて、運転者意図補償値Gm*を演算する。そして、自動操舵トルク指令値補償部62において、自動操舵トルク指令値Tm*と運転者意図補償値Gm*とが乗算されることにより、運転者の意図を反映した最終自動操舵トルク指令値Tm**が演算される。すなわち、運転者の意図がより大きいときには、より絶対値の小さい最終自動操舵トルク指令値Tm**が演算されるため、運転者の意図をより自動操舵制御に反映することができる。また、運転者の意図がより小さいときには、より絶対値の大きい(通常時と変わらない)最終自動操舵トルク指令値Tm**が演算されるため、運転者の意図を自動操舵制御に反映することが抑制され、自動操舵制御を継続することもできる。すなわち、運転者が自動操舵制御を継続すればよいと考えているときには、自動操舵制御を継続することもできる。
【0063】
(3)操舵トルクTmや操舵トルクTmの変化量に基づいて、運転者が自動操舵制御に介入する意図を判定しようとすると、特に運転者が積極的に自動操舵制御に対して介入する意図がない場合であっても、その意図を大きく見積もる可能性がある。しかし、ステアリング角θmに対する操舵トルクTmの変化量であるインピーダンスIに基づいて、運転者の意図を判定することにより、自動操舵制御によって意図せず操舵トルクTmが大きくなるような場合であっても、運転者の意図をより的確に判定することができる。
【0064】
(4)操舵トルクTmおよびステアリング角θmに基づいてインピーダンスIを検出することにより、新たに特別な構成を設けることなく、運転者の意図を検出することができる。たとえば、運転者の意図を自動操舵制御部60に対して直接入力するような特別な構成(スイッチやセンサなど)を設けることも考えられるが、本実施形態ではこのような構成を設けることなく、従来から車両に備わっているセンサを用いて運転者の意図を検出することができる。また、特別な構成を車両内に設ける必要がないため、搭載性や車両レイアウトが悪化することもない。
【0065】
(5)運転者の意図の大きさによって自動操舵制御がオフになることがないため、運転者の意図を反映した自動操舵制御(オーバーライド制御)がほとんど終了したときであっても、運転者は再度自動操舵制御を実行するスイッチなどを操作する必要がない。すなわち、運転者の意図がより大きいときにはより絶対値の小さな最終自動操舵トルク指令値Tm**を演算され、運転者の意図がより小さいときにはより絶対値の大きな最終自動操舵トルク指令値Tm**が演算されることにより、運転者の意図を反映しつつも自動操舵制御は継続される。
【0066】
(6)ローパスフィルタ71bによってインピーダンスIの高周波成分が低減されることにより、運転者の意図をより的確に検出することができる。運転者の意図はインピーダンスIのうち低周波成分に主に含まれるため、運転者の意図を検出する際に特に必要ではない高周波成分を低減することは、インピーダンスIから運転者の意図を検出する際のノイズを低減することに繋がるからである。
【0067】
<第2実施形態>
つぎにステアリング装置の第2実施形態について説明する。ここでは、第1実施形態との違いを中心に説明する。第2実施形態は、自動操舵制御の意図と運転者の意図との間を仲介する部分を設けることにより、自動操舵制御の意図と運転者の意図とが調和した制御を実行するためのものである。
【0068】
図9に示すように、ステアリングECU40には、自動操舵補償制御部80および仲介部90が設けられている。
自動操舵補償制御部80は、自動操舵トルク指令値演算部61を通じて演算される自動操舵トルク指令値Tm*、およびステアリング角偏差演算部31により演算されるステアリング角偏差dθsを取り込む。自動操舵補償制御部80は、自動操舵トルク指令値Tm*およびステアリング角偏差dθsに基づいて、自動操舵制御の操舵特性である自動操舵特性Iaを演算する自動操舵特性演算部81を有している。自動操舵特性演算部81は、ステアリング角偏差dθsに対する自動操舵トルク指令値Tm*の微分値である自動操舵特性Ia(自動操舵のインピーダンス)を演算する。すなわち、自動操舵特性Iaは次式(4)により演算できる。
【0069】
Ia=dTm*/d(dθs) …(4)
仲介部90は、運転者意図検出部71により演算されたインピーダンスI、および自動操舵特性演算部81により演算された自動操舵特性Iaに基づいて、運転者の操舵特性と自動操舵制御の操舵特性との差である特性差異を判定する特性差異判定部91を備えている。すなわち、特性差異判定部91は、インピーダンスIと自動操舵特性Iaとの差の大きさに基づいた特性差異補償値Gs*を演算する。たとえば、運転者の意図を自動操舵制御の意図よりも上位とするならば、特性差異判定部91は、インピーダンスIと自動操舵特性Iaとの差が大きいほど、最終自動操舵トルク指令値Tm**を低減すべく、より絶対値の小さな特性差異補償値Gs*を演算する。また、運転者の意図よりも自動操舵制御の意図を上位とする状況であれば、特性差異判定部91は、インピーダンスIと自動操舵特性Iaとの差が大きいほど、最終自動操舵トルク指令値Tm**を増加させるべく、より絶対値の大きな特性差異補償値Gs*を演算する。
【0070】
自動操舵トルク指令値補償部62は、自動操舵トルク指令値Tm*に運転者意図補償値Gm*および特性差異補償値Gs*を乗算することにより、最終自動操舵トルク指令値Tm**を演算する。すなわち、第2実施形態の最終自動操舵トルク指令値Tm**は、次式(5)により演算される。
【0071】
Tm**=Tm*・Gm*・Gs* …(5)
本実施形態の効果を説明する。
(1)仲介部90によってインピーダンスIと自動操舵特性Iaとの差である特性差異に基づいた、特性差異補償値Gs*が演算される。自動操舵トルク指令値補償部62は、自動操舵トルク指令値Tm*に特性差異補償値Gs*を乗算した最終自動操舵トルク指令値Tm**を演算する。これにより、運転者の意図と自動操舵制御の意図との差が大きいときであっても、より運転者の意図と自動操舵制御の意図とを調和させることができる。
【0072】
たとえば、運転者の意図が大きい場合であっても、その運転者の意図が自動操舵制御の意図と一致しているのであれば、最終自動操舵トルク指令値Tm**を低減することなく自動操舵制御を継続することもできる。また、運転者の意図が小さい場合であっても、その運転者の意図が自動操舵制御の意図と一致していないのであれば、より運転者の意図を優先するために、より絶対値の小さな特性差異補償値Gs*が仲介部90により演算されることで、最終自動操舵トルク指令値Tm**をさらに低減することもできる。
【0073】
なお、各実施形態は次のように変更してもよい。以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・各実施形態では、視覚センサ52を用いてヨー角θvを検出したが、これに限らない。たとえば、車両に設けられるヨー角センサの情報からヨー角θvを検出してもよいし、GPSセンサの情報からヨー角θvを検出してもよい。また、ヨー角θvの代わりに、GPSセンサの情報や視覚センサ52から車両の進行方向や車両の周辺情報を検出してもよい。たとえば、道路の白線情報などが認識できない場合であっても、車両の直進方向に対して進行方向がどの程度傾いているかを検出すればよい。
【0074】
・各実施形態では、舵角センサ50はコラムシャフト11aに設けられたが、これに限らない。たとえば、ステアリングホイール10に設けられてもよいし、インターミディエイトシャフト11bに設けられてもよいし、ピニオンシャフト11cに設けられてもよい。
【0075】
・各実施形態では、ステアリング角偏差演算部31は上位ECU30に設けられたが、これに限らない。たとえば、ステアリング角偏差演算部31はステアリングECU40に設けられてもよい。
【0076】
・各実施形態では、
図5に示される4つの意図状態が想定されたが、これに限らない。たとえば、より運転者の意図を詳しく把握するために5つ以上の意図状態を想定してもよいし、おおよその運転者の意図が把握できればよいのであれば2つまたは3つの意図状態を想定してもよい。たとえば、運転者意図判定部72は、時間T0でのインピーダンスIが正であるか否かに基づいて、運転者の意図が第1の意図状態か、第1の意図状態以外の他の意図状態である第2〜第4の意図状態かを判定するようにしてもよい。また、運転者意図判定部72は、時間Tの間にインピーダンスIになるときがあり、かつインピーダンスIが負から正へと変化しているときに、第2の意図状態か、第2の意図状態以外の第1、第3、および第4の意図状態かを判定するようにしてもよい。
【0077】
・各実施形態では、
図6に概念的に示すように、運転者の意図を第1〜第4の意図状態のいずれかに分類したが、これに限らない。たとえば、ステアリングECU40は、運転者の意図が第1〜第4の意図状態に分類することが困難な場合、運転者に異常が生じたと判定して車両を路肩に止める制御に移行してもよいし、運転者意図補償制御部70に異常が生じたと判定して自動操舵制御を停止してもよい。
【0078】
・各実施形態では、
図10に示すように、自動操舵トルク指令値補償部62に外部から補償値Gtを直接入力するようにしてもよい。たとえば何らかの入力装置を設け、運転者が自らの好みに合う操舵特性に調整するために、入力装置を介して補償値Gtを予め許される範囲で調整する。
【0079】
・各実施形態では、運転者意図補償制御部70には、運転者意図判定部72および運転者意図補償部73が設けられたが、これに限らない。たとえば、
図10に示すように、運転者意図判定部72および運転者意図補償部73に代わって補償値変換部74を設けてもよい。補償値変換部74は、入力されるインピーダンスI(またはインピーダンスIの変化量など)に応じた補償値を直接演算することにより、その補償値を運転者意図補償値Gm*として自動操舵トルク指令値補償部62に出力する。この場合、補償値変換部74は、運転者意図判定部および補償部である。
【0080】
・各実施形態では、自動操舵トルク指令値補償部62において、自動操舵トルク指令値Tm*に運転者意図補償値Gm*などの補償値を乗算することにより、最終自動操舵トルク指令値Tm**を演算したが、これに限らない。たとえば、自動操舵トルク指令値補償部62は、自動操舵トルク指令値Tm*に運転者意図補償値Gm*を加算または減算することにより、最終自動操舵トルク指令値Tm**を演算してもよい。
【0081】
・各実施形態では、
図7に示される判定手順に沿って運転者の意図を第1〜第4の意図状態に分類したが、これに限らない。たとえば、
図11に示される判定手順に沿って運転者の意図を第1〜第4の意図状態に分類してもよい。すなわち、運転者意図判定部72は、時間T0のときにインピーダンスIが予め定められた閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS21)。つぎに、運転者意図判定部72は、時間T0のときにインピーダンスIが予め定められた閾値よりも大きい場合(ステップS21のYES)、第1の状態である旨判定する(ステップS22)。運転者意図判定部72は、時間T0のときにインピーダンスIが予め定められた閾値よりも小さい場合(ステップS21のNO)、時間Tの間にインピーダンスIが予め定められた閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS23)。運転者意図判定部72は、時間Tの間にインピーダンスIが予め定められた閾値よりも大きい場合(ステップS23のYES)、第2の意図状態である旨判定する(ステップS24)。運転者意図判定部72は、時間Tの間にインピーダンスIが予め定められた閾値よりも小さい場合(ステップS23のNO)、時間T0で変化量dI/dtが正であるか否かを判定する(ステップS25)。時間T0で変化量dI/dtが正である場合(ステップS25のYES)、第3の意図状態である旨判定する(ステップS26)。時間T0で変化量dI/dtが正でない場合(ステップS25のNO)、第4の意図状態である旨判定する(ステップS27)。
【0082】
また、
図7および
図11のような判定手順ではなく、クラスタ分析によってインピーダンスIの時間変化と、予め定められた第1〜第4の意図状態との類似度に基づいて、運転者の意図がいずれの意図状態にあるかを判定してもよい。
【0083】
・各実施形態では、第2の意図状態にある場合は第3の意図状態よりも運転者の意図が強いと判定していたが(
図5参照)、これに限らない。すなわち、第2の意図状態と第3の意図状態を同程度の運転者の意図の強さと判定してもよい。
【0084】
・各実施形態のステアリング装置は、どのようなタイプのステアリング装置であってもよい。たとえば、モータ20の回転トルクをステアリングシャフト11に付与するタイプのステアリング装置であってもよいし、モータ20がラックシャフト12と同軸に組み込まれるタイプのステアリング装置であってもよい。また、ステアリングホイール10とラックシャフト12とが機械的に分離されるステアバイワイヤ(SBW)であってもよい。