特許第6759920号(P6759920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カシオ計算機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759920
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】立体造形物製造システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/06 20060101AFI20200910BHJP
【FI】
   B41M3/06 F
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-182574(P2016-182574)
(22)【出願日】2016年9月20日
(65)【公開番号】特開2018-47558(P2018-47558A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂牧 勝也
【審査官】 高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−171317(JP,A)
【文献】 特開2015−071286(JP,A)
【文献】 特開2013−129120(JP,A)
【文献】 特開2001−293926(JP,A)
【文献】 特開平10−324010(JP,A)
【文献】 特開2004−318499(JP,A)
【文献】 特開2016−060166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
図形的な面積で表現されるグラフを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成されたグラフのうち、面積表現部における境界領域を、熱膨張性シートにおける熱膨張層を前記熱膨張性シートの一面側から熱膨張させるための印刷画像成分として割り当てるとともに、面積表現部における内側領域を、前記熱膨張層を前記熱膨張性シートの他面側から熱膨張させるための印刷画像成分として割り当てる設定手段と、
を備えたことを特徴とする立体造形物製造システム。
【請求項2】
前記熱膨張性シートは、前記熱膨張層が形成されている側が前記一面側とされていることを特徴とする請求項1に記載の立体造形物製造システム。
【請求項3】
前記内側領域は、前記境界領域よりも小さな相似形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体造形物製造システム。
【請求項4】
図形的な面積で表現されるグラフを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成されたグラフのうち、面積表現部における境界領域を、一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートにおける前記熱膨張層上への印刷画像成分であって前記熱膨張層を熱膨張させるための印刷画像成分として割り当てるとともに、面積表現部における内側領域を、前記熱膨張層上への印刷画像成分であって前記熱膨張層の熱膨張に非寄与的な印刷画像成分として割り当てる設定手段と、
を備えたことを特徴とする立体造形物製造システム。
【請求項5】
前記グラフの面積表現部は、複数の内側領域と、隣接する内側領域との境界である第1境界領域と、前記グラフの背景又は軸との境界である第2境界領域とを含み、
前記境界領域は、前記第1境界領域、及び前記第2境界領域であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の立体造形物製造システム。
【請求項6】
前記設定手段は、前記面積表現部における内側領域を、前記熱膨張性シートの他面側への印刷画像成分であって前記熱膨張層を熱膨張させるための印刷画像成分としても割り当てることを特徴とする請求項4に記載の立体造形物製造システム。
【請求項7】
所定の関数式にパラメータを代入するための入力手段と、
前記入力手段によりパラメータが代入された前記関数式に基づいて描画されるグラフをプレビュー表示させる表示制御手段と、
前記表示制御手段でプレビュー表示されるグラフの成分のうち、面積表現部における境界領域を、表面からの光照射により前記表面側に設けられた熱膨張層を隆起させるための画像成分として割り当てるとともに、面積表現部における内側領域を、裏面からの光照射により熱膨張層を隆起させるための画像成分として割り当てる設定手段と、
を備えたことを特徴とする立体造形物製造システム。
【請求項8】
熱膨張性シートを立体造形させる装置のコンピュータを、
図形的な面積で表現されるグラフを生成する生成手段、
前記生成手段により生成されたグラフのうち、面積表現部における境界領域を、前記熱膨張性シートにおける熱膨張層を前記熱膨張性シートの一面側から熱膨張させるための印刷画像成分として割り当てるとともに、面積表現部における内側領域を、前記熱膨張層を前記熱膨張性シートの他面側から熱膨張させるための印刷画像成分として割り当てる設定手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートを立体造形させる装置のコンピュータを、
図形的な面積で表現されるグラフを生成する生成手段、
前記生成手段により生成されたグラフのうち、面積表現部における境界領域を、前記熱膨張性シートにおける前記熱膨張層上への印刷画像成分であって前記熱膨張層を熱膨張させるための印刷画像成分として割り当てるとともに、面積表現部における内側領域を、前記熱膨張層上への印刷画像成分であって前記熱膨張層の熱膨張に非寄与的な印刷画像成分として割り当てる設定手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
表面側に熱膨張層が設けられた熱膨張性シートを立体造形させる装置のコンピュータを、
所定の関数式にパラメータを代入するための入力手段、
前記入力手段によりパラメータが代入された前記関数式に基づいて描画されるグラフをプレビュー表示させる表示制御手段、
前記表示制御手段でプレビュー表示されるグラフの成分のうち、面積表現部における境界領域を、表面からの光照射により前記表面側に設けられた熱膨張層を隆起させるための画像成分として割り当てるとともに、面積表現部における内側領域を、裏面からの光照射により熱膨張層を隆起させるための画像成分として割り当てる設定手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形物製造システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
造形技術の一つとして、発泡性シートを用いた立体画像形成技術が知られており、例えば、点字などの視覚障害者用の教材作成に使用される。このような技術として、例えば、特許文献1の技術が開示されている。
【0003】
特許文献1は、「吸収した熱量に応じて発泡膨張する媒体の表面上に、該媒体よりも熱エネルギーを吸収しやすい熱吸収部を形成する熱吸収部形成手段と、前記媒体に熱エネルギーを放射する熱エネルギー放射手段と」を備えた立体画像形成装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−060166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、熱膨張性シートは、表面側(一面側)の画像形成の方が、裏面側(他面側)の画像形成よりも熱膨張が際立つことが多い。そのため、画像の形状(例えば、線の太さや、面積)に応じて、熱膨張性シートの一面側に画像形成するか、他面側に画像形成するかを適宜選択して、最適な画像形成をすることが好ましい。
【0006】
この点、特許文献1に記載の技術は、黒又は灰の熱吸収部を熱膨張性シートの一面側にのみ画像形成しており、他面側に熱吸収部を画像形成することを意図していない。そのため、この技術は、グラフを立体画像形成するときであっても、熱膨張性シートの一面側にのみグラフ形状の熱吸収部を画像形成することになる。
言い換えれば、特許文献1に記載の技術は、熱膨張性シートの一面側に画像形成するか、他面側に画像形成するかを選択しないため、より適切な立体画像形成(立体造形物製造)をすることができる可能性を有している。
【0007】
本発明の課題は、より適切な立体造形物を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の立体造形物製造システムは、図形的な面積で表現されるグラフを生成する生成手段と、前記生成手段により生成されたグラフのうち、面積表現部における境界領域を、熱膨張性シートにおける熱膨張層を前記熱膨張性シートの一面側から熱膨張させるための印刷画像成分として割り当てるとともに、面積表現部における内側領域を、前記熱膨張層を前記熱膨張性シートの他面側から熱膨張させるための印刷画像成分として割り当てる設定手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より適切な立体造形物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態である立体造形物製造システムの構成図である。
図2】棒グラフの一例を示す説明図である。
図3】円グラフの一例を示す説明図である。
図4】レーダチャートの一例を示す説明図である。
図5】立体造形物製造システムの表示装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図6】アプリ選択画面の一例を示す図である。
図7】グラフ作成画面で円グラフを選択した図である。
図8】グラフ作成画面で棒グラフを選択した図である。
図9】軸情報入力画面の一例を示す図である。
図10】発泡パターンテーブルの一例である。
図11】グラフデータ入力画面の一例を示す図である。
図12】内側領域画像を生成する生成動作を説明するためのフローチャートである。
図13】第2境界領域を複写した複写画像の一例を示す図である。
図14】内側領域の画像を生成した様子を示す図である。
図15】第2境界領域を太くしてから白色に変更した画像を示す図である。
図16】裏面発泡画像の一例を示す図である。
図17】棒グラフの表示画面の一例である。
図18】図柄修正画面の一例を示す図である。
図19】グラフ編集画面の一例を示す図である。
図20】表発泡画像、表カラー画像、裏発泡画像の一例を示す図である。
図21】表発泡画像、表カラー画像、鏡像にされた裏発泡画像の合成画像の一例を示す図である。
図22】発泡前の熱膨張性シートの断面図である。
図23】発砲後の熱膨張性シートの断面図である。
図24】発砲後の熱膨張性シートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本実施形態を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である立体画像形成システムの構成図である。
立体造形物製造システム1000は、表示装置100と、表示操作部150と、二次元画像形成装置320と、発泡装置310とを備え、二次元画像形成装置320と発泡装置310とで立体画像形成装置300を構成する。該立体画像形成装置300は、棒グラフや、円グラフ等の立体画像を熱膨張性シートに形成する。また、表示装置100は、画像形成する棒グラフや、円グラフ等の画像を表示操作部150に表示させる。なお、棒グラフや円グラフは、複数の棒や、複数の扇形で構成されており、各々の棒や、扇形の面積や面積の比で比較するグラフである。
【0013】
表示装置100は、OS(Operating System)を用い、表示操作部150と接続された汎用の情報処理装置であり、発泡装置310や二次元画像形成装置320を制御する制御装置として使用される。表示装置100は、制御部10と、揮発性記憶部80と、不揮発性記憶部90と、通信部70とを備える。揮発性記憶部80は、RAM(Random Access Memory)であり、ワークメモリとして使用される。不揮発性記憶部90は、HDD(Hard Disk Drive)やROM(Read Only Memory)であり、OS91、アプリケーションプログラム93、プリンタドライバ92や、グラフデータ94等を格納する。通信部70は、LAN(Local Area Network)やUSB(Universal Serial Bus)のシリアルインタフェースやパラレルインタフェースである。本実施形態では、二次元画像形成装置320とUSB接続され、発泡装置310とシリアル又はパラレル接続される。表示操作部150は、表示装置100に接続されるタッチパネルであり、二次元画像を表示する表示手段と、操作者が入力する入力手段とを備える。
【0014】
発泡装置310は、熱で発泡(膨張)する発泡層(膨張層)を台紙の一面側に積層した熱膨張性シートの片面又は両面を加熱するために、発熱器具(加熱器具)としてのハロゲンランプ(不図示)を備えている。
【0015】
二次元画像形成装置320は、熱膨張性シートの特定部位を発泡(膨張)させる黒色印刷(描画)したり、熱膨張性シートの全面をCMY(シアン・マゼンタ・イエロー)でカラー印刷したりするインクジェットプリンタである。二次元画像形成装置320は、熱膨張性シートの表面を膨張させる特定部位の画像データ(表面データ)と該熱膨張性シートの裏面から膨張層を膨張させる画像データ(裏面データ)と、カラー画像データとが必要である。
【0016】
なお、ハロゲンランプは、近赤外光を強く発生するので、黒色(カーボン)を強く加熱し、CMYのカラー印刷箇所では加熱量が少ない。このため、発泡層を有した熱膨張性シートは、黒色印刷された特定部位のみ発泡(膨張)し、立体造形物が形成される。言い換えれば、二次元画像形成装置320は、近赤外光を熱に変換する熱変換層(黒色層)を印刷する。ここで、黒色印刷するインクは、カーボンを含み、近赤外光の照射による発泡に寄与する。CMYのインクは、カーボンを含んでいない。このため、CMYを混色した黒色は、発熱量が少なく、発泡に寄与しない。なお、立体造形物製造システム1000は、立体画像の構造物を製造する構造物製造システムとして動作する。
【0017】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)であり、プログラムを実行することにより、設定手段20と、表示制御手段30と、入力制御手段40と、画像形成制御手段50と、通信制御部60との機能を実現する。表示制御手段30は、生成されたグラフの画像を表示操作部150に表示させる。入力制御手段40は、グラフ画像生成手段41を備え、該グラフ画像生成手段41が棒グラフや円グラフの画像を生成し、グラフデータ94を生成する。
【0018】
生成されたグラフデータ94は、熱膨張性シートの表面に黒色で画像形成する表面データと、該熱膨張性シートの裏面に黒色で画像形成する裏面データと、熱膨張性シートの表面にカラーで画像形成するカラー画像データとから構成される。設定手段20は、境界領域・割当手段21と、内側領域・割当手段22と、軸・目盛り・割当手段23とを備える。境界領域・割当手段21は、棒グラフの棒や円グラフの扇形と背景との境界や、隣接領域との境界の領域を割り当てる。内側領域・割当手段22は、棒グラフの棒の内側や、円グラフの内側の領域を割り当てる。軸・目盛り・割当手段23は、グラフの軸や目盛りを表面データに割り当てる。なお、カラー画像データは、表面のカラー画像として割り当てられているが、熱膨張に非寄与的である。
【0019】
画像形成制御手段50は、グラフデータ94に基づいて、二次元画像形成装置320と、発泡装置310との双方を制御する制御手段である。
【0020】
通信制御部60は、通信部70を制御する制御手段であり、二次元画像形成装置320をUSB(Universal Serial Bus)制御し、発泡装置310をパラレルI/FやシリアルI/Fで制御し、表示操作部150にデジタル映像信号を送信する。
【0021】
図2は、棒グラフの一例を示す説明図である。
棒グラフ420は、棒の面積で表現する面積表現部410と、横目盛線421と、縦目盛線422と、項目423と、目盛り424と、背景415とを備えて構成されている。面積表現部410は、棒の内側の領域(開領域)である内側領域411と、背景415との境界である第2境界領域413とを備える。なお、開領域は、境界を含まない概念であり、境界を含む概念を閉領域という。内側領域411は、面積表現部410から棒グラフ420の棒の外周部分である第2境界領域を除いた部分であり、面積を有する。なお、棒グラフ420は、系列数1、データ数3のグラフであり、各々の項目423に1個のデータが記載されており、項目数が3個である。ここで、系列は、同じ系統のデータのグループのことを意味する。
【0022】
横目盛線421は、等間隔、且つ平行に引いた複数の横線であり、棒の高さを比較する基準線である。縦目盛線422は、等間隔、且つ平行に引いた複数の縦線であり、隣接する棒とを区別するためのものであり、無くても構わない。項目423は、各々の棒の内容を記述する文字列である。目盛り424は、棒の高さを定量的に表現する文字列であり、横目盛線421に対応している。なお、目盛り424は、左端の縦目盛線422との間に空白を設けており、この空白には、例えば、点字が記載される。
【0023】
図3は、円グラフの一例を示す説明図である。
円グラフ430は、扇形の面積で表現する面積表現部410と、背景415とを備え、面積表現部410は、内側領域411(411a)と、隣接する内側領域411bとの境界である第1境界領域412と、背景415との境界である第2境界領域とを備える。なお、円グラフは、円を放射状に分割した扇形でなくても、ドーナツを放射状に分割したものでも構わない。
【0024】
図4は、レーダチャートの一例を示す説明図である。
レーダチャート440は、複数の同心円442と、同心円442の中心Oから放射する複数の軸441と、同心円442の最外周部分であって、各々の軸441の近傍に配置される複数の項目443とを備え、各軸441の項目443の完成度や満足度を量的に記述し、各項目443のバランスを評価するものである。
【0025】
ここで、各々の軸441は、完成度や満足度を量的に記述するための点Pが中心Oからの距離や比率で規定され、各々の軸441の点Pを直線で連結すると、多角形が形成される。該多角形は、最外周円の面積に対する比率で完成度や満足度を評価することができるものであり、面積表現部410と表現することにする。該面積表現部410は、多角形の内側である内側領域411と、背景415との境界である第2境界領域とを備える。
【0026】
図5は、立体造形物製造システムの表示装置の動作を説明するためのフローチャートである。
グラフ画像生成手段41は、グラフ選択設定画面を表示操作部150に表示させる(S10)。具体的には、グラフ画像生成手段41は、まず、アプリ選択画面450(図6)を表示させ、表入力グラフアプリ選択ボタン451(図6)の押下を確認したら、グラフ作成画面500(図7図8)を表示させる。グラフ画像生成手段41は、そのグラフ種類選択欄510のプルダウンメニューを用いて、棒グラフ、円グラフの何れかを選択する。図7は、グラフ種類選択欄510aで円グラフを選択した画面であり、図8は、グラフ種類選択欄510bで棒グラフを選択した画面である。ここでは、操作者は、棒グラフを選択し(図8)、テンキー520を用いて、系列数「2」や、データ数「3」を入力するものとする。
【0027】
なお、グラフ作成画面500は、「中止」ボタン521、「戻る」ボタン522、及び「次へ」ボタン523の組み合わせを備え、グラフ作成の中止(例えば、メニュー画面への戻り)、一つ前の画面(例えば、アプリ選択画面450)への戻り、次の画面への進行を行うことができる。
【0028】
S10の後、入力制御手段40は、X軸、Y軸設定画面を表示操作部150に表示させる(S15)。つまり、入力制御手段40は、軸情報入力画面540(図9)を表示させる。軸情報入力画面540は、X軸の目盛線を表示するか否かのチェックボックス541、方眼の縦線を表示するか否かのチェックボックス542、点字表示領域を空けるか否かを設定するチェックボックス543を備えている。また、軸情報入力画面540は、テンキー520を用いて、Y軸の最小値、及び最大値を入力する入力欄545を備えている。また、軸情報入力画面540は、Yの目盛線を表示するか否かのチェックボックス546、方眼の縦線を表示するか否かのチェックボックス547、点字表示領域を空けるか否かを設定するチェックボックス548、及びテンキー520を用いて設定する「目盛間隔」入力欄549を備えている。
【0029】
S15のX軸、Y軸設定画面(軸情報入力画面540(図9))の表示の後、入力制御手段40は、Y軸の最小値、最大値や、目盛間隔等の目盛りデータの入力を行う(S20)。S20の後、グラフ画像生成手段41は、系列毎に設定された図柄(発泡パターンテーブル545(図10))の呼び出しを行う(S25)。
【0030】
図10は、発泡パターンテーブルの一例である。
発泡パターンテーブル545は、不揮発性記憶部90に格納されているものであり、系列毎に、図示の発泡パターンとカラーとを登録している。つまり、本実施形態の立体造形物製造システム1000は、系列に応じて、発泡パターンや色が自動選択されるように構成されている。なお、カラーは、例えば、系列1が赤色であり、系列2が黄色であり、系列3が緑色であり、系列4が紺色であり、系列5が青色であり、系列6が薄緑色であり、系列7が桃色であり、系列8が向日葵色であるものとする。なお、系列4のように、発泡パターン無しの場合もある。
【0031】
図5の説明に戻り、S25の処理後、入力制御手段40は、グラフデータ入力画面550(図11)を用いて、グラフデータの入力を行う(S27)。なお、グラフデータは、グラフデータ入力画面550を用いることなく、例えば、不揮発性記憶部90に予め格納されているグラフデータ94を読み出したりしても構わない。
【0032】
図11は、グラフデータ入力画面の一例を示す図である。
グラフデータ入力画面550は、データラベル毎に、系列1のデータ欄551と、系列2のデータ欄552とがある。例えば、ラベル1は、系列1に「10」、系列2に「8」が入力され、ラベル2は、系列1に「15」が入力され、系列2に「5」が入力され、ラベル3は、系列1に「12」が入力され、系列2に「10」が入力される。
【0033】
S27の後、グラフ画像生成手段41は、内側領域の画像を生成する(S30)。
図12は、内側領域画像を生成する生成動作を説明するためのフローチャートである。
まず、境界領域・割当手段21(図1)は、境界領域の画像の複製を行う(S31)。つまり、境界領域・割当手段21は、第2境界領域413(図2)の画像を複製し、第2境界領域413a(図13)の画像を生成する。S31の後、内側領域・割当手段22(図1)は、内側領域411c(図14)の画像を生成し、生成した画像を仮画像とする(S33)。S33の後、内側領域・割当手段22は、第2境界領域413aの太さを変更し(S35)、第2境界領域413b(図15)の画像を生成する。S35の後、内側領域・割当手段22は、第2境界領域413bの色を白色に変更する(S37)。S37の後、内側領域・割当手段22は、白色領域(第2境界領域413b)の画像と、内側領域411c(図14)の画像とを重畳させて(S39)、重畳された内側領域411d(図16)の画像を裏面発泡画像として割り当てる。つまり、裏面発泡画像としての内側領域411dは、第2境界領域413aよりも小さな相似形である。そして、処理は、元のルーチン(図5)に戻る。
【0034】
S30の後、表示制御手段30(図1)は、棒グラフ表示画面560(図17)を表示操作部150(図17)に表示させる(S35)。
【0035】
図17は、棒グラフの表示画面の一例である。
棒グラフ表示画面560は、図2で説明した棒グラフ420(系列1)と、「中止」ボタン521、「戻る」ボタン522、及び「次へ」ボタン523の組み合わせとから構成されている。つまり、操作者は、グラフ作成の中止(例えば、メニュー画面への戻り)、一つ前の画面(例えば、グラフデータ入力画面550(図11))への戻り、次の画面(例えば、第2系列追記のためのグラフ編集画面570(図19))への進行を行うことができる。
【0036】
S35の後、入力制御手段40は、軸や図柄の確認の判定を行う(S40)。図柄の再設定が必要と判定されれば(S40で図柄・再設定)、表示制御手段30は、図柄修正画面530(図18)を表示操作部150に表示させて、図柄修正を行う(S45)。
【0037】
図18は、図柄修正画面の一例である。
図柄修正画面530は、系列毎に棒のパターンと棒の色(背景色)を設定する画面である。図18の画面は、「ドットパターン」及び「赤」に設定している。S45の後、処理は、S30に戻り、内側領域の画像を生成し直す。
【0038】
一方、軸の再設定が必要と判断されれば(S40で軸・再設定)、表示制御手段30は、処理をS15に戻し、入力制御手段40が軸情報入力画面540(図9)を表示させる。このとき、表示制御手段30は、グラフ編集画面570(図19)を表示させて、線の編集や系列の追加を行うこともできる。
【0039】
図19は、グラフ編集画面の一例を示す図である。
グラフ編集画面570は、図2で説明した「系列1」の棒グラフ420に対して、「系列2」の棒を追記した棒グラフ425と、線種類変更画面580とを備える。線種類変更画面580は、横目盛線421や縦目盛線422等の線の種類を変更する画面であり、「線の色」、「線の種類」、「線の太さ」、「発泡高さ」を変更することができる。
【0040】
また、軸・図柄がOKであれば(S40で確認OK)、入力制御手段40は、グラフの判定入力を行う(S50)。データの再入力が必要であれば(S50でデータ再入力)、入力制御手段40は、処理をS27に戻し、グラフデータの入力を行わせる。
【0041】
一方、表示されたグラフが適切であるという判定結果であれば(S50で画像形成)、画像形成制御手段50(図1)は、二次元画像形成装置320、及び発泡装置310に対して、三次元画像の形成を指示する(S55)。
【0042】
画像形成制御手段50は、まず、二次元画像形成装置320を用いて、横目盛線421、縦目盛線422、項目423、目盛り424、第2境界領域413a、及び第1境界領域412(図3)の表発泡画像を黒色で熱膨張性シートの表面に画像形成する(図20(a))。なお、図20(a)の表発泡画像は、点字画像425が含まれている。次に、画像形成制御手段50は、熱膨張性シートの裏面側に内側領域411d(図16)の裏発泡画像を、鏡像にして、鏡像画像を黒色で画像形成する(図20(b))。また、画像形成制御手段50は、カラー画像(図20(c))を熱膨張性シートの表面にCMYのカラーで画像形成する。
【0043】
なお、図20(c)において、「黄色」のカラー画像を411eで示し、「赤色」のカラー画像を411fで示している。また、このカラーの画像形成のとき、横目盛線421、縦目盛線422、項目423、目盛り424、第2境界領域413、及び第1境界領域412を黒色で表現するときには、画像形成制御手段50は、CMYの全色を用いて画像形成する。カラーの画像形成は、カーボンを含む黒色でないので、熱膨張に非寄与的である。
【0044】
図21は、表発泡画像、表カラー画像、鏡像にされた裏発泡画像の合成画像の一例を示す図である。なお、図21は、図22,23の断面図の断面位置が示されている。なお、図21,22は、図20(c)と同様に、「黄色」のカラー画像を411eで示し、「赤色」のカラー画像を411fで示している。
【0045】
次に、画像形成制御手段50は、発泡装置310を用いて、熱膨張性シートに近赤外光を照射し、黒色で画像形成した部位(熱膨張性シートの表面側の横目盛線421、縦目盛線422、項目423、目盛り424、第2境界領域413、第1境界領域412、及び点字画像425を発泡させる。そして、画像形成制御手段50は、処理を終了する。
【0046】
図22は、発泡前の熱膨張性シートのA−A断面図であり、断面位置は、図21に記載されている。
熱膨張性シートは、台紙の一面側(表面側)に発泡層を積層したものである。発泡前の熱膨張性シートは、表面側に、第2境界領域413aと、縦目盛線422との画像が黒色で画像形成され、内側領域411のカラー画像411e,411fが画像形成されている。第2境界領域413aは、縦目盛線422よりも幅が広い。またこの熱膨張性シートは、裏面側に内側領域411dのパターンが画像形成されている。また、第2境界領域413aと、縦目盛線422と、内側領域411dのパターンとは、同一濃度で画像形成されている。なお、表面側の第2境界領域413aと、裏面側の内側領域411dとの間は、太さを変更した第2境界領域413bが存在する。
【0047】
図23は、発砲後の熱膨張性シートのA−A断面図であり、図24は、発砲後の熱膨張性シートの斜視図である。
発砲後の熱膨張性シートは、第2境界領域413aと、縦目盛線422とに対応する発泡層が、表面側に盛り上がっているだけでなく、裏面側に画像形成された内側領域411dのパターンに対応する発泡層も表面側に盛り上がっており、立体造形物(立体画像)が形成されている。ここで、裏面側に画像形成された内側領域411dのパターンは、時間を掛けて膨張するので、高さ方向の変化率が少なく、なだらかである。一方、表面側に画像形成された第2境界領域413aと、縦目盛線422とは、瞬時に膨張するので、高さ方向の変化率が大きく、急峻に立ち上がっている。また、内側領域411のカラー画像は、立体的に発泡した発泡層の上層に形成されている。なお、熱膨張性シートの裏面には、黒色で画像形成された内側領域411dのパターンが残っている。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の立体造形物製造システム1000は、表面側(一面側)に熱膨張層が形成された熱膨張性シートに棒グラフや円グラフ等の2.5D画像(立体造形物、立体画像)を形成することができる。具体的には、立体造形物製造システム1000は、第1境界領域412、及び第2境界領域413(図2)を表面側に割り当て、この境界領域412,413、及び横目盛線421、縦目盛線422、項目423、目盛り424、点字画像425をカーボンを含む黒色で熱膨張性シートに画像形成し、裏面側に内側領域411(図2)を割り当て、この内側領域411をカーボンを含む黒色で熱膨張性シートに画像形成する。このとき、裏面発泡画像が形成される内側領域411dは、第2境界領域413よりも小さな相似形である。そして、立体造形物製造システム1000は、黒色で画像形成された熱膨張性シートを加熱し、熱膨張層を膨張させる。これにより、熱膨張性シートは、内側領域411が裏面側から時間を掛けて熱膨張層を表面側に膨張させ、第1境界領域412,第2境界領域413が表面側で直ぐに熱膨張する。これにより、熱膨張性シートは、裏面側の内側領域411よりも表面側の第1境界領域412,第2境界領域413の方が目立つように熱膨張する。つまり、熱膨張性シートは、第1境界領域412,第2境界領域413と内側領域411が適宜選択され、最適な画像形成が行われる。
【0049】
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
図形的な面積で表現されるグラフを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成されたグラフのうち、面積表現部における境界領域を、熱膨張性シートにおける熱膨張層を前記熱膨張性シートの一面側から熱膨張させるための印刷画像成分として割り当てるとともに、面積表現部における内側領域を、前記熱膨張層を前記熱膨張性シートの他面側から熱膨張させるための印刷画像成分として割り当てる設定手段と、
を備えたことを特徴とする立体造形物製造システム。
<請求項2>
前記熱膨張性シートは、前記熱膨張層が形成されている側が前記一面側とされていることを特徴とする請求項1に記載の立体造形物製造システム。
<請求項3>
前記内側領域は、前記境界領域よりも小さな相似形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体造形物製造システム。
<請求項4>
図形的な面積で表現されるグラフを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成されたグラフのうち、面積表現部における境界領域を、一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートにおける前記熱膨張層上への印刷画像成分であって前記熱膨張層を熱膨張させるための印刷画像成分として割り当てるとともに、面積表現部における内側領域を、前記熱膨張層上への印刷画像成分であって前記熱膨張層の熱膨張に非寄与的な印刷画像成分として割り当てる設定手段と、
を備えたことを特徴とする立体造形物製造システム。
<請求項5>
前記グラフの面積表現部は、複数の内側領域と、隣接する内側領域との境界である第1境界領域と、前記グラフの背景又は軸との境界である第2境界領域とを含み、
前記境界領域は、前記第1境界領域、及び前記第2境界領域であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の立体造形物製造システム。
<請求項6>
前記設定手段は、前記面積表現部における内側領域を、前記熱膨張性シートの他面側への印刷画像成分であって前記熱膨張層を熱膨張させるための印刷画像成分としても割り当てることを特徴とする請求項4に記載の立体造形物製造システム。
<請求項7>
所定の関数式にパラメータを代入するための入力手段と、
前記入力手段によりパラメータが代入された前記関数式に基づいて描画されるグラフをプレビュー表示させる表示制御手段と、
前記表示制御手段でプレビュー表示されるグラフの成分のうち、面積表現部における境界領域を、表面からの光照射により前記表面側に設けられた熱膨張層を隆起させるための画像成分として割り当てるとともに、面積表現部における内側領域を、裏面からの光照射により熱膨張層を隆起させるための画像成分として割り当てる設定手段と、
を備えたことを特徴とする立体造形物製造システム。
<請求項8>
熱膨張性シートを立体造形させる装置のコンピュータを、
図形的な面積で表現されるグラフを生成する生成手段、
前記生成手段により生成されたグラフのうち、面積表現部における境界領域を、前記熱膨張性シートにおける熱膨張層を前記熱膨張性シートの一面側から熱膨張させるための印刷画像成分として割り当てるとともに、面積表現部における内側領域を、前記熱膨張層を前記熱膨張性シートの他面側から熱膨張させるための印刷画像成分として割り当てる設定手段、
として機能させるためのプログラム。
<請求項9>
一面側に熱膨張層が形成された熱膨張性シートを立体造形させる装置のコンピュータを、
図形的な面積で表現されるグラフを生成する生成手段、
前記生成手段により生成されたグラフのうち、面積表現部における境界領域を、前記熱膨張性シートにおける前記熱膨張層上への印刷画像成分であって前記熱膨張層を熱膨張させるための印刷画像成分として割り当てるとともに、面積表現部における内側領域を、前記熱膨張層上への印刷画像成分であって前記熱膨張層の熱膨張に非寄与的な印刷画像成分として割り当てる設定手段、
として機能させるためのプログラム。
<請求項10>
表面側に熱膨張層が設けられた熱膨張性シートを立体造形させる装置のコンピュータを、
所定の関数式にパラメータを代入するための入力手段、
前記入力手段によりパラメータが代入された前記関数式に基づいて描画されるグラフをプレビュー表示させる表示制御手段、
前記表示制御手段でプレビュー表示されるグラフの成分のうち、面積表現部における境界領域を、表面からの光照射により前記表面側に設けられた熱膨張層を隆起させるための画像成分として割り当てるとともに、面積表現部における内側領域を、裏面からの光照射により熱膨張層を隆起させるための画像成分として割り当てる設定手段、
として機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0050】
10 制御部
20 設定手段
21 境界領域・割当手段
22 内側領域・割当手段
23 軸・目盛り・割当手段
30 表示制御手段
40 入力制御手段
41 グラフ画像生成手段
50 画像形成制御手段
60 通信制御部
70 通信部
80 揮発性記憶部(RAM)
90 不揮発性記憶部(ROM)
91 OS
92 プリンタドライバ
93 アプリケーションプログラム
94 グラフデータ
100 表示装置
150 表示操作部
300 立体画像形成装置
310 発泡装置
320 二次元画像形成装置
400 グラフ
410 面積表現部
411,411a,411b,411c,411d 内側領域
412 第1境界領域
413,413a,413b 第2境界領域
415 背景
416 目盛り
417 項目
420,425 棒グラフ
421 横目盛線(横軸)
422 縦目盛線(縦軸)
423 項目
424 目盛り
425 点字画像
430 円グラフ
440 レーダチャート
441 軸
442 同心円
443 項目
450 アプリ選択画面
451 表入力グラフアプリ選択ボタン
500 グラフ作成画面
510,510a,510b グラフ種類選択欄
520 テンキー
521 「中止」ボタン
522 「戻る」ボタン
523 「次へ」ボタン
530 図柄修正画面
540 軸情報入力画面
545 発泡パターンテーブル
550 グラフデータ入力画面
551 系列1データ
552 系列2データ
560 棒グラフ表示画面
570 グラフ編集画面
580 線種類変更画面
1000 立体造形物製造システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24