特許第6759797号(P6759797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759797
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/34 20060101AFI20200910BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20200910BHJP
   H01M 2/04 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   H01M2/34 A
   H01M2/02 A
   H01M2/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-142683(P2016-142683)
(22)【出願日】2016年7月20日
(65)【公開番号】特開2018-14221(P2018-14221A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】栗田 幹也
(72)【発明者】
【氏名】大井手 竜二
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−122293(JP,A)
【文献】 実開昭49−054725(JP,U)
【文献】 特開2015−099735(JP,A)
【文献】 特開2011−159389(JP,A)
【文献】 特開平06−020677(JP,A)
【文献】 特公昭58−032459(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/34
H01M 2/02
H01M 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する四角箱状のケース本体と、前記開口部を塞ぐ蓋体とを有するケースと、前記ケース内に収容された電極組立体と、電流遮断装置とを有する蓄電装置であって、
前記電流遮断装置は、変形板及び破断可能な導電板を備え、前記電流遮断装置が設けられている側の電極端子を支持するホルダと前記導電板とは、前記変形板の外側で固定されており、前記蓋体と前記ホルダとの間には前記蓋体の角部に加わった衝撃を吸収する衝撃吸収手段が設けられており、
前記衝撃吸収手段は、前記蓋体の、前記ケース本体の内面と当接する部分を厚くすることにより構成されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記ホルダと前記導電板とは、かしめにより固定されている請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記かしめは熱かしめである請求項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に係り、詳しくは、ケースの内部圧力が設定圧力に達すると、変形板の変形によって通電経路の電流を遮断する電流遮断装置を備える蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電装品で使用される電力を蓄えるための蓄電装置として、リチウムイオン二次電池などの二次電池が、EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両に搭載されている。二次電池は、ケースと、ケースに収容されている電極組立体と、ケースの外部に突出しており、それぞれ極性が異なる2つの電極端子と、を有する。
【0003】
また、二次電池は、ケースの内部圧力の上昇に対応して電流を遮断する電流遮断装置を備えたものがある。電流遮断装置は、一方の極性の電極端子と電極組立体とを電気的に接続している通電経路上に設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図7に示すように、特許文献1の蓄電装置100は、ケース本体61と、負極集電タブ63a及び正極集電タブ63bを備える電極組立体63と、負極側のかしめ端子65と、正極側のかしめ端子67と、蓋69と、電流遮断装置80等を備えている。かしめ端子65は、ケース本体61の蓋69に形成された開口69aに取付けられている。ケース本体61の外部には、外部接続用の外部端子70及びボルト74が配置されている。かしめ端子65、外部端子70及びボルト74は、互いに電気的に接続されており、負極端子を構成している。蓋69の上面と外部端子70の間、及び蓋69の上面とかしめ端子65の間には、樹脂製のガスケット72が配置されている。また、ガスケット72により、蓋69が外部端子70及びかしめ端子65から絶縁されている。
【0005】
かしめ端子65のz方向(図7における上下方向)の端部には変形板82がレーザ溶接されている。変形板82の中央部には破断板(破断可能な通電板)84がレーザ溶接されている。変形板82と破断板84により、電流遮断装置80が構成されている。電流遮断装置80は、接続端子85などを介して電極組立体63の負極集電タブ63aに電気的に接続されている。電流遮断装置80は、接続端子85と、破断板84と、変形板82と、かしめ端子65とを直列につなぐ通電経路を有している。このため、電極組立体63とかしめ端子65は、電流遮断装置80の通電経路を介して電気的に接続されている。
【0006】
かしめ端子65は、円筒部65a、基底部65b及び固定部65cを有する。基底部65bは平面視すると円環状であり、円筒部65aのz方向側に位置している。基底部65bの外径は開口69aの径よりも大きい。かしめ端子65は、円筒部65aが開口69aを貫通した状態で、基底部65bの外周面に嵌合する略円筒状のホルダ86の内周側に突出形成された円環状の部分86aが、蓋69の下面と基底部65bの上面との間に挟持される状態に設けられている。
【0007】
正極側のかしめ端子67は、ケース本体61の内部で電極組立体63の正極集電タブ63bに電気的に接続され、かつ蓋69から絶縁された状態で、外部端子71とボルト75に電気的に接続されている。外部端子71とボルト75は、蓋69から絶縁されている。正極側には、電流遮断装置が用意されていない。かしめ端子65,67は、かしめることで(塑性変形することで)蓋69に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016−68103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
蓄電装置は、一般に四角箱状のケース内に電極組立体と電解液とが収容されている。また、蓄電装置の体積当たりの容量を大きくするためには、空間を少なくする必要がある。電流遮断装置を備えた蓄電装置の場合、特に電流遮断装置が設けられた負極側において、ケース内の空間が小さい。そのため、例えば、図8に示すように、蓄電装置100が、ケースの角部側から地面などの硬い面90に落下して角部が変形した場合、その角部が電流遮断装置に近い側の場合には、ケース本体61とホルダ86とのクリアランスが小さいため、ホルダ86が力を受けてかしめ端子65が変形し、端子シール部のシール性が損なわれて、液漏れが生じる場合がある。
【0010】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、電流遮断装置が設けられた側のケースの角部が変形しても、ケースのシール性を確保して液漏れを防ぐことができる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する蓄電装置は、開口部を有する四角箱状のケース本体と、前記開口部を塞ぐ蓋体とを有するケースと、前記ケース内に収容された電極組立体と、電流遮断装置とを有する蓄電装置である。そして、前記電流遮断装置は変形板及び破断可能な導電板を備え、前記電流遮断装置が設けられている側の電極端子を支持するホルダと前記導電板とは、前記変形板の外側で固定されており、前記蓋体と前記ホルダとの間には前記蓋体の角部に加わった衝撃を吸収する衝撃吸収手段が設けられている。
【0012】
この構成によれば、ケースの蓋体に対して電流遮断装置が設けられている側の角部に衝撃が加えられても、蓋体の角部に加わった衝撃が衝撃吸収手段により吸収される。その結果、たとえ、電流遮断装置が設けられている側のケースが変形しても、その変形により電極端子のシール部のシール性が、液漏れが生じるほど損なわれることが防止される。したがって、電流遮断装置が設けられた側のケースの角部が変形しても、ケースのシール性を確保して液漏れを防ぐことができる。
【0013】
前記衝撃吸収手段は、空隙であってもよい。衝撃吸収手段が空隙の場合は、電流遮断装置が設けられた側のケースの角部が変形しても、変形した部分が空隙の部分に位置することにより、ケースのシール性が確保される。
【0014】
前記空隙は、前記ホルダと、前記ケース本体の前記蓋体側の内面との間に設けられていてもよい。この構成によれば、空隙を設ける構造が簡単になる。
前記衝撃吸収手段は、前記蓋体の、前記ケース本体の内面と当接する部分を厚くすることにより構成されていてもよい。この構成によれば、蓋体の角部の強度が高くなっているため、ケースの角部に衝撃が加わっても、蓋体の変形が抑制され、ケースの必要なシール性が確保される。
【0015】
前記衝撃吸収手段は、前記空隙の部分に緩衝材を有していてもよい。この構成によれば、蓋体の角部に加わった衝撃が緩衝材によって弱められるため、衝撃吸収手段を空隙だけで構成する場合に比べて衝撃吸収手段が占める体積を小さくすることが可能になる。
【0016】
前記ホルダと前記導電板とは、かしめにより固定されていてもよい。この構成によれば、ホルダと導電板との固定のために、別部材を設ける必要がない。
前記かしめは熱かしめであってもよい。この構成によれば、かしめを簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電流遮断装置が設けられた側のケースの角部が変形しても、ケースのシール性を確保して液漏れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態の二次電池を示す概略斜視図。
図2】同じく二次電池を示す部分破断正面図。
図3】二次電池の電流遮断装置の部分の縦断面図。
図4】別の実施形態の二次電池を示す部分断面図。
図5】(a)は別の実施形態の二次電池を示す部分断面図、(b)は蓋体の部分裏面図。
図6】(a)は別の実施形態の二次電池を示す部分断面図、(b)はホルダの概略平面図。
図7】従来技術の二次電池を示す断面図。
図8】落下試験の状態を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、蓄電装置を二次電池に具体化した一実施形態を図1図3にしたがって説明する。
図1に示すように、蓄電装置としての二次電池10はケース11を備え、ケース11は、四角箱状のケース本体12と、このケース本体12の開口部12a(図3に図示)を塞ぐ矩形平板状の蓋体13とを有している。ケース11には電極組立体14が収容されている。なお、本実施形態の二次電池10はリチウムイオン電池である。
【0020】
図2に示すように、電極組立体14は、シート状の複数の正極電極15とシート状の複数の負極電極16とを備え、正極電極15は、正極金属箔(本実施形態ではアルミニウム箔)と、その正極金属箔の両面に存在する正極活物質層とを有する。負極電極16は、負極金属箔(本実施形態では銅箔)と、その負極金属箔の両面に存在する負極活物質層とを有する。そして、電極組立体14は、複数の正極電極15と複数の負極電極16の間にこれらを絶縁するセパレータ17を介在させて層状とした積層型である。なお、図2においては、図の手前側に負極電極16が位置し、奥側に向かってセパレータ17、正極電極15、セパレータ17、負極電極16、セパレータ17、正極電極15の順に所定枚数の正極電極15、負極電極16、セパレータ17が配置されて電極組立体14が構成されている。
【0021】
正極電極15は、正極電極15の一辺の一部から突出した形状のタブ15aを有する。負極電極16は、負極電極16の一辺の一部から突出した形状のタブ16aを有する。複数の正極のタブ15a、及び複数の負極のタブ16aは、正極電極15及び負極電極16が積層された状態で、正極のタブ15aと負極のタブ16aとが重ならない位置にそれぞれ設けられている。電極組立体14を構成する各正極電極15は、それぞれのタブ15aが積層方向に沿って列状に配置されるように積層される。同様に、電極組立体14を構成する各負極電極16は、それぞれのタブ16aが積層方向に沿って列状に配置されるように積層される。
【0022】
二次電池10は、全ての正極のタブ15aを電極組立体14における積層方向の一端側に寄せ集め、積層して構成された正極タブ群18を有する。また、二次電池10は、全ての負極のタブ16aを電極組立体14における積層方向の一端側に寄せ集め、積層して構成された負極タブ群19を有する。
【0023】
図1及び図2に示すように、蓋体13の外面には正極端子構造20を構成する外側絶縁部材21及び負極端子構造22を構成する外側絶縁部材21が配置されている。正極端子構造20と負極端子構造22とは、後記する電流遮断装置を除いて基本的に同じ構成であるため、共通の部材については、同じ部材番号を使用して説明する。
【0024】
正極端子構造20及び負極端子構造22は、蓋体13の外面に配置された矩形状の外側絶縁部材21を備える。外側絶縁部材21は合成樹脂製である。
正極端子構造20は、端子接続部材23により電気的に接続された外部接続端子24及び正極引出端子25を有し、外側絶縁部材21は、正極の外部接続端子24及び正極引出端子25と蓋体13とを絶縁する。負極端子構造22は、負極の外部接続端子26及び負極引出端子27を有し、外側絶縁部材21は、負極の外部接続端子26及び負極引出端子27と蓋体13とを絶縁する。なお、正極引出端子25は正極導電部材25aを介して正極タブ群18に電気的に接続されており、負極引出端子27は負極導電部材28を介して負極タブ群19に電気的に接続されている。
【0025】
図2及び図3に示すように、二次電池10は、一方の電極端子である負極引出端子27に一体の電流遮断装置40を備える。電流遮断装置40は、ケース11の内部に配置されており、ケース11の内部圧力が所定の設定圧力に達すると、電極組立体14と、負極引出端子27とを電気的に接続している通電経路の電流を遮断する。
【0026】
図3に示すように、負極導電部材28は、負極タブ群19に電気的に接続される電極接続部28aと、負極引出端子27に電気的に接続される端子接続部28bとを有し、電極接続部28aが端子接続部28bより蓋体13に近くなるように屈曲形成されている。
【0027】
電流遮断装置40は、負極引出端子27の基部27aと、導電板としての負極導電部材28の端子接続部28bとの間に位置している。詳述すると、負極タブ群19には、電極組立体14と、負極端子構造22とを電気的に接続するための負極導電部材28が接合されている。この実施形態では、負極引出端子27の基部27aが電流遮断装置40を介して負極導電部材28に電気的に接続されるとともに、負極導電部材28が負極タブ群19に電気的に接続されることにより、電極組立体14と、負極引出端子27との間の通電経路が構成されている。つまり、電流遮断装置40は、作動していないときには通電経路の一部を構成し、ケース11の内部に発生したガスの圧力を受けて作動したときに通電経路を遮断する。
【0028】
図3に示すように、電流遮断装置40が設けられている側の電極端子である負極引出端子27はホルダ30により支持されている。ホルダ30は絶縁材製(この実施形態では樹脂製)で、負極引出端子27の基部27aの外側を覆う状態に設けられている。詳述すると、ホルダ30は、略円柱状で、負極引出端子27の基部27aを収容可能な凹部30aを有し、負極引出端子27の筒部27bが遊挿されるとともに、筒部27bとの間にシール部材31が設けられている。また、ホルダ30と負極導電部材28との間にはシールリング32が設けられている。
【0029】
電流遮断装置40は、負極導電部材28と負極引出端子27の基部27aとに接合された接点板41を有する。接点板41は、導電性の材料製であり、電極組立体14に向けて凸となる碗状である。そして、接点板41は、基部27aの凹部を電極組立体14側から覆っている。接点板41における基部27aの凹部からはみ出している外周部と、基部27aの端面とは、溶接により固定されている。
【0030】
負極導電部材28は、シールリング32と当接する面と反対側の面に凹部28cが形成されている。負極導電部材28は、凹部28cが形成されることにより、接点板41と当接する部分の厚さが薄く形成されている。また、負極導電部材28には接点板41と当接する部分に溝28dが形成されている。
【0031】
電流遮断装置40は、ケース11の内部圧力を受圧して変形する変形板42を有する。変形板42は、弾性材料、例えば金属板で構成されたダイヤフラムであり、端子接続部28bより電極組立体14に近い位置に配置されている。変形板42は、円板形状であって凹部28cを電極組立体14側から覆っている。変形板42の外周部と端子接続部28bとが変形板42の外周部の全周にわたって溶接固定されている。変形板42は、ケース11内部をケース11外部に対して気密に隔てている。
【0032】
変形板42は、通常状態において蓋体13側から電極組立体14側(下方)に向けて凸となっており、この凸部分における負極溶接部分Pと対向する箇所には、蓋体13に向けて突出した突起42aを有する。突起42aは、溝28dで囲まれた負極溶接部分Pと対向している。
【0033】
負極導電部材28の端子接続部28b及び変形板42より電極組立体14側には、端子接続部28b及び変形板42を覆う絶縁部43が設けられている。絶縁部43は、負極タブ群19と反対側がケース本体12の内面の近くに位置するように配置されている。
【0034】
ホルダ30と負極導電部材28とは、変形板42の外側で固定されている。ホルダ30は、負極導電部材28にかしめにより固定されている。例えば、負極導電部材28に複数の穴が形成され、ホルダ30にその穴と嵌合可能な突部が形成され、穴と突部とが嵌合されて固定されている。かしめは、熱かしめにより行われる。負極導電部材28は、電極接続部28aと反対側の端部がケース本体12の内面との距離が、ホルダ30とケース本体12の内面との距離と同じに形成されている。
【0035】
蓋体13とホルダ30との間には蓋体13の角部11aに加わった衝撃を吸収する衝撃吸収手段45が設けられている。角部11aとは、蓋体13の短手方向に延びる端部を意味する。この実施形態では、衝撃吸収手段45として空隙Sが設けられている。空隙Sは、蓋体13の角部11aに加わった衝撃でケース11が変形しても、その変形により電極端子(負極引出端子27)のシール部としてのシール部材31のシール性が、液漏れが生じるほど損なわれることが防止される大きさに形成されている。この実施の形態では、負極導電部材28とケース本体12の内面との距離が、ホルダ30とケース本体12の内面との距離と同じに形成されているため、ホルダ30とケース本体12の内面との間だけでなく、負極導電部材28とケース本体12の内面との間も空隙Sを構成する。
【0036】
次に、前記のように構成された二次電池10の作用を説明する。
二次電池10は、電流遮断装置40を有するため、電極反応が異常に進行してケース11内の圧力があらかじめ設定された圧力以上になると、変形板42が蓋体13へ向かって変形し、突起42aが端子接続部28bと接点板41との負極溶接部分Pを破断する。その結果、負極引出端子27と負極導電部材28との電気的な接続が遮断され、通電経路の電流が遮断される。
【0037】
蓋体13とホルダ30との間には蓋体13の角部11aに加わった衝撃を吸収する衝撃吸収手段45が設けられているため、例えば、二次電池10の落下により蓋体13の角部11aに加わった衝撃でケース11が変形しても、その変形により負極引出端子27のシール部材31のシール性が、液漏れが生じるほど損なわれることが防止される。また、ホルダ30と導電板(負極導電部材28)とは、変形板42の外側で固定されているため、ホルダ30が電流遮断装置40の作動に悪影響を与えない。
【0038】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)蓄電装置(二次電池10)は、開口部12aを有する四角箱状のケース本体12と、開口部12aを塞ぐ蓋体13とを有するケース11と、ケース11内に収容された電極組立体14と、電流遮断装置40とを有する。そして、電流遮断装置40は変形板42及び破断可能な導電板(負極導電部材28)を備え、電流遮断装置40が設けられている側の電極端子(負極引出端子27)を支持するホルダ30と導電板とは、変形板42の外側で固定されており、蓋体13とホルダ30との間には蓋体13の角部11aに加わった衝撃を吸収する衝撃吸収手段45が設けられている。
【0039】
この構成によれば、ケース11の蓋体13に対して電流遮断装置40が設けられている側の角部11aに衝撃が加えられても、蓋体13の角部11aに加わった衝撃が衝撃吸収手段45により吸収される。その結果、たとえ、電流遮断装置40が設けられている側のケース11が変形しても、その変形により電極端子のシール部のシール性が、液漏れが生じるほど損なわれることが防止される。したがって、電流遮断装置40が設けられた側のケース11の角部11aが変形しても、ケース11のシール性を確保して液漏れを防ぐことができる。
【0040】
(2)衝撃吸収手段45は、空隙Sである。衝撃吸収手段45が空隙Sの場合は、電流遮断装置40が設けられた側のケース11の角部11aが変形しても、変形した部分が空隙Sの部分に位置することにより、ケース11のシール性が確保される。また、衝撃吸収手段45が空隙Sの場合は、衝撃吸収手段45用の部品を設けずに形成することができる。
【0041】
(3)空隙Sは、ホルダ30と、ケース本体12の蓋体13側の内面との間に設けられている。この構成によれば、空隙Sを設ける構造が簡単になる。
(4)空隙Sは、ホルダ30とケース本体12の内面との間だけでなく、負極導電部材28とケース本体12の内面との間に跨るように形成されているため、空隙Sが広くなり衝撃吸収機能が大きくなる。
【0042】
(5)ホルダ30と導電板(負極導電部材28)とは、かしめにより固定されている。この構成によれば、ホルダ30と導電板との固定のために、別部材を設ける必要がない。
(6)ホルダ30と導電板(負極導電部材28)とのかしめは、熱かしめにより行われる。そのため、他のかしめよりかしめ作業が容易になる。
【0043】
実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
図4に示すように、負極導電部材28の端部をケース本体12の内面近くまで延びる状態に設けてもよい。この場合、ケース本体12の変形が負極導電部材28によって妨げられるため、ケース11の角部11aに衝撃が加わったときに、ホルダ30がよりケース本体12から力を受けにくくなる。
【0044】
図5(a)、(b)に示すように、衝撃吸収手段45は空隙Sで構成されずに、蓋体13の、ケース本体12の内面と当接する部分を厚くした肉厚部46にすることにより構成されていてもよい。肉厚部46は、例えば、円柱などの柱状に形成される。この構成によれば、蓋体13の角部11aの強度が高くなっているため、ケース11の角部11aに衝撃が加わっても、蓋体13の変形が抑制され、ケース11の必要なシール性が確保される。
【0045】
○ 蓋体13の、ケース本体12の内面と当接する部分を厚くした肉厚部46の構成は、円柱などの柱状に形成されたものに限らず、蓋体13の幅方向に沿って延びるリブで構成されてもよい。リブは、蓋体13の幅方向全体に渡って延びるものに限らず、分割された2つのリブであってもよい。
【0046】
○ 衝撃吸収手段45は、空隙Sの部分に緩衝材を有していてもよい。例えば、図6(a),(b)に示すように、ホルダ30に空隙Sのケース本体12の内面に沿って延びるリブで緩衝材47を構成してもよい。この構成によれば、蓋体13の角部11aに加わった衝撃が緩衝材47によって弱められるため、衝撃吸収手段45を空隙だけで構成する場合に比べて衝撃吸収手段45が占める体積を小さくすることが可能になる。
【0047】
図6(a)に示すように、緩衝材47をホルダ30と一体に構成する場合、ホルダ30を負極導電部材28にかしめにより固定するかしめの位置を、ホルダ30から延設された部分にしてもよい。
【0048】
○ 衝撃吸収手段45を構成する緩衝材47は、ホルダ30と一体に構成される必要はない。例えば、図3あるいは図4で図示された空隙Sに別部材の緩衝材47を収容してもよい。緩衝材47としては、例えば、ゴム、発泡樹脂、布などが挙げられる。
【0049】
○ ホルダ30と導電板(負極導電部材28)とをかしめにより固定する場合、かしめは熱かしめでなくてもよい。
○ ホルダ30と導電板(負極導電部材28)との固定はかしめに限らない。例えば、接着剤で固定してもよい。
【符号の説明】
【0050】
S…空隙、11…ケース、12…ケース本体、12a…開口部、13…蓋体、14…電極組立体、27…電極端子としての負極引出端子、28…導電板としての負極導電部材、30…ホルダ、40…電流遮断装置、42…変形板、45…衝撃吸収手段、47…緩衝材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8