【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明のコイル部品は、
素体と、
前記素体内に設けられ、螺旋状に巻回されたコイルと
を備え、
前記コイルは、第1方向に積層された複数のコイル導体層および引出導体層を有し、
前記引出導体層は、前記素体における前記コイル導体層に囲まれた領域の外側にあるサイドギャップ部に重なり、前記素体の外面に到達するように延在し、
前記素体は、前記コイル導体層に接触する第1応力緩和層と、前記引出導体層に沿って延在しつつ前記引出導体層の前記コイル導体層側に接触し、前記素体の外面に到達しないで前記サイドギャップ部内に位置する第2応力緩和層とを含む。
【0008】
本発明のコイル部品によれば、第2応力緩和層は引出導体層のコイル導体層側に接触するので、引出導体層が素体に直接に接触しない領域が確保され、引出導体層とコイル導体層の間の素体の応力を低減できる。これにより、素体の応力が第1応力緩和層に伝播することを低減して、第1応力緩和層から素体に発生するひびを低減できる。
【0009】
また、第2応力緩和層はサイドギャップ部内に位置し、第2応力緩和層は素体の外面に到達しない。これにより、めっき液や水分が第2応力緩和層を伝って素体の内部に浸入することを低減して、コイル導体層のマイグレーションを防止し、この結果、コイル導体層の間の絶縁性を確保し、品質の信頼性を確保することができる。
【0010】
また、第1応力緩和層はコイル導体層に接触するので、コイル導体層が素体に直接に接触して応力を及ぼすことを低減し、インピーダンスやインダクタンスの特性の劣化を低減できる。
【0011】
また、コイル部品の一実施形態では、前記複数のコイル導体層は、前記引出導体層に接触する第1コイル導体層を含み、前記第2応力緩和層は、前記第1コイル導体層に接触する。
【0012】
前記実施形態によれば、第2応力緩和層は、第1コイル導体層に接触する。そのため、引出導体層と第1コイル導体層との応力の両方を緩和することができる。
【0013】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第2応力緩和層の前記第1コイル導体層に接触する部分の厚みは、前記第1コイル導体層の厚みの1/10以上、前記第1コイル導体層の厚み以下である。
【0014】
ここで、厚みとは、第1方向の大きさをいう。
【0015】
前記実施形態によれば、素体の応力を確実に低減しつつ、素体の体積を確保して特性を維持できる。第2応力緩和層の厚みが薄すぎると、素体の応力を低減できない。第2応力緩和層の厚みが厚すぎると、素体の体積が減少して特性が低下する。
【0016】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第2応力緩和層の幅は、前記引出導体層の幅の1/2以上、3/2以下である。
【0017】
ここで、幅とは、第1方向からみて、第2応力緩和層の延在する方向に直交する方向の大きさをいう。
【0018】
前記実施形態によれば、素体の応力を確実に低減しつつ、素体の体積を確保して特性を維持できる。第2応力緩和層の幅が狭すぎると、素体の応力を低減できない。第2応力緩和層の幅が広すぎると、素体の体積が減少して特性が低下する。
【0019】
また、コイル部品の一実施形態では、
前記複数のコイル導体層は、前記第1コイル導体層に接触する第2コイル導体層を含み、
前記第2応力緩和層の長さ方向の第1端は、前記第1コイル導体層の第1側端に接触し、
前記第2応力緩和層の長さ方向の第2端は、前記第2応力緩和層の長さ方向において、前記第2コイル導体層に接触する前記第1応力緩和層の側端よりも前記第1端から遠い位置にあり、かつ、前記第1コイル導体層の第1側端のうちの前記引出導体層と接触する第1接触部を基準として前記第1コイル導体層の第1接触部から前記素体の外面までの前記引出導体層の長さの2/3の位置よりも前記第1端に近い位置にある。
【0020】
ここで、長さ方向とは、第2応力緩和層の延在する方向をいい、長さとは、第2応力緩和層の延在する方向に沿った大きさをいう。
【0021】
前記実施形態によれば、第2応力緩和層の長さ方向の第2端は、第2コイル導体層に接触する第1応力緩和層の側端よりも遠い位置にあるので、第2応力緩和層により、素体の応力が第1応力緩和層に伝播することを低減して、第1応力緩和層から素体に発生するひびを低減できる。
【0022】
また、第2応力緩和層の長さ方向の第2端は、第1コイル導体層の第1接触部を基準として第1コイル導体層の第1接触部から素体の外面までの引出導体層の長さの2/3よりも近い位置にあり、第2応力緩和層は素体の外面に到達しない。これにより、めっき液や水分が第2応力緩和層を伝って素体の内部に浸入することを低減して、コイル導体層のマイグレーションを防止し、この結果、コイル導体層の間の絶縁性を確保し、品質の信頼性を確保することができる。
【0023】
また、コイル部品の一実施形態では、
前記複数のコイル導体層は、平面上に巻回されたスパイラル層を含み、
前記素体における前記第1方向に隣り合う前記スパイラル層の間に挟まれた部分の厚みは、40μm以下である。
【0024】
前記実施形態によれば、第1方向に隣り合うスパイラル層の間が狭く、素体に応力がかかりやすくなるが、第2応力緩和層により素体に発生するひびを低減できる。
【0025】
また、コイル部品の一実施形態では、前記コイル導体層の厚みは、50μm以上である。
【0026】
前記実施形態によれば、コイル導体層の厚みが厚く、素体に応力がかかりやすくなるが、第2応力緩和層により素体に発生するひびを低減できる。
【0027】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第1と前記第2応力緩和層は、空隙である。
【0028】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第1と前記第2応力緩和層は、前記素体を構成する磁性材料よりも融点が高い酸化物の粉で形成される。
【0029】
また、コイル部品の一実施形態では、
前記複数のコイル導体層は、平面上に巻回されたスパイラル層と、前記スパイラル層と前記引出導体層を接続する接続層とを含み、
前記引出導体層は、前記素体から露出する第1端と、前記第1端の反対側の第2端とを有し、
前記接続層は、前記引出導体層の前記第2端よりも前記引出導体層の長さ方向の内側で、前記引出導体層に重なっている。
【0030】
前記実施形態によれば、引出導体層の側端の形状に関わらず、接続層と引出導体層の接続性を確保できる。
【0031】
また、コイル部品の一実施形態では、前記引出導体層の長さ方向において、前記引出導体層の前記第2端から前記接続層の側端のうちの前記引出導体層と接触する接触部までの距離は、前記引出導体層の厚みよりも大きく、かつ、前記引出導体層の厚みの2倍よりも小さい。
【0032】
前記実施形態によれば、引出導体層の側端の形状に関わらず、接続層と引出導体層の接続性を確保できる。
【0033】
また、コイル部品の一実施形態では、
前記複数のコイル導体層は、平面上に巻回されたスパイラル層と、前記第1方向に隣り合う前記スパイラル層を接続する接続層とを含み、
前記接続層は、少なくとも1つの前記スパイラル層の延在方向の側端よりも前記スパイラル層の延在方向の内側で、前記スパイラル層に重なっている。
【0034】
前記実施形態によれば、スパイラル層の側端の形状に関わらず、接続層とスパイラル層の接続性を確保できる。
【0035】
また、コイル部品の一実施形態では、前記スパイラル層の延在方向において、前記スパイラル層の側端から前記接続層の側端のうちの前記スパイラル層と接触する接触部までの距離は、前記スパイラル層の厚みよりも大きく、かつ、前記スパイラル層の厚みの2倍よりも小さい。
【0036】
前記実施形態によれば、スパイラル層の側端の形状に関わらず、接続層とスパイラル層の接続性を確保できる。
【0037】
また、コイル部品の一実施形態では、
前記コイル導体層の断面の形状は、6角形であり、前記第1応力緩和層は、前記コイル導体層の3辺のみに沿って形成され、
前記コイル導体層の前記第1応力緩和層の形成側の厚みは、前記コイル導体層の前記第1応力緩和層の非形成側の厚みよりも大きい。
【0038】
前記実施形態によれば、コイル導体層の体積を確保しつつ、応力開放による特性の取得効率を向上できる。