(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機能性成分を注意喚起等の目的で使用する場合には、機能性成分放出装置は、適時に機能性成分の放出を行う必要がある。しかしながら、機能性成分を過剰に放出すると、室内に機能性成分が吸着され、機能性成分放出装置が機能性成分を放出していない時に室内に吸着される等によって残留することがある。特に、機能性成分の閾値(人に作用する濃度の下限値)が低い場合には、室内に残留する機能性成分が機能性成分放出装置の停止時に乗員に誤作用するおそれがあった。
【0006】
上記に鑑み、本発明者らは、機能性成分の放出量を制御可能な機能性成分放出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の機能性成分放出装置は、気流を発生させる送気部と、機能性成分を貯留するとともに前記気流に前記機能性成分を気体として混合した搬送流を発生させる発生部と、前記搬送流中の該機能性成分の一部を凝縮させて除去した後に室内に放出する放出部とを備える。
【0008】
本発明の機能性成分放出装置によれば、発生部において、気流に機能性成分が気体として混合された搬送流を発生させる。放出部においては、この搬送流中の機能性成分の一部を凝縮させて除去する。放出部において過剰量の機能性成分を除去することにより適量の機能性成分を適時に放出することができるため、室内に機能性成分が残留することを抑制することができ、機能性成分を適時かつ適切に作用させることができる。
【0009】
本発明の機能性成分放出装置では、前記放出部は、前記凝縮させて除去した前記機能性成分を貯留してもよい。放出部に貯留した機能性成分を必要に応じて室内に放出する搬送流に混合させることができ、機能性成分を無駄なく使用することができる。特に、閾値が低い機能性成分を使用する場合には、発生部で発生させた搬送流中の機能性成分の濃度を著しく低く調整する必要があり、放出部で凝縮すべき機能性成分の量が多くなる。このため、放出部で凝縮した機能性成分を貯留して利用できることによりコスト面等においてより顕著な効果を得ることができる。例えば、機能性成分を含む搬送流をパルス状に発生部で発生させて放出部において機能性成分の大半を凝縮して貯留した後で、放出部に貯留された機能性成分を少量ずつ搬送流に混合させて室内に放出することによって、低濃度の機能性成分を持続的に室内に放出するとともに、機能性成分を無駄なく利用することができる。
【0010】
本発明の機能性成分放出装置では、前記放出部は、該放出部に供給される該搬送流を膨張させてもよい。放出部において搬送流を膨張することによって搬送流が冷却されて、搬送流中の機能性成分を凝縮させて除去することができる。
【0011】
本発明の機能性成分放出装置では、前記放出部の温度を制御する温度制御部をさらに備えていてもよい。温度制御部によって放出部において搬送流を冷却することで搬送流中の機能性成分を凝縮させて除去することができる。また、温度制御部を用いて放出部の温度を制御することによって、より精密に放出部で凝縮される機能性成分の量を調整することができる。
【0012】
本発明の機能性成分放出装置では、前記放出部は、前記放出部内の前記機能性成分を室外に放出する弁をさらに備えていてもよい。例えば、弁を開閉することによって、放出部内の機能性成分を適時に車両等の室外に放出することができる。例えば、機能性成分放出装置の停止時に弁が開いた状態となるようにすることによって、機能性成分放出装置の停止時に、放出部内の過剰な機能性成分を室外に放出することができる。
【0013】
本発明の機能性成分放出装置では、前記発生部と前記放出部とを接続する流路に前記送気部からの前記気流を供給する希釈流路と、前記送気部から発生部に供給される気流の流量および前記送気部から前記希釈流路に供給される気流の流量を調整する流量制御機構とをさらに備えていてもよい。希釈流路から気流を供給することによって簡易に放出部に流入する搬送流を希釈することができる。
【0014】
本発明の機能性成分放出装置では、前記放出部に供給される前記搬送流の圧力を制御する圧力制御機構をさらに備えていてもよい。圧力制御機構を用いて搬送流の圧力を制御することによって簡易に放出部で凝縮される機能性成分の量を調整することができる。
【0015】
本発明は、上述の気流を発生させる送気部に着脱可能な機能性成分カートリッジを提供することもできる。本発明の機能性成分カートリッジは、気流を発生させる送気部に着脱可能であり、機能性成分を貯留するとともに前記気流に前記機能性成分を気体として混合した搬送流を発生させる発生部と、前記搬送流中の該機能性成分の一部を凝縮させて除去した後に室内に放出する放出部とを備える。機能性成分カートリッジを交換することによって、容易に機能性成分を交換または補充することができる。また、機能性成分カートリッジの交換によって、機能性成分を含む搬送流が流れる流路となる発生部と放出部も容易に交換できるため、機能性成分の種類を変えた場合に交換前の機能性成分が交換後の機能性成分に混入して放出されることを抑制できる。
【0016】
本発明の機能性成分カートリッジでは、前記放出部の温度を制御する温度制御部を収容する凹部を有する筺体であってもよい。温度制御部を筺体の凹部に収容することによって正しい位置で確実に機能性成分カートリッジを送気部等に対して装着することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る機能性成分放出装置は、車両、住居、貯蔵室、展示室、実験器具等の室内に機能性成分を放出する装置として利用することができる。本発明に係る機能性成分放出装置は、気流を発生させる送気部と、機能性成分を貯留しており、送気部からの気流に機能性成分を気体として混合して搬送流を発生させる発生部と、搬送流中の機能性成分の一部を凝縮させて除去した後に室内に放出する放出部とを備える。
【0019】
≪機能性成分≫
機能性成分は、用途に応じた機能を発揮する成分であればよい。例えば、車両や住居の室内において人や動物等に作用させる場合には、例えば、緊張の緩和(リラックス効果)、集中力や覚醒の向上(リフレッシュ効果)等の活動状況に応じた好ましい作用を促す成分、好みに合った種々の芳香を有する芳香成分等を用いることができる。また、例えば、貯蔵庫の室内において野菜や果物等の鮮度を保持する成分、逆に果物等を追熟させる成分、防腐、防カビ、除菌又は消臭等に効果がある成分等を用いることもできる。また、例えば、ディスプレイ表示された画像に映し出された花や果物等の匂い成分を用いることもできる。機能性成分は、固体、液体、ガス体に関わらず気流によって放出可能なものを言い、また必ずしも人や動物の嗅覚により認識できる匂いを有する必要は無く、無臭でも、鼻口などから摂取されて、活動状況に応じた好ましい作用を人や動物に及ぼす成分であってもよい。また、周囲の環境や装置の運転条件等に応じて、機能性成分の種類および濃度を制御してもよい。例えば、車両の室内の乗員に向けて機能性成分を放出する場合、カーナビゲーションなどの位置情報、渋滞情報や走行データ、人間計測による観測データなどに応じて効果のある成分を自動で切り替えて放出することもできる。
【0020】
≪送気部≫
送気部としては、ポンプ、送風機等の気流を発生する手段を用いることができ、既存の空調システム(エアコンブロア等)等の気流を発生する手段を利用してもよい。
【0021】
≪発生部≫
発生部は、機能性成分を貯留しており、送気部からの気流に気化した機能性成分を混合する。気流を発生部に流通させて機能性成分と接触させることによって、気化した機能性成分が気流に混合され、搬送流となる。機能性成分は、固体または液体として容器に収容されていることが好ましく、機能性成分を液体として貯留する場合には、多孔質材や微細構造を有する繊維束等によって固定化することもできる。機能性成分は、揮発、加熱または超音波振動等による気化によって機能性成分を気流中に放出することができる。発生部は、機能性成分を貯留する貯留部と、気流が流通する流通部とを備えていてもよく、貯留部と流通部とはガス透過性膜によって隔離されていてもよい。ガス透過性膜としては、逆浸透膜、メンブレンフィルタ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜、シリコン膜等を例示することができる。発生部は、気流中に放出される機能性成分の濃度を調整する濃度調整手段を備えていてもよい。例えば、本発明者による特開2014−008944号公報に記載されているような揮発成分供給装置を濃度調整手段として用いることができる。また、送気部からの気流の流入路は、機能性成分の貯留部内に開口していてもよく、機能性成分内に気流をバブリングするようにしてもよい。また、発生部は、2種類以上の機能性成分を収容するものであってもよく、放出する機能性成分の種類を適宜に変更したり、2種類以上の機能性成分を適切な混合比で同時に放出したりするように構成されていてもよい。
【0022】
≪放出部≫
放出部では、発生部から流入する搬送流中の機能性成分の一部を凝縮させて除去した後に室内に放出する。放出部は、搬送流を冷却することによって搬送流中の機能性成分の一部を凝縮させるものであってもよい。例えば、放出部は、搬送流を膨張させることによって冷却するものであってもよい。この場合、放出部は、例えば、発生部と放出部とを接続する流路に対して十分容積の大きい容器として構成することができ、このような構成によって、搬送流は、放出部に流入することによって膨張して冷却され、搬送流に含まれる機能性成分の一部が凝縮し、搬送流から除去される。放出部において搬送流を膨張させて冷却する場合、機能性成分放出装置は、後述する圧力制御機構を備えており、放出部に供給される搬送流の圧力を制御可能に構成されていることが好ましい。また、後述する温度制御部等の放出部を冷却する手段を用いて放出部を冷却し、搬送流中の機能性成分の一部を凝縮させてもよい。複数の冷却手段により放出部において搬送流を冷却してもよい。例えば、放出部が搬送流を膨張させる容器を後述の温度制御部においてさらに冷却可能に構成することもできる。
【0023】
放出部は、凝縮させて搬送流から除去した機能性成分を収容可能な容器であってもよい。この場合、必要に応じて、放出部に貯留した機能性成分を気化させて放出部から放出される搬送流に混合してもよい。放出部に機能性成分を貯留した後で、発生部からの機能性成分の供給を停止または抑制して、室内に放出する搬送流中の機能性成分の一部または全部を放出部に貯留した機能性成分によって賄ってもよい。機能性成分の閾値が著しく低く、発生部において発生される搬送流中の機能性成分の濃度は閾値よりも著しく高い場合には、発生部においてパルス状に搬送流を発生させ、その搬送流に含まれる機能性成分を放出部において凝縮させて貯留した後で、放出部に気流を流通させて放出部に貯留された機能性成分を混合することによって、室内に放出する搬送流を発生させることが好ましい。
【0024】
放出部は、室内に搬送流を放出する流路を開閉する弁をさらに備えていてもよい。弁を開閉することによって、放出部内の機能性成分を適時に室内に放出することができる。この弁は、例えば、制御手段等によって制御される開閉弁であってもよいし、搬送流の圧力に応じて開閉する開閉弁であってもよい。また、室内に搬送流を放出する流路には、搬送流の流量、温度、搬送流中の機能性成分の濃度等を検知可能なセンサが設けられていてもよく、制御手段は、このセンサの検知値に基づいて、機能性成分放出装置の各構成を制御してもよい。また、本発明の機能性成分放出装置は、放出部の出口に接続し車室等の室内に開口する流路に気流を流通して流路内を洗浄する洗浄機構を備えていてもよい。例えば、洗浄機構は、洗浄する流路に気流を供給する洗浄用気流供給路と、洗浄する流路内を減圧する減圧機構とを備えていてもよい。機能性成分放出装置を車両に搭載する場合には、例えば、車両の走行に伴う吸気(エンジンの吸気や走行時の差圧等)を減圧機構として利用することができる。洗浄機構は、さらに、放出部内に気流を流通して洗浄することができるように構成されていてもよい。
【0025】
また、本発明の機能性成分放出装置は、発生部と放出部とを接続する流路に送気部からの気流を供給する希釈流路をさらに備えていてもよい。この場合、機能性成分放出装置は、さらに、送気部から発生部に供給される気流の流量と、送気部から希釈流路に供給される気流の流量を調整する流量制御機構とを備えていることが好ましい。流量制御機構としては、例えば、送気部の下流であって発生部および希釈流路の上流に設けられた分配弁であってもよい。分配弁によって送気部からの気流を発生部側と希釈流路側とに所望の分配比で分配することによって、放出部に流入する搬送流における機能性成分の濃度を調整することができる。または、例えば、発生部側の流路や希釈流路に抵抗部を設置することによっても、それぞれの流路に流れる気流または搬送流の流量等を調整することができる。また、発生部からの機能性成分の供給を停止して、放出部に供給された気流に放出部に貯留した機能性成分を混合した搬送流を室内に放出する場合に、希釈流路は、送気部からの気流(機能性成分が混合されていない気流)を放出部に供給するための流路として使用することもできる。また、希釈流路は、上述の洗浄機構における洗浄用気流供給路として使用することもできる。また、機能性成分が送気部や希釈流路に侵入することを防止するために、送気部と発生部との間や希釈流路の下流端付近に機能性成分を吸着等によって除去する手段を設置してもよい。
【0026】
≪圧力制御機構≫
本発明に係る機能性成分放出装置は、放出部に供給される搬送流の圧力を制御する圧力制御機構を備えていてもよい。例えば、希釈流路や、発生部と放出部とを接続する流路に抵抗部を設置して、これらの流路を流れる気流または搬送流の圧力を制御することができる。これらの抵抗部は通過前後の流路抵抗を調整可能な可変抵抗によって構成されていてもよい。
【0027】
≪温度制御部≫
本発明に係る機能性成分放出装置は、放出部の温度を制御する温度制御部を備えていてもよい。温度制御部は、放出部の冷却と加熱の双方を切り替えて実行可能であることが好ましく、ペルチェ素子等を好適に使用することができる。温度制御部は、放出部を冷却することによって機能性成分の凝縮を促進し、放出部を加熱することによって放出部に貯留された機能性成分の気化を促進することができる。放出部の温度を制御することによって、より精密に放出部で凝縮される機能性成分の量を調整することができる。凝縮した機能性成分を放出部に貯留する場合には、温度制御部は、放出部の機能性成分が貯留されている側を加熱可能な位置関係に設置されることが好ましい。温度制御部は、さらに、発生部の温度を制御可能な位置関係に設置されていてもよく、例えば、温度制御部が放出部を冷却する際に同時に発生部を加熱可能に構成されていてもよい。
【0028】
≪制御手段≫
本発明に係る機能性成分放出装置は、周囲の環境や装置の運転条件等に応じて、放出する機能性成分の種類や濃度を変更する制御手段をさらに備えていてもよい。例えば、発生部で気流に接触させる機能性成分を変更する制御を行うことによって、機能性成分の種類を変更することができる。また、例えば、送気部、上述の分配弁、抵抗部、温度制御部等を制御することによって放出部から室内に放出される搬送流中の機能性成分の濃度を制御することができる。制御手段は、機能性成分放出装置に対して専用で設置されてもよいし、貯蔵庫やエアコン等の機能性成分放出装置を設置する装置等を制御する制御手段を利用するものであってもよい。
【0029】
車両に機能性成分放出装置を設置する場合を例示してより具体的に説明すると、例えば、運転環境情報又は乗員の観測状態に応じて放出する機能性成分を変更してもよい。より具体的には、制御手段は、車両に搭載されてラジオ、AV機器、又はカーナビゲーション等の車載機器や装置と連結し、それらの機器や装置から入力された情報に基づいて、機能性成分放出装置の搬送流内に導入する機能性成分を変更してもよい。例えば、ラジオやAV機器の音楽などの情報、及びカーナビゲーションなどからの位置情報を利用して、例えば山間部のワインディングロードや海岸線の直線道路等、その走行場面に適した機能性成分に切り替えて放出することができる。また、例えば、渋滞情報、走行データ、及び車室内カメラなどの人間計測による観測データなどから運転者の心理的、身体的疲労及び覚醒状態等を判断し、快適な運転状態を維持する効果のある機能性成分を選択して搬送流内に導入し、必要とする運転者へ放出することもできる。
【0030】
さらに、前述の制御手段が車両の空調システムに組み込まれて、空調システムと一体で運用されるものであってもよい。その場合、エアコンブロワからの気流の一部または全部を機能性成分放出装置へ取り込こんだり、車室内の美観を損なわないように、放出部からの搬送流の流路をエアコンの吹き出し口と共用、若しくは吹き出し口の内部又は周辺に併合してもよい。
【0031】
≪機能性成分カートリッジ≫
本発明の機能性成分放出装置は、その一部が容易に着脱可能な機能性成分カートリッジとして構成されていてもよい。このカートリッジは、例えば、上述の気流を発生させる送気部に着脱可能に構成することができる。機能性成分カートリッジは、上述の発生部および放出部とを備えていることが好ましい。機能性成分カートリッジを交換することによって、容易に機能性成分を補充することができる。また、機能性成分カートリッジの交換によって、機能性成分を含む搬送流が流れる流路となる発生部と放出部も容易に交換できるため、機能性成分の種類を変えた場合に交換前の機能性成分が交換後の機能性成分に混入して放出されることを抑制できる。機能性成分カートリッジ内には、さらに、希釈流路が収容されていてもよい。送気部等の機能性成分カートリッジに収容されていない部分と、発生部等のカートリッジに収容された部分とを接続流する流路には、容易に着脱可能なコネクタが設けられており、カートリッジ交換時にこれらのコネクタによって各流路が容易に接続または分離できるように構成されていることが好ましい。
【0032】
(実施例)
図1に示す機能性成分放出装置1は、送気部111と、発生部240と、放出部250と、制御部10と、温度制御部30と、洗浄部40、基板50とを備えている。機能性成分放出装置1は、車両に設置されるエアコンの吹出口の内側に設置されており、送気部111は、エアコンブロワからの空気流を管路101側に圧送するポンプである。制御部10および温度制御部30は互いに離間して基板50に固定されている。発生部240と、放出部250とは、カートリッジ20内に収容されている。洗浄部40は、切換弁411を介して管路401に接続されている。
【0033】
送気部111と分配弁112とは管路101によって接続されている。分配弁112は管路101からの気流を管路102と管路103とに所望の分配比に分配する。管路102には流量センサ131が設けられており、その下流端には雄コネクタ114が設けられている。管路103には流量センサ132が設けられており、その下流端には雄コネクタ115が設けられている。送気部111、分配弁112、管路101〜103は、制御部10が収容されているケーシング内に設けられており、基板50に固定されている。
【0034】
発生部240は、外気に対して密閉された容器であり、
図1,2に示すように、気流が流通する流通部241と、機能性成分を貯留する貯留部242とを備えている。流通部241と貯留部242とはガス透過膜243によって隔離されている。貯留部242には、沸点が300℃程度までの機能性成分が収容されている。機能性成分は、気化してガス透過膜243を通過し、流通部241に移動する。流通部241の上流側には管路203が接続されており、下流側には管路205が接続されている。
図1に示すように、管路203、205は、発生部240の上面を貫通して流通部241内に開口している。管路203の上流端には、雄コネクタ115と接続可能な雌コネクタ215が設けられている。管路203には、さらに、吸着層234が設けられている。吸着層234には貯留部242に貯留された機能性成分を吸着可能な吸着剤が充填されており、機能性成分が発生部240から管路203側に侵入することを抑制している。管路205には、抵抗部236と、抵抗部236の下流に接続された弁245が設けられいる。弁245の下流側において、管路205は、管路206に接続している。管路206には、抵抗部251が設けられている。抵抗部251の下流側において、管路206は、放出部250に接続している。抵抗部236,251は流路長を制御可能な可変抵抗管である。管路202は、希釈流路の一例であり、分配弁112は、送気部111から発生部240に供給される気流の流量および送気部111から希釈流路(管路202)に供給される気流の流量を調整する流量制御機構の一例である。管路202は、その上流端に雄コネクタ114と接続可能な雌コネクタ214が設けられており、その下流端は管路206の上流端および管路205の下流端に接続している。管路202には、さらに、抵抗部235、吸着層237および弁246が上流側からこの順序で設けられている。吸着層237には貯留部242に貯留された機能性成分を吸着可能な吸着剤が充填されており、機能性成分が管路205,206から管路202側に侵入することを抑制している。抵抗部235は流路長を制御可能な可変抵抗管である。抵抗部235,236,251は、放出部250に供給される搬送流の圧力を制御する圧力制御機構の一例である。抵抗部235,236は、送気部111から発生部240に供給される気流の流量および送気部111から希釈流路(管路202)に供給される気流の流量を調整する流量制御機構として使用することもできる。
【0035】
放出部250は、外気に対して密閉されており、
図1に示すように、発生部240よりも小さく管路206等よりも十分に容積の広い容器である。放出部250の上流側には、逆流を防止するための弁245,246と、管路206が接続されており、下流側には管路207が接続されている。
図1に示すように、管路206、207は、放出部250の上面を貫通して放出部250内に開口している。管路206の流路断面積は、管路207の流路断面積に対して小さい。放出部250の外側の管路207には弁252が設けられており、下流端には雄コネクタ253が設けられている。弁252は、室内に放出する搬送流の流路(管路207)を開閉する弁の一例である。
図6Aおよび6Bに示すように、弁252は、円筒部601と円筒部601の内側に配置された円管部602と、円管部602の開口を覆う円板状の蓋部603とを備えている。蓋部603は円筒部601の内壁に固定された支持部604にネジ605によって取り付けられている。弁252は、いわゆる逆止弁であり、放出部250の内圧が管路207内の圧力を超えて蓋部603を持ち上げることによって開弁し、放出部250の内圧が管路207内の圧力以下に低くなると閉弁する。弁252を開閉する際の内圧の閾値は、蓋部603の重量等を調整することによって調整できる。管路202〜207、抵抗部235,236,251、吸着層234,237および弁252は、カートリッジ20内に収容されている。必要に応じて、管路101,103に流量センサ131,132を設けてもよい。さらには、制御部10は、流量センサ131,132の検知値に基づいて、分配弁112を制御してもよい。
【0036】
洗浄部40によって、放出部250内と管路207内に吸着または滞留した機能性成分を洗浄することができる。洗浄部40は、管路401、402と、弁411とを備えている。管路401の上流端には雄コネクタ253と接続可能な雌コネクタ453が設けられている。管路401の下流側は、エアコンの吹出口に接続するダクト内に固定されており、その下流端はエアコンの吹出口に向かって開口している。管路402は、管路401に中継しており、弁411を介して減圧機構(図示していない)に接続されている。減圧機構は、車両の走行時に生じる吸気圧差やエンジンの吸気圧差を利用した減圧機構であり、弁411を開放することによって管路401、402内を減圧することができる。また、洗浄を効率的に行うために、放出部250に弁261を設けてもよい。弁261の放出250と逆側は、車両の室外の大気に開放されている。弁261を開くことによって、放出部250内の過剰な機能性成分を車両の室外の大気中に廃棄することができる。
【0037】
温度制御部30は、ペルチェ素子であり、
図3に示す面311と面312との加熱と冷却を切り替えて実行できる。面311が高温である場合には面312が低温となり、面311が低温である場合には面312が高温となる。
図3,4に示すように、カートリッジ20は、面20a側に開口する凹部23を有する筺体である。面20a側を基板50に向けて温度制御部30を凹部23内に収容するようにカートリッジ20を装着すると、
図1に示すように、雄コネクタ114と雌コネクタ214が接続され、管路102と管路202が接続される。また、雄コネクタ115と雌コネクタ215が接続され、管路103と管路203が接続される。また、雄コネクタ253と雌コネクタ453が接続され、管路207と管路401が接続される。温度制御部30の面311側には放出部250が配置され、面312側には発生部240が配置される。温度制御部30をカートリッジ20の凹部23に収容することによって正しい位置で確実にカートリッジ20を装着することができる。
【0038】
制御部10は、送気部111、分配弁112、抵抗部235,236,251、温度制御部30を制御することによって放出部から室内に放出される搬送流中の機能性成分の濃度等を制御する。制御部10は、送気部111における気流の送気量、分配弁112における分配比、抵抗部235,236,251の流路抵抗を制御することによって、管路202,203に流れる気流の流量および圧力、管路205,206を流れる搬送流の流量、圧力および搬送流中の機能性成分の濃度を制御することができる。例えば、制御部10は、分配弁112を制御して、管路203と管路202にそれぞれ流れる気流の分配比を制御することによって、放出部250に流入する搬送流における機能性成分の濃度を調整することができる。管路202に流れる気流の流量をより多く分配すれば、放出部250に流入する搬送流における機能性成分の濃度をより低くすることができる。また、制御部10は、抵抗部235の流路抵抗をより低くし抵抗部236の流路抵抗をより高くすることによって、放出部250に流入する搬送流における機能性成分の濃度をより低くすることもできる。また、制御部10によって、抵抗部236,251の流路抵抗が小さくなるように制御すれば、発生部240で気化する機能性成分の量を増加させることができる。また、制御部10は、温度制御部30を制御して発生部240を加熱または冷却することによって機能性成分の気化量を制御することができる。管路401には搬送流の流量、温度、搬送流中の機能性成分の濃度等を検知可能なセンサが設けられていてもよく、制御部は、このセンサの検知値に基づいて、送気部111、分配弁112、抵抗部235,236,251、温度制御部30を制御してもよい。
【0039】
制御部10は、送気部111、分配弁112、抵抗部235,236,251を制御して、管路206を流れる搬送流の圧力を制御し、管路206から放出部250に流入する際に搬送流が膨張し、冷却されて、搬送流中の機能性成分の一部を凝縮させる。制御部10は、機能性成分を凝縮させる際に必要に応じて放出部250を温度制御部30によって冷却する。制御部10は、
図3に示す面311が低温となり、面312が高温となるように、温度制御部30を制御することによって放出部250の底面側を冷却することができ、同時に、面312によって発生部240が加熱される。発生部240が加熱されることによって、発生部240における機能性成分の気化が促進され、放出部250が冷却されることによって、放出部250における機能性成分の凝縮が促進される。凝縮した機能性成分は、放出部250において一次的に貯留される。
【0040】
制御部10は、分配弁112における分配比、抵抗部235,236,251の流路抵抗を制御することによって、放出部250に機能性成分が所定量貯留された後に発生部240から放出部250への機能性成分の供給を停止することもできる。制御部10は、その後、管路202から気流(機能性成分が混合されていない気流)を放出部250に導入して放出部250に貯留された機能性成分を混合し、搬送流として室内に放出することもできる。これによって、機能性成分の濃度を制御するために除去した機能性成分を有効利用することができる。制御部10は、放出部250内に一次的に貯留された機能性成分を気化させる際に必要に応じて放出部250を温度制御部30によって加熱するように制御することもできる。制御部10は、
図3に示す面311が高温となり、面312が低温となるように、温度制御部30を制御することによって放出部250の底面側を加熱することができ、同時に、面312によって発生部240が冷却される。発生部240が冷却されることによって、発生部240における機能性成分の気化が抑制され、放出部250が加熱されることによって、放出部250に貯留された機能性成分の気化が促進される。
【0041】
機能性成分の閾値が低い場合には、室内に放出される搬送流中の機能性成分の濃度を著しく低くすることが好ましいが、管路202に流れる気流の流量を増やすのみでは、搬送流中の機能性成分の濃度を十分に低くすることは困難である。この場合、制御部10によって、以下のように機能性成分放出装置1を制御することが好ましい。まず、制御部10は、発生部240において、室内に放出される搬送流中の機能性成分の濃度よりも高い濃度で機能性成分を含む搬送流をパルス状に発生させるように分配弁112等を制御し、放出部250において、発生部240からの搬送流中の機能性成分を凝縮させて貯留するように、抵抗部251、温度制御部30等を制御する。その後、制御部10は、発生部240における機能性成分の気化を停止または抑制し、放出部250に管路202から気流を導入するように、分配弁112、温度制御部30等を制御する。管路202から導入した気流に、放出部250に貯留された機能性成分が気化して混合され、搬送流として管路207から室内に放出される。このように機能性成分放出装置1を制御することによって、機能性成分の濃度が十分に低い搬送流を安定して供給するとともに機能性成分を有効利用することができる。
【0042】
上記のとおり、機能性成分放出装置1によれば、発生部240において機能性成分が混合された搬送流を放出部250で膨張させて一部を凝縮させることによって、過剰量の機能性成分を除去することができる。適量の機能性成分を適時に放出することができるため、室内に機能性成分が残留することを抑制することができ、機能性成分を適時かつ適切に乗員に作用させることができる。機能性成分放出装置1は、機能性成分の閾値が低い場合に、ごく低濃度の機能性成分を含む搬送流を簡易に放出可能である点において特に優れている。上記のとおり、機能性成分放出装置1を制御して、機能性成分を含む搬送流を発生部240においてパルス状に発生させて放出部250で機能性成分を凝縮させて貯留した後に、放出部250に管路202から気流を導入することによって、機能性成分の濃度が十分に低い搬送流を安定して供給するとともに機能性成分を有効利用することができる。
【0043】
また、機能性成分放出装置1では、発生部240,放出部250、管路202〜207、抵抗部235,236,251、吸着層234,237および弁252がカートリッジ20内に収容されており、送気部111,制御部10,温度制御部30等の車室内に固定された構成に対してカートリッジ単位で容易に交換することができる。
【0044】
なお、上記の実施例では、抵抗部として流路長を制御可能な可変抵抗管を用いる場合を例示して説明したが、これに限定されない。抵抗部は、オリフィスや抵抗板等の他の流路抵抗を調整する手段を備えていてもよい。また、発生部240は、
図5に示すように、管路203の下流端が機能性成分中に開口するものであってもよい。
図5の状態で管路203から気流を導入すると液体の機能性成分をバブリングすることができ、機能性成分の気化量を増加させることができる。また、ガス透過膜243に替えて、ガス浸透性の材料で形成されたチューブによって管路203の下流端と管路205の上流端とを接続し、このチューブを機能性成分中に浸漬した状態で管路203から気流を導入してもよい。ガス透過性の材料で形成されたチューブの内側に気化した機能性成分が移動し、このチューブ内を通過する気流に混合する。
【0045】
また、
図7Aおよび7B、
図8Aおよび8Bは、弁252の変形例を示している。
図7Aおよび7Bに示すフロート弁7は、円筒状の大径部701および小径部702と、大径部701と小径部702に連続する略円錐状の傾斜部703と、大径部701の内壁に固定された平面状のメッシュ704(
図7Aでは図示を省略している)と、傾斜部703に外縁が接するように形成された略円錐状のフロート部705と、フロート部705の円頂から小径部702側に延びるガイド部707とを備えている。放出部250の内圧が閾値以下に低い場合には、
図7Bに示すようにフロート部705が傾斜部703に接して閉弁し、放出部250の内圧が閾値を超えて高くなるとフロート部705がメッシュ704側に移動して傾斜部703から離れて開弁する。また、
図8Aおよび8Bに示すフロート弁8は、円筒状の大径部801および小径部802と、大径部801と小径部802に連続する略円錐状の傾斜部803と、大径部801の内壁に固定された曲面状のメッシュ804(
図8Aでは図示を省略している)と、傾斜部803に接するように形成された略球状のフロート部805とを備えている。放出部250の内圧が閾値以下に低い場合には、
図8Bに示すようにフロート部805が傾斜部803に接して閉弁し、放出部250の内圧が閾値を超えて高くなるとフロート部805がメッシュ804側に移動して傾斜部803から離れて開弁する。弁7,8を開閉する際の内圧の閾値は、フロート部705,805の重量等を調整することによって調整できる。