(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トナー粒子は、粒径が4.5μm以上7.5μm未満でかつ円形度が0.980以上のトナー粒子の存在割合が16個数%以上30個数%以下である請求項1に記載の画像形成装置。
前記トナー粒子は、粒径が4.5μm以上7.5μm未満でかつ円形度が0.980以上のトナー粒子の存在割合が16個数%以上25個数%以下である請求項2に記載の画像形成装置。
前記トナー粒子は、前記結晶性ポリエステル樹脂が前記結着樹脂の全体に対して1質量%以上10質量%以下の範囲で含有される請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
前記定着手段における前記定着ベルト及び前記加圧部材の少なくとも一方を、前記記録媒体の搬送方向と交差する方向にずらす手段を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
【0019】
〔画像形成装置〕
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
特定トナーを有する現像剤を収容し、前記現像剤により前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、前記記録媒体の表面に転写された前記トナー像を定着する定着手段と、を備える。
【0020】
前記定着手段は、管状の基材、及び前記基材の外周上に配置され電磁誘導により発熱する金属発熱層を有する定着ベルトと、前記定着ベルトの外周面に接触して前記定着ベルトを加圧する加圧部材と、を有し、かつ前記定着ベルトの前記金属発熱層を電磁誘導によって発熱させる電磁誘導発熱手段を有する。そして、表面に前記トナー像が転写された前記記録媒体を前記定着ベルトと前記加圧部材との接触部で挟み込んで前記トナー像を定着する。
【0021】
特定トナーは、結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂、着色剤及び離型剤を含有し、平均円形度が0.955以上0.971以下であり、粒径が4.5μm以上7.5μm未満でかつ円形度が0.980以上のトナー粒子の存在割合が16個数%以上40個数%以下であり、粒径が7.5μm以上15μm未満でかつ円形度が0.900以上0.940未満のトナー粒子の存在割合が3個数%以下であるトナー粒子を有する。
【0022】
本実施形態に係る画像形成装置によれば、上記構成により、電磁誘導により発熱する定着ベルト及び前記定着ベルトの外周面に接触する加圧部材を有する電磁誘導加熱方式の定着手段で生じる定着ムラの発生が抑制される。
この効果が奏される理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0023】
従来から、画像形成装置において、電磁誘導によって発熱する定着ベルトと、この定着ベルトの外周面に接触して前記定着ベルトを加圧する加圧部材とを有し、表面にトナー像が転写された記録媒体をこの定着ベルトと加圧部材との接触部で挟み込んで定着する、電磁誘導加熱方式の定着手段が用いられている。しかし、電磁誘導加熱方式の定着ベルトを用いた場合、定着ベルト及び加圧部材のニップ部の圧力(以下「ニップ圧」とも称する)を部材軸方向で均一化することが容易でなく、つまり部材軸方向においてニップ圧がより高い箇所とより低い箇所とが生じ易く、その結果定着の度合いに差が生じて定着ムラが発生することがあった。
【0024】
なお、この定着ムラは、前記定着ベルト及び加圧部材の少なくとも一方を記録媒体の搬送方向と交差する方向にずらす装置(以下「移動装置」とも称する)を備える画像形成装置である場合、より発生し易くなる。
【0025】
まず、電磁誘導加熱方式の定着手段により、記録媒体にトナー像を繰り返し定着すると、定着手段における定着ベルト及び加圧部材の接触部(以下「ニップ部」とも称する)の同じ位置を記録媒体が繰り返し通過するため、記録媒体の端部との接触によって定着ベルト及び加圧部材の外周面に傷(以下「通紙傷」とも称する)が発生することがある。
そこで、この通紙傷の発生を抑制する目的で、定着手段における定着ベルト及び加圧部材の少なくとも一方を記録媒体の搬送方向と交差する方向にずらす装置(移動装置)が用いられている。移動装置により、定着手段の定着ベルト及び加圧部材の少なくとも一方を記録媒体の搬送方向と交差する方向にずらすことで、定着ベルト及び加圧部材のニップ部を通過する記録媒体の位置がずれる。つまり、定着時において、定着ベルト及び加圧部材の外周面と記録媒体の端部との接触位置が変えられる。このため、定着ベルト及び加圧部材の外周面の通紙傷の発生が抑制される。
【0026】
一方で、移動装置を備える画像形成装置では、定着手段における定着ベルト及び加圧部材は、記録媒体の搬送方向と交差する方向にずらした場合でも、定着を実現させるため、記録媒体よりも幅広い部材(つまり、軸方向長さが記録媒体よりも長い部材)としている。このため、移動装置を備えない場合に比べて、定着ベルト及び加圧部材のニップ部の圧力(ニップ圧)が部材軸方向でより変動して不均一化し易い。そのため、ニップ圧がより高い箇所とより低い箇所とでの定着の度合いの差がさらに大きくなり、定着ムラが発生し易くなっていた。
【0027】
これに対して、本実施形態に係る画像形成装置は、トナーとして、平均円形度が0.955以上0.971以下であり、粒径が4.5μm以上7.5μm未満でかつ円形度が0.980以上のトナー粒子の存在割合が16個数%以上40個数%以下であり、粒径が7.5μm以上15μm未満でかつ円形度が0.900以上0.940未満のトナー粒子の存在割合が3個数%以下である特定トナーを用いる。この特定トナーは、平均円形度を上記範囲に保ちつつも、粗大粒径かつ円形度が低いトナー粒子の存在割合が少なく、小径かつ球形に近づけたトナー粒子の存在割合が多いトナーである。粗大粒径かつ円形度が低いトナー粒子が少ないためにトナー像中で空隙が生じにくく、かつ小径かつ球形に近づけたトナー粒子はトナー像中で空隙を埋めるようにして配置され易いため、トナー粒子が密に充填された構造をとる。トナー粒子が密に充填され空隙が低減された構造のトナー像となることから、定着ニップで加熱された際にトナー像中を熱が伝わり易く、トナー粒子が速やかに融解し易い。その結果、トナー粒子の速やかな融解によって定着の度合いの差が低減され、定着ムラの発生が抑制されるものと推察される。
【0028】
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置においては、特定トナーを用いることで、電磁誘導により発熱する定着ベルト及び前記定着ベルトの外周面に接触する加圧部材を有する電磁誘導加熱方式の定着手段で生じる定着ムラの発生が抑制され、さらにはこの定着ベルト及び加圧部材の少なくとも一方を記録媒体の搬送方向と交差する方向にずらす移動装置を備える場合に発生する定着ムラも抑制される。
【0029】
なお、上記の移動装置を備える画像形成装置を採用する場合には、通紙傷の発生も抑制される。
【0030】
ここで、本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前述の特定トナーを有する現像剤により、像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、管状の基材、及び前記基材の外周上に配置され電磁誘導により発熱する金属発熱層を有する定着ベルト、並びに前記定着ベルトの外周面に接触して前記定着ベルトを加圧する加圧部材に対し、前記定着ベルトの前記金属発熱層を電磁誘導によって発熱させ、かつ表面に前記トナー像が転写された前記記録媒体を前記定着ベルトと加圧部材との接触部で挟み込んで前記トナー像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0031】
さらに、前記移動装置を備える画像形成装置では、前記定着ベルト及び加圧部材の少なくとも一方を、記録媒体の搬送方向と交差する方向にずらす工程を有する画像形成方法が実施される。
【0032】
なお、本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング装置を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電装置を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写装置は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写装置と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置と、を有する構成が適用される。
【0033】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例について、図面を参照しつつ説明する。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0034】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kを備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0035】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写体20が設けられている。中間転写体20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写体20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写体20に張力が与えられている。また、中間転写体20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0036】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写体走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0037】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電装置2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づく光3Yによって露光して静電潜像を形成する静電潜像形成装置3、静電潜像に帯電したトナーを供給して静電潜像を現像する現像装置4Y、現像したトナー像を中間転写体20上に転写する一次転写装置5Y、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置6Yが順に配置されている。
なお、一次転写装置5Yは、中間転写体20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写装置5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、各一次転写装置に印加する転写バイアスを可変する。
【0038】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作の一例について説明する。
まず、動作に先立って、帯電装置2Yによって感光体1Yの表面が帯電される。
帯電した感光体1Yの表面に、イエロー用の画像データに従って、静電潜像形成装置3により光3Yを出力する。光3Yは、感光体1Yの表面に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電潜像が感光体1Yの表面に形成される。
感光体1Y上に形成された静電潜像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電潜像が、現像装置4Yによってトナー像として可視像(現像像)化される。具体的には、感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された静電潜像にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0039】
感光体1Y上のイエロートナー像が一次転写へ搬送されると、一次転写装置5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写装置5Yに向う静電気力がトナー像に作用する。これにより、感光体1Y上のトナー像が中間転写体20上に転写される。一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0040】
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写体20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0041】
次に、第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写体20は、中間転写体20と中間転写体20内面に接する支持ロール24と中間転写体20の像保持面側に配置された二次転写装置26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体)Pが供給機構を介して二次転写装置26と中間転写体20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性と同極性の極性であり、中間転写体20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写体20上のトナー像が記録紙P上に転写される。
【0042】
ここで、記録紙Pは、記録紙収容容器に収容された状態から、取出ロール(ピックアップロール)31により取り出され、搬送ロール対32により搬送された後、位置合せロール対(レジストロール対)34により予め定められたタイミングで、二次転写部へ給紙される。
【0043】
この後、記録紙Pは定着装置28へと送り込まれトナー像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0044】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出ロール対36により排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0045】
一方、両面印刷する場合、記録紙Pは、排出ロール対36により反転搬送(スイッチバック)され、搬送ロール対40,41,42により構成された両面印刷用の搬送路38を経由して、再び位置合せロール対に搬送され、二次転写部へ給紙される。そして、記録紙Pは、裏面側にトナー像が転写された後、定着装置28へと送り込まれトナー像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。その後、カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出ロール対36により排出部へ向けて搬出される。
【0046】
なお、
図1に示す画像形成装置は、各装置(又は各装置の各部)の動作を制御する制御装置50を有している。そして、
図1に示す画像形成装置の各種動作は、制御装置50により制御される。つまり、
図1に示す画像形成装置の各種動作は、制御装置50において実行する制御プログラムにより行われる。
【0047】
以下、
図1に示す画像形成装置の代表的な構成の詳細について説明する。なお、「Y、M、C、K」の符号は省略して説明する。
【0048】
(感光体)
感光体1は、例えば、導電性基体と、この導電性基体上に形成された下引き層と、この下引き層の上に形成された感光層と、を有する。この感光層は、電荷発生層と電荷輸送層との2層構造であってもよい。感光層は、有機感光層であってもよいし、無機感光層であってもよい。感光体1は、感光層上に保護層を設けた構成であってもよい。
【0049】
(帯電装置)
帯電装置2は、例えば、感光体1表面に接触または非接触で設けられ、図示しないが、感光体1の表面を帯電する帯電部材、及び帯電部材に帯電電圧を印加する電源を備えている。電源は、帯電部材に電気的に接続されている。
【0050】
帯電装置2の帯電部材としては、例えば、導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触方式の帯電器が挙げられる。また、帯電部材としては、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器又はコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も挙げられる。
【0051】
(静電潜像形成装置)
静電潜像形成装置3としては、例えば、感光体1表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体1の分光感度領域内とする。半導体の波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0052】
(現像装置)
現像装置4は、例えば、静電潜像形成装置3による光3の照射位置より感光体1の回転方向下流側に設けられている。現像装置4内には、現像剤を収容する収容部(不図示)が設けられている。この収容部には、前述の特定トナーを含む静電潜像現像剤が収容されている。
【0053】
現像装置4は、例えば、図示しないが、特定トナーを含む現像剤により、感光体1の表面に形成された静電潜像を現像する現像部材と、現像部材に現像電圧を印加する電源と、を備えている。この現像部材は、例えば、電源に電気的に接続されている。
【0054】
現像装置4の現像部材としては、現像剤の種類に応じて選択されるが、例えば、磁石が内蔵された現像スリーブを有する現像ロールが挙げられる。
【0055】
現像装置4では、例えば、現像部材に現像電圧が印加される、現像電圧を印加された現像部材は、現像電圧に応じた現像電位に帯電される。そして、現像電位に帯電された現像部材は、例えば、現像装置4内に収容された現像剤を表面に保持して、現像剤に含まれるトナーを現像装置4内から感光体1表面へと供給する。
感光体1上に供給されたトナーは、例えば、感光体1上の静電潜像に静電力により付着する。詳細には、例えば、感光体1と現像装置4の現像部材との向かい合う領域における電位差、すなわち、該領域における感光体1の表面の電位と現像装置4の現像部材の現像電位との電位差によって、現像剤に含まれるトナーが感光体の静電潜像の形成された領域に供給される。なお、現像剤にキャリアが含まれている場合には、該キャリアは現像部材に保持されたまま現像装置4内に戻る。
【0056】
(一次転写装置)
一次転写装置5は、例えば、現像装置4の配設位置より感光体1の回転方向下流側に設けられている。一次転写装置5は、図示しないが、例えば、感光体1の表面に形成されたトナー像を中間転写体20へ転写する転写部材と、転写部材に転写電圧を印加する電源と、を備えている。転写部材は、例えば、円柱状とされており、感光体1との間で中間転写体20を挟んで設けられる。転写部材は、例えば、電源に電気的に接続されている。
【0057】
一次転写装置5の転写部材としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器又はコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の非接触型転写帯電器が挙げられる。
【0058】
(中間転写体)
中間転写体20としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状の部材(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体20の形態としては、ベルト状の部材以外にドラム状の部材であってもよい。
【0059】
(二次転写装置)
二次転写装置26は、図示しないが、例えば、中間転写体20の表面に形成されたトナー像を記録紙Pへ転写する転写部材と、転写部材に転写電圧を印加する電源と、を備えている。転写部材は、例えば、円柱状とされており、中間転写体20との間で記録紙Pを挟んで設けられる。転写部材は、例えば、電源に電気的に接続されている。
【0060】
二次転写装置26の転写部材としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器又はコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の非接触型転写帯電器が挙げられる。
【0061】
(感光体クリーニング装置)
感光体クリーニング装置6は、一次転写装置5より感光体1の回転方向下流側に設けられている。感光体クリーニング装置6は、トナー像を記録紙Pに転写した後に、感光体1に付着した残留トナーをクリーニングする。感光体クリーニング装置6では、残留トナー以外にも、紙粉等の付着物をクリーニングする。
【0062】
感光体クリーニング装置6は、感光体1の表面に接触して、残留トナーをクリーニングするブレードを有するブレード方式の装置が挙げられる。その他、感光体クリーニング装置6は、ブラシ方式の装置等の周知のクリーニング装置も挙げられる。
【0063】
(定着装置)
定着装置28は、例えば、
図2に示すように、電磁誘導加熱方式の定着装置であり、筐体60の内部に、金属発熱層を有する定着ベルト62と、加圧ロール64(加圧部材の一例)と、電磁誘導部66(電磁誘導発熱手段の一例)と、を備える。また、定着ベルト62の内部には、押圧パッド68と、押圧パッド68を支持するパッド支持部材70とが配置されている。なお、
図2中、T1は、定着前のトナー像を示し、T2は、定着画像を示す。
【0064】
ここで、定着ベルト62の構成について、図を用いて説明する。
図3は、本実施形態に用いられる定着ベルトの一例を示す概略構成図である。
図3に示す定着ベルト62は、管状の基材62Aの外周面上に、金属発熱層と、弾性層62Eと、離型層62Fと、が順に積層された層構成を有する無端ベルトである。なお、金属発熱層は、下地金属層62B、電磁誘導作用により自己発熱する電磁誘導金属層62C、及び金属保護層62Dがこの順に積層されてなる。
【0065】
[基材62A]
基材62Aは、隣接する金属発熱層が発熱した状態でも物性の変化が少なく、高強度を維持する層であることがよい。このため、基材62Aは、主として耐熱性樹脂から構成される(例えば質量比で50%以上含まれる)ことが好ましい。
【0066】
基材62Aを構成しうる耐熱性樹脂としては、ポリイミド、芳香族ポリアミド、サーモトロピック液晶ポリマー等の液晶材料など、高耐熱かつ高強度の樹脂等が挙げられるが、これら以外にも、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリイミドアミド等が用いられる。これらの中でも、ポリイミドが望ましい。
また、耐熱性樹脂中に断熱効果のある充填材を加えたり、耐熱性樹脂を発泡させることにより、断熱効果を更に向上させてもよい。
【0067】
基材62Aの厚さは、定着ベルトの長期に渡る繰り返しの周動搬送を実現する剛性と柔軟性とを両立させる観点から、10μm以上200μm以下の範囲が望ましく、30μm以上100μm以下の範囲がより望ましい。
【0068】
また、基材62Aの引張り強度は200MPa以上(より好ましくは250MPa以上)を満たすことが好ましい。基材の引張り強度は、樹脂の種類、充填材の種類及び添加量によって調整し得る。
なお、基材の引張り強度(MPa)は、基材を幅5mmの短冊形状に切り出し、これを引張試験機Model 1605N(アイコーエンジニアリング社製)に設置し、10mm/sec等速で引張った際の引張破断強度(MPa)にして測定される。
【0069】
[下地金属層62B]
下地金属層62Bは、基材62Aの外周面に電磁誘導金属層62Cを電解めっき法により形成するために予め形成される層であり、必要に応じて設けられる。
【0070】
基材62Aの外周面に下地金属層62Bを形成する方法としては、無電解めっき法、スパッタリング法、蒸着法等が挙げられ、成膜の容易性の観点から化学めっき法(無電解めっき法)が望ましく、中でも一般的な無電解ニッケルめっき層、無電解銅めっき層等が望ましい。
【0071】
なお、無電解めっき法によって基材62Aの外周面に下地金属層62Bを形成する前に、金属粒子が付着し易いように、基材62Aの外周面の表面粗さを予め粗くする処理(粗面化処理)を施してもよい。粗面化処理としては、例えば、アルミナ砥粒等を用いたサンドブラスト、切削、サンドペーパーがけ等により、基材62Aの表面を粗面化する方法が挙げられる。
【0072】
下地金属層62Bの厚さは0.1μm以上5μm以下の範囲が望ましく、0.3μm以上3μm以下の範囲がより望ましい。
【0073】
なお、本実施形態における定着ベルトを構成する各層の厚さは、定着ベルトの円筒体の周方向、軸方向について断面を作製し、走査型電子顕微鏡(日本電子社製「JSM6700F」)の加速電圧2.0kV、5000倍における観察像から膜厚を測定した値である。
【0074】
[電磁誘導金属層62C]
電磁誘導金属層62Cは、磁界が印加された際にこの層内に発生する渦電流により発熱する機能を有する発熱層であり、電磁誘導作用を生ずる金属で構成される。
電磁誘導作用を生ずる金属としては、例えば、ニッケル、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、クロム、錫、亜鉛などの単一金属、又は、2種類以上の金属を含む合金を選択してもよい。コスト、発熱性能、及び加工性を考慮すると、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄、クロムが適しており、その中でも特に、銅又は銅を主成分とする(例えば質量比で50%以上含まれる)合金が望ましい。
【0075】
電磁誘導金属層62Cは、周知の方法、例えば電解めっき処理を施すことで形成される。
【0076】
電磁誘導金属層62Cの厚さは、その金属材質により最適な厚さが異なるが、例えば銅を電磁誘導金属層62Cに用いる場合、効率的に発熱させる観点から、電磁誘導金属層62Cの厚さは3μm以上50μm以下の範囲であることが好ましく、3μm以上30μm以下の範囲であることがより好ましく、5μm以上20μm以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0077】
[金属保護層62D]
電磁誘導金属層62Cの外周表面側には、膜強度を向上させ、繰り返しの変形による亀裂や、長時間の繰り返し加熱による酸化劣化等を抑制し、発熱特性を維持するために、金属保護層62Dを電磁誘導金属層62Cと接触して設けることが好ましい。
【0078】
金属保護層62Dは、薄膜で破断強度が高く、耐久性及び耐酸化性が高いことが良く、耐酸化金属であることが望ましい。具体的には、例えば、銅、又はニッケルを含んで構成されることがよく、特に、繰り返しの変形による亀裂の発生、及び繰り返し加熱での酸化劣化等の抑制の点から、耐酸化金属であるニッケル(又はニッケル合金)を含むことが望ましい。
【0079】
金属保護層の厚さは、その材質により最適な厚さが異なるが、例えばニッケルによって金属保護層を形成する場合は、破断強度の不足による亀裂発生を抑制する一方、柔軟性が得られ、膜自体の熱容量が大きくなりすぎず、ウォームアップ時間を短く抑える観点から、2μm以上20μm以下の範囲であることが好ましく、2μm以上15μm以下の範囲であることがより好ましく、5μm以上10μm以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0080】
金属保護層は、薄膜での加工性も考慮した場合、電解めっき法で形成することが好ましく、中でも強度が高い電解ニッケルめっきがより好ましい。
電界めっき法により形成する場合、まずニッケルイオン等の金属イオンを含むめっき液を準備し、このめっき液に下地金属層62B及び電磁誘導金属層62Cを有する基材62Aを浸漬して電解めっきを行い、求められる厚さの電解めっき層を形成する。
【0081】
[接着剤層]
金属発熱層の最外表面を構成する層(
図3では金属保護層62D)と弾性層62Eとの間には、両層の接着性を向上させる観点で、接着剤層を介在させてもよい。
【0082】
接着剤層に用いられる接着剤としては、隣接する金属発熱層が発熱した状態でも物性の変化が少なく、かつ外周表面側への伝熱性に優れるものが好ましい。具体的には、シランカップリング剤系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、及びウレタン樹脂系接着剤等が挙げられる。
【0083】
接着剤層の厚さとしては、0.1μm以上1μm以下が好ましく、0.2μm以上0.5μm以下がより好ましい。
【0084】
[弾性層62E]
弾性層62Eは、記録媒体上のトナー像の凹凸に追従して、定着ベルトの表面がトナー像に密着する役割を担う層である。特に、多色画像を形成する場合、弾性層62Eにより、記録媒体及びトナー像の加熱ムラによる発色性低下及び光沢ムラが抑制された画像が得られる。また、弾性層62Eが加圧部材との接触領域内で変形し、低荷重でも接触幅が得られることから、プロセス速度(記録媒体の搬送速度)が速くなってもトナー像への熱の受け渡しがなされて定着が行われ、白黒画像を形成する場合でも、高速化が実現される。
【0085】
弾性層62Eは、例えば、100Paの外力印加により変形させても、もとの形状に復元する弾性材料から構成されることがよい。
なお、本実施形態における弾性層62Eには、弾性材料としてシリコーンゴムが好ましく用いられる。シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴム、液状シリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)等が挙げられる。
市販品としては、例えば、東レダウコーニングシリコーン社製の液状シリコーンゴムSE6744等が挙げられる。
【0086】
弾性層62Eは、弾性材料として他の材料を用いてもよい。例えば、フッ素ゴム等の耐熱性のゴムが挙げられる。フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン/プロピレン系ゴム、四フッ化エチレン/パーフルオロメチルビニルエーテルゴム、フォスファゼン系ゴム、フルオロポリエーテル等が挙げられる。
市販品としては、例えば、DuPont Dow elastmers社製のバイトンB−202等が挙げられる。
【0087】
弾性層には、各種添加剤が配合されてもよい。
例えば、弾性層62Eの熱伝導性を向上させる観点から、フィラーを添加することが好ましい。
【0088】
また、添加剤としては、例えば、軟化剤(パラフィン系等)、加工助剤(ステアリン酸等)、老化防止剤(アミン系等)、加硫剤(硫黄、金属酸化物、過酸化物等)、機能性充填剤(アルミナ等)等が挙げられる。
【0089】
弾性層62Eの厚みは、例えば、30μm以上600μm以下であることがよく、望ましくは100μm以上500μm以下である。
【0090】
[離型層62F]
離型層62Fは、記録媒体と接触する側の面(外周面)に、定着時に溶融状態のトナー像が固着するのを抑制する役割を担う層である。離型層62Fは、必要に応じて設けられる。
【0091】
離型層62Fは、フッ素系化合物等の低表面エネルギー材料を主成分として含んで構成されることがよい。フッ素系化合物としては、例えば、フッ素ゴムや、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、「PFA」という)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体(以下、「FEP」という)等のフッ素樹脂などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0092】
離型層62Fの厚さは、10μm以上100μm以下の範囲であることが望ましく、20μm以上50μm以下の範囲であることがより望ましい。離型層62Fの厚さが10μm以上であることにより、用紙等の記録媒体の縁部での繰り返し摩擦による離型層62Fの摩滅が抑制される。また、離型層62Fの厚さが100μm以下であることにより、表面の柔軟性が保たれ、定着画像の粒状性が維持され、ウォームアップ時間も短縮される。
【0093】
弾性層62Eと離型層62Fの形成は公知の方法を適用すればよく、例えば塗布法によって金属発熱層上に順次形成すればよい。
金属発熱層上に、弾性層62Eと離型層62Fを塗布法により形成する場合には、これらの層を塗布形成する前に、金属発熱層表面や弾性層62E表面に必要に応じて適切なプライマー材料による前処理を行うことが望ましい。この前処理を行うことにより各層間の接着性がより向上される。
【0094】
また、金属発熱層上に、弾性層62E及び離型層62Fを塗布法により積層形成する場合には、塗布形成された塗膜を加熱処理する工程を経て弾性層62E及び離型層62Fが形成される。この塗膜の加熱処理に際しては、不活性ガス(窒素ガス・アルゴンガス等)雰囲気下で行ってもよい。
【0095】
また、離型層62Fは、チューブ状の離型層を予め準備し、例えばチューブの内面に接着層を形成した上で、弾性層62Eの外周上に被覆させることで、離型層を形成してもよい。
【0096】
次いで、定着装置28における他の構成について説明する。
加圧ロール64は、不図示の駆動源により矢印R方向に回転可能に筐体60により支持されている。なお、
図2では加圧部材としてロール状である加圧ロール64を示したが、加圧部材はベルト状の部材であってもよい。ただし、転写ニップでのニップ圧力をより簡便に高くし定着性を向上させる観点から、ロール状の部材であることが好ましい。
【0097】
定着ベルト62と加圧ロール64とは、記録紙Pが挿通可能に接触されており、加圧ロール64の矢印R方向への回転に伴い、定着ベルト62は従動回転可能である。定着ベルト62の内周面側には、押圧パッド68が該内周面と接触して配置され、更に押圧パッド68と接触している箇所の外周面(定着ベルト62の外周面)側には、加圧ロール64が該外周面と接触して配置され、記録紙Pが挿通可能な接触部が形成されている。
ここで、加圧ロール64は、弾性体72(例えばバネ等)により、定着ベルト62を介して押圧パッド68に押圧された状態で支持されている。そして、加圧ロール64は、弾性体72の押圧力に抗って定着ベルト62から離間させる駆動部材74(例えば、伸縮駆動するアクチュエータ等)が連結されている。
【0098】
一方、パッド支持部材70に対して、押圧パッド68と反対側の定着ベルト62外周面側に、該外周面に対して定められた間隔で離間して、電磁誘導部66が設けられている。
電磁誘導部66は、定着ベルト62の外周面に離間して配置される電磁誘導コイル66Aを有している。電磁誘導コイル66Aは、電磁誘導コイル66Aに対して定着ベルト62の外周面と反対側に設けられたコイル支持部材66Bにより固定されている。電磁誘導コイル66Aは不図示の電源に接続されており、電磁誘導コイル66Aに交流電流が流された際に、電磁誘導コイル66Aに定着ベルト62の外周面と交差(例えば直交)する磁界を発生し得る。なお、前記磁界は不図示の励磁回路により、定着ベルト62に有する金属発熱層中に渦電流を発生し得るよう、磁界の方向を変動するものである。
【0099】
また、筐体60は、記録紙Pの搬送方向に交差する方向(例えば、加圧ロール64の軸方向)に沿って移動可能となるように、案内部材(例えばスライドガイド)を介して支持されている。
【0100】
そして、筐体60は、記録紙Pの搬送方向に交差する方向に定着装置28(つまり定着ベルト62及び加圧ロール64)をずらす装置(移動装置)80が連結されている。
【0101】
(移動装置)
移動装置80は、例えば、図示しないが、回転モータと、回転モータの回転トルクを記録紙Pの搬送方向に交差する方向の直進動作に変換する動作変換機構と、を備えている。この動作変換機構の動作により、定着装置28の筐体60に作用し、定着装置28(つまり定着ベルト62及び加圧ロール64)が記録紙Pの搬送方向に交差する方向にずれる。
この動作変換機構としては、例えば、ボールネジ機構、ピニオン−ラック機構等がある。回転モータには、例えば、目的とする動作量で動作させることが可能なモータ(サーボモータ、ステッピングモータ等)がある。
なお、移動装置80のモータとして、直進動作を行うモータ(リニアモータ等)を採用してもよい。この場合、動作変換機構は不要である。
【0102】
(定着装置及び移動装置の動作)
定着装置及び移動装置の動作について説明する。なお、この動作は、制御装置50の制御により実施される。
【0103】
まず、定着装置28による定着動作について説明する。
まず、加圧ロール64を矢印R方向へ回転させ、加圧ロール64の回転に伴い、定着ベルト62を従動回転させる。次に、電磁誘導コイル66Aにより磁界を発生させ、回転する定着ベルト62に磁界を曝す。この際、電磁誘導コイル66Aにより定着ベルト62中の金属発熱層には渦電流が発生し発熱する。これにより、定着ベルト62の外周面が定着可能な温度(例えば150℃以上200℃以下)にまで加熱される。
【0104】
上記方法で定着ベルト62外周面の定められた領域が加熱され、該加熱された領域は、定着ベルト62の回転に伴い、加圧ロール64との接触部まで移動する。一方、トナー像が表面に形成された記録紙Pが搬送される。記録紙Pが前記接触部を通過する際に、トナー像は定着ベルト62の加熱された領域と接触することにより加熱され記録紙P表面に定着される。また、前記接触部において定着処理を終え、外周面の表面温度が低下した定着ベルト62の領域は、定着ベルト62の回転に伴い電磁誘導コイル66Aによって加熱される箇所に移動し、次の定着処理に備えて再度加熱される。
【0105】
次に、移動装置80の動作について説明する。
まず、定着ベルト62に加圧ロール64を押圧している状態(具体的には、加圧ロール64が定着ベルト62を介して押圧パッド68に押圧された状態:
図4(A)参照)から、駆動部材74を駆動し、定着ベルト62から離間する方向に、加圧ロール64を弾性体72の押圧力に抗って退避させる(
図4(B)参照)。これにより、加圧ロール64による押圧を解除する。
【0106】
次に、移動装置80を駆動し、定着装置(つまり定着ベルト62及び加圧ロール64)を記録紙Pの搬送方向に交差する方向(具体的には、例えば加圧ロール64の軸方向に沿った方向)にずらす(
図4(C)参照)。この定着装置28のズレ方向(記録紙Pの搬送方向に交差する方向の一方又は他方の方向)及びズレ量は、記録紙Pの種類、ニップ部通過量、又はニップ部通過時間(定着時間)に基づいて、予め定められたズレ方向及びズレ量範囲で設定される。
【0107】
次に、移動装置80を駆動し、定着ベルト62からの加圧ロール64の退避を解除し、弾性体72の押圧力により、定着ベルト62に加圧ロール64を押圧している状態(具体的には、加圧ロール64が定着ベルト62を介して押圧パッド68に押圧された状態:
図4(D)参照)に戻す。
【0108】
なお、
図4(A)〜
図4(D)中、P1は、定着ベルト62と加圧ロール64とのニップ部における記録紙Pの通過位置を示す。
【0109】
これら一連の移動装置80の動作により、定着ベルト62と加圧ロールとのニップ部に通過する記録紙Pの通過位置が変更される。これにより、記録紙Pの端部との接触より生じる、定着ベルト62及び加圧ロールの外周面の傷の発生が抑制される。
【0110】
ここで、移動装置80の動作を実施する時期(定着装置28をずらす動作を実施する時期)は、例えば、下記(A)〜(C)のいずれか、又は組合せが挙げられる。
(A)定着ベルト62と加圧ロール64とのニップ部における記録紙Pの通過時間(定着が実施された時間)が、予め定められた通過時間に達するごとに、周期的に実施する。
(B)定着ベルト62と加圧ロール64とのニップ部を通過する記録紙Pの通過量が予め定められた通過量に達するごとに、周期的に実施する。
(C)画像形成停止中(例えば、画像濃度又は階調の補正データを取得する動作等の初期設定動作中)に実施する。
【0111】
なお、移動装置80による定着装置28全体をずらす形態に説明したが、これに限定されるわけではなく、定着ベルト62及び加圧ロール64を少なくとも有する部位をずらす形態であってもよいし、定着ベルト62及び加圧ロール64の一方をずらす形態であってもよい。
【0112】
(制御装置)
制御装置50は、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されている。具体的には、制御装置は、図示しないが、CPU(中央処理装置; Central Processing Unit)、各種プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)、プログラムの実行時にワークエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)、各種情報を記憶する不揮発性メモリ、及び入出力インターフェース(I/O)を備えている。CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ、及びI/Oの各々は、バスを介して接続されている。
【0113】
図1に示す画像形成装置は、制御装置50の外に、図示しないが、例えば、画像形成部、操作表示部、画像処理部、画像メモリ、記憶部、及び通信部等を備えている。操作表示部、画像処理部、画像メモリ、画像形成部、記憶部、及び通信部の各部は、制御装置50のI/Oに接続されている。制御装置50は、画像形成部、操作表示部、画像処理部、画像メモリ、画像形成部、記憶部、及び通信部の各部との間で情報の授受を行って、各部を制御する。
なお、画像形成部は、画像形成装置10の主要構成として説明したものである。つまり、画像形成部は、感光体1、帯電装置2、静電潜像形成装置3、現像装置4、一次転写装置5、中間転写体20の駆動ロール22、二次転写装置26、定着装置28、移動装置80の各々は、制御装置50と接続されている。制御装置50は、これら各装置との間で情報の授受を行って各装置を制御する。
【0114】
(特定トナーを有する現像剤)
本実施形態に係る画像形成装置において、現像手段に収容される現像剤は、以下に示す特定トナーを有する。
【0115】
まず、特定トナーについて説明する。
特定トナーは、結着樹脂、着色剤及び離型剤を含有し、結着樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂を含む。
そして、特定トナーは、平均円形度が0.955以上0.971以下であり、粒径が4.5μm以上7.5μm未満でかつ円形度が0.980以上のトナー粒子の存在割合が16個数%以上40個数%以下であり、粒径が7.5μm以上15μm未満でかつ円形度が0.900以上0.940未満のトナー粒子の存在割合が3個数%以下であるトナー粒子を含む。
以下、特定トナーの詳細について説明する。
【0116】
特定トナーは、上記のように、粒径が4.5μm以上7.5μm未満でかつ円形度が0.980以上のトナー粒子の存在割合が16個数%以上40個数%以下を満たす。この条件(以下、「M割合」とも称する)は、トナー粒子の粒度分布の中央付近において、トナー粒子の円形度が高い(球形に近い)ものが特定割合で存在していることを意味している。
また、特定トナーは、粒径が7.5μm以上15μm未満でかつ円形度が0.900以上0.940未満のトナー粒子の存在割合が3個数%以下を満たす。この条件(以下、「L割合」とも称する)は、トナー粒子の粒度分布の粗大側において、トナー粒子の円形度が低い(凹凸が多い)ものが特定割合以下であることを意味している。
【0117】
特定トナーは、電磁誘導加熱方式の定着手段で生じる定着ムラの発生を抑制する点で、粒径が4.5μm以上7.5μm未満でかつ円形度が0.980以上のトナー粒子の存在割合が16個数%以上30個数%以下であることが好ましく、16個数%以上25個数%以下であることが好ましい。また、同様の点で、粒径が7.5μm以上15μm未満であり、かつ円形度が0.900以上で0.940未満のトナー粒子の存在割合は、2個数%以下であることが好ましく、1個数%以下であることがより好ましく、0個数%であることがさらに好ましい。なお、これらトナー粒子の存在割合は、トナー粒子全体に対する存在割合である。
【0118】
なお、特定トナーは、後述のトナー粒子中の結着樹脂のガラス転移温度、分子量等の選択、及び凝集・合一工程における温度と時間とを制御することにより、平均円形度が0.955以上0.971以下であり、上記のM割合およびL割合を満足し得る。
【0119】
ここで、トナー粒子の粒径、円形度、及び平均円形度は、測定対象となるトナーのトナー粒子に対して、Sysmex社製FPIA−3000を用いて求める。
上記Sysmex社製FPIA−3000は、水などに分散させた粒子をフロー式画像解析法によって測定する方式を採用したもので、吸引された粒子懸濁液をフラットシースフローセルに導き、シース液によって偏平な試料流に形成する。その試料流にストロボ光を照射することにより、通過中の粒子を対物レンズを通してCCDカメラで、静止画像として少なくとも5000個のトナー粒子に対して撮像する。撮像された粒子像は、2次元画像処理され、投影面積と周囲長から円相当径を算出する。円相当径は、撮影された各々の粒子に対して、2次元画像の面積から同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。
【0120】
本実施形態では、上記円相当径を各トナー粒子の粒径とし、円形度は下式(1)により求めた。さらに各トナー粒子についての各々のデータを統計処理することによって、一定粒径範囲、円形度範囲ごとの存在割合(個数%)を求めることができる。以下、同様である。
式(1):円形度=円相当径周囲長/周囲長=[2×(A×π)1/2]/PM
(上式においてAは投影面積、PMは周囲長を表す。)
【0121】
また、特定トナーは、電磁誘導加熱方式の定着手段で生じる定着ムラの発生を抑制する点で、円形度が0.900以上0.950未満のトナー粒子の存在割合がトナー粒子全体に対して5個数%以上15個数%以下(より好ましくは、10個数%以上15個数%以下)、かつ円形度が0.950以上1.000以下のトナー粒子の存在割合がトナー粒子全体に対して75個数%以上85個数%以下(より好ましくは、78個数%以上85個数%以下)であることが好ましい。
【0122】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
トナー粒子の体積平均粒径は、コールターマルチサイザーII型(ベックマン・コールター社製)を用いると共に、電解液はISOTON‐II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。測定に際しては、分散剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5質量%水溶液2ml中に測定試料を10mg加える。これを上記電解液100ml中に添加した測定試料を調整し、測定試料を懸濁した電解液を超音波分散機で1分間分散処理を行う。そして、上記コールターマルチサイザーII型により、アパーチャー径50μmのアパーチャーを用いて1.0μm以上30μm以下の粒子の粒度分布を測定して、体積平均分布、個数平均分布を求める。測定された粒度分布を、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し体積基準で小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒径(D50v)を測定試料の体積平均粒径とする。
【0123】
以下、特定トナーの構成成分について説明する。
特定トナーは、結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂、着色剤及び離型剤を含むトナー粒子を有する。特定トナーは、トナー粒子の表面に付着する外添剤を有していてもよい。
【0124】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂を含む。結着樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。具体的には、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これら結晶性ポリエステル樹脂以外の結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、結着樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを併用することがよい。
【0125】
結着樹脂において、結晶性ポリエステル樹脂は、全結着樹脂に対して、含有量が1質量%以上10質量%以下(好ましくは2質量%以上9質量%以下)の範囲で用いることがよい。結晶性ポリエステル樹脂の含有量がこの範囲であると、トナー粒子の平均円形度が0.955以上0.971以下、前述のM割合およびL割合の範囲に制御しやすくなる。
【0126】
なお、樹脂の「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10(℃/min)で測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを指す。
一方、樹脂の「非晶性」とは、半値幅が10℃を超えること、階段状の吸熱量変化を示すこと、又は明確な吸熱ピークが認められないことを指す。
【0127】
−結晶性ポリエステル樹脂−
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体が挙げられる。なお、結晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶構造を容易に形成するため、芳香族を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族を有する重合性単量体を用いた重縮合体が好ましい。
【0128】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸等の二塩基酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価のカルボン酸としては、例えば、芳香族カルボン酸(例えば1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸としては、これらジカルボン酸と共に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、エチレン性二重結合を持つジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0129】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールとしては、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0130】
ここで、多価アルコールは、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることがよく、好ましくは90モル%以上である。
【0131】
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、50℃以上100℃以下が好ましく、55℃以上90℃以下がより好ましく、60℃以上85℃以下がさらに好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0132】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上35,000以下が好ましい。測定方法は、後述の非晶性ポリエステルで説明する重量平均分子量と同様の方法で測定される。
【0133】
なお、結晶性ポリエステル樹脂の融解温度が上記範囲であれば、トナー粒子の平均円形度が0.955以上0.971以下であり、前述のM割合(粒径が4.5μm以上7.5μm未満でかつ円形度が0.980以上のトナー粒子の存在割合)、及びL割合(粒径が7.5μm以上15μm未満でかつ円形度が0.900以上0.940未満のトナー粒子の存在割合)を上記範囲に制御し易い。また、結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が上記範囲であれば、トナー粒子の平均円形度が0.955以上0.971以下であり、前述のM割合およびL割合を上記範囲に制御し易い。
なお、例えば、結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が大きすぎる場合、トナー粒子の平均円形度が0.955以上0.971以下の範囲内において、球形に近いトナー粒子が得られ難くなる。
【0134】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、後述の非晶性ポリエステル樹脂と同様に、周知の製造方法により得られる。
【0135】
−非晶性ポリエステル樹脂−
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0136】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0137】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0138】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0139】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0140】
なお、非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が上記範囲であれば、トナー粒子の平均円形度が0.955以上0.971以下であり、前述のM割合およびL割合を上記範囲に制御し易い。また、非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が上記範囲であれば、トナー粒子の平均円形度が0.955以上0.971以下であり、前述のM割合およびL割合を上記範囲に制御し易い。なお、例えば、非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が大きすぎる場合、トナー粒子の平均円形度が0.955以上0.971以下の範囲内において、球形に近いトナー粒子が得られにくくなる。
【0141】
非晶性ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0142】
結着樹脂の含有量としては、例えば,トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0143】
−着色剤−
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0144】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0145】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0146】
−離型剤−
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0147】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0148】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0149】
−その他の添加剤−
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0150】
(外添剤)
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO
2、TiO
2、Al
2O
3、CuO、ZnO、SnO
2、CeO
2、Fe
2O
3、MgO、BaO、CaO、K
2O、Na
2O、ZrO
2、CaO・SiO
2、K
2O・(TiO
2)n、Al
2O
3・2SiO
2、CaCO
3、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4等が挙げられる。
【0151】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0152】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0153】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0154】
(特定トナーの製造方法)
次に、特定トナーの製造方法について説明する。
特定トナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0155】
トナー粒子は、トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。例えば、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0156】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液、着色剤の粒子(以下「着色剤粒子」とも称する)が分散された着色剤粒子分散液、及び離型剤の粒子(以下「離型剤粒子」とも称する)が分散されたを離型剤粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で、樹脂粒子、着色剤粒子、及び離型剤粒子を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0157】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0158】
−樹脂粒子分散液準備工程−
まず、結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
なお、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステルとを併用する場合、樹脂粒子分散液として、予め、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステルとを混合した樹脂粒子分散液を準備してもよい。
【0159】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0160】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0161】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0162】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0163】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0164】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0165】
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0166】
−凝集粒子形成工程−
次に、樹脂粒子分散液と共に、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0167】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度−30℃以上ガラス転移温度−10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0168】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0169】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0170】
−融合・合一工程−
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0171】
ここで、融合・合一工程において、凝集粒子分散液に対する温度と時間との積(総熱量)によって、トナー粒子の平均円形度が0.955以上0.971以下であり、前述のM割合(粒径が4.5μm以上7.5μm未満でかつ円形度が0.980以上のトナー粒子の存在割合)、及びL割合(粒径が7.5μm以上15μm未満でかつ円形度が0.900以上0.940未満のトナー粒子の存在割合)を制御し得る。高温度で長時間の加熱をするほど、トナー粒子は球形に近い形状に近づくが、温度と時間の積が大き過ぎると、特に、トナー粒子の平均円形度が、上記範囲を満足し難くなる。そのため、トナー粒子の平均円形度が0.955以上0.971以下の範囲を満足するように、凝集粒子分散液に対する温度と時間との積を調整して、前述のM割合およびL割合を制御し得る。
【0172】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
なお、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0173】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0174】
そして、特定トナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0175】
<現像剤>
現像剤は、前述した特定トナーを有するものである。
現像剤は、特定トナーのみを有する一成分現像剤であってもよいし、特定トナーとキャリアとを有する二成分現像剤であってもよい。
【0176】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0177】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0178】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0179】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0180】
二成分現像剤における、特定トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、特定トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0181】
以上、図面を参照して、本実施形態に係る画像形成装置について一例を挙げて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0182】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
【0183】
<トナーの作製>
(結晶性ポリエステル樹脂(A)の作製)
まず、三口フラスコに、セバシン酸ジメチル100質量部と、ヘキサンジオール67.8質量部と、ジブチルすずオキサイド0.10質量部とを窒素雰囲気下で、反応中に生成された水は系外へ除去しながら、185℃で5時間反応させた後、徐々に減圧しながら220℃まで温度をあげて、6時間反応させた後、冷却して得た、重量平均分子量が33700の結晶性ポリエステル樹脂(A)を用意した。
【0184】
(非晶性ポリエステル樹脂(1)の作製)
また、三口フラスコに、テレフタル酸ジメチル60質量部、フマル酸ジメチル82質量部、ドデセニルコハク酸無水物34質量部と、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物137質量部と、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物191質量部と、ジブチルすずオキサイド0.5質量部とを窒素雰囲気下で、反応により生成された水は系外へ除去しながら、180℃で3時間反応させた後、徐々に減圧しながら230℃まで温度をあげて、3時間反応させた後、冷却して得た、重量平均分子量が22100の非晶性ポリエステル樹脂(1)を用意した。
【0185】
(着色剤粒子分散液の作製)
更に、シアン顔料(銅フタロシアニン、C.I.Pigment blue15:3、大日精化社製)50質量部と、非イオン性界面活性剤ノニポール400(花王社製)5質量部と、イオン交換水200質量部とを混合し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて約1時間分散し、水分量を調整して得られた着色剤粒子分散液を用意した。
【0186】
(離型剤粒子分散液の作製)
パラフィンワックス(日本精蝋(株)製:HNP9,融点77℃)60質量部と、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)4質量部と、イオン交換水200質量部とを混合した溶液を120℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社)で120℃、350kg/cm
2、1時間の条件にて分散処理して得られた、体積平均粒径が250nmの離型剤が分散した、分散液中の離型剤濃度が20質量%となるように水分量が調整された離型剤粒子分散液を用意した。
【0187】
(ロジン分散液の作製)
ロジン(ハリマ化成社製)100質量部と、メチルエチルケトン78質量部とを三口フラスコに収容し、攪拌ながら樹脂を溶解させた後、イオン交換水350質量部を加え、加温した。その後ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)にて分散を行った後、脱溶媒を行った。体積平均径は185nmであった。これにイオン交換水を加え固形分濃度が25%のロジン分散液を作製した。
【0188】
(結晶性/非晶性混合ポリエステル樹脂粒子分散液(A1)の作製)
結晶性ポリエステル樹脂(A)5質量部と、非晶性ポリエステル樹脂(1)95質量部と、メチルエチルケトン50質量部と、イソプロピルアルコール15質量部とを三口フラスコに収容し、攪拌しながら60℃に加熱して樹脂を溶解させた後、10%アンモニア水溶液25質量部を加え、さらにイオン交換水400質量部を徐々に加えて転相乳化を行い、その後減圧し、脱溶媒することで、体積平均粒径が158nmの結晶性/非晶性混合樹脂粒子が分散された、固形分濃度が25%の結晶性/非晶性混合ポリエステル樹脂粒子分散液(A1)を作製した。
【0189】
(非晶性樹脂粒子分散液(A2)の作製)
非晶性ポリエステル樹脂(1)100質量部に変更した以外は、結晶性/非晶性混合ポリエステル樹脂粒子分散液(A1)と同様にして、体積平均粒径が175nmの非晶性ポリエステル樹脂粒子が分散された、固形分濃度が25%の非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A2)を作製した。
【0190】
(トナー粒子1の作製)
この結晶性/非晶性混合ポリエステル樹脂粒子分散液(A1)720質量部と、着色剤粒子分散液50質量部と、離型剤粒子分散液70質量部と、ロジン分散液6部と水ガラス(日産化学社製、スノーテックス(登録商標)OL)2.2部とカチオン界面活性剤(花王(株)製:サニゾールB50)1.5質量部とを丸型ステンレス製フラスコに収容し、0.1規定の硫酸を添加してpHを3.8に調整した後、凝集剤としてポリ塩化アルミニウムの濃度が10質量%の硝酸水溶液30質量部を添加し、その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて30℃において分散した。加熱用オイルバス中で1℃/分で40℃まで加熱し、40℃で30分間保持した後、この分散液中に、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(A2)を緩やかに160質量部追加して、さらに1時間保持した。
その後、0.1規定の水酸化ナトリウムを添加してpHを7.0に調整した後、攪拌を継続しながら1℃/分で88℃まで加熱して4時間保持した後、20℃/minの速度で20℃まで冷却し、これをろ過し、イオン交換水で洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥させ、トナー粒子1を得た。なお、トナー粒子1における結晶性ポリエステル樹脂はトナー中の結着樹脂に対して、4.1質量部であった。
トナー粒子1は、体積平均粒径が5.5μm、平均円形度0.963、粒径が4.5μm以上7.5μm未満でかつ円形度が0.98以上のトナー粒子の存在割合が25%であり、粒径が7.5μm以上7.15μm未満でかつ円形度が0.900以上0.94未満のトナー粒子の存在割合が1.1%であった。
また、トナー粒子1のトナー粒子全体に対する円形度が0.900以上0.950未満の割合、及び、トナー粒子全体に対する円形度0.950以上1.000以下の割合についても測定した。結果を表1に示す。
【0191】
なお、表1に示す全てのトナーのトナー粒子は、既述の測定方法により、体積平均粒径の測定を行った。
【0192】
また、表1に示す全てのトナーは、トナー粒子100質量部に対して、外添剤として市販のヒュームドシリカRX50(日本アエロジル製)1.2質量部が、ヘンシェルミキサー(三井三池製作所製)を使用して周速30m/s、5分の条件で添加してトナーとした。
さらに、外添剤が添加されたトナー8質量部と、キャリア100質量部とを混合して二成分現像剤を作製した。キャリアは、フェライト粒子(体積平均粒径:50μm)100質量部と、トルエン14質量部と、スチレン−メチルメタクリレート共重合体(成分比:スチレン/メチルメタクリレート=90/10、重量平均分子量Mw=80000)2質量部とを、まず、フェライト粒子を除く上記成分を10分間スターラーで攪拌させて分散した被覆液を調製し、次に、この被覆液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダー(井上製作所製)に入れて、60℃において30分攪拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させ、その後105μmで篩分して得た。
【0193】
(トナー粒子2の作製)
トナー粒子1の作製において用いたロジン分散液6部を4.8部に、水ガラスを2.2部から3.4部に、また88℃で4時間加熱したのを85℃で3時間に変更した以外はトナー粒子1と同様にしてトナー粒子2を作製した。なお、トナー粒子2における結晶性ポリエステル樹脂はトナー粒子中の結着樹脂に対して、4.1質量部であった。
トナー粒子2は、体積平均粒径が5.8μm、平均円形度0.956、粒径が4.5μm以上7.5μm未満でかつ円形度が0.98以上のトナー粒子の存在割合が17%であり、粒径が7.5μm以上15μm未満でかつ円形度が0.900以上0.940未満のトナー粒子の存在割合が2.8%であった。
また、トナー粒子2のトナー粒子全体に対する円形度が0.900以上0.950未満の割合、及び、トナー粒子全体に対する円形度0.950以上1.000以下の割合についても測定した。結果を表1に示す。
【0194】
(トナー粒子3の作製)
トナー粒子1の作製において用いたロジン分散液6部を4.8部に、水ガラスを2.2部から5.8部に、また88℃で4時間加熱したのを85℃で3時間に変更した以外はトナー粒子1と同様にしてトナー粒子3を作製した。なお、トナー粒子3における結晶性ポリエステル樹脂はトナー中の結着樹脂に対して、4.1質量部であった。
トナー粒子3は、体積平均粒径が5.8μm、平均円形度0.951、粒径が4.5μm以上7.5μm未満でかつ円形度が0.98以上のトナー粒子の存在割合が12%であり、粒径が7.5μm以上15μm未満でかつ円形度が0.900以上0.940未満のトナー粒子の存在割合が3.2%であった。
また、トナー粒子3のトナー粒子全体に対する円形度が0.900以上0.950未満の割合、及び、トナー粒子全体に対する円形度0.950以上1.000以下の割合についても測定した。結果を表1に示す。
【0195】
(トナー粒子4の作製)
トナー粒子1の作製において用いたロジン分散液6部を7.8部に、水ガラスを2.2部から1.4部に、また88℃で4時間加熱したのを90℃で4時間に変更した以外はトナー粒子1と同様にしてトナー粒子4を作製した。なお、トナー粒子4における結晶性ポリエステル樹脂はトナー粒子中の結着樹脂に対して、4.1質量部であった。
トナー粒子4は、体積平均粒径が5.7μm、平均円形度0.970、粒径が4.5μm以上7.5μm未満でかつ円形度が0.98以上のトナー粒子の存在割合が38%であり、粒径が7.5μm以上15μm未満でかつ円形度が0.900以上0.940未満のトナー粒子の存在割合が0.4%であった。
また、トナー粒子4のトナー粒子全体に対する円形度が0.900以上0.950未満の割合、及び、トナー粒子全体に対する円形度0.950以上1.000以下の割合についても測定した。結果を表1に示す。
【0196】
(トナー粒子5の作製)
トナー粒子1の作製において用いたロジン分散液6部を7.8部に、水ガラスを2.2部から1.6部に、また88℃で4時間加熱したのを90℃で5時間に変更した以外はトナー粒子1と同様にしてトナー粒子5を作製した。なお、トナー粒子5における結晶性ポリエステル樹脂はトナー粒子中の結着樹脂に対して、4.1質量部であった。
トナー粒子5は、体積平均粒径が5.9μm、平均円形度0.973、粒径が4.5μm以上7.5μm未満でかつ円形度が0.98以上のトナー粒子の存在割合が43%であり、粒径が7.5μm以上15μm未満でかつ円形度が0.900以上0.940未満のトナー粒子の存在割合が0.2%であった。
また、トナー粒子5のトナー粒子全体に対する円形度が0.900以上0.950未満の割合、及び、トナー粒子全体に対する円形度0.950以上1.000以下の割合についても測定した。結果を表1に示す。
【0197】
<評価>
各例で得られた現像剤を、評価装置「DocuCentreIV C3370(富士ゼロックス社製)」の現像装置に充填した。
この評価装置は、電磁誘導加熱方式の定着装置を搭載している。また、評価装置は、定着装置の定着ベルト幅を460mmとし、加圧ロールの幅(軸方向長さ)を480mmとして、電磁誘導加熱方式の定着装置を記録紙の搬送方向に交差する方向(加圧ロールの軸方向に沿った方向)にずらし、ニップ部における記録紙の通過位置を変更可能に改造した。また、この定着装置を、外付けの駆動用モータで駆動し、温度制御ができるように改造した。
そして、この評価装置を用いて、次の評価を行った。結果を表1に示す。
【0198】
〔定着ムラの評価〕
「電子写真学会テストッチャート No.4 1986」を用いて連続100枚出力し、1枚目と100枚目の定着ムラの差を目視で比較した。
結果を表1に示す。
−評価基準−
A:1枚目と100枚目との差は確認されない。
B:1枚目と100枚目との差が僅かに確認される。
C:1枚目と100枚目とに明確な差がある。
【0199】
【表1】
【0200】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、定着ムラの発生が抑制されていることがわかる。