特許第6760315号(P6760315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6760315双方向性結合器、モニタ回路、およびフロントエンド回路
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6760315
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】双方向性結合器、モニタ回路、およびフロントエンド回路
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/18 20060101AFI20200910BHJP
   H04B 1/52 20150101ALI20200910BHJP
   H04B 1/00 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   H01P5/18 J
   H04B1/52
   H04B1/00 264
【請求項の数】12
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-32164(P2018-32164)
(22)【出願日】2018年2月26日
(65)【公開番号】特開2018-207473(P2018-207473A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2019年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2017-109541(P2017-109541)
(32)【優先日】2017年6月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】金 良守
(72)【発明者】
【氏名】重野 靖
【審査官】 鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−019215(JP,A)
【文献】 特開2002−330008(JP,A)
【文献】 特開2017−038114(JP,A)
【文献】 特開2005−168060(JP,A)
【文献】 特開2011−061440(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0128255(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/00−5/22
H04B 1/00
H04B 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層基板と、
前記多層基板に設けられた第1主線路、第2主線路、第3主線路、および副線路と、を備え、
前記副線路は、前記第1主線路と電磁界結合する部分である第1線路部と、前記第2主線路と電磁界結合する部分である偶数個の第2線路部と、前記第3主線路と電磁界結合する部分である偶数個の第3線路部とを有し、
前記偶数個の第2線路部のうちの半数は、前記第1線路部と前記副線路の一方端との間に設けられ、前記偶数個の第2線路部のうちの他の半数は、前記第1線路部と前記副線路の他方端との間に設けられ、
前記偶数個の第3線路部のうちの半数は、前記第2線路部の前記半数と前記副線路の一方端との間に設けられ、前記偶数個の第3線路部のうちの他の半数は、前記第2線路部の前記他の半数と前記副線路の他方端との間に設けられている、
双方向性結合器。
【請求項2】
前記第1線路部は、1対の第1線路部を含む、
請求項1に記載の双方向性結合器。
【請求項3】
前記副線路の電気長での中点と前記1対の第1線路部のうちの一方との間の電気長と、前記中点と前記1対の第1線路部のうちの他方との間の電気長とは、略等しい、
請求項2に記載の双方向性結合器。
【請求項4】
前記偶数個の第2線路部は1対の第2線路部であり、
前記副線路の電気長での中点と前記1対の第2線路部のうちの一方との間の電気長と、前記中点と前記1対の第2線路部のうちの他方との間の電気長とは、略等しい、
請求項1から3のいずれか1項に記載の双方向性結合器。
【請求項5】
前記偶数個の第3線路部は1対の第3線路部であり、
前記副線路の電気長での中点と前記1対の第3線路部のうちの一方との間の電気長と、前記中点と前記1対の第3線路部のうちの他方との間の電気長とは、略等しい、
請求項1から4のいずれか1項に記載の双方向性結合器。
【請求項6】
前記偶数個の第2線路部は1対の第2線路部であり、
前記多層基板上の直線を挟んだ第1領域と第2領域とにおいて、前記副線路は前記直線を対称軸として線対称の形状に設けられ、前記1対の第2線路部の一方と他方とは、前記線対称での対応位置にある、
請求項1から5のいずれか1項に記載の双方向性結合器。
【請求項7】
前記偶数個の第3線路部は1対の第3線路部であり、
前記多層基板上の直線を挟んだ第1領域と第2領域とにおいて、前記副線路は前記直線を対称軸として線対称の形状に設けられ、前記1対の第3線路部の一方と他方とは、前記線対称での対応位置にある、
請求項1から6のいずれか1項に記載の双方向性結合器。
【請求項8】
前記多層基板上の直線を挟んだ第1領域と第2領域とにおいて、前記副線路は前記直線を対称軸として線対称の形状に設けられ、前記1対の第1線路部の一方と他方とは、前記線対称での対応位置にある、
請求項2または3に記載の双方向性結合器。
【請求項9】
前記1対の第1線路部の一方と他方とが、インダクタで接続されている、
請求項2、3または8に記載の双方向性結合器。
【請求項10】
前記副線路の前記第1線路部での幅、前記第2線路部での幅、および、前記第3線路部での幅のうち少なくとも1つの幅が異なっている、
請求項1から9のいずれか1項に記載の双方向性結合器。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか1項に記載の双方向性結合器を有するモニタ回路。
【請求項12】
請求項11に記載のモニタ回路と、
前記モニタ回路に接続されたアンテナ端子と、
前記モニタ回路に接続されたフィルタと、
を備えるフロントエンド回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向性結合器、モニタ回路およびフロントエンド回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、周波数帯域が異なる複数の高周波信号を処理する方向性結合器が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図18は、特許文献1に開示される方向性結合器の構成の一例を示す斜視図である。なお、以下で用いる構成要素名および参照符号は、説明の便宜上、特許文献1のものとは異なる場合がある。
【0004】
図18の方向性結合器9は、第1主線路91、第2主線路92、第1副線路93、第2副線路94、およびグランド96を備える。
【0005】
第1主線路91と第2主線路92とは、グランド96を介して配置されている。第1副線路93と第2副線路94とは、グランド96を介して配置されるとともに、第1主線路91および第2主線路92とそれぞれ結合する。第1副線路93および第2副線路94は、互いの一端同士が接続されて1本の副線路95を構成している。
【0006】
第1主線路91の一方端および他方端は、入力ポートP1および出力ポートP2を構成し、第2主線路92の一方端および他方端は、入力ポートP3および出力ポートP4を構成している。副線路95の一方端および他方端は、結合ポートP5およびアイソレーションポートP6を構成している。
【0007】
方向性結合器9は、一例として、周波数帯域が異なる2つの送信信号を処理するデュアルバンド対応の携帯電話端末に設けられ、送信信号の強度のモニタに用いられる。
【0008】
具体的に、2つの送信信号の一方および他方は、入力ポートP1、P3へそれぞれ供給され、第1主線路91、第2主線路92を伝搬して、出力ポートP2、P4からアンテナへ供給される。送信信号の強度に応じた第1のモニタ信号が、結合ポートP5から取り出される。第1のモニタ信号は、例えば、送信電力のフィードバック制御に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−100909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、方向性結合器には、順方向信号と逆方向信号の両方をモニタする双方向性結合器が求められている。ここで、順方向信号とは、主線路を入力ポートから出力ポートへ向かって伝搬する信号を言い、逆方向信号とは、主線路を出力ポートから入力ポートへ向かって伝搬する信号を言う。
【0011】
双方向性結合器の基本的な構成は、4ポートの方向性結合器と等しい。したがって、特許文献1では言及されていないが、方向性結合器9でも、第1主線路91および第2主線路92を伝搬する逆方向信号(例えば、アンテナからの反射波)の強度に応じた第2のモニタ信号をアイソレーションポートP6から取り出すことはできる。
【0012】
しかしながら、方向性結合器9を双方向性結合器として使用した場合、方向性結合器9の順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とは異なる。そのため、方向性結合器9を双方向性結合器として使用した場合、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが揃わず、順方向信号の方向性と逆方向信号の方向性が同等でないという問題が生じる。
【0013】
そこで、本発明は、3つの信号線路の各々において順方向信号と逆方向信号とをモニタ可能であり、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが両方とも良好な双方向性結合器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る双方向性結合器は、多層基板と、前記多層基板に設けられた第1主線路、第2主線路、第3主線路、および副線路と、を備え、前記副線路は、前記第1主線路と電磁界結合する部分である第1線路部と、前記第2主線路と電磁界結合する部分である偶数個の第2線路部と、前記第3主線路と電磁界結合する部分である偶数個の第3線路部とを有し、前記偶数個の第2線路部のうちの半数は、前記第1線路部と前記副線路の一方端との間に設けられ、前記偶数個の第2線路部のうちの他の半数は、前記第1線路部と前記副線路の他方端との間に設けられ、前記偶数個の第3線路部のうちの半数は、前記第2線路部の前記半数と前記副線路の一方端との間に設けられ、前記偶数個の第3線路部のうちの他の半数は、前記第2線路部の前記他の半数と前記副線路の他方端との間に設けられている。
【0015】
この構成によれば、第1主線路との結合部である副線路の第1線路部の両側に、副線路の第2主線路との結合部である第2線路部を同数設けている。そのため、副線路上において、第1主線路との結合部を中心として、第2主線路との結合部を対称に配置することができる。また、副線路の第2主線路との結合部である第2線路部の両側に、副線路の第3主線路との結合部である第3線路部を設けている。そのため、副線路上において、第2主線路との結合部を中心として、第3主線路との結合部を対称に配置することができる。結合部をこのように配置することによって、第1主線路から副線路の一方端および他方端までの電気的特性を揃え、また第2主線路から副線路の一方端および他方端までの電気的特性を揃え、また第3主線路から副線路の一方端および他方端までの電気的特性を揃えることができる。
【0016】
これにより、順方向信号に対応する第1のモニタ信号の方向性および逆方向信号に対応する第2のモニタ信号の方向性を両方とも向上することが可能になる。その結果、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが両方とも改善された双方向性結合器が得られる。
【0017】
また、前記第1線路部は、1対の第1線路部を含んでもよい。
【0018】
この構成によれば、第1線路部を分割して配置することができるので、副線路のレイアウトの自由度が高まる。
【0019】
また、前記副線路の電気長での中点と前記1対の第1線路部のうちの一方との間の電気長と、前記中点と前記1対の第1線路部のうちの他方との間の電気長とは、略等しくてもよい。
【0020】
この構成によれば、副線路の第1主線路との結合部が、副線路上の電気長での対称位置に配置されるので、第1主線路から副線路の一方端および他方端までの電気的特性を、より正確に揃えることができる。その結果、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが、両方とも向上した双方向性結合器が得られる。
【0021】
また、前記偶数個の第2線路部は1対の第2線路部であり、前記副線路の電気長での中点と前記1対の第2線路部のうちの一方との間の電気長と、前記中点と前記1対の第2線路部のうちの他方との間の電気長とは、略等しくてもよい。
【0022】
この構成によれば、副線路の第2主線路との結合部が、副線路上の電気長での対称位置に配置されるので、第2主線路から副線路の一方端および他方端までの電気的特性を、より正確に揃えることができる。その結果、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが、両方とも向上した双方向性結合器が得られる。
【0023】
また、前記偶数個の第3線路部は1対の第3線路部であり、前記副線路の電気長での中点と前記1対の第3線路部のうちの一方との間の電気長と、前記中点と前記1対の第3線路部のうちの他方との間の電気長とは、略等しくてもよい。
【0024】
この構成によれば、副線路の第3主線路との結合部が、副線路上の電気長での対称位置に配置されるので、第3主線路から副線路の一方端および他方端までの電気的特性を、より正確に揃えることができる。その結果、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが、両方とも向上した双方向性結合器が得られる。
【0025】
また、前記偶数個の第2線路部は1対の第2線路部であり、前記多層基板上の直線を挟んだ第1領域と第2領域とにおいて、前記副線路は前記直線を対称軸として線対称の形状に設けられ、前記1対の第2線路部の一方と他方とは、前記線対称での対応位置にあってもよい。
【0026】
この構成によれば、副線路の形状の対称性に基づいて、第2主線路から副線路の一方端および他方端までの電気的特性を、より正確に揃えることができる。その結果、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが、両方とも向上した双方向性結合器が得られる。
【0027】
また、前記偶数個の第3線路部は1対の第3線路部であり、前記多層基板上の直線を挟んだ第1領域と第2領域とにおいて、前記副線路は前記直線を対称軸として線対称の形状に設けられ、前記1対の第3線路部の一方と他方とは、前記線対称での対応位置にあってもよい。
【0028】
この構成によれば、副線路の形状の対称性に基づいて、第3主線路から副線路の一方端および他方端までの電気的特性を、より正確に揃えることができる。その結果、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが、両方とも向上した双方向性結合器が得られる。
【0029】
また、前記多層基板上の直線を挟んだ第1領域と第2領域とにおいて、前記副線路は前記直線を対称軸として線対称の形状に設けられ、前記1対の第1線路部の一方と他方とは、前記線対称での対応位置にあってもよい。
【0030】
この構成によれば、副線路の形状の対称性に基づいて、第1主線路から副線路の一方端および他方端までの電気的特性を、より正確に揃えることができる。その結果、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが、両方とも向上した双方向性結合器が得られる。
【0031】
また、前記1対の第1線路部の一方と他方とが、インダクタで接続されていてもよい。
【0032】
この構成によれば、副線路の中点に直列にインダクタを挿入することができるので、双方向性結合器の方向性を向上できる。
【0033】
また、前記副線路の前記第1線路部での幅、前記第2線路部での幅、および、前記第3線路部での幅のうち少なくとも1つの幅が異なっていてもよい。
【0034】
この構成によれば、副線路の幅に応じて、副線路と第1主線路、第2主線路および第3主線路の各々との結合を最適化することができる。
【0035】
本発明の一態様に係るモニタ回路は、前記双方向性結合器を有する。
【0036】
この構成によれば、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが両方とも向上した双方向性結合器を用いることで、順方向信号および逆方向信号の双方を高い精度でモニタするモニタ回路が得られる。
【0037】
本発明の一態様に係るフロントエンド回路は、前記モニタ回路と、前記モニタ回路に接続されたアンテナ端子と、前記モニタ回路に接続されたフィルタと、を備える。
【0038】
この構成によれば、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが両方とも向上した双方向性結合器を有するモニタ回路を用いることで、例えば、送信電力のフィードバック制御およびアンテナのマッチング調整を含む各種の制御を高い精度で行う、高性能な通信装置を構成できる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る双方向性結合器によれば、3つの信号線路の各々において順方向信号と逆方向信号とをモニタ可能であり、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが両方とも良好な双方向性結合器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】実施の形態1に係る双方向性結合器の等価回路の一例を示す回路図
図2】実施の形態1に係る双方向性結合器の等価回路の一例を示す回路図
図3】実施の形態1に係る双方向性結合器の構造の一例を示す平面図
図4A】実施の形態1に係る双方向性結合器の構造の一例を示す断面図
図4B】実施の形態1に係る双方向性結合器の構造の一例を示す断面図
図4C】実施の形態1に係る双方向性結合器の構造の一例を示す断面図
図5】実施の形態1に係る双方向性結合器の立体構造の一例を示す分解斜視図
図6】実施の形態2に係る双方向性結合器の等価回路の一例を示す回路図
図7】実施の形態2に係る双方向性結合器の構造の一例を示す平面図
図8】実施の形態3に係る双方向性結合器の等価回路の一例を示す回路図
図9】実施の形態3に係る双方向性結合器の構造の一例を示す平面図
図10】実施の形態4に係る双方向性結合器の等価回路の一例を示す回路図
図11】実施の形態4に係る双方向性結合器の構造の一例を示す平面図
図12】実施の形態5に係る双方向性結合器の構造の一例を示す平面図
図13】実施の形態6に係る双方向性結合器の等価回路の一例を示す回路図
図14】実施の形態6に係る双方向性結合器の構造の一例を示す平面図
図15】実施の形態7に係る方向性結合器を用いたモニタ回路の一例を示す回路図
図16】実施の形態8に係る通信装置の機能的な構成の一例を示すブロック図
図17】その他の形態に係る双方向性結合器の等価回路の一例を示す回路図
図18】従来例に係る方向性結合器の構造の一例を示す斜視図
図19】従来例に係る方向性結合器の等価回路の一例を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0041】
(本発明の基礎となった知見)
図18の方向性結合器9の順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが異なる要因について考察する。
【0042】
図19は、方向性結合器9の等価回路の一例を示す回路図である。図19では、理解のため、副線路95を直線状に表すとともに、副線路95の電気長での中点Mを示している。
【0043】
図19に示されるように、方向性結合器9において、第1主線路91と第1副線路93とは、副線路95の中点MとアイソレーションポートP6との間のみで結合している。また、第2主線路92と第2副線路94とは、副線路95の中点Mと結合ポートP5との間のみで結合している。つまり、副線路95の第1主線路91との結合部および第2主線路92との結合部は、副線路95上で非対称に配置されている。
【0044】
そのため、第1主線路91から副線路95の結合ポートP5までの電気的特性と、第1主線路91から副線路95のアイソレーションポートP6までの電気的特性とは異なる。これにより、第1主線路91を伝搬する順方向信号に対応する第1のモニタ信号と逆方向信号に対応する第2のモニタ信号とが、第1主線路91からの電気的特性が異なる結合ポートP5とアイソレーションポートP6とからそれぞれ取り出されることになる。その結果、方向性結合器9の第1主線路91を伝搬する順方向信号および逆方向信号に対する特性差が生じる。
【0045】
第2主線路92についても同様のことが成り立つので、方向性結合器9では第2主線路92を伝搬する順方向信号および逆方向信号に対しても特性差が生じる。
【0046】
このように、結合部の配置の非対称性が、方向性結合器9の順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とを異ならせている主因と考えられる。
【0047】
本発明者は、この考察に基づき、鋭意検討の結果、3つの主線路を有し、いずれの主線路についても順方向信号に対する特性と逆方向信号に対する特性とが等しい双方向性結合器を考案するに至った。
【0048】
当該双方向性結合器は、多層基板と、前記多層基板に設けられた第1主線路、第2主線路、第3主線路、および副線路と、を備え、前記副線路は、前記第1主線路と電磁界結合する部分である第1線路部と、前記第2主線路と電磁界結合する部分である偶数個の第2線路部と、前記第3主線路と電磁界結合する部分である偶数個の第3線路部とを有し、前記偶数個の第2線路部のうちの半数は、前記第1線路部と前記副線路の一方端との間に設けられ、前記偶数個の第2線路部のうちの他の半数は、前記第1線路部と前記副線路の他方端との間に設けられ、前記偶数個の第3線路部のうちの半数は、前記第2線路部の前記半数と前記副線路の一方端との間に設けられ、前記偶数個の第3線路部のうちの他の半数は、前記第2線路部の前記他の半数と前記副線路の他方端との間に設けられているものである。
【0049】
以下、本発明の複数の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさ又は大きさの比は、必ずしも厳密ではない。
【0050】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る双方向性結合器の等価回路の一例を示す回路図である。
【0051】
図1に示されるように、双方向性結合器1は、第1主線路21、第2主線路31、第3主線路41および副線路51を備える。
【0052】
第1主線路21の一方端および他方端は、入力ポートIN1および出力ポートOUT1を構成し、第2主線路31の一方端および他方端は、入力ポートIN2および出力ポートOUT2を構成し、第3主線路41の一方端および他方端は、入力ポートIN3および出力ポートOUT3を構成している。副線路51の一方端および他方端は、フォワードポートFWDおよびリバースポートREVを構成している。
【0053】
副線路51は、第1主線路21と結合する部分である1対の第1線路部511a、511bと、第2主線路31と結合する部分である1対の第2線路部512a、512bと、第3主線路41と結合する部分である1対の第3線路部513a、513bとを有する。ここで、1対の第1線路部511a、511bは、偶数個の第1線路部の一例であり、1対の第2線路部512a、512bは、偶数個の第2線路部の一例であり、1対の第3線路部513a、513bは、偶数個の第3線路部の一例である。
【0054】
第1線路部511aは、リバースポートREVとフォワードポートFWDとの間に設けられ、第1線路部511bは、第1線路部511aとフォワードポートFWDとの間に設けられている。なお、以下において、第1線路部511aおよび511bをまとめて第1線路部511と呼ぶ場合がある。
【0055】
第2線路部512aは、副線路51の第1線路部511とリバースポートREVとの間に設けられ、第2線路部512bは、副線路51の第1線路部511とフォワードポートFWDとの間に設けられている。第3線路部513aは、副線路51の第2線路部512bとフォワードポートFWDとの間に設けられ、第3線路部513bは、副線路51の第2線路部512aとリバースポートREVとの間に設けられている。
【0056】
1対の第1線路部511a、511bは、第1主線路21と略同一方向に延設され、1対の第2線路部512a、512bは、第2主線路31と略同一方向に延設され、1対の第3線路部513a、513bは、第3主線路41と略同一方向に延設される。
【0057】
図2は、図1の等価回路と同一の回路を表す回路図である。図2では、理解のため、副線路51を直線状に表すとともに、副線路51の電気長での中点Mを示している。第3主線路41は、表記上、入力ポートIN3側の半分区間と出力ポートOUT3側の半分区間とに分断されているが、実際にはA点同士で連続している。第2主線路31は、表記上、入力ポートIN2側の半分区間と出力ポートOUT2側の半分区間とに分断されているが、実際にはB点同士で連続している。第1主線路21は、表記上、入力ポートIN1側の一部区間と出力ポートOUT1側の一部区間とに分断されているが、実際にはC点同士で連続している。
【0058】
図2から理解されるように、双方向性結合器1では、副線路51の第1主線路21との結合部が1対の第1線路部511a、511bで構成され、当該結合部の両側に、副線路51の第2主線路31との結合部である第2線路部512a、512bを設けている。そのため、副線路51上において、第1主線路21との結合部(第1線路部511a、511b)を中心として、第2主線路31との結合部(第2線路部512a、512b)を対称に配置することができる。なお、「第1主線路21との結合部を中心として」とは、第1主線路21と結合する第1線路部511aおよび第1線路部511bの中央に位置する中心線を基準とすることを意味する。
【0059】
また、双方向性結合器1では、副線路51の第2主線路31との結合部が1対の第2線路部512a、512bで構成され、当該結合部の両側に、第3主線路41との結合部である第3線路部513a、513bを設けている。そのため、副線路51上において、第2主線路31との結合部(第2線路部512a、512b)を中心として、第3主線路41との結合部(第3線路部513a、513b)を対称に配置することができる。なお、「第2主線路31との結合部を中心として」とは、第2主線路31と結合する第2線路部512aおよび第2線路部512bの中央に位置する中心線を基準とすることを意味する。
【0060】
結合部をこのように配置することで、第1主線路21からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を揃え、第2主線路31からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を揃え、また、第3主線路41からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を揃えることができる。また第1線路部を分割して1対の第1線路部511a、511bとして配置するので、副線路51の形状の自由度が高まる。
【0061】
これにより、順方向信号に対応する第1のモニタ信号の方向性および逆方向信号に対応する第2のモニタ信号の方向性を両方とも向上することが可能になる。その結果、第1主線路21、第2主線路31および第3主線路41のいずれについても、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが両方とも改善された双方向性結合器1が得られる。
【0062】
なお、図2に示されるように、副線路51における、中点Mと第1線路部511aとの間の電気長L1bと、中点Mと第1線路部511bとの間の電気長L1aとは、略等しくてもよい。また、中点Mと第2線路部512aとの間の電気長L2bと、中点Mと第2線路部512bとの間の電気長L2aとは、略等しくてもよい。また、中点Mと第3線路部513aとの間の電気長L3aと、中点Mと第3線路部513bとの間の電気長L3bとは、略等しくてもよい。なお、電気長L1aと電気長L1bとが略等しいとは、例えば、電気長L1aと電気長L1bとの差が、電気長L1aおよび電気長L1bのうち一方の電気長の±10%以内となる場合である。電気長L2aと電気長L2bとが略等しいとは、例えば、電気長L2aと電気長L2bとの差が、電気長L2aおよび電気長L2bのうち一方の電気長の±10%以内となる場合である。電気長L3aと電気長L3bとが略等しいとは、例えば、電気長L3aと電気長L3bとの差が、電気長L3aおよび電気長L3bのうち一方の電気長の±10%以内となる場合である。
【0063】
これにより、副線路51において、第1線路部511a、511bが、副線路51上の電気長での対称位置に配置され、かつ第2線路部512a、512bが、副線路51上の電気長での対称位置に配置され、かつ第3線路部513a、513bが、副線路51上の電気長での対称位置に配置される。そのため、第1主線路21、第2主線路31および第3主線路41からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を、より正確に揃えることができる。その結果、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが両方とも向上した双方向性結合器1が得られる。
【0064】
双方向性結合器1の構造的な特徴について説明を続ける。
【0065】
図3は、双方向性結合器1の構造の一例を示す平面図である。図4Aは、双方向性結合器1の構造の一例を示す断面図であり、図3のIVA−IVA断面線を矢印の方向に見た断面に対応する。図4Bは、双方向性結合器1の構造の一例を示す断面図であり、図3のIVB−IVB断面線を矢印の方向に見た断面に対応する。図3図4Aおよび図4Bでは、明確のため、構成要素ごとに異なる柄を付して示している。
【0066】
図4Aおよび図4Bに示されるように、双方向性結合器1は、基板15の上方に形成され層間絶縁層11、12a、12b、12c、13、14でそれぞれ分離された第1層金属配線61、第2層金属配線62、第3層金属配線63、および、第4層金属配線64で構成されている。一例として、基板15および層間絶縁層11〜14の積層体が多層基板10に対応する。
【0067】
第1層金属配線61は層間絶縁層12aと同じ層に配置され、第2層金属配線62は層間絶縁層12bと同じ層に配置され、第3層金属配線63は層間絶縁層12cと同じ層に配置される。第4層金属配線64は、層間絶縁層13と層間絶縁層14との界面に配置される。
【0068】
副線路51は、第1層金属配線61、第2層金属配線62、および第3層金属配線63で形成される。第1主線路21、第2主線路31および第3主線路は、第4層金属配線64で形成される。
【0069】
一例として、基板15は半導体基板(ウェハー)であってもよい。この場合、双方向性結合器1は、周知の半導体プロセスを用いて、半導体基板上に層間絶縁層を介在しながら複数の配線層を形成することにより作製される。
【0070】
他の一例として、基板15および層間絶縁層11、12a〜12c、13、14は、LTCC(低温同時焼成セラミックス)材料で構成された基材層であってもよい。この場合、双方向性結合器1は、金属配線となる導体ペーストを配置した複数のセラミックグリーンシートを重ねて一体化し、焼成することにより作製される。
【0071】
さらに他の一例として、基板15および層間絶縁層11、12a〜12c、13、14は、多層プリント配線基板の各層を構成する絶縁樹脂層であってもよい。この場合、双方向性結合器1は、金属配線としての配線パターンを配置した複数の絶縁樹脂層を積層し、ビア導体としてのスルーホールを設けてなる多層プリント配線基板として作製される。
【0072】
図3に示されるように、副線路51は、平面視して、第2主線路31および第3主線路41間の領域にて交差する立体交差部579を有している。具体的には、立体交差部579は、第2線路部512aと第3線路部513bとの間、および、第2線路部512bと第3線路部513aとの間にて交差している。
【0073】
図4Cは、双方向性結合器1の構造の一例を示す断面図であり、図3のIVC−IVC断面線を矢印の方向に見た断面に対応する。
【0074】
図4Cに示されるように、立体交差部579では、第3線路部513aから第2線路部512bに至る配線経路が、下側に位置する第1層金属配線61によって構成され、第2線路部512aから第3線路部513bに至る配線経路が、上側に位置する第3層金属配線63によって構成されている。この配線経路により、立体交差部579において副線路51が接触しない構造となっている。
【0075】
図5は、双方向性結合器1の立体構造の一例を示す分解斜視図である。図5では、副線路51の形状を分かりやすく示すために、層間絶縁層12a〜12c、13、14を省略し、第1主線路21、第2主線路31および第3主線路41を実際の位置より上方に描いている。
【0076】
図5に示されるように、第1主線路21および第2主線路31は、第1主線路21を内側に配し第2主線路31を外側に配した、開き角が異なるV字の略入れ子形状に形成されている。第3主線路41は、第2主線路31から見て、第1主線路21が位置する側の反対側に形成されている。第3主線路41は、直線状であり、開き角が180°である。すなわち、各主線路の開き角は、第1主線路21、第2主線路31、第3主線路41の順に大きくなっている。副線路51は、1周の周回形状に形成されている。副線路51は、フォワードポートFWDから、第3主線路41の一部、第2主線路31の一部、第1主線路21の一部、第2主線路31の一部および第3主線路41の一部に沿いながら周回して、リバースポートREVに至る。
【0077】
図5に示されるように、双方向性結合器1では、副線路51のフォワードポートFWDから1/6周区間に第3主線路41と略同一方向に延設された第3線路部513aがあり、第3線路部513aは第3主線路41の入力ポートIN3側の半分区間と結合する。また、副線路51の次の1/6周区間に第2主線路31と略同一方向に延設された第2線路部512bがあり、第2線路部512bは第2主線路31の出力ポートOUT2側の半分区間と結合する。また、副線路51の次の1/6周区間に第1主線路21と略同一方向に延設された第1線路部511bがあり、第1線路部511bは第1主線路21の出力ポートOUT1側の一部区間と結合する。
【0078】
そして、副線路51の次の1/6周区間に第1主線路21と略同一方向に延設された第1線路部511aがあり、第1線路部511aは第1主線路21の入力ポートIN1側の一部区間と結合する。また、副線路51の次の1/6周区間に第2主線路31と略同一方向に延設された第2線路部512aがあり、第2線路部512aは第2主線路31の入力ポートIN2側の半分区間と結合する。また、副線路51の残りの1/6周区間に第3主線路41と略同一方向に延設された第3線路部513bがあり、第3線路部513bは第3主線路41の出力ポートOUT3側の半分区間と結合する。
【0079】
また、図3および図5に示されるように、多層基板10上の直線Sを挟んだ第1領域と第2領域とにおいて、副線路51は直線Sを対称軸として線対称の形状に設けられ、第1線路部511a、511b、第2線路部512a、512b、第3線路部513a、513bは、それぞれ前記線対称での対応位置にある。なお、以下において「副線路が線対称の形状に設けられている」とは、例えば、図3および図5に示すような立体交差部579を除いて副線路が線対称の形状に設けられている場合を含むものとする。
【0080】
これにより、副線路51の形状の対称性に基づいて、第1主線路21、第2主線路31および第3主線路41からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を、より正確に揃えることができる。その結果、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが、両方とも向上した双方向性結合器1が得られる。
【0081】
(実施の形態2)
実施の形態2では、第1主線路、第2主線路、第3主線路および副線路の変形例について説明する。
【0082】
図6は、双方向性結合器2の等価回路の一例を示す回路図である。
【0083】
図6に示されるように、双方向性結合器2は、第1主線路22、第2主線路32、第3主線路42および副線路52を備える。
【0084】
第1主線路22の一方端および他方端は、入力ポートIN1および出力ポートOUT1を構成し、第2主線路32の一方端および他方端は、入力ポートIN2および出力ポートOUT2を構成し、第3主線路42の一方端および他方端は、入力ポートIN3および出力ポートOUT3を構成している。副線路52の一方端および他方端は、フォワードポートFWDおよびリバースポートREVを構成している。
【0085】
副線路52は、第1主線路22と結合する部分である1対の第1線路部521a、521bと、第2主線路32と結合する部分である1対の第2線路部522a、522bと、第3主線路42と結合する部分である1対の第3線路部523a、523bとを有する。
【0086】
第1線路部521aは、リバースポートREVとフォワードポートFWDとの間に設けられ、第1線路部521bは、第1線路部521aとフォワードポートFWDとの間に設けられている。なお、以下において、第1線路部521aおよび521bをまとめて第1線路部521と呼ぶ場合がある。
【0087】
第2線路部522aは、副線路52の第1線路部521とリバースポートREVとの間に設けられ、第2線路部522bは、副線路52の第1線路部521とフォワードポートFWDとの間に設けられている。第3線路部523aは、副線路52の第2線路部522bとフォワードポートFWDとの間に設けられ、第3線路部523bは、副線路52の第2線路部522aとリバースポートREVとの間に設けられている。
【0088】
1対の第1線路部521a、521bは、第1主線路22と略同一方向に延設され、1対の第2線路部522a、522bは、第2主線路32と略同一方向に延設され、1対の第3線路部523a、523bは、第3主線路42と略同一方向に延設される。
【0089】
双方向性結合器2においても、副線路52の第1主線路22との結合部が1対の第1線路部521a、521bで構成され、当該結合部の両側に、副線路52の第2主線路32との結合部である第2線路部522a、522bを設けている。そのため、副線路52上において、第1主線路22との結合部(第1線路部521a、521b)を中心として、第2主線路32との結合部(第2線路部522a、522b)を対称に配置することができる。
【0090】
また、双方向性結合器2では、副線路52の第2主線路32との結合部が1対の第2線路部522a、522bで構成され、当該結合部の両側に、第3主線路42との結合部である第3線路部523a、523bを設けている。そのため、副線路52上において、第2主線路32との結合部(第2線路部522a、522b)を中心として、第3主線路42との結合部(第3線路部523a、523b)を対称に配置することができる。
【0091】
結合部をこのように配置することで、第1主線路22からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を揃え、第2主線路32からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を揃え、また、第3主線路42からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を揃えることができる。
【0092】
これにより、順方向信号に対応する第1のモニタ信号および逆方向信号に対応する第2のモニタ信号を、第1主線路22、第2主線路32および第3主線路42からの電気的特性が揃ったフォワードポートFWDおよびリバースポートREVからそれぞれ取り出すことが可能になる。その結果、第1主線路22、第2主線路32および第3主線路42のいずれについても、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが両方とも改善された双方向性結合器2が得られる。
【0093】
双方向性結合器2の構造的な特徴について説明を続ける。
【0094】
図7は、双方向性結合器2の構造の一例を示す平面図である。図7の双方向性結合器2は、実施の形態1の双方向性結合器1と比べて、第1主線路22の形状において相違する。
【0095】
図7に示されるように、第1主線路22および第2主線路32は、第1主線路22を内側に配し第2主線路32を外側に配した、開き角が異なるV字の略入れ子形状に形成されている。具体的には、第1主線路22が逆V字状となり、第1主線路22の開口と第2主線路32の開口とが向き合うように入れ子形状となっている。第3主線路42は、第2主線路32から見て、第1主線路22が位置する側の反対側に形成されている。第3主線路42は、直線状であり、開き角が180°である。副線路52は、1周の周回形状に形成されている。副線路52は、フォワードポートFWDから、第3主線路42の一部、第2主線路32の一部、第1主線路22の一部、第2主線路32の一部および第3主線路42の一部に沿いながら周回して、リバースポートREVに至る。副線路52は、平面視して、第2主線路32および第3主線路42間の領域にて交差する立体交差部579を有している。
【0096】
図7に示されるように、双方向性結合器2では、副線路52のフォワードポートFWDから1/6周区間に第3主線路42と略同一方向に延設された第3線路部523aがあり、第3線路部523aは第3主線路42の入力ポートIN3側の半分区間と結合する。また、副線路52の次の1/6周区間に第2主線路32と略同一方向に延設された第2線路部522bがあり、第2線路部522bは第2主線路32の出力ポートOUT2側の半分区間と結合する。また、副線路52の次の1/6周区間に第1主線路22と略同一方向に延設された第1線路部521bがあり、第1線路部521bは第1主線路22の入力ポートIN1側の一部区間と結合する。
【0097】
そして、副線路52の次の1/6周区間に第1主線路22と略同一方向に延設された第1線路部521aがあり、第1線路部521aは第1主線路22の出力ポートOUT1側の一部区間と結合する。また、副線路52の次の1/6周区間に第2主線路32と略同一方向に延設された第2線路部522aがあり、第2線路部522aは第2主線路32の入力ポートIN2側の半分区間と結合する。また、副線路52の残りの1/6周区間に第3主線路42と略同一方向に延設された第3線路部523bがあり、第3線路部523bは第3主線路42の出力ポートOUT3側の半分区間と結合する。
【0098】
また、図7に示されるように、多層基板10上の直線Sを挟んだ第1領域と第2領域とにおいて、副線路52は直線Sを対称軸として線対称の形状に設けられ、第1線路部521a、521b、第2線路部522a、522bおよび第3線路部523a、523bは、前記線対称での対応位置にある。
【0099】
これにより、副線路52の形状の対称性に基づいて、第1主線路22、第2主線路32、第3主線路42からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を、より正確に揃えることができる。その結果、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが、両方とも向上した双方向性結合器2が得られる。
【0100】
(実施の形態3)
実施の形態3では、第1主線路、第2主線路、第3主線路および副線路の変形例について説明する。
【0101】
図8は、双方向性結合器3の等価回路の一例を示す回路図である。
【0102】
図8に示されるように、双方向性結合器3は、第1主線路23、第2主線路33、第3主線路43および副線路53を備える。
【0103】
第1主線路23の一方端および他方端は、入力ポートIN1および出力ポートOUT1を構成し、第2主線路33の一方端および他方端は、入力ポートIN2および出力ポートOUT2を構成し、第3主線路43の一方端および他方端は、入力ポートIN3および出力ポートOUT3を構成している。副線路53の一方端および他方端は、フォワードポートFWDおよびリバースポートREVを構成している。
【0104】
副線路53は、第1主線路23と結合する部分である1対の第1線路部531a、531bと、第2主線路33と結合する部分である1対の第2線路部532a、532bと、第3主線路43と結合する部分である1対の第3線路部533a、533bとを有する。
【0105】
第1線路部531aは、リバースポートREVとフォワードポートFWDとの間に設けられ、第1線路部531bは、第1線路部531aとフォワードポートFWDとの間に設けられている。なお、以下において、第1線路部531aおよび531bをまとめて第1線路部531と呼ぶ場合がある。
【0106】
第2線路部532aは、副線路53の第1線路部531とリバースポートREVとの間に設けられ、第2線路部532bは、副線路53の第1線路部531とフォワードポートFWDとの間に設けられている。第3線路部533aは、副線路53の第2線路部532aとリバースポートREVとの間に設けられ、第3線路部533bは、副線路53の第2線路部532bとフォワードポートFWDとの間に設けられている。
【0107】
1対の第1線路部531a、531bは、第1主線路23と略同一方向に延設され、1対の第2線路部532a、532bは、第2主線路33と略同一方向に延設され、1対の第3線路部533a、533bは、第3主線路43と略同一方向に延設される。
【0108】
双方向性結合器3でも、副線路53の第1主線路23との結合部が1対の第1線路部531a、531bで構成され、当該結合部の両側に、副線路53の第2主線路33との結合部である第2線路部532a、532bを設けている。そのため、副線路53上において、第1主線路23との結合部(第1線路部531a、531b)を中心として、第2主線路33との結合部(第2線路部532a、532b)を対称に配置することができる。
【0109】
また、双方向性結合器3では、副線路53の第2主線路33との結合部が1対の第2線路部532a、532bで構成され、当該結合部の両側に、第3主線路43との結合部である第3線路部533a、533bを設けている。そのため、副線路53上において、第2主線路33との結合部(第2線路部532a、532b)を中心として、第3主線路43との結合部(第3線路部533a、533b)を対称に配置することができる。
【0110】
結合部をこのように配置することで、第1主線路23からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を揃え、第2主線路33からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を揃え、また、第3主線路43からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を揃えることができる。
【0111】
これにより、順方向信号に対応する第1のモニタ信号および逆方向信号に対応する第2のモニタ信号を、第1主線路23、第2主線路33および第3主線路43からの電気的特性が揃ったフォワードポートFWDおよびリバースポートREVからそれぞれ取り出すことが可能になる。その結果、第1主線路23、第2主線路33および第3主線路43のいずれについても、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが両方とも改善された双方向性結合器3が得られる。
【0112】
双方向性結合器3の構造的な特徴について説明を続ける。
【0113】
図9は、双方向性結合器3の構造の一例を示す平面図である。図9の双方向性結合器3は、実施の形態1の双方向性結合器1と比べて、副線路53の形状において相違する。
【0114】
図9に示されるように、第1主線路23および第2主線路33は、第1主線路23を内側に配し第2主線路33を外側に配した、開き角が異なるV字の略入れ子形状に形成されている。第3主線路43は、第2主線路33から見て、第1主線路23が位置する側の反対側に形成されている。第3主線路43は、直線状であり、開き角が180°である。すなわち、各主線路の開き角は、第1主線路23、第2主線路33、第3主線路43の順に大きくなっている。副線路53は、立体交差を有しない1周の周回形状に形成されている。副線路53は、フォワードポートFWDから、第3主線路43の一部、第2主線路33の一部、第1主線路23の一部、第2主線路33の一部および第3主線路43の一部に沿いながら周回して、リバースポートREVに至る。
【0115】
図9に示されるように、双方向性結合器3では、副線路53のフォワードポートFWDから1/6周区間に第3主線路43と略同一方向に延設された第3線路部533bがあり、第3線路部533bは第3主線路43の入力ポートIN3側の半分区間と結合する。また、副線路53の次の1/6周区間に第2主線路33と略同一方向に延設された第2線路部532bがあり、第2線路部532bは第2主線路33の出力ポートOUT2側の半分区間と結合する。また、副線路53の次の1/6周区間に第1主線路23と略同一方向に延設された第1線路部531bがあり、第1線路部531bは第1主線路23の出力ポートOUT1側の一部区間と結合する。
【0116】
そして、副線路53の次の1/6周区間に第1主線路23と略同一方向に延設された第1線路部531aがあり、第1線路部531aは第1主線路23の入力ポートIN1側の一部区間と結合する。また、副線路53の次の1/6周区間に第2主線路33と略同一方向に延設された第2線路部532aがあり、第2線路部532aは第2主線路33の入力ポートIN2側の半分区間と結合する。また、副線路53の残りの1/6周区間に第3主線路43と略同一方向に延設された第3線路部533aがあり、第3線路部533aは第3主線路43の出力ポートOUT3側の半分区間と結合する。
【0117】
また、図9に示されるように、多層基板10上の直線Sを挟んだ第1領域と第2領域とにおいて、副線路53は直線Sを対称軸として線対称の形状に設けられ、第1線路部531a、531b、第2線路部532a、532bおよび第3線路部533a、533bは、前記線対称での対応位置にある。
【0118】
これにより、副線路53の形状の対称性に基づいて、第1主線路23、第2主線路33、第3主線路43からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を、より正確に揃えることができる。その結果、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが、両方とも向上した双方向性結合器3が得られる。
【0119】
(実施の形態4)
実施の形態4では、第1主線路、第2主線路、第3主線路および副線路の変形例について説明する。
【0120】
図10は、双方向性結合器4の等価回路の一例を示す回路図である。
【0121】
図10に示されるように、双方向性結合器4は、第1主線路24、第2主線路34、第3主線路44および副線路54を備える。
【0122】
第1主線路24の一方端および他方端は、入力ポートIN1および出力ポートOUT1を構成し、第2主線路34の一方端および他方端は、入力ポートIN2および出力ポートOUT2を構成し、第3主線路44の一方端および他方端は、入力ポートIN3および出力ポートOUT3を構成している。副線路54の一方端および他方端は、フォワードポートFWDおよびリバースポートREVを構成している。
【0123】
副線路54は、第1主線路24と結合する部分である1対の第1線路部541a、541bと、第2主線路34と結合する部分である1対の第2線路部542a、542bと、第3主線路44と結合する部分である1対の第3線路部543a、543bとを有する。
【0124】
第1線路部541aは、リバースポートREVとフォワードポートFWDとの間に設けられ、第1線路部541bは、第1線路部541aとフォワードポートFWDとの間に設けられている。なお、以下において、第1線路部541aおよび541bをまとめて第1線路部541と呼ぶ場合がある。
【0125】
第2線路部542aは、副線路54の第1線路部541とリバースポートREVとの間に設けられ、第2線路部542bは、副線路54の第1線路部541とフォワードポートFWDとの間に設けられている。第3線路部543aは、副線路54の第2線路部542aとリバースポートREVとの間に設けられ、第3線路部543bは、副線路54の第2線路部542bとフォワードポートFWDとの間に設けられている。
【0126】
1対の第1線路部541a、541bは、第1主線路24と略同一方向に延設され、1対の第2線路部542a、542bは、第2主線路34と略同一方向に延設され、1対の第3線路部543a、543bは、第3主線路44と略同一方向に延設される。
【0127】
双方向性結合器4でも、副線路54の第1主線路24との結合部が1対の第1線路部541a、541bで構成され、当該結合部の両側に、副線路54の第2主線路34との結合部である第2線路部542a、542bを設けている。そのため、副線路54上において、第1主線路24との結合部(第1線路部541a、541b)を中心として、第2主線路34との結合部(第2線路部542a、542b)を対称に配置することができる。
【0128】
また、双方向性結合器4では、副線路54の第2主線路34との結合部が1対の第2線路部542a、542bで構成され、当該結合部の両側に、第3主線路44との結合部である第3線路部543a、543bを設けている。そのため、副線路54上において、第2主線路34との結合部(第2線路部542a、542b)を中心として、第3主線路44との結合部(第3線路部543a、543b)を対称に配置することができる。
【0129】
結合部をこのように配置することで、第1主線路24からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を揃え、第2主線路34からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を揃え、また、第3主線路44からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を揃えることができる。
【0130】
これにより、順方向信号に対応する第1のモニタ信号および逆方向信号に対応する第2のモニタ信号を、第1主線路24、第2主線路34および第3主線路44からの電気的特性が揃ったフォワードポートFWDおよびリバースポートREVからそれぞれ取り出すことが可能になる。その結果、第1主線路24、第2主線路34および第3主線路44のいずれについても、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが両方とも改善された双方向性結合器4が得られる。
【0131】
双方向性結合器4の構造的な特徴について説明を続ける。
【0132】
図11は、双方向性結合器4の構造の一例を示す平面図である。図11の双方向性結合器4は、実施の形態3の双方向性結合器3と比べて、第1主線路24の形状において相違する。
【0133】
図11に示されるように、第1主線路24および第2主線路34は、第1主線路24を内側に配し第2主線路34を外側に配した、開き角が異なるV字の略入れ子形状に形成されている。具体的には、第1主線路24が逆V字状となり、第1主線路24の開口と第2主線路34の開口とが向き合うように入れ子形状となっている。第3主線路44は、第2主線路34から見て、第1主線路24が位置する側の反対側に形成されている。第3主線路44は、直線状であり、開き角が180°である。副線路54は、立体交差を有しない1周の周回形状に形成されている。副線路54は、フォワードポートFWDから、第3主線路44の一部、第2主線路34の一部、第1主線路24の一部、第2主線路34の一部および第3主線路44の一部に沿いながら周回して、リバースポートREVに至る。
【0134】
図11に示されるように、双方向性結合器4では、副線路54のフォワードポートFWDから1/6周区間に第3主線路44と略同一方向に延設された第3線路部543bがあり、第3線路部543bは第3主線路44の入力ポートIN3側の半分区間と結合する。また、副線路54の次の1/6周区間に第2主線路34と略同一方向に延設された第2線路部542bがあり、第2線路部542bは第2主線路34の出力ポートOUT2側の半分区間と結合する。また、副線路54の次の1/6周区間に第1主線路24と略同一方向に延設された第1線路部541bがあり、第1線路部541bは第1主線路24の入力ポートIN1側の一部区間と結合する。
【0135】
そして、副線路54の次の1/6周区間に第1主線路24と略同一方向に延設された第1線路部541aがあり、第1線路部541aは第1主線路24の出力ポートOUT1側の一部区間と結合する。また、第2主線路34と略同一方向に延設された副線路54の次の1/6周区間に第2線路部542aがあり、第2線路部542aは第2主線路34の入力ポートIN2側の半分区間と結合する。また、副線路54の残りの1/6周区間に第3主線路44と略同一方向に延設された第3線路部543aがあり、第3線路部543aは第3主線路44の出力ポートOUT3側の半分区間と結合する。
【0136】
また、図11に示されるように、多層基板10上の直線Sを挟んだ第1領域と第2領域とにおいて、副線路54は直線Sを対称軸として線対称の形状に設けられ、第1線路部541a、541b、第2線路部542a、542bおよび第3線路部543a、543bは、前記線対称での対応位置にある。
【0137】
これにより、副線路54の形状の対称性に基づいて、第1主線路24、第2主線路34、第3主線路44からフォワードポートFWDおよびリバースポートREVまでの電気的特性を、より正確に揃えることができる。その結果、順方向信号に対する方向性と逆方向信号に対する方向性とが、両方とも向上した双方向性結合器4が得られる。
【0138】
(実施の形態5)
実施の形態5では、副線路の変形例について説明する。
【0139】
図12は、実施の形態5に係る双方向性結合器の構造の一例を示す平面図である。図12の双方向性結合器5は、実施の形態3の双方向性結合器3と比べて、副線路55の形状において相違する。以下では、実施の形態3と同一の構成要素には同一の符号を付して、適宜説明を省略する。
【0140】
図12に示されるように、双方向性結合器5では、副線路55の幅、つまり長手方向に交差する方向の寸法が、第1線路部551a、551bと第2線路部552a、552bと第3線路部553a、553bとで、少なくとも1つが異なる。図12の例では、第2線路部552a、552bの幅は、第1線路部551a、551bの幅より大きい。また、第3線路部553a、553bの幅は、第2線路部552a、552bの幅より大きい。
【0141】
このように、副線路55の幅を結合部ごとに設定することで、副線路55の幅に応じて、副線路55と第1主線路25、第2主線路35および第3主線路45の各々との結合を最適化することができる。例えば、結合のための最適条件によっては、図12の例とは逆に、第1線路部551a、551bの幅が、第2線路部552a、552bの幅より大きくてもよい。また、第2線路部552a、552bの幅が、第3線路部553a、553bの幅より大きくてもよい。
【0142】
(実施の形態6)
実施の形態6では、副線路の変形例について説明する。
【0143】
図13は、実施の形態6に係る双方向性結合器の等価回路の一例を示す回路図である。図13の双方向性結合器6は、図1の双方向性結合器1と比べて、副線路56にインダクタLが挿入される点で相違する。副線路56の中点に直列にインダクタLを挿入することにより、双方向性結合器6の方向性を向上することができる。
【0144】
インダクタLは、例えば、配線パターンによって形成されてもよい。
【0145】
図14は、双方向性結合器6の構造の一例を示す平面図である。図14に示されるように、双方向性結合器6の副線路56は、図1の双方向性結合器1の副線路51に、第1線路部561a、561b同士を接続するループ状の巻回部569を追加して構成される。
【0146】
巻回部569が、インダクタLとして機能することにより、双方向性結合器6の方向性を向上することができる。
【0147】
(実施の形態7)
実施の形態7では、双方向性結合器を用いたモニタ回路について説明する。
【0148】
図15は、実施の形態7に係るモニタ回路の一例を示す回路図である。図15のモニタ回路70は、双方向性結合器71、スイッチ72、73、および終端器74を有する。
【0149】
双方向性結合器71には、実施の形態1〜6で説明した双方向性結合器1〜6のいずれかが用いられる。
【0150】
スイッチ72、73は、1対の単極双投のスイッチであり、制御信号(図示せず)に従って連動する。
【0151】
終端器74は、制御信号(図示せず)に従って変更可能な可変複素インピーダンスであり、例えば、可変抵抗と可変インダクタとで構成される。
【0152】
このように構成されるモニタ回路70によれば、フォワードポートFWDから取り出されるモニタ信号およびリバースポートREVから取り出されるモニタ信号のうち所望の一方をスイッチ72、73で選択し、終端器74によって適した終端を施して、モニタ信号MONとして出力することができる。
【0153】
(実施の形態8)
実施の形態8では、実施の形態7に係るモニタ回路を用いた通信装置について、異なる3つの周波数帯域を用いて送受信動作を行うことができるトリプルバンド対応の通信装置の例で説明する。
【0154】
図16は、実施の形態8に係る通信装置100の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図16に示されるように、通信装置100は、ベースバンド信号処理回路110、RF信号処理回路120、およびフロントエンド回路130を備える。通信装置100は、アンテナ201、202、203を用いて、トリプルバンドでの送受信動作を行う。
【0155】
ベースバンド信号処理回路110は、音声通話や画像表示などを行う応用装置/応用ソフトウェアで生成された送信データを送信信号に変換し、RF信号処理回路120へ供給する。当該変換は、データの圧縮、多重化、誤り訂正符号の付加を含んでもよい。また、RF信号処理回路120から受信した受信信号を受信データに変換し、応用装置/応用ソフトウェアへ供給する。当該変換は、データの伸長、多重分離、誤り訂正を含んでもよい。ベースバンド信号処理回路110は、ベースバンド集積回路(BBIC)チップで構成されてもよい。
【0156】
RF信号処理回路120は、ベースバンド信号処理回路110で生成された送信信号を周波数帯域ごとの送信RF信号Tx1、Tx2、Tx3に変換し、フロントエンド回路130へ供給する。当該変換は、信号の変調およびアップコンバートを含んでもよい。また、RF信号処理回路120は、フロントエンド回路130から受信した周波数帯域ごとの受信RF信号Rx1、Rx2、Rx3を受信信号に変換し、ベースバンド信号処理回路110へ供給する。RF信号処理回路120は、高周波集積回路(RFIC)チップで構成されてもよい。
【0157】
フロントエンド回路130は、パワーアンプ回路131a、131b、131c、ローノイズアンプ回路132a、132b、132c、モニタ回路133、デュプレクサ134a、134b、134cおよびコントローラ136を有する。各デュプレクサ134a〜134cは、周波数帯域ごとのフィルタで構成されている。モニタ回路133は、デュプレクサ134a〜134cおよびアンテナ端子ANT1、ANT2、ANT3に接続されている。
【0158】
各パワーアンプ回路131a〜131cは、RF信号処理回路120で生成された周波数帯域ごとの送信RF信号Tx1、Tx2、Tx3を増幅し、デュプレクサ134a〜134cを介してモニタ回路133へ供給する。パワーアンプ回路131a〜131cにおける増幅ゲインおよび整合インピーダンスは可変であり、コントローラ136からの制御に応じて調整される。
【0159】
各デュプレクサ134a〜134cは、各パワーアンプ回路131a〜131cから受信した周波数帯域ごとの送信RF信号Tx1、Tx2、Tx3を送信アンテナ信号Txに合成して、モニタ回路133の各ポートIN1、IN2、IN3に供給する。
【0160】
モニタ回路133は、送信アンテナ信号Txを、各ポートOUT1、OUT2、OUT3から各アンテナ端子ANT1、ANT2、ANT3を介して各アンテナ201、202、203へ伝搬するとともに、送信アンテナ信号Txの強度および送信アンテナ信号Txのアンテナ201、202、203からの反射波の強度を表すモニタ信号MONを出力する。
【0161】
モニタ回路133は、各アンテナ201、202、203からの受信アンテナ信号Rxを、各アンテナ端子ANT1、ANT2、ANT3を介して各ポートOUT1、OUT2、OUT3で受信し、各ポートIN1、IN2、IN3から各デュプレクサ134a〜134cへ伝搬する。
【0162】
モニタ回路133には、実施の形態7のモニタ回路70が用いられる。
【0163】
各デュプレクサ134a〜134cは、受信アンテナ信号Rxから周波数帯域ごとの受信RF信号Rx1、Rx2、Rx3を分離して、ローノイズアンプ回路132a〜132cへ供給する。
【0164】
各ローノイズアンプ回路132a〜132cは、各デュプレクサ134a〜134cから受信した周波数帯域ごとの受信RF信号Rx1、Rx2、Rx3を増幅し、RF信号処理回路120へ供給する。
【0165】
コントローラ136は、モニタ回路133から受信されたモニタ信号MONに基づいてパワーアンプ回路131a〜131cの増幅ゲインおよび整合インピーダンスを制御することにより、送信電力のフィードバック制御、およびアンテナ201、202、203のマッチング調整を行う。
【0166】
フロントエンド回路130は、パワーアンプ回路131a〜131c、ローノイズアンプ回路132a〜132c、モニタ回路133、デュプレクサ134a〜134cおよびコントローラ136を搭載した高周波モジュールで構成されてもよい。なお、コントローラ136は、フロントエンド回路130ではなく、RF信号処理回路120に含まれてもよい。
【0167】
通信装置100では、モニタ回路133に、順方向信号(送信信号)に対する方向性と逆方向信号(反射波)に対する方向性とがどちらも良好な双方向性結合器を用いるので、送信電力のフィードバック制御およびアンテナのマッチング調整を含む各種の制御を高い精度で行う、高性能な通信装置を構成できる。
【0168】
以上、本発明の実施の形態に係る双方向性結合器、モニタ回路およびフロントエンド回路について説明したが、本発明は、個々の実施の形態には限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0169】
例えば、実施の形態2の双方向性結合器2において、第1線路部521a、521bが2本の線路でなく、図17に示すように、一本の第1線路部521によって構成されていてもよい。他の実施の形態1および実施の形態1〜6についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明は、双方向性結合器および双方向性結合器を用いた通信装置に広く利用できる。
【符号の説明】
【0171】
1〜6 双方向性結合器
9 方向性結合器
10 多層基板
11〜14 層間絶縁層
15 基板
21〜26、91 第1主線路
31〜36、92 第2主線路
41〜46 第3主線路
51〜56、95 副線路
61 第1層金属配線
62 第2層金属配線
63 第3層金属配線
64 第4層金属配線
70、133 モニタ回路
71 双方向性結合器
72、73 スイッチ
74 終端器
93 第1副線路
94 第2副線路
96 グランド
100 通信装置
110 ベースバンド信号処理回路
120 RF信号処理回路
130 フロントエンド回路
131a、131b、131c パワーアンプ回路
132a、132b、132c ローノイズアンプ回路
134a、134b、134c デュプレクサ
136 コントローラ
201、202、203 アンテナ
511、511a、511b、521、521a、521b、531、531a、531b、541、541a、541b、551a、551b、561a、561b 第1線路部
512a、512b、522a、522b、532a、532b、542a、542b、552a、552b、562a、562b 第2線路部
513a、513b、523a、523b、533a、533b、543a、543b、553a、553b、563a、563b 第3線路部
569 巻回部
579 立体交差部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19