特許第6759970号(P6759970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759970
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】リード部材
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/06 20060101AFI20200910BHJP
   H01M 2/08 20060101ALI20200910BHJP
   H01M 2/30 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   H01M2/06 K
   H01M2/08 K
   H01M2/30 D
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-207824(P2016-207824)
(22)【出願日】2016年10月24日
(65)【公開番号】特開2018-73473(P2018-73473A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智之
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】松村 友多佳
【審査官】 井原 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−095543(JP,A)
【文献】 特開2008−277238(JP,A)
【文献】 特開2017−139120(JP,A)
【文献】 特開2008−016337(JP,A)
【文献】 特開2009−087749(JP,A)
【文献】 特表2017−535910(JP,A)
【文献】 特開2012−155854(JP,A)
【文献】 特開2008−27823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/06−08
H01M 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード導体と樹脂フィルムとを備え、
前記樹脂フィルムが、前記リード導体の幅方向において、前記リード導体より幅が広く形成され、前記リード導体の幅方向の両側部からはみ出すように前記リード導体の両面に貼られるとともに、前記両側部からはみ出した両面の前記樹脂フィルム同士が貼り合わされており、かつ、前記リード導体の長手方向において、前記リード導体より長さが短く形成され、前記リード導体の長手方向の端には貼られてなく、
前記リード導体が表面処理されていないアルミニウムであり、
前記樹脂フィルムが1以上の層を有し、
前記1以上の層のうちの前記リード導体に接触する層が、リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを含む組成物を含有し、
前記有機アミンが、複素環式アミンであるモルホリン、ヘキサメチレンテトラミン及びトリエノールアミン並びにアルコール基含有アミンから選択される少なくとも1種である、非水電解液を備えた電池用のリード部材。
【請求項2】
前記リード導体に接触する層が、さらにホスホン酸カルシウムを含む組成物を含有する、請求項1に記載のリード部材。
【請求項3】
前記リード導体に接触する層が、さらにリン酸亜鉛を含む組成物を含有する、請求項1又は請求項2に記載のリード部材。
【請求項4】
前記リード導体に接触する層が、前記リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを含む組成物を、3質量%以上8質量%以下の割合で含有する、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のリード部材。
【請求項5】
前記リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを含む組成物と、前記ホスホン酸カルシウムを含む組成物との質量比が、1:2〜2:1である、請求項2に記載のリード部材。
【請求項6】
前記リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを含む組成物と、前記リン酸亜鉛を含む組成物との質量比が、1:2〜2:1である、請求項3に記載のリード部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属層を有する封入容器と、封入容器の内部から外部に伸びるリード導体とを有し、封入容器とリード導体とがシール部で熱融着されてなる電気部品であって、シール部の少なくとも一部において、金属層とリード導体との間であってリード導体と接する部分に、縮合リン酸アルミニウムを含有する熱融着層を有する電気部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−186007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リード部材の金属層にアルミニウムを使用する場合、電池内の電解液に接触することでアルミニウムと樹脂フィルムが剥離するおそれがある。この剥離を防止するために、アルミニウムをベーマイト処理又はクロメート処理等により表面処理する方法が知られている。しかし、製造上の観点から表面処理されてないアルミニウムを用いて、電解液に長時間浸しても樹脂フィルムが金属層から剥がれないリード部材を得ることが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、表面処理されていないアルミニウムを用いて、耐電解液性に優れるリード部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のリード部材は、リード導体と樹脂フィルムとを備え、
前記樹脂フィルムが、前記リード導体の幅方向において、前記リード導体より幅が広く形成され、前記リード導体の幅方向の両側部からはみ出すように前記リード導体の両面に貼られるとともに、前記両側部からはみ出した両面の前記樹脂フィルム同士が貼り合わされており、かつ、前記リード導体の長手方向において、前記リード導体より長さが短く形成され、前記リード導体の長手方向の端には貼られてなく、
前記リード導体が表面処理されていないアルミニウムであり、
前記樹脂フィルムが1以上の層を有し、
前記1以上の層のうちの前記リード導体に接触する層が、リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを含む組成物を含有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表面処理されていないアルミニウムを用いて、耐電解液性に優れるリード部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】リード部材付電池の構成例を示す外観図である。
図2】本発明によるリード部材の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は幅方向の断面図、(C)は長手方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本願発明の実施形態に係るリード部材は、
(1)リード導体と樹脂フィルムとを備え、
前記樹脂フィルムが、前記リード導体の幅方向において、前記リード導体より幅が広く形成され、前記リード導体の幅方向の両側部からはみ出すように前記リード導体の両面に貼られるとともに、前記両側部からはみ出した両面の前記樹脂フィルム同士が貼り合わされており、かつ、前記リード導体の長手方向において、前記リード導体より長さが短く形成され、前記リード導体の長手方向の端には貼られてなく、
前記リード導体が表面処理されていないアルミニウムであり、
前記樹脂フィルムが1以上の層を有し、
前記1以上の層のうちの前記リード導体に接触する層が、リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを含む組成物を含有する。
この構成によれば、表面処理されていないアルミニウムを用いて、耐電解液性に優れるリード部材を提供することができる。
【0010】
(2)また、(1)のリード部材は、
前記リード導体に接触する層が、さらにホスホン酸カルシウムを含む組成物を含有してもよい。
この構成によれば、より耐電解液性に優れるリード部材を提供することができる。
【0011】
(3)また、(1)又は(2)のリード部材は、
前記リード導体に接触する層が、さらにリン酸亜鉛を含む組成物を含有してもよい。
この構成によれば、より耐電解液性に優れるリード部材を提供することができる。
【0012】
(4)また、(1)〜(3)のいずれかのリード部材は、
前記リード導体に接触する層が、前記リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを含む組成物を、3質量%以上8質量%以下の割合で含有してもよい。
この構成によれば、特に耐電解液性に優れる電池用包装材料を提供することができる。
【0013】
(5)また、(2)のリード部材は、
前記リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを含む組成物と、前記ホスホン酸カルシウムを含む組成物との質量比が、1:2〜2:1でもよい。
この構成によれば、特に耐電解液性に優れる電池用包装材料を提供することができる。
【0014】
(6)また、(3)のリード部材は、
前記リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを含む組成物と、前記リン酸亜鉛を含む組成物との質量比が、1:2〜2:1でもよい。
この構成によれば、特に耐電解液性に優れる電池用包装材料を提供することができる。
【0015】
[本発明の実施形態の詳細]
続いて、添付図面を参照しながら、本発明のリード部材に係る実施の形態について説明する。
図1は、リード部材付電池の構成例を示す外観図である。図2は、本発明によるリード部材の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は幅方向の断面図、(C)は長手方向の断面図である。図中、1はリード部材、2はリード導体、3は樹脂フィルム、4は封入体、5はシール部、6はリード部材付電池を示す。
【0016】
図1のリード部材付電池6は、より具体的には、正極板と負極板とをセパレータを介して積層した積層電極群(図示省略)と電解液を、金属箔を含む多層フィルムからなる封入体4に収納し、正極板に接続したリード部材1a、負極板に接続したリード部材1bを、樹脂フィルム3を介して封入体4のシール部から密閉封止した状態で取り出して構成される。封入体4に用いる多層フィルムは、金属箔の両面に樹脂フィルムを貼り合わせて形成される。
【0017】
リード部材1(1a、1b)は、リード導体2と樹脂フィルム3とを備えている。
【0018】
リード導体2は、表面処理されていないアルミニウムが使用される。ここでいう表面処理とは、アルミニウムの、表面に被膜を形成する処理や表面積を広げる処理であり、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム等のクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;ベーマイト処理;又は粗面化処理等を指す。
【0019】
樹脂フィルム3は、リード部材1が封入体4にヒートシールされて封着される部分に設けられ、リード導体2の両面を挟むように接着または融着により貼り付けて形成される。また、樹脂フィルム3は、リード導体2よりも幅が広く、リード導体2の幅方向の両側部からはみ出すように樹脂フィルム3同士が貼り合わせられている。さらに、樹脂フィルム3はリード導体2よりも長さが短く、リード導体2の長手方向の端には貼られない。
【0020】
樹脂フィルム3は複数の層3a、3bを有している。この樹脂フィルム3はあくまで実施形態の1例であり、1以上の層を有する樹脂フィルムであってもよい。ここで、2以上の層を有する樹脂フィルムは、他の層の組成と異なる組成からなる層を複数有する樹脂フィルムを表す。具体的には、樹脂フィルムを形成する一つの層に含まれる成分が他の層に含まれる成分と異なっている、または一つの層に含まれる成分の比率が他の層に含まれる成分の比率と異なっている樹脂フィルムを表す。
【0021】
樹脂フィルム3の樹脂材料として用いるポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、変性ポリオレフィン等が例示され、リード導体2や樹脂フィルム3同士との接着性の点から接着性ポリオレフィン樹脂が好ましく使用される。なお、接着性ポリオレフィン樹脂とは、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等のカルボン酸や、エポキシ等で変性されて接着性の官能基を持つポリオレフィン樹脂をいう。特に、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂は金属との接着性、シール性に優れているので好ましい。これらのポリオレフィン系樹脂は熱可塑性樹脂であり、ヒートシール時に加熱により溶融して封入体4とリード導体2とを樹脂フィルム3を介して接着させる。
【0022】
樹脂フィルム3の樹脂材料として用いるエラストマーとしては、ポリブタジエン、EPDM、EPM、アクリルゴム、熱可塑性エラストマー等が例示され、水添スチレン・ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエン等が好ましく使用できる。他に、ポリオレフィン樹脂と相溶性が良いエラストマーを使用できる。
【0023】
樹脂フィルム3のうちのリード導体2に接触している層3aは、リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを含む組成物(以下、組成物(1)とする。)を含有する。この特定の組成物を含有することで、電解液と接触することによる樹脂フィルム3のリード導体2からの剥離を抑制することができる。
【0024】
前述のリード導体2に接触している層3aは、組成物(1)を3質量%〜8質量%の割合で含有するとよい。これによれば、アルミニウム(リード導体2)を表面処理しなくても、リード部材1を電解液に長時間浸した時に絶縁フィルム3がアルミニウムからより剥離しにくくなる。組成物(1)の含有量が3質量%未満であると、剥離が生じるおそれがあり、8質量%より多いと当該層の見た目や強度に悪影響を及ぼすおそれがあり好ましくない。
【0025】
また、組成物(1)は、リン酸マグネシウムを5質量%〜65質量%、酸化マグネシウムを5質量%〜50質量%、有機アミンを3質量%〜50質量%の割合で含有することが好ましく、リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを合計で99質量%以上の割合で含有することが好ましい。有機アミンには、複素環式アミンやアルコール基含有アミンが挙げられる。複素環式アミンには、モルホリン、ヘキサメチレンテトラミン、トリエノールアミンなどが挙げられる。
【0026】
また、前述のリード導体2に接触している層3aは、組成物(1)と併せて、ホスホン酸カルシウムを含む組成物(以下、組成物(2)とする。)を含有してもよい。この特定の組成物をさらに含有することで、電解液と接触することによる樹脂フィルム3とリード導体2との剥離をより抑制することができる。
【0027】
組成物(2)はホスホン酸カルシウム以外にSiO、CaSiO、CaCOを含んでもよい。この場合、組成物(2)は、CaHOP(ホスホン酸カルシウム)を1質量%〜30質量%、好ましくは5質量%〜15質量%、SiOを1質量%〜30質量%、好ましくは5質量%〜15質量%、CaSiOを1質量%〜30質量%、好ましくは5質量%〜15質量%、CaCOを残り全量、好ましくは50質量%〜80質量%の質量比で含有するとよい。
【0028】
また、この場合、組成物(1)と組成物(2)の質量比は1:2〜2:1であることが好ましい。
【0029】
また、前述のリード導体2に接触している層3aは、組成物(1)と併せて、リン酸亜鉛を含む組成物(以下、組成物(3)とする。)を含有してもよい。この特定の組成物をさらに含有することで、電解液と接触することによる樹脂フィルム3とリード導体2との剥離をより抑制することができる。
【0030】
組成物(3)は、リン酸亜鉛以外にSiO、CaSiO、CaCOを含んでもよい。この場合、組成物(3)は、SiOを1質量%〜30質量%、好ましくは1質量%〜10質量%、CaSiOを1質量%〜30質量%、好ましくは1質量%〜10質量%、CaCOを1質量%〜30質量%、好ましくは5質量%〜15質量%、Zn(PO(リン酸亜鉛)を残り全量、好ましくは75質量%〜85質量%の質量比で含有するとよい。
【0031】
また、この場合、組成物(1)と組成物(3)の質量比は1:2〜2:1であることが好ましい。
【0032】
そして、樹脂フィルム3のうちのリード導体2に接触している層3aは、組成物(1)と併せて、組成物(2)及び組成物(3)の両方を含有してもよい。この場合、組成物(1)と組成物(2)の質量比は1:2〜2:1、組成物(1)と組成物(3)の質量比は1:2〜2:1であることが好ましい。
【0033】
なお、樹脂フィルム3のうちのリード導体2に接触している層3a以外の層(本実施形態では層3b。)が、前述の組成物(1)〜組成物(3)の少なくてもいずれかを含有していてもよい。
【0034】
樹脂フィルム3の各層3a、3bには必要に応じて酸化防止剤、銅害防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、滑材等の各種添加剤を混合することが出来る。これらの材料を、オープンロール、加圧ニーダー、単軸混合器、2軸混合器等の既知の混合装置を用いて混合し、押出成形等によって樹脂フィルム3の各層3a、3bを作成する。
【0035】
樹脂フィルム3の各層3a、3bは、架橋して使用することもできる。樹脂を架橋することで耐熱性を高めることができ、使用時の温度が上がった場合の接着力の低下や、リード導体2と封入体4の金属箔との短絡を防止することが出来る。生産性向上の観点から、電離放射線の照射による架橋を行うことが好ましい。
【0036】
樹脂フィルム3の厚さは、適宜選択することができる。特に、樹脂フィルム3の厚さが20μm以上であると、薄過ぎて破損するといった不具合が生じ難く、リード導体2と封入体4(特に金属箔)との間の絶縁を良好に確保できて好ましい。樹脂フィルム3の厚さが厚いほど、破損し難い。しかし、樹脂フィルム3が厚過ぎると、リード部材1の厚肉化、ひいては電池6の大型化や厚肉化を招く。従って、樹脂フィルム3の厚さは、20μm以上150μm以下が好ましく、30μm以上100μm以下がより好ましい。ここでの樹脂フィルム3の厚さとは、リード導体2の一面にのみ設けられた樹脂フィルム3の複数層の合計厚さとする。
【0037】
封入体4の最内層のフィルムは、例えば、樹脂フィルム3と同種の樹脂フィルムが用いられる。
【実施例】
【0038】
次に発明を実施するための形態を実施例により説明する。実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0039】
(例1)
表面処理されていないアルミニウムの両面を、酸変性ランダムポリプロピレンを主成分とし、リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを含む組成物を5質量%の割合で含有する樹脂フィルムで覆ったリード部材を作成した。当該リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを含む組成物としては、リン酸マグネシウムを59質量%、酸化マグネシウムを36質量%、有機アミンを4質量%の割合で含有する組成物を使用した。
【0040】
(例2)
酸変性ランダムポリプロピレンを主成分とし、リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを含む組成物を4質量%、ホスホン酸カルシウムを含む組成物を2質量%の割合で含有する樹脂フィルムを使用した以外は、例1と同様であるリード部材を作成した。当該ホスホン酸カルシウムを含む組成物としては、CaHOPを10質量%、SiOを10質量%、CaSiOを10質量%、CaCOを70質量%の割合で含有する組成物を使用した。
【0041】
(例3)
酸変性ランダムポリプロピレンを主成分とし、リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを含む組成物を3質量%、ホスホン酸カルシウムを含む組成物を3質量%の割合で含有する樹脂フィルムを使用した以外は、例1と同様であるリード部材を作成した。
【0042】
(例4)
酸変性ランダムポリプロピレンを主成分とし、リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び有機アミンを含む組成物を3質量%、リン酸亜鉛を含む組成物を3質量%の割合で含有する樹脂フィルムを使用した以外は、例1と同様であるリード部材を作成した。当該リン酸亜鉛を含む組成物としては、Zn(POを80質量%、SiOを5質量%、CaSiOを5質量%、CaCOを10質量%の割合で含有する組成物を使用した。
【0043】
(例5)
酸変性ランダムポリプロピレンから成る樹脂フィルムを使用した以外は、例1と同様であるリード部材を作成した。
【0044】
(剥離性評価)
作製したリード部材(例1〜例5)の全体を以下の電解液に所定時間浸漬した後、180度ピール試験を行った。電解液として、リチウムイオン二次電池の電解液に利用されているものを用意した。ここでは、電解質がLiPF6(電解質のモル濃度1mol/L)、溶媒がEC:DMC:DEC=1:1:1(V/V)の混合有機溶媒であるもの(キシダ化学株式会社製電解液)を用意した。V/Vは、体積比を意味する。恒温槽を利用して、電解液の温度を65℃に維持した。
【0045】
所定時間経過後、電解液からリード部材を取り出し、リード部材の中心部を横1cm、縦5cmのシート片に切り出して、縦方向末端の樹脂フィルムをアルミニウムから少しだけ剥がし、つかみしろを確保した。そして、引張試験装置に把持して、互いに反対方向に引っ張り、樹脂フィルムとアルミニウムの180度剥離強度を測定した。また、電解液に浸漬させていないリード部材の、樹脂フィルムとアルミニウムの180度剥離強度も測定した。
【0046】
長さ20mm剥がす時の最大強度(単位N)をアルミニウムの幅で割った値(単位はN/cm)を剥離強度として算出し、これが15以上のものをA、5以上15未満のものをB、5未満のものをCとした。また、密着が強く、剥離試験で材料が破壊されてしまったものは材破と表現した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
例1〜例4では、剥離強度が強く、電解液との接触による密着性の低下が抑制されているとわかる。これに対し、例5においては電解液と接触させることにより剥離強度が弱くなり、層間の密着性が低下していることがわかる。
【0049】
これらの結果より、本実施形態の樹脂フィルムを使用したリード部材は、表面処理を施していないアルミニウムを使用していても、電解液との接触による樹脂フィルムの剥離を抑制することができ、良好な耐電解液性を有することがわかる。
【符号の説明】
【0050】
1:リード部材、1a:正極板に接続したリード部材、1b:負極板に接続したリード部材、2:導体、2a:正極板に接続した導体、2b:負極板に接続したリード導体、3:樹脂フィルム、3a:接着層、3b:最外層、4:封入体、5:シール部、6:リード部材付電池
図1
図2