(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を図面に示す形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら形態に限定されるものではない。なお、図面に表れる各部材は理解し易さの観点から大きさや形状を誇張、変形して表すことがある。また見易さのため繰り返しとなる符号は省略することがある。
【0015】
図1は1つの形態を説明する図で、通電加熱パネル10を平面視した概念図である。また、
図2は
図1にIIで示した部位の拡大図で、第一発熱導体部22の一部を拡大して表した図である。また、
図3は、
図1にIIIで示した部位の拡大で、第二発熱導体部23の一部を拡大して表した図である。
図4は
図2に示したIV−IV線による断面図であり、通電加熱パネル10の厚さ方向における層構成を説明する図である。
【0016】
このような通電加熱パネル10は例えば自動車のフロントガラスとして自動車に備えられる。その他、いわゆるガラス窓或いはガラス扉等の透明な開口部を有するところに透明開口部材(所謂窓)として用いることができ、これには例えば上記自動車をはじめ、鉄道車輛、航空機、及び船舶、宇宙船等の乗り物の窓、扉等の開口部、並びに、各種建物の窓、扉等の開口部を挙げることができる。又、交通信号機、電子看板及び電子広告の窓材(表面保護板)、自動車の前照燈等の各種乗物の外部に備える照明裝置の窓材(表面保護板)等にも用いることができる。
【0017】
図1、
図4よりわかるように、通電加熱パネル10は全体として板状であり、複数の層が厚さ方向(
図1〜
図4に示したZ軸方向)に積層してなる。そして本形態において通電加熱パネル10は、平面視で台形を有しており、
図1の紙面上方に短い上底、
図1の紙面下方に長い下底を有した等脚台形である。このような形状は通電加熱パネル10が配置される開口部の形状に沿ったものとなる。
より具体的には、本形態の通電加熱パネル10は、厚さ方向の積層構造が
図4の断面図に示す如く第一パネル11、接着層12、加熱電極装置20、接着層14、第二パネル15を有して構成されている。以下、それぞれについて説明する。
【0018】
第一パネル11、及び第二パネル15は、透光性を有する、透明な台形の板状の部材であり、互いに向かい合うように配置された板面間に間隔を有して略平行に配置されている。いわゆる二重パネル構造である。尚、此処で板面とは、
図4で言えば、第一パネル11及び第二パネル15の表面のうちXY平面に平行な対向する2平面になる。この第一パネル11と第二パネル15との間に、加熱電極装置20の一部が配置され、接着層12、14により一体化されている。
第一パネル11及び第二パネル15は板ガラスにより構成することができる。これには、当該通電加熱パネル10が適用される設備(例えば乗り物や建物)が通常に有する窓に用いられる板ガラスと同じものを用いることができる。例えばソーダライム硝子(青板硝子)、硼珪酸硝子(白板硝子)、石英硝子、ソーダ硝子、カリ硝子等から成る普通板ガラス、フロート板ガラス、強化板ガラス、部分板ガラス等が挙げられる。また、必要に応じて3次元的に曲面状に湾曲部を有するものであってもよい。
ただし必ずしもガラス板である必要はなく、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂から成る樹脂板であってもよい。ただし、耐候性、耐熱性、透明性等の観点から板ガラスであることが好ましい。
これら第一パネル11及び第二パネル15の厚さは特に限定されることはないが、1.5mm以上5mm以下であることが一般的である。
【0019】
接着層12は第一パネル11のうち第二パネル15側となる面に積層された接着剤からなる層であり、加熱電極装置20の基材層25と第一パネル11とを接着する。接着剤としては特に限定されることはないが、接着性、耐候性、耐熱性等の観点からポリビニルブチラール樹脂を用いることができる。
接着層12の厚さは特に限定されることはないが、0.2mm以上1.0mm以下であることが一般的である。
【0020】
加熱電極装置20は、通電することによって発熱し、通電加熱パネル10を加熱するよう構成されている。
図1〜
図3よりわかるように本形態では加熱電極装置20は、バスバー電極21、第一発熱導体部22、第二発熱導体部23、電源接続配線24、及び基材層25を有している。便宜上ここでは基材層25を最初に説明する。
【0021】
基材層25は、加熱電極装置20の、特にバスバー電極21、第一発熱導体部22、及び第二発熱導体部23がその一方の面上に配置されて、該バスバー電極21、第一発熱導体部22及び第二発熱導体部23の基材として機能する層である。基材層25は透明な板状の部材であり、樹脂により形成されている。基材層25を形成する樹脂としては可視光線波長帯域の波長(380nm〜780nm)を透過するものであれば如何なる樹脂でも良いが、好ましくは熱可塑性樹脂を用いることができる。この熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナレフタレート、アモルファスポリエチレンテレフタレート(A−PET)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、トリアセチルセルロース(三酢酸セルロース)等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、等を挙げることが出来る。とりわけ、アクリル樹脂やポリ塩化ビニルは、エッチング耐性、耐候性、耐光性に優れていることから好ましい。基材層25の厚さとしては、20μm以上300μm以下が一般的である。基材層25を構成する樹脂層は必要に応じて1軸又は2軸延伸したものを用いる。
【0022】
本形態でバスバー電極21は、第一バスバー電極21a及び第二バスバー電極21bから形成されている。第一バスバー電極21a、第二バスバー電極21bはそれぞれ一方向(
図1においてはX軸方向)に延びる帯状であり、第一バスバー電極21aと第二バスバー電極21bとは間隔を有して同じ方向に延びる(略平行となる)ように配置されている。本形態では台形である第一パネル11及び第二パネルの上底に沿って第一バスバー電極21a、下底に沿って第二バスバー電極21bが配置されている。
このような第一バスバー電極21a及び第二バスバー電極21bは公知の形態を適用することができ、帯状である当該電極の幅(Y軸方向の大きさ)は5mm以上50mm以下が一般的である。
【0023】
第一発熱導体部22、及び第二発熱導体部23は、第1パネル11、第2パネル15、或いは基材層25の板面内に於いてそれぞれ所定の面積及び形状の範囲を有するとともに、第一バスバー電極21aと第二バスバー電極21bとを渡すように両バスバー電極21a、21bと交差する方向(
図1においてはY軸方向)に延在して配置される。そして、第一バスバー電極21aと第二バスバー電極21bとが第一発熱導体部22、及び第二発熱導体部23により電気的に接続されている。この第一発熱導体部22、第二発熱導体部23が通電により発熱する。
【0024】
第一発熱導体部22、第二発熱導体部23は、次のような形状を具備している。
図2、
図3からわかるように、本形態の第一発熱導体部22、第二発熱導体部23は、導体22a、23aがその平面視形状(板面の法線方向である同図のZ軸方向から観察した形状を意味する。)が網状(メッシュ状)により形成されている。従って、導体22a、23aに囲まれた部位に開口22b、23bが形成される。この網目は格子状と異なり、面内での繰り返し規則性、即ち周期性の低いいわゆるランダム周期化した網目で構成されている。これにより光芒の発生や発熱導体が視認されてしまうことを防止することができる。
【0025】
本形態で第一発熱導体部22は、台形である通電加熱パネル10のうち、上底を一辺とし、下底の一部を対向する辺とする長方形の範囲に形成されている。一方、第二発熱導体部23は、第一発熱導体部22が設けられた両端で台形である加熱電極装置10の脚部を含む略三角形部分の範囲に形成されている。
【0026】
第一発熱導体部22と第二発熱導体部23とは、加熱電極装置10の氷解時間のムラ(面内の最大解氷時間と最小解氷時間との差)が小さくなるように構成されている。本形態では、第一発熱導体部22と第二発熱導体部23との発熱量を異なるものとすることによりこれを可能としている。すなわち、通電加熱パネル10の中央と端部と(本形態では、台形における上底と下底との間に挟まれる範囲(
図1に於いて第一発熱導体部22が形成された長方形領域)と、その両端部の範囲(
図1に於いて第二発熱導体部23が形成された三角形領域、即ち脚部)と)で発熱量が異なるように構成されている。
【0027】
具体的には、
図2、
図3からわかるように、第一発熱導体部22と第二発熱導体部23とで網目(メッシュ)の開口率が異なる。ここで網目の開口率とは、第一発熱導体部22、第二発熱導体部23のそれぞれにおいて、平面視した場合における開口部22b、23bの割合である。
尚、開口率を測定する際の統計上適正な測定領域の面積は、網目の平均重心間距離にもよるが、25mm
2(例えば、5mm四方の正方形領域)以上とする。
尚、第一発熱導体部22、第二発熱導体部23のそれぞれに於いて、網目の開口率は70%以上99%以下、好ましくは80%以上95%以下の範囲から、第一発熱導体部22と第二発熱導体部23との氷解時間の差を最小化するよう、導体22a、23aの線幅及び厚みも考慮の上で選択する。
また、第一発熱導体部22、第二発熱導体部23のそれぞれに於いて、導体22a、23aの線幅及び厚みは、線幅は2μm以上15μm以下、網目パターンの平均重心間距離(周期格子の場合の周期に相当)は70μm以上800μm以下の範囲とすることができる。
【0028】
本形態では、第一発熱導体部22と第二発熱導体部23との発熱量を異なるものとするために開口率を変更したが、これに限らず他の態様により発熱量を異なるものとしてもよい。これには例えば導体の線の太さ(線幅×厚み=断面積)を異なるものとすることが挙げられる。
【0029】
第一発熱導体部22、第二発熱導体部23を構成する導体材料としては例えばタングステン、モリブデン、ニッケル、クロム、銅、銀、金、白金、アルミニウム等の金属、或いはこれら金属を含むニッケル−クロム合金、青銅、真鍮等の合金をエッチングによりパターン形成してなす帯状部材を挙げることができる。
【0030】
本形態では第一発熱導体部22、及び第二発熱導体部23の2種類の発熱導体部を有する構成としたが、これに限らず、3種類以上の発熱導体部を形成することもできる。
【0031】
電源接続配線24は、
図1からわかるように、第一バスバー電極21aと第二バスバー電極21b間に電源40を接続する配線である。電源40は、水滴(曇り)、凍結(霜)等を溶解或いは蒸発させるに必要な電力を供給可能なものであれば特に限定されることはなく、適宜の電圧、電流、或いは周波数を有する公知の直流又は交流電源を用いれば良いが、通電加熱パネル10が自動車に適用される場合には、電源40として例えば自動車に既設の鉛蓄電池、リチウムイオン蓄電池等のバッテリーを直流電源として用いることができる。このときには例えばバッテリーの正極に第二バスバー電極21b、負極に第一バスバー電極21aを接続することができる。勿論、別途専用の電源(電池、発電機等)を用いても良い。又、電動機を動力とする鉄道車両の場合は架線から給電された直流又は交流電力を適宜の電圧及び電流に変換して用いることも出来る。建築物の場合は、各建築物に給電、配線されている商用交流(電燈線)或いは太陽電池等を用いることもできる。
このような電源接続配線24は公知の構成を適用すればよい。
【0032】
接着層14は、バスバー電極21、第一発熱導体部22、第二発熱導体部23を含む基材層25と第二パネル15とを接着する層である。接着層14は接着層12と同じ構成とすることができる。
【0033】
以上のような各構成により次のように通電加熱パネル10とされている。
図4からわかるように、第一パネル11の一方の面に接着層12が積層されておりこの接着層12を介して第一パネル11に基材層25が積層されている。また、基材層25のうち接着層12が配置された側とは反対側の面には第一発熱導体部22、及び第二発熱導体部23が配置されている。基材層25のうち第一発熱導体部22、第二発熱導体部23が配置された側に第二パネル15が配置されているが、基材層25、第一発熱導体部22、及び第二発熱導体部23と第二パネル15との間を埋めるように接着層14が配置されている。これにより第二パネル15が加熱電極装置20に積層される。
【0034】
以上のような通電加熱パネル10によれば、部位による氷解時間の違いを小さくすることができ、氷解時間のムラを抑制することが可能となる。
【0035】
このような加熱電極装置20及びこれを含む通電加熱パネル10は例えば次のように製造することができる。
図5(a)〜
図5(d)に説明のための図を示した。
【0036】
先ず、
図5(a)に示したように、金属箔22’を樹脂フィルムからなる基材層25上に接着剤層を介して貼り合せ積層した積層体を製造する。
次いで、
図5(b)に示したように、該積層体の金属箔22’上に感光性レジスト層80を塗工形成する。
【0037】
次いで、所望のパターンの第一発熱導体部22(不図示の第二発熱導体部23も同様、以下同じ。)及びバスバー電極21の平面視パターンに基づいた遮光パターンを有するフォトマスクを用意する。そして、該フォトマスクを該感光性レジスト層80上に密着させて載置する。そして、該フォトマスクを通して紫外線露光し、フォトマスクを除去後、公知の現像処理により未露光の感光性レジスト層を溶解除去して、
図5(c)に示したように所望パターン80aに合致する形状のレジストパターン層80’を該金属箔22’上に形成する。
ここで
図5(c)には形成されるべき第一発熱導体部22の位置及び大きさを参考として破線及び薄墨で表している。これにより第一発熱導体部22をエッチングにより得ることができる。
【0038】
次いで、該レジストパターン層80’上から該積層体を腐蝕液によるエッチング(腐蝕)加工を行い、
図5(d)のように、該レジストパターン層80’を通して金属箔22’を腐蝕除去する。そして、該レジストパターン層80’を溶解除去(脱膜)する。斯くして、基材層25上に
図2、
図3の平面視形状及び
図4の断面形状の所定パターンの第一発熱導体部22、第二発熱導体部23、バスバー電極21a及び21bが形成された積層部材を製造する。
【0039】
次いで、第一パネル11、接着層12、加熱電極裝置20からなる積層部材に対して接着層14、及び第二パネル15を此の順に重ね、これら複数層を接着積層して一体化する。
以上の工程により、通電加熱パネル10を製造する。
【0040】
通電加熱パネル10は例えば次のように用いられて作用する。ここでは1つの例として通電加熱パネル10を自動車のフロントパネルに適用した場合で説明する。
すなわち、
図1の形態に於いては、通電加熱パネル10が自動車のフロントパネルの位置に配置される。この際には電源接続配線24に開閉器50を介して電源40が接続され、バスバー電極21を介して第一発熱導体部22、及び第二発熱導体部23を発熱させることができる。本形態に於いては、電源40としては自動車に既設のバッテリーを用いている。開閉器50を閉じると、電源40から電流が供給される。第一発熱導体部22、第二発熱導体部23の導体22a、23aはジュール熱の発熱により第一パネル11、第二パネル12が加熱されるのでフロントパネルとして機能する通電加熱パネル10の温度が上昇し、凍結及び曇りが解消される。本発明では第一発熱導体部22と第二発熱導体部23との発熱量を異なるものとしているので、氷解時間のムラを抑制することができる。
解氷時間としては、付着する霜や氷等の量、雰囲気温度、通電加熱パネル10の面積と熱容量により変動し得るが、例えば、最大3分〜5分とすることが出來る。氷解時間のムラとしては、通電加熱パネル10上の最大解氷時間と最小解氷時間との差が最大解氷時間の50%以内、好ましくは20%以内、最も好ましくは0%である。