(54)【発明の名称】複合材料の解析用モデルの作成方法、複合材料の解析用モデルの作成用コンピュータプログラム、複合材料の解析方法及び複合材料の解析用コンピュータプログラム
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、低燃費タイヤの開発を加速するためには、タイヤ変形に伴うエネルギーロス(ヒステリシス)とタイヤナノ構造との関係を明らかにすることが有効である。特に、低燃費タイヤの材料開発では、ポリマーとの相互作用が異なる複数のフィラーによるタイヤ補強メカニズムの解明が有効であり、フィラー充填によるタイヤ補強メカニズムの解析が重要である。
【0005】
しかしながら、従来の複合材料のシミュレーション方法では、カーボンブラック及びシリカなどのポリマーとの相互作用が異なるフィラー充填によるタイヤ補強メカニズムの再現ができる一方、フィラー周囲に存在するポリマーなどの粒子の結合密度が材料特性に及ぼす影響を解析することは困難であった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、フィラー周囲の粒子の結合密度が材料特性に及ぼす影響を解析可能な複合材料の解析用モデルの作成方法、複合材料の解析用モデルの作成用コンピュータプログラム、複合材料の解析方法及び複合材料の解析用コンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の複合材料の解析用モデルの作成方法は、コンピュータを用いた分子動力学法による複合材料の解析用モデルの作成方法であって、複数のポリマー粒子によってポリマーをモデル化した複数のポリマーモデル及びフィラーをモデル化した複数のフィラーモデルを含む複合材料モデルを作成する第1ステップと、前記フィラーモデルの周囲に結合作成領域を設定する第2ステップと、前記結合作成領域内に複数の反応粒子を作成する第3ステップと、前記反応粒子を介して粒子間結合を作成して複合材料の解析用モデルを作成する第4ステップとを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の複合材料の解析用モデルの作成方法によれば、フィラーモデルの周囲に設定した結合作成領域内に、反応粒子によって粒子間結合が形成されるので、フィラーモデルの周囲の結合作成領域内の粒子の結合密度が、フィラーモデルから離れた結合作成領域外に対して相対的に増大する。これにより、複合材料の解析用モデルの作成方法は、フィラーモデルの周囲の粒子の結合密度を任意に調整することができるので、フィラー周囲の粒子の結合密度が材料特性に及ぼす影響を解析可能な複合材料の解析用モデルを作成できる。
【0009】
本発明の複合材料の解析用モデルの作成方法においては、さらに、前記ポリマーモデルを架橋させるステップを含むことが好ましい。この方法により、複合材料の解析用モデルの作成方法は、架橋反応を介してポリマーモデルを予め架橋した状態でフィラーモデルの周囲に粒子間結合を作成できるので、フィラー周囲の粒子の結合密度が材料特性に及ぼす影響をより正確に解析可能な複合材料の解析用モデルを作成できる。
【0010】
本発明の複合材料の解析用モデルの作成方法においては、架橋解析を実行して前記粒子間結合を作成することが好ましい。この方法により、複合材料の解析用モデルの作成方法は、架橋解析により任意の粒子間結合を形成できるので、粒子間結合を効率良く作成することが可能となる。
【0011】
本発明の複合材料の解析用モデルの作成方法においては、前記反応粒子が、前記ポリマー粒子であることが好ましい。この方法により、複合材料の解析用モデルの作成方法は、ポリマー粒子を反応粒子として粒子間結合させることができるので、フィラー周囲に存在するポリマー粒子の結合密度が複合材料の材料特性に及ぼす影響を正確に解析可能な解析用モデルを作成できる。
【0012】
本発明の複合材料の解析用モデルの作成方法においては、前記反応粒子が、前記結合作成領域内に追加した追加粒子であることが好ましい。この方法により、複合材料の解析用モデルの作成方法は、フィラー周囲に任意の追加粒子を反応粒子として追加して粒子間結合を作成できるので、フィラー周囲の粒子の結合密度が材料特性に及ぼす影響をより高い精度で解析可能な解析用モデルを作成できる。
【0013】
本発明の複合材料の解析用モデルの作成用コンピュータプログラムは、上記複合材料の解析用モデルの作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0014】
本発明の複合材料の解析用モデルの作成用コンピュータプログラムによれば、フィラーモデルの周囲に設定した結合作成領域内に、反応粒子によって粒子間結合が形成されるので、フィラーモデルの周囲の結合作成領域内の粒子の結合密度が、フィラーモデルから離れた結合作成領域外に対して相対的に増大する。これにより、複合材料の解析用モデルの作成方法は、フィラーモデルの周囲の粒子の結合密度を任意に調整することができるので、フィラー周囲の粒子の結合密度が材料特性に及ぼす影響を解析可能な複合材料の解析用モデルの作成用コンピュータプログラムを実現できる。
【0015】
本発明の複合材料の解析方法は、上記複合材料の解析用モデルの作成方法で作成した複合材料の解析用モデルを用いて分子動力学法による運動解析を実行して物理量を取得することを特徴とする。
【0016】
本発明の複合材料の解析方法によれば、フィラーモデルの周囲の結合作成領域内の粒子の結合密度が、フィラーモデルから離れた結合作成領域外に対して相対的に増大した解析用モデルを用いて解析できる。これにより、複合材料の解析方法は、フィラーモデルの周囲の粒子の結合密度を任意に調整して解析できるので、フィラー周囲の粒子の結合密度が材料特性に及ぼす影響が反映された物理量の取得が可能となる。
【0017】
本発明の複合材料の解析方法においては、前記運動解析が、変形解析であることが好ましい。この方法により、複合材料の解析方法は、複合材料のコンパウンドの力学特性を解析可能となる。
【0018】
本発明の複合材料の解析用コンピュータプログラムは、上記複合材料の解析方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0019】
本発明の複合材料の解析用コンピュータプログラムによれば、フィラーモデルの周囲に設定した結合作成領域内に、反応粒子によって粒子間結合が形成されるので、フィラーモデルの周囲の結合作成領域内の粒子の結合密度が、フィラーモデルから離れた結合作成領域外に対して相対的に増大する。これにより、複合材料の解析方法は、フィラーモデルの周囲の粒子の結合密度を任意に調整することができるので、フィラー周囲の粒子の結合密度が材料特性に及ぼす影響が反映された物理量の取得が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フィラー周囲の粒子の結合密度が材料特性に及ぼす影響を解析可能な複合材料の解析用モデルの作成方法、複合材料の解析用モデルの作成用コンピュータプログラム、複合材料の解析方法及び複合材料の解析用コンピュータプログラムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の概略を示すフロー図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法で作成される解析用モデルの一例を示す概念図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の一例を示す説明図である。
【
図5A】
図5Aは、第1の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の一例を示す説明図である。
【
図5B】
図5Bは、第1の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の一例を示す説明図である。
【
図6A】
図6Aは、第1の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の一例を示す説明図である。
【
図6B】
図6Bは、第1の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の一例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の概略を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、第2の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の一例を示す説明図である。
【
図10A】
図10Aは、第2の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の一例を示す説明図である。
【
図10B】
図10Bは、第2の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の一例を示す説明図である。
【
図11A】
図11Aは、第2の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の一例を示す説明図である。
【
図11B】
図11Bは、第2の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の一例を示す説明図である。
【
図12A】
図12Aは、本発明の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法におけるポリマーモデルの結合密度の説明図である。
【
図12B】
図12Bは、本発明の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法におけるポリマーモデルの結合密度の説明図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法及び複合材料の解析方法を実行する解析装置の機能ブロック図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施例に係る複合材料の解析用モデルの応力歪曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の各実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の概略を示すフロー図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る解析用モデルの作成方法は、コンピュータを用いて分子動力学法による複合材料の解析用モデルの作成方法である。この複合材料の解析用モデルの作成方法は、複数のポリマー粒子によってポリマーをモデル化した複数のポリマーモデル及びフィラーをモデル化した複数のフィラーモデルを含む複合材料モデルを作成する第1ステップST11と、フィラーモデルの周囲に結合作成領域を設定する第2ステップST12と、結合作成領域内に複数の反応粒子を作成する第3ステップST13と、反応粒子を介して粒子間結合を作成して複合材料の解析用モデルを作成する第4ステップST14とを含む。以下、本実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法について詳細に説明する。
【0024】
図2は、本実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法で作成される解析用モデルの一例を示す概念図である。
図2に示すように、本実施の形態に係る複合材料の解析用モデル1は、例えば、一辺の長さが距離Lの略立方体形状の仮想空間であるモデル作成領域A内でモデル化される。この解析用モデル1は、複数のフィラー粒子11a,12aがモデル化されてなる一対の第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12と、複数のポリマー粒子21a及び結合鎖21bがモデル化されてなる複数のポリマーモデル21とを有する。なお、本実施の形態では、解析対象となる複合材料がフィラー及び高分子材料であるポリマーを含有する例について説明するが、本発明は、2種類の以上の物質を含有する複合材料にも適用可能である。また、
図2に示す例では、解析用モデル1が、2つの第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12と、複数のポリマーモデル21とを有する例について説明したが、3つ以上のフィラーモデルを配置してもよい。また、
図2に示す例では、解析用モデル1が、4つのポリマーモデル21を有する例を示しているが、ポリマーモデル21は、複数のポリマーモデル21がモデル作成領域A内の全域に亘って存在している。さらに、
図2に示す例では、モデル作成領域Aが、略立方体形状の仮想空間である例について示しているが、球状、楕円状、直方体形状、多面体形状など任意の形状であってもよい。
【0025】
第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12は、複数のフィラー粒子11a,12aがそれぞれ略球状体に集合した状態でモデル化される。また、第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12は、互いに所定間隔をとって離れた状態で配置されている。なお、第1フィラーモデル11と第2フィラーモデル12とは、相互に凝集した状態で外縁部が共有結合などによって相互に連結されていてもよい。
【0026】
フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、シリカ、及びアルミナなどが含まれる。フィラー粒子11a,12aは、複数のフィラーの原子が集合されてモデル化される。また、フィラー粒子11a,12aは、複数のフィラー粒子11a,12aが集合してフィラー粒子群を構成する。フィラー粒子11a,12aは、複数のフィラー粒子11a,12a間の結合鎖(不図示)によって相対位置が特定されている。この結合鎖(不図示)は、フィラー粒子11a,12a間の結合距離である平衡長とばね定数とが定義されたバネとしての機能を有し、各フィラー粒子11a,12a間を拘束している。結合鎖(不図示)は、フィラー粒子11a,12aの相対位置及び捻り、曲げなどによって力が発生するポテンシャルが定義されているボンドである。この第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12は、フィラーを分子動力学で取り扱うための数値データ(フィラー粒子11a,12aの質量、体積、直径及び初期座標などを含む)である。第1フィラーモデル11及び第2フィラーモデル12の数値データは、コンピュータに入力される。
【0027】
ポリマーとしては、例えば、ゴム、樹脂、及びエラストマーなどが含まれる。ポリマー粒子21aは、複数のポリマーの原子が集合されてモデル化される。また、ポリマー粒子21aは、複数のポリマー粒子21aが集合してポリマー粒子群を構成する。ポリマーには、フィラーとの親和性を高める変性剤が必要に応じて配合される。この変性剤としては、例えば、水酸基、カルボニル基、及び原子団の官能基などが含まれる。ポリマーモデル21は、複数のポリマー原子及び複数のポリマー原子の集合体であるポリマー粒子21aがモデル作成領域A内に所定密度で充填されてモデル化される。ポリマー粒子21aは、複数のポリマー粒子21a間の結合鎖21bによって結合されて相対位置が特定されている。この結合鎖21bは、ポリマー粒子21a間の結合距離である平衡長とばね定数とが定義されたバネとしての機能を有し、各ポリマー粒子21a間を拘束している。結合鎖21bは、ポリマー粒子21aの相対位置及び捻り、曲げなどによって力が発生するポテンシャルが定義されているボンドである。また、結合鎖21bは、複数のポリマー粒子21aが直列状に連結されてなるポリマーモデル21間にも架橋結合(不図示)として結合されている。このポリマーモデル21は、ポリマーを分子動力学で取り扱うための数値データ(ポリマー粒子21aの質量、体積、直径及び初期座標などを含む)である。ポリマーモデル21の数値データは、コンピュータに入力される。
【0028】
次に、
図3〜
図6Bを参照して、本実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法について詳細に説明する。
図3〜
図6Bは、本実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の一例を示す説明図である。なお、
図3〜
図6Bにおいては、
図2に示した第1フィラーモデル11の近傍の領域を拡大して示している。
【0029】
第1ステップST11では、
図3に示すように、複数のフィラー粒子11aが集合してモデル化された第1フィラーモデル11及び複数のポリマー粒子21aが結合鎖21bを介して連結されてモデル化されたポリマーモデル21を含む複合材料モデルを作成する。
図3に示す例では、第1フィラーモデル11から離れた領域に2つのポリマーモデル21Aが配置され、第1フィラーモデル11の近傍の領域に2つのポリマーモデル21Bが配置される。
【0030】
次に、第2ステップST12では、
図4に示すように、第1フィラーモデル11の周囲の領域に結合作成領域A11を設定する。これにより、
図4に示す例では、第1フィラーモデル11から離れた領域に配置された2つのポリマーモデル21Aが結合作成領域A11の範囲外となり、第1フィラーモデル11の近傍に配置された2つのポリマーモデル21Bが結合作成領域A11の範囲内となる。
【0031】
結合作成領域A11は、第1フィラーモデル11の中心から所定距離内の領域に設定してもよく、第1フィラーモデル11の表面から所定距離内(例えば、第1フィラーモデル11の表面のフィラー粒子11aとポリマーモデル21Bとの間の最短距離)内の領域に設定してもよい。結合作成領域A11は、例えば、第1フィラーモデル11の近傍の領域に設定される。また、結合作成領域A11は、複合材料の解析用モデル1を用いた解析精度を向上する観点から、第1フィラーモデル11とポリマーモデル21との間の相互作用の影響範囲内に設定することが好ましい。
【0032】
第1フィラーモデル11とポリマーモデル21との間の相互作用は、フィラー粒子間、ポリマー粒子間及びフィラー粒子11aとポリマー粒子21aとの間に設定されるものであり、必ずしも全てのフィラー粒子11a及びポリマー粒子21aに設定する必要はない。第1フィラーモデル11とポリマーモデル21との間の相互作用としては、例えば、分子間力及び水素結合などの引力などの化学的な相互作用、及び共有結合などの物理的な相互作用が挙げられる。また、ポリマーモデル21が複数の種類のポリマー粒子21aで構成されている場合には、複数の種類のポリマー粒子21aにそれぞれ相互作用を設定してもよい。また、複数の種類の各ポリマー粒子21aと第1フィラーモデル11との相互作用は同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、ポリマー粒子Aとフィラー粒子の相互作用とポリマー粒子Bとフィラー粒子の相互作用とは異なる相互作用を設定してもよい。
【0033】
次に、第3ステップST13では、
図5Aに示すように、結合作成領域A11内に複数の反応粒子21cを作成する。
図5Aに示す例では、結合作成領域A11内に配置された2つのポリマーモデル21Bの一部のポリマー粒子21aを反応粒子21cに置換して作成している。なお、反応粒子21cとしては、結合作成領域A11内に配置された全てのポリマー粒子21aを設定してもよい。このように、ポリマー粒子21aを反応粒子21cに置換することにより、ポリマー粒子21aを反応粒子21cとして粒子間結合21dさせることができるので、フィラー周囲に存在するポリマー粒子の結合密度が複合材料の材料特性に及ぼす影響を正確に解析可能な解析用モデル1を作成できる。
【0034】
また、反応粒子21cは、
図5Bに示すように、結合作成領域A11内のポリマーモデル21Bに属しない別のポリマー粒子21aなどを追加粒子として配置して作成してもよい。また、追加粒子は、結合作成領域A11の全体に均一に追加してもよく、結合作成領域A11内の所定領域に部分的に追加してもよい。追加粒子としては、例えば、ポリマー粒子21a及び粒子間結合21dを作成可能なその他の粒子が挙げられる。このように、追加粒子を反応粒子21cとすることにより、フィラー周囲の所望の領域に任意の追加粒子を反応粒子21cとして追加して粒子間結合21dを作成できるので、フィラー周囲の粒子の結合密度が材料特性に及ぼす影響をより高い精度で解析可能な解析用モデルを作成できる。
【0035】
次に、第4ステップST14では、
図6A及び
図6Bに示すように、反応粒子21cと反応粒子21cの周囲に存在する粒子(例えば、ポリマー粒子21a)との間に粒子間結合21dを作成して複合材料の解析用モデル1を作成する。ここでは、隣接する反応粒子21cとの間に粒子間結合21dを作成してもよく、反応粒子21cと反応粒子21cの近傍に存在するポリマー粒子21aとの間に粒子間結合21dを形成してもよい。第4ステップST14で作成する粒子間結合21dは、架橋解析で作成することが好ましい。これにより、架橋解析により反応粒子21cと反応粒子21cの周囲に存在する粒子との間に任意の粒子間結合21dを形成できるので、効率的に粒子間結合21dを作成することが可能となる。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1フィラーモデル11の周囲に設定した結合作成領域A11内に、反応粒子21cによって粒子間結合21dが形成されるので、第1フィラーモデル11の周囲の結合作成領域A11内の粒子の結合密度が、第1フィラーモデル11から離れた結合作成領域A11外に対して相対的に増大する。これにより、複合材料の解析用モデル1の作成方法は、第1フィラーモデル11の周囲の粒子の結合密度を任意に調整することができるので、フィラー周囲の粒子の結合密度が材料特性に及ぼす影響を解析可能な複合材料の解析用モデル1を作成できる。
【0037】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下においては、上述した第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。また、上述した第1の実施の形態と共通する構成要素には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の概略を示すフロー図である。
図7に示すように、本実施の形態に係る解析用モデルの作成方法は、複数のポリマー粒子によってポリマーをモデル化した複数のポリマーモデル及びフィラーをモデル化した複数のフィラーモデルを作成する第1ステップST21と、ポリマーモデルを架橋する第2ステップST22と、フィラーモデルの周囲に結合作成領域を設定する第3ステップST23と、結合作成領域内に複数の反応粒子を作成する第4ステップST24と、反応粒子間に粒子間結合を作成して複合材料の解析用モデルを作成する第5ステップST25とを含む。
【0039】
次に、
図8〜
図11Bを参照して、本実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法について詳細に説明する。
図8〜
図11Bは、本実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法の一例を示す説明図である。なお、
図8〜
図11Bにおいては、
図2に示した第1フィラーモデル11の近傍の領域を拡大して示している。
【0040】
第1ステップST21では、上述した第1の実施の形態と同様に、第1フィラーモデル11及びポリマーモデル21を作成する。
【0041】
次に、第2ステップST22では、作成したポリマーモデル21に架橋解析などにより架橋結合21eを作成する。
図8に示す例では、第1フィラーモデル11から離れた領域の一対のポリマーモデル21Aの間に2つの架橋結合21eが形成され、第1フィラーモデル11の近傍の領域の一対のポリマーモデル21Bの間に2つの架橋結合21eが形成される。
【0042】
次に、第3ステップST23では、
図9に示すように、上述した第1の実施の形態と同様に、第1フィラーモデル11の周囲の領域に結合作成領域A11を設定する。
【0043】
次に、第4ステップST24では、
図10A及び
図10Bに示すように、上述した第1の実施の形態と同様に、結合作成領域A11内に複数の反応粒子21cを作成する。
【0044】
次に、第5ステップST25では、
図11A及び
図11Bに示すように、上述した第1の実施の形態と同様に、反応粒子21cと反応粒子21cの周囲に存在する粒子間に粒子間結合21dを作成して複合材料の解析用モデル1を作成する。これにより、ポリマーモデル21A,21Bがそれぞれ架橋結合21eによって連結された状態から、第1フィラーモデル11の近傍の結合作成領域A11内のポリマーモデル21Bが粒子間結合21dによって更に結合する。
【0045】
なお、上記実施の形態においては、解析用モデル1の作成直後に架橋解析を実行して架橋結合21eを作成する例について説明したが、架橋結合21eは、粒子間結合21dを作成する前であれば、必ずしも解析用モデル1の作成直後に作成する必要はない。
【0046】
図12A及び
図12Bは、本実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法におけるポリマーモデルの結合密度の説明図である。本実施の形態では、
図12Aに示すように、第1フィラーモデル11及びポリマーモデル21がモデル作成領域A内に作成された後、ポリマーモデル21が架橋結合21eを介して略均一な結合密度で連結される。そして、
図12Bに示すように、第1フィラーモデル11の周囲に設定された結合作成領域A11内のポリマーモデル21(21B)が粒子間結合21dを介して更に連結されるので、結合密度が増大する。これにより、複合材料の解析用モデル1の作成方法は、モデル作成領域A内の結合作成領域A11外に対して、第1フィラーモデル11の周囲の結合作成領域A11内の結合密度を相対的に向上させた材料特性を解析可能な解析用モデル1を作成できる。
【0047】
以上説明したように、上記実施の形態によれば、架橋結合21eを介してポリマーモデル21を予め架橋した状態で第1フィラーモデル11の周囲に粒子間結合21dを作成できるので、フィラー周囲の粒子の結合密度が材料特性に及ぼす影響をより正確に解析可能な複合材料の解析用モデルを作成できる。
【0048】
次に、本実施の形態に係る複合材料の解析方法について説明する。本実施の形態に係る複合材料の解析方法は、上記各実施の形態に係る複合材料の解析用モデル1の作成方法で作成した複合材料の解析用モデルを用いて分子動力学法による運動解析を実行して物理量を取得するものである。運動解析としては、例えば、伸張解析、せん断解析などの変形解析及び緩和解析などが挙げられる。これらの運動解析で取得する物理量は、運動解析の結果得られた変位などの値を用いてもよく、所定の演算処理を実行した歪みであってもよい。これらの中でも、運動解析としては、複合材料のコンパウンドの力学特性を解析可能となる観点から、変形解析が好ましい。
【0049】
このように、本実施の形態に係る複合材料の解析方法によれば、第1フィラーモデル11の周囲に設定した結合作成領域A11内に、反応粒子21cによって粒子間結合21dが形成された複合材料の解析用モデル1を用いる。これにより、第1フィラーモデル11の周囲の結合作成領域A11内の粒子の結合密度が、第1フィラーモデル11から離れた結合作成領域A11外に対して相対的に増大した状態で解析できるので、第1フィラーモデル11の周囲の粒子の結合密度を任意に調整して解析できる。この結果、フィラー周囲の粒子の結合密度が材料特性に及ぼす影響が反映された物理量の取得が可能となる。
【0050】
次に、本実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法、複合材料の解析用モデルの作成用コンピュータプログラム、複合材料の解析方法及び複合材料の解析用コンピュータプログラムについてより詳細に説明する。
図13は、本実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法及び複合材料の解析方法を実行する解析装置の機能ブロック図である。
【0051】
図13に示すように、本実施の形態に係る複合材料の解析方法は、処理部52と記憶部54とを含むコンピュータである解析装置50が実現する。この解析装置50は、入力手段53を備えた入出力装置51と電気的に接続されている。入力手段53は、複合材料の解析用モデルの作成対象であるポリマー及びフィラーの各種物性値、ポリマー及びフィラーを含有する複合材料を用いた伸張試験結果の実測結果、及び解析における境界条件などを処理部52又は記憶部54へ入力する。入力手段53としては、例えば、キーボード、マウスなどの入力デバイスが用いられる。
【0052】
処理部52は、例えば、中央演算装置(CPU:Central Processing Unit)及びメモリを含む。処理部52は、各種処理を実行する際にコンピュータプログラムを記憶部54から読み込んでメモリに展開する。メモリに展開されたコンピュータプログラムは、各種処理を実行する。例えば、処理部52は、記憶部54から予め記憶された各種処理に係るデータを必要に応じて適宜メモリ上の自身に割り当てられた領域に展開し、展開したデータに基づいて複合材料の解析用モデルの作成及び複合材料の解析用モデルを用いた複合材料の解析に関する各種処理を実行する。
【0053】
処理部52は、モデル作成部52aと、条件設定部52bと、解析部52cとを含む。モデル作成部52aは、予め記憶部54に記憶されたデータに基づき、分子動力学法により複合材料の解析用モデル1を作成する際のフィラー及びポリマーなどの複合材料の粒子数、分子数、分子量、分子鎖長、分子鎖数、分岐、形状、大きさ、反応時間、反応条件及び作成する解析用モデルに含まれる分子数である目標分子数などの構成要素の配置、設定及び計算ステップ数などの粗視化モデルの設定、分子鎖間などの相互作用などの各種計算パラメーターの初期条件の設定を行う。また、モデル作成部52aは、第1フィラーモデル11の周囲の結合作成領域A11の設定、ポリマー粒子21aの置換及び追加粒子の追加などの反応粒子21cの作成、粒子間結合21dの作成、ポリマーモデル21の架橋による架橋結合21eの作成などの架橋解析などを実行する。
【0054】
フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子21a間の相互作用を調整する計算パラメーターとしては、下記式(1)で表されるレナード・ジョーンズポテンシャルのσ、εを用い、これらが調整される。ポテンシャルを計算する上限距離(カットオフ距離)を大きくすることで、遠距離まで働いた引力、斥力を調整できる。なお、フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子21a間の相互作用が一定値になるまで順次、フィラー粒子11a間の相互作用及びポリマー粒子21a間の相互作用のパラメーターを小さくすることが好ましい。レナード・ジョーンズポテンシャルのσ、εを大きな値から徐々に本来の値に近づけることにより、分子を不自然な状態に導かない穏やかな速度で粒子の接近を行うことができる。また、カットオフ距離も徐々に小さくすることにより、適正な範囲で引力、斥力を調整できる。
【0056】
条件設定部52bは、変温解析及び変圧解析などの数値解析及び伸張解析、せん断解析などの変形解析及び緩和解析などの運動解析などの各種解析条件を設定する。
【0057】
解析部52cは、条件設定部52bによって設定された解析条件に基づいて複合材料の解析用モデル1の各種数値解析を実行する。また、解析部52は、モデル作成部52aによって作成された複合材料の解析用モデル1を用いて分子動力学法による運動解析を実行して物理量を取得する。ここでは、解析部52cは、運動解析として、伸張解析、せん断解析などの変形解析及び緩和解析などを実行する。また、解析部52cは、運動解析の結果得られた変位などの値又は得られた値に所定の演算処理を実行した歪みなどの物理量を取得する。
【0058】
記憶部54は、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ及びCD−ROMなどの読み出しのみが可能な記録媒体である不揮発性のメモリ、並びに、RAM(Random Access Memory)のような読み出し及び書き込みが可能な記録媒体である揮発性のメモリが適宜組み合わせられる。
【0059】
記憶部54には、入力手段53を介して解析対象となる複合材料の解析用モデルを作成するためのデータであるゴムカーボンブラック、シリカ、及びアルミナなどのフィラーのデータ、ゴム、樹脂、及びエラストマーなどのポリマーのデータ、予め設定した物理量履歴である応力歪み曲線及び本実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法、複合材料の解析方法を実現するためのコンピュータプログラムなどが格納されている。このコンピュータプログラムは、コンピュータ又はコンピュータシステムに既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、本実施の形態に係る複合材料の解析方法を実現できるものであってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)及び周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
【0060】
表示手段55は、例えば、液晶表示装置等の表示用デバイスである。なお、記憶部54は、データベースサーバなどの他の装置内にあってもよい。例えば、解析装置50は、入出力装置51を備えた端末装置から通信により処理部52及び記憶部54にアクセスするものであってもよい。
【0061】
次に、再び
図1を参照して、本実施の形態に係る複合材料の解析用モデルの作成方法についてより詳細に説明する。
【0062】
図1に示すように、モデル作成部52aが、所定のモデル作成領域A内にポリマー粒子21a及び結合鎖21bを含む未架橋のポリマーモデル21を作成すると共にフィラー粒子11aを含む第1フィラーモデル11を有する複合材料モデルを作成する(ステップST11)。未架橋のポリマーモデル21は、
図2に示したように、複数のポリマー粒子21aが結合鎖21bによって連結されてなるものである。ここでは、モデル作成部52aは、必要に応じて複数の第1フィラーモデル11及び複数のポリマーモデル21を作成する。次に、モデル作成部52aは、作成した第1フィラーモデル11中に未架橋のポリマーモデル21を配置する。ここでは、モデル作成部52aは、初期条件の設定の後、平衡化計算を行う。平衡化計算では、所定の温度、密度及び圧力で、初期設定後の各種構成要素が平衡状態に到達する所定の時間、分子動力学計算を行う。そして、モデル作成部52aは、初期条件の設定及び平衡化の計算処理後に、計算領域内に設定した複合材料の解析用モデルを作成するモデル作成領域A内に、ポリマーモデル21及び第1フィラーモデル11を作成する。また、モデル作成部52aは、必要に応じてポリマーにフィラーとの親和性を高める水酸基、カルボニル基、及び原子団の官能基などの変性剤を配合してもよい。また、モデル作成部52aは、作成したポリマーモデル21に架橋解析により架橋結合21eを導入してもよい。
【0063】
次に、モデル作成部52aは、第1フィラーモデル11の周囲に結合作成領域A11を設定する(ステップST12)。ここでは、モデル作成部52aは、第1フィラーモデル11の中心からの距離に基づいて結合作成領域A11を設定してもよく、第1フィラーモデル11の表面からの距離に基づいて結合作成領域A11を設定してもよく、第1フィラーモデル11とポリマーモデル21の相互作用の影響範囲に結合作成領域A11を設定してもよい。
【0064】
次に、モデル作成部52aは、結合作成領域A11内に複数の反応粒子21cを作成する(ステップST13)。ここでは、モデル作成部52aは、結合作成領域A11内のポリマー粒子21aを反応粒子21cに置換してもよく、結合作成領域A11内にポリマー粒子21aなどの他の粒子を反応粒子21cとして導入してもよい。
【0065】
次に、モデル作成部52aは、結合作成領域A11内に反応粒子21cを介して粒子間結合21dを作成して複合材料の解析用モデル1を作成する(ステップST14)。ここでは、モデル作成部52aは、隣接する反応粒子21c間に粒子間結合21dを作成してもよく、反応粒子21cと反応粒子21cの近傍に存在するポリマー粒子21aとの間に粒子間結合21dを形成してもよい。
【0066】
次に、条件設定部52bが、モデル作成部52aで作成した複合材料の解析用モデル1を用いた分子動力学法による架橋解析、数値解析及び運動解析(シミュレーション)を実行するための各種条件を設定する。条件設定部52bは、入力手段53からの入力及び記憶部54に記憶されている情報に基づいて各種条件を設定する。各種条件としては、解析を実行する第1フィラーモデル11の位置及び数、フィラー原子、フィラー原子団、フィラー粒子11a及びフィラー粒子群の位置及び数、フィラー粒子番号、ポリマーの分子鎖の位置及び数、ポリマー原子、ポリマー原子団、ポリマー粒子21a及びポリマー粒子群の位置及び数、ポリマー粒子番号、結合鎖21bの位置及び数、結合鎖21bの番号、予め設定した物理量履歴である応力歪み曲線及び条件を変更しない固定値などが含まれる。
【0067】
次に、解析部52cが、解析用モデル1に相互作用を設定して変温解析、変圧解析などの各種数値解析を実施する。解析部52cは、必要に応じて、例えば、フィラー粒子11a間、ポリマー粒子21a間、フィラー粒子11aとポリマー粒子21aとの間の相互作用及びフィラー粒子11aとポリマー粒子21aとが結合鎖21bで結合した状態の相互作用などを設定する。次に、解析部52cは、複合材料の解析用モデル1を用いた分子動力学法による緩和解析、伸張解析、及びせん断解析などの変形解析などの各種運動解析を実行する。また、解析部52cは、数値解析による運動解析の結果得られる運動変位及び公称応力又は運動変位を演算して得られる公称歪みなどの各種物理量を取得する。このような数値解析及び運動解析により、解析時間毎に変化する解析用モデル全体のポリマー分子の結合長及びポリマー粒子速度、架橋点間と自由末端の速度又は結合長、配向などの物理量などのセグメントの状態変化を表す数値と歪みとの関係、解析時間毎に変化するポリマー分子の結合長及びポリマー粒子速度などのセグメントの状態変化を表す数値と圧力又は解析時間との関係、及び解析時間毎に変化するポリマー分子の結合長及びポリマー粒子速度などのセグメントの状態変化を表す数値と温度又は解析時間との関係などを評価できるので、ポリマー分子の局所的な分子状態変化のより詳細な解析が可能となる。次に、解析部52cは、解析した複合材料の解析結果を記憶部54に格納する。
【0068】
(実施例)
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0069】
本発明者らは、第1フィラーモデル11の周囲の結合作成領域A11内の粒子間結合21dを高密度に作成させた第1解析用モデルと、第1解析用モデルに対して粒子間結合21dを相対的に低密度に作成させた第2解析用モデルと、結合作成領域A11内に粒子間結合21dを作成しなかった第3解析用モデルとを作成し、作成した第1解析用モデル、第2解析用モデル及び第3解析用モデルの力学特性を調べた。以下、本発明者らが調べた内容について説明する。
【0070】
図14は、本発明の実施例に係る複合材料の解析用モデルの応力歪曲線を示す図である。
図14に示すように、第1解析用モデル、第2解析用モデル及び第3解析用モデルの応力歪曲線を対比すると、応力の増大に伴う歪みの増大が、第1解析用モデル(実線L1参照)、第2解析用モデル(一点鎖線L2参照)、第3解析用モデル(点線L3)の順に小さくなることが分かる。この結果は、第1フィラーモデル11の周囲のポリマー粒子21aの結合密度が、第3解析用モデルに対して第2解析用モデルの方が大きく、第2解析用モデルに対して第1解析用モデルの方が大きかったために、結合密度が高くなるにつれて、応力の増大に対して第1フィラーモデル11の周囲のポリマーモデル21が強く影響して歪みが増大したためと考えられる。
【0071】
このように、上述した実施例によれば、第1フィラーモデル11の周囲のポリマーモデル21の結合密度を変化させることにより、変形解析の結果が変化することが分かるので、フィラー周囲の粒子の結合密度が材料特性に及ぼす影響を解析可能となることが分かる。