特許第6759985号(P6759985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6759985
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】光ファイバ心線の検査方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/46 20060101AFI20200910BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20200910BHJP
   B65H 75/34 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   G02B6/46
   G01M11/00 G
   B65H75/34
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-214807(P2016-214807)
(22)【出願日】2016年11月2日
(65)【公開番号】特開2018-72691(P2018-72691A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和なぎさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 雅之
(72)【発明者】
【氏名】粟飯原 勝行
【審査官】 野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104656213(CN,A)
【文献】 特開平11−011971(JP,A)
【文献】 実開昭55−136749(JP,U)
【文献】 特開2010−262001(JP,A)
【文献】 実開昭53−123176(JP,U)
【文献】 特開2001−322645(JP,A)
【文献】 特開2004−131209(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0272225(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/46−6/54
B65H 75/00−75/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻胴部と、該巻胴部の一端に固定される鍔部とを備えるボビンを用い、前記巻胴部に巻かれる光ファイバ心線の色相を検査する光ファイバ心線の検査方法であって、
その周囲が前記鍔部の側面で囲まれて該鍔部の外周面には連通しておらず、かつ、該鍔部の外側面と内側面とを貫通して前記巻胴部の表面を視認可能に形成された開口部から、前記巻胴部に巻かれた前記光ファイバ心線の色相を検査しており、
前記巻胴部に巻かれた前記光ファイバ心線の巻き始め端を撮影する工程と、
撮影した前記光ファイバ心線の前記巻き始め端の映像信号を構成する画素の色相を求める工程と、
前記巻胴部に巻かれた前記光ファイバ心線の巻き終わり端を撮影する工程と、
撮影した前記光ファイバ心線の前記巻き終わり端の映像信号を構成する画素の色相を求める工程と、
求めた前記光ファイバ心線の前記巻き始め端の色相と求めた前記光ファイバ心線の前記巻き終わり端の色相とを比較する工程とを含む、光ファイバ心線の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビン、光ファイバ心線の検査方法に関し、詳細には、光ファイバ心線が巻かれる巻胴部と、巻胴部の一端に固定される鍔部とを備えるボビン、このボビンを用いた光ファイバ心線の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ心線の製造後には、光ファイバ心線の品質を保証するために、種々の検査が行われる。詳しくは、光ファイバ心線はボビンの胴体部に巻かれるが、例えば、伝送損失を測定する場合、この光ファイバ心線の巻き始め端と巻き終わり端の双方を外部に取り出しておく必要がある。例えば、特許文献1には、ボビンの鍔部に2本のスリットを設け、巻き始め端と巻き終わり端の双方を鍔部の外側面に取り出せる構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−8505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構造では、一方のスリット(深スリット)が鍔部の外周面から巻胴部の位置まで到達している。このため、ボビンの強度を図ることが望まれる。
また、巻胴部に巻かれた光ファイバ心線の例えば色相のバラツキの有無を判断するために、特に巻き始め端を巻かれた状態で確認できることも望まれる。
【0005】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、ボビンの強度低下を招かずに、巻胴部に巻かれた光ファイバ心線を確認することができるボビン、光ファイバ心線の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の一態様に係る光ファイバ心線の検査方法は、巻胴部と、該巻胴部の一端に固定される鍔部とを備えるボビンを用い、前記巻胴部に巻かれる光ファイバ心線の色相を検査する光ファイバ心線の検査方法であって、その周囲が前記鍔部の側面で囲まれて該鍔部の外周面には連通しておらず、かつ、該鍔部の外側面と内側面とを貫通して前記巻胴部の表面を視認可能に形成された開口部から、前記巻胴部に巻かれた前記光ファイバ心線の色相を検査しており、前記巻胴部に巻かれた前記光ファイバ心線の巻き始め端を撮影する工程と、撮影した前記光ファイバ心線の前記巻き始め端の映像信号を構成する画素の色相を求める工程と、前記巻胴部に巻かれた前記光ファイバ心線の巻き終わり端を撮影する工程と、撮影した前記光ファイバ心線の前記巻き終わり端の映像信号を構成する画素の色相を求める工程と、求めた前記光ファイバ心線の前記巻き始め端の色相と求めた前記光ファイバ心線の前記巻き終わり端の色相とを比較する工程とを含む
【発明の効果】
【0007】
上記によれば、ボビンの強度低下を防止できるとともに、巻胴部に巻かれた光ファイバ心線を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一形態によるボビンの概略を説明する図である。
図2】光ファイバ心線をボビンに巻いた状態を説明する図である。
図3】第2実施形態によるボビンを説明する図である。
図4】光ファイバ心線の検査方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本発明の一態様に係る光ファイバ心線の検査方法は、()巻胴部と、該巻胴部の一端に固定される鍔部とを備えるボビンを用い、前記巻胴部に巻かれる光ファイバ心線の色相を検査する光ファイバ心線の検査方法であって、その周囲が前記鍔部の側面で囲まれて該鍔部の外周面には連通しておらず、かつ、該鍔部の外側面と内側面とを貫通して前記巻胴部の表面を視認可能に形成された開口部から、前記巻胴部に巻かれた前記光ファイバ心線の色相を検査しており、前記巻胴部に巻かれた前記光ファイバ心線の巻き始め端を撮影する工程と、撮影した前記光ファイバ心線の前記巻き始め端の映像信号を構成する画素の色相を求める工程と、前記巻胴部に巻かれた前記光ファイバ心線の巻き終わり端を撮影する工程と、撮影した前記光ファイバ心線の前記巻き終わり端の映像信号を構成する画素の色相を求める工程と、求めた前記光ファイバ心線の前記巻き始め端の色相と求めた前記光ファイバ心線の前記巻き終わり端の色相とを比較する工程とを含む。これにより、ボビンの強度低下を防止しつつ、光ファイバ心線の色相の検査も可能になる。そして、光ファイバ心線の巻き始め端の色相と巻き終わり端の色相との違いを確実に得ることができる。
【0013】
[本発明の実施形態の詳細]
(第1実施形態)
図1は、本発明の一形態によるボビンの概略を説明する図であり、図2は、光ファイバ心線をボビンに巻いた状態を説明する図である。
ボビン10は巻胴部11を有する。巻胴部11は円筒状に形成され、胴部表面12に光ファイバ心線を巻くことができる。なお、胴部表面12が本発明の巻胴部の表面に相当する。
【0014】
巻胴部11の両端には、鍔部13がそれぞれ設けられている。鍔部13は、巻胴部11よりも大径の円板状に形成され、巻胴部11と同心で配置される。なお、巻胴部12の両端に設けられた鍔部13のうち、一方の鍔部13と巻胴部12とを一体形成することも可能である。
また、鍔部13には、巻き取り装置の駆動部(図示省略)に連結する軸受容部14が形成されており、ボビン10は、その軸線(図1にz方向で示す、以下同じ)を中心にして回転可能である。
【0015】
巻き取り装置からの駆動力によってボビン10が所定方向に回転すると、引き取られた光ファイバ心線は、ボビン10の軸線方向に直交するボビン10の周方向に沿って胴部表面12に巻かれる。また、光ファイバ心線は、軸線方向で隙間のないように胴部表面12に巻かれた後、重ねてさらに巻かれる。
なお、光ファイバ心線は、例えば、標準外径125μmのガラスファイバに被覆外径250μm前後の被覆を施した光ファイバ素線の外側に、さらに着色被覆を施したものであるが、外径の太い光ファイバ心線、例えばオーバーコート心線(外径が400μm〜900μm程度)であってもよい。
【0016】
ここで、少なくとも一方の鍔部13には、開口部25が形成されている。
詳しくは、開口部25は、鍔部13の外側面と内側面とを貫通して設けられ、図1図2(A)に示すように例えば丸型で形成されている。また、開口部25は例えば巻胴部11の近傍にのみ形成されており、鍔部13の外部から開口部25を覗くと、図2(B)に示すように、胴部表面12を視認することができる。
【0017】
このように、開口部25は、その周囲が鍔部13の側面で囲まれて鍔部13の外周面には連通していないので、ボビン10の強度低下を防止できる。また、開口部25から胴部表面12を視認できる。このため、図2(B)に示すように、胴部表面12に巻かれた光ファイバ心線Fの巻き始め端Fdや、その上層に位置する巻き終わり端Fuを観察できる。この結果、光ファイバ心線の不具合(例えば色相の違い)を検出可能になる。
【0018】
この色相の違いに関してさらに説明すると、着色被覆が施された光ファイバ心線(着色心線ともいう)は、光ファイバ素線の外周にインク層を被覆して製造する。この際、インクを塗布するためのインク供給タンク内のインク濃度が均一でない場合に、着色心線製造中に色相が変化する。また、インクの色を変える場合にインク供給配管や塗布装置内に変更前のインクが残っている場合も、着色心線製造中に色相が変化する。このような原因により、光ファイバ心線Fの巻き始め端Fdと巻き終わり端Fuとで色相の違いが発生するのである。
【0019】
また、オーバーコート心線は、着色心線の外周に、被覆の主原料となるベース材にカラーバッチ(着色材)を混ぜて押出被覆することで製造する。この際、ベース材とカラーバッチを押出機の別々の投入口から投入して、オンラインで混合しつつ押出す場合、製造ばらつきにより両者の投入速度に違いが生じて投入割合がずれる場合があり、オーバーコート層の色相が変化する。または、ベース材とカラーバッチとをオフラインで混合して押出機に投入する場合、ベース材とカラーバッチに比重の差があるため、大量に混合する場合は押出し初期と後期で混合比が変化する場合があり、オーバーコート層の色相が変化する。オーバーコート心線では上記のような原因により、光ファイバ心線Fの巻き始め端Fdと巻き終わり端Fuとで色相の違いが発生するのである。
【0020】
(第2実施形態)
ボビンには、巻き始め端の取り出し(口出し)を容易にするために、補助巻胴部を設ける構造があるが、本発明はこの構造にも適用可能である。
図3(A)に示すように、ボビン10の巻胴部11が、円筒状の主巻胴部11aと、円筒状の補助巻胴部22とからなる。巻胴部11の両端には、円板状に形成された鍔部13がそれぞれ設けられている。
【0021】
主巻胴部11aと補助巻胴部22との間には、仕切り鍔部23が設けられている。仕切り鍔部23は、鍔部13よりも小径で厚みを薄くして形成される。また、仕切り鍔部23は、仕切り鍔部23の外周面から仕切り鍔部23の径方向に沿って延び、胴部表面12に達するスリット24を有している。このスリット24により主巻胴部11aと補助巻胴部22とが連通するので、巻き始め端を補助巻胴部22に巻いた後、スリット24を経て主巻胴部11aで光ファイバ心線を巻き取ることができる。
【0022】
なお、主巻胴部11aの両側に補助巻胴部を設置することも可能である。また、鍔部13や仕切り鍔部23は、主巻胴部11aや補助巻胴部22に対して取り外し可能であってもよい。
【0023】
図3(A)に示すように、補助巻胴部22を挟んで仕切り鍔部23に対向して配置された鍔部13には、開口部25が形成されている。この開口部25も第1実施形態と同様に、鍔部13の外側面と内側面とを貫通した例えば丸型で形成されている。
ただし、第2実施形態の開口部25は、仕切り鍔部23のスリット24に対向した位置に形成されており、鍔部13の外部から開口部25を覗くと、図3(B)に示すように、開口部25からは胴部表面12を視認することができる。
【0024】
第2実施形態のように、補助巻胴部22を設置した構造の場合には、開口部25を仕切り鍔部23のスリット24に対向した位置に形成することにより、主巻胴部11aに巻かれた光ファイバ心線の巻き始め端や巻き終わり端を観察することができる。
【0025】
図4は、光ファイバ心線の検査方法の一例を説明する図である。
光ファイバ心線の検査装置50は、例えば、制御部52、映像処理部53、記憶部54、色相判定部55、通信部56、表示部57を有しており、第1,2実施形態で説明したボビン10をカメラ51で撮影した映像を用いて、ボビン10に巻かれた光ファイバ心線の例えば着色被覆の色相を判別してもよい。
【0026】
制御部52は、例えば、1あるいは複数個のCPU(Central Processing Unit)等からなり、記憶部54の例えばROMに格納されている各種のプログラムやデータをRAMにロードし、このロードしたRAM内のプログラムを実行する。これにより、検査装置50の全体の動作を制御する。また、制御部52は通信部56を介して外部機器(図示省略)に通信可能である。
【0027】
カメラ51を鍔部13の側方に設置し、鍔部13の側方から光を真っ直ぐに照射し、巻胴部11(あるいは主巻胴部11a)に巻かれた光ファイバ心線の例えば巻き始め端や巻き終わり端を開口部25越しに撮影する。
撮影した映像は制御部52に送られ、映像処理部53が、この映像の映像信号に所定の画像処理を施して映像信号を構成する画素の色相をそれぞれ求める。求めた結果は記憶部54に記憶される。
【0028】
色相判定部55は、巻き始め端の色相と巻き終わり端の色相とを比較し、これら巻き始め端の色相と巻き終わり端の色相とが同じか否かを判定する。色相判定部55で、巻き始め端の色相が巻き終わり端の色相と異なると判定した場合、その旨は表示部57に表示され、作業者に知らせることができる。
【0029】
なお、上記各実施形態では、丸型の開口部の例を挙げて説明したが、角型の開口部であってもよい。また、開口部から、光ファイバ心線の巻き始め端と巻き終わり端の双方を視認可能な例を説明したが、例えば巻き始め端だけが視認可能としてもよい。
【0030】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0031】
10…ボビン、11…巻胴部、11a…主巻胴部、12…胴部表面、13…鍔部、14…軸受容部、22…補助巻胴部、23…仕切り鍔部、24…スリット、25…開口部、50…検査装置、51…カメラ、52…制御部、53…映像処理部、54…記憶部、55…色相判定部、56…通信部、57…表示部。
図1
図2
図3
図4