(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
偏波多重光信号とローカル発振光とを混合させることにより、第1の偏波における同相成分を表す第1の電気信号、第1の偏波における直交成分を表す第2の電気信号、第2の偏波における同相成分を表す第3の電気信号、第2の偏波における直交成分を表す第4の電気信号を生成するコヒーレント受信回路と、
前記第1〜第4の電気信号をそれぞれ増幅する第1〜第4の増幅器と、
前記第1〜第4の増幅器の出力信号の振幅がそれぞれ目標振幅に近づくように前記第1〜第4の増幅器の利得を制御する利得制御器と、
前記第1の増幅器の利得に基づいて前記第1の偏波における同相成分の入力光強度を表す第1の光強度を算出し、前記第2の増幅器の利得に基づいて前記第1の偏波における直交成分の入力光強度を表す第2の光強度を算出し、前記第3の増幅器の利得に基づいて前記第2の偏波における同相成分の入力光強度を表す第3の光強度を算出し、前記第4の増幅器の利得に基づいて前記第2の偏波における直交成分の入力光強度を表す第4の光強度を算出する第1の光強度算出部と、
前記第1〜第4の光強度に基づいて、前記第1の偏波の入力光強度と前記第2の偏波の入力光強度との比を表す偏波依存強度比、および前記同相成分の入力光強度と前記直交成分の入力光強度との比を表す位相依存強度比を算出する強度比算出部と、
前記第1〜第4の増幅器のうちから選択される増幅器の利得に基づいて算出される光強度、前記偏波依存強度比、および前記位相依存強度比に基づいて、前記偏波多重光信号の入力光強度を算出する第2の光強度算出部と、
を備える光受信器。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる光受信器の一例を示す。第1の実施形態に係わる光受信器100は、コヒーレント受信により、WDM光信号中に多重化されている複数の光信号の中から所望の波長の光信号を選択的に受信することができる。なお、以下の記載では、「光強度」は、「光パワー」と同義であるものとする。
【0014】
光受信器100は、可変光減衰器(VOA)1、偏波ビームスプリッタ(PBS)2、ローカル発振器3、90度光ハイブリッド回路4X、4Y、受光器(PD)5、増幅器6XI、6XQ、6YI、6YQ、振幅検出器7、利得制御器(AGC)8、CPU9、メモリ10、温度センサ11を備える。なお、光受信器100は、
図1に示していない他の回路要素を備えていてもよい。
【0015】
可変光減衰器1は、CPU9から与えられる指示に従って、入力光信号を減衰させる。ただし、光受信器100は、可変光減衰器1を備えていなくてもよい。偏波ビームスプリッタ2は、入力光信号を互いに直交する偏波成分(X偏波成分およびY偏波成分)に分離する。偏波ビームスプリッタ2から出力されるX偏波成分およびY偏波成分は、それぞれ90度光ハイブリッド回路4Xおよび4Yに導かれる。ローカル発振器3は、波長指示により指定される目的波長のローカル発振光を生成する。波長指示は、WDM光信号から抽出すべき波長チャネルを指定する。なお、波長指示は、例えば、ユーザまたはネットワーク管理者から与えられる。或いは、波長指示は、上位レイヤのアプリケーションから与えられるようにしてもよい。
【0016】
90度光ハイブリッド回路4Xは、入力光信号のX偏波成分とローカル発振光とを混合させ、目的波長のXI成分およびXQ成分を生成する。XI成分は、入力光信号のX偏波のI成分を表し、XQ成分は、入力光信号のX偏波のQ成分を表す。同様に、90度光ハイブリッド回路4Yは、入力光信号のY偏波成分とローカル発振光とを混合させ、YI成分およびYQ成分を生成する。YI成分は、入力光信号のY偏波のI成分を表し、YQ成分は、入力光信号のY偏波のQ成分を表す。この実施例では、XI成分、XQ成分、YI成分、YQ成分は、それぞれ差動信号で表される。そして、XI成分、XQ成分、YI成分、YQ成分は、それぞれ対応する受光器5により電気信号に変換される。
【0017】
なお、偏波ビームスプリッタ2、ローカル発振器3、90度光ハイブリッド回路4X、4Y、受光器5は、コヒーレント受信回路の一例である。ここで、コヒーレント受信回路は、入力光信号とローカル発振光とを混合させることにより、XI成分を表す第1の電気信号、XQ成分を表す第2の電気信号、YI成分を表す第3の電気信号、YQ成分を表す第4の電気信号を生成する。
【0018】
以下の記載では、偏波および位相成分の組み合わせを「レーン」と呼ぶことがある。例えば、X偏波におけるI成分を「レーンXI」と呼ぶことがある。また、各レーンには、それぞれ対応する増幅器が実装されている。具体的には、レーンXI、XQ、YI、YQには、それぞれ増幅器6XI、6XQ、6YI、6YQが実装されている。したがって、レーンを選択または指定することは、増幅器を選択または指定することと同義である。
【0019】
増幅器6XI、6XQ、6YI、6YQは、それぞれ対応するレーンに設けられる受信器5の出力信号を増幅する。すなわち、レーンXIに対して設けられる増幅器6XIは、入力光信号のXI成分を表す電気信号を増幅し、レーンXQに対して設けられる増幅器6XQは、入力光信号のXQ成分を表す電気信号を増幅する。同様に、レーンYIに対して設けられる増幅器6YIは、入力光信号のYI成分を表す電気信号を増幅し、レーンYQに対して設けられる増幅器6YQは、入力光信号のYQ成分を表す電気信号を増幅する。復調回路は、増幅器6XI、6XQ、6YI、6YQの出力信号を復調して送信データを再生する。
【0020】
振幅検出器7は、各増幅器6XI、6XQ、6YI、6YQの出力信号の振幅(以下、出力振幅)を検出する。利得制御器8は、AGCモードで各増幅器6XI、6XQ、6YI、6YQの利得を制御する。具体的には、利得制御器8は、各増幅器6XI、6XQ、6YI、6YQの出力振幅がそれぞれ目標振幅に近づくように各増幅器6XI、6XQ、6YI、6YQの利得を制御する。目標振幅は、例えば、CPU9から指定される。
【0021】
CPU9は、目的波長チャネルの入力光強度を算出する。加えて、CPU9は、算出した入力光強度に基づいて可変光減衰器1を制御してもよい。この場合、CPU9は、例えば、受光器5の感度が高くなるように、可変光減衰器1の減衰量を制御する。さらに、CPU9は、他の機能を提供してもよい。なお、CPU9は、プロセッサおよびメモリを含む。また、CPU9は、与えられるプログラムを実行することにより上述の機能を提供する。
【0022】
メモリ10は、後述する依存関係情報、X/Y強度比情報、I/Q強度比情報を格納する。尚、メモリ10は、CPU9により実行されるプログラムを格納してもよい。また、メモリ10は、
図1に示していない他の情報を格納してもよい。温度センサ11は、増幅器(6XI、6XQ、6YI、6YQ)の近傍に実装され、増幅器の近傍の温度を測定する。
【0023】
上記構成の光受信器100において、目的波長チャネルの入力光強度は、各レーン(XI、XQ、YI、YQ)の入力光強度に基づいて算出され得る。ここで、各レーンの入力光強度は、この実施例では、対応する増幅器の利得に基づいて算出される。例えば、レーンXIの入力光強度は、増幅器6XIの利得に基づいて算出される。具体的には、CPU9は、目的波長チャネルの入力光強度を算出するときに、利得制御部8にアクセスして各増幅器6XI、6XQ、6YI、6YQの利得情報を取得し、取得した利得情報に基づいて各レーンの入力光強度を算出する。そして、CPU9は、各レーンの入力光強度の総和に計算することで目的波長チャネルの入力光強度を検出することができる。
【0024】
他方、光受信器100の小型化および/または低コスト化が要求される場合、CPU9は、
図2に示すように、複数のタスクを実行することが好ましい。各タスクは、対応するデバイスにアクセスする処理を含む。なお、
図2に示すデバイス21a、21b、...は、可変光減衰器1、振幅検出器7、温度センサ11、復調回路などに相当する。
【0025】
複数のタスクは、例えば、時間分割多重方式で実行される。ここで、CPU9は、各増幅器6XI、6XQ、6YI、6YQの利得情報を利得制御部8から順番に取得し、それらの利得情報を使用して目的波長チャネルの入力光強度を順番に算出する。この場合、利得制御部8から利得情報を取得するための読出し時間が長くなってしまう。すなわち、入力光強度を算出するために要する時間が長くなる。この結果、他のタスクが遅延するおそれがある。或いは、他のタスクの実行間隔を長くする必要が生じるおそれがある。
【0026】
そこで、光受信器100は、4つのレーン(XI、XQ、YI、YQ)の中の1つのレーンの利得情報に基づいて、目的波長チャネルの入力光強度を算出する。ここで、各レーンの入力光強度が互いに同じであれば、いずれか1つのレーンの入力光強度を4倍することで目的波長チャネルの入力光強度が算出され得る。しかし、偏波ビームスプリッタ2から出力されるX偏波成分およびY偏波成分の強度は、互いに同じであるとは限らない。また、各90度光ハイブリッド回路(4X、4Y)により生成されるI成分およびQ成分の強度も、互いに同じであるとは限らない。したがって、光受信器100は、これらの要因を考慮して目的波長チャネルの入力光強度を算出する。
【0027】
CPU9は、与えられたプログラムを実行することにより、依存関係生成部31、1レーン強度算出部32、補正部33、X/Y強度比算出部34、I/Q強度比算出部35、入力光強度算出部36の各機能を提供することができる。なお、CPU9は、
図1に示していない他の機能を提供することもできる。
【0028】
依存関係生成部31は、各レーンに対して依存関係情報を生成する。依存関係情報は、増幅器の利得と入力光強度との間の関係を表す。そして、依存関係生成部31により生成される依存関係情報は、メモリ10に格納される。
【0029】
図3は、レーンXIにおける増幅器の利得と入力光強度との依存関係の一例を示す。横軸は、増幅器6XIの利得制御電圧を表し、縦軸は、レーンXIの入力光強度を表す。なお、増幅器6XIの出力振幅は、25℃の環境下で、AGCモードにより1Vppに保持されている。
【0030】
この依存関係は、例えば、プローブ光源を用いて光受信器100の入力光強度を変えながら、各サンプリング点において利得制御電圧を測定することにより生成される。この測定において、レーンXIの入力光強度は、レーンXIに対して実装されている受光器5の出力信号から算出される。なお、増幅器6XIの利得は、利得制御器8から増幅器6XIに印加される利得制御電圧に一意に対応する。
【0031】
依存関係情報は、例えば、増幅器の利得と入力光強度との依存関係を表す依存関係式で表される。この場合、依存関係式は、複数のサンプリング点における測定値に基づいて近似曲線を求めることで生成される。また、依存関係式は、レーン毎に生成される。
【0032】
光受信器100が複数の目標出力振幅の中から選択的に任意の目標出力振幅を設定可能なときは、各目標出力振幅に対して依存関係情報が生成される。例えば、利得制御器8によるAGCが1Vppおよび1.5Vppを提供するときは、1Vppおよび1.5Vppに対してそれぞれ依存関係情報が生成される。
【0033】
なお、増幅器(6XI、6XQ、6YI、6YQ)の出力振幅は、利得制御器8により目標振幅に近づくように制御される。ここで、この目標振幅は、CPU9にとって既知である。よって、CPU9は、依存関係情報を利用することにより、目的レーンに対応する増幅器の利得(または、利得制御電圧)からその目的レーンの入力光強度を算出することができる。
【0034】
増幅器の利得と入力光強度との依存関係は、入力光信号の波長および増幅器の温度に依存して変化する。したがって、依存関係生成部31は、波長依存性を補償するための波長補正情報および温度依存性を補償するための温度補正情報を生成してもよい。
【0035】
波長補正情報を生成するときには、プローブ光の波長を変化させながら、異なる波長に対して増幅器の利得および入力光強度が測定される。そうすると、
図4(a)に示すように、複数の異なる波長に対してそれぞれ依存関係カーブが得られる。そして、依存関係生成部31は、これらの依存関係カーブに基づいて波長補正情報を生成する。波長補正情報は、例えば、ΔP1[μW/nm]で表される。この場合、波長補正情報は「入力光信号の波長が基準波長に対して1nmシフトしたときに、入力光強度をΔP1μWだけ補正する」を意味する。なお、基準波長は、例えば、WDM光信号の信号帯の中心波長である。
【0036】
温度補正情報を生成するときには、増幅器の近傍の温度を変化させながら、異なる温度に対して増幅器の利得および入力光強度が測定される。そうすると、
図4(b)に示すように、複数の異なる温度に対してそれぞれ依存関係カーブが得られる。そして、依存関係生成部31は、これらの依存関係カーブに基づいて温度補正情報を生成する。温度補正情報は、例えば、ΔP2[μW/℃]で表される。この場合、温度補正情報は「増幅器の近傍の温度が基準温度に対して1℃シフトしたときに、入力光強度をΔP2μWだけ補正する」を意味する。なお、基準温度は、予め指定された温度(例えば、25度)である。
【0037】
1レーン強度算出部32は、各レーンの入力光強度を算出する。このとき、1レーン強度算出部32は、メモリ10に格納されている依存関係情報を参照する。例えば、レーンXIの入力光強度を算出するときは、1レーン強度算出部32は、増幅器6XIの利得を検出する。そして、1レーン強度算出部32は、
図3に示す依存関係情報に基づいて、増幅器6XIの利得に対応する入力光強度を算出する。また、1レーン強度算出部32は、同様の方法でレーンXQ、レーンYI、レーンYQの入力光強度をそれぞれ算出する。
【0038】
補正部33は、必要に応じて、波長、温度、または出力振幅に基づいて、1レーン強度算出部32により算出される入力光強度を補正する。即ち、補正部33は、入力光強度を算出すべき目的波長チャネルのキャリア波長に基づいて、1レーン強度算出部32により算出される入力光強度を上述の波長補正情報を利用して補正することができる。また、補正部33は、温度センサ11により測定される温度に基づいて、1レーン強度算出部32により算出される入力光強度を上述の温度補正情報を利用して補正することができる。さらに、補正部33は、振幅検出部7により検出される出力振幅と目的出力振幅との差分に基づいて、1レーン強度算出部32により算出される入力光強度を補正してもよい。
【0039】
X/Y強度比算出部34は、1レーン強度算出部32により算出される各レーンの入力光強度に基づいて、目的波長チャネルのX偏波およびY偏波の入力光強度の比(X/Y強度比、偏波依存強度比)を算出する。X/Y強度比は、例えば、(1)式で算出される。なお、強度XI、強度XQ、強度YI、強度YQは、それぞれ、1レーン強度算出部32により算出されるレーンXIの入力光強度、レーンXQの入力光強度、レーンYIの入力光強度、レーンYQの入力光強度を表す。
【0041】
I/Q強度比算出部35は、1レーン強度算出部32により算出される各レーンの入力光強度に基づいて、目的波長チャネルのI成分およびQ成分の入力光強度の比(I/Q強度比、位相依存強度比)を算出する。I/Q強度比は、例えば、X偏波を利用して(2)式で算出される。
【0043】
また、I/Q強度比算出部35は、Y偏波を利用して(3)式でI/Q強度比を算出してもよい。
【0045】
さらに、I/Q強度比算出部35は、X偏波およびY偏波を利用して(4)式でI/Q強度比を算出してもよい。
【0047】
なお、X/Y強度比算出部34により算出されるX/Y強度比を表すX/Y強度比情報はメモリ10に格納される。また、I/Q強度比算出部35により算出されるI/Q強度比を表すI/Q強度比情報もメモリ10に格納される。
【0048】
入力光強度算出部36は、指定されたレーンの入力光強度、X/Y強度比、I/Q強度比に基づいて、目的波長チャネルの入力光強度を算出する。例えば、レーンXIが指定されたときは、入力光強度算出部36は、以下の手順で目的波長チャネルの入力光強度を算出する。
【0049】
(1)1レーン強度算出部32により算出されるレーンXIの入力光強度(強度XI)およびI/Q強度比に基づいて、レーンXQの入力光強度(強度XQ)を算出する。
(2)強度XIと強度XQとを足し合わせることによりX偏波の入力光強度を算出する。
(3)X偏波の入力光強度(強度X)およびX/Y強度比に基づいて、Y偏波の入力光強度(強度Y)を算出する。
(4)強度Xと強度Yとを足し合わせることにより目的波長チャネルの入力光強度を算出する。
【0050】
このように、入力光強度算出部36は、4つのレーンの中から指定される1つのレーンの入力光強度に基づいて、目的波長チャネルの入力光強度を算出することができる。したがって、すべてのレーンについての入力光強度に基づいて目的波長チャネルの入力光強度を算出する方法と比較して、第1の実施形態によれば、目的波長チャネルの入力光強度を算出するためのCPU9の負荷が削減される。
【0051】
また、第1の実施形態では、X偏波とY偏波との入力光強度の比を表すX/Y強度比、およびI成分とQ成分との入力光強度の比を表すI/Q強度比が予め検出されている。そして、入力光強度算出部36は、X/Y強度比およびI/Q強度比を利用して目的波長チャネルの入力光強度を算出する。したがって、X偏波とY偏波との入力光強度が互いに異なっている場合、及び/又は、I成分とQ成分との入力光強度が互いに異なっている場合であっても、1つのレーンの入力光強度に基づいて目的波長チャネルの入力光強度を精度よく算出することができる。
【0052】
図5は、X/Y強度比およびI/Q強度比を算出する方法の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えば、光受信器100がデータ信号を受信する前にCPU9により実行される。また、CPU9は、このフローチャートの処理を定期的に実行してもよい。なお、このフローチャートの処理が実行される前に、依存関係情報が生成されてメモリ10に格納されているものとする。
【0053】
S1〜S4の処理は、各レーン(XI、XQ、YI、YQ)に対してそれぞれ実行される。以下では、レーンXIについてS1〜S4が実行されるときの処理を記載する。
【0054】
S1において、1レーン強度算出部32は、利得制御器8にアクセスして増幅器6XIの利得を表す利得制御電圧を取得する。S2において、1レーン強度算出部32は、レーンXIについての依存関係情報をメモリ10から取得する。S3において、1レーン強度算出部32は、S2で取得した依存関係情報に基づいて、S1で取得した利得制御電圧に対応する入力光強度を算出する。この結果、レーンXIの入力光強度が算出される。S4において、補正部33は、増幅器6XIの出力振幅に基づいて、S3で算出された入力光強度を補正する。なお、増幅器6XIの出力振幅は、振幅検出部7により検出される。このように、各レーン(XI、XQ、YI、YQ)に対してそれぞれS1〜S4の処理を実行することにより、各レーンの入力光強度が算出される。
【0055】
S5において、補正部33は、増幅器の近傍の温度に基づいて、各レーンについて算出された入力光強度を補正する。増幅器の近傍の温度は、温度センサ11によって測定される。S6において、補正部33は、目的波長チャネルのキャリア波長に基づいて、各レーンについて算出された入力光強度を補正する。
【0056】
S7において、X/Y強度比算出部34は、各レーンの入力光強度に基づいてX/Y強度比を算出する。X/Y強度比は、例えば、(1)式で算出される。S8において、I/Q強度比算出部35は、各レーンの入力光強度に基づいてI/Q強度比を算出する。I/Q強度比は、例えば、(2)〜(4)式のいずれかで算出される。CPU9は、算出したX/Y強度比を表すX/Y強度比情報および算出したI/Q強度比を表すI/Q強度比情報をメモリ10に格納する。なお、メモリ10にX/Y強度比情報およびI/Q強度比情報が既に格納されているときは、CPU9は、新たに算出したX/Y強度比およびI/Q強度比でX/Y強度比情報およびI/Q強度比情報を更新する。
【0057】
図6は、目的波長チャネルの入力光強度を算出する方法の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えば、CPU9により定期的に実行される。尚、このフローチャートの処理が実行される前に、X/Y強度比情報およびI/Q強度比情報がメモリ10に格納されているものとする。また、以下の記載では、4個の増幅器(6XI、6XQ、6YI、6YQ)のうちから増幅器6XIが選択されるものとする。すなわち、レーンXIの入力光強度に基づいて目的波長チャネルの入力光強度が算出されるものとする。
【0058】
S11において、入力光強度算出部36は、利得制御器8にアクセスして増幅器6XIの利得を表す利得制御電圧を取得する。S12において、入力光強度算出部36は、レーンXIについての依存関係情報をメモリ10から取得する。S13において、入力光強度算出部36は、S12で取得した依存関係情報に基づいて、S11で取得した利得制御電圧に対応する入力光強度を算出する。この結果、レーンXIの入力光強度が算出される。なお、入力光強度算出部36により実行されるS11〜S13は、
図5において1レーン強度算出部32により実行されるS1〜S3と実質的に同じである。この後、入力光強度算出部36は、増幅器6XIの出力振幅、温度、および/または目的波長チャネルのキャリア波長に基づいて、S3で得られた入力光強度を補正してもよい。
【0059】
S14において、入力光強度算出部36は、レーンXIの入力光強度およびI/Q強度比に基づいて、レーンXQの入力光強度を算出する。S15において、入力光強度算出部36は、レーンXIの入力光強度およびレーンXQの入力光強度に基づいて目的波長チャネルのX偏波の入力光強度を算出する。S16において、入力光強度算出部36は、X偏波の入力光強度およびX/Y強度比に基づいて、目的波長チャネルのY偏波の入力光強度を算出する。そして、S17において、入力光強度算出部36は、X偏波の入力光強度およびY偏波の入力光強度に基づいて、目的波長チャネルの入力光強度を算出する。
【0060】
S14〜S17では、例えば、以下の計算が実行される。なお、P
_XIは、レーンXIの入力光強度を表す。P
_XQは、レーンXQの入力光強度を表す。R
_IQは、I/Q強度比を表す。P
_Xは、目的波長チャネルのX偏波の入力光強度を表す。P
_Yは、目的波長チャネルのY偏波の入力光強度を表す。R
_XYは、X/Y強度比を表す。P
_INは、目的波長チャネルの入力光強度を表す。
【0061】
S14:P
_XQ=P
_XI×R
_IQ
S15:P
_X=P
_XI+P
_XQ
S16:P
_Y=P
_X×R
_XY
S17:P
_IN=P
_X+P
_Y
【0062】
なお、上述の実施例では、レーンXIの入力光強度に基づいて目的波長チャネルの入力光強度が算出されるが、入力光強度算出部36は、他のレーン入力光強度に基づいて目的波長チャネルの入力光強度を算出してもよい。例えば、レーンYQの入力光強度に基づいて目的波長チャネルの入力光強度を算出する場合には、S14〜S17において以下の計算が実行される。
【0063】
S14:P
_YI=P
_YQ×(1/R
_IQ)
S15:P
_Y=P
_YI+P
_YQ
S16:P
_X=P
_Y×(1/R
_XY)
S17:P
_IN=P
_X+P
_Y
【0064】
このように、第1の実施形態においては、4つのレーンの中から指定される1つのレーンの入力光強度に基づいて、目的波長チャネルの入力光強度が算出される。したがって、すべてのレーンについての入力光強度に基づいて目的波長チャネルの入力光強度を算出する方法と比較して、第1の実施形態によれば、目的波長チャネルの入力光強度を算出するためのCPU9の負荷が削減される。また、X/Y強度比およびI/Q強度比を用いることなく1つのレーンの入力光強度に基づいて目的波長チャネルの入力光強度を算出する方法と比較して、第1の実施形態によれば、目的波長チャネルの入力光強度を精度よく算出することができる。
【0065】
図7〜
図8は、第1の実施形態による効果の一例を示す。なお、
図7〜
図8に示す例では、CPU9は、時間分割多重方式でタスク1、タスク2、および入力光強度を算出するタスクを並列に実行するものとする。
【0066】
4つのレーン(XI、XQ、YI、YQ)の入力光強度をそれぞれ検出する方法においては、
図7に示すように、1回の光強度算出タスクに要する時間が長い。このため、光強度算出タスクが実行されるときは、他のタスクの実行が遅れるおそれがある。
図7では、点線で描かれているタスク1、2がそれぞれ遅延している。
【0067】
このように、各レーン(XI、XQ、YI、YQ)の入力光強度をそれぞれ検出する方法においては、他のタスクの実行が遅れるおそれがあるので、光強度算出タスクの実行周期を高くすることは好ましくない。このため、光受信器において入力光強度の変動の検出が遅れるおそれがある。したがって、例えば、光受信器の入力光強度が急激に低下した場合には、可変光減衰器の制御が遅れてしまい、受光器の入力光強度が許容レベルより低くなることがある。この場合、光受信器は、受信信号を正しく復調できないことがある。
【0068】
これに対して、第1の実施形態では、1つのレーンの利得制御電圧に基づいて目的波長チャネルの入力光強度が算出されるので、
図8に示すように、1回の光強度算出タスクに要する時間は短い。このため、光強度算出タスクを実行しても、他のタスクに影響が及ばない。
【0069】
このように、第1の実施形態では、他のタスクは光強度算出タスクの影響を受けにくいので、光強度算出タスクの実行周期を高くできる。このため、光受信器100において入力光強度の変動を即座に検出できる。したがって、例えば、光受信器100の入力光強度が急激に低下した場合であっても、可変光減衰器1が即座に制御され、受光器5の入力光強度は許容範囲内に維持され得る。この場合、光受信器100は、受信信号を正しく復調できる。
【0070】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、予め指定されたレーン(例えば、レーンXI)の利得制御電圧が検出され、その利得制御電圧に基づいて目的波長チャネルの入力光強度が算出される。これに対して、第2の実施形態では、4つのレーン(XI、XQ、YI、YQ)の中から順番に1つのレーンが選択され、選択されたレーンの利得制御電圧に基づいて目的波長チャネルの入力光強度が算出される。
【0071】
図9は、本発明の第2の実施形態に係わる光受信器の一例を示す。第2の実施形態に係わる光受信器200の構成は、第1の実施形態に係わる光受信器100と実質的に同じである。ただし、第2の実施形態では、CPU9は、レーン選択部37を備える。また、メモリ10には、レーン情報が格納される。
【0072】
レーン選択部37は、利得制御電圧を検出すべきレーン(即ち、利得の検出すべき増幅器)を選択する。この実施例では、光受信器200において目的波長チャネルの入力光強度が繰り返し算出される場合、レーン選択部37は、4つのレーン(XI、XQ、YI、YQ)の中からサイクリックに1つのレーンを選択する。そして、入力光強度算出部36は、レーン選択部37により選択されたレーンの利得制御電圧に基づいて目的波長チャネルの入力光強度を算出する。なお、メモリ10に格納されるレーン情報は、レーン選択部37により選択されるレーンを識別する。
【0073】
図10は、第2の実施形態において目的波長チャネルの入力光強度を算出する方法の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、CPU9により定期的に実行される。
【0074】
S21において、レーン選択部37は、メモリ10からレーン情報を取得する。レーン情報は、4つのレーン(XI、XQ、YI、YQ)を識別する。よって、レーン情報は、ゼロ、1、2、または3を表す。また、レーン情報の初期値はゼロである。そして、レーン選択部37は、S22において、レーン情報に応じてレーンを選択する。
【0075】
レーン情報がゼロであるときは、レーン選択部37は、レーンXIを選択する。この場合、入力光強度算出部36は、S23において、レーンXIの入力光強度を算出する。なお、S23の処理は、
図6に示すS11〜S13の処理と実質的に同じである。即ち、入力光強度算出部36は、増幅器6XIの利得(または、利得制御電圧)に基づいて、レーンXIの入力光強度を算出する。
【0076】
同様に、レーン情報が1であるときには、レーンXQが選択され、入力光強度算出部36は、S24において、レーンXQの入力光強度を算出する。レーン情報が2であるときには、レーンYIが選択され、入力光強度算出部36は、S25において、レーンYIの入力光強度を算出する。レーン情報が3であるときには、レーンYQが選択され、入力光強度算出部36は、S26において、レーンYQの入力光強度を算出する。
【0077】
S27において、入力光強度算出部36は、S23〜S26のいずれか1つにおいて得られた入力光強度に基づいて、目的波長チャネルの入力光強度を算出する。なお、S27の処理は、
図6に示すS14〜S17と実質的に同じである。すなわち、入力光強度算出部36は、選択されたレーンの入力光強度、X/Y強度比、I/Q強度比に基づいて、目的波長チャネルの入力光強度を算出する。
【0078】
S28において、レーン選択部37は、レーン情報を1だけインクリメントする。S29において、レーン選択部37は、インクリメントされたレーン情報が4未満であるか判定する。インクリメントされたレーン情報が4以上であれば、レーン選択部37は、S30において、レーン情報をゼロに初期化する。一方、インクリメントされたレーン情報が4未満であれば、S30の処理はスキップされる。そして、S31において、レーン選択部37は、初期化されたレーン情報またはインクリメントされたレーン情報をメモリ10に保存する。
【0079】
このように、第2の実施形態では、目的波長チャネルの入力光強度が定期的にモニタされるケースにおいて、各レーンの利得制御電圧が順番に使用される。したがって、レーン間で回路素子(受光器、増幅器など)の特性が異なる場合であっても、目的波長チャネルの入力光強度の算出結果は平均化される。
【0080】
<第3の実施形態>
第1の実施形態では、予め指定された1つのレーンの利得制御電圧に基づいて目的波長チャネルの入力光強度が算出される。これに対して、第3の実施形態では、ユーザにより指定される1または複数のレーンの利得制御電圧に基づいて目的波長チャネルの入力光強度が算出され得る。
【0081】
図11は、本発明の第3の実施形態に係わる光受信器の一例を示す。第3の実施形態に係わる光受信器300の構成は、第1の実施形態に係わる光受信器100と実質的に同じである。ただし、第3の実施形態では、CPU9は、外部インターフェース12に接続される。外部インターフェース12は、ユーザ指示を受け付けることができる。よって、光受信器300のユーザは、外部インターフェース12を介して、1または複数の所望のレーンを指定することができる。
【0082】
入力光強度算出部36は、ユーザにより指定されたレーンの利得制御電圧を検出する。ユーザにより複数のレーンが指定されたときは、入力光強度算出部36は、指定された各レーンの利得制御電圧をそれぞれ検出する。そして、入力光強度算出部36は、検出した利得制御電圧に基づいて目的波長チャネルの入力光強度を算出する。なお、ユーザによりレーンが指定されないときは、入力光強度算出部36は、第1の実施形態と同様に、予め指定された1つのレーンの利得制御電圧に基づいて目的波長チャネルの入力光強度を算出してもよい。
【0083】
例えば、ユーザによりレーンXI、YQが指定されたときには、入力光強度算出部36は、増幅器6XIの利得制御電圧に基づいてレーンXIの入力光強度P
_XIを算出し、増幅器6YQの利得制御電圧に基づいてレーンYQの入力光強度P
_YQを算出する。入力光強度算出部36は、P
_XIおよびI/Q強度比からレーンXQの入力光強度P
_XQを算出し、P
_YQおよびI/Q強度比からレーンYIの入力光強度P
_YIを算出する。そして、入力光強度算出部36は、P
_XI、P
_XQ、P
_YI、P
_YQの総和を求めることで、目的波長チャネルの入力光強度を算出する。
【0084】
或いは、ユーザによりレーンXI、XQ、YQが指定されたときには、入力光強度算出部36は、増幅器6XIの利得制御電圧に基づいてレーンXIの入力光強度P
_XIを算出し、増幅器6XQの利得制御電圧に基づいてレーンXQの入力光強度P
_XQを算出し、増幅器6YQの利得制御電圧に基づいてレーンYQの入力光強度P
_YQを算出する。また、入力光強度算出部36は、P
_YQおよびI/Q強度比からレーンYIの入力光強度P
_YIを算出する。そして、入力光強度算出部36は、P
_XI、P
_XQ、P
_YI、P
_YQの総和を求めることで、目的波長チャネルの入力光強度を算出する。
【0085】
なお、ユーザにより全レーン(すなわち、XI、XQ、YI、YQ)が指定されたときは、
図7を参照しながら説明したように、CPU9の負荷が大きくなるおそれがある。したがって、この場合、CPU9は、外部インターフェース12を介して警告を出力してもよい。
【0086】
<第4の実施形態>
目的波長チャネルの入力光強度は、上述したように、X/Y強度比およびI/Q強度比を利用して算出される。ただし、X/Y強度比およびI/Q強度比は、温度変化または経年劣化などに起因して変化することがある。例えば、偏波ビームスプリッタ2、ローカル発振器3、90度光ハイブリッド回路4X、4Y、受光器5、増幅器6XI、6XQ、6YI、6YQの特性は、温度または経年に起因して変化し得る。そして、X/Y強度比およびI/Q強度比が正しくない場合には、CPU9は、目的波長チャネルの入力光強度を精度よく算出することはできない。そこで、第4の実施形態の光受信器は、X/Y強度比およびI/Q強度比を定期的に算出する機能を備える。
【0087】
図12は、本発明の第4の実施形態に係わる光受信器の一例を示す。第4の実施形態に係わる光受信器400の構成は、第1の実施形態に係わる光受信器100と実質的に同じである。ただし、第4の実施形態では、CPU9は、外部インターフェース12に接続される。また、CPU9は、更新周期制御部38を備える。
【0088】
光受信器400のユーザは、外部インターフェース12を介して、X/Y強度比およびI/Q強度比の更新周期を指定することができる。更新周期を指定するユーザ指示は、更新周期制御部38に与えられる。
【0089】
更新周期制御部38は、ユーザ指示に従って、X/Y強度比算出部34およびI/Q強度比算出部35を制御する。すなわち、更新周期制御部38は、ユーザにより指定された更新周期でX/Y強度比算出部34およびI/Q強度比算出部35を起動する。
【0090】
X/Y強度比算出部34は、更新周期制御部38により起動されると、各レーンの利得制御電圧に基づいてX/Y強度比を算出する。また、I/Q強度比算出部35は、更新周期制御部38により起動されると、各レーンの利得制御電圧に基づいてI/Q強度比を算出する。すなわち、ユーザにより指定される更新周期に従って、
図5に示すフローチャートの処理が定期的に実行される。そして、新たに算出されたX/Y強度比およびI/Q強度比を表すX/Y強度比情報およびI/Q強度比情報は、メモリ10に格納される。
【0091】
このように、第4の実施形態では、最新のX/Y強度比およびI/Q強度比を利用して目的波長チャネルの入力光強度が算出される。したがって、温度または経年劣化の影響は抑制され、目的波長チャネルの入力光強度が精度よく算出される。
【0092】
なお、更新周期が短いときは、CPU9から利得制御器8へのアクセス頻度が高く、CPU9の演算量が増加する。すなわち、更新周期が短いときは、CPU9の負荷が大きくなる。したがって、CPU9は、ユーザにより指定される更新周期が所定の閾値よりも短いときは、外部インターフェース12を介して警告を出力してもよい。また、更新周期がユーザから指定されないときは、CPU9は、予め決められた周期でX/Y強度比およびI/Q強度比を更新してもよい。
【0093】
<他の実施形態>
第1〜第4の実施形態は、矛盾のない範囲で組み合わせてもよい。例えば、
図1に示す第1の実施形態、
図9に示す第2の実施形態、または
図11に示す第3の実施形態において、更新周期制御部38を用いてX/Y強度比およびI/Q強度比を定期的に更新してもよい。
【0094】
第1〜第4の実施形態では、CPU9により算出される入力光強度は可変光減衰器1を制御するために使用されるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、CPU9は、算出した入力光強度を表示装置に表示してもよい。或いは、CPU9は、算出した入力光強度を送信ノードまたはネットワーク管理システムに通知してもよい。
【0095】
上述の実施例では、光受信器100、200、300、400は、WDM光信号中に多重化されている複数の光信号の中から所望の波長の光信号を選択的に受信するが、本発明はこの構成に限定されるものではない。