特許第6759984号(P6759984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

<>
  • 特許6759984-アパーチャ板の移動機構 図000002
  • 特許6759984-アパーチャ板の移動機構 図000003
  • 特許6759984-アパーチャ板の移動機構 図000004
  • 特許6759984-アパーチャ板の移動機構 図000005
  • 特許6759984-アパーチャ板の移動機構 図000006
  • 特許6759984-アパーチャ板の移動機構 図000007
  • 特許6759984-アパーチャ板の移動機構 図000008
  • 特許6759984-アパーチャ板の移動機構 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759984
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】アパーチャ板の移動機構
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20200910BHJP
【FI】
   G02B21/06
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-214621(P2016-214621)
(22)【出願日】2016年11月1日
(65)【公開番号】特開2018-72681(P2018-72681A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年4月23日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年8月26日〜同年10月31日の販売代理店への卸しによる公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬路 健
(72)【発明者】
【氏名】渥美 俊介
【審査官】 殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−071123(JP,A)
【文献】 特開2013−083729(JP,A)
【文献】 特開2008−052005(JP,A)
【文献】 特開2000−180726(JP,A)
【文献】 特開2001−149367(JP,A)
【文献】 特開2006−173362(JP,A)
【文献】 米国特許第05295017(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 − 21/36
G01N 21/00 − 21/61
G03B 9/00 − 9/54
B23Q 3/00 − 3/18
B25B 1/00 − 11/02
G02B 7/02 − 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) アパーチャ板に固定された駆動ブロックと、
b) 前記駆動ブロックの一つの軸方向の移動のみを許容し、それ以外の方向の移動を許容しない直動ガイドと、
c) 前記一つの軸方向に延設された送りねじと、
d) 前記送りねじと噛合するねじ孔が形成され、前記軸に沿って移動可能であるナット部材と、
e) 前記駆動ブロックを前記一つの軸方向に前記ナット部材に押し付ける付勢部材と
を備えた機構であって、
前記一つの軸方向に関し、前記駆動ブロックと該ナット部材のうちの一方の当接部が凸面であり、他方の当接が平面又は該凸面よりも曲率が小さい凹面であって、前記駆動ブロックと前記ナット部材が1箇所で直線状に接触又は点接触する
ことを特徴とするアパーチャ板の移動機構。
【請求項2】
前記他方の当接部が平面であることを特徴とする請求項1に記載のアパーチャ板の移動機構。
【請求項3】
前記一方の当接部が互いに直交する二方向において曲率を持つ面であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアパーチャ板の移動機構。
【請求項4】
前記送りねじに2つの逆向きに回転する螺旋状の溝が形成され、それぞれに前記ナット部材のねじ孔が噛合されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアパーチャ板の移動機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のアパーチャ板の移動機構を備えた赤外顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外顕微鏡等の顕微分析装置において試料の測定領域の大きさを規定するアパーチャ板を移動させるための移動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微分析装置は、試料の微小な測定領域の分析に用いられる。顕微分析装置の1つである赤外顕微鏡では、試料に赤外光を照射し、その透過赤外光又は反射赤外光のスペクトルを得ることにより試料を分析する(例えば特許文献1)。
【0003】
図1に赤外顕微鏡の一構成例を示す。赤外顕微鏡では、試料ステージ上に載置された試料1に赤外光を照射し、被照射領域から発せられた光を赤外検出器9で検出する。赤外顕微鏡における測定方法には、試料1の表面側から該試料に赤外光を照射して反射光を測定する方法と、試料1の裏面側から赤外光を照射して透過光を測定する方法の2通りがある。
【0004】
試料1から発せられた光は、中央に貫通孔が設けられた凹面鏡6aと凸面鏡6bの組からなるカセグレン鏡6により集められ、複数のアパーチャ板で囲まれた小径の開口(アパーチャ8)を通って赤外検出器9に入射する。アパーチャ8は試料1と共役になる位置(試料1の像が結像する位置)に設けられる。測定時には、試料1の表面をカメラ22で撮像することにより位置を確認しつつ試料ステージを移動して赤外顕微鏡の視野の中心に測定対象領域を位置させ、続いてアパーチャ8の大きさを調整して測定対象領域を絞り込む。
【0005】
アパーチャ8の大きさは、例えば、一方向の幅を規定する2枚のアパーチャ板と、該一方向と直交する方向の幅を規定する2枚のアパーチャ板を移動させることにより調整する。アパーチャ板の移動方向に延在する送りねじ(雄ねじ)と、各アパーチャ板に固定された駆動ブロックに設けられたねじ孔(雌ねじ)を噛合させ、駆動ブロックの移動方向を規定する直動ガイド(直動軸受)により該駆動ブロックを規制した状態で送りねじを回転することにより、駆動ブロック(及びアパーチャ板)を移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−63994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の駆動機構は複数の部材を組み立てることにより構成される。このとき、送りねじの軸と直動ガイドが完全に平行になるよう組み立てられていることが理想的であるが、実際には製造時に生じる各部材の大きさのばらつきや組み立て精度の問題により、完全には平行にならないことが多い。送りねじと直動ガイドが非平行な状態にあると、ねじ孔に対して送りねじが斜めに挿入され、ねじ孔の内部で送りねじが片当たりして雄ねじと雌ねじが局所的に強く接触する。この状態で駆動機構を動作させると、雄ねじと雌ねじが強く接触した位置に大きな力がかかり、磨耗する。その結果、バックラッシュが増大して駆動ブロックの移動距離の精度(即ちアパーチャの位置精度)が悪くなる。また、雄ねじと雌ねじの接触部が削られて生じた粉が雄ねじと雌ねじの間に溜まると、送りねじの回転負荷が増大し、最終的には送りねじを回転させることができなくなってしまう。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、赤外顕微鏡等の顕微分析装置において試料の測定領域の大きさを規定するアパーチャ板を移動させる機構において、送りねじの軸と直動ガイドが完全に平行ではない場合でも長期にわたり精度よくアパーチャ板を移動させることができる移動機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係るアパーチャ板の移動機構は
a) アパーチャ板に固定された駆動ブロックと、
b) 前記駆動ブロックの一つの軸方向の移動のみを許容し、それ以外の方向の移動を許容しない直動ガイドと、
c) 前記一つの軸方向に延設された送りねじと、
d) 前記送りねじと噛合するねじ孔が形成され、前記軸に沿って移動可能であるナット部材と、
e) 前記駆動ブロックを前記一つの軸方向に前記ナット部材に押し付ける付勢部材と
を備えた機構であって、
前記一つの軸方向に関し、前記駆動ブロックと該ナット部材のうちの一方の当接部が凸面であり、他方の当接が平面又は該凸面よりも曲率が小さい凹面であって、前記駆動ブロックと前記ナット部材が1箇所で直線状に接触又は点接触する
ことを特徴とする。
【0010】
前記アパーチャ板と駆動ブロックは一体の部材として形成されたものであってもよく、あるいは独立した部材をねじ止め等により締結したものであってもよい。
前記駆動ブロックと前記ナット部材のうちの一方の当接部の凸面は、前記一つの軸方向(以下、これを「x方向」と呼ぶ。)に垂直な一方向(以下、これを「y方向」と呼ぶ。)においてのみ曲率を持ち、それらに垂直な方向(以下、これを「z方向」と呼ぶ。)においては曲率を持っていなくても(すなわち、該凸面が筒状であっても)よい。もちろん、y方向、z方向共に曲率を持っていてもよい。この場合、y方向の曲率とz方向の曲率は同じである必要はない。
【0011】
本発明に係る移動機構では、駆動ブロックと独立に移動するナット部材にねじ孔を形成し、これを送りねじと噛合させ、送りねじの回転によってナット部材を移動させる。そして、付勢部材によって駆動ブロックをナット部材に押し付けることにより駆動ブロックをナット部材の移動に追従させる。また、前記一つの軸方向に関して前記駆動ブロックと前記ナット部材のうちの一方の当接部が凸面であり、他方の当接部が平面又は該凸面よりも曲率が小さい凹面(平面を含む)である。
【0012】
以下に挙げるように、前記駆動ブロックと前記ナット部材のうちの前記一方の当接部の形状と他方の当接部の形状には複数の組み合わせが考えられる。そして、その組み合わせによって両部材の接触の態様が異なる。
【0013】
例えば、一方の当接部がy方向にのみ曲率を持つ筒状の凸面であり、他方の当接部がy方向にのみ曲率(前記筒状の面よりも小さい曲率)を持つ筒状の凹面である場合、これらは直動ガイドと送りねじがなす角度に応じ、前者により移動方向が規定される駆動ブロックと後者により移動方向が規定されるナット部材の移動に対する負荷が最も小さくなるy方向の位置でz方向に線接触する。そのため、直動ガイドと送りねじがx-y面内において非平行であっても、その角度ずれを吸収することができる。
【0014】
また、一方の当接部がy方向にのみ曲率を持つ筒状の凸面であり、他方の当接部が平面である場合にも、これらはz方向に線接触する。この組み合わせでは、線接触の位置がy方向に移動しても駆動ブロック及びナット部材の移動に対する負荷がそれほど大きく変化しない。そのため、直動ガイドと送りねじのx-y面内における角度ずれに加え、両部材のy方向における距離の誤差(平行ずれ)も吸収することができる。
【0015】
さらに、一方の当接部がy方向に曲率を持つ凸面であり、他方の当接部がz方向に曲率を持つ凸面である場合、これらは直動ガイドと送りねじがなす角度に応じ、y方向とz方向のそれぞれにおいて駆動ブロックとナット部材の移動に対する負荷が最も小さくなる位置で点接触する。そのため、直動ガイドと送りねじがx-y面内とx-z面内のいずれにおいて非平行であっても、それらの角度ずれを吸収することができる。
【0016】
さらに、一方の当接部がy方向及びz方向の両方に曲率を持つ凸面(例えば球面。ただし、必ずしも両方向での曲率が同じである必要はない)であり、他方の当接部が平面である場合にも、直動ガイドと送りねじがなす角度に応じ、y方向とz方向のそれぞれにおいて駆動ブロックとナット部材の移動に対する負荷が最も小さくなる位置で点接触する。また、点接触の位置が移動しても両部材の移動に対する負荷がそれほど大きく変化しないため、直動ガイドと送りねじの角度ずれに加え、両部材の平行ずれも吸収することができる。
【0017】
このように、本発明に係る移動機構では、直動ガイドと送りねじが非平行な場合でも、その角度ずれを吸収することができる。また、上述のとおり当接部の組み合わせによっては平行ずれも吸収することができる。そのため、送りねじ(雄ねじ)とナットのねじ穴(雌ねじ)が片当たりすることがなく、長期にわたって精度よく駆動ブロック及び該駆動ブロックに固定されたアパーチャ板を移動させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るアパーチャ板の移動機構を用いることにより、送りねじの軸と直動ガイドが完全に平行ではない場合でも、長期にわたって精度よくアパーチャ板を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】赤外顕微鏡の概略構成を説明する図。
図2】本発明に係る赤外顕微鏡の一実施例における試料の測定対象領域の決定について説明する図。
図3】本実施例の赤外顕微鏡が有するアパーチャの駆動機構の外観図。
図4】本実施例の赤外顕微鏡が有するアパーチャの移動機構の概略構成を説明する断面図。
図5】従来の赤外顕微鏡が有するアパーチャの駆動機構の部分構成図。
図6】従来の赤外顕微鏡が有するアパーチャの駆動機構においてガイドレール(直動ガイド)と送りねじの角度ずれが生じた場合を説明する図。
図7】従来の赤外顕微鏡が有するアパーチャの駆動機構においてガイドレール(直動ガイド)と送りねじの平行ずれが生じた場合を説明する図。
図8】本実施例の赤外顕微鏡が有するアパーチャの移動機構において角度ずれを許容した状態を説明する部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るアパーチャ板の駆動機構を備えた顕微分析装置の一実施例である赤外顕微鏡について、以下、図面を参照して説明する。
【0021】
本実施例の赤外顕微鏡の構成は図1を参照して説明したものと同様であるが、再度、同図を参照して説明する。本実施例の赤外顕微鏡では、試料ステージ(図示なし)上に載置された試料1からの透過光と反射光のいずれも測定可能な構成を有している。
【0022】
試料1からの反射光を測定する場合には、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)の干渉計を備えた光源部2において生成した、時間的に強弱の変化する赤外光(インターフェログラム)を第1ミラー3、第2ミラー4、第3ミラー5でそれぞれ反射し、カセグレン鏡6の凹面ミラー6aの中央に形成された貫通孔を介してカセグレン鏡の凸面ミラー6bに入射させ、さらに凹面ミラー6aで集光して試料1に照射する。
【0023】
試料1からの反射光は凹面ミラー6a及び凸面ミラー6b(カセグレン鏡6)で集められ、赤外光のみを反射するミラー(ホットミラー)7により反射されたあと、アパーチャ8を通過し、赤外光検出器9により検出される。アパーチャ8と赤外光検出器9の間には、アパーチャ8を通過した光を赤外光検出器9の受光面に集光させるための集光光学系(図示なし。例えばカセグレン鏡や凹面鏡)が適宜に配置される。そして、アパーチャ8及び赤外光検出器9の受光面は、試料1と共役になる位置(試料の像が結像する位置)に配置される。赤外光検出器9における検出信号をフーリエ変換することによりスペクトルが得られる。
【0024】
試料1からの透過光を測定する場合には、第1ミラー3を90度回転させ(図中に破線で示す第1ミラー3a)、光源2から発せられる光を第1ミラー3a、第4ミラー14、第5ミラー15でそれぞれ反射し、カセグレン鏡16の凹面ミラー16aの中央に形成された貫通孔を介してカセグレン鏡の凸面ミラー16bに入射させ、さらに凹面ミラー16aで集光して試料1に照射する。試料1を通過した光は凹面ミラー6a及び凸面ミラー6bで集められ、赤外光のみを反射するミラー(ホットミラー)7により反射されたあと、アパーチャ8を通って赤外光検出器9により検出される。
【0025】
試料1の上方に設けられた可視光ミラー21及びカメラ22は、図示しない可視光源から試料1の表面に可視光を照射してその状態を確認するために用いられる。
【0026】
試料1の測定時には、カメラ22により取得した試料1の表面の可視画像を確認しつつ、試料1の表面の測定対象領域1aを決定する(図2)。そして、後述するアパーチャ板の移動機構を動作させて測定対象領域1aからの赤外光のみが赤外顕微鏡に入射するようにアパーチャ8の大きさ及び角度を調整する。
【0027】
本実施例の赤外顕微鏡においてアパーチャ8の大きさ及び角度を調整するために用いられるアパーチャ板の駆動機構の構成について、図3図8を参照し、従来の構成と比較しつつ説明する。
【0028】
図3は本実施例のアパーチャ板(y方向に移動するアパーチャ板は、x方向に移動するアパーチャ板301a、301bの下方に配置)の駆動機構の外観図である。本実施例のアパーチャ板の駆動機構は、大別して、アパーチャ8の大きさを調整するアパーチャ板の移動機構と、アパーチャの角度を調整するアパーチャ板の回転機構から成る。本実施例の赤外顕微鏡は、アパーチャ板の移動機構に特徴を有している。
【0029】
アパーチャ板の移動機構は、互いに直交する2方向(これを「x方向」及び「y方向」とする。)にそれぞれ設けられており、それらはアパーチャ板の回転機構が有するx-yステージ110上に積層配置されている。アパーチャ板の回転機構は、x-yステージ110の他に、モータ100、回転軸材120、及び中空シャフトを備えている。モータ100を駆動させると回転軸材120が回転し、その回転がベルト130を介して中空シャフトに与えられる。中空シャフトは、その中心(アパーチャ8に対応する位置)に貫通孔が形成されるとともにx-yステージに連結されており、中空シャフトの回転によってx-yステージ110がx-y面内で回転する。図中のモータ300はx方向のアパーチャ板301a、301bの移動機構において、モータ200はy方向のアパーチャ板の移動機構において、後述する送りねじを回転させる駆動源である。
【0030】
図4はアパーチャ8のx方向の幅を規定するアパーチャ板301a、301bの移動機構の概略構成を示す断面図である。x方向とy方向のそれぞれに設けられるアパーチャ板の移動機構の構成は同一(互いの配置が直交するのみ)であるため、x方向のアパーチャ板301a、301bの移動機構についてのみ構成を詳細に説明する。
【0031】
アパーチャ板301a、301bは駆動ブロック308a、308bの一部として設けられている。駆動ブロック308a、308bは、直動ガイドのガイドレール306上を特定の一方向(一つの軸方向)にのみ移動するガイド部材307a、307bに連結されており、これらは一体的に移動する。駆動ブロック308a、308bには、後述するフロートナット305a、305bの貫通孔に挿入される挿入ピン303a、303bが設けられており、また、後述する送りねじ302及びバネ309を挿入するための貫通孔が形成されている。アパーチャ板301a、301b(駆動ブロック308a、308b)は2枚1組で構成され、それらを離間あるいは近接させることによりアパーチャ8のx方向の幅を調整する。
【0032】
このアパーチャ板301a、301bの移動機構では、中央部分から両端に向かって互いに逆向きの溝が形成された送りねじ302がx方向に延設されており、その逆向きの溝にそれぞれフロートナット305a、305bが噛合されている。フロートナット305a、305bには、それぞれねじ孔(雌ねじ)とは別に貫通孔が形成されており、この貫通孔に上述の挿入ピン303a、303bが差し込まれる。これによって、送りねじ302の回転に伴うフロートナット305a、305bの回転が規制され、送りねじ302の回転によってフロートナット305a、305bがx方向に沿って互いに逆の方向に移動する。送りねじ302の中央付近に2つの駆動ブロック308a、308bが配置され、両駆動ブロックの外側にフロートナット305a、305bが配置される。
【0033】
2つの駆動ブロック308a、308bに形成された貫通孔には、送りねじ302が挿入されるとともに、駆動ブロック308a、308bを互いの外側に配置されたフロートナット305a、305bに向かって付勢するバネ309も挿入されている。
【0034】
駆動ブロック308a、308bのうち、フロートナット305a、305bに当接する面は、y方向において図中に一点鎖線で示すような曲率を有する凸面(筒状面)になっている。また、フロートナット305a、305bの当接面は平坦面である。従って、駆動ブロック308a、308bとフロートナット305a、305bはz方向に線接触する。
【0035】
従来のアパーチャ板401の移動機構では、図5に示すように、駆動ブロック408にねじ孔を形成して送りねじ402に噛合させ、送りねじ402の回転によって直接駆動ブロック408を移動させていた。設計上は、図5に示すように、送りねじの軸と直動ガイドのレールが完全に平行であり、かつそれらが所定の距離だけ離間していることを前提としている。しかし、アパーチャ板401の駆動機構は複数の部材を組み立てることにより構成されるものであり、実際には製造時に生じる各部材の大きさのばらつきや組み立て精度の問題により、図6に示すように角度ずれが生じたり、図7に示すように平行ずれが生じたりすることがある。
【0036】
図6に示すような角度ずれが生じると、駆動ブロック408のねじ孔(雌ねじ)に対して送りねじ(雄ねじ)402が斜めに挿入され、ねじ孔の内部で送りねじ402が片当たりして雄ねじと雌ねじが局所的に強く接触する。この状態で駆動機構を動作させると、雄ねじと雌ねじが強く接触した位置に大きな力がかかり磨耗していく。その結果、バックラッシュが増大して駆動ブロック408の移動距離の精度(即ちアパーチャ8の位置精度)が悪くなる。また、雄ねじと雌ねじの接触部が削られて生じた粉が雄ねじと雌ねじの間に溜まると、送りねじの回転負荷が増大し、最終的には送りねじを回転させることができなくなる。
【0037】
また、図7に示すような平行ずれ(ガイドレール406と送りねじ402が平行ではあるが離間距離に誤差がある場合)が生じると、ねじ孔の片側のみに送りねじ402が当たり、その接触側に大きな力がかかって磨耗するため、やはり上記同様の問題が生じる。
【0038】
一方、本実施例のアパーチャ板301a、301bの移動機構ではフロートナット305a、305bにねじ孔を形成し、これを送りねじ302と噛合させ、送りねじ302の回転によってフロートナット305a、305bを移動させる。そして、バネ309で駆動ブロック308a、308bをフロートナット305a、305bに押し付けることにより駆動ブロック308a、308bをフロートナット305a、305bの移動に追従させる。また、フロートナット305a、305bの平坦面に対する駆動ブロック308a、308bの当接面が曲面になっている。そのため、駆動ブロック308a、308bの移動方向を(ガイド部材307a、307bを介して)規制するガイドレール306の延設方向と送りねじ302の軸が完全に平行でない場合でも、それらのなす角度に応じた位置で駆動ブロック308a、308bとフロートナット305a、305bが当接して(図8)、そのずれを許容することができる。また、フロートナット305a、305bの平坦面上で駆動ブロック308a、308bがスライド可能であるため、ガイドレール306と送りねじ302の離間距離が設計距離からずれていても、そのずれに応じた位置で駆動ブロック308a、308bとフロートナット305a、305bが当接して、そのずれを許容することができる。そのため、図6及び図7に示すようにねじ孔内部で送りねじ402が片当たりすることがなく長期にわたって精度よく駆動ブロック及び該駆動ブロックに固定されたアパーチャ板301a、301bを移動させることができる。
【0039】
上記実施例では、駆動ブロック308a、308bとフロートナット305a、305bの当接部において、駆動ブロック308a、308bの当接面をy方向にのみ曲率を有する筒状面とし、フロートナット305a、305bの当接面を平坦面としたが、以下に説明するような組み合わせを用いることもできる。
【0040】
例えば、駆動ブロック308a、308bとフロートナット305a、305bのうちの一方の当接部がy方向にのみ曲率を持つ筒状の凸面であり、他方の当接部がy方向にのみ曲率(前記筒状の面よりも小さい曲率)を持つ凹面である場合、これらはガイドレール306と送りねじ302がなす角度に応じ、前者により移動方向が規定される駆動ブロック308a、308bと後者により移動方向が規定されるフロートナット305a、305bの移動に対する負荷が最も小さくなるy方向の位置でz方向に線接触する。そのため、ガイドレール306と送りねじ302がx-y面内において非平行であっても、その角度ずれを吸収することができる。
【0041】
また、駆動ブロック308a、308bとフロートナット305a、305bのうちの一方の当接部がy方向に曲率を持つ凸面であり、他方の当接部がz方向に曲率を持つ凸面である場合、これらはガイドレール306と送りねじ302がなす角度に応じ、y方向とz方向のそれぞれにおいて駆動ブロック308a、308bとフロートナット305a、305bの移動に対する負荷が最も小さくなる位置で点接触する。そのため、ガイドレール306と送りねじ302がx-y面内とx-z面内のいずれにおいて非平行であっても、それらの角度ずれを吸収することができる。
【0042】
さらに、駆動ブロック308a、308bとフロートナット305a、305bのうちの一方の当接部がy方向及びz方向の両方に曲率を持つ凸面(例えば球面。ただし、必ずしも両方向での曲率が同じである必要はない)であり、他方の当接部が平面である場合にも、ガイドレール306と送りねじ302がなす角度に応じ、y方向とz方向のそれぞれにおいて駆動ブロック308a、308bとフロートナット305a、305bの移動に対する負荷が最も小さくなる位置で点接触する。また、点接触の位置が移動しても両部材の移動に対する負荷がそれほど大きく変化しないため、ガイドレール306と送りねじ302の角度ずれに加え、両部材の平行ずれも吸収することができる。
【0043】
上記実施例は一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜に変更することができる。
上記実施例では、1つの送りねじで2枚のアパーチャ板を同時に移動(離間或いは近接)させる例を説明したが、各アパーチャ板をそれぞれ別の送りねじにより移動させる場合でも上記同様の構成を採ることができる。
また、上記実施例では、内側に駆動ブロックを配置し、その外側にナット部材を配置したがこの位置関係は逆であってもよい。その場合には、駆動ブロックを外側から内側(ナット部材)に向かって押すようにバネを配置する。
さらに、上記実施例ではナット部材に形成した貫通孔にピンを挿入することによって送りねじの回転に伴うナット部材の回転を規制したが、ナット部材の外側に配置した部材によって回転を規制することもできる。
【符号の説明】
【0044】
1…試料
2…光源部
1a…測定対象領域
3、3a…第1ミラー
4…第2ミラー
5…第3ミラー
6、16…カセグレン鏡
6a、16a…凹面ミラー
6b、16b…凸面ミラー
8…アパーチャ
9…赤外光検出器
14…第4ミラー
15…第5ミラー
21…可視光ミラー
22…カメラ
100、200、300…モータ
110…x-yステージ
120…回転軸材
130…ベルト
301a、301b…アパーチャ板
302…送りねじ
303a、303b…挿入ピン
305a、305b…フロートナット
306…ガイドレール
307a、307b…ガイド部材
308a、308b…駆動ブロック
309…バネ
401…アパーチャ板
406…ガイドレール
408…駆動ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8