(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記近距離無線通信部が動作している際には当該近距離無線通信部が動作している旨を表示し、前記標準電波受信部が動作している際には当該標準電波受信部が動作している旨を表示する表示部を備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の電子時計。
前記制御部は、前記受信開始時刻とは異なるタイミングにおいて前記近距離無線通信部の前記端末との通信動作を開始させ、前記近距離無線通信部に前記端末からの前記第1の時刻情報を受信させ、前記近距離無線通信部と前記端末との通信を切断させる、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の電子時計。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
《第1の実施形態》
図1は、第1の実施形態におけるシステム1の概略を示す構成図である。
第1の実施形態のシステム1は、電子時計2と、携帯端末3とを含む。
この電子時計2は、例えば置き時計であり、携帯端末3とBluetooth Low Energyで接続して、携帯端末3の時刻を定期的に受信して自身の計時時刻を変更する。電子時計2は、自身の計時時刻などを表示部29に表示する。電子時計2は更に、標準周波数局4が送信する長波長帯(Low Frequency Band)の電波を受信して、振幅変調された標準電波の時刻信号出力(Time Code Output:TCO)を復調して、この時刻信号によって自身の時刻情報を変更可能である。
【0012】
長波長帯とは、電波のうち30KHzから300KHzの周波数帯のことをいい、情報伝送容量が小さい代わりに直進性が弱く、非常に遠くまで伝わる性質がある。これに対してBluetooth Low Energyは、2.4GHzのISM(Industry Science Medical)帯で通信するため直進性が強い。更にBluetooth Low Energyの接続距離は、見通しで最大50m程度、最小2.5m程度である。すなわち、標準電波は、Bluetooth Low Energyの電波よりも、波長が長く、電波の回り込む性質が強く、かつ受信可能範囲が広い。
以下、Bluetooth Low Energyのことを、「BLE」と記載する場合がある。Bluetooth Low Energyで接続することを、「BLE接続」と記載する場合がある。
【0013】
携帯端末3は、例えばスマートフォンであり、キャリア網Nを介して音声やパケットの通信が可能である。携帯端末3は、キャリア網Nとの接続時に自身の時刻情報を変更可能である。
【0014】
標準周波数局4は、標準周波数報時電波を送信する局のことをいう。日本における標準周波数局4の運用主体は情報通信研究機構(National Institute of Information and Communications Technology:NYCT)であり、コールサインはJJYである。日本において標準周波数局4は、その一つは福島県田村市に設置されており、40kHzの長波で標準電波を送信している。もう一つの標準周波数局4は、佐賀県佐賀市に設置されており、60kHzの周波数で標準電波を送信している。
【0015】
米国における標準周波数局4の運用主体は国立標準技術研究所(National Institute of Standard and Technology:NIST)であり、標準周波数局4のコールサインはWWVBである。米国において標準周波数局4は、コロラド州フォート・コリンズに設置されており、60kHzの周波数で標準電波を送信している。
【0016】
中国における標準周波数局4の運用主体は中国科学院国家授時中心であり、標準周波数局4のコールサインはBPCである。中国において標準周波数局4は、河南省の商丘に設置されている。
【0017】
欧州の標準周波数局4は、一つはイギリス・アンソーンに設置され、コールサインはMSFであり、60kHzの周波数で標準電波を送信している。もう一つの標準周波数局4は、ドイツ・マインフリンゲンに設置され、コールサインはDCF77であり、77.5kHzの周波数で標準電波を送信している。
【0018】
第1の実施形態では、電子時計2が、第1のBLE通信と第2のBLE通信との間に標準電波を受信して、この電子時計2の計時回路がカウントする現在時刻を変更する構成にした。これにより、BLEの電波が受信できないような環境および状況においても、電子時計2が、BLEよりも周波数の低い標準電波を受信して、現在時刻を変更することができるので、より高精度に現在時刻を保持することができる。
【0019】
BLE通信と標準電波の受信とが行える電子時計2は、携帯端末3に繋がっていないときは、標準電波を受信して時刻を自動修正する。これにより電子時計2は、携帯端末3に接続できない場合でも時刻がずれなくなる。
【0020】
図2は、電子時計2の構成の一例を示す図である。
電子時計2は、液晶で構成される表示部29を、表示ドライバ28で駆動可能なものである。表示部29は、例えばデジタル表示の文字盤である。電子時計2は、前述した表示ドライバ28と表示部29に加えて、マイクロコンピュータ21、通信部22、標準電波受信部23、振動子24、電源供給部25、ROM26、操作受付部27を含んでいる。
【0021】
マイクロコンピュータ21は、各種演算処理を行って電子時計2を統括制御するものであり、CPU211、分周回路212、計時回路213、発振回路214、周辺回路215、RAM(Random Access Memory)216を含んで構成される。マイクロコンピュータ21のCPU211は、後記するROM26に格納されたプログラム261を実行することにより、受信開始時刻決定部217、時刻情報取得部218、時刻変更部219の各部を具現化する。
【0022】
受信開始時刻決定部217は、標準電波受信処理の開始時刻を決定する部位である。受信開始時刻決定部217は、例えば午前2時、午前3時、午前6時、午前10時、午後2時、午後6時、午後10時を標準電波受信処理の開始時刻として決定されている。
時刻情報取得部218は、標準電波受信部23が受信した標準電波から時刻情報(第2の時刻情報)を取得する部位である。
時刻変更部219は、携帯端末3から受信した時刻情報または標準電波受信部23が受信した標準電波の時刻情報により、計時回路213がカウントする現在時刻を変更するものである。
【0023】
RAM216は、揮発性メモリであり、CPU211の作業領域として変数やデータ等を格納する。
発振回路214は、振動子24と組み合わされて固有の周波数信号を生成して分周回路212に出力する。発振回路214としては、例えば、水晶発振回路が用いられる。
分周回路212は、発振回路214から入力された信号をCPU211や計時回路213が利用する各種周波数の信号に分周して出力する。
【0024】
計時回路213は、分周回路212から入力された所定の周波数信号の回数を計数し、初期時刻に加算することで現在時刻をカウント(計数)するカウンタ回路である。計時回路213により計数される現在時刻は、CPU211により読み出されて時刻表示に用いられる。この時刻の計数は、ソフトウェア的に制御されてもよい。
周辺回路215は、例えば、各種センサ信号の入力を受け付ける付加的な回路を含んで構成される。
【0025】
振動子24は、例えば、水晶振動子であり、発振回路214と組み合わされて固有の周波数信号を生成する。ROM26は、不揮発性メモリであり、CPU211が実行するプログラム261を格納する。
電源供給部25は、電子時計2を長期間に亘って継続的、かつ安定的に動作させることが可能な構成となっており、例えば単2電池とDC−DCコンバータとの組み合わせである。これにより動作中の電源供給部25の出力電圧は、所定値を保つ。第1の実施形態の電子時計2は、置き時計であるため、充分な容量を持つ電池を使用可能である。
通信部22は、Bluetooth Low Energyに準拠する通信路で、携帯端末3と情報を送受信する部位である。この通信部22は、携帯端末3との間で近距離用無線通信電波、具体的にはBluetooth Low Energyの2.4GHzの周波数の電波を通信する。CPU211は、携帯端末3から時刻情報(第1の時刻情報)を受信して、この時刻信号によって計時回路213を変更する。
標準電波受信部23は、標準周波数局4(
図1参照)から送信された標準周波数報時電波(標準電波)を受信する部位である。この標準電波受信部23が受信する標準電波は、通信部22が通信に用いる近距離用無線通信電波、具体的にはBluetooth Low Energyの2.4GHzの周波数の電波と比べて、電波の回り込む性質が強い。CPU211は、振幅変調された標準電波の時刻信号出力(TCO)を復調して、この時刻情報(第2の時刻情報)によって計時回路213を変更する。
操作受付部27は、例えばボタンなどであり、ユーザによる電子時計2への操作を受け付ける部位である。
【0026】
表示ドライバ28は、マイクロコンピュータ21から入力された表示制御信号に基づき、液晶で構成される表示部29に表示を行わせる。表示部29の表示例は、後記する
図3と
図4に示す。
【0027】
図3は、電子時計2による近距離無線通信時の画面5の例を示す図である。
画面5は、表示部29に表示される。この画面5は、近距離無線通信時に表示され、時分表示部51、秒表示部52、曜日表示部53、天気予報表示部54、最新情報表示部55、BLE通信アイコン56およびその右側の「受信オフ」の文字列とを含んでいる。
時分表示部51には、計時回路213(
図2参照)が計時する時分情報が7セグメントで表示される。秒表示部52は、計時回路213(
図2参照)が計時する秒情報が7セグメントで表示される。曜日表示部53は、計時回路213(
図2参照)が計時する曜日情報が7セグメントで表示される。天気予報表示部54は、天気予報に関する情報が7セグメントの数字とアイコンで表示される。
【0028】
最新情報表示部55には、操作受付部27の操作に応じて、最新のBLE接続時刻と、そのBLE接続が成功したか否かが表示される。具体的にいうと、最新情報表示部55には、携帯端末3から受信した時刻情報のうち最新のものが表示される。ユーザは、この最新情報表示部55により、過去のどの時点で携帯端末3との間の時刻同期が正しく行われたかを確認可能である。
BLE通信アイコン56は、BLE通信(近距離無線通信)を実行している旨を示すアイコンである。ユーザは、このBLE通信アイコン56により、携帯端末3との間の時刻同期が行われていることと、通信部22(
図2参照)が動作していることを確認可能である。BLE通信アイコン56の右側の「受信オフ」文字列58は、標準電波の受信を行っていないことを示している。
【0029】
図4は、電子時計2による標準電波受信時の画面5の例を示す図である。
この画面5は、
図3に示したBLE通信アイコン56と「受信オフ」文字列58とが表示されておらず、代わりに標準電波受信アイコン57と標準電波受信成功を示す“OK”が表示されている。ユーザは、標準電波受信アイコン57と“OK”表示により、24時間以内に標準電波を受信したことと、受信に成功したことを確認可能である。
【0030】
図5は、携帯端末3の構成の一例を示す図である。
図5において、携帯端末3は、CPU31、RAM32、記憶部33、撮像部34、タッチパネルディスプレイ35、キャリア通信部36、スピーカ37、BLE通信部38、計時回路39を備える。携帯端末3の各部はバスによって接続されている。
【0031】
CPU31は、記憶部33などに記憶されている各種アプリケーションプログラムの中から指定されたアプリケーションプログラムと、タッチパネルディスプレイ35から入力される各種指示とをRAM32内のワークメモリに展開する。CPU31は更に、この入力指示および入力データに応じてワークメモリに展開したアプリケーションプログラムに従って各種処理を実行し、その処理結果をRAM32内のワークメモリに格納すると共に、タッチパネルディスプレイ35に表示する。そして、CPU31は、ワークメモリに格納した処理結果をタッチパネルディスプレイ35から指示される記憶部33内の保存先に保存する。
記憶部33は、例えばフラッシュメモリやROMで構成されている。この記憶部33には、例えば電子時計2との間で時刻を同期するプログラムが格納されている。
【0032】
タッチパネルディスプレイ35は、例えば、ディスプレイパネルの表面に透明なタッチパネルが積層されて構成されており、表示機能と入力機能とを兼ね備える部位である。ディスプレイパネルとは、例えば液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイ等であり、漢字・ひらがな・カタカナの表示機能を有する。タッチパネルとは、入力ペンや指先等により指示された座標を感知し、電磁誘電方式、磁気歪式、感圧式等の座標読み取り原理で指示された位置座標を検出するものである。携帯端末3は、CPU31から入力される表示データに基づく信号を生成して、タッチパネルディスプレイ35に各種表示を行い、指示された座標をタッチパネルにより感知してCPU31に出力する。
【0033】
キャリア通信部36は、例えばアンテナと送受信回路で構成され、無線通信路を介してキャリア網Nに接続された他の装置との間で通信データを送受信する。
スピーカ37は、CPU31の指示により音声情報を出力する。
BLE通信部38は、例えばアンテナと送受信回路で構成され、Bluetooth Low Eneryの無線通信路を介して他の装置との間で通信データを送受信する。
計時回路39は、現在時刻を計数するカウンタ回路である。
【0034】
図6は、電子時計2による近距離無線通信処理を示すフローチャートである。
最初に電子時計2のCPU211は、専用アプリケーションプログラムが動作している携帯端末3との間でのペアリングを行う(ステップS10)。CPU211は、ペアリング成功まで(ステップS11→No)、携帯端末3とのペアリングを試みる(ステップS10)。
携帯端末3との間で、ペアリングが成功すると(ステップS11→Yes)、電子時計2は、携帯端末3との接続状態に遷移する(ステップS12)。
【0035】
次いでCPU211は、BLE通信により携帯端末3に対して時刻情報を要求する(ステップS13)。CPU211は、携帯端末3から時刻情報を受信したならば(ステップS14→Yes)、受信した時刻情報で本体時刻を変更し(ステップS15)、受信した時刻を記憶する(ステップS16)。CPU211は、これらステップS13〜S16の処理を通信切断まで繰り返す(ステップS17→No)。
【0036】
CPU211は更に、携帯端末3から時刻情報を受信せず(ステップS14→No)、通信が切断されなかったならば(ステップS17→No)、ステップS14の処理を通信切断まで繰り返す。
【0037】
電子時計2は、携帯端末3との間の通信切断により(ステップS17→Yes)、非接続状態に遷移する(ステップS18)。例えば電子時計2と携帯端末3との距離が離れると、通信が切断される。このとき、CPU211は、外部にアドバタイズを送信し(ステップS19)、携帯端末3との接続の確立を試みる。CPU211は、未だ接続が確立していない場合に(ステップS20→No)アドパタイズの送信を繰り返す。
【0038】
電子時計2と携帯端末3との間で接続が確立すると(ステップS20→Yes)、電子時計2は、再びステップS12の接続状態に遷移する。これにより、時刻情報の同期が再開する。
【0039】
図7は、電子時計2と携帯端末3による近距離無線通信動作を示すシーケンス図である。
最初、電子時計2は、外部にアドバタイズを送信し(シーケンスQ10)、携帯端末3との接続確立を試みる。携帯端末3は、このアドバタイズを受信すると、電子時計2に接続要求を送信する(シーケンスQ11)。これにより、電子時計2は、携帯端末3との接続を確立する(シーケンスQ12)。この接続確立時において、電子時計2および携帯端末3との間で、コネクション・インターバル、スレーブ・レイテンシ、スーパービジョン・タイムアウトの各パラメータの値が共有される。
【0040】
接続の確立後、電子時計2は、時刻情報の要求コマンドを携帯端末3に送信し(シーケンスQ13)、携帯端末3は、時刻情報を電子時計2に送信する(シーケンスQ14)。電子時計2は、携帯端末3が送信した時刻情報を受信すると共に、その時刻情報に対する応答を送信する(シーケンスQ15)。これらシーケンスQ13〜Q15の動作により、電子時計2は、携帯端末3と時刻同期が可能である。
その後、携帯端末3は、コネクション・インターバルTiおきに発生するコネクション・イベント(CE1,CE2,CE3,…)毎に、電子時計2へ時刻情報をパケット単位で送信する(シーケンスQ16〜Q20)。
【0041】
電子時計2は、シーケンスQ14において携帯端末3が時刻情報を送信した時点からの非受信期間が、最大非受信期間を超えるまでの間、携帯端末3へ通知する必要があるデータが無い場合、各コネクション・イベントCE1,CE2における携帯端末3からの時刻情報の受信を無視する(シーケンスQ16,Q17)。
【0042】
そして、電子時計2は、コネクション・イベントCE3(シーケンスQ18)において、非受信期間が最大非受信期間を超えたと判定すると、携帯端末3からの時刻情報の受信のみを実行し、受信した時刻情報に対する応答は送信しない。また、電子時計2は、携帯端末3から受信した時刻情報に基づいて、携帯端末3との時刻同期を実行する。
【0043】
そして、電子時計2は、コネクション・イベントCE4(シーケンスQ19)において、直近で受信したデータが送信された時点からの非受信期間が最大非受信期間を超えていないと判定し、携帯端末3からのデータの受信を無視する。
【0044】
そして、電子時計2は、コネクション・イベントCE5(シーケンスQ20)において、携帯端末3への応答の送信をしなかった回数がスレーブ・レイテンシである4回を超えたと判定する。よって、電子時計2は、携帯端末3からの時刻情報を受信すると共に、その時刻情報に対する応答を送信する(シーケンスQ21)。
【0045】
図8は、電子時計2による標準電波受信処理を示すフローチャートである。
なお、電子時計2のCPU211は、所定時刻になると、標準電波受信処理を開始する。所定時刻とは、例えば午前2時、午前3時、午前6時、午前10時、午後2時、午後6時、午後10時である。なお、CPU211は、所定のボタン操作などにより、標準電波受信処理を開始してもよい。更にCPU211は、通信部22を受信動作へ移行する制御をする時刻よりも、正子から近い時刻に標準電波受信部23を受信動作へ移行する制御をしてもよい。これにより、電子時計2は、ユーザが活動していない蓋然性が高い正子から近い時刻に標準電波の受信処理を行わせることができる。
当初、電子時計2のCPU211は、BLEを介して携帯端末3と接続確立中ならば(ステップS30→Yes)、処理を終了する。電子時計2が携帯端末3と接続確立中でないならば(ステップS30→No)、CPU211は、40kHzの標準電波の受信処理を開始する(ステップS31)。このようにCPU211は、通信部22と標準電波受信部23とを、排他的にいずれか一方を動作させている。これにより、一度に消費する電流量を削減して、電池の消耗による停止を防いでいる。
【0046】
CPU211は、40kHzの標準電波の受信に成功したならば(ステップS32→Yes)、受信した時刻情報で本体時刻を変更し(ステップS37)、この標準電波受信処理を終了する。標準電波の受信成功とは、振幅変調された標準電波の時刻信号出力を複数回復調し、かつ、これら時刻信号出力が整合することをいう。
CPU211は、8分間が経過するまでの間(ステップS33→No)、40kHzの標準電波の受信処理(ステップS31)を繰り返す。
【0047】
CPU211は、40kHzの標準電波の受信に成功せず(ステップS32→No)、8分間が経過したならば(ステップS33→Yes)、60kHzの標準電波の受信処理(ステップS34)を開始する。この受信処理にも、所定の時間が掛かる。
CPU211は、60kHzの標準電波の受信に成功したならば(ステップS35→Yes)、受信した時刻情報で本体時刻を変更し(ステップS37)、この標準電波受信処理を終了する。標準電波の受信成功とは、振幅変調された標準電波の時刻信号出力を複数回復調し、これら時刻信号出力が整合することをいう。
【0048】
CPU211は、8分間が経過するまでの間(ステップS36→No)、60kHzの標準電波の受信処理(ステップS34)を繰り返す。
CPU211は、60kHzの標準電波の受信に成功せず(ステップS35→No)、8分間が経過したならば(ステップS36→Yes)、
図8の処理を終了する。
【0049】
第1の実施形態の電子時計2は、携帯端末3と無線で通信できず、時刻同期できない場合でも、標準電波の受信により自身の時刻を変更可能である。更に、携帯端末3との無線通信と標準電波の受信とを排他的にいずれか一方だけを動作させているので、電力消費を削減して電池の消耗を防いでいる。
【0050】
《第2の実施形態》
第1の実施形態の電子時計2が置き時計であったのに対して、第2の実施形態の電子時計2Aは、アナログ式の腕時計である。以下、第1の実施形態との差異を中心に説明する。
【0051】
図9は、第2の実施形態におけるシステム1Aの概略を示す構成図である。
第2の実施形態のシステム1Aは、電子時計2Aと、携帯端末3とを含む。
この電子時計2Aは、例えばアナログ式の腕時計であり、第1の実施形態の電子時計2と同様に、定期的に携帯端末3とBluetooth Low Energyで接続して、携帯端末3の時刻を受信して自身の計時時刻を変更する。電子時計2Aは、自身の計時時刻などを指針で表示部29Aに表示する。電子時計2Aは更に、標準周波数局4が送信する長波長帯(Low Frequency Band)の電波を受信して、振幅変調された標準電波の時刻信号出力(TCO)を復調して、この時刻信号によって自身の時刻情報を変更可能である。
【0052】
図10は、電子時計2Aの構成の一例を示す図である。
電子時計2Aは、秒針291a、分針291b、時針291cを、それぞれ独立のステッピングモータ282a〜282cで各々駆動可能なものであり、例えば腕に装着するためのバンドを備えたアナログ式腕時計である。この電子時計2Aは、秒針291aと、輪列機構283aを介して秒針291aを回転駆動するステッピングモータ282aと、駆動回路281aとを備えている。ここでは、分針291bと時針291cについても同様に構成される。秒針291a、分針291b、時針291cは、例えば主文字盤に表示される指針である。
【0053】
3本の秒針291a、分針291b、時針291cは、それぞれ独立に回転可能である。以下、秒針291a、分針291b、時針291cを特に区別しないときには、単に指針291と記載する。各輪列機構283a〜283cを特に区別しないときには、単に輪列機構283と記載する。各ステッピングモータ282a〜282cを特に区別しないときには、単にステッピングモータ282と記載する。
指針291は、表示部29Aである文字盤上の回転軸に対して、回転自在に設けられている。輪列機構283は、それぞれ各ステッピングモータ282の駆動力を指針291に伝達して、この指針291を回転動作させる。
なお、第2の実施形態の電子時計2Aは、秒針291aの指し示す先により、通信部22が動作している旨や、標準電波受信部23が動作している旨を表示している。このように、電子時計2Aは、専用の表示要素を設けることなく、時分秒表示などを流用して動作状態を示すことができる。
【0054】
電源供給部25は、電子時計2Aを長期間に亘って継続的、かつ安定的に動作させることが可能な構成となっており、例えばボタン電池とDC−DCコンバータとの組み合わせである。
【0055】
電子時計2Aは、上記した表示部29Aに関連する部位と、電源供給部25の他は、
図2に示した電子時計2と同様に構成されている。
【0056】
図11は、電子時計2Aによる近距離無線通信処理を示すフローチャートである。
最初に電子時計2AのCPU211は、専用アプリケーションプログラムが動作している携帯端末3との間でのペアリングを行う(ステップS50)。CPU211は、ペアリング成功まで(ステップS51→No)、携帯端末3とのペアリングを試みる(ステップS50)。
CPU211は、携帯端末3との間でペアリングが成功すると(ステップS51→Yes)、携帯端末3に対して時刻情報を要求する(ステップS52)。
【0057】
CPU211は、携帯端末3から時刻情報の受信に成功したならば(ステップS53→Yes)、受信した時刻情報で本体時刻を変更し(ステップS54)、受信した時刻を記憶する(ステップS55)。更にCPU211は、携帯端末3との間の接続を切断する(ステップS56)。
CPU211は、携帯端末3から時刻情報の受信に失敗したならば(ステップS53→No)、携帯端末3との間の接続を切断する(ステップS56)。
【0058】
次いでCPU211は、予め決められた時刻になるまで待つ(ステップS57→No)。この予め決められた時刻は、標準電波の受信開始時刻とは異なり、例えば午前7時、午前11時、午後3時、午後7時、午後11時である。これにより、CPU211は、通信部22と標準電波受信部23のいずれか一方を動作させることができる。
【0059】
予め決められた時刻になったならば(ステップS57→Yes)、CPU211は、外部にアドバタイズを送信し(ステップS58)、携帯端末3との接続の確立を試みる。CPU211は、接続が確立しない場合(ステップS59→No)、ステップS57の処理に戻る。
【0060】
CPU211は、携帯端末3との間で接続が確立すると(ステップS59→Yes)、再びステップS52に戻り、時刻情報を要求する。これにより、時刻情報の同期が再開する。
【0061】
図12は、電子時計2Aと携帯端末3による近距離無線通信動作を示すシーケンス図である。
最初、電子時計2Aは、外部にアドバタイズを送信し(シーケンスQ30)、携帯端末3との接続確立を試みる。携帯端末3は、このアドバタイズを受信すると、電子時計2Aに接続要求を送信する(シーケンスQ31)。これにより、電子時計2Aは、携帯端末3との接続を確立する(シーケンスQ32)。
【0062】
接続の確立後、電子時計2Aは、時刻情報の要求コマンドを携帯端末3に送信し(シーケンスQ33)、携帯端末3は、時刻情報を電子時計2Aに送信する(シーケンスQ34)。
次いで電子時計2Aは、接続の切断要求コマンドを携帯端末3に送信し(シーケンスQ35)、携帯端末3は、接続の切断コマンドを電子時計2Aに送信する(シーケンスQ36)。これら一連の動作により、電子時計2Aは、通信部22の動作時間を最小限に抑えて、この通信部22による電力消費を削減可能である。
【0063】
図13は、電子時計2Aによる標準電波受信処理を示すフローチャートである。
なお、電子時計2AのCPU211は、所定時刻になると、標準電波受信処理を開始する。所定時刻とは、例えば午前2時、午前3時、午前6時、午前10時、午後2時、午後6時、午後10時である。なお、CPU211は、所定のボタン操作などにより、標準電波受信処理を開始してもよい。更にCPU211は、通信部22を受信動作へ移行する制御をする時刻よりも、正子から近い時刻に標準電波受信部23を受信動作へ移行する制御をしてもよい。これにより、電子時計2Aは、ユーザが活動していない蓋然性が高い正子から近い時刻に標準電波の受信処理を行わせることができる。
当初、CPU211は、BLEを介して携帯端末3と通信中ならば(ステップS70→Yes)、処理を終了する。電子時計2Aと携帯端末3とが通信中でないならば(ステップS70→No)、CPU211は、40kHzの標準電波の受信処理を開始する(ステップS71)。この受信処理には、所定の時間が掛かる。
【0064】
CPU211は、40kHzの標準電波の受信に成功したならば(ステップS72→Yes)、受信した時刻情報で本体時刻を変更し(ステップS79)、この標準電波受信処理を終了する。標準電波の受信成功とは、振幅変調された標準電波の時刻信号出力を複数回復調し、これら時刻信号出力が整合することをいう。
CPU211は、8分間が経過するまでの間(ステップS73→No)、40kHzの標準電波の受信処理(ステップS71)を繰り返す。
【0065】
CPU211は、40kHzの標準電波の受信に成功せず(ステップS72→No)、8分間が経過したならば(ステップS73→Yes)、外部にアドバタイズを送信し(ステップS74)、携帯端末3との接続確立を試みる。CPU211は、接続が確立したならば(ステップS75→Yes)、
図11のステップS52の処理に進み、携帯端末3との間で時刻を同期する。標準電波の受信よりも、携帯端末3との時刻同期の方が短時間で終了するため、電子時計2Aは、時刻変更に伴う消費電力を削減可能である。
【0066】
CPU211は、未だ接続が確立していない場合に(ステップS75→No)、60kHzの標準電波の受信処理(ステップS76)を開始する。この受信処理にも、所定の時間が掛かる。
CPU211は、60kHzの標準電波の受信に成功したならば(ステップS77→Yes)、受信した時刻情報で本体時刻を変更し(ステップS79)、この標準電波受信処理を終了する。標準電波の受信成功とは、振幅変調された標準電波の時刻信号出力を複数回復調し、これら時刻信号出力が整合することをいう。
【0067】
CPU211は、8分間が経過するまでの間(ステップS78→No)、60kHzの標準電波の受信処理(ステップS76)を繰り返す。
CPU211は、60kHzの標準電波の受信に成功せず(ステップS77→No)、8分間が経過したならば(ステップS79→Yes)、
図13の処理を終了する。
この標準電波受信処理により、電子時計2Aと携帯端末3とが時刻同期できない場合でも、CPU211は、標準電波に基づく時刻変更を行うことができる。
【0068】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)〜(h)のようなものがある。
(a) 本発明は、アナログ式の置き時計やデジタル式の腕時計、更には掛け時計に適用してもよく、限定されない。
(b) 本発明の近距離無線通信は、Bluetooth Low Energyに限定されず、ZigBee(登録商標)やWifi(登録商標)などであってもよい。
(c) 本発明は、電子時計と携帯端末との間の時刻同期に限定されず、固定端末であるデスクトップコンピュータやホームサーバなどとの間で時刻同期するように構成してもよい。
(d) 本発明の電子時計は、過去の所定期間内に携帯端末3との間の時刻同期を実施していたならば、標準電波の受信処理をキャンセルしてもよい。これにより、標準電波受信部23の消費電力を削減可能である。
(e) 本発明の電子時計は、秒針によって通信部22や標準電波受信部23が動作している旨を表示することに限られず、例えばクロノグラフの小針などによって表示してもよい。
(f) 本発明の電子時計は、標準電波の時刻情報よりも携帯端末3との間の時刻同期を優先しているが、携帯端末3との間の時刻同期よりも標準電波の時刻情報を優先してもよい。
(g) 第1の実施形態の電子時計は、24時間以内に標準電波の時刻情報を受信したならば、その旨を示す標準電波受信アイコン57を表示している。しかし、標準電波の時刻情報の受信中に、その旨を示すアイコンなどを表示してもよい。
(h) 第1の実施形態の電子時計は、携帯端末との同期中に、その旨を示すBLE通信アイコン56を表示している。しかし、電子時計は、24時間以内に携帯端末と同期したならば、その旨を示すアイコンなどを表示してもよい。
【0069】
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
《請求項1》
現在の時刻をカウントする計時回路と、
端末との間で近距離用無線通信電波を通信することにより第1の時刻情報を受信する近距離無線通信部と、
前記近距離用無線通信電波に比べて電波の回り込む性質が強い標準電波を受信し、第2の時刻情報を受信する標準電波受信部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1の時刻情報または前記第2の時刻情報により、前記計時回路がカウントする現在時刻を変更する、
ことを特徴とする電子時計。
《請求項2》
前記制御部は、
前記近距離無線通信部と前記標準電波受信部とを、排他的にいずれか一方を動作させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子時計。
《請求項3》
前記近距離無線通信部が動作している際には当該近距離無線通信部が動作している旨を表示し、前記標準電波受信部が動作している際には当該標準電波受信部が動作している旨を表示する表示部を備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の電子時計。
《請求項4》
前記制御部は、予め定められた受信開始時刻に前記近距離無線通信部が動作していなかったならば、前記標準電波受信部の標準電波の受信動作を開始させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の電子時計。
《請求項5》
前記制御部は、前記受信開始時刻とは異なるタイミングにおいて前記近距離無線通信部の前記端末との通信動作を開始させ、前記近距離無線通信部に前記端末からの前記第1の時刻情報を受信させ、前記近距離無線通信部と前記端末との通信を切断させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の電子時計。
《請求項6》
前記制御部は、前記近距離無線通信部を受信動作へ移行する制御をする時刻よりも、正子から近い時刻に前記標準電波を受信動作へ移行する制御をする、
ことを特徴とする請求項3に記載の電子時計。
《請求項7》
前記近距離無線通信部は、前記端末との通信が切断されるまで、接続状態を維持する、
ことを特徴とする請求項6に記載の電子時計。
《請求項8》
前記制御部は、
前記近距離無線通信部が前記端末から受信した前記第1の時刻情報のうち最新のものを表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項7に記載の電子時計。
《請求項9》
現在の時刻をカウントする計時回路と、端末との間で近距離用無線通信電波を通信する近距離無線通信部と、前記近距離用無線通信電波に比べて電波の回り込む性質が強い標準電波を受信する標準電波受信部と、を備える電子時計の時刻変更方法であって、
前記近距離無線通信部により前記端末から第1の時刻情報を受信し、
前記標準電波受信部が受信した前記標準電波から第2の時刻情報を取得し、
前記第1の時刻情報または前記第2の時刻情報により、前記計時回路がカウントする現在時刻を変更する、
ことを特徴とする電子時計の時刻変更方法。
《請求項10》
現在の時刻をカウントする計時回路と、端末との間で近距離用無線通信電波を通信する近距離無線通信部と、前記近距離用無線通信電波に比べて電波の回り込む性質が強い標準電波を受信する標準電波受信部と、を備えるコンピュータを、
前記近距離無線通信部により前記端末から第1の時刻情報を取得する第1時刻取得手段、
前記標準電波受信部が受信した前記標準電波から第2の時刻情報を取得する第2時刻取得部と、
前記第1の時刻情報または前記第2の時刻情報により、前記計時回路がカウントする現在時刻を変更する時刻変更手段、
として機能させるためのプログラム。