特許第6759881号(P6759881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6759881生体分子検出装置および生体分子検出装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759881
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】生体分子検出装置および生体分子検出装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/414 20060101AFI20200910BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   G01N27/414 301U
   G01N33/543 525C
   G01N33/543 525U
   G01N27/414 301V
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-172865(P2016-172865)
(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公開番号】特開2018-40580(P2018-40580A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】牛島 栄造
(72)【発明者】
【氏名】岩田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】中里 和郎
(72)【発明者】
【氏名】新津 葵一
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−210233(JP,A)
【文献】 特表2015−529544(JP,A)
【文献】 特開2000−065833(JP,A)
【文献】 特開2012−080873(JP,A)
【文献】 特開昭61−070452(JP,A)
【文献】 特表2013−537635(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/047889(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
G01N 33/48−33/98
G01N 1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子を含む検体溶液とプローブ分子が表面に固定された反磁性粒子とを収容可能な収容部と、
前記収容部の底部に配置され、前記生体分子と前記プローブ分子との反応によって発生した電気信号を検出する検出部と、
前記検出部の背面に配置される磁石と、を備え、
前記検出部は、前記電気信号を検知する電極と、当該電極の周囲に配置されて前記磁石からの磁束が流れる磁性体と、前記磁性体を覆う保護膜と、を有している生体分子検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記保護膜が前記磁性体の内周側を覆う状態で配置されており、前記保護膜と前記電極とで囲まれる領域に溝部が形成されている請求項1に記載の生体分子検出装置。
【請求項3】
前記磁性体の間隔は、前記反磁性粒子の粒径以下に設定されている請求項1又は2に記載の生体分子検出装置。
【請求項4】
電気信号を検知する電極の上に酸化膜を成膜する工程と、
前記酸化膜の上に前記磁性体を成膜する工程と、
前記電極の周囲を前記酸化膜および前記磁性体が覆うと共に前記電極の表面の一部が露出するように、前記酸化膜および前記磁性体をパターニング加工する工程と、
前記磁性体および前記電極の上に前記保護膜を成膜し、前記磁性体の内周側を覆うと共に前記電極の表面の一部が露出するように、前記保護膜をパターニング加工する工程と、
を備えた請求項1から3のいずれか一項に記載の生体分子検出装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子を検出する生体分子検出装置および生体分子検出装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体溶液中の生体分子を検出する方法として、電気化学測定方法が用いられている(例えば、特許文献1〜2参照)。この電気化学測定方法として、特許文献1のように生体分子をセンシング部に接触させて電位変化を検出する方法や、特許文献2のように生体分子とプローブ分子との反応によって検体溶液に含まれる酸化還元物質を化学変化させて酸化還元電位を検出する方法が知られている。
【0003】
特許文献1の生体分子検出装置は、イオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET)のセンシング部(イオン感応膜)に凹部を形成すると共にISFETの背面に磁石を配置し、抗体が表面に固定された磁性粒子を該凹部に吸引している。この状態でISFETを検体溶液に浸漬して生体分子を抗体に結合させ、センシング部の電位変化を検出するものである。
【0004】
特許文献2の生体分子検出装置は、各検知電極が格子状の隔壁で区画された相補型金属酸化物半導体(CMOS)で構成される複数のセンサセルを備えている。このセンサセルに生体分子を含む検体溶液とプローブ分子(特定分子とのみ反応する分子)が表面に固定された磁性粒子とを導入し、生体分子とプローブ分子との酵素反応による酸化物と還元物との濃度比を表す酸化還元電位を検知電極で検知するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−232032号公報
【特許文献2】特開2015−210233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の生体分子検出装置にあっては、磁性粒子を磁石で強制的に吸引する構成であるため、センシング部の凹部に磁性粒子が密集したり、磁性粒子が凹部からはみ出して無秩序に積層したりするおそれがある。その結果、生体分子が固定された磁性粒子がセンシング部に適切に接触できないおそれがあり、センシング部の検出精度が低下する。これを防止するため、凹部の上面をスクレイプするとの記載もあるが、検出方法が煩雑化してしまう。
【0007】
特許文献2の生体分子検出装置は、検体溶液に含まれる酸化還元物質を化学変化させて酸化還元電位を検出するので、特許文献1のように生体分子とセンシング部とを接触させなくても良く、検出方法が簡便なものである。一方、格子状の隔壁で囲まれる反応空間に磁性粒子を収容して、生体分子とプローブ分子との酵素反応を行わせる構成上、該反応空間に磁性粒子を均一に収容することが重要となる。
【0008】
しかしながら、特許文献2には磁性粒子を反応空間に収容する方法が開示されておらず、例えば特許文献1のように単に磁性粒子を磁石で吸引する構成を採用したとしても、上述した理由によって反応空間に磁性粒子を均一に収容することはできない。しかも、反応空間に収容される前に磁性粒子が凝集してしまい、反応空間よりも磁性粒子の凝集体の容積が大きくなって磁性粒子が収容されないおそれがある。その結果、生体分子検出装置の検出精度が低下してしまう。
【0009】
そこで、プローブ分子が表面に固定された粒子を反応空間に均一に分布させて、生体分子の検出精度を高めることのできる生体分子検出装置および該生体分子検出装置の製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
生体分子検出装置の特徴構成は、生体分子を含む検体溶液とプローブ分子が表面に固定された反磁性粒子とを収容可能な収容部と、前記収容部の底部に配置され、前記生体分子と前記プローブ分子との反応によって発生した電気信号を検出する検出部と、前記検出部の背面に配置される磁石と、を備え、前記検出部は、前記電気信号を検知する電極と、当該電極の周囲に配置されて前記磁石からの磁束が流れる磁性体と、前記磁性体を覆う保護膜と、を有している点にある。
【0011】
本構成のように、電極の周囲に磁性体を配置し、検出部の背面に磁石を配置すれば、磁石から発生する磁束は磁性体が配置される電極の周囲に流れ、収容部に収容された検体溶液の中で、電極の中央部に磁束密度の低い領域が形成される。
【0012】
その結果、反磁性粒子は、この磁束の流れに反発するように流動し、次第に電極に接近することとなる。本構成では、従来のように磁石で磁性粒子を強制的に吸引するものではなく、磁束の流れに沿って次第に反磁性粒子を反発移動させるので、電極に対向する位置に反磁性粒子を均一に移動させることができる。その結果、生体分子と反磁性粒子に固定されたプローブ分子とが適正に反応するので、検出部によって電気信号を確実に検出することができる。
【0013】
しかも、磁性体を保護する保護膜を設けることで、磁性体のイオンが検出溶液に溶出して生体分子の検出精度を低下させることもない。よって、プローブ分子が表面に固定された反磁性粒子を反応空間に均一に分布させて、生体分子の検出精度を高めることのできる生体分子検出装置を提供できた。
【0014】
他の特徴構成は、前記検出部は、前記保護膜が前記磁性体の内周側を覆う状態で配置されており、前記保護膜と前記電極とで囲まれる領域に溝部が形成されている点にある。
【0015】
本構成のように、保護膜と電極とで囲まれる領域に溝部を形成すれば、電極の周囲にある磁性体に磁束が集中し、この溝部には磁束密度が極めて低い空間が形成される。その結果、反磁性粒子を電極により接近させることが可能となるので、生体分子の検出精度を高めることができる。
【0016】
他の特徴構成は、前記磁性体の間隔は、前記反磁性粒子の粒径以下に設定されている点にある。
【0017】
本構成のように、磁性体の間隔を反磁性粒子の粒径以下に設定すれば、磁束密度の低い空間が適正なものとなり、複数の反磁性粒子が凝集して電極に接近することが防止される。その結果、反磁性粒子を均一に分布させて生体分子の検出精度をより高めることができる。
【0018】
生体分子検出装置の製造方法の特徴構成は、電気信号を検知する電極の上に酸化膜を成膜する工程と、前記酸化膜の上に磁性体を成膜する工程と、前記電極の周囲を前記酸化膜および前記磁性体が覆うと共に前記電極の表面の一部が露出するように、前記酸化膜および前記磁性体をパターニング加工する工程と、前記磁性体および前記電極の上に前記保護膜を成膜し、前記磁性体の内周側を覆うと共に前記電極の表面の一部が露出するように、前記保護膜をパターニング加工する工程と、を備えた点にある。
【0019】
本構成のように、生体分子検出装置を製造すれば、磁性体が薄膜状に形成される。その結果、装置のコンパクト化を図りながら、反磁性粒子を反応空間に均一に分布させることができる。しかも、露出した電極の一部を検出部として機能させながら、酸化膜および磁性体のイオンが溶出しないように保護膜で保護しているので、生体分子の検出精度を低下させることもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】生体分子検出装置の概略平面図である。
図2】生体分子検出装置のセンサセルの概略断面図である。
図3】センサセルでの磁束の流れを示す概略説明図である。
図4】本実施例におけるセンサセルの概略断面図である。
図5】本実施例における反磁性粒子の配列状態を示す拡大写真である。
図6】比較例における反磁性粒子の配列状態を示す拡大写真である。
図7】本実施例において電極の検出径を変化させた比較拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る生体分子検出装置および生体分子検出装置の製造方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、プローブ分子21が固定された反磁性粒子22を用いた酸化還元電位検出型CMOSセンサアレイによって生体分子を検出する一例を説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0022】
[生体分子検出装置]
図1には、本実施形態に係る生体分子検出装置Xの概略平面図が示される。また、図2には、生体分子検出装置XのセンサセルCEの概略断面図が示される。図1に示すように、CMOS集積回路基板10には、制御信号線である複数本のワード線Wおよびビット線Bの各交点に配置された複数のセンサセルCEが、マトリックス状に配置されている。本実施形態のCMOS集積回路基板10は、64×64のセンサセルCEで構成されている。
【0023】
CMOS集積回路基板10には、電源装置から夫々のセンサセルCEに送信されるパルス信号を制御する制御部11と、センサセルCEから出力される酸化還元電位を演算する演算部12とが接続されている。これら制御部11や演算部12は、各種処理を実行するCPUやメモリを中核としたハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの協働により構成されている。
【0024】
制御部11は、一定周波数のクロック信号を発生するクロック回路、クロック信号に同期して所定のパルス信号を発生させるパルス信号発生器、および夫々のワード線Wに選択的にパルス信号を出力するデコーダを有している。演算部12は、センサセルCEのビット線Bから出力されたデジタル信号のパルス幅に基づいて酸化還元電位を換算し、検体溶液Kに含まれる生体分子Sの量を演算する。
【0025】
図1図2に示すように、生体分子検出装置Xは、収容部2と、収容部2の底部に配置される検出部1と、検出部1の背面に配置される磁石3とを備えている。
【0026】
収容部2は、生体分子Sを含む検体溶液Kとプローブ分子21が表面に固定された反磁性粒子22とを収容可能に構成されている。この収容部2は、検出部1を囲む側壁部23と蓋部材24とを備えており、これら検出部1、側壁部23および蓋部材24で区画される空間に検体溶液Kおよび反磁性粒子22が収容される。側壁部23や蓋部材24は、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などが加硫されたシリコンゴムで構成されている。また、本実施形態の収容部2は、夫々のセンサセルCEを区画するように所定の間隔を保った隔壁25を有している。隔壁25は、エポキシ樹脂であるSU−8などのネガティブフォトレジストで構成されている。なお、隔壁25を省略しても良い。
【0027】
蓋部材24には、反磁性粒子22を混合した検体溶液Kがシリンジ(不図示)などを用いて収容部2の収容空間に注液される注液口26と、測定後の検体溶液Kを排出させる排出口27とが設けられている。検出部1で生体分子Sの量を検出する直前に注液口26から反磁性粒子22を混合した検体溶液Kを注液し、検出部1で生体分子Sの量を検出する際は注液を停止する。そして、生体分子Sの検出が終了すると、検体溶液Kを排出口27から排出させ、生体分子Sが固定された反磁性粒子22を回収して再利用する。
【0028】
生体分子Sは、糖、ウイルス、DNA、タンパク質などで構成されている。プローブ分子21は、酸化還元反応を触媒する分子であり、特定の生体分子Sと反応する酵素、ペプチド、抗体などで構成されている。検体溶液Kは、特定の生体分子Sとプローブ分子21との反応に応じて電子の移動等が行われる酸化還元物質を含む溶液で構成されている。なお、反磁性粒子22は、磁束密度の低い部分に吸着されるビーズであれば特に限定されず、例えばポリスチレン粒子で構成されている。
【0029】
例えば、プローブ分子21としてHK(ヘキソキナーゼ)、G6PDH(グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ)、Diaphоrase(ディアフォラーゼ)の3種類の酵素を用い、酸化還元物質としてへキサシアノ鉄(III)酸イオンを含む検体溶液K(フェリシアン化カリウムをPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に溶解させた溶液)に生体分子Sとしてのグルコースを混合させた場合、ヘキソキナーゼ法(HK法)の反応系によって、へキサシアノ鉄(III)酸イオンがへキサシアノ鉄(II)酸イオンに還元される。つまり、検体溶液Kに含まれる生体分子Sとプローブ分子21との反応によって、酸化物と還元物との濃度比を得ることができる。
【0030】
検出部1は、生体分子Sとプローブ分子21との反応によって発生した電気信号を検出する。本実施形態では、上述した酵素反応による酸化物と還元物との濃度比を、ネルンストの式を用いて酸化還元電位として検出する。
【0031】
図2図3に示すように、検出部1は、CMOS集積回路基板10と、CMOS集積回路基板10上に成膜された検知電極13(電極の一例)と、検知電極13の周囲に配置されて磁石3からの磁束が流れる磁性体14と、磁性体14を保護する保護膜15とを備えている。また、本実施形態における検出部1は、CMOS集積回路基板10と磁性体14との間に酸化膜16を備えている。
【0032】
CMOS集積回路基板10は公知であるので詳細な説明は省略するが、NMOSFETおよびPMOSFETで構成され、制御部11によってパルス信号がセンサセルCEに加えられ、NMOSFETがオン状態となったときにデジタル信号が出力される。このセンサセルCEから出力されたデジタル信号のパルス幅に基づいて、検体溶液Kに含まれる生体分子Sの量を検出するものである。
【0033】
CMOS集積回路基板10の配線17はアルミニウムで構成されており、イオン化傾向が大きいため検体溶液Kに露出させると腐食してしまう。そこで、本実施形態では、配線17に接続される検知電極13として、イオン化傾向の小さな金属(例えば、金や白金)を用いている。また、CMOS集積回路基板10の配線17や絶縁層と金で構成される検知電極13との密着性を確保するため、CMOS集積回路基板10と検知電極13との間にクロムなどの金属を介在させている。
【0034】
ところで、酸化還元反応に起因する検体溶液Kと検知電極13との間でリーク電流が流れたり、チオール基を有する生体分子Sであれば検知電極13に化学吸着されて再利用できないおそれがある。そこで、本実施形態では、露出した検知電極13を保護する自己組織化単分子膜18として、11−FET(11−Ferrоcenyl−1−Undecanethiоl)などのフェロセン誘導体を検知電極13の表面に被覆(修飾)している。これによって、繰り返し検出部1を使用した場合でも、安定して酸化還元電位を検出することができる。
【0035】
磁性体14は、鉄、コバルト、ニッケルやガドリニウムなどの強磁性体材料を含んでいる。また、CMOS集積回路基板10と磁性体14との間に配置される酸化膜16は、検知電極13と磁性体14とを絶縁する二酸化ケイ素などの絶縁膜で構成されている。本実施形態では、磁性体14と酸化膜16との間に密着性を促進させるためにチタンなどの密着促進材料19を配置している(図3参照)。詳細は後述するが、CMOS集積回路基板10の上に検知電極13を成膜してパターニング加工した後、酸化膜16、密着促進材料19、磁性体14の順番で成膜した後にパターニング加工を施している。その結果、検知電極13の中央が露出されると共に、検知電極13の周囲が酸化膜16、密着促進材料19、磁性体14の順番で覆われることとなる。このとき、磁性体14の間隔Lは、反磁性粒子22の粒径D(例えば30μm)以下に設定されるのが好ましい(図3参照)。ここで、磁性体14の間隔Lとは、磁性体14の中央に孔部が形成されるようにパターニング加工した場合における該孔部の直径のことである。
【0036】
保護膜15は、磁性体14のイオンが検体溶液Kに溶出しないように保護する樹脂などで構成されている。本実施形態では、保護膜15をポリイミド樹脂で構成しているが、酸化還元反応に悪影響を及ぼさない保護材料であれば特に限定されない。詳細は後述するが、磁性体14および検知電極13の上に保護膜15を成膜し、パターニング加工を施している。その結果、検知電極13の中央が露出されると共に、磁性体14の上面および内周側が保護膜15で覆われることとなる。これによって、保護膜15と検知電極13とで囲まれる領域に溝部20が形成されることとなる。この溝部20の深さは、反磁性粒子22の粒径D(例えば30μm程度)に比べて十分に小さい、例えば所定値(例えば5μm程度)に設定されている。なお、溝部20の深さは、反磁性粒子22と検知電極13との距離が、生体分子Sやプローブ分子21の種類に応じて予め定められた一定値となるように設定されるのが好ましい。
【0037】
検出部1の背面に配置される磁石3は、外部に磁場を形成するものであれば特に限定されず、永久磁石、電磁石、超電導磁石などで構成されている。図3の一点鎖線で示すように、磁石3から発生する磁束は磁性体14が配置される検知電極13の周囲に流れ、収容部2に収容された検体溶液Kの中で、検知電極13の露出した部位に磁束密度の低い領域を形成するように磁束の流れが形成される。その結果、反磁性粒子22は、この磁束の流れに反発するように流動し、次第に検知電極13に接近することとなる。このように、磁石3で磁性ビーズを強制的に吸引するものではなく、磁束の流れに沿って次第に反磁性粒子22を反発移動させるので、検知電極13に対向する位置に反磁性粒子22を均一に移動させることができる。その結果、生体分子Sと反磁性粒子22に固定されたプローブ分子21とが適正に反応するので、検出部1によって電気信号を確実に検出することができる。
【0038】
また、上述したように保護膜15と検知電極13とで囲まれる領域に溝部20を形成しているので、検知電極13の周囲にある磁性体14に磁束が集中し、溝部20には磁束密度が極めて低い空間が形成される。その結果、反磁性粒子22を検知電極13により接近させることが可能となるので、生体分子Sの検出精度を高めることができる。
【0039】
しかも、磁性体14の間隔Lを反磁性粒子22の粒径D以下に設定すれば、複数の反磁性粒子22が凝集して検知電極13に接近することが防止される。その結果、反磁性粒子22を均一に分布させて生体分子Sの検出精度をより高めることができる。
【0040】
[生体分子検出装置の製造方法]
図2に示すように、本実施形態における生体分子検出装置Xの製造方法は、CMOS集積回路基板10の上に検知電極13を成膜してパターニング加工する工程と、検知電極13の上に酸化膜16を成膜する工程と、酸化膜16の上に磁性体14を成膜する工程と、酸化膜16および磁性体14をパターニング加工する工程と、磁性体14および検知電極13の上に保護膜15を成膜してパターニング加工する工程と、を備えている。
【0041】
CMOS集積回路基板10の上に検知電極13を成膜する工程は、スパッタリングや蒸着等によってクロム(例えば膜厚50nm),金(例えば膜厚350nm)の順に成膜する。次いで、検知電極13をパターニング加工する工程では、例えば感光性エポキシ樹脂などのレジストを塗布して光を照射するフォトリソグラフィ技術を用いて所定のパターンが形成し、不要な部分をイオンミリング法などによってエッチング処理する。
【0042】
次に、検知電極13の上に酸化膜16を成膜する工程は、スパッタリングや蒸着等によって、酸化膜16としての二酸化ケイ素(例えば膜厚1μm)を金で構成される検知電極13の上に成膜する。同様に、酸化膜16の上に磁性体14を成膜する工程は、スパッタリングや蒸着等によって、密着促進材料19としてのチタン(例えば膜厚50nm),磁性体14としての鉄(例えば膜厚0.5μm)の順に二酸化ケイ素で構成される酸化膜16の上に成膜する。次いで、酸化膜16および磁性体14をパターニング加工する工程では、上述したフォトリソグラフィ技術を用いて、検知電極13の周囲を酸化膜16および磁性体14が覆うと共に検知電極13の中央が露出するようにパターンが形成され、不要な部分をイオンミリング法などによってエッチング処理する。
【0043】
次に、磁性体14および検知電極13の上に保護膜15を成膜してパターニング加工する工程は、ポリイミド樹脂(例えば膜厚3μm)を鉄で構成される磁性体14と金で構成される検知電極13との上に塗布して成膜し、不要な部分をイオンミリング法などによってエッチング処理する。その結果、保護膜15は、磁性体14の内周側を覆うと共に検知電極13の中央が露出することとなり、保護膜15と検知電極13とで囲まれる領域に溝部20が形成される。そして、この保護膜15の上に、例えばSU−8などのネガティブフォトレジストを塗布し、光を照射するフォトリソグラフィ技術を用いて隔壁25(例えば50μm)を形成する。その結果、プローブ分子21が表面に固定された反磁性粒子22が、隔壁25、保護膜15、および検知電極13で囲まれた収容部2に収容可能となる。そして、11−FETのフェロセン誘導体をエタノールに溶解させた溶液を検知電極13の上に滴下して固定化させた後に洗浄して、検知電極13の上に11−FETを修飾させる。
【0044】
[実施例]
続いて、図4図7を用いて、上述したように、検出部1の背面に磁石3を配置すると共に検知電極13の周囲に磁性体14を配置することで、反磁性粒子22が均一に分散するか否かを検証する。
【0045】
本実施例では、図4に示すようにケイ素の基板10aに二酸化ケイ素の酸化膜16を1μmの膜厚で成膜し、その酸化膜16の上に膜厚50nmのチタン(密着促進材料19)、膜厚0.5μmの鉄(磁性体14)の順でスパッタリングによって成膜した。そして、フォトリソグラフィ技術によって、密着促進材料19および磁性体14の層に間隔Lの直径を有するホール部分28が構築される所定のパターンを形成し、イオンミリング法によってエッチング処理した後にレジストを除去した。次いで、ポリイミド樹脂で構成される膜厚3μmの保護膜15を、磁性体14および酸化膜16の上に塗布し、平面視において、磁性体14が存在しないホール部分28を形成した。この状態で、収容部2に、検体溶液Kと反磁性粒子22とを収容した。本実施例では、検体溶液Kとしてフェリシアン化カリウムをPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に溶解させた溶液を用い、反磁性粒子22としてポリスチレン粒子を用いた。また、ケイ素基板10aの背面に、磁場強度0.478Tの永久磁石で構成される磁石3を配置した。
【0046】
図5には本実施例における反磁性粒子22の分布状況が示され、図6には、磁石3を配置せずに磁場強度をゼロにした比較例が示される。図5に示される本実施例では、ホール部分28に単一の反磁性粒子22が均一に分散していた。一方、図6に示される比較例では、ほとんどの反磁性粒子22がホール部分28に分布せずに、特定の領域に凝集し、一部積層していた。これらから、本実施例では、磁束の流れに沿って次第に反磁性粒子22が反発移動するので、ホール部分28(上述の実施形態における露出した検知電極13に対向する位置)に反磁性粒子22が均一に移動することが検証された。
【0047】
図7には、図4図5に示す本実施例において、ホール径としての磁性体14の間隔Lを10μm、30μm、50μmと粒径D=30μmに対して変化させた場合の反磁性粒子22の分布状況を比較した図が順に(a)、(b)、(c)として示されている。図7の(b)に示すように、磁性体14の間隔Lが反磁性粒子22の粒径Dと等しい場合、単一の反磁性粒子22が均一に分散していることが理解できる。一方、図7の(a)に示すように、磁性体14の間隔Lが反磁性粒子22の粒径Dの3分の1の場合、磁性体14の間隔Lが小さすぎて反磁性粒子22が磁束密度の低い空間に吸着され難いことが分かる。また、図7の(c)に示すように、磁性体14の間隔Lが反磁性粒子22の粒径Dに対して約2倍と大きい場合、ホール中心と反磁性粒子22の中心とが位置ずれしていることが分かる。この場合、検知電極13に対向する位置に反磁性粒子22を確実に位置させることが難しいので、生体分子Sの検出精度が低下してしまう。
【0048】
以上より、磁性体14の間隔Lは、反磁性粒子22の粒径Dの3分の1以上、且つ反磁性粒子22の粒径Dの2倍以下に設定されることが好ましい。より好ましい磁性体14の間隔Lは、反磁性粒子22の粒径Dの2分の1以上、且つ反磁性粒子22の粒径D以下である。特に、磁性体14の間隔Lを反磁性粒子22の粒径Dと等しく設定すると、単一の反磁性粒子22が均一に分散させながら、ホール中心と反磁性粒子22の中心とを確実に一致させることができる。
【0049】
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態では、検知電極13の中央を露出させたが、検知電極13の中央から端部に向かって偏倚した表面の一部を露出させても良い。また、保護膜15と検知電極13とで囲まれる領域に溝部20を形成せずに、例えば図4に示すように、検知電極13の中央を露出させずに保護膜15で覆ってホール部分28を形成しても良い。
(2)上述した実施形態では、酵素反応による酸化物と還元物との濃度比を酸化還元電位として検出したが、例えば、検知電極13の上にイオン感応膜を修飾させ、界面電荷量の変化を電位変化として検出しても良い。この場合、生体分子Sとイオン感応膜との反応による検体溶液KのpH変化量を界面電荷量の変化として検出する。また、検知電極13に生体分子Sを直接付着させて電荷を検出しても良い。これらの場合でも、本実施形態のように、検知電極13の周囲に磁石3からの磁束が流れる磁性体14を配置し、生体分子Sを補足する抗体などが表面に固定された反磁性粒子22を用いれば、検知電極13に対向する位置に反磁性粒子22が均一に移動するので、生体分子Sの検出精度を高めることができる。
(3)センサセルCEは整列させずに不規則に配置しても良いし、センサセルCEを64×64ではなく、128×128で配列するなど、検出対象に応じて形状、配置を変更しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、生体分子を検出する生体分子検出装置および生体分子検出装置の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 検出部
2 収容部
3 磁石
13 検知電極(電極)
14 磁性体
15 保護膜
16 酸化膜
20 溝部
21 プローブ分子
22 反磁性粒子
D 粒径
L 磁性体の間隔
K 検体溶液
S 生体分子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7