(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6760146
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 13/12 20060101AFI20200910BHJP
B66C 13/40 20060101ALI20200910BHJP
H02J 50/20 20160101ALI20200910BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20200910BHJP
【FI】
B66C13/12 D
B66C13/40 D
H02J50/20
H02J50/10
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-45233(P2017-45233)
(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公開番号】特開2018-150085(P2018-150085A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2020年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】山内 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 博紀
(72)【発明者】
【氏名】石原 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】神田 真輔
【審査官】
有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−256089(JP,A)
【文献】
特開2006−103879(JP,A)
【文献】
特開2014−216797(JP,A)
【文献】
特開2016−052949(JP,A)
【文献】
特開2006−315843(JP,A)
【文献】
特開2012−126464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/12
B66C 13/40
H02J 50/10
H02J 50/20
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、前記走行体に旋回可能に支持される旋回体と、を備え、前記走行体と旋回体との間で電磁誘導方式または磁界共鳴方式による給電を行うとともに、電力にデータ信号を重畳させることで給電と同時にデータ通信を行うクレーン、または、前記走行体と旋回体との間でマイクロ波給電を行うとともに、ワイヤレス給電とワイヤレス通信を行うアンテナを別途設けて給電とは別にデータ通信を行うクレーンであって、
前記走行体に、電源装置と、当該走行体を制御するとともに、走行体に含まれる各装置に電力を伝送する下部コントローラと、前記電源装置からの電力とデータ信号を無線で送受信する下部送受信装置を設け、
前記旋回体に、当該旋回体を制御するとともに、旋回体に含まれる各装置に電力を伝送する上部コントローラと、前記下部送受信装置との間で電力とデータ信号を無線で送受信する上部送受信装置を設けたことを特徴とするクレーン。
【請求項2】
前記下部送受信装置及び前記上部送受信装置は、前記旋回体の旋回中心に配置される請求項1に記載のクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの走行体と旋回体との間で給電と通信を無線で行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーンの走行体と旋回体との間にスリップリングを配置して、通信及び電力の供給を行う構成が知られている。特許文献1には、走行体と旋回体間の通信を無線で行うとともに、旋回体側に通信機器類に電力を供給するためのバッテリと発電機を備えることで、スリップリングを介した通信量の増加を抑える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−256089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の作業機は、走行体と旋回体との間で無線通信を行う通信機器と、電力供給のための発電機やバッテリを備えている。つまり、旋回体に通信機器、発電機、バッテリを備える構成とすることで装備が大掛かりなものとなっている。また、スリップリングを配置することで、スリップリングへの配線が必要であること、スリップリング自体が摩耗することといったスリップリングに付随する課題は避けることができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
走行体と、前記走行体に旋回可能に支持される旋回体と、を備え、前記走行体と旋回体との間で
電磁誘導方式または磁界共鳴方式による給電
を行うとともに、電力にデータ信号を重畳させることで給電と同時にデータ通信を行うクレーン
、または、前記走行体と旋回体との間でマイクロ波給電を行うとともに、ワイヤレス給電とワイヤレス通信を行うアンテナを別途設けて給電とは別にデータ通信を行うクレーンであって、前記走行体に、電源装置と、当該走行体を制御するとともに、走行体に含まれる各装置に電力を伝送する下部コントローラと、前記電源装置からの電力とデータ信号を無線で送受信する下部送受信装置を設け、前記旋回体に、当該旋回体を制御するとともに、旋回体に含まれる各装置に電力を伝送する上部コントローラと、前記下部送受信装置との間で電力とデータ信号を無線で送受信する上部送受信装置を設けた。
【0006】
前記下部送受信装置及び前記上部送受信装置は、前記旋回体の旋回中心に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、走行体と旋回体との間で給電と通信を無線で行うことで、スリップリングを不要にでき、スリップリングの使用に付随する課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】クレーンの伸縮ブーム先端部を示す拡大側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から
図3を参照して、クレーン1の全体構成について説明する。クレーン1は、移動式クレーンであり、走行体2と旋回体3を備える。なお、本実施形態では、クレーン1として移動式のクレーンを例に挙げて説明するが、走行体2と旋回体3との間で給電及び通信を行うクレーンであれば良い。
【0010】
走行体2は、車体四隅に配置されるアウトリガ4を備える。アウトリガ4は、走行体2の幅方向両側に油圧によって延伸可能な張り出しビームと地面に垂直な方向に延伸可能な油圧式のジャッキシリンダとから構成されている。走行体2は、アウトリガ4を車両の幅方向に延伸させるとともにジャッキシリンダを接地させることにより、クレーン1を安定的に支持し、作業可能範囲を広げることができる。
【0011】
旋回体3は、旋回台5、伸縮ブーム6、起伏シリンダ7、ジブ8、メインフック9、サブフック10、キャビン11等を備える。
【0012】
旋回台5は、旋回体3を旋回可能に構成するものであり、円環状の軸受けを介して走行体2のフレーム上に設けられる。つまり、旋回台5は、旋回体3を走行体2に対して旋回可能に支持している。旋回台5上に伸縮ブーム6及び運転席を内装するキャビン11が配置される。伸縮ブーム6は、入れ子状に配置される複数のブーム部材から構成され、油圧式の伸縮シリンダによって各ブーム部材を移動させることで、伸縮可能に構成される。起伏シリンダ7は、油圧式のシリンダであり、伸縮することによって、伸縮ブーム6を起伏させるとともにその姿勢を保持する。
【0013】
ジブ8は、伸縮ブーム6の先端に連結されることで、旋回体3の作業領域を拡大するものである。旋回体3は、メインフック9又はサブフック10に吊り荷を係止可能であり、係止した状態でワイヤロープを巻き上げ/巻き下げることで、吊り荷を上下動させることができる。
【0014】
伸縮ブーム6は、吊り荷を吊り上げ可能な状態にワイヤロープを支持する。伸縮ブーム6は、複数のブーム部材を備え、基端から先端に向けてベースブーム21、セカンドブーム22、サードブーム23、フォースブーム24、フィフスブーム25、トップブーム26を順に備える。各ブーム部材は、断面積の大きさの順にその内部に挿入可能な大きさに形成され、基端側から順に入れ子式に挿入されている。
【0015】
トップブーム26の先端には、メインブラケット31とサブブラケット32が回動自在に取り付けられる。メインブラケット31の下方には、過巻防止スイッチ33がぶら下げられている。過巻防止スイッチ33は、ワイヤロープの過巻を検出するための過巻防止装置の一部を構成する検出スイッチであり、メインフック9との当接を検出する。同様に、サブブラケット32の下方には、過巻防止スイッチ34がぶら下げられている。過巻防止スイッチ34は、ワイヤロープの過巻を検出するための過巻防止装置の一部を構成する検出スイッチであり、サブフック10との当接を検出する。
【0016】
また、伸縮ブーム6の先端には、過巻防止装置の他に、伸縮ブーム6に掛かる荷重を検出する荷重検出装置や、伸縮ブーム6から下方の映像を取得する撮影装置等の通信を伴う各種機器類が設けられている。
【0017】
走行体2には、エンジンや、エンジンの状態を検出するセンサ等を含み、走行体2による走行を実現するための各装置50と、各装置50からの検出信号を受信するとともに、各装置50を制御するための下部コントローラ51と、各装置50、下部コントローラ51や、クレーン1の各部に電力を供給する電源装置52と、が設けられる。
【0018】
各装置50は、下部コントローラ51と電気的に接続されており、各装置50で検出した検出信号を下部コントローラ51に送信するとともに、下部コントローラ51から各装置50に制御信号を送信して各装置50の作動を制御する。
【0019】
電源装置52は、下部コントローラ51と接続されており、下部コントローラ51に電力を供給する。電源装置52からの電力は、下部コントローラ51から各装置50に分配される。
【0020】
旋回体3は、旋回台5により走行体2に対して旋回自在に設けられる。旋回体3には、伸縮ブーム6を倒伏、伸縮する油圧シリンダ、ワイヤロープを巻き上げるウインチ、クレーン1を操作するためのレバーやボタン等の操作手段、上述のような各種機器類、伸縮ブーム6の状態を検出するセンサ等を含み、旋回体3によるクレーン作業を実現するための各装置60と、各装置60からの検出信号を受信するとともに、各装置60を制御するための上部コントローラ61と、が設けられる。
【0021】
下部コントローラ51は、電力とデータ信号を無線で送受信する下部送受信装置53を備える。上部コントローラ61は、電力とデータ信号を無線で送受信する上部送受信装置63を備える。下部送受信装置53は上部送受信装置63と相互に電力とデータ信号を送受信可能である。
【0022】
これら送受信装置53・63間のワイヤレス給電手法としては、コイルを利用した電磁誘導方式や磁界共鳴方式、マイクロ波を利用したマイクロ波給電方式等を適宜採用することができる。また、送受信装置53・63間のワイヤレス通信手法としては、電磁誘導方式又は磁界共鳴方式にてワイヤレス給電を行う場合は、電力にデータ信号を重畳させることで、電力とデータ通信を同時に伝送する手法、マイクロ波給電を行う場合は、ワイヤレス給電とワイヤレス通信を行うアンテナを別途設けて、電力とデータ信号を別々に伝送する手法を採用することができる。
【0023】
下部送受信装置53及び上部送受信装置63は、旋回体3の旋回中心に対向するように設けられる。つまり、送受信装置53・63は、旋回台5による旋回体3の旋回によって相対位置が変わらないように配置されている。このように、送受信装置53・63を配置することで、ワイヤレス給電を行う送受信装置53・63の位置関係の変化がなくなり、高い給電効率を維持することが可能である。
【0024】
このように、下部コントローラ51に含まれる下部送受信装置53から、上部コントローラ61に含まれる上部送受信装置63に無線で給電及び通信が行われる。そして、下部コントローラ51から電力の供給を受けた上部コントローラ61は、電力を各装置60に分配して伝送する。
【0025】
以上のように、走行体2と旋回体3との間で、送受信装置53・63を用いて無線給電と無線通信を実現している。これにより、従来旋回台に備えられていたスリップリングによる給電・通信システムや、それに伴う配線が不要となり、スリップリングの摩耗や配線の物理的損傷を避けることが可能である。さらに、スリップリングを通じてやり取りを行うデータ信号数の制限がなくなることで、走行体2に設けられる各装置50や旋回体3に設けられる各装置60の追加、つまり、センサや計測器、装置類の増設を容易に行うことが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1:クレーン、2:走行体、3:旋回体、5:旋回台、51:下部コントローラ、53:下部送受信装置、61:上部コントローラ、63:上部送受信装置