(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングと、前記ハウジングの内部に被粉砕物を供給する供給部と、前記ハウジングの内部に設けられ、前記被粉砕物を粉砕する粉砕部と、前記ハウジングの内部において前記粉砕部の上方に設けられ、回転分級羽根を有する回転分級機と、前記ハウジングの内部に気流を形成し、前記粉砕部で粉砕された粉砕物を前記回転分級機に輸送する輸送機構と、前記回転分級羽根を通過した前記粉砕物を前記ハウジングの外部に排出する排出管と、を有する竪型ローラミルであって、
前記回転分級機の外側を取り囲み、上昇する前記気流を前記回転分級羽根に沿う方向に導く筒状部材を有し、
前記回転分級羽根の下部は、前記排出管に連通するガス流路と対向せずに前記粉砕物を分級する前段分級領域を形成し、
前記筒状部材は、上下方向の途中部位で屈曲する縦断面形状を有し、屈曲部位の下部が前記回転分級羽根の下端に向かって上昇する前記気流を誘い込む拡径部を形成している、ことを特徴とする竪型ローラミル。
前記筒状部材は、前記回転分級羽根の下部から上部にかけて前記回転分級羽根の翼間に前記気流が流れる流路を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の竪型ローラミル。
【背景技術】
【0002】
従来、微粉炭やセメントなどの被粉砕物を所望の粒子径に粉砕し、分級する装置として、竪型ローラミルが知られている。この竪型ローラミルは、粉砕部で被粉砕物を粉砕し、この粉砕物を気流に乗せて上昇させ、上昇した粉砕物を粉砕部の上方に設けられた分級機で分級するものである。このような竪型ローラミルにあっては、気流に混在させる粒子(粉砕物)を粒子径によって分類するための分級機の性能が重要となる。
【0003】
竪型ローラミルに用いられる分級機は、垂直方向の軸を中心に回転する翼列を利用した回転分級機がほとんどである。この回転分級機における粒子を分級する原理は、粒子にガス流れが当たることによって作用する流体抗力と回転分級羽根の回転に伴って生じる旋回挙動によって作用する遠心力との差し引きによって粒子が回転分級羽根を通過できるかどうかで分級が行われる遠心分級と、粒子が回転分級羽根の表面に衝突してはじき出される衝突分級があると言われている。
【0004】
従来技術では、回転分級機の形状やガス流れの流入方向を制御する等の工夫をすることによって分級性能を高めている。例えば、下記特許文献1では、回転分級機の周りにガイドコーンと称される漏斗状の構造物でミル内部を区分し、ミル内部の外周を吹き上がる上昇流とミル中央部付近を下降する循環流れを形成している。これにより、ミル内部の外周を吹き上がる気流を偏向させて、粒子を回転分級羽根に向かう方向に流し、また、分級した粒子(粗粒子)をガイドコーンの内側を通って落下させ、再粉砕を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には、次のような問題がある。
従来技術では、分級した粒子を粉砕テーブル中央に戻すために漏斗状の構造物を設けており、その外側に上昇流を流し、分級後に内側に下降流を形成する構成となっている。この構成においては、粗粒子を含むすべての粒子を、一旦、最上部まで持ち上げる必要があるため、圧力損失が大きく、吹き上げに大きな負荷がかかっている。また、最上部において、気流を回転分級機に向かって偏向させており、気流の流入速度に偏りが生じ、流速の高い領域においては粗粒子が回転分級羽根を通過することがあり、結果として分級性能が低下する、という問題がある。
【0007】
この問題を解決するべく、本願発明者は、回転分級機の外側を取り囲むように筒状部材を設け、粉砕物を輸送する気流の上昇流を回転分級羽根に沿うように流し、筒状部材の内側で粉砕物を分級した後、その外側に下降流を形成する構成を発案した。この構成によれば、粉砕物は上昇途中で分級されることとなり、粗粒子を含む粉砕物の全てを最上部まで吹き上げる必要がなく、負荷が低減される。また、この構成によれば、分級後に気流の偏向が行われるため、分級の際に粗粒子が回転分級羽根を通過する確率を低減することができる。ところで、この構成では、上昇流を回転分級羽根に沿って流すため、回転分級羽根の下部から上部に亘って上述の遠心分級と衝突分級が行われる。分級が開始される回転分級羽根の下部においては、上昇流の流速が高いため、粉砕物にガス流れが当たることによって作用する流体抗力が回転分級羽根の回転に伴って生じる旋回挙動によって作用する遠心力を上回り易く、粗粒子が回転分級羽根を通過し易いため、この点を改善する必要があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、分級にかかる負荷を低減しつつ、分級性能を向上させることができる竪型ローラミルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、ハウジングと、前記ハウジングの内部に被粉砕物を供給する供給部と、前記ハウジングの内部に設けられ、前記被粉砕物を粉砕する粉砕部と、前記ハウジングの内部において前記粉砕部の上方に設けられ、回転分級羽根を有する回転分級機と、前記ハウジングの内部に気流を形成し、前記粉砕部で粉砕された粉砕物を前記回転分級機に輸送する輸送機構と、前記回転分級羽根を通過した前記粉砕物を前記ハウジングの外部に排出する排出管と、を有する竪型ローラミルであって、前記回転分級機の外側を取り囲み、上昇する前記気流を前記回転分級羽根に沿う方向に導く筒状部材を有し、前記回転分級羽根の下部は、前記排出管に連通するガス流路と対向せずに前記粉砕物を分級する前段分級領域を形成する、という構成を採用する。
【0010】
また、本発明においては、前記筒状部材は、前記回転分級羽根の下部から上部にかけて前記回転分級羽根の翼間に前記気流が流れる流路を形成する、という構成を採用する。
【0011】
また、本発明においては、前記筒状部材は、前記回転分級羽根の下端に向かって上昇する前記気流を誘い込む拡径部を有する、という構成を採用する。
【0012】
また、本発明においては、前記回転分級羽根は、上部から下部に向かうに従って翼幅が大きくなる、という構成を採用する。
【0013】
また、本発明においては、前記粉砕部と前記筒状部材との間において前記ハウジングの内壁から突出し、上昇する前記気流を前記筒状部材の内側に導く気流誘導部を有する、という構成を採用する。
【0014】
また、本発明においては、前記粉砕部と前記筒状部材との間において前記ハウジングの内壁から突出し、前記筒状部材の外側を下降する前記気流に含まれる前記粉砕物を前記粉砕部に導く粉砕物誘導部を有する、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転分級機の外側を取り囲むように筒状部材を設け、粉砕物を輸送する気流の上昇流を回転分級羽根に沿うように流して粉砕物を分級した後、筒状部材の外側に下降流を形成する。この構成によれば、粉砕物は上昇途中で分級されることとなり、粗粒子を含む粉砕物の全てを最上部まで吹き上げる必要がなく、負荷が低減される。また、この構成によれば、分級後に気流の偏向が行われるため、分級の際に粗粒子が回転分級羽根を通過する確率を低減することができる。また、本発明によれば、回転分級羽根の下部に前段分級領域を形成し、粉砕物に含まれる粗粒子を予め分級することで、上昇流の流速の高い回転分級羽根の下部(分級開始位置)において、粗粒子が回転分級羽根を通過する確率を低減することができる。すなわち、前段分級領域は、排出管に連通するガス流路と対向せずに、回転分級羽根の旋回のみによって粉砕物を分級する領域であり、回転分級羽根を通過させることなく粉砕物を予め分級することができる。
したがって、本発明では、分級にかかる負荷を低減しつつ、分級性能を向上させることができる竪型ローラミルが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態における竪型ローラミル1の概略構成図である。
図2は、本発明の実施形態における竪型ローラミル1の要部拡大図である。
本実施形態の竪型ローラミル1は、被粉砕物としての塊炭(原炭)を粉砕し、所望の粒径の微粉炭(粉砕物)を分級し、気流に乗せて排出するものである。図に示す符号Cは、被粉砕物、粉砕物を示し、符号Fは気流を示す。
【0019】
図1に示すように、竪型ローラミル1は、ハウジング2と、ハウジング2の内部に被粉砕物を供給する供給部3と、ハウジング2の内部に設けられた粉砕部4と、ハウジング2の内部において粉砕部4の上方に設けられた回転分級機5と、粉砕物を回転分級機5に気流輸送する輸送機構6と、後述する筒状部材20及び環状部材30と、を備えて構成されたものである。
【0020】
ハウジング2は、鉛直方向に沿って立てられた略円筒状のもので、その上部開口を覆う蓋体7を有したものである。蓋体7には、その中央部に円筒状の供給部3が挿通されている。この供給部3は、鉛直方向に沿って配置されたもので、その上部開口が蓋体7の外側に配置され、下部開口がハウジング2の内部の回転分級機5の下方に配置されたものである。供給部3の上部開口には、図示しないシューター等の原炭供給装置が接続されており、これによって所定量の塊炭(被粉砕物)が、ハウジング2の内部に自動的に供給されるようになっている。
【0021】
また、蓋体7には、その裏面側に回転分級機5が取り付けられている。この回転分級機5は、蓋体7の中心部に設けられた回転ロータ(図示せず)に、多数枚の回転分級羽根8を回転ロータの周方向に等間隔で配置したもので、駆動装置によって回転ロータを回転させることにより、回転分級羽根8を所定の回転速度、例えば数十〜百数十rpm程度で同方向に回転させるものである。
【0022】
そして、このような構成のもとに回転分級機5は、回転分級羽根8の回転によって生じる気流の遠心力により、所定の粒径より大きな粗粉を回転分級機5の外側に押しやり、この大きな粗粉を重力によって落下させる。また、所定の粒径より小さな微粉については、回転分級羽根8間をすり抜けさせ、通過させる。そして、
図1に示すようにハウジング2の上部に設けられた排出管9を通過させ、ハウジング2の外部に製品微粉として排出するようになっている。
【0023】
また、この回転分級機5の下方には、回転分級羽根8の下側にガイド部10が設けられている。このガイド部10は、下側を小径とし、上側と大径とする円錐台状のもので、その外周面に沿って後述する上昇流を回転分級機5の外周側に案内するものである。
【0024】
粉砕部4は、ハウジング2の底部に設けられた粉砕テーブル11と、この粉砕テーブル11の上を転動する複数の回転ローラ12と、粉砕テーブル11をハウジング2の周方向に沿って回転させるための駆動装置とを備えて構成されたものである。
粉砕テーブル11は、複数のテーブルセグメントが円盤状に組み合わされたもので、この円盤が水平面上にて比較的低速で回転するよう構成されたものである。回転ローラ12は、油圧あるいはバネ等によって粉砕テーブル11に圧接させられ、その状態で粉砕テーブル11の回転によりこの粉砕テーブル11上を転動するものである。
【0025】
このような構成のもとに粉砕部4は、前記供給部3から粉砕テーブル11の中央部に供給された塊炭(被粉砕物)を、粉砕テーブル11の遠心力によってその外周側に移動させ、各テーブルセグメントの上面と回転ローラ12との間に噛み込み、圧縮力と剪断力とによって粉砕するようになっている。
【0026】
輸送機構6は、ハウジング2の底部側側面に設けられた吸気部13と、この吸気部13の吸気口13aから外部の空気を吸入させるための吸引手段(図示せず)とを備えたもので、吸引手段によって空気を粉砕テーブル11の外縁部に案内し、その後、ハウジング2の内部を上昇させて回転分級機5に流入させるようにしたものである。このような構成のもとにこの輸送機構6は、ハウジング2の底部側、すなわち粉砕テーブル11側から、ハウジング2の上部側、すなわち回転分級機5側に向かう気流を生じさせ、この気流に乗せて(同伴させて)、粉砕テーブル11上の粉砕物、すなわち微粉炭や一部の粗粉炭を上昇させ、回転分級機5側に輸送するようになっている。
【0027】
上記構成の竪型ローラミル1には、回転分級機5の外側を取り囲む筒状部材20が設けられている。筒状部材20は、図示しない梁部材によってハウジング2に支持されている。この筒状部材20は、
図2に示すように、上昇流を回転分級羽根8に沿う方向に導くものであり、回転分級羽根8と一定の間隔をあけて配置されたガイド面21を有する。本実施形態の回転分級羽根8は、上方に向かうに従って径方向に広がるように傾斜配置されており、ガイド面21は、それに対応して逆立ち円錐状(漏斗状)に形成されている。この筒状部材20の上端部20aは、回転分級羽根8の全高の半分以上の高さに配置することが好ましい。
【0028】
筒状部材20は、
図2に示すように、回転分級羽根8の下部8bから上部8aにかけて回転分級羽根8の翼間に気流が流れる流路を形成する。すなわち、ガイド面21と回転分級羽根8との間隔は、狭く設定することが好ましい。例えば、ガイド面21は、回転分級羽根8と摺接するような間隔で配置してもよい。筒状部材20は、回転分級羽根8の下端8b1に向かって上昇する気流を誘い込む拡径部22を有する。回転分級羽根8の下端8b1は、回転分級羽根8の翼間流路の入口を形成する。拡径部22は、ガイド面21の下端から下方に延在している。この拡径部22は、下方に向かうに従って径が漸次大きくなる円錐状に形成されている。
【0029】
回転分級羽根8の下部8bは、排出管9に連通するガス流路9aと対向せずに粉砕物を分級する前段分級領域X1を形成する。回転分級羽根8の下部8bは、サポート部材5aに対向している。サポート部材5aは、回転分級機5の回転ロータに回転分級羽根8の下部8bを取り付ける部分(壁部)であり、ガス流路9aが形成されていない。すなわち、前段分級領域X1は、ガス流路9aと対向せずに、回転分級羽根8の旋回のみによって粉砕物を、回転分級羽根8を通過させることなく分級する領域である。
【0030】
前段分級領域X1の上には、後段分級領域X2が形成される。後段分級領域X2は、回転分級羽根8の下部8b以外の部分によって形成され、排出管9と連通するガス流路9aと対向して粉砕物を分級する領域である。後段分級領域X2においては、粉砕物にガス流れが当たることによって作用する流体抗力と回転分級羽根8の回転に伴って生じる旋回挙動によって作用する遠心力との差し引きによって粉砕物が回転分級羽根8を通過できるかどうかで分級が行われる遠心分級と、粉砕物が回転分級羽根8の表面に衝突してはじき出される衝突分級とが行われる。
【0031】
前段分級領域X1を形成する回転分級羽根8の下部8bの長さは、回転分級羽根8の回転による遠心力の作用によって、粉砕物を回転分級羽根8の径方向(幅方向)に移動させる距離をある程度以上にするために必要な時間を確保する長さが必要となる。粉砕物の径方向の移動距離としては、後段分級領域X2での流入時までにはある程度、回転分級羽根8の外側に位置していることが必要なので、例えば、前段分級領域X1を形成する回転分級羽根8の下部8bの長さは、回転分級羽根8の翼幅Wの半分以上を移動するのに必要な長さを目安に設定することが好ましい。具体的に、翼幅Wの半分以上を移動するのに必要な前段分級領域X1(回転分級羽根8の下部8b)の翼高さは、本実機の試験装置の代表的な寸法、運転条件に基づいて算出した結果、およそ翼幅Wの1.75倍以上となる。
【0032】
図1に示すように、竪型ローラミル1は、粉砕部4と筒状部材20との間においてハウジング2の内壁2aから突出して設けられた環状部材30を有する。環状部材30は、ハウジング2の内壁2aに沿って上昇する気流を筒状部材20の内側に導く気流誘導部31と、筒状部材20の外側を下降する気流に含まれる粉砕物を粉砕部4に導く粉砕物誘導部32と、を有する。
【0033】
気流誘導部31は、環状部材30の下側にリング状に設けられると共に斜め上方に傾く傾斜面を有する。一方、粉砕物誘導部32は、環状部材30の上側にリング状に設けられると共に斜め下方に傾く傾斜面を有する。粉砕物誘導部32は、粉砕物が滑り落ちやすいように気流誘導部31よりも傾斜角度を大きくしている。このように、環状部材30には、気流誘導部31の斜め上方に傾く傾斜面と、粉砕物誘導部32の斜め下方に傾く傾斜面とが、上下において背面合せで一体的に設けられている。
【0034】
このような構成の竪型ローラミル1によって塊炭(原炭)を粉砕し、所望の粒径の微粉炭を分級し排出管9から排出するには、従来と同様にして供給部3より塊炭(原炭)を供給し、粉砕部4を駆動させるとともに、輸送機構6、回転分級機5をそれぞれ駆動させる(
図1参照)。すると、塊炭は粉砕部4において粉砕され、粗粉炭や微粉炭となる。
【0035】
ここで、本実施形態では、粒径が例えば100μm程度以下の微粉炭はこれを輸送する気流とともに回転分級機5内に流入させ、これより大きい粗粉炭は回転分級羽根8の遠心力によって外側に押しやるように、回転分級羽根8の回転速度等が設定されている。これは、粗粉炭は、例えば微粉炭焚ボイラの燃料として用いた場合に、燃焼に寄与しない未燃部分が残ってしまい、エネルギー効率を低下させてしまうからである。
【0036】
粉砕部4において形成された粗粉炭や微粉炭は、輸送機構6によって生じさせられた気流に乗せられ、粉砕部4の粉砕テーブル11上からハウジング2の上部側に運ばれる。輸送機構6の吸引手段によって吸引された空気は、粉砕テーブル11の外縁部を通過する際に、ハウジング2の内壁2aに沿ってその周方向に案内されることにより、旋回成分が付与された上昇流を形成する。したがって、粗粉炭や微粉炭を乗せて運ぶ(同伴する)気流は、旋回成分を含むことでその遠心力によってハウジング2の内壁2aに沿って流れるようになり、これによってこの内壁2a近傍を上昇するようになる。
【0037】
この気流は、ハウジング2の内壁2aに沿って粉砕部4を通過すると、
図2に示すように、環状部材30の気流誘導部31によって筒状部材20の内側に導かれる。本実施形態の環状部材30(気流誘導部31)は、ハウジング2の中心部側に突出しているため、内壁2aに沿って上昇する気流を筒状部材20の内側に導くことができる。筒状部材20は、回転分級機5の外側を取り囲むように設けられており、上昇流を回転分級羽根8に沿う方向に導く。この構成によれば、粉砕物は上昇途中で分級されることとなり、分級前に粗粒子を含む粉砕物の全てを最上部まで吹き上げる必要がなく、輸送機構6の負荷が低減される。
【0038】
筒状部材20の内側では、回転分級羽根8の下部8bから上部8aに亘って粉砕物の分級が行われる。分級が開始される回転分級羽根8の下部8bにおいては、上昇流の流速が高いため、粉砕物にガス流れが当たることによって作用する流体抗力が回転分級羽根8の回転に伴って生じる旋回挙動によって作用する遠心力を上回り易く、粗粒子が回転分級羽根8を通過し易いため、本実施形態では、回転分級羽根8の下部8bを従来よりも下方に延長させ、排出管9に連通するガス流路9aと対向せずに粉砕物を分級する前段分級領域X1を形成している。
【0039】
前段分級領域X1は、回転分級羽根8の旋回のみによって粉砕物を分級する領域であり、回転分級羽根8の回転に伴う遠心力により粉砕物を分級する遠心分級と、回転分級羽根8との衝突により粉砕物を分級する衝突分級が同時に行われる。このように、前段分級領域X1において粉砕物に含まれる粗粒子を予め分離しておくことによって、後段分級領域X2において不要な粗粒子が回転分級羽根8を通過する確率を低減することができる。また、粉砕物に含まれる粗粒子を予め分離することで、回転分級羽根8を通過する部分のガス流速を多少上げることが許容されるため、回転分級機5の高さを低くして、竪型ローラミル1全体の高さを下げる効果も期待できる。
【0040】
ここで、筒状部材20は、
図2に示すように、回転分級羽根8との間隔が狭く設定され、回転分級羽根8の下部8bから上部8aにかけて回転分級羽根8の翼間に気流が流れる流路を形成する。この構成によれば、前段分級領域X1において、回転分級羽根8の翼間に粉砕物を導いて回転分級羽根8と衝突し易くし、これにより、前段分級領域X1における分級性能を向上させることができる。また、筒状部材20は、回転分級羽根8の下端8b1に向かって上昇する気流を誘い込む拡径部22を有する。この構成によれば、回転分級羽根8の下端8b1から気流が導入されるため、前段分級領域X1の有効長さ(回転分級羽根8の下部8bにおいて粉砕物が分級される経路の長さ)が長くなる。これにより、前段分級領域X1における分級性能を向上させることができる。
【0041】
前段分級領域X1を通過した粉砕物は、後段分級領域X2においてさらに分級される。後段分級領域X2は、排出管9と連通するガス流路9aと対向して粉砕物を分級する領域であり、粉砕物にガス流れが当たることによって作用する流体抗力と回転分級羽根8の回転に伴って生じる旋回挙動によって作用する遠心力との差し引きによって粉砕物が回転分級羽根8を通過できるかどうかで分級が行われる遠心分級と、粉砕物が回転分級羽根8の表面に衝突してはじき出される衝突分級とが行われる。本実施形態では、回転分級羽根8に沿って気流を導いているため、突発的に速度が大きくなった粗粒子が誤って回転分級羽根8を通過してしまう確率を低減することができる。後段分級領域X2において遠心力に抗して回転分級羽根8を通過した微粒子は、ガス流路9aを経て排出管9からハウジング2の外部に排出される。
【0042】
一方、回転分級羽根8を通過しなかった粗粒子は、筒状部材20の上端部20aまで到達し、筒状部材20の外側を下降するため、筒状部材20の内側を上昇する気流と分断される。このため、分級された粗粒子が、上昇流によって押し戻されて回転分級機5に何度もアプローチする間に、誤って回転分級羽根8を通過する確率を低減することができる。また、本実施形態では、分級後に気流の偏向が行われるため、分級の際に粗粒子が回転分級羽根8を誤って通過する確率を低減することができる。なお、筒状部材20の外側を下降する粗粒子は、ハウジング2の内壁2aから突出する粉砕物誘導部32によって、粉砕テーブル11の中央部に戻される。これにより、粗粒子の再度の粉砕工程までにかかる時間を短縮することができる。
【0043】
このように、上述の本実施形態によれば、ハウジング2と、ハウジング2の内部に被粉砕物を供給する供給部3と、ハウジング2の内部に設けられ、被粉砕物を粉砕する粉砕部4と、ハウジング2の内部において粉砕部4の上方に設けられ、回転分級羽根8を有する回転分級機5と、ハウジング2の内部に気流を形成し、粉砕部4で粉砕された粉砕物を回転分級機5に輸送する輸送機構6と、回転分級羽根8を通過した粉砕物をハウジング2の外部に排出する排出管9と、を有する竪型ローラミル1であって、回転分級機5の外側を取り囲み、上昇する気流を回転分級羽根8に沿う方向に導く筒状部材20を有し、回転分級羽根8の下部8bは、排出管9に連通するガス流路9aと対向せずに粉砕物を分級する前段分級領域X1を形成する、という構成を採用することによって、分級にかかる負荷を低減しつつ、分級性能を向上させることができる竪型ローラミル1が得られる。
【0044】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0045】
例えば、本発明は、
図3に示すような別の形態を採用を採用し得る。
図3、本発明の別実施形態における竪型ローラミル1の要部拡大図である。
図3に示す回転分級機5は、上部8aから下部8bに向かうに従って翼幅Wが大きくなる回転分級羽根8Aを有する。この構成によれば、回転分級羽根8Aの下部8bの径方向の長さが上述した実施形態よりも長くなるため、回転による遠心力の及ぶ領域を拡大するとともに 粉粉砕物との衝突面積を大きく確保することができる。これにより、前段分級領域X1における分級性能をさらに向上させることができる。
【0046】
また、例えば、上記実施形態では、筒状部材20が逆立ち円錐状である構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、回転分級機5の回転分級羽根8が垂直配置されていれば、筒状部材20が円筒状であってもよい。
【0047】
また、例えば、上記実施形態では、気流誘導部31と粉砕物誘導部32が環状部材30に一体的に設けられる構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、気流誘導部31と粉砕物誘導部32を別体で設けてもよい。しかし、本実施形態のように環状部材30に一体的に設けることで、構造をシンプル化し、製作コストを抑えることができる。