特許第6759852号(P6759852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759852
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】I/Oモジュール
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20200910BHJP
   G05B 9/02 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   G05B19/05 L
   G05B9/02 B
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-162105(P2016-162105)
(22)【出願日】2016年8月22日
(65)【公開番号】特開2018-32086(P2018-32086A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】前川 貴昭
【審査官】 中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−312573(JP,A)
【文献】 特開2015−008600(JP,A)
【文献】 特開2007−285969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B19/04−19/05,
G01R31/00−31/02,
H01H 9/00− 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの供給電圧が動作可能電圧範囲の下限値以上とされることにより、第1の外部機器から出力される信号を取得し、取得した信号に対応する信号を第2の外部機器に出力する通信処理の実行を可能とし、前記電源からの供給電圧が前記動作可能電圧範囲の下限値未満とされることにより前記通信処理の実行を不可能とする通信制御部と、
前記通信制御部及び前記電源を接続する給電経路上に設けられ、閉状態とされることにより前記電源から前記通信制御部へと給電し、開状態とされることにより前記電源から前記通信制御部への給電を遮断する遮断用スイッチと、
前記給電経路のうち前記遮断用スイッチよりも前記通信制御部側の電圧を診断用電圧として検出する電圧検出部と、
前記給電経路のうち前記遮断用スイッチよりも前記通信制御部側に接続され、前記遮断用スイッチが閉状態とされることにより前記電源から供給される電力を蓄え、前記遮断用スイッチが開状態とされることにより自身に蓄えられた電力を前記通信制御部に供給するコンデンサと、を備え、
前記電源の取り得る出力電圧範囲の下限値が、前記動作可能電圧範囲の下限値よりも高く設定されており、
前記通信制御部は、前記電圧検出部が検出した前記診断用電圧が前記動作可能電圧範囲の下限値未満とならないように、前記遮断用スイッチの閉操作から開操作への切り替えを複数回行う操作部を有し、
前記遮断用スイッチに異常が生じていない場合、前記操作部による前記遮断用スイッチの閉操作から開操作への複数回の切り替えにより、前記診断用電圧が前記出力電圧範囲の下限値と前記動作可能電圧範囲の下限値との間の電圧になり、その後、前記診断用電圧が前記動作可能電圧範囲の下限値未満になる前に前記遮断用スイッチが前記操作部により閉操作に切り替えられ、
前記通信制御部は、
前記操作部が前記遮断用スイッチを開操作している期間において、前記診断用電圧が前記出力電圧範囲の下限値未満になった場合、前記遮断用スイッチに異常が生じていない旨判定し、前記操作部が前記遮断用スイッチを開操作している期間において、前記診断用電圧が前記出力電圧範囲の下限値未満にならない場合、前記遮断用スイッチを開状態にできない異常が生じている旨判定する診断処理を行い、
前記操作部が前記遮断用スイッチを閉操作している期間において前記通信処理を行うI/Oモジュール。
【請求項2】
前記第2の外部機器は、制御対象機器の動作指令を出力するプログラマブルロジックコントローラであり、
前記第1の外部機器は、前記制御対象機器を非常停止させる非常停止信号を出力する安全機器であり、
前記プログラマブルロジックコントローラは、前記非常停止信号が入力されたと判定した場合、前記制御対象機器の動作停止指令を出力する請求項に記載のI/Oモジュール。
【請求項3】
前記第2の外部機器は、制御対象機器の動作指令を出力するプログラマブルロジックコントローラであり、
前記プログラマブルロジックコントローラは、該プログラマブルロジックコントローラ及び前記第1の外部機器の間の通信が前記通信制御部によって遮断されたと判定した場合、前記制御対象機器の動作停止指令を出力する請求項1又は2に記載のI/Oモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、I/Oモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に見られるように、複数の外部機器の間の通信を行うI/Oモジュールが知られている。以下、I/Oモジュールとして、図7に示すように、産業用ロボットに動作指令を出力する安全PLC(Programmable Logic Controller)と、非常停止スイッチとの間の通信を行うものを例にして説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−39740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7に示すように、I/Oモジュール10は、安全PLC100と非常停止スイッチ110との間の通信を行う。安全PLC100は、コントローラ120を介してロボット130に動作指令を出力する。
【0005】
I/Oモジュール10は、MCU11(マイクロコンピュータ)、通信回路12、定電圧電源13、遮断用スイッチ14、及び切替スイッチ15を備えている。MCU11は、非常停止スイッチ110の出力信号を取得し、取得した信号に対応する信号を通信回路12に出力する。
【0006】
MCU11は、遮断用スイッチ14を閉(オン)操作し、また、定電圧電源13と通信回路12とが接続されるように切替スイッチ15を操作する。これにより、通信回路12には定電圧電源13から給電され、通信回路12によって非常停止スイッチ110及び安全PLC100の間の通信が可能となる。
【0007】
一方、MCU11は、遮断用スイッチ14を開(オフ)操作に切り替える。これにより、遮断用スイッチ14が開状態に切り替えられ、定電圧電源13から通信回路12への給電が遮断される。その結果、通信回路12は、非常停止スイッチ110及びPLC100の間の通信を遮断する。通信が遮断されると、安全PLC100からコントローラ120にロボット130の動作停止指令が出力される。
【0008】
ここで、I/Oモジュール10に対する機能安全として、I/Oモジュール10に自身の異常を定期的に診断させる自己診断機能を持たせ、異常が生じていると診断された場合、安全な状態に移行させることが要求されている。図7に示す構成では、定電圧電源13から通信回路12への給電が遮断された場合に通信回路12が通信を遮断し、通信の遮断によって安全PLC100から動作停止指令が出力される。このため、安全な状態への移行とは、定電圧電源13から通信回路12への給電を停止することである。給電を停止するには、遮断用スイッチ14を閉状態から開状態に切り替えることができなければならない。そこでMCU11は、自己診断機能として、遮断用スイッチ14を開状態にできない異常の有無を診断する機能を有している。
【0009】
I/Oモジュール10は、定電圧電源13から通信回路12までの給電経路のうち、遮断用スイッチ14と切替スイッチ15との間の電圧を診断用電圧として検出するための抵抗体16を備えている。遮断用スイッチ14を開状態に切り替えることができる場合、遮断用スイッチ14の開操作への切り替えにより診断用電圧が低下する。これに対し、遮断用スイッチ14を開状態にできない異常が生じている場合、遮断用スイッチ14を開操作に切り替えた場合であっても、診断用電圧は低下しない。このため、MCU11は、遮断用スイッチ14を開操作に切り替えた場合において、診断用電圧が低下したときに遮断用スイッチ14を開状態にできない異常が生じていない旨判定し、診断用電圧が低下しないときに上記異常が生じている旨判定する。
【0010】
ただし、この構成では、診断を実施するたびに遮断用スイッチ14が開操作に切り替えられる。この場合、遮断用スイッチ14に異常が生じていないならば、診断を実施するたびに、通信回路12への給電が遮断され、非常停止スイッチ110及び安全PLC100の間の通信が実施できなくなる。また、通信の遮断によって安全PLC100から動作停止指令が出力されるため、診断を実施するたびにロボット130は動作停止してしまう。
【0011】
この問題に対処すべく、I/Oモジュール10は、さらにサブ電源17を備えている。図7には、サブ電源17として、トランジスタ、ダイオード、コイル及びコンデンサを備えるものを示した。MCU11は、診断に先立ち、サブ電源17から通信回路12へと給電されるように切替スイッチ15を切替制御する。この状態で、MCU11は、遮断用スイッチ14を開操作に切り替えて診断を実施する。
【0012】
しかしながら、サブ電源17を備える構成によれば、診断のたびに通信は遮断されないものの、I/Oモジュール10の構成部品数が増加してしまう。
【0013】
また、サブ電源17を備える構成によれば、機能安全の要求を満たすための診断対象に、切替スイッチ15及びサブ電源17を含める必要がある。この場合、診断対象が増加し、診断処理が複雑化する懸念がある。
【0014】
なお、安全PLC100と非常停止スイッチ110との間の通信を行うI/Oモジュールに限らず、複数の外部機器の間の通信を行うI/Oモジュールであれば、上述した問題は同様に生じ得る。
【0015】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、構成部品数の増加及び診断処理の複雑化を防止できるI/Oモジュールを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の発明は、電源からの供給電圧が動作可能電圧範囲の下限値以上とされることにより第1の外部機器及び第2の外部機器の間の通信を可能とし、前記電源からの供給電圧が前記動作可能電圧範囲の下限値未満とされることにより前記第1の外部機器及び前記第2の外部機器の間の通信を遮断する通信制御部と、前記通信制御部及び前記電源を接続する給電経路上に設けられ、閉状態とされることにより前記電源から前記通信制御部へと給電し、開状態とされることにより前記電源から前記通信制御部への給電を遮断する遮断用スイッチと、前記給電経路のうち前記遮断用スイッチよりも前記通信制御部側の電圧を診断用電圧として検出する電圧検出部と、前記給電経路のうち前記遮断用スイッチよりも前記通信制御部側に接続され、前記遮断用スイッチが閉状態とされることにより前記電源から供給される電力を蓄え、前記遮断用スイッチが開状態とされることにより自身に蓄えられた電力を前記通信制御部に供給するコンデンサと、を備える。第1の発明では、前記電源の取り得る出力電圧範囲の下限値が、前記動作可能電圧範囲の下限値よりも高く設定されており、前記通信制御部は、前記遮断用スイッチを開操作に切り替えた後、前記遮断用スイッチが開状態になったと仮定した場合に、前記電圧検出部が検出した前記診断用電圧が前記出力電圧範囲の下限値と前記動作可能電圧範囲の下限値との間の電圧になる期間中に前記遮断用スイッチを閉操作に切り替えるように、前記遮断用スイッチを開閉操作する操作部と、前記操作部が前記遮断用スイッチを開操作している期間において、前記診断用電圧が前記出力電圧範囲の下限値未満になった場合、前記遮断用スイッチに異常が生じていない旨判定し、前記操作部が前記遮断用スイッチを開操作している期間において、前記診断用電圧が前記出力電圧範囲の下限値未満にならない場合、前記遮断用スイッチを開状態にできない異常が生じている旨判定する診断処理を行う診断部と、を有する。
【0017】
第1の発明では、通信制御部及び電源を接続する給電経路上に設けられた遮断用スイッチが閉状態とされることにより、電源から通信制御部へと給電される。これにより、電源から通信制御部への供給電圧が通信制御部の動作可能電圧範囲の下限値以上とされる。その結果、通信制御部によって第1の外部機器及び第2の外部機器の間の通信が可能とされる。一方、遮断用スイッチが開状態とされることにより、電源から通信制御部への給電が停止される。これにより、電源から通信制御部への供給電圧が通信制御部の動作可能電圧範囲の下限値未満となる。その結果、通信制御部によって第1の外部機器及び第2の外部機器の間の通信が遮断される。
【0018】
第1の発明は、給電経路のうち遮断用スイッチよりも通信制御部側の電圧を検出する電圧検出部と、給電経路のうち遮断用スイッチよりも通信制御部側に接続されたコンデンサとを備えている。コンデンサは、遮断用スイッチが閉状態とされることにより電源から供給される電力を蓄え、遮断用スイッチが開状態とされることにより自身に蓄えられた電力を通信制御部に供給する。
【0019】
第1の発明はコンデンサを備えているため、診断のために遮断用スイッチが一時的に開状態に切り替えられたとしても、遮断用スイッチが開状態とされている期間においてコンデンサから通信制御部へと給電される。このため、通信制御部に供給される電圧がその動作可能電圧範囲の下限値をすぐには下回らない。これにより、診断のために遮断用スイッチを一時的に開操作する時間を確保できる。
【0020】
さらに第1の発明では、通信制御部の電力供給源となる電源の取り得る出力電圧範囲の下限値が、通信制御部の動作可能電圧範囲の下限値よりも高く設定されている。この設定を前提として、操作部は、遮断用スイッチを開操作に切り替えた後、遮断用スイッチが開状態になったと仮定した場合に、電圧検出部が検出した診断用電圧が、電源の取り得る出力電圧範囲の下限値と通信制御部の動作可能電圧範囲の下限値との間の電圧になる期間中に遮断用スイッチを閉操作に切り替えるように、遮断用スイッチを開閉操作する。これにより、遮断用スイッチに異常が生じていない場合、操作部によって遮断用スイッチが開操作されている期間において、診断用電圧が、電源の取り得る出力電圧範囲の下限値未満になる。一方、遮断用スイッチに上記異常が生じている場合、操作部によって遮断用スイッチを開操作したとしても、遮断用スイッチが開状態に切り替わらない。このため、遮断用スイッチが開操作されている期間において、診断用電圧が電源の取り得る出力電圧範囲の下限値未満にならない。
【0021】
さらに第1の発明では、診断用電圧が、電源の取り得る出力電圧範囲の下限値と通信制御部の動作可能電圧範囲の下限値との間の電圧になる期間中に、遮断用スイッチが閉操作に切り替えられる。このため、遮断用スイッチが開操作されている期間において、診断用電圧が動作可能電圧範囲の下限値未満にならない。これにより、上述したサブ電源及び切替スイッチを備えることなく、診断のたびに、電源から通信制御部への給電が停止され、第1の外部機器及び第2の外部機器の間の通信が遮断されるのを防止できる。したがって第1の発明によれば、構成部品数の増加及び診断処理の複雑化を防止できる。
【0022】
ここで第1の発明は、例えば第2の発明のように具体化することができる。詳しくは、第2の発明では、前記出力電圧範囲の下限値未満であって、かつ、前記動作可能電圧範囲の下限値以上の電圧が規定電圧として設定されており、前記遮断用スイッチが開操作に切り替えられてから、前記遮断用スイッチが開状態になったと仮定した場合に前記診断用電圧が低下して前記規定電圧になると想定されるタイミングまでの時間が規定時間として設定されており、前記操作部は、前記遮断用スイッチを前記規定時間に渡って開操作し続けた後、前記遮断用スイッチを閉操作に切り替える。
【0023】
第2の発明では、規定電圧及び規定時間が上記のように設定されている。そして、遮断用スイッチが規定時間に渡って開操作し続けられる。このため、遮断用スイッチに異常が生じていない場合、遮断用スイッチが開操作に切り替えられてから規定時間経過するまでに、診断用電圧が、電源の取り得る出力電圧範囲の下限値未満となる。
【0024】
一方、遮断用スイッチを開状態にできない異常が生じている場合、遮断用スイッチが開操作に切り替えられてから規定時間経過したとしても、診断用電圧が、電源の取り得る出力電圧範囲の下限値未満とならない。
【0025】
第3の発明では、前記操作部は、前記遮断用スイッチを開操作に切り替えた後、前記診断用電圧が、前記出力電圧範囲の下限値未満であって、かつ、前記動作可能電圧範囲の下限値以上に設定された規定電圧になった場合に、前記遮断用スイッチを閉操作に切り替える。
【0026】
第3の発明では、遮断用スイッチの開操作から閉操作への切り替えを、電圧検出部により検出された診断用電圧が上記規定電圧になった場合に実施する。このように、給電経路のうち遮断用スイッチよりも通信制御部側の電圧を直接検出して遮断用スイッチを閉操作に切り替える構成によれば、通信制御部への供給電圧が動作可能電圧範囲の下限値未満になることを的確に防止できる。
【0027】
第4の発明では、前記通信制御部は、前記第1の外部機器から出力される信号を取得し、取得した信号に対応する信号を前記第2の外部機器に出力する通信処理を行い、前記通信制御部は、前記操作部及び前記診断部を有しており、前記操作部は、前記診断用電圧が前記動作可能電圧範囲の下限値未満とならないように、前記遮断用スイッチの閉操作から開操作への切り替えを複数回行い、前記診断部は、前記操作部が前記遮断用スイッチを開操作している期間において、前記診断処理を行い、前記通信制御部は、前記操作部が前記遮断用スイッチを閉操作している期間において、前記通信処理を行う。
【0028】
第4の発明では、通信制御部が、第1の外部機器から出力される信号を取得し、取得した信号に対応する信号を第2の外部機器に出力する通信処理を行う。ここで、操作部による遮断用スイッチの操作を伴った診断処理、及び通信処理の双方を同時に行うことに対して通信制御部の処理能力が不足し得る。この場合、通信制御部は、通信処理及び診断処理のうちいずれか一方の処理を行う期間において、他方の処理を行うことができない。このため、診断処理が行われる期間が長くなる場合、通信処理が実施できない期間が長くなってしまう。
【0029】
そこで第4の発明では、診断用電圧が通信制御部の動作可能電圧範囲の下限値未満とならないように、遮断用スイッチの閉操作から開操作への切り替えが操作部により複数回行われる。そして、診断部は、遮断用スイッチが開操作されている期間において診断処理を行い、通信制御部は、遮断用スイッチが閉操作されている期間において通信処理を行う。このため、通信処理と診断処理とを交互に実施できる。これにより、診断処理を行うために通信処理が停止される時間を短縮することができる。
【0030】
第5の発明では、前記第2の外部機器は、制御対象機器の動作指令を出力するプログラマブルロジックコントローラであり、前記第1の外部機器は、前記制御対象機器を非常停止させる非常停止信号を出力する安全機器であり、前記プログラマブルロジックコントローラは、前記非常停止信号が入力されたと判定した場合、前記制御対象機器の動作停止指令を出力する。
【0031】
第5の発明では、通信制御部が、安全機器から出力される産業用ロボット等の制御対象機器の非常停止信号を取得する。この場合、通信制御部は、非常停止信号をプログラマブルロジックコントローラに出力する通信処理を行う。ここで、通信制御部の処理能力が不足する場合、通信制御部は、診断処理を行う期間において、非常停止信号を取得及び出力する通信処理を行うことができない。このため、診断処理が行われる期間が長くなる場合、通信処理が実施できない期間が長くなる。このことは、制御対象機器周辺で作業する作業者の安全を確保する観点から好ましくない。
【0032】
この点、第4の発明を前提とする第5の発明では、遮断用スイッチの閉操作から開操作への切り替えが操作部により複数回行われる。そして、診断部は、遮断用スイッチが開操作されている期間において診断処理を行い、通信制御部は、遮断用スイッチが閉操作されている期間において非常停止信号の取得及び出力を行う通信処理を行う。これにより、診断処理を行うために通信処理が停止される時間を短縮できる。したがって第5の発明によれば、遮断用スイッチを開状態にできない異常の有無を診断しつつ、作業者の安全を確保することができる。
【0033】
第6の発明は、電源からの供給電圧が動作可能電圧範囲の下限値以上とされることにより第1の外部機器及び第2の外部機器の間の通信を可能とし、前記電源からの供給電圧が前記動作可能電圧範囲の下限値未満とされることにより前記第1の外部機器及び前記第2の外部機器の間の通信を遮断する通信制御部と、前記通信制御部及び前記電源を接続する給電経路上に設けられ、閉状態とされることにより前記電源から前記通信制御部へと給電し、開状態とされることにより前記電源から前記通信制御部への給電を遮断する遮断用スイッチと、前記給電経路のうち前記遮断用スイッチよりも前記通信制御部側の電圧を診断用電圧として検出する電圧検出部と、前記給電経路のうち前記遮断用スイッチよりも前記通信制御部側に接続され、前記遮断用スイッチが閉状態とされることにより前記電源から供給される電力を蓄え、前記遮断用スイッチが開状態とされることにより自身に蓄えられた電力を前記通信制御部に供給するコンデンサと、を備えている。第6の発明では、前記通信制御部は、前記遮断用スイッチを開操作に切り替えた後、前記遮断用スイッチが開状態になったと仮定した場合に、前記電圧検出部が検出した前記診断用電圧が前記動作可能電圧範囲の下限値未満となる前に前記遮断用スイッチを閉操作に切り替えるように、前記遮断用スイッチを開閉操作する操作部と、前記操作部が前記遮断用スイッチを開操作に切り替えてから所定時間における前記診断用電圧の低下量が所定量よりも大きい場合に前記遮断用スイッチに異常が生じていない旨判定し、前記低下量が前記所定量よりも大きくない場合に前記遮断用スイッチを開状態にできない異常が生じている旨判定する診断処理を行う診断部と、を有しており、前記所定時間は、前記遮断用スイッチが開操作に切り替えられて開状態になったと仮定した場合に、前記診断用電圧が前記動作可能電圧範囲の下限値未満とならない時間に設定されている。
【0034】
第6の発明では、通信制御部及び電源を接続する給電経路上に設けられた遮断用スイッチが閉状態とされることにより、電源から通信制御部へと給電される。これにより、電源から通信制御部への供給電圧が通信制御部の動作可能電圧範囲の下限値以上とされる。その結果、通信制御部によって第1の外部機器及び第2の外部機器の間の通信が可能とされる。一方、遮断用スイッチが開状態とされることにより、電源から通信制御部への給電が停止される。これにより、電源から通信制御部への供給電圧が通信制御部の動作可能電圧範囲の下限値未満となる。その結果、通信制御部によって第1の外部機器及び第2の外部機器の間の通信が遮断される。
【0035】
第6の発明は、給電経路のうち遮断用スイッチよりも通信制御部側の電圧を検出する電圧検出部と、給電経路のうち遮断用スイッチよりも通信制御部側に接続されたコンデンサとを備えている。コンデンサは、遮断用スイッチが閉状態とされることにより電源から供給される電力を蓄え、遮断用スイッチが開状態とされることにより自身に蓄えられた電力を通信制御部に供給する。
【0036】
第6の発明によれば、コンデンサを備えているため、診断のために遮断用スイッチが一時的に開状態に切り替えられたとしても、遮断用スイッチが開状態とされている期間においてコンデンサから通信制御部へと給電される。このため、通信制御部に供給される電圧がその動作可能電圧範囲の下限値をすぐには下回らない。これにより、診断のために遮断用スイッチを一時的に開操作する時間を確保できる。
【0037】
ここで、遮断用スイッチに異常が生じていない場合、コンデンサの端子電圧は、遮断用スイッチが開状態に切り替えられた直後に急激に低下し、その低下速度は時間経過とともに徐々に低くなる。また、遮断用スイッチが開状態に切り替えられた直後における急激な電圧低下は、遮断用スイッチが閉状態とされている場合に自然に発生する可能性は小さい。この点に鑑み、第6の発明では、操作部が遮断用スイッチを開操作に切り替えてから所定時間における診断用電圧の低下量が所定量よりも大きい場合に遮断用スイッチに異常が生じていない旨判定し、上記低下量が上記所定量よりも大きくない場合に遮断用スイッチを開状態にできない異常が生じている旨判定する。
【0038】
さらに第6の発明では、上記所定時間が、遮断用スイッチが開操作に切り替えられて開状態になったと仮定した場合に、診断用電圧が動作可能電圧範囲の下限値未満とならない時間に設定されている。このため、操作部により遮断用スイッチが開操作されている期間において、診断用電圧が動作可能電圧範囲の下限値未満にならない。これにより、上述したサブ電源及び切替スイッチを備えることなく、診断のたびに、電源から通信制御部への給電が停止され、第1の外部機器及び第2の外部機器の間の通信が遮断されるのを防止できる。したがって第1の発明によれば、構成部品数の増加及び診断処理の複雑化を防止できる。
【0039】
第7の発明では、前記第2の外部機器は、制御対象機器の動作指令を出力するプログラマブルロジックコントローラであり、前記プログラマブルロジックコントローラは、該プログラマブルロジックコントローラ及び前記第1の外部機器の間の通信が前記通信制御部によって遮断されたと判定した場合、前記制御対象機器の動作停止指令を出力する。
【0040】
第7の発明では、プログラマブルロジックコントローラが上記のように構成されている。このため、診断のたびに遮断用スイッチが開操作され、通信制御部への供給電圧が通信制御部の動作可能電圧範囲の下限値未満になると、診断のたびに、プログラマブルロジックコントローラが意図しない動作を実施し、制御対象機器が停止してしまうこととなる。
【0041】
この点、第1,第6の発明を前提とする第7の発明では、遮断用スイッチを開操作に切り替えた後、診断用電圧が通信制御部の動作可能電圧範囲の下限値未満となる前に遮断用スイッチが閉操作に切り替えられる。このため、診断のたびに、プログラマブルロジックコントローラが意図しない動作をすることを抑制でき、制御対象機器の動作が停止してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】第1実施形態に係るシステムの全体構成を示す図。
図2】遮断用スイッチの異常診断手法を示す図。
図3】遮断用スイッチの異常診断手法を示す図。
図4】第2実施形態に係る遮断用スイッチの異常診断手法を示す図。
図5】第3実施形態に係るシステムの全体構成を示す図。
図6】第4実施形態に係るシステムの全体構成を示す図。
図7】従来技術に係るシステムの全体構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(第1実施形態)
以下、本発明のI/Oモジュールを具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係るI/Oモジュールは、機械組立工場などの組立システムで用いられる産業用ロボットシステムを構成する。
【0044】
ロボットシステムは、図1に示すように、I/Oモジュール20、安全PLC100、安全機器としての非常停止スイッチ110、コントローラ120及びロボット130を備えている。なお本実施形態において、非常停止スイッチ110が「第1の外部機器」に相当し、安全PLC100が「第2の外部機器」に相当する。
【0045】
安全PLC100は、コントローラ120とケーブルで接続され、コントローラ120は、ロボット130とケーブルで接続されている。安全PLC100は、コントローラ120に対してロボット130の動作指令を出力する。コントローラ120は、安全PLC100から入力された動作指令に基づいて、ロボット130の動作を制御する。なおロボット130としては、例えば、6軸の垂直多関節型ロボットや、水平多関節型ロボットを用いることができる。なお、安全PLC100には、図示しない上位のコントローラも接続されている。
【0046】
I/Oモジュール20には、安全PLC100と非常停止スイッチ110とがLAN等の通信線によって接続されている。つまり本実施形態では、I/Oモジュール20として、安全PLC100と非常停止スイッチ110との間の通信を行うリモートI/Oを用いている。
【0047】
作業者によって非常停止スイッチ110が押されている場合、非常停止スイッチ110からロボット130を非常停止させる非常停止信号が出力される。一方、作業者によって非常停止スイッチ110が押されていない場合、非常停止スイッチ110から非常停止信号が出力されない。
【0048】
I/Oモジュール20は、MCU21、通信回路22、定電圧電源23、遮断用スイッチ24及びコンデンサ25を備えている。なお本実施形態において、通信回路22が「通信制御部」に相当する。
【0049】
MCU21は、非常停止スイッチ110から出力された非常停止信号を取得し、取得した非常停止信号を通信回路22に出力する通信処理を行う。通信回路22は、MCU21から出力された非常停止信号を取得し、取得した非常停止信号を安全PLC100に出力する処理を行う。
【0050】
通信回路22及び定電圧電源23は、給電経路26によって接続されている。給電経路26には、遮断用スイッチ24が設けられている。遮断用スイッチ24は、MCU21によって操作される。なお、遮断用スイッチ24としては、例えばNチャネルMOSFETを用いることができる。この場合、遮断用スイッチ24のドレインが定電圧電源23側に接続され、ソースが通信回路22側に接続される。
【0051】
MCU21による遮断用スイッチ24の閉操作により、遮断用スイッチ24が閉状態にされると、定電圧電源23から通信回路22へと給電される。一方、MCU21による遮断用スイッチ24の開操作により遮断用スイッチ24が開状態にされると、定電圧電源23から通信回路22への給電が停止される。
【0052】
給電経路26のうち遮断用スイッチ24よりも通信回路22側には、電圧監視経路27を介してMCU21が接続されている。電圧監視経路27には、コンデンサ25の第1端が接続され、コンデンサ25の第2端はI/Oモジュール20のグランドに接続されている。なお、本実施形態では、I/Oモジュール20にコンデンサ25が1つ備えられている。
【0053】
コンデンサ25は、遮断用スイッチ24が閉状態とされることにより定電圧電源23から供給される電力を蓄え、遮断用スイッチ24が開状態とされることにより自身に蓄えられた電力を通信回路22に供給する。
【0054】
MCU21は、電圧監視経路27を介して、コンデンサ25の端子電圧を診断用電圧Vdとして検出する。なお本実施形態において、MCU21が「電圧検出部」を含む。
【0055】
MCU21は、所定の診断実行条件が成立したと判定した場合、遮断用スイッチ24の診断処理を行う。診断処理は、遮断用スイッチ24の閉固着異常の有無を診断する処理である。なお、診断実行条件は、例えば、診断処理が前回実施されてから一定時間経過しているとの条件とすればよい。
【0056】
図2を用いて、本実施形態に係る診断処理について説明する。図2は、遮断用スイッチ24に異常が生じていない場合について示している。図2(a)は、MCU21により検出された診断用電圧Vdの推移を示し、図2(b)は、遮断用スイッチ24の操作状態の推移を示す。
【0057】
図2には、第1〜第5電圧Vth1〜Vth5(Vth1<Vth2<Vth3<Vth4<Vth5)が示されている。本実施形態では、通信回路22の動作可能電圧範囲が、第1電圧Vth1以上であってかつ第5電圧Vth5以下の電圧範囲で規定されている。定電圧電源23から通信回路22に供給される電圧が動作可能電圧範囲の下限値Vth1以上の場合、通信回路22により、安全PLC100及び非常停止スイッチ110の間の通信が可能とされる。一方、遮断用スイッチ24が開状態とされ、定電圧電源23から通信回路22に供給される電圧が動作可能電圧範囲の下限値Vth1未満になると、通信回路22により、安全PLC100及び非常停止スイッチ110の間の通信が遮断される。
【0058】
本実施形態では、定電圧電源23の取り得る出力電圧範囲が、第3電圧Vth3以上であってかつ第4電圧Vth4以下の電圧範囲で規定されている。つまり、定電圧電源23の取り得る電圧範囲の下限値Vth3は、通信回路22の動作可能電圧範囲の下限値Vth1よりも高く設定されている。ここで、定電圧電源23の出力電圧が一定の幅(Vth3〜Vth4)を有するのは、定電圧電源23の個体差により、定電圧電源23の出力電圧が、その設計値に対して公差を含むためである。
【0059】
また本実施形態では、検出電圧範囲が、第1電圧Vth1以上であってかつ第2電圧Vth2未満の電圧範囲として設定されている。
【0060】
図2に示すように、MCU21は、遮断用スイッチ24を開操作に切り替えるタイミングt1から、第1タイミング及び第2タイミングのうち早い方のタイミングまでの期間に渡って遮断用スイッチ24を開操作し続ける。第1タイミングは、定電圧電源23の電力でコンデンサ25の充電が完了している状態において、遮断用スイッチ24が開操作に切り替えられるタイミングt1から規定時間Tth経過するタイミングt3である。規定時間Tthは、遮断用スイッチ24が開操作に切り替えられるタイミングt1から、遮断用スイッチ24が開状態になったと仮定した場合に診断用電圧Vdが低下して規定電圧Vαになると想定されるタイミングまでの時間(例えば、数十μsec〜数百μsec)に設定されている。具体的には、規定時間Tthは、遮断用スイッチ24が開操作に切り替えられてから、診断用電圧Vdが規定電圧Vαになると想定されるタイミングまでの時間の取り得る最大値に設定されている。規定電圧Vαは、定電圧電源23の取り得る出力電圧範囲の下限値Vth3未満であって、かつ、通信回路22の動作可能電圧範囲の下限値Vth1よりも高い電圧として設定されている。
【0061】
第2タイミングは、遮断用スイッチ24が開操作に切り替えられた後、診断用電圧Vdが規定電圧Vαになるタイミングt2である。
【0062】
図2に示す例では、時刻t1において遮断用スイッチ24が開操作に切り替えられた後、規定時間Tthが経過する前の時刻t2において、診断用電圧Vdが規定電圧Vαになる。このため、MCU21は、遮断用スイッチ24の開操作期間において診断用電圧Vdが検出電圧範囲Vth1〜Vth2に含まれると判定し、遮断用スイッチ24に閉固着異常が生じていない旨判定する。そして時刻t2において、遮断用スイッチ24が閉操作に切り替えられる。
【0063】
ここで、診断処理のために遮断用スイッチ24を一時的に開操作できるのは、コンデンサ25を設けたためである。つまり、診断処理のために遮断用スイッチ24が一時的に開状態に切り替えられたとしても、遮断用スイッチ24が開状態とされている期間においてコンデンサ25から通信回路22へと給電される。このため、通信回路22に供給される電圧が動作可能電圧範囲の下限値Vth1をすぐには下回らない。これにより、遮断用スイッチ24を一時的に開操作する時間を確保できる。
【0064】
図3を用いて、遮断用スイッチ24に閉固着異常が生じた場合について説明する。なお、図3(a),(b)は先の図2(a),(b)に対応している。
【0065】
図3に示すように、時刻t1から規定時間Tth経過する時刻t2までの期間に渡って遮断用スイッチ24が開操作される。ただし、遮断用スイッチ24が開状態に切り替えられないため、診断用電圧Vdは低下しない。このため、MCU21は、遮断用スイッチ24の開操作期間において診断用電圧Vdが検出電圧範囲Vth1〜Vth3にないと判定し、遮断用スイッチ24に閉固着異常が生じている旨判定する。
【0066】
MCU21は、閉固着異常が生じている旨判定した場合、通信回路22に対してその通信を遮断するように指示する。これにより、通信回路22は、安全PLC100と非常停止スイッチ110との間の通信を遮断する。安全PLC100は、通信回路22により通信が遮断されたと判定した場合、ロボット130の動作停止指令をコントローラ120に対して出力する。
【0067】
以上説明した本実施形態によれば、遮断用スイッチ24を開操作に切り替えた後、診断用電圧Vdが通信回路22の動作可能電圧範囲の下限値Vth1未満となる前に遮断用スイッチ24が閉操作に切り替えられる。このため、診断処理のたびに、定電圧電源23から通信回路22への給電が停止され、安全PLC100及び非常停止スイッチ110の間の通信が遮断されるのを防止できる。
【0068】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図4に示すように、診断処理手法を変更する。
【0069】
MCU21は、非常停止スイッチ110から出力される非常停止信号を取得し、取得した非常停止信号を通信回路22に出力する通信処理を行う。また、MCU21は、診断処理も行う。ここで、診断処理及び通信処理の双方を同時に行うことに対してMCU21の処理能力が不足し得る。この場合、MCU21は、通信処理及び診断処理のうちいずれか一方の処理を行う期間において、他方の処理を行うことができない。このため、診断処理が行われる期間が長くなる場合、通信処理が実施できない期間が長くなってしまう。このことは、ロボット130周辺で作業する作業者の安全を確保する観点から好ましくない。
【0070】
そこで本実施形態では、MCU21は、診断用電圧Vdが動作可能電圧範囲の下限値Vth1未満とならないように、遮断用スイッチ24の閉操作から開操作への切り替えを複数回行う。図4には、遮断用スイッチ24の閉操作から開操作への切替タイミングを時刻t1,t3,t5で示し、遮断用スイッチ24の開操作から閉操作への切替タイミングを時刻t2,t4,t6で示した。
【0071】
MCU21は、遮断用スイッチ24が開操作されている期間t1〜t2,t3〜t4,t5〜t6において診断処理を行い、遮断用スイッチ24が閉操作されている期間t2〜t3,t4〜t5において通信処理を行う。このため、診断処理を行うために通信処理が停止される時間を短縮できる。したがって、遮断用スイッチ24の開固着異常の有無を診断しつつ、ロボット130周辺の作業者の安全を確保することができる。
【0072】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図5に示すように、I/Oモジュール30の構成を変更する。なお図5において、先の図1と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付しているものもある。
【0073】
図示されるように、I/Oモジュール30は、MCU31、通信回路32、定電圧電源33、遮断用スイッチ34及びコンデンサ35を備えている。本実施形態において、MCU31,通信回路32,定電圧電源33,遮断用スイッチ34,コンデンサ35の構成は、上記第1実施形態のMCU21,通信回路22,定電圧電源23,遮断用スイッチ24,コンデンサ25の構成と同様の構成である。なお本実施形態において、MCU31が「通信制御部」に相当する。
【0074】
通信回路32及び定電圧電源33は、第1給電経路36によって常時接続されている。このため、通信回路32には、定電圧電源33から常時給電される。
【0075】
MCU31及び定電圧電源33は、第2給電経路37によって接続されている。第2給電経路37には、遮断用スイッチ34が設けられている。遮断用スイッチ34は、MCU31によって操作される。
【0076】
MCU31によって遮断用スイッチ34が閉操作され、遮断用スイッチ34が閉状態とされる。これにより、定電圧電源33からMCU31へと給電され、MCU31は、安全PLC100及び非常停止スイッチ110の間の通信を可能とする。一方、MCU31によって遮断用スイッチ34が開操作され、遮断用スイッチ34が開状態とされる。これにより、定電圧電源33からMCU31への給電が停止され、MCU31は、安全PLC100及び非常停止スイッチ110の間の通信を遮断する。
【0077】
第2給電経路37のうち遮断用スイッチ34よりもMCU31側には、電圧監視経路38を介してMCU31が接続されている。電圧監視経路38には、コンデンサ35の第1端が接続され、コンデンサ35の第2端はI/Oモジュール30のグランドに接続されている。MCU31は、電圧監視経路38を介してコンデンサ35の端子電圧を診断用電圧Vdとして検出する。
【0078】
ここで本実施形態では、上記第1実施形態の図2に示した動作可能電圧範囲を、MCU31の動作可能電圧範囲とする。診断処理のために遮断用スイッチ34が開操作されると、定電圧電源33からMCU31への給電が停止される。その結果、MCU31への供給電圧が動作可能電圧範囲の下限値未満となり、MCU31は通信処理及び診断処理を実施できなくなり得る。
【0079】
そこで本実施形態では、コンデンサ35を備えている。このため、診断処理のために遮断用スイッチ34が一時的に開状態に切り替えられたとしても、遮断用スイッチ34が開状態とされている期間において、MCU31にコンデンサ35から給電される。このため、MCU31は通信処理及び診断処理を行うことができる。
【0080】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、上記第3実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図6に示すように、I/Oモジュール40の構成を変更する。なお図6において、先の図5と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付しているものもある。
【0081】
図示されるように、I/Oモジュール40は、MCU41、通信回路42、遮断用スイッチ43及びコンデンサ44を備えている。本実施形態において、MCU41,通信回路42,遮断用スイッチ43,コンデンサ44の構成は、上記第3実施形態のMCU31,通信回路32,遮断用スイッチ34,コンデンサ35の構成と同様の構成である。なお本実施形態において、MCU41及び通信回路42が「通信制御部」に相当する。
【0082】
I/Oモジュール40の電源端子Pには、I/Oモジュール40の外部の定電圧電源50が接続されている。電源端子Pには、第1給電経路45を介してMCU41が接続されている。第1給電経路45には、遮断用スイッチ43が設けられている。遮断用スイッチ43は、MCU41によって操作される。
【0083】
第1給電経路45のうち遮断用スイッチ43よりもMCU41側には、第2給電経路46を介して通信回路42が接続されている。
【0084】
MCU41によって遮断用スイッチ43が閉操作され、遮断用スイッチ43が閉状態とされる。これにより、定電圧電源50からMCU41及び通信回路42へと給電される。一方、MCU41によって遮断用スイッチ43が開操作され、遮断用スイッチ43が開状態とされる。これにより、定電圧電源50からMCU41及び通信回路42への給電が停止される。
【0085】
第1給電経路45のうち遮断用スイッチ43よりもMCU41側には、電圧監視経路47を介してMCU41が接続されている。電圧監視経路47には、コンデンサ44の第1端が接続され、コンデンサ44の第2端はI/Oモジュール40のグランドに接続されている。MCU41は、電圧監視経路47を介してコンデンサ44の端子電圧を診断用電圧Vdとして検出する。
【0086】
ここで本実施形態では、上記第1実施形態の図2に示した動作可能電圧範囲の下限値が、MCU41の動作可能電圧範囲の下限値及び通信回路42の動作可能電圧範囲の下限値のうち大きい方に設定されている。また、上記第1実施形態の図2に示した動作可能電圧範囲の上限値が、MCU41の動作可能電圧範囲の上限値及び通信回路42の動作可能電圧範囲の上限値のうち小さい方に設定されている。
【0087】
以上説明した本実施形態によっても、上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態を以下のように変更して、実施することもできる。
【0089】
・上記第1実施形態において、定電圧電源23の取り得る出力電圧範囲の上限値が、通信回路22の動作可能電圧範囲の上限値以上の電圧に設定されていてもよい。
【0090】
・診断に用いる検出電圧範囲の設定手法としては、上記第1実施形態の図2に示したものに限らない。例えば、検出電圧範囲の下限値が、通信回路22の動作可能電圧範囲の下限値Vth1よりも高い値に設定されていてもよい。
【0091】
・上記第1実施形態の図1に示す構成において、遮断用スイッチ24の診断手法を以下に説明する手法に変更してもよい。
【0092】
MCU21は、遮断用スイッチ24を開操作に切り替えてから所定時間における診断用電圧Vdの低下量が所定量よりも大きい場合に遮断用スイッチ24に異常が生じていない旨判定する。一方、MCU21は、上記低下量が上記所定量よりも大きくない場合に遮断用スイッチ24の開固着異常が生じている旨判定する。ここで上記所定時間は、遮断用スイッチ24が開操作に切り替えられて開状態になったと仮定した場合に、診断用電圧Vdが通信回路22の動作可能電圧範囲の下限値Vth1未満とならない時間に設定されている。なお、この場合、遮断用スイッチ24が開操作された後に、診断用電圧Vdが、必ずしも定電圧電源23の出力電圧範囲の下限値未満にならなくてもよい。また、上記所定量は、例えば、遮断用スイッチ24が閉状態とされている場合に想定される定電圧電源23の出力電圧の低下量の最大値に設定されればよい。
【0093】
・I/Oモジュールに接続される外部機器としては、非常停止スイッチ及び安全PLCに限らず、他の機器であってもよい。また、I/Oモジュールに接続される安全機器としては、非常停止スイッチに限らず、例えば、イネーブルスイッチやライトカーテンであってもよい。
【0094】
・安全PLCの制御対象機器としては、ロボットに限らず、例えばベルトコンベアであってもよい。
【0095】
・上記各実施形態では、I/Oモジュールに接続される非常停止スイッチ等の第1の外部機器の数を1つとしたがこれに限らず、2つ以上にしてもよい。また、I/Oモジュールに接続される安全PLC等の第2の外部機器の数も、1つに限らず、2つ以上にしてもよい。
【符号の説明】
【0096】
20…I/Oモジュール、21…MCU、22…通信回路、23…定電圧電源、24…遮断用スイッチ、25…コンデンサ、100…安全PLC、110…非常停止スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7