特許第6760207号(P6760207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6760207電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6760207
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/06 20060101AFI20200910BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   G03G5/06 311
   G03G5/06 314B
   G03G5/06 314A
   G03G5/06 315Z
   G03G5/06 312
   G03G5/06 313
   G03G5/05 101
【請求項の数】9
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2017-114931(P2017-114931)
(22)【出願日】2017年6月12日
(65)【公開番号】特開2019-2951(P2019-2951A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2019年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】清水 智文
【審査官】 廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−026997(JP,A)
【文献】 特開2016−180846(JP,A)
【文献】 特開2017−049459(JP,A)
【文献】 特開2017−068014(JP,A)
【文献】 特開2012−155202(JP,A)
【文献】 特開2016−142930(JP,A)
【文献】 特開2000−314970(JP,A)
【文献】 特開2005−179358(JP,A)
【文献】 特開2017−053981(JP,A)
【文献】 特開2016−180845(JP,A)
【文献】 特開2016−142927(JP,A)
【文献】 特開2016−142929(JP,A)
【文献】 特開2005−029559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00−5/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、単層の感光層とを備える電子写真感光体であって、
前記感光層は、電荷発生剤と、電子輸送剤と、ポリカーボネート樹脂と、正孔輸送剤とを含有し、
前記電子輸送剤は、ハロゲン原子を有する化学式(1−E1)、(4−E4)、(4−E5)、又は(5−E6)で表される化合物を含み、
前記正孔輸送剤は、一般式(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)又は(27)で表される化合物を含み、
前記感光層と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの前記炭酸カルシウムの帯電量は、+6.5μC/g以上であり、
45℃における前記感光層のビッカース硬度は、17.0HV以上である、電子写真感光体。
【化1】
【化2】
(前記一般式(20)中、R201、R202、R203及びR204は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、d1、d2、d3及びd4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、
前記一般式(21)中、R211、R212、R213及びR214は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、e1、e2、e3及びe4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、
前記一般式(22)中、R221及びR222は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、
前記一般式(23)中、R231、R232、R233及びR234は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、
前記一般式(24)中、R241、R242、R243及びR244は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、f1、f2、f3及びf4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、
前記一般式(25)中、R251、R252、R253、R254及びR255は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、
前記一般式(26)中、R261、R262及びR263は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、g1、g2及びg3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、R264は、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、
前記一般式(27)中、R271、R272及びR273は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、h1、h2及びh3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表し、R274、R275及びR276は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。)
【請求項2】
前記電子輸送剤は、前記化学式(4−E4)又は(4−E5)で表される化合物を含み、前記正孔輸送剤は、前記一般式(20)で表される化合物を含み、前記一般式(20)で表される化合物は化学式(20−H1)で表される化合物である、請求項に記載の電子写真感光体。
【化3】
【請求項3】
前記電子輸送剤は、前記化学式(5−E6)で表される化合物を含み、前記正孔輸送剤は、前記一般式(20)又は(21)で表される化合物を含み、前記一般式(20)で表される化合物は化学式(20−H1)で表される化合物であり、前記一般式(21)で表される化合物は化学式(21−H2)で表される化合物である、請求項に記載の電子写真感光体。
【化4】
【化5】
【請求項4】
前記電子輸送剤は、前記化学式(1−E1)で表される化合物を含み、前記正孔輸送剤は、前記一般式(25)で表される化合物を含み、前記一般式(25)で表される化合物は、化学式(25−H6)で表される化合物である、請求項に記載の電子写真感光体。
【化6】
【請求項5】
請求項1〜の何れか一項に記載の電子写真感光体を備える、プロセスカートリッジ。
【請求項6】
像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電部と、
帯電された前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する露光部と、
前記静電潜像をトナー像として現像する現像部と、
前記トナー像を前記像担持体から記録媒体へ転写する転写部と
を備える画像形成装置であって、
前記帯電部の帯電極性は、正極性であり、
前記転写部は、前記像担持体の前記表面と前記記録媒体とを接触させながら前記トナー像を前記像担持体から前記記録媒体へ転写し、
前記像担持体は、請求項1〜の何れか一項に記載の電子写真感光体である、画像形成装置。
【請求項7】
前記現像部は、前記像担持体の前記表面と接触しながら、前記静電潜像を前記トナー像として現像する、請求項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記現像部は、前記像担持体の前記表面を清掃する、請求項又はに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記帯電部は、帯電ローラーである、請求項の何れか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、像担持体として電子写真方式の画像形成装置(例えば、プリンター又は複合機)において用いられる。電子写真感光体は、感光層を備える。電子写真感光体としては、例えば、単層型電子写真感光体及び積層型電子写真感光体が用いられる。単層型電子写真感光体は、電荷発生の機能と、電荷輸送の機能とを有する単層の感光層を備える。積層型電子写真感光体は、電荷発生の機能を有する電荷発生層と、電荷輸送の機能を有する電荷輸送層とを含む感光層を備える。
【0003】
特許文献1に記載の多層型感光装置は、電子輸送層を備える。電子輸送層は、例えば、下記化学式で表される電子輸送剤を含有する。
【0004】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−69657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者の検討により、特許文献1に記載の多層型感光装置は、形成画像における白点の発生を抑制する点で不十分であることが判明した。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、形成画像における白点の発生を抑制する電子写真感光体を提供することである。また、本発明の別の目的は、形成画像における白点の発生を抑制するプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子写真感光体は、導電性基体と、単層の感光層とを備える。前記感光層は、電荷発生剤と、電子輸送剤と、ポリカーボネート樹脂と、正孔輸送剤とを含有する。前記電子輸送剤は、ハロゲン原子を有する一般式(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)で表される化合物を含む。前記正孔輸送剤は、一般式(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)又は(27)で表される化合物を含む。前記感光層と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの前記炭酸カルシウムの帯電量は、+6.5μC/g以上である。45℃における前記感光層のビッカース硬度は、17.0HV以上である。
【0009】
【化2】
【0010】
前記一般式(1)中、R1は、1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基、1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、1つ以上のハロゲン原子を有し炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、1つ以上のハロゲン原子を有する複素環基、又は1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表す。前記一般式(2)中、R21及びR22は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R23はハロゲン原子を表す。前記一般式(3)中、R31、R32、R33、R34、R35及びR36は、各々独立に、ハロゲン原子、水素原子、1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数2以上6以下のアルケニル基、1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、1つ以上のハロゲン原子を有してもよい複素環基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基又はアミノ基を表す。但しR31、R32、R33、R34、R35及びR36のうちの少なくとも一は1つ以上のハロゲン原子を有する基又はハロゲン原子表す。Xは酸素原子、硫黄原子又は=C(CN)2を表す。Yは酸素原子又は硫黄原子を表す。前記一般式(4)中、R41及びR42は、各々独立に、1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基、1つ以上のハロゲン原子を有し炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、又は1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数3以上20以下のシクロアルキル基を表す。R43及びR44は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数3以上20以下のシクロアルキル基又は複素環基を表す。b1及びb2は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。前記一般式(5)中、R51及びR52は、各々独立に、1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、1つ以上のハロゲン原子を有してもよく炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有する炭素原子数6以上14以下のアリール基、1つ以上のハロゲン原子を有してもよくベンゾイル基を少なくとも1つ有する炭素原子数6以上14以下のアリール基、1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又は1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基を表す。但しR51及びR52のうち少なくとも一は1つ以上のハロゲン原子を有する基を表す。
【0011】
【化3】
【0012】
前記一般式(20)中、R201、R202、R203及びR204は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。d1、d2、d3及びd4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。前記一般式(21)中、R211、R212、R213及びR214は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。e1、e2、e3及びe4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。前記一般式(22)中、R221及びR222は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。前記一般式(23)中、R231、R232、R233及びR234は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。前記一般式(24)中、R241、R242、R243及びR244は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。f1、f2、f3及びf4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。前記一般式(25)中、R251、R252、R253、R254及びR255は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。前記一般式(26)中、R261、R262及びR263は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。g1、g2及びg3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。R264は、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。前記一般式(27)中、R271、R272及びR273は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。h1、h2及びh3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。R274、R275及びR276は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。
【0013】
本発明のプロセスカートリッジは、上述の電子写真感光体を備える。
【0014】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、帯電部と、露光部と、現像部と、転写部とを備える。前記帯電部は、前記像担持体の表面を帯電させる。前記露光部は、帯電された前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する。前記現像部は、前記静電潜像をトナー像として現像する。前記転写部は、前記トナー像を前記像担持体から記録媒体へ転写する。前記帯電部の帯電極性は、正極性である。前記転写部は、前記像担持体の前記表面と前記記録媒体とを接触させながら前記トナー像を前記像担持体から前記記録媒体へ転写する。前記像担持体は、上述の電子写真感光体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子写真感光体によれば、形成画像における白点の発生を抑制することができる。また、本発明のプロセスカートリッジ及び画像形成装置によれば、このような電子写真感光体を備えることで、形成画像における白点の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、本発明の実施形態に係る電子写真感光体の一例を示す断面図である。
図2】感光層と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量を測定する方法を説明するための図である。
図3】画像形成装置の構成の一例を示す図であり、この画像形成装置は本発明の実施形態に係る電子写真感光体を備える。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
【0018】
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数3以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数6以上10以下のアリール基、炭素原子数3以上20以下のシクロアルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、複素環基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基及び炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は、何ら規定していなければ、各々次の意味である。
【0019】
ハロゲン原子(ハロゲン基)としては、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)及びヨウ素原子(ヨード基)が挙げられる。
【0020】
炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基及び炭素原子数3以上5以下のアルキル基は、各々、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基が挙げられる。炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上6以下である基である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上4以下である基である。炭素原子数1以上3以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上3以下である基である。炭素原子数3以上5以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が3以上5以下である基である。
【0021】
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基及びヘキシル基が挙げられる。
【0022】
炭素原子数6以上14以下のアリール基及び炭素原子数6以上10以下のアリール基の各々は、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インダセニル基、ビフェニレニル基、アセナフチレニル基、アントリル基及びフェナントリル基が挙げられる。炭素原子数6以上10以下のアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基である。
【0023】
炭素原子数3以上20以下のシクロアルキル基及び炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基は、各々、非置換である。炭素原子数3以上20以下のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロオクタデシル基、シクロノナデシル基及びシクロイコシル基が挙げられる。炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基の例は、炭素原子数3以上20以下のシクロアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が3以上10以下である基である。
【0024】
複素環基としては、例えば、5員以上14員以下の複素環基が挙げられる。5員以上14員以下の複素環基としては、例えば、炭素原子以外に1個以上3個以下のヘテロ原子を含む5員又は6員の単環の複素環基;このような単環の複素環が2個縮合した複素環基;このような単環の複素環と、5員又は6員の単環の炭化水素環とが縮合した複素環基;このような単環の複素環が3個縮合した複素環基;このような単環の複素環2個と、5員又は6員の単環の炭化水素環1個とが縮合した複素環基;及びこのような単環の複素環1個と、5員又は6員の単環の炭化水素環2個とが縮合した複素環基が挙げられる。ヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択される1種以上である。5員以上14員以下の複素環基の具体例としては、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、イソインドリル基、クロメニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、プリニル基、プテリジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、4H−キノリジニル基、ナフチリジニル基、ベンゾフラニル基、1,3−ベンゾジオキソリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基及びフェナントロリニル基が挙げられる。
【0025】
炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、非置換である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、例えば、炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。
【0026】
炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は、1つ以上3つ以下の二重結合を有する。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロぺニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基及びヘキサトリニル基が挙げられる。
【0027】
<電子写真感光体>
本実施形態は電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)に関する。本実施形態の感光体は、形成画像における白点の発生を抑制することができる。その理由は、以下のように推測される。
【0028】
本実施形態の感光体が備える感光層は、電子輸送剤として、後述する一般式(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)と記載することがある)を含有する。化合物(1)〜(5)は何れもハロゲン原子を有する。更に、感光層は、正孔輸送剤として、後述する一般式(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)又は(27)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)及び(27)と記載することがある)を含有する。このような所定の電子輸送剤と、所定の正孔輸送剤とを感光層が含有することで、感光層と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量を+6.5μC/g以上とすることができる。また、このような所定の電子輸送剤と、所定の正孔輸送剤とを感光層が含有することで、45℃における感光層のビッカース硬度を17.0HV以上とすることができる。感光層と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量が+6.5μC/g以上であること、及び45℃における感光層のビッカース硬度が17.0HV以上であることの両方を達成することで、形成画像における白点の発生を好適に抑制することができる。
【0029】
次に、図1を参照して、感光体100の構造について説明する。図1は、本実施形態の感光体100の一例を示す断面図である。
【0030】
図1(a)に示すように、感光体100は、例えば、導電性基体101と感光層102とを備える。感光層102は単層である。感光体100は、単層の感光層102を備える単層型電子写真感光体である。
【0031】
図1(b)に示すように、感光体100は、導電性基体101と、感光層102と、中間層103(下引き層)とを備えてもよい。中間層103は、導電性基体101と感光層102との間に設けられる。図1(a)に示すように、感光層102は導電性基体101上に直接設けられてもよい。或いは、図1(b)に示すように、感光層102は導電性基体101上に中間層103を介して設けられてもよい。
【0032】
図1(c)に示すように、感光体100は、導電性基体101と、感光層102と、保護層104とを備えてもよい。保護層104は、感光層102上に設けられる。
【0033】
感光層102の厚さは、感光層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。感光層102の厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0034】
形成画像における白点の発生を抑制するためには、感光層102が、感光体100の最表面層として配置されることが好ましい。
【0035】
以上、図1を参照して、感光体100の構造について説明した。次に、感光体について更に詳細に説明する。
【0036】
<感光層>
感光層は、電荷発生剤と、電子輸送剤と、ポリカーボネート樹脂と、正孔輸送剤とを含有する。感光層は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。
【0037】
(炭酸カルシウムの帯電量)
感光層と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量(以下、炭酸カルシウムの帯電量と記載することがある)は、+6.5μC/g以上である。炭酸カルシウムは、記録媒体の微小成分の一例である紙粉の主成分である。
【0038】
炭酸カルシウムの帯電量が+6.5μC/g未満であると、形成画像に白点が発生する。その理由は、以下のように推測される。炭酸カルシウムの帯電量が+6.5μC/g未満であると、画像形成において記録媒体が感光体と接触して摩擦されたときに、記録媒体の微小成分が十分に正帯電しない。そのため、画像形成の帯電工程で感光体の表面が正極性に帯電される場合に、正帯電が不十分な微小成分が、感光体の表面に電気的に引き寄せられる。これにより、感光体の表面に記録媒体の微小成分が付着し易くなり、形成画像に白点が発生する。
【0039】
形成画像における白点の発生を抑制するためには、炭酸カルシウムの帯電量は、+7.5μC/g以上であることが好ましく、+7.8μC/g以上であることがより好ましく、+8.0μC/g以上であることが更に好ましい。なお、炭酸カルシウムの帯電量の上限としては、感光体の感光層として機能し得る限り特に限定されないが、製造コストの観点から+20.0μC/gが好ましい。
【0040】
以下、図2を参照して、感光層102と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量を測定する方法を説明する。炭酸カルシウムの帯電量は、第一ステップ、第二ステップ、第三ステップ及び第四ステップを行うことにより測定される。第一ステップでは、感光層102を2個準備する。2個の感光層102の一方が第一感光層102aである。感光層102の他方が第二感光層102bである。第一感光層102a及び第二感光層102bは、直径3cmの円形状である。第二ステップでは、0.007gの炭酸カルシウムを、第一感光層102aの上に載せる。これにより、炭酸カルシウムで構成される炭酸カルシウム層24を形成する。続いて、炭酸カルシウム層24上に第二感光層102bを載せる。第三ステップでは、温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境下で、第二感光層102bを固定したまま、回転速度60rpmで60秒間第一感光層102aを回転させる。これにより、第一感光層102aと第二感光層102bとの間で、炭酸カルシウム層24に含まれる炭酸カルシウムを摩擦して炭酸カルシウムを帯電させる。第四ステップでは、帯電させた炭酸カルシウムを、帯電量測定装置を用いて吸引する。吸引された炭酸カルシウムの総電気量Qと質量Mとを帯電量測定装置を用いて測定し、式Q/Mから炭酸カルシウムの帯電量を算出する。なお、炭酸カルシウムの帯電量は、具体的には、実施例に記載の方法で測定される。以上、図2を参照して、感光層102と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量を測定する方法を説明した。
【0041】
炭酸カルシウムの帯電量は、例えば、電子輸送剤の種類、並びに電子輸送剤が有するハロゲン原子の数及びハロゲン原子の種類を変更することにより調整できる。また、炭酸カルシウムの帯電量は、例えば、正孔輸送剤の種類と、電子輸送剤の種類との組み合わせを変更することによっても調整できる。
【0042】
(ビッカース硬度)
45℃における感光層のビッカース硬度は、17.0HV以上である。45℃における感光層のビッカース硬度は、感光層の温度が45℃であるときの感光層のビッカース硬度である。45℃における感光層のビッカース硬度が17.0HV未満であると、形成画像に白点が発生する。その理由は、以下のように推測される。45℃における感光層のビッカース硬度が17.0HV未満であると、画像形成装置の部材が感光体と接触したときに、感光体の感光層に細かな傷等が発生することがある。細かな傷等に記録媒体の微小成分(例えば、紙粉)が入り込むと、入り込んだ微小成分が起点となって、感光体の表面に記録媒体の微小成分が付着する。その結果、形成画像に白点が発生する。
【0043】
形成画像における白点の発生を抑制するためには、45℃における感光層のビッカース硬度は、18.5HV以上であることが好ましく、19.5HV以上であることがより好ましく、20.0HV以上であることが更に好ましい。なお、45℃における感光層のビッカース硬度の上限としては、感光体の感光層として機能し得る限り特に限定されないが、製造コストの観点から25.0HVが好ましい。
【0044】
感光層のビッカース硬度は、日本工業規格(JIS)Z2244に準拠する方法で測定する。なお、感光層のビッカース硬度は、具体的には、実施例に記載の方法で測定される。
【0045】
45℃における感光層のビッカース硬度は、例えば、正孔輸送剤の種類を変更することにより、調整することができる。正孔輸送剤がポリカーボネート樹脂のボイド(空隙)を埋め易い構造であると、感光層の密度が高くなり、感光層のビッカース硬度が高くなると考えられる。また、45℃における感光層のビッカース硬度は、例えば、正孔輸送剤の種類と、電子輸送剤の種類との組み合わせを変更することによっても調整できる。
【0046】
(電子輸送剤)
電子輸送剤は、化合物(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)を含む。化合物(1)〜(5)は、何れもハロゲン原子を有する。化合物(1)〜(5)が有するハロゲン原子は、フッ素原子又は塩素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。以下、化合物(1)〜(5)について説明する。
【0047】
[化合物(1)]
化合物(1)は、下記一般式(1)で表される。
【0048】
【化4】
【0049】
一般式(1)中、R1は、1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基;1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基;1つ以上のハロゲン原子を有し炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;1つ以上のハロゲン原子を有する複素環基;又は1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表す。
【0050】
形成画像における白点の発生を抑制するためには、一般式(1)中、R1は、1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましい。
【0051】
一般式(1)のR1が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数3以上5以下のアルキル基がより好ましく、n−ブチル基が特に好ましい。R1で表される炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、1つ以上のハロゲン原子を有する。R1で表される炭素原子数1以上8以下のアルキル基が有するハロゲン原子は、塩素原子又はフッ素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。R1が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基が有するハロゲン原子の数は、1つ又は2つであることが好ましく、1つであることがより好ましい。
【0052】
化合物(1)としては、化学式(1−E1)で表される化合物(以下、化合物(1−E1)と記載することがある)が好ましい。
【0053】
【化5】
【0054】
化合物(1)は、例えば、下記の反応(r1−1)及び(r1−2)に従って又はこれに準ずる方法によって製造される。これらの反応以外に、必要に応じて適宜な工程が含まれてもよい。反応(r1−1)及び(r1−2)で示す反応式においてR1は、一般式(1)中のR1と同義である。以下、化学式(1A)〜(1D)で表される化合物を、各々、化合物(1A)〜(1D)と記載することがある。
【0055】
【化6】
【0056】
反応(r1−1)では、1モル当量の化合物(1A)と、1モル当量の化合物(1B)とを反応させて、1モル当量の化合物(1C)を得る。反応(r1−1)の反応温度は80℃以上150℃以下であることが好ましい。反応(r1−1)の反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。反応(r1−1)は、触媒の存在下で行われてもよい。触媒としては、例えば、酸触媒が挙げられ、より具体的には、p−トルエンスルホン酸が挙げられる。反応(r1−1)は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、例えば、トルエンが挙げられる。
【0057】
反応(r1−2)では、1モル当量の化合物(1C)と、1モル当量の化合物(1D、マロノニトリル)とを反応させて、1モル当量の化合物(1)を得る。反応(r1−2)の反応温度は40℃以上120℃以下であることが好ましい。反応(r1−2)の反応時間は1時間以上10時間以下であることが好ましい。反応(r1−2)は、触媒の存在下で行われてもよい。触媒としては、例えば、塩基触媒が挙げられ、より具体的には、ピペリジンが挙げられる。反応(r1−2)は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、極性溶媒が挙げられ、より具体的には、メタノールが挙げられる。
【0058】
[化合物(2)]
化合物(2)は、下記一般式(2)で表される。
【0059】
【化7】
【0060】
一般式(2)中、R21及びR22は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R23はハロゲン原子を表す。
【0061】
形成画像における白点の発生を抑制するためには、一般式(2)中、R21及びR22は、各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、R23はハロゲン原子を表すことが好ましい。炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、tert−ブチル基が好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。
【0062】
化合物(2)としては、例えば、化学式(2−E2)で表される化合物(以下、化合物(2−E2)と記載することがある)が好ましい。化合物(2)は、公知の方法を適宜選択することにより、製造することができる。
【0063】
【化8】
【0064】
[化合物(3)]
化合物(3)は、下記一般式(3)で表される。
【0065】
【化9】
【0066】
一般式(3)中、R31、R32、R33、R34、R35及びR36は、各々独立に、ハロゲン原子;水素原子;1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基;1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数2以上6以下のアルケニル基;1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基;1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数7以上20以下のアラルキル基;1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;1つ以上のハロゲン原子を有してもよい複素環基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシル基;カルボキシル基;又はアミノ基を表す。但しR31、R32、R33、R34、R35及びR36のうちの少なくとも一は、1つ以上のハロゲン原子を有する基又はハロゲン原子表す。Xは酸素原子、硫黄原子又は=C(CN)2を表す。Yは酸素原子又は硫黄原子を表す。なお、1つ以上のハロゲン原子を有する基とは、1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基;1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数2以上6以下のアルケニル基;1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基;1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基;1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基;又は1つ以上のハロゲン原子を有する複素環基である。
【0067】
形成画像における白点の発生を抑制するためには、一般式(3)中、R31、R32、R33、R34、R35及びR36は、各々独立に、1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、但しR31、R32、R33、R34、R35及びR36のうちの少なくとも一は1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表し、Xは酸素原子を表し、Yは酸素原子を表すことが好ましい。
【0068】
31、R32、R33、R34、R35及びR36が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。このような炭素原子数6以上14以下のアリール基は、1つ以上のハロゲン原子を有してもよい。炭素原子数6以上14以下のアリール基が有するハロゲン原子としては、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基が有するハロゲン原子の数は、1つ以上3つ以下であることが好ましく、2つであることがより好ましい。
【0069】
31、R32、R33、R34、R35及びR36が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、tert−ブチル基又はイソプロピル基がより好ましい。
【0070】
31、R32、R33、R34、R35及びR36のうちの少なくとも一は、ハロゲン原子を有する基を表す。R31、R32、R33、R34、R35及びR36のうちの一又は二がハロゲン原子を有する基を表すことが好ましく、R31、R32、R33、R34、R35及びR36のうちの一(1つの基)がハロゲン原子を有する基を表すことがより好ましい。
【0071】
化合物(3)としては、化学式(3−E3)で表される化合物(以下、化合物(3−E3)と記載することがある)が好ましい。化合物(3)は、公知の方法を適宜選択することにより、製造することができる。
【0072】
【化10】
【0073】
[化合物(4)]
化合物(4)は、下記一般式(4)で表される。
【0074】
【化11】
【0075】
一般式(4)中、R41及びR42は、各々独立に、1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基;1つ以上のハロゲン原子を有し炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基;又は1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数3以上20以下のシクロアルキル基を表す。R43及びR44は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数3以上20以下のシクロアルキル基又は複素環基を表す。b1及びb2は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。
【0076】
b1が2以上4以下の整数を表す場合、複数のR43は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。b2が2以上4以下の整数を表す場合、複数のR44は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0077】
形成画像における白点の発生を抑制するためには、一般式(4)中、R41及びR42は、各々独立に、1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又は1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表し、b1及びb2は、0を表すことが好ましい。
【0078】
41及びR42が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましく、ブチル基がより好ましく、tert−ブチル基が更に好ましい。炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、1つ以上のハロゲン原子を有する。炭素原子数1以上8以下のアルキル基が有するハロゲン原子としては、塩素原子又はフッ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。炭素原子数1以上8以下のアルキル基が有するハロゲン原子の数は、1つ以上3つ以下であることが好ましく、1つであることがより好ましい。
【0079】
41及びR42が表わす炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基を有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、フェニル基を有する炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、1−フェニルエチル基が更に好ましい。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、1つ以上のハロゲン原子を有する。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基が有するハロゲン原子としては、塩素原子又はフッ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基が有するハロゲン原子の数は、1つ以上3つ以下であることが好ましく、1つであることがより好ましい。なお、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基のアリール部位がハロゲン原子を有していてもよく、アルキル部位がハロゲン原子を有していてもよい。
【0080】
化合物(4)としては、化学式(4−E4)又は(4−E5)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(4−E4)及び(4−E5)と記載することがある)が好ましい。
【0081】
【化12】
【0082】
化合物(4)は、例えば、下記の反応(r4−1)〜(r4−3)に従って又はこれに準ずる方法によって製造される。これらの反応以外に、必要に応じて適宜な工程が含まれてもよい。反応(r4−1)〜(r4−3)で示す化学式(4A)〜(4F)中のR41、R42、R43、R44、b1及びb2は、各々、一般式(4)中のR41、R42、R43、R44、b1及びb2と同義である。以下、化学式(4A)〜(4F)で表される化合物を、各々、化合物(4A)〜(4F)と記載することがある。
【0083】
【化13】
【0084】
反応(r4−1)では、1モル当量の化合物(4A)と、1モル当量の化合物(4B)とを、濃硫酸の存在下で反応させて、1モル当量の化合物(4C)を得る。反応(r4−1)の反応温度は、室温(例えば、25℃)であることが好ましい。反応(r4−1)の反応時間は、1時間以上10時間以下であることが好ましい。反応(r4−1)は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、酢酸が挙げられる。
【0085】
反応(r4−2)は、次の点を変更した以外は反応(r4−1)と同じ方法で行うことができる。1モル当量の化合物(4A)を、1モル当量の化合物(4D)に変更する。1モル当量の化合物(4B)を、1モル当量の化合物(4E)に変更する。その結果、反応(r4−2)では、化合物(4C)の代わりに、化合物(4F)が得られる。
【0086】
反応(r4−3)では、1当量の化合物(4C)と、1当量の化合物(4F)とを、酸化剤の存在下で反応させて、化合物(4)を得る。酸化剤としては、例えば、クロラニルが挙げられる。反応(r4−3)の反応温度は室温(例えば、25℃)であることが好ましい。反応(r4−3)の反応時間は1時間以上10時間以下であることが好ましい。溶媒としては、例えば、クロロホルムが挙げられる。
【0087】
[化合物(5)]
化合物(5)は、下記一般式(5)で表される。
【0088】
【化14】
【0089】
一般式(5)中、R51及びR52は、各々独立に、1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;1つ以上のハロゲン原子を有してもよく炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有する炭素原子数6以上14以下のアリール基;1つ以上のハロゲン原子を有してもよくベンゾイル基を少なくとも1つ有する炭素原子数6以上14以下のアリール基;1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数7以上20以下のアラルキル基;1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1以上8以下のアルキル基;又は1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基を表す。R51及びR52のうち少なくとも一は、1つ以上のハロゲン原子を有する基を表す。なお、1つ以上のハロゲン原子を有する基とは、1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基;1つ以上のハロゲン原子を有し、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有する炭素原子数6以上14以下のアリール基;1つ以上のハロゲン原子を有し、ベンゾイル基を少なくとも1つ有する炭素原子数6以上14以下のアリール基;1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基;1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基;又は1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基である。
【0090】
形成画像における白点の発生を抑制するためには、一般式(5)中、R51及びR52は、各々独立に、1つ以上のハロゲン原子を有してもよく炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有する炭素原子数6以上14以下のアリール基;又は1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表し、但しR51及びR52のうち少なくとも一は、1つ以上のハロゲン原子を有する基を表すことが好ましい。
【0091】
51及びR52が1つ以上のハロゲン原子を有してもよく炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す場合について説明する。R51及びR52が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有する。炭素原子数6以上14以下のアリール基が有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基が有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基の数は、1つ以上3つ以下であることが好ましく、1つ又は2つであることがより好ましく、2つであることが更に好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基は、1つ以上のハロゲン原子を更に有してもよい。炭素原子数6以上14以下のアリール基が有するハロゲン原子としては、塩素原子又はフッ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基が有するハロゲン原子の数は、1つ以上3つ以下であることが好ましく、1つ又は2つであることがより好ましく、2つであることが更に好ましい。
【0092】
51及びR52が1つ以上のハロゲン原子を有してもよい炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表す場合について説明する。R51及びR52が表わす炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基を有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、フェニル基を有する炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、1−フェニルエチル基が更に好ましい。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、1つ以上のハロゲン原子を有してもよい。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基が有するハロゲン原子としては、塩素原子又はフッ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基が有するハロゲン原子の数は、1つ以上3つ以下であることが好ましく、1つ又は2つであることがより好ましく、2つであることが更に好ましい。なお、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基のアリール部位がハロゲン原子を有していてもよく、アルキル部位がハロゲン原子を有していてもよい。
【0093】
51及びR52のうち少なくとも一が、1つ以上のハロゲン原子を有する基を表す。R51及びR52のうち一方が1つ以上のハロゲン原子を有する基を表し、他方がハロゲン原子を有しない基を表すことが好ましい。
【0094】
形成画像における白点の発生を抑制するためには、一般式(5)中、R51は、1つ以上(好ましくは1つ以上3つ以下、より好ましくは1つ又は2つ)のハロゲン原子を有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表し、R52は、少なくとも1つ(好ましくは1つ以上3つ以下、より好ましくは1つ又は2つ)の炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことがより好ましい。
【0095】
化合物(5)としては、化学式(5−E6)で表される化合物(以下、化合物(5−E6)と記載することがある)が好ましい。
【0096】
【化15】
【0097】
化合物(5)は、例えば、下記の反応(r5−1)〜(r5−3)に従って又はこれに準ずる方法によって製造される。これらの反応以外に、必要に応じて適宜な工程が含まれてもよい。反応(r5−1)〜(r5−3)で示す化学式(5A)〜(5E)中のR51及びR52は、各々、一般式(5)中のR51及びR52と同義であり、R53は、アルキル基を表す。以下、化学式(5A)〜(5E)で表される化合物を、各々、化合物(5A)〜(5E)と記載することがある。
【0098】
【化16】
【0099】
反応(r5−1)では、1モル当量の化合物(5A)と、1モル当量の化合物(5B)とを、塩基の存在下で反応させて、1モル当量の化合物(5C)を得る。反応(r5−1)の反応温度は、80℃以上150℃以下であることが好ましい。反応(r5−1)の反応時間は、1時間以上8時間以下であることが好ましい。反応(r5−1)は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、ジオキサンが挙げられる。化合物(5C)の収率を向上させる観点から、塩基の求核性は低いことが好ましい。このような塩基としては、例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)が挙げられる。
【0100】
反応(r5−2)では、1モル当量の化合物(5C)を、酸の存在下で反応させて、1モル当量の化合物(5D)を得る。反応(r5−2)では、化合物(5C)のエステルが酸の存在下で加水分解し、ジカルボン酸となった後、ジカルボン酸が閉環して無水カルボン酸となる。その結果、化合物(5D)が生成する。反応(r5−2)の反応時間は、5時間以上30時間以下であることが好ましい。反応(r5−2)の反応温度は、70℃以上150℃以下であることが好ましい。酸としては、例えば、トリフルオロ酢酸が好ましい。酸は、溶媒として機能してもよい。
【0101】
反応(r5−3)では、1モル当量の化合物(5D)と、1モル当量の化合物(5E)とを、塩基の存在下で反応させて、1モル当量の化合物(5)を得る。反応(r5−3)の反応温度は、80℃以上150℃以下であることが好ましい。反応(r5−3)の反応時間は、1時間以上8時間以下であることが好ましい。反応(r5−3)は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、ジオキサンが挙げられる。化合物(5)の収率を向上させる観点から、塩基の求核性は低いことが好ましい。このような塩基としては、例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)が挙げられる。
【0102】
形成画像における白点の発生を好適に抑制するための一態様において、電子輸送剤としては、化合物(1)、(4)又は(5)が好ましく、化合物(1−E1)、(4−E4)、(4−E5)又は(5−E6)がより好ましい。
【0103】
形成画像における白点の発生を特に好適に抑制するためには、化合物(1)、(4)及び(5)のうち、電子輸送剤としては、化合物(4)が好ましく、化合物(4−E4)又は(4−E5)がより好ましい。形成画像における白点の発生を好適に抑制するためには、化合物(1)、(4)及び(5)のうち、電子輸送剤としては、化合物(5)も好ましく、化合物(5−E6)もより好ましい。
【0104】
形成画像における白点の発生を抑制しつつ、感光体の感度特性を特に向上させるためには、電子輸送剤としては、化合物(2)が好ましく、化合物(2−E2)がより好ましい。
【0105】
感光層は、電子輸送剤として、化合物(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)の1種のみを含有してもよい。また、感光層は、電子輸送剤として、化合物(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)の2種以上を含有してもよい。また、感光層は、化合物(1)〜(5)に加えて、化合物(1)〜(5)以外の電子輸送剤(以下、その他の電子輸送剤と記載することがある)を更に含有してもよい。
【0106】
その他の電子輸送剤の例としては、キノン化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸及びジブロモ無水マレイン酸であって、化合物(1)〜(5)以外のものが挙げられる。キノン化合物としては、例えば、ジフェノキノン化合物、アゾキノン化合物、アントラキノン化合物、ナフトキノン化合物、ニトロアントラキノン化合物及びジニトロアントラキノン化合物が挙げられる。その他の電子輸送剤の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
電子輸送剤の含有量は、100質量部のバインダー樹脂に対して、20質量部以上40質量部以下であることが好ましい。100質量部のバインダー樹脂に対して電子輸送剤の含有量が20質量部以上であると、感光体の感度特性を向上させ易い。100質量部のバインダー樹脂に対して電子輸送剤の含有量が40質量部以下であると、感光層を形成するための溶剤に電子輸送剤が溶解し易く、均一な感光層を形成し易くなる。
【0108】
(バインダー樹脂)
感光層は、ポリカーボネート樹脂を含有する。ポリカーボネート樹脂は、バインダー樹脂として、感光層に含有される。ポリカーボネート樹脂の例としては、ビスフェノールZC型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂及びビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂は、下記化学式(10)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂である。以下、化学式(10)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂を、ポリカーボネート樹脂(10)と記載することがある。
【0109】
【化17】
【0110】
ポリカーボネート樹脂の1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。感光層は、バインダー樹脂として、ポリカーボネート樹脂のみを含有してもよい。また、感光層は、バインダー樹脂として、ポリカーボネート樹脂に加えて、ポリカーボネート樹脂以外のバインダー樹脂(以下、その他のバインダー樹脂と記載することがある)を更に含有してもよい。その他のバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂及びメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ化合物のアクリル酸付加物及びウレタン化合物のアクリル酸付加物が挙げられる。その他のバインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0111】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤は、化合物(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)又は(27)を含む。以下、化合物(20)〜(27)について説明する。
【0112】
[化合物(20)]
化合物(20)は、下記一般式(20)で表される。
【0113】
【化18】
【0114】
一般式(20)中、R201、R202、R203及びR204は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。d1、d2、d3及びd4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0115】
d1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR201は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。d2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR202は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。d3が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR203は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。d4が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR204は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0116】
201、R202、R203及びR204が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。d1、d2、d3及びd4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。d1及びd2は1を表し、d3及びd4は、0を表すことがより好ましい。
【0117】
化合物(20)の好適な例は、下記化学式(20−H1)で表される化合物(以下、化合物(20−H1)と記載することがある)である。
【0118】
【化19】
【0119】
[化合物(21)]
化合物(21)は、下記一般式(21)で表される。
【0120】
【化20】
【0121】
一般式(21)中、R211、R212、R213及びR214は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。e1、e2、e3及びe4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0122】
e1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR211は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。e2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR212は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。e3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR213は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。e4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR214は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0123】
211、R212、R213及びR214が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。e1、e2、e3及びe4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。e1及びe3は1を表し、e2及びe4は、0を表すことがより好ましい。
【0124】
化合物(21)の好適な例は、下記化学式(21−H2)で表される化合物(以下、化合物(21−H2)と記載することがある)である。
【0125】
【化21】
【0126】
[化合物(22)]
化合物(22)は、下記一般式(22)で表される。
【0127】
【化22】
【0128】
一般式(22)中、R221及びR222は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。
【0129】
221及びR222は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましい。R221及びR222は、各々、メチル基を表すことが更に好ましい。
【0130】
化合物(22)の好適な例は、下記化学式(22−H3)で表される化合物(以下、化合物(22−H3)と記載することがある)である。
【0131】
【化23】
【0132】
[化合物(23)]
化合物(23)は、下記一般式(23)で表される。
【0133】
【化24】
【0134】
一般式(23)中、R231、R232、R233及びR234は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。
【0135】
231、R232、R233及びR234は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましい。R231、R232、R233及びR234は、各々、メチル基を表すことが更に好ましい。
【0136】
化合物(23)の好適な例は、下記化学式(23−H4)で表される化合物(以下、化合物(23−H4)と記載することがある)である。
【0137】
【化25】
【0138】
[化合物(24)]
化合物(24)は、下記一般式(24)で表される。
【0139】
【化26】
【0140】
一般式(24)中、R241、R242、R243及びR244は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。f1、f2、f3及びf4は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0141】
f1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR241は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。f2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR242は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。f3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR243は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。f4が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR244は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0142】
241、R242、R243及びR244が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。f1、f2、f3及びf4は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。f1及びf2が各々1を表し、f3及びf4が各々0を表すことがより好ましい。
【0143】
化合物(24)の好適な例は、下記化学式(24−H5)で表される化合物(以下、化合物(24−H5)と記載することがある)である。
【0144】
【化27】
【0145】
[化合物(25)]
化合物(25)は、下記一般式(25)で表される。
【0146】
【化28】
【0147】
一般式(25)中、R251、R252、R253、R254及びR255は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。
【0148】
251、R252、R253、R254及びR255が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0149】
化合物(25)の好適な例は、下記化学式(25−H6)で表される化合物(以下、化合物(25−H6)と記載することがある)である。
【0150】
【化29】
【0151】
[化合物(26)]
化合物(26)は、下記一般式(26)で表される。
【0152】
【化30】
【0153】
一般式(26)中、R261、R262及びR263は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。g1、g2及びg3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。R264は、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。
【0154】
g1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR261は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。g2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR262は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。g3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR263は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0155】
261、R262、R263及びR264が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。g1、g2及びg3は、各々、1又は0を表すことが好ましく、0を表すことがより好ましい。R264は、水素原子を表すことが好ましい。
【0156】
化合物(26)の好適な例は、下記化学式(26−H7)で表される化合物(以下、化合物(26−H7)と記載することがある)である。
【0157】
【化31】
【0158】
[化合物(27)]
化合物(27)は、下記一般式(27)で表される。
【0159】
【化32】
【0160】
一般式(27)中、R271、R272及びR273は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。h1、h2及びh3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。R274、R275及びR276は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。
【0161】
h1が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR271は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。h2が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR272は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。h3が2以上5以下の整数を表すとき、複数のR273は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0162】
271、R272及びR273が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。h1、h2及びh3は、各々独立に、0又は1を表すことが好ましい。R274、R275及びR276が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0163】
化合物(27)の好適な例は、下記化学式(27−H8)又は(27−H9)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(27−H8)及び(27−H9)と記載することがある)である。
【0164】
【化33】
【0165】
形成画像における白点の発生を抑制するためには、正孔輸送剤としては、化合物(20)、(22)、(23)、(25)又は(27)が好ましく、化合物(20−H1)、(22−H3)、(23−H4)、(25−H6)又は(27−H8)がより好ましい。
【0166】
形成画像における白点の発生を抑制しつつ、感光体の感度特性を特に向上させるためには、正孔輸送剤としては、化合物(27)が好ましく、化合物(27−H9)がより好ましい。
【0167】
感光層は、正孔輸送剤として、化合物(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)及び(27)の1種のみを含有してもよい。また、感光層は、正孔輸送剤として、化合物(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)及び(27)の2種以上を含有してもよい。また感光層は、化合物(20)〜(27)に加えて、化合物(20)〜(27)以外の正孔輸送剤(以下、その他の正孔輸送剤と記載することがある)を更に含有してもよい。
【0168】
その他の正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体又はジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物及びトリアゾール系化合物であって、化合物(20)〜(27)以外のものが挙げられる。その他の正孔輸送剤の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0169】
感光層に含有される正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0170】
(材料の組み合わせ)
形成画像における白点の発生を抑制するためには、電子輸送剤及び正孔輸送剤が、次に示す組み合わせであることが好ましい。同じ理由から、電子輸送剤及び正孔輸送剤が次に示す組み合わせであり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることがより好ましい。
電子輸送剤が化合物(2)であり、正孔輸送剤が化合物(20)であるか;
電子輸送剤が化合物(2)であり、正孔輸送剤が化合物(21)であるか;
電子輸送剤が化合物(2)であり、正孔輸送剤が化合物(22)であるか;
電子輸送剤が化合物(2)であり、正孔輸送剤が化合物(23)であるか;
電子輸送剤が化合物(2)であり、正孔輸送剤が化合物(24)であるか;
電子輸送剤が化合物(2)であり、正孔輸送剤が化合物(25)であるか;
電子輸送剤が化合物(2)であり、正孔輸送剤が化合物(26)であるか;
電子輸送剤が化合物(2)であり、正孔輸送剤が化合物(27)であるか;
電子輸送剤が化合物(1)であり、正孔輸送剤が化合物(25)であるか;
電子輸送剤が化合物(3)であり、正孔輸送剤が化合物(25)であるか;
電子輸送剤が化合物(4)であり、正孔輸送剤が化合物(25)であるか;
電子輸送剤が化合物(1)であり、正孔輸送剤が化合物(20)であるか;
電子輸送剤が化合物(3)であり、正孔輸送剤が化合物(20)であるか;
電子輸送剤が化合物(4)であり、正孔輸送剤が化合物(20)であるか;
電子輸送剤が化合物(5)であり、正孔輸送剤が化合物(20)であるか;又は
電子輸送剤が化合物(5)であり、正孔輸送剤が化合物(21)である。
【0171】
形成画像における白点の発生を抑制するためには、電子輸送剤及び正孔輸送剤が、次に示す組み合わせであることが好ましい。同じ理由から、電子輸送剤及び正孔輸送剤が次に示す組み合わせであり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることがより好ましい。
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか;
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(21−H2)であるか;
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(22−H3)であるか;
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(23−H4)であるか;
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(24−H5)であるか;
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であるか;
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(26−H7)であるか;
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(27−H8)であるか;
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(27−H9)であるか;
電子輸送剤が化合物(1−E1)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であるか;
電子輸送剤が化合物(3−E3)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であるか;
電子輸送剤が化合物(4−E4)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であるか;
電子輸送剤が化合物(1−E1)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか;
電子輸送剤が化合物(3−E3)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか;
電子輸送剤が化合物(4−E4)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか;
電子輸送剤が化合物(4−E5)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか;
電子輸送剤が化合物(5−E6)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか;又は
電子輸送剤が化合物(5−E6)であり、正孔輸送剤が化合物(21−H2)である。
【0172】
形成画像における白点の発生を更に抑制するためには、電子輸送剤及び正孔輸送剤が、次に示す組み合わせであることが好ましい。同じ理由から、電子輸送剤及び正孔輸送剤が次に示す組み合わせであり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることがより好ましい。
電子輸送剤が化合物(1)であり、正孔輸送剤が化合物(25)であるか;
電子輸送剤が化合物(4)であり、正孔輸送剤が化合物(25)であるか;
電子輸送剤が化合物(1)であり、正孔輸送剤が化合物(20)であるか;
電子輸送剤が化合物(4)であり、正孔輸送剤が化合物(20)であるか;
電子輸送剤が化合物(5)であり、正孔輸送剤が化合物(20)であるか;又は
電子輸送剤が化合物(5)であり、正孔輸送剤が化合物(21−H2)である。
【0173】
形成画像における白点の発生を更に抑制するためには、電子輸送剤及び正孔輸送剤が、次に示す組み合わせであることが好ましい。同じ理由から、電子輸送剤及び正孔輸送剤が次に示す組み合わせであり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることがより好ましい。
電子輸送剤が化合物(1−E1)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であるか;
電子輸送剤が化合物(4−E4)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であるか;
電子輸送剤が化合物(1−E1)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか;
電子輸送剤が化合物(4−E4)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか;
電子輸送剤が化合物(4−E5)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか;
電子輸送剤が化合物(5−E6)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか;又は
電子輸送剤が化合物(5−E6)であり、正孔輸送剤が化合物(21−H2)である。
【0174】
形成画像における白点の発生を特に抑制するためには、電子輸送剤が化合物(4)であり、正孔輸送剤が化合物(25)であることが好ましく、電子輸送剤が化合物(4)であり、正孔輸送剤が化合物(25)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることがより好ましい。同じ理由から、電子輸送剤が化合物(4−E4)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であることが好ましく、電子輸送剤が化合物(4−E4)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることがより好ましい。
【0175】
形成画像における白点の発生を特に抑制するためには、電子輸送剤が化合物(4)であり、正孔輸送剤が化合物(20)であることも好ましく、電子輸送剤が化合物(4)であり、正孔輸送剤が化合物(20)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることもより好ましい。同じ理由から、電子輸送剤が化合物(4−E4)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか;又は電子輸送剤が化合物(4−E5)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であることも好ましく、電子輸送剤が化合物(4−E4)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であるか;又は電子輸送剤が化合物(4−E5)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることもより好ましい。
【0176】
形成画像における白点の発生を特に抑制するためには、電子輸送剤が化合物(5)であり、正孔輸送剤が化合物(20)又は(21)であることも好ましく、電子輸送剤が化合物(5)であり、正孔輸送剤が化合物(20)又は(21)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることもより好ましい。同じ理由から、電子輸送剤が化合物(5−E6)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であることも好ましく、電子輸送剤が化合物(5−E6)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることもより好ましい。同じ理由から、電子輸送剤が化合物(5−E6)であり、正孔輸送剤が化合物(21−H2)であることも好ましく、電子輸送剤が化合物(5−E6)であり、正孔輸送剤が化合物(21−H2)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることもより好ましい。
【0177】
形成画像における白点の発生を特に抑制するためには、電子輸送剤が化合物(1)であり、正孔輸送剤が化合物(25)であることも好ましく、電子輸送剤が化合物(1)であり、正孔輸送剤が化合物(25)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることもより好ましい。同じ理由から、電子輸送剤が化合物(1)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であることも好ましく、電子輸送剤が化合物(1)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることもより好ましい。同じ理由から、電子輸送剤が化合物(1−E1)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であることも好ましく、電子輸送剤が化合物(1−E1)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることもより好ましい。
【0178】
形成画像における白点の発生を抑制しつつ、感光体の感度特性を特に向上させるためには、電子輸送剤が化合物(2)であり、正孔輸送剤が化合物(27)であることが好ましく、電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(27−H9)であることがより好ましい。同じ理由から、電子輸送剤が化合物(2)であり、正孔輸送剤が化合物(27)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることが好ましく、電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(27−H9)であり、バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(10)であることがより好ましい。
【0179】
なお、上述した電子輸送剤及び正孔輸送剤の組み合わせのうち、電子輸送剤及び正孔輸送剤を、例えば次に示す組み合わせとすることもできる。また、電子輸送剤及び正孔輸送剤を次に示す組み合わせとし、バインダー樹脂をポリカーボネート樹脂(10)とすることもできる。
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(21−H2)であるか;
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(22−H3)であるか;
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(23−H4)であるか;
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(24−H5)であるか;
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(26−H7)であるか;
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(27−H8)であるか;
電子輸送剤が化合物(2−E2)であり、正孔輸送剤が化合物(27−H9)であるか;
電子輸送剤が化合物(1−E1)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であるか;
電子輸送剤が化合物(3−E3)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であるか;
電子輸送剤が化合物(4−E4)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であるか;
電子輸送剤が化合物(3−E3)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか;
電子輸送剤が化合物(4−E4)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか;
電子輸送剤が化合物(4−E5)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか、又は
電子輸送剤が化合物(5−E6)であり、正孔輸送剤が化合物(21−H2)である。
【0180】
また、上述した電子輸送剤及び正孔輸送剤の組み合わせのうち、電子輸送剤及び正孔輸送剤を、例えば次に示す組み合わせとすることもできる。また、電子輸送剤及び正孔輸送剤を次に示す組み合わせとし、バインダー樹脂をポリカーボネート樹脂(10)とすることもできる。
電子輸送剤が化合物(1−E1)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であるか;
電子輸送剤が化合物(4−E4)であり、正孔輸送剤が化合物(25−H6)であるか;
電子輸送剤が化合物(4−E4)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか;
電子輸送剤が化合物(4−E5)であり、正孔輸送剤が化合物(20−H1)であるか;又は
電子輸送剤が化合物(5−E6)であり、正孔輸送剤が化合物(21−H2)である。
【0181】
(電荷発生剤)
電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム又はアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料及びキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0182】
フタロシアニン系顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン及び金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。無金属フタロシアニンは、例えば、化学式(CGM2)で表される。チタニルフタロシアニンは、例えば、化学式(CGM1)で表される。
【0183】
【化34】
【0184】
【化35】
【0185】
フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、α型、β型、Y型、V型又はII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型及びY型結晶(以下、それぞれをα型、β型及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。
【0186】
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましい。
【0187】
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。
【0188】
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法の一例について説明する。試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。
【0189】
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が好適に用いられる。
【0190】
電荷発生剤の含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上4.5質量部以下であることが特に好ましい。
【0191】
(添加剤)
添加剤としては、例えば、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤又は紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤及びレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール(例えば、ジ(tert−ブチル)p−クレゾール)、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びこれらの誘導体、有機硫黄化合物並びに有機燐化合物が挙げられる。
【0192】
<導電性基体>
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で形成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で形成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼及び真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
【0193】
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
【0194】
<中間層>
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
【0195】
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄又は銅)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ又は酸化亜鉛)の粒子及び非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0196】
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる限り、特に限定されない。中間層は、添加剤を含有してもよい。中間層に含有される添加剤の例は、感光層に含有される添加剤の例と同じである。
【0197】
<感光体の製造方法>
感光体は、例えば、以下のように製造される。感光体は、感光層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって製造される。感光層用塗布液は、電荷発生剤、電子輸送剤、バインダー樹脂、正孔輸送剤及び必要に応じて添加される成分(例えば、添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより製造される。
【0198】
感光層用塗布液に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール)、脂肪族炭化水素(例えば、n−ヘキサン、オクタン又はシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素又はクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン)、エステル類(例えば、酢酸エチル又は酢酸メチル)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。感光体の製造時の作業性を向上させるためには、溶剤として非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
【0199】
塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散機を用いることができる。
【0200】
感光層用塗布液は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
【0201】
感光層用塗布液を塗布する方法としては、塗布液を導電性基体上に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ブレードコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法及びバーコート法が挙げられる。
【0202】
感光層用塗布液を乾燥する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る限り、特に限定されない。例えば、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理温度は、例えば、40℃以上150℃以下である。熱処理時間は、例えば、3分間以上120分間以下である。
【0203】
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて、中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程では、公知の方法が適宜選択される。
【0204】
<画像形成装置>
以下、本実施形態の感光体を備える画像形成装置について説明する。以下、本実施形態の感光体を備える画像形成装置の一態様として、タンデム方式のカラー画像形成装置を例に挙げて、図3を参照しながら説明する。
【0205】
図3に示す画像形成装置110は、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dと、転写ベルト50と、定着部52とを備える。以下、区別する必要がない場合には、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dの各々を、画像形成ユニット40と記載する。
【0206】
画像形成ユニット40は、像担持体と、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とを備える。像担持体は、本実施形態の感光体100である。画像形成ユニット40の中央位置に、感光体100が設けられる。感光体100は、矢符方向(反時計回り)に回転可能に設けられる。感光体100の周囲には、帯電部42を基準として感光体100の回転方向の上流側から順に、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とが設けられる。なお、画像形成ユニット40には、クリーニング部又は除電部(不図示)が更に備えられてもよい。
【0207】
画像形成ユニット40a〜40dの各々によって、転写ベルト50上の記録媒体Pに、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色)のトナー像が順に重ねられる。
【0208】
帯電部42は、感光体100の表面(例えば、周面)を帯電させる。帯電部42の帯電極性は、正極性である。即ち、帯電部42は、感光体100の表面を正極性に帯電する。本実施形態の感光体100と記録媒体Pとが接触して摩擦される場合に、記録媒体Pの微小成分(例えば、紙粉)は所望の値以上の正極性に帯電する。帯電部42によって感光体100の表面が正極性に帯電されると、感光体100の表面と、正極性に摩擦帯電される記録媒体Pの微小成分とが、電気的に反発する。その結果、記録媒体Pの微小成分が感光体100の表面に付着し難くなり、形成画像における白点の発生を好適に抑制することができる。
【0209】
帯電部42は、帯電ローラーである。帯電ローラーは、感光体100の表面と接触しながら感光体100の表面を帯電する。画像形成装置110は、接触帯電方式を採用している。接触帯電方式を採用する画像形成装置においては、通常、接触した帯電ローラーによって記録媒体の微小成分が感光体の表面に押圧され、感光体の表面に微小成分が固着し易い。しかし、画像形成装置110は、本実施形態の感光体100を備える。本実施形態の感光体100は、微小成分の付着により引き起こされる白点の発生を抑制することができる。このため、画像形成装置110は、帯電部42として帯電ローラーを備える場合であっても、微小成分が感光体100の表面に固着し難く、形成画像における白点の発生を抑制することができる。
【0210】
帯電ローラー以外の接触帯電方式の帯電部としては、例えば、帯電ブラシが挙げられる。なお、帯電部は非接触方式であってもよい。非接触方式の帯電部としては、例えば、コロトロン帯電器及びスコロトロン帯電器が挙げられる。
【0211】
露光部44は、帯電された感光体100の表面を露光する。これにより、感光体100の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置110に入力された画像データに基づいて形成される。
【0212】
現像部46は、感光体100の表面にトナーを供給し、静電潜像をトナー像として現像する。感光体100は、トナー像を担持する像担持体である。トナーは、一成分現像剤として用いられてもよい。或いは、トナーと所望のキャリアとを混合して、トナーを二成分現像剤において用いてもよい。トナーが一成分現像剤として用いられる場合、現像部46は、感光体100に形成された静電潜像に一成分現像剤であるトナーを供給する。トナーが二成分現像剤において用いられる場合、現像部46は、感光体100に形成された静電潜像に、二成分現像剤に含まれるトナーとキャリアとのうちトナーを供給する。
【0213】
現像部46は、感光体100の表面と接触しながら静電潜像をトナー像として現像することができる。即ち、画像形成装置110は、接触現像方式を採用することができる。接触現像方式を採用する画像形成装置においては、通常、接触した現像部によって記録媒体の微小成分が感光体の表面に押圧され、感光体の表面に微小成分が固着し易い。しかし、画像形成装置110は、本実施形態の感光体100を備える。本実施形態の感光体100は、記録媒体Pの微小成分の付着により引き起こされる白点の発生を抑制することができる。このため、画像形成装置110は、接触現像方式の現像部46を備える場合であっても、微小成分が感光体100の表面に固着し難く、形成画像における白点の発生を抑制することができる。
【0214】
現像部46は、感光体100の表面を清掃することができる。即ち、画像形成装置110は、ブレードクリーナーレス方式を採用することができる。この場合、現像部46は、感光体100の表面の残留成分を除去することができる。通常、クリーニング部(例えば、クリーニングブレード)を備えた画像形成装置は、像担持体の表面の残留成分がクリーニング部により掻き取られる。しかし、ブレードクリーナーレス方式の画像形成装置の場合は、像担持体の表面の残留成分が掻き取られない。そのため、ブレードクリーナーレス方式を採用する画像形成装置では、通常、像担持体の表面に残留成分が残り易い。しかし、本実施形態の感光体100は、記録媒体Pの微小成分(例えば、紙粉)の付着により引き起こされる白点の発生を抑制することができる。よって、このような感光体100を備える画像形成装置110は、ブレードクリーナーレス方式を採用した場合であっても、感光体100の表面に残留成分、特に記録媒体Pの微小成分が残り難い。その結果、画像形成装置110は、形成される画像における白点の発生を抑制することができる。
【0215】
現像部46が現像しつつ感光体100の表面を効率的に清掃するためには、以下に示す条件(a)及び条件(b)を満たすことが好ましい。
条件(a):接触現像方式を採用し、感光体100と現像部46との間に周速(回転速度)差が設けられる。
条件(b):感光体100の表面電位と、現像バイアスの電位とが以下の数式(b−1)及び数式(b−2)を満たす。
0(V)<現像バイアスの電位(V)<感光体100の未露光領域の表面電位(V)・・・(b−1)
現像バイアスの電位(V)>感光体100の露光領域の表面電位(V)>0(V)・・・(b−2)
【0216】
条件(a)に示す接触現像方式を採用し、感光体100と現像部46との間に周速差が設けられていると、感光体100の表面は現像部46と接触し、感光体100の表面の付着成分が現像部46との摩擦により除去される。現像部46の周速は、感光体100の周速よりも速いことが好ましい。
【0217】
条件(b)では、現像方式が反転現像方式である場合を想定している。単層型感光体である感光体100の感度特性を向上させるためには、トナーの帯電極性、感光体100の未露光領域の表面電位、感光体100の露光領域の表面電位及び現像バイアスの電位が何れも正極性であることが好ましい。なお、感光体100の未露光領域の表面電位及び露光領域の表面電位は、転写部48がトナー像を感光体100から記録媒体Pへ転写した後、帯電部42が次周回の感光体100の表面を帯電する前に測定される。
【0218】
条件(b)の数式(b−1)を満たすと、感光体100に残留したトナー(以下、残留トナーと記載することがある)と感光体100の未露光領域との間に作用する静電的斥力が、残留トナーと現像部46との間に作用する静電的斥力に比べ大きくなる。このため、感光体100の未露光領域の残留トナーは、感光体100の表面から現像部46へと移動し、回収される。
【0219】
条件(b)の数式(b−2)を満たすと、残留トナーと感光体100の露光領域との間に作用する静電的斥力が、残留トナーと現像部46との間に作用する静電的斥力に比べ小さくなる。このため、感光体100の露光領域の残留トナーは、感光体100の表面に保持される。感光体100の露光領域に保持されたトナーは、そのまま画像形成に使用される。
【0220】
転写ベルト50は、感光体100と転写部48との間に記録媒体Pを搬送する。転写ベルト50は、無端状のベルトである。転写ベルト50は、矢符方向(時計回り)に回転可能に設けられる。
【0221】
転写部48は、現像部46によって現像されたトナー像を、感光体100の表面から記録媒体Pへ転写する。転写部48は、感光体100の表面と記録媒体Pとを接触させながら、トナー像を感光体100の表面から記録媒体Pへ転写する。即ち、画像形成装置110は、直接転写方式を採用している。直接転写方式を採用する画像形成装置においては、通常、感光体と記録媒体とが接触するために、感光体の表面に記録媒体の微小成分(例えば、紙粉)が付着し易い。しかし、本実施形態の感光体100によれば、記録媒体Pの微小成分が感光体100の表面に付着することを抑制することができる。その結果、形成画像における白点の発生を好適に抑制することができる。転写部48としては、例えば、転写ローラーが挙げられる。
【0222】
定着部52は、転写部48によって記録媒体Pに転写された未定着のトナー像を、加熱及び/又は加圧する。定着部52は、例えば、加熱ローラー及び/又は加圧ローラーである。トナー像を加熱及び/又は加圧することにより、記録媒体Pにトナー像が定着する。その結果、記録媒体Pに画像が形成される。
【0223】
以上、画像形成装置の一例について説明したが、画像形成装置は、上述した画像形成装置110に限定されない。上述した画像形成装置110はカラー画像形成装置であったが、画像形成装置はモノクロ画像形成装置であってもよい。この場合、画像形成装置は、例えば画像形成ユニットを1つだけ備えていればよい。また、上述した画像形成装置110はタンデム方式を採用していたが、画像形成装置は例えばロータリー方式を採用してもよい。
【0224】
<プロセスカートリッジ>
次に、図3を引き続き参照して、本実施形態の感光体100を備えるプロセスカートリッジの一例について説明する。プロセスカートリッジは、画像形成用のカートリッジである。プロセスカートリッジは、画像形成ユニット40a〜40dの各々に相当する。プロセスカートリッジは、感光体100を備える。プロセスカートリッジは、感光体100に加えて、帯電部42、露光部44、現像部46及び転写部48からなる群より選択される少なくとも1つを更に備えていてもよい。プロセスカートリッジには、クリーニング部(不図示)及び除電部(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。プロセスカートリッジは、画像形成装置110に対して着脱自在に設計される。そのため、プロセスカートリッジは取り扱いが容易であり、感光体100の感度特性等が劣化した場合に、感光体100を含めて容易かつ迅速に交換することができる。以上、図3を参照して、本実施形態の感光体100を備えるプロセスカートリッジについて説明した。
【0225】
以上説明した本実施形態の感光体は、形成画像における白点の発生を抑制することができる。また、プロセスカートリッジ及び画像形成装置は、本実施形態の感光体を備えることで、形成画像における白点の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0226】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0227】
<感光層を形成するための材料>
感光体の感光層を形成するための材料として、以下の電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤及びバインダー樹脂を準備した。
【0228】
(電荷発生剤)
電荷発生剤として、X型無金属フタロシアニンを準備した。X型無金属フタロシアニンは、実施形態で述べた化学式(CGM2)で表され、X型の結晶構造を有する無金属フタロシアニンであった。
【0229】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤として、実施形態で述べた化合物(20−H1)、(21−H2)、(22−H3)、(23−H4)、(24−H5)、(25−H6)、(26−H7)、(27−H8)及び(27−H9)を準備した。また、比較例で使用する正孔輸送剤として、下記化学式(H10)〜(H13)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(H10)〜(H13)と記載する)を準備した。
【0230】
【化36】
【0231】
(電子輸送剤)
電子輸送剤として、実施形態で述べた化合物(1−E1)、(2−E2)、(3−E3)、(4−E4)、(4−E5)及び(5−E6)を準備した。また、比較例で使用する電子輸送剤として、下記化学式(E7)〜(E11)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(E7)〜(E11)と記載する)を準備した。
【0232】
【化37】
【0233】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂として、実施形態で述べたポリカーボネート樹脂(10)を準備した。ポリカーボネート樹脂(10)の粘度平均分子量は、33000であった。
【0234】
<感光体の製造>
感光層を形成するための材料を用いて、感光体(A−1)〜(A−18)及び(B−1)〜(B−9)を製造した。
【0235】
(感光体(A−1)の製造)
容器内に、電荷発生剤としてのX型無金属フタロシアニン2質量部、正孔輸送剤としての化合物(20−H1)50質量部、電子輸送剤としての化合物(2−E2)30質量部、バインダー樹脂としてのポリカーボネート樹脂(10)100質量部及び溶剤としてのテトラヒドロフラン600質量部を投入した。容器の内容物を、ボールミルを用いて12時間混合して、溶剤に材料を分散させた。これにより、感光層用塗布液を得た。感光層用塗布液を、導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長238.5mm)上に、ディップコート法を用いて塗布した。塗布した感光層用塗布液を、120℃で80分間熱風乾燥させた。これにより、導電性基体上に、単層の感光層(膜厚30μm)を形成した。その結果、感光体(A−1)が得られた。
【0236】
(感光体(A−2)〜(A−18)及び(B−1)〜(B−9)の製造)
次の点を変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同じ方法で、感光体(A−2)〜(A−18)及び(B−1)〜(B−9)の各々を製造した。感光体(A−1)の製造では電子輸送剤として化合物(2−E2)を使用したが、感光体(A−2)〜(A−18)及び(B−1)〜(B−9)の各々の製造では表1及び表2に示す種類の電子輸送剤を使用した。感光体(A−1)の製造では正孔輸送剤として化合物(20−H1)を使用したが、感光体(A−2)〜(A−18)及び(B−1)〜(B−9)の各々の製造では表1及び表2に示す種類の正孔輸送剤を使用した。
【0237】
<炭酸カルシウム帯電量の測定>
感光体(A−1)〜(A−18)及び(B−1)〜(B−9)の各々に対して、炭酸カルシウム帯電量を測定した。
【0238】
以下、図2を再び参照して、感光層102と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量を測定する方法を説明する。炭酸カルシウムの帯電量は、下記の第一ステップ、第二ステップ、第三ステップ及び第四ステップを行うことにより測定した。炭酸カルシウムの帯電量の測定には、治具10を使用した。
【0239】
治具10は、第一台12と、回転シャフト14と、回転駆動部16(例えば、モーター)と、第二台18とを備えている。回転駆動部16は、回転シャフト14を回転させる。回転シャフト14は、回転シャフト14の回転軸Sを中心に回転する。第一台12は、回転シャフト14と一体になって、回転軸Sを中心に回転する。第二台18は、回転することなく固定されている。
【0240】
(第一ステップ)
第一ステップでは、感光層102を2個準備した。以下、感光層102の一方を第一感光層102aと、感光層102の他方を第二感光層102bと記載する。まず、膜厚L1が30μmである第一感光層102aを備える第一フィルム20を準備した。また、膜厚L2が30μmである第二感光層102bを備える第二フィルム22を準備した。第一フィルム20及び第二フィルム22として、オーバーヘッドプロジェクタ(OHP)フィルムを使用した。第一フィルム20及び第二フィルム22の大きさは、各々、直径3cmの円形状であった。第一フィルム20及び第二フィルム22の各々の上に、感光体(A−1)の製造に使用した感光層用塗布液を塗布した。塗布した感光層用塗布液を、120℃で80分間熱風乾燥させた。その結果、第一感光層102aを備える第一フィルム20、及び第二感光層102bを備える第二フィルム22が得られた。
【0241】
(第二ステップ)
第二ステップでは、0.007gの炭酸カルシウムを、第一感光層102a上に載せた。これにより、炭酸カルシウムから構成される炭酸カルシウム層24を、第一感光層102a上に形成した。そして、炭酸カルシウム層24上に第二感光層102bを載せた。第二ステップの具体的な手順は以下の通りであった。
【0242】
まず、第一フィルム20を、両面テープを用いて第一台12に固定した。第一フィルム20が備える第一感光層102a上に、0.007gの炭酸カルシウムを載せた。これにより、炭酸カルシウムから構成される炭酸カルシウム層24を第一感光層102a上に形成した。炭酸カルシウム層24が第二感光層102bと接触するように、両面テープを用いて第二フィルム22を第二台18に固定した。これにより、下から順に、第一台12、第一フィルム20、第一感光層102a、炭酸カルシウム層24、第二感光層102b、第二フィルム22及び第二台18が配置された。第一台12、第一フィルム20、第一感光層102a、第二感光層102b、第二フィルム22及び第二台18の各中心が、回転軸Sを通るように配置された。
【0243】
(第三ステップ)
第三ステップでは、温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境下で、第二感光層102bを固定したまま、回転速度60rpmで60秒間第一感光層102aを回転させた。具体的には、回転駆動部16を駆動させて、回転シャフト14、第一台12、第一フィルム20及び第一感光層102aを、回転速度60rpmで60秒間、回転軸Sを中心に回転させた。これにより、炭酸カルシウム層24に含まれる炭酸カルシウムが第一感光層102aと第二感光層102bとの間で摩擦され、炭酸カルシウムが帯電した。
【0244】
(第四ステップ)
第四ステップでは、第三ステップで帯電させた炭酸カルシウムを治具10から取出し、帯電量測定装置(吸引式小型帯電量測定装置、トレック社製「MODEL 212HS」)を用いて吸引した。吸引された炭酸カルシウムの総電気量Q(単位:+μC)と質量M(単位:g)とを、帯電量測定装置を用いて測定した。計算式「帯電量=Q/M」から、炭酸カルシウムの帯電量(摩擦帯電量、単位:+μC/g)を算出した。
【0245】
以上、図2を参照して、感光層102と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量を測定する方法を説明した。感光体(A−2)〜(A−18)及び(B−1)〜(B−9)の各々の炭酸カルシウムの帯電量は、次の点を変更した以外は、感光体(A−1)の炭酸カルシウムの帯電量の測定と同じ方法で測定した。第一ステップにおいて、感光体(A−1)の製造に使用した感光層用塗布液の代わりに、感光体(A−2)〜(A−18)及び(B−1)〜(B−9)の各々の製造に使用した感光層用塗布液を使用した。
【0246】
感光体(A−1)〜(A−18)及び(B−1)〜(B−9)の各々について、算出された炭酸カルシウムの帯電量を表1及び表2に示す。なお、炭酸カルシウムの帯電量が大きい正の値であるほど、感光層に対して炭酸カルシウムが正帯電し易いことを示す。
【0247】
<ビッカース硬度の測定>
感光体(A−1)〜(A−18)及び(B−1)〜(B−9)の各々に対して、45℃における感光層のビッカース硬度を測定した。感光層のビッカース硬度は、日本工業規格(JIS)Z2244に準拠する方法で測定した。まず、ヒーターを用いて感光体を加熱し、感光層の温度を45℃まで上昇させた。次いで、感光層の温度を45℃に維持しながら、感光層のビッカース硬度を、硬度計(株式会社マツザワ製「マイクロビッカース硬度計 DMH−1型」)を用いて測定した。ビッカース硬度の測定は、硬度計のダイヤモンド圧子の荷重(試験力)10gf、試験力に到達するまでの所要時間5秒、ダイヤモンド圧子の接近速度2mm/秒及び試験力の保持時間1秒の条件で行った。測定された45℃における感光層のビッカース硬度を、表1及び表2に示す。
【0248】
<感度特性の評価>
感光体(A−1)〜(A−18)及び(B−1)〜(B−9)の各々に対して、感度特性を評価した。感度特性の評価は、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下で行った。まず、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の表面を+600Vに帯電させた。次いで、バンドパスフィルターを用いて、ハロゲンランプの白色光から単色光(波長780nm、半値幅20nm、光エネルギー1.5μJ/cm2)を取り出した。取り出された単色光を、感光体の表面に照射した。照射が終了してから0.5秒経過した時の感光体の表面電位を測定した。測定された表面電位を、露光後電位(VL、単位:+V)とした。測定された感光体の露光後電位(VL)を、表2に示す。なお、露光後電位(VL)が小さい正の値であるほど、感光体の感度特性が優れていることを示す。
【0249】
<画像特性の評価>
感光体(A−1)〜(A−18)及び(B−1)〜(B−9)の各々に対して、画像特性を評価した。画像特性の評価は、温度32.5℃、相対湿度80%RHの環境下で行った。評価機として、画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「モノクロプリンターFS−1300D」)の改造機を用いた。具体的には、モノクロプリンターFS−1300Dに対して、非接触現像方式を接触現像方式に変更し、ブレードクリーニング方式をブレードクリーナーレス方式に変更し、スコロトロン帯電器を帯電ローラーに変更する改造を行った。なお、この評価機は、直接転写方式を採用していた。記録媒体として、京セラドキュメントソリューションズ株式会社販売「京セラドキュメントソリューションズブランド紙VM−A4」(A4サイズ)を使用した。評価機による評価には、一成分現像剤(試作品)を使用した。
【0250】
評価機を用いて、感光体の回転速度168mm/秒及び帯電電位+630Vの条件で、20000枚の記録媒体に画像I(印字率1%の画像)を連続して印刷した。続いて、1枚の記録媒体に画像II(A4サイズの黒色ソリッド画像)を印刷した。画像IIが形成された記録媒体を肉眼で観察し、画像II内に現れる白点の数を数えた。感光体の表面に記録媒体の微小成分(例えば、紙粉)が付着するほど、画像II内の白点の個数が増加する傾向がある。画像II内に現れる白点の個数を、表1及び表2に示す。
【0251】
表1及び表2中、HTM、ETM、樹脂、VL及びビッカース硬度は、各々、正孔輸送剤、電子輸送剤、バインダー樹脂、露光後電位及び45℃における感光層のビッカース硬度を示す。
【0252】
【表1】
【0253】
【表2】
【0254】
感光体(A−1)〜(A−18)の各々は、導電性基体と、単層の感光層とを備えていた。感光層は、電荷発生剤と、電子輸送剤と、ポリカーボネート樹脂と、正孔輸送剤とを含有していた。電子輸送剤が、化合物(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)を含んでいた。具体的には、電子輸送剤として、化合物(1−E1)、(2−E2)、(3−E3)、(4−E4)、(4−E5)又は(5−E6)を感光層が含有していた。正孔輸送剤が、化合物(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)又は(27)を含んでいた。具体的には、正孔輸送剤として、化合物(20−H1)、(21−H2)、(22−H3)、(23−H4)、(24−H5)、(25−H6)、(26−H7)、(27−H8)又は(27−H9)を感光層が含有していた。感光層と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量は、+6.5μC/g以上であった。45℃における感光層のビッカース硬度は、17.0HV以上であった。そのため、表1から明らかなように、感光体(A−1)〜(A−18)では、形成画像における白点の個数が少なく、白点の発生が抑制されていた。また、感光体(A−1)〜(A−18)では、感光体の感度特性を損なうことなく、形成画像における白点の発生を抑制することができた。
【0255】
感光体(A−15)及び(A−16)では、電子輸送剤が化合物(4)を含んでいた。具体的には、電子輸送剤として、化合物(4−E4)又は(4−E5)を感光層が含有していた。また、感光体(A−15)及び(A−16)では、正孔輸送剤が化合物(20)を含んでいた。具体的には、正孔輸送剤として、化合物(20−H1)を感光層が含有していた。そのため、表1から明らかなように、感光体(A−15)及び(A−16)では、形成画像における白点の個数が20個以下であり、白点の発生が特に抑制されていた。
【0256】
感光体(A−17)及び(A−18)では、電子輸送剤が化合物(5)を含んでいた。具体的には、電子輸送剤として、化合物(5−E6)を感光層が含有していた。また、感光体(A−17)及び(A−18)では、正孔輸送剤が化合物(20)又は(21)を含んでいた。具体的には、正孔輸送剤として、化合物(20−H1)又は(21−H2)を感光層が含有していた。そのため、表1から明らかなように、感光体(A−17)では、形成画像における白点の個数が19個であり、白点の発生が特に抑制されていた。感光体(A−18)では、形成画像における白点の個数が21個であり、白点の発生が特に抑制されていた。
【0257】
感光体(A−10)では、電子輸送剤が化合物(1)を含んでいた。具体的には、電子輸送剤として、化合物(1−E1)を感光層が含有していた。また、感光体(A−10)では、正孔輸送剤が化合物(25)を含んでいた。具体的には、正孔輸送剤として、化合物(25−H6)を感光層が含有していた。そのため、表1から明らかなように、感光体(A−10)では、形成画像における白点の個数が22個であり、白点の発生が特に抑制されていた。
【0258】
感光体(A−9)では、電子輸送剤が化合物(2)を含んでいた。具体的には、電子輸送剤として化合物(2−E2)を感光層が含有していた。また、感光体(A−9)では、正孔輸送剤が化合物(27)を含んでいた。具体的には、正孔輸送剤として化合物(27−H9)を感光層が含有していた。そのため、表1から明らかなように、感光体(A−9)では、露光後電位が+119Vであった。感光体(A−9)では、形成画像の白点の発生が抑制されつつ、感度特性が特に良好であった。
【0259】
一方、感光体(B−1)〜(B−5)の各々の感光層は、電子輸送剤として、化合物(E7)〜(E11)の何れかを含有していた。しかし、化合物(E7)〜(E11)は何れも、一般式(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)に包含される化合物ではなかった。また、感光体(B−1)〜(B−5)の各々では、感光層と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量は、+6.5μC/g未満であった。そのため、表2から明らかなように、感光体(B−1)〜(B−5)では、形成画像における白点の個数が多く、白点の発生が抑制されていなかった。
【0260】
感光体(B−6)〜(B−9)の各々の感光層は、正孔輸送剤として、化合物(H10)〜(H13)の何れかを含有していた。しかし、化合物(H10)〜(H13)は何れも、一般式(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)及び(27)に包含される化合物ではなかった。また、感光体(B−6)〜(B−9)の各々では、45℃における感光層のビッカース硬度が17.0HV未満であった。そのため、表2から明らかなように、感光体(B−6)〜(B−9)では、形成画像における白点の個数が多く、白点の発生が抑制されていなかった。
【0261】
以上のことから、本発明に係る感光体は、形成画像における白点の発生を抑制することが示された。また、本発明に係るプロセスカートリッジ及び画像形成装置は、形成画像における白点の発生を抑制することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0262】
本発明に係る感光体は、画像形成装置に利用できる。本発明に係るプロセスカートリッジ及び画像形成装置は、記録媒体に画像を形成するために利用できる。
【符号の説明】
【0263】
42 帯電部
44 露光部
46 現像部
48 転写部
100 電子写真感光体
101 導電性基体
102 感光層
110 画像形成装置
P 記録媒体
図1
図2
図3