(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂を注入する際に、前記支持部材の少なくとも一方の端部によって前記強化基材と前記成形型の前記壁面との間の少なくとも一部に隙間を形成する、請求項1または請求項2に記載の複合材料の成形方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
(複合材料)
複合材料10は、一般的に、強化基材31および樹脂50を組み合わせることにより、樹脂50単体で構成される成形品に比べて高い強度および剛性を備えている。例えば、
図9Aに示すような自動車の車体500(
図9Bを参照)に使用されるフロントサイドメンバー501やピラー502等の骨格部品、ルーフ503等の外板部品に複合材料10を適用することができる。複合材料10は鉄鋼材料よりも軽量なため、鉄鋼材料からなる部品を組み付けて構成した車体と比べて、
図9Bに示すような車体500の軽量化を図ることができる。
【0013】
本実施形態に係る複合材料10は、後述する複合材料用中間部材20を成形型310に配置し、樹脂50を含浸させて硬化させることによって成形される。
【0014】
樹脂50は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂、フェノール樹脂等が用いられる。本実施形態においては、機械的特性、寸法安定性に優れたエポキシ樹脂を用いる。エポキシ樹脂は2液タイプが主流であり、主剤および硬化剤を混合して使用する。主剤はビスフェノールA型のエポキシ樹脂、硬化剤はアミン系のものが一般的に用いられるが、特にこれに限定されるものではなく、所望の材料特性に合わせて適宜選択できる。なお、樹脂50は、熱硬化性樹脂に限定されず、熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0015】
また、樹脂50には、複合材料10を成形した後の脱型を容易に行い得るように、内部離型剤を含ませている。内部離型剤の種類は、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0016】
(複合材料用中間部材)
複合材料用中間部材(以下、「中間部材」と称する)20は、
図1Aに示すように、強化基材31を所定の形状に賦形したプリフォーム30と、その一端部に配置された貫通部材(支持部材に相当)40とを備えている。貫通部材40は、
図1Bに示すように、強化基材31に貫通して固定されて、両端部40a、40bが強化基材31から突出するように配置されている。なお、貫通部材40の配置や数は、注入口315の配置、樹脂50の注入圧力、プリフォーム30の形状等に応じて適宜変更することができる。
【0017】
以下、プリフォーム30および貫通部材40の構成について詳細に説明する。
【0018】
(プリフォーム)
本実施形態に係るプリフォーム30は、
図1Bに示すように、複数の強化基材31を積層し、接着剤32を付与して所定の形状に賦形して形成される。
【0019】
強化基材31は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリアミド(PA)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、アクリル繊維等によって形成することができる。本実施形態では、強化基材31として炭素繊維を使用した例を説明する。炭素繊維は、熱膨張係数が小さく、寸法安定性に優れ、高温下においても機械的特性の低下が少ないという特徴があるため、自動車の車体500(
図9Bを参照)等の複合材料10の強化基材31として好適に使用することができる。強化基材31は、例えば、繊維が一方向に引き揃えられたUD(一方向)材や繊維を縦横に組み合わせた織物材等のシート状の炭素繊維を使用することができる。
【0020】
接着剤32は、強化基材31に付与されて、強化基材31同士を接着する。これにより、強化基材31を所望の形態に安定して維持することができ、強化基材31の配置のばらつきを抑制することができる。また、接着剤32は、強化基材31を所望の形状に賦形した際に、その形態を保持する役割も果たす。
【0021】
接着剤32を構成する材料は、材質は特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、ナイロン樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂、また、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0022】
(貫通部材)
貫通部材40は、
図1Aおよび
図1Bに示すように、円柱状であり、一方の端部40aに形成された頭部41aと、他方の端部40bに形成された頭部41bと、頭部41a、41bよりも直径が小さい胴部42とを備えている。貫通部材40の頭部41a、41bは、強化基材31から突出するように配置される。貫通部材40の頭部41bは、胴部42をプリフォーム30に貫通した後、他方の端部40bを潰して形成される。ここで、頭部41bは、胴部42よりも直径が大きくなるように形成される。貫通部材40は、頭部41a、41bおよび胴部42によって強化基材31に固定されるリベットとしての機能を有している。なお、貫通部材40の形状は、円柱状に限定されず、例えば、角柱状であってもよい。
【0023】
後述するように、貫通部材40の頭部41a、41bは、成形型310の壁面311a、312aと強化基材31との間に介在して隙間G(
図5を参照)を形成する。貫通部材40の頭部41a、41bの高さを調整することによって、隙間Gの大きさを適宜変更することができる。
【0024】
貫通部材40を構成する材料は、熱によって軟化する性質を備えることが好ましい。貫通部材40が熱によって軟化する性質を備えることによって、樹脂50の反応熱や成形型310の熱によって頭部41a、41bが軟化して潰れて、成形型310の壁面311a、312aと強化基材31との間の隙間Gを徐々に小さくすることができる。
【0025】
また、貫通部材40を構成する材料は、熱によって軟化する性質を備える材料の中でも有機系の材料である熱可塑性樹脂であることがより好ましい。有機系の材料を使用することによって、成形品である複合材料10を廃棄処分する際に、リサイクルや焼却処理しやすくなる。また、貫通部材40が熱可塑性樹脂によって形成されることによって、強化基材31に樹脂50を含浸させる際に、流動する樹脂50の反応熱や成形型310の熱によって、貫通部材40を溶融させることができる。
【0026】
さらに、貫通部材40を構成する材料は、樹脂50と親和性を有することが好ましい。ここで、「親和性」とは、混ざり合いやすい性質を意味する。本実施形態では、親和性を有する材料として、貫通部材40が溶融して樹脂50と混ざり合い、かつ、樹脂50の物性に影響を与えないような材料を選択する。このような親和性を有する材料としては、例えば、澱粉樹脂等の強化基材31のサイジングに使用される材料が挙げられる。
【0027】
貫通部材40が樹脂50と親和性を有することによって、強化基材31に樹脂50を含浸させる際に、貫通部材40が溶融して樹脂50と混ざり合って一体に形成される。このため、均質な複合材料10を形成することができるとともに、貫通部材40および貫通部材40を配置した強化基材31の周辺部分を除去する後加工を削減することができる。したがって、成形時間を短縮できるとともに、歩留りを向上させることができる。また、複合材料10の強度等の品質も向上させることができる。
【0028】
なお、貫通部材40を構成する材料やその大きさは、複合材料10全体の樹脂50に対する混入割合を考慮して、樹脂50に溶け込んでも複合材料10の物性に影響を与えない程度に調整する。
【0029】
(成形装置)
図2A〜
図3を参照して、本実施形態に係る複合材料10の成形方法を具現化した成形装置100の一例について説明する。なお、成形装置100は、本実施形態に係る複合材料10の成形方法を実現可能な限りにおいて、その構成は以下に示すものに特に限定されない。
【0030】
成形装置100は、中間部材20を形成する中間部材形成部200(
図2A〜
図2Cを参照)と、中間部材20を用いて複合材料10を成形する複合材料成形部300(
図3を参照)と、中間部材形成部200および複合材料成形部300の作動を制御する制御部400とを有している。
【0031】
中間部材形成部200は、
図2Aに示すように、一方の端部40aの頭部41aに押圧力を付与する押圧部210と、貫通部材40の他方の端部40bに当接する受け部220とを有している。
【0032】
押圧部210は、モータ等の駆動源(図示せず)によって駆動されて、貫通部材40の胴部42が、強化基材31の積層方向(
図2A中の矢印方向)に向かって強化基材31を貫通するように、貫通部材40に押圧力を付与する。また、押圧部210は、
図2Bに示すように、貫通部材40が強化基材31を貫通した後、貫通部材40にさらに押圧力を付与して、貫通部材40の端部40bを受け部220に押し付ける。
【0033】
受け部220は、その上面に凹部220aを備えている。押圧部210から受ける押圧力によって貫通部材40の端部40bが凹部220aに押し付けられて変形し、
図2Cに示すように、貫通部材40の端部40bに凹部220aの形状を転写した頭部41bが形成される。これにより、貫通部材40の頭部41a、41bによって強化基材31を挟持して、貫通部材40を強化基材31に対して固定することができる。
【0034】
複合材料成形部300は、
図3に示すように、中間部材20が配置されるキャビティ314を形成する開閉自在な成形型310と、成形型310に型締圧力を負荷するプレス部320と、キャビティ314内に溶融した樹脂50を注入する樹脂注入部330と、を有している。
【0035】
成形型310は、開閉可能な一対の上型311および下型312と、シール部313と、を有している。上型311の壁面311aと、下型312の壁面312aと、シール部313との間に、密閉自在なキャビティ314を形成している。また、成形型310は、キャビティ314内に樹脂50を注入する注入口315をさらに有している。
【0036】
シール部313は、ゴム等の弾性材料によって形成され、上型311と下型312の合わせ面を密封する。シール部313は、成形型310の型締圧力に応じて変形し、上型311と下型312との間隔を調整する。これによって、キャビティ314の高さを調整することができる。なお、密閉されたキャビティ314を形成し、上型311と下型312との間隔を調整することができる限りにおいて、成形型310は上記構成に限定されない。
【0037】
図5に示すように、中間部材20がキャビティ314内に配置された状態において、貫通部材40の頭部41a、41bは、強化基材31から突出するように配置されている。このため、中間部材20をキャビティ314内に配置した状態において、頭部41a、41bが成形型310の壁面311a、312aと強化基材31との間に介在する。これにより、成形型310の壁面311a、312aと強化基材31との間に隙間Gが形成される。当該隙間Gを流路として利用することによって、キャビティ314内に注入された樹脂50を円滑に流動させることができる。樹脂50が強化基材31に含浸しやすくなるため、樹脂50の注入速度(単位時間あたりの樹脂50の注入量)を上げることができる。これによって、成形品である複合材料10の成形時間をさらに短縮することができる。
【0038】
再び
図3を参照して、注入口315は、キャビティ314と樹脂注入部330とを連通可能に設けられている。本実施形態では、注入口315は、上型311のキャビティ314の端部(シール部313)付近に1つだけ設けられている。樹脂注入部330から注入された樹脂50は、プリフォーム30の表面から内部に含浸する。なお、成形型310にキャビティ314内を真空引きして空気を吸引する吸引口を別途設けてもよい。
【0039】
プレス部320は、例えば、油圧等の流体圧を用いたシリンダー321を備え、油圧等を制御することによって成形型310に付与する型締圧力を調整自在なプレス機によって構成することができる。
【0040】
樹脂注入部330は、主剤タンク331から供給される主剤と、硬化剤タンク332から供給される硬化剤とを循環させつつ、成形型310へ供給可能な公知の循環式のポンプ機構により構成することができる。樹脂注入部330は、注入口315に連通してキャビティ314内に樹脂50を注入する。
【0041】
制御部400は、成形装置100全体の作動を制御する。具体的には、
図3を参照して、制御部400は、記憶部410と、演算部420と、各種データや制御指令の送受信を行う入出力部430と、を有している。入出力部430は、押圧部210、プレス部320、樹脂注入部330などの装置各部に電気的に接続している。
【0042】
記憶部410は、ROMやRAMから構成し、貫通部材40の形状(高さ)や成形品である複合材料10の設計板厚等のデータを記憶する。演算部420は、CPUを主体に構成され、入出力部430を介して型締圧力やキャビティ314の高さ等のデータを受信する。演算部420は、記憶部410から読み出したデータおよび入出力部430から受信したデータに基づいて、成形型310の型締圧力や樹脂50の注入圧力等を算出する。算出したデータに基づく制御信号は、入出力部430を介してプレス部320、樹脂注入部330などの装置各部へ送信する。このようにして、制御部400は、成形型310の型締圧力や樹脂50の注入圧力等を制御する。
【0043】
(成形方法)
次に、本実施形態に係る複合材料10の成形方法を説明する。複合材料10の成形方法は、
図4に示すように、概説すると、まず、プリフォーム30を形成し(ステップS11)、プリフォーム30に貫通部材40を配置して中間部材20を形成する(ステップS12)。次に、成形型310のキャビティ314内に中間部材20を配置し(ステップS13)、貫通部材40の両端部40a、40bを、成形型310の壁面311a、312aによって挟持する(ステップS14)。次に、成形型310のキャビティ314内に樹脂50を注入する(ステップS15)。キャビティ314内に樹脂50を充填した後、成形型310をさらに閉じて、貫通部材40の一部を圧潰する(ステップS16)。次に、樹脂50を硬化させ(ステップS17)、複合材料10を脱型する(ステップS18)。以下、複合材料10の成形方法について詳述する。
【0044】
ステップS11では、複数の強化基材31を積層し、接着剤32付与して所定の形状に賦形したプリフォーム30を形成する。まず、シート状の強化基材31に接着剤32を付与する。次に、接着剤32が付与された複数の強化基材31を積層する。その後、積層した強化基材31を賦形型(図示せず)によって賦形して所定形状のプリフォーム30を形成する(
図1Aを参照)。なお、強化基材31を賦形する前に加熱して、接着剤32を軟化させてもよい。また、強化基材31を賦形する前あるいは賦形した後に、強化基材31を所定の形状に切断してもよい。
【0045】
ステップS12では、まず、
図2Aに示すように、貫通部材40をプリフォーム30の一方の面に配置し、中間部材形成部200の押圧部210によって貫通部材40の頭部41aに強化基材31の積層方向(
図2A中の矢印方向)に向かって押圧力を付与する。これにより、
図2Bに示すように、貫通部材40の胴部42は、強化基材31の繊維同士の隙間Gを通ってプリフォーム30(強化基材31)を貫通する。
【0046】
さらに、押圧部210によって貫通部材40に押圧力を付与する。貫通部材40の端部40bを受け部220の凹部220aに押し付けて変形させて、
図2Cに示すように、貫通部材40の端部40bに凹部220aの形状を転写した頭部41bが形成される。このようにして、貫通部材40の頭部41a、41bによって強化基材31を挟持するように強化基材31に対して固定された中間部材20を形成する。
【0047】
ステップS13では、
図3、
図5に示すように、貫通部材40が成形型310の注入口315近傍で、かつ、注入口315よりも強化基材31の外周縁31a側になるように、キャビティ314内に中間部材20を配置する。注入口315近傍は、樹脂50の流動が最も速いため、強化基材31の配置に乱れが生じやすい。上記のように、注入口315近傍に貫通部材40を配置することによって、強化基材31の配置の乱れを好適に抑制することができる。また、貫通部材40を注入口315よりも強化基材31の外周縁31a側に配置することによって、貫通部材40が樹脂50の流動を妨げることを抑制することができる。
【0048】
ステップS14では、
図5に示すように、成形型310の壁面311a、312a間の距離が貫通部材40の高さと一致するように成形型310を閉じる。これによって、貫通部材40の頭部41a、41b(両端部40a、40b)に壁面311a、312aが当接して、壁面311a、312aによって貫通部材40を挟持して固定することができるとともに、成形型310の壁面311a、312aと強化基材31との間の少なくとも一部に隙間Gを形成することができる。
【0049】
ステップS15では、
図6に示すように、貫通部材40を挟持した状態を維持したまま、樹脂注入部330によって注入口315を介してキャビティ314内に樹脂50を注入する。この際、成形型310の壁面311a、312aと強化基材31との間の隙間Gを流路として利用することによって、キャビティ314内に注入された樹脂50を円滑に流動させることができる。樹脂50が強化基材31に含浸しやすくなるため、樹脂50の注入速度(単位時間あたりの樹脂50の注入量)を上げることができる。なお、樹脂50の注入によるキャビティ314内の内圧の上昇によって、成形型310が開かないように、プレス部320が付与する型締圧力を調整する。
【0050】
仮に、
図8Aに示す対比例のように、成形型310の壁面311a、312aによって強化基材31を挟持した状態で、キャビティ314内に樹脂50を注入すると、強化基材31が樹脂50の流動の妨げとなる。これにより、本実施形態のように隙間Gを形成する場合に比べて流動抵抗が高くなってしまう。成形時間を短縮するために、樹脂50の注入圧力を上げると、
図8B、
図8Cに示すように、樹脂50の流動によって強化基材31の配向に乱れが生じる。この状態で、樹脂50を硬化すると、複合材料10の品質が低下する原因となってしまう。
【0051】
本実施形態では、樹脂50をキャビティ314内に注入する際、貫通部材40によって強化基材31の配向の乱れを抑制することができる。さらに、隙間Gを形成することによって樹脂50の流動抵抗を低下することができる。これにより、樹脂50の注入速度を上げても強化基材31の配向が乱れることなく、より高品質な複合材料10を比較的短時間で成形することができる。
【0052】
ステップS16では、プレス部320によって成形型310に型締圧力を増加させて、成形型310をさらに閉じることによって、
図7Aに示すように貫通部材40の一部を圧潰する。これによって、成形型310の壁面311a、312aと強化基材31との間の隙間Gを小さくすることができる。ここで、貫通部材40は熱によって軟化する性質を備えるため、流動する樹脂50の反応熱や成形型310の熱によって軟化し、成形型310を閉じる方向に圧潰して成形型310の壁面311a、312aと強化基材31との間の隙間Gを好適に小さくすることができる。
【0053】
樹脂50の流動がさらに進むと、熱可塑性樹脂である貫通部材40は徐々に溶融して樹脂50と混ざり合う。これにより、
図7Bに示すように、貫通部材40が存在していた部位を樹脂50によって置換する。なお、
図7Aに示すように貫通部材40を圧潰するのと同時に、貫通部材40を溶融させて、
図7Bに示すように貫通部材40が存在していた部位を樹脂50によって置換してもよい。
【0054】
また、貫通部材40は、樹脂50と親和性を有する材料によって形成されているため、複合材料10の物性に影響を与えるような界面等を形成することなく、均質に混ざり合うことができる。
【0055】
ステップS17では、キャビティ314内の樹脂50を硬化させる。この際、成形型310を加熱してもよいし、予め成形型310を加熱しておいてもよい。ステップS18では、樹脂50が硬化した後、成形型310を開いて、複合材料10を脱型する。これにより、複合材料10の成形が完了する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る複合材料10の成形方法によれば、強化基材31に貫通部材40を固定して、貫通部材40の少なくとも一方の端部40a、40bが強化基材31から突出するように配置し、キャビティ314内に強化基材31および貫通部材40を配置する。次に、成形型310を閉じて、キャビティ314を形成する成形型310の壁面311a、312aに貫通部材40の少なくとも一方の端部40a、40bを当接させ、壁面311a、312aに端部40a、40bを当接させた状態を維持したまま、成形型310の注入口315からキャビティ314内に樹脂50を注入する。
【0057】
このように構成した複合材料10の製造方法によれば、成形型310の壁面311a、312aに強化基材31に固定した貫通部材40の端部40a、40bを当接させて、貫通部材40および成形型310の壁面311a、312aによって強化基材31を保持する。このため、キャビティ314内に樹脂50を注入する際に樹脂50の流動によって生じる強化基材31の配置の乱れを抑制することができる。これにより、成形品である複合材料10の外観品質を向上させるとともに、樹脂50の高圧注入を可能とすることによって成形時間を短縮することができる。
【0058】
また、強化基材31に貫通部材40を貫通して、貫通部材40の両端部40a、40bが強化基材31から突出するように配置し、キャビティ314内に強化基材31および貫通部材40を配置する。次に、成形型310を閉じて、キャビティ314を形成する成形型310の壁面311a、312aによって貫通部材40の両端部40a、40bを挟持し、貫通部材40を挟持した状態を維持したまま、成形型310の注入口315からキャビティ314内に樹脂50を注入する。これにより、強化基材31に貫通した貫通部材40を成形型310の壁面311a、312aによって挟持するため、キャビティ314内に樹脂50を注入する際に樹脂50の流動によって生じる強化基材31の配置の乱れをより確実に抑制することができる。
【0059】
また、樹脂50を注入する際に、貫通部材40の両端部40a、40bによって強化基材31と成形型310の壁面311a、312aとの間の少なくとも一部に隙間Gを形成する。隙間Gを利用してキャビティ314内に注入された樹脂50がより円滑に流動し、樹脂50が強化基材31に含浸しやすくなるため、樹脂50の注入速度(単位時間あたりの樹脂50の注入量)を上げることができる。これによって、成形品である複合材料10の外観品質をより一層向上させるとともに、成形時間をさらに短縮することができる。
【0060】
また、貫通部材40は、キャビティ314内において注入口315の近傍で、かつ、注入口315よりも強化基材31の外周縁31a側に配置する。これによって、貫通部材40が樹脂50の流動を妨げることがなく、円滑に樹脂50を強化基材31に含浸させることができるため、成形時間を短縮することができる。
【0061】
また、貫通部材40を強化基材31に貫通する前に、複数の強化基材31を積層するため、複数の強化基材31のばらつきを抑制することができる。
【0062】
また、貫通部材40は、熱によって軟化する性質を備え、キャビティ314内に樹脂50を注入した後、成形型310をさらに閉じて、貫通部材40の少なくとも一部を、成形型310を閉じる方向に圧潰する。キャビティ314内に樹脂50を注入した後は、貫通部材40は、流動する樹脂50の反応熱や成形型310の熱によって軟化し、成形型310を閉じる方向に圧潰して成形型310の壁面311a、312aと強化基材31との間の隙間Gを好適に小さくすることができる。これによって、複合材料10の表面に過剰な樹脂リッチ部分が形成されることを抑制し、複合材料10の強度を向上させることができる。
【0063】
また、貫通部材40は、熱可塑性樹脂によって形成され、強化基材31に樹脂50を含浸させる際に、流動する樹脂50の反応熱や成形型310の熱によって、貫通部材40が溶融して、貫通部材40が存在していた部位を、樹脂50によって置換することができる。このため、貫通部材40および貫通部材40を配置した強化基材31の周辺部分を除去する後加工を削減することができる。したがって、成形時間を短縮できるとともに、歩留りを向上させることができる。
【0064】
また、貫通部材40は、キャビティ314内に注入される樹脂50と親和性を有する材料によって形成される。このため、均質な複合材料10を形成することができるとともに、貫通部材40および貫通部材40を配置した強化基材31の周辺部分を除去する後加工を削減することができる。したがって、成形時間を短縮できるとともに、歩留りを向上させることができる。また、複合材料10の強度等の品質も向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態に係る中間部材20によれば、強化基材31を所定の形状に賦形したプリフォーム30と、強化基材31に固定されて、少なくとも一方の端部40a、40bが強化基材31から突出するように配置される貫通部材40と、を有している。複合材料10を成形する際に、端部40a、40bおよび成形型310の壁面311a、312aによって強化基材31を保持することができる。このため、成形型310のキャビティ314内に樹脂50を注入する際に樹脂50の流動によって生じる強化基材31の配置の乱れを抑制することができる。これにより、成形品である複合材料10の外観品質を向上させるとともに、樹脂50の高圧注入を可能とすることによって成形時間を短縮することができる。
【0066】
また、貫通部材40は、強化基材31に貫通して、両端部40a、40bが強化基材31から突出するように配置されている。複合材料10を成形する際に、貫通部材40の両端部40a、40bを成形型310の壁面311a、312aによって挟持することによって強化基材31をより確実に保持することができる。
【0067】
また、プリフォーム30は、複数の強化基材31を含むため、複数の強化基材31のばらつきを抑制することができる。
【0068】
また、貫通部材40は、熱によって軟化する性質を備えるため、成形型310の型締圧力によって貫通部材40を圧潰することができる。これによって、所望の複合材料10の厚さに合わせて貫通部材40の高さを調整することができるため、複合材料10の表面に樹脂リッチが形成されることを抑制し、複合材料10の強度および外観品質を向上させることができる。
【0069】
また、貫通部材40は、熱可塑性樹脂によって形成されるため、強化基材31に樹脂50を含浸させる際に、流動する樹脂50の反応熱や成形型310の熱によって、貫通部材40が溶融して、貫通部材40が存在していた部位を、樹脂50によって置換することができる。このため、貫通部材40および貫通部材40を配置した強化基材31の周辺部分を除去する後加工を削減することができる。したがって、成形時間を短縮できるとともに、歩留りを向上させることができる。
【0070】
また、貫通部材40は、複合材料10に使用される樹脂50と親和性を有する材料によって形成されている。これにより、強化基材31に樹脂50を含浸させる際に、流動する樹脂50の反応熱や成形型310の熱によって、貫通部材40が溶融して樹脂50と混ざり合って一体に形成される。このため、均質な複合材料10を形成することができるとともに、貫通部材40および貫通部材40を配置した強化基材31の周辺部分を除去する後加工を削減することができる。したがって、成形時間を短縮できるとともに、歩留りを向上させることができる。また、複合材料10の強度等の品質も向上させることができる。
【0071】
〈変形例〉
図10、
図11を参照して、変形例に係る複合材料用中間部材620および複合材料10の成形方法を説明する。
【0072】
変形例に係る複合材料用中間部材620の支持部材640は、強化基材31に貫通した部分を有さず、一方の端部640aが強化基材31から突出するように固定されている点で前述した実施形態の貫通部材(支持部材)40と異なる。なお、前述した実施形態と同一の構成には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0073】
支持部材640は、
図10に示すように、プリフォーム30の強化基材31の一部を挟持するクリップ状に構成されている。支持部材640は、強化基材31から突出するように固定された一方の端部640aと、強化基材31の一部を挟んで一方の端部640aに対向するように配置された他方の端部640bと、端部640a、640b同士を接続する接続部642と有している。
【0074】
支持部材640を構成する材料は、前述した実施形態に係る貫通部材40を構成する材料と同様の材料を使用することができる。
【0075】
変形例に係る複合材料10の成形方法は、ステップS12(
図4を参照)において、支持部材640をプリフォーム30に貫通させない点、およびステップS14(
図4を参照)において、支持部材640の両端部640a、640bを挟持しない点で前述した実施形態と異なる。変形例に係る複合材料10の成形方法のその他の工程は、前述した実施形態と同様なので説明を省略する。
【0076】
変形例に係る複合材料10の成形方法のステップS12では、強化基材31の一部を支持部材640によって挟持する。これにより、支持部材640は、強化基材31に固定されて、支持部材640の一方の端部640aが強化基材31から突出するように配置される。支持部材640を強化基材31に貫通させないため、比較的短時間で容易に支持部材640を強化基材31に固定することができる。
【0077】
ステップS14では、
図11に示すように、成形型310の一方の壁面311aに支持部材640の一方の端部640aを当接させる。支持部材640の端部640aは、成形型310の一方の壁面311aと強化基材31との間に介在して隙間Gを形成する。
【0078】
図11に示す状態を維持したまま、次の工程でキャビティ314内に樹脂50を注入する。このとき、隙間Gを流路として利用することによって、キャビティ314内に注入された樹脂50を円滑に流動させることができる。
【0079】
以上説明したように、変形例に係る複合材料10の成形方法および複合材料用中間部材620によれば、前述した実施形態と同様の構成によって同様の効果を奏する。
【0080】
さらに、変形例に係る複合材料10の成形方法によれば、強化基材31に支持部材640を固定して、支持部材640の一方の端部640aが強化基材31から突出するように配置し、キャビティ314内に強化基材31および支持部材640を配置する。次に、成形型310を閉じて、キャビティ314を形成する成形型310の一方の壁面311aによって支持部材640の一方の端部640aを当接させ、一方の壁面311aに端部640aを当接させた状態を維持したまま、成形型310の注入口315からキャビティ314内に樹脂50を注入する。
【0081】
このように構成した複合材料10の製造方法によれば、一方の壁面311aに支持部材640の端部640aを当接させて、支持部材640の端部640aと他方の壁面311bによって強化基材31を挟持する。このため、キャビティ314内に樹脂50を注入する際に樹脂50の流動によって生じる強化基材31の配置の乱れを抑制することができる。これにより、成形品である複合材料10の外観品質を向上させるとともに、樹脂50の高圧注入を可能とすることによって成形時間を短縮することができる。
【0082】
また、本実施形態に係る複合材料用中間部材620によれば、強化基材31を所定の形状に賦形したプリフォーム30と、強化基材31に固定されて、一方の端部640aが強化基材31から突出するように配置される支持部材640と、を有している。複合材料10を成形する際に、一方の壁面311aに支持部材640の端部640aを当接させて、支持部材640と他方の壁面311bによって強化基材31を挟持することができる。このため、成形型310のキャビティ314内に樹脂50を注入する際に樹脂50の流動によって生じる強化基材31の配置の乱れを抑制することができる。これにより、成形品である複合材料10の外観品質を向上させるとともに、樹脂50の高圧注入を可能とすることによって成形時間を短縮することができる。
【0083】
以上、実施形態および変形例を通じて複合材料の成形方法および複合材料用中間部材を説明したが、本発明は実施形態および変形例において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0084】
例えば、複合材料の成形方法および複合材料用中間部材において、支持部材は、強化基材を貫通や挟持することによって強化基材に固定される構成に限定されず、例えば、接着剤等によって接合されることによって強化基材に固定されてもよい。
【0085】
また、複合材料の成形方法において、成形型のキャビティ内に複合材料用中間部材を配置し、成形型の壁面によって支持部材の両端部を挟持する構成に限定されず、成形型の壁面に支持部材の少なくとも一方の端部を当接させていればよい。
【0086】
また、支持部材の形状は、強化基材を固定して、支持部材の少なくとも一方の端部が強化基材から突出するように配置される限りにおいて、実施形態および変形例において説明した形状に特に限定されない。
【0087】
また、支持部材を形成する材料は、樹脂等の有機系の材料に限定されず、例えば、金属材料等の無機系の材料であってもよい。この場合、成形型の型締圧力によって圧潰することができる程度に柔らかい材料を使用することが好ましい。柔らかい材料としては、例えば、アルミニウムが挙げられる。
【0088】
また、支持部材を形成する熱によって軟化する材料は、熱可塑性樹脂に限定されず、例えば、低分子エポキシ等の熱硬化性樹脂でもよい。複合材料の母材である樹脂と同種の材料を使用することによって、より均質な複合材料を形成することができる。また、キャビティ内に樹脂を注入する際に、支持部材が存在していた部位の全部を注入した樹脂によって置換する構成に限定されず、支持部材が存在していた部位の少なくとも一部を、注入した樹脂によって置換すればよい。
【0089】
また、成形型のキャビティ内に樹脂を注入した後に、支持部材および支持部材を配置した強化基材の周辺部分を除去する後加工を施してもよい。
【0090】
また、複合材料は、複数の強化基材を積層して形成するとしたが、1枚の強化基材によって複合材料を形成してもよい。