(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交流電源系統にパワーコンディショナを介して接続された直流母線に接続され、かつ、直流発電設備による発電電力を一対の分岐線を介して前記直流母線に供給する分岐系統におけるアーク故障検出装置において、
一方の前記分岐線に流れる電流の直流成分及び交流成分を検出する電流検出手段と、
一方の前記分岐線上の二点間の電圧を検出可能な第1の電圧検出手段と、
前記一対の分岐線間の電圧を検出する第2の電圧検出手段と、
前記電流検出手段により検出した電流の直流成分を所定の閾値と比較する直流成分用電流閾値判定手段と、
前記電流検出手段により検出した電流の交流成分を所定の閾値と比較する交流成分用電流閾値判定手段と、
前記第1の電圧検出手段により検出した電圧及び前記第2の電圧検出手段により検出した電圧を所定の閾値とそれぞれ比較する電圧閾値判定手段と、
前記直流成分用電流閾値判定手段の出力及び前記電圧閾値判定手段の出力を組み合わせた論理演算結果と、前記交流成分用電流閾値判定手段による判定結果とに基づいて、前記分岐系統におけるアーク故障を判定する故障判定手段と、
を備えたことを特徴とするアーク故障検出装置。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システム等の直流回路におけるアークを検出する従来技術として、以下に示すものが提案されている。
例えば、特許文献1に記載されたアーク検出手段では、太陽電池パネルに接続された端子台でのネジの締め忘れ等により、アークの発生、短絡及び断路故障が発生すると考え、端子台から出力側配線との間の電圧の変動と、端子台から出力側配線に流れる電流の変動とを同時に検出している。
【0003】
また、特許文献2に記載されたアーク検出装置は、メガソーラのように太陽電池パネルの数が多く複数の箇所に配置されており、かつ、パワーコンディショナ(PCS)のインバータのスイッチングノイズが重畳するような直流回路への適用を前提としている。
このアーク検出装置では、複数個の太陽電池パネルが直列接続された直流回路の両端電圧を検出し、その出力をパワースペクトルに変換した後にインバータのスイッチングノイズに相当する周波数帯域を除去し、除去した後のパワースペクトルの複数点で求めたパワースペクトルの傾きが所定の基準値を超えた場合に、直流回路におけるアークの発生を判定している。
【0004】
特許文献1に記載された従来技術では、その原理上、端子台の近傍、言い換えれば電圧センサの近傍でアークが発生し、電圧等が変動した場合に検出できるものである。しかしながら、特にメガソーラ等の大規模な太陽光発電システムでは、ケーブルが長距離にわたって敷設されているため、ケーブルの断線等に起因するアーク故障が様々な箇所で発生する場合がある。
このため、端子台より太陽電池パネル側のケーブル等で発生したアーク故障に関しては、端子台付近の電圧センサの設置位置における急激な電圧変動はほとんどなく、検出が困難である。
【0005】
また、特許文献2に記載された従来技術は、アーク発生時に発生する電圧の高周波成分に着目した検出方法であり、主幹系統に接続された複数の分岐系統(ストリング)のうち、故障が発生した系統と健全な系統とを区別して検出するためには、逆流防止ダイオード付きの太陽光発電システムであることを必要とする。
なお、国内では、上記の逆流防止ダイオードを備えた太陽光発電システムが主流となりつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、近年における太陽光発電システムの世界的な主流では、逆流に対する安全策として、逆流防止ダイオードを用いずにPVヒューズが使用されている。この種のシステムによると、特許文献2に記載の検出方法では故障系統と健全系統とを区別できないため、故障発生時にはシステム全体を停止する必要があると共に、故障点の特定や復旧に多くの時間や手間が必要であった。
すなわち、太陽光発電システムの構成によっては故障系統を判別することができず、太陽光発電を安定的に継続することが困難であった。
【0008】
太陽光発電システムでは、逆流防止ダイオードの有無に応じてアーク故障時の特性が異なるため、アーク故障検出装置の構成も異ならざるを得ないが、汎用性という観点からは、国内で主流の逆流防止ダイオードを有するシステムと世界的に主流の逆流防止ダイオードのないシステムとの両方に対応可能なアーク故障検出装置の実現が求められている。
しかしながら、現状では、逆流防止ダイオードの有無に関わらず、同一の回路構成及び信号処理方法のもとでアーク故障を検出することが困難であり、これを可能にするアーク故障検出装置の実現が望まれていた。
【0009】
そこで、本発明の解決課題は、ダイオード等の逆流防止素子の有無に関わらず、同一の回路構成及び信号処理方法によって分岐系統のアーク故障を確実に検出可能としたアーク故障検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、交流電源系統にパワーコンディショナを介して接続された直流母線に接続され、かつ、直流発電設備による発電電力を一対の分岐線を介して前記直流母線に供給する分岐系統におけるアーク故障検出装置において、
一方の前記分岐線に流れる電流の直流成分及び交流成分を検出する電流検出手段と、
一方の前記分岐線上の二点間の電圧を検出可能な第1の電圧検出手段と、
前記一対の分岐線間の電圧を検出する第2の電圧検出手段と、
前記電流検出手段により検出した電流の直流成分を所定の閾値と比較する直流成分用電流閾値判定手段と、
前記電流検出手段により検出した電流の交流成分を所定の閾値と比較する交流成分用電流閾値判定手段と、
前記第1の電圧検出手段により検出した電圧及び前記第2の電圧検出手段により検出した電圧を所定の閾値とそれぞれ比較する電圧閾値判定手段と、
前記直流成分用電流閾値判定手段の出力及び前記電圧閾値判定手段の出力を組み合わせた論理演算結果と、前記交流成分用電流閾値判定手段による判定結果とに基づいて、前記分岐系統におけるアーク故障を判定する故障判定手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載したアーク故障検出装置において、一方の前記分岐線には、前記直流母線から前記直流発電設備に向かう方向の直流電流を阻止するための逆流防止素子が接続され、前記第1の電圧検出手段は、前記逆流防止素子の両端電圧を検出することを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載したアーク故障検出装置において、一方の前記分岐線に、前記直流母線から前記直流発電設備に向かう方向の直流電流を阻止するための逆流防止素子が接続されていない時に、前記第1の電圧検出手段の入力端子間を短絡することを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載したアーク故障検出装置において、前記故障判定手段は、前記交流成分用電流閾値判定手段による判定結果に基づいて、一方の前記分岐線で発生した直列アーク故障を判定することを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載したアーク故障検出装置において、前記故障判定手段は、前記第1の電圧検出手段の出力を用いた前記電圧閾値判定手段による判定結果と前記直流成分用電流閾値判定手段による逆方向電流の判定結果との論理和、及び、前記第2の電圧検出手段の出力を用いた前記電圧閾値判定手段による判定結果と前記直流成分用電流閾値判定手段による順方向電流の判定結果との論理積に基づいて、前記一対の分岐線間で発生した並列アーク故障を判定することを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載したアーク故障検出装置において、前記直流成分用電流閾値判定手段の出力及び前記電圧閾値判定手段の出力を組み合わせた論理演算結果に時限を設ける第1のタイマ手段と、前記交流成分用電流閾値判定手段による判定結果に時限を設ける第2のタイマ手段と、を更に備え、前記故障判定手段は、前記第1のタイマ手段及び前記第2のタイマ手段の出力に基づいて前記分岐系統におけるアーク故障を判定することを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6の何れか1項に記載したアーク故障検出装置において、前記パワーコンディショナと前記直流母線との間に接続された主幹系統用断路用開閉器と、前記分岐系統に接続された分岐系統用断路用開閉器と、を更に備え、前記故障判定手段は、アーク故障判定時に前記主幹系統用断路用開閉器または前記分岐系統用断路用開閉器を開放する機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、分岐系統における逆流防止素子の有無に関わらず、アーク故障を確実に検出することができ、故障箇所を切り離して保護すると共に健全系統からの電力供給を継続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態が適用される太陽光発電システムの構成図である。
図1において、1は交流電源系統、2はパワーコンディショナ(PCS)、3は主幹系統用の断路用開閉器、4は正側母線P及び負側母線Nからなる直流母線であり、この直流母線4には、同一構成の分岐系統5A,5Bが互いに並列に接続されている。
なお、分岐系統5A,5Bに対して、直流母線4からPCS2に至るまでの系統を主幹系統と呼ぶ。
【0020】
次に、分岐系統5Aの構成を説明する。
この分岐系統5Aは、直流母線4を構成する正側母線P及び負側母線Nに一対の分岐線41を介して接続された直流発電設備としての太陽電池パネル104を有すると共に、正側母線Pにカソードが接続された逆流防止ダイオード(以下、単にダイオードともいう)101と、断路用開閉器102と、短絡用開閉器103とを備えている。
また、分岐系統5Aには、一方の分岐線41を流れる電流の交流成分及び直流成分を検出する電流検出装置105と、ダイオード101の両端電圧を検出する電圧検出装置106と、一対の分岐線41,41間の電圧を検出する電圧検出装置107と、各検出装置105〜107による検出値が入力されてアーク故障を判定する判定回路111と、が設けられている。
同様に、分岐系統5Bも、一対の分岐線42、ダイオード201、断路用開閉器202、短絡用開閉器203、太陽電池パネル204、電流検出装置205、電圧検出装置206,207、及び判定回路211を備えている。
【0021】
上記構成において、分岐系統5Aの各検出装置105〜107及び判定回路111、分岐系統5Bの各検出装置205〜207及び判定回路211が、それぞれ、本実施形態におけるアーク故障検出装置の主要部を構成している。
次に、分岐系統5Aのアーク故障検出装置(分岐系統5Bも同一)の具体的構成を
図2に基づいて説明する。
【0022】
図2において、ダイオード101の両端には分圧器112が接続され、その出力側には絶縁アンプ114、ローパスフィルタ(LPF)116、第1の電圧閾値判定回路121が順次接続されている。また、太陽電池パネル104(図示せず)に接続された分岐線41,41間には分圧器113が接続され、その出力側には絶縁アンプ115、LPF117、第2の電圧閾値判定回路122が順次接続されている。
【0023】
更に、一方の分岐線41には変流器(CT)301が設けられ、その出力はLPF118及びバンドパスフィルタ(BPF)119に入力されている。
LPF118の出力は第1,第2の電流閾値判定回路123,124に入力されていると共に、BPF119の出力は、整流回路120を介して第3の電流閾値判定回路125に入力されている。
ここで、第1,第2の電流閾値判定回路123,124は請求項における直流成分用電流閾値判定手段を構成し、第3の電流閾値判定回路125は請求項における交流成分用電流閾値判定手段を構成している。
【0024】
第1の電圧閾値判定回路121の出力及び第1の電流閾値判定回路123の出力は、オアゲート126と第1のタイマ回路128とを順次介して判定出力部131に入力されている。また、第2の電圧閾値判定回路122の出力及び第2の電流閾値判定回路124の出力は、アンドゲート127と第2のタイマ回路129とを順次介して判定出力部131に入力されている。
更に、第3の電流閾値判定回路125の出力は、第3のタイマ回路130を介して判定出力部131に入力されている。
【0025】
判定出力部131は、第1〜第3のタイマ回路128〜130の出力信号に基づいてアーク故障の有無及び種類を判定し、その結果を状態表示回路131aにより表示すると共に、保護制御回路131bにより断路用開閉器や短絡用開閉器を開閉制御して系統の保護動作を行うものである。
なお、
図2では、各部に電源を供給する電源回路の図示を省略してある。
【0026】
次に、この実施形態の動作を説明する。
図2における分岐線41,41間の数百[V]〜1[kV]程度の電圧を後続の電子回路によって処理可能な大きさにするため、分圧器112,113により検出電圧を低下させ、絶縁アンプ114,115を介してLPF116,117に通すことにより、不要な高周波ノイズ成分が除去される。
また、CT301により検出された分岐線41の電流の直流成分がLPF118により検出され、交流成分がBPF119により検出される。ここで、BPF119では、高周波成分を検出し、かつ不要なノイズ成分を除去するために、1[kHz]〜100[kHz]の周波数成分を抽出している。
【0027】
第1の電圧閾値判定回路121は、入力信号が所定の閾値以上である場合に「H」(High)レベルの信号を出力し、第2の電圧閾値判定回路122は、入力信号が所定の閾値未満である場合に「H」レベルの信号を出力する。
第1の電流閾値判定回路123は、電流の通電方向が逆方向であることを検出するものであり、例えば、入力信号が所定の閾値未満である場合に「H」レベルの信号を出力する。第2の電流閾値判定回路124は、電流の通電方向が順方向であることを検出するものであり、入力信号が所定の閾値以上である場合に「H」レベルの信号を出力する。第3の電流閾値判定回路125は、BPF119の信号を整流回路120により全波整流した後の信号が所定の閾値以上となった場合に、「H」レベルの信号を出力する。
【0028】
上述した電圧,電流閾値判定回路121〜125の出力側に設けられた論理演算部では、第1の電圧閾値判定回路121による判定結果と第1の電流閾値判定回路123による判定結果との論理和をオアゲート126により求めると共に、第2の電圧閾値判定回路122による判定結果と第2の電流閾値判定回路124による判定結果との論理積をアンドゲート127により求め、真の場合に「H」レベルの信号をそれぞれ出力する。
オアゲート126の出力、アンドゲート127の出力、及び第3の電流閾値判定回路125の出力は、タイマ回路128〜130において、それぞれ一定時間継続した場合に「H」レベルの信号が出力されるようになっている。
【0029】
タイマ回路128〜130の時限は数[ms]〜数百[ms]の範囲で設定されており、各時限は、タイマ回路129<同128<同130となっていてタイマ回路129からの出力が最も早く、次いでタイマ回路128、タイマ回路130の順序になっている。
なお、タイマ回路128,129は請求項における第1のタイマ手段に相当し、タイマ回路130は請求項における第2のタイマ手段に相当する。
【0030】
判定出力部131では、後に詳述するように、タイマ回路128〜130の出力信号の何れかが「H」レベルになった時点で何らかのアーク故障が発生したと判断し、状態表示回路131a及び保護制御回路131bにより、判定結果に応じた状態表示動作や保護制御動作を行う。
上記構成において、オアゲート126、アンドゲート127、タイマ回路128〜130、及び判定出力部131は、請求項における故障判定手段を構成している。
【0031】
次に、アーク故障が発生した時の具体的な検出動作を説明する。
図3は、分岐系統5A内の一方の分岐線41が断線して直列アーク501が発生した場合を示しており、符号aは太陽電池パネル104からの電流経路である。なお、単一の分岐線上で発生するアークを直列アークといい、正負の分岐線間で発生するアークを並列アークというものとする。
図3の直列アーク501により、太陽電池パネル104による発電電力は、断路用開閉器102から、判定回路111を含む本実施形態のアーク故障検出装置、断路用開閉器3を経てPCS2に供給される。
【0032】
図4は、直列アーク501が発生した時の各部の電圧信号、電流信号を示す波形図であり、電圧信号(1),(2)はそれぞれLPF116,117の出力、電流信号(1),(2)はLPF118の出力、電流信号(3)はBPF119の出力を示している。
図4では、時間0の時点で直列アーク501が発生している。
図5は、アーク故障発生時の電圧閾値判定回路121,122、電流閾値判定回路123〜125等の動作を示しており、左欄の符号A〜Eは、それぞれ判定回路121〜125の出力、同じく符号α,β,γは、それぞれタイマ回路128,129,130の入力である。
図4の直列アーク501が発生した時には、
図5における「故障形態(1)直列アーク故障(a)逆流防止ダイオード有りのシステム」に示す動作となる。
【0033】
直列アーク501が発生すると、ダイオード101には順方向の電流が流れ続けるため、
図4に示すように電圧信号(1)(LPF116の出力)はダイオード101の電圧降下分を考慮しても閾値未満であるため、電圧閾値判定回路121の出力は「L」(Low)レベルである。
また、分岐線41の線間電圧も健全時の動作電圧相当(数百[V]〜1[kV]程度)から殆ど変化がないため、電圧信号(2)(LPF117の出力)は閾値以上であり、電圧閾値判定回路122の出力も「L」レベルである。
【0034】
また、電流は健全時と同方向(順方向)に流れ続けるため、電流の直流成分である電流信号(1),(2)(LPF118の出力)は順方向を示している。なお、
図4において、電流信号(1),(2)は1.5を基準値として、基準値以上である場合を順方向、基準値未満の場合を逆方向としている。
このため、電流閾値判定回路123からは「L」レベルの信号が出力され、電流閾値判定回路124からは「H」レベルの信号が出力される。
【0035】
また、電流にはアーク発生時の特有の信号である高周波成分(アークノイズ)が含まれるため、電流の交流成分である電流信号(3)(BPF119の出力)は故障発生後に大きくなる。従って、この電流信号(3)の基準を0にシフトさせた後、整流回路120によって全波整流すると、
図4における電流信号(3)整流後の信号となって閾値以上の値になり、電流閾値判定回路125からは「H」レベルの信号が出力される。
【0036】
以上により、オアゲート126及びアンドゲート127の出力は「L」レベルとなり、電流閾値判定回路125の出力側のタイマ回路130による設定時限の経過後に「H」レベルの信号が出力される。この「H」レベルの信号により、出力判定部131が直列アーク故障501と判定し、その後に断路開閉器102を開放して分岐系統5Aから事故点を除去する。
【0037】
次に、
図6は、分岐系統5Aの太陽電池パネル104と短絡用開閉器103との間で一対の分岐線41,41が短絡し、並列アーク502が発生した場合を示している。符号bは、並列アーク502を通過する太陽電池パネル104からの電流経路である。
この場合、分岐系統5Aにはダイオード101が存在するため、健全系統である分岐系統5Bから故障点への電流の流入はなく、PCS2は通常動作を維持する。
【0038】
図6の並列アーク502が発生した場合の動作を、
図5、
図7を参照しつつ説明する。なお、このケースの動作は、
図5における「故障形態(2)並列アーク故障(a)逆流防止ダイオード有りのシステム」に示すようになる。また、
図7では、時間0の時点で並列アーク502が発生している。
【0039】
並列アーク502の発生により、分岐線41の線間電圧はアーク電圧相当(数十[V])まで低下する一方、ダイオード101を介して、直流母線4の線間電圧は健全時の動作電圧(数百[V]〜1[kV])を維持している。
このため、
図7における電圧信号(1)(LPF116の出力)は閾値以上となり、電圧閾値判定回路121の出力は「H」レベルとなる。また、分岐線41の線間電圧はアーク電圧相当まで低下するため、電圧信号(2)(LPF117の出力)は閾値未満となり、電圧閾値判定回路122の出力も「H」レベルとなる。
【0040】
更に、変流器301には電流が流れなくなるため、電流信号(1),(2)(LPF118の出力)は電流0に相当する1.5となる。よって、電流閾値判定回路123,124の出力は「L」レベルとなる。また、電流が流れないので、電流信号(3)(BPF119の出力)及びその整流後の信号も閾値未満となり、電流閾値判定回路125の出力は「L」レベルとなる。
【0041】
従って、オアゲート126の出力は「H」レベル、アンドゲート127の出力は「L」レベルとなり、所定の時限経過後に、タイマ回路128から「H」レベルの信号が出力される。
これにより、判定出力部131は並列アーク502の発生を検出し、断路開閉器102を開放すると共に、短絡開閉器103を短絡させてアーク故障点よりも低インピーダンスの電流経路を形成することにより、並列アーク502を消去して事故点を除去する制御を行う。
【0042】
次に、
図8は、分岐系統5Aのダイオード101と断路用開閉器102との間で一対の分岐線41,41が短絡し、並列アーク503が発生した場合を示している。
図8において、符号cは、健全な他方の分岐系統5Bによる電流経路であり、一方の分岐系統5Aにはダイオード101が存在するため、分岐系統5Bから故障点への電流の流入はなく、PCS2は通常動作を維持する。なお、符号dは分岐系統5Aにおける並列アーク503を介した電流経路である。
【0043】
図8の並列アーク503が発生した場合の動作を、
図5、
図9を参照しつつ説明する。このケースの動作は、
図5における「故障形態(3)並列アーク故障(a)逆流防止ダイオード有りのシステム」に示すようになる。また、
図9では、時間0の時点で並列アーク502が発生している。
【0044】
並列アーク503が発生した場合、
図9における電圧信号(1),(2)は、並列アーク502が発生した場合の
図7における電圧信号(1),(2)とそれぞれ同じ挙動を示し、電圧閾値判定回路121,122の出力は何れも「H」レベルとなる。
また、電流は健全時と同方向(順方向)に流れ続けるため、
図9における電流信号(1),(2)は、直列アーク501が発生した場合の
図4における電流信号(1),(2)とそれぞれ同じ挙動を示す。よって、電流閾値判定回路123からは「L」レベルの信号が出力され、電流閾値判定回路124からは「H」レベルの信号が出力される。
更に、電流の交流成分である電流信号(3)(BPF119の出力)は
図4と同様に大きくなり、電流閾値判定回路125からは「H」レベルの信号が出力される。
【0045】
以上により、オアゲート126及びアンドゲート127の出力は何れも「H」レベルとなる。ここで、判定出力部131は、タイマ回路128〜130の中で時限が最も短いタイマ回路129の出力が最初に「H」レベルになることに基づいて、並列アーク503が発生したことを検出する。
この故障に対しては、判定出力部131が断路開閉器102を開放するように制御して事故点を切り離す。
【0046】
次いで、分岐系統に逆流防止ダイオードが設けられていない太陽光発電システムを対象として、第2実施形態に係るアーク故障検出装置の構成及び動作を説明する。
図10は、第2実施形態が適用される太陽光発電システムの構成を示しており、
図11はアーク故障検出装置のブロック図である。
図10,
図11が前述した
図1,
図2と異なる点は、分岐系統5A’,5B’に逆流防止ダイオードが設けられていないほか、
図10の電圧検出装置106(
図11の分圧器112)の入力端子間が短絡されている点のみであり、他の構成については
図1,
図2と同一であるため説明を省略する。
【0047】
次に、具体的なアーク故障検出動作について説明する。
なお、分岐系統における直列アークの検出動作は、分岐系統がダイオードを有する場合について説明した
図3,
図4等と同様である。すなわち、各判定回路121〜125、タイマ回路128〜130等の動作は、
図5における「故障形態(1)直列アーク故障(b)逆流防止ダイオード無しのシステム」のようになる。
【0048】
図12は、分岐系統5A’の太陽電池パネル104と短絡用開閉器103との間で一対の分岐線41,41が短絡し、並列アーク502が発生した場合を示している。符号bは、並列アーク502を通る太陽電池パネル104からの電流経路である。また、分岐系統5A’にはダイオードが存在しないため、健全な分岐系統5B’から分岐系統5A’に電流が流入して並列アーク502を通る電流経路eが形成され、PCS2は動作を停止する。
【0049】
図12の並列アーク502が発生した場合の動作を、
図5、
図13を参照しつつ説明する。このケースの動作は、
図5における「故障形態(2)並列アーク故障(b)逆流防止ダイオード無しのシステム」に示すようになる。また、
図13では、時間0の時点で並列アーク502が発生している。
【0050】
並列アーク502の発生により、分岐線41の線間電圧はアーク電圧相当(数十[V])まで低下する。ここで、分圧器112は入力端子間が短絡されているので、電圧信号(1)(LPF116の出力)は閾値未満となり、電圧閾値判定回路121の出力は「L」レベルとなる。同時に、電圧信号(2)(LPF117の出力)も閾値未満となり、電圧閾値判定回路122の出力は「H」レベルとなる。
【0051】
更に、変流器301には、並列アーク502に向かって逆方向の電流が流れ続ける。これにより、直流成分である電流信号(1),(2)(LPF118の出力)は閾値未満になって電流閾値判定回路123の出力は「H」レベルとなり、電流閾値判定回路124の出力は「L」レベルとなる。また、電流信号(3)(BPF119の出力)の全波整流後の信号は閾値以上になり、電流閾値判定回路125の出力は「H」レベルとなる。
【0052】
従って、オアゲート126の出力は「H」レベル、アンドゲート127の出力は「L」レベルとなる。ここで、タイマ回路128とタイマ回路130とでは、タイマ回路128の時限の方が短く、先に「H」レベルの信号が出力されるため、判定出力部131はこの「H」レベルの信号に基づいて並列アーク502の発生を検出する。
その後、判定出力部131は断路開閉器102を開放すると共に、短絡開閉器103を短絡させてアーク故障点よりも低インピーダンスの電流経路を形成することにより、並列アーク502を消去して事故点を除去する制御を行う。
【0053】
次に、
図14は、分岐系統5A’において直流母線4と断路用開閉器102との間で一対の分岐線41,41が短絡し、並列アーク503が発生した場合を示している。
図14において、符号dは、並列アーク503を通る太陽電池パネル104からの電流経路である。また、分岐系統5A’にはダイオードが存在しないため、健全な分岐系統5B’から電流が流入して並列アーク503を通る電流経路fが形成されることになり、PCS2は動作を停止する。
【0054】
図14の並列アーク503が発生した場合の動作を、
図5、
図15を参照しつつ説明する。このケースの動作は、
図5における「故障形態(3)並列アーク故障(a)逆流防止ダイオード無しのシステム」に示すようになる。また、
図15では、時間0の時点で並列アーク503が発生している。
【0055】
並列アーク503の発生により、分岐線41の線間電圧はアーク電圧相当(数十[V])まで低下するので、
図12に示した並列アーク502の発生時と同様に、電圧信号(1)(LPF116の出力)は閾値未満になって電圧閾値判定回路121の出力は「L」レベルとなる。同時に、電圧信号(2)(LPF117の出力)も閾値未満となり、電圧閾値判定回路122の出力は「H」レベルとなる。
【0056】
変流器301には、
図12と異なって順方向の電流が流れ続ける。
これにより、直流成分である電流信号(1),(2)(LPF118の出力)は閾値以上になるため、電流閾値判定回路123の出力は「L」レベルとなり、電流閾値判定回路124の出力は「H」レベルとなる。また、電流信号(3)(BPF119の出力)の全波整流後の信号は閾値以上になり、電流閾値判定回路125の出力は「H」レベルとなる。
【0057】
従って、オアゲート126の出力は「L」レベル、アンドゲート127の出力は「H」レベルとなる。ここで、タイマ回路129とタイマ回路130とでは、タイマ回路129の時限の方が短く、先に「H」レベルの信号が出力されるため、判定出力部131はこの「H」レベルの信号に基づいて並列アーク503の発生を検出し、断路開閉器102を開放して事故点を除去する制御を行う。
また、並列アーク503によって形成される分岐系統5A’の電流経路dと分岐系統5B’の電流経路fとは電気的に等価であるから、分岐系統5B’の電流検出装置205、電圧検出装置206,207、判定回路211は分岐系統5A’側と同じ動作となり、断路開閉器202を開放する。
【0058】
なお、
図2,
図11では、電流検出装置として変流器301を用いているが、
図16の第3実施形態に示すように、電流検出装置としてシャント抵抗302を用い、絶縁アンプ132を介してLPF118及びBPF119に接続しても良い。
更に、
図2,
図11における変流器301や
図16のシャント抵抗302では、電流の直流成分及び交流成分を纏めて検出しているが、
図17の第4実施形態に示すように、2個の変流器301a,301b(または、2個のシャント抵抗)にLPF118、BPF119をそれぞれ接続して電流の直流成分と交流成分とを分離して検出しても良い。