(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献4等にも開示されているように、上記のような前処理装置では、予め試料載置部に載置された多数の試料容器のうちの一つを選択し、その試料容器に収容されている試料に対する所定の前処理を実行し、その処理済みの試料が収容されている容器を次段の分析装置が扱える位置まで移送する構成を有している。こうした前処理装置で多数の試料の前処理を実施したあとに、その多数の試料をLC−MS等の分析装置で順次分析するバッチ分析を行う場合、LC−MSにおいて多数の試料のうちの一つを選択して該試料をLC−MSに導入するオートサンプラの試料載置部に、前処理済みの試料が収容された試料容器が多数載置されることになる。
【0010】
即ち、前処理装置の試料載置部に多数の試料容器が載置される一方、LC−MSのオートサンプラの試料載置部にも多数の試料容器が載置される。装置の仕様にも依るが、それぞれの試料載置部に載置される試料容器の数は百個近く或いはそれ以上である。前処理装置の試料載置部における或る位置に置かれている試料容器中の試料を前処理して得られた前処理済み試料が、LC−MSのオートサンプラの試料載置部のどの位置に置かれるのかは、前処理装置及びオートサンプラの動作を制御するプログラムによって決まるので、一意に決まる。しかしながら、上述したように各試料載置部において試料容器の数は多いため、前処理装置の試料載置部における試料容器の位置とLC−MSのオートサンプラの試料載置部における試料容器との位置との対応関係をオペレータは把握しにくい。
【0011】
例えば試料を分析した結果、オートサンプラの試料載置部において或る位置に置かれている試料の状態が悪い(例えば細胞がすでに分化している)ことが判明した場合に、前処理済みのその試料だけでなく前処理をしてしない試料も廃棄したいようなことがある。しかしながら、前処理装置の試料載置部における試料容器の位置とLC−MSのオートサンプラの試料載置部における試料容器との位置との対応関係の認識をオペレータが誤ると、本来は残すべき試料を間違って廃棄してしまうおそれがある。
【0012】
また、場合によっては、オートサンプラの試料載置部に載置されている多数の試料の中から特定の培養条件(培養名、播種日時や採取日時など)の試料を選択的に分析したいこともあるが、前処理装置の試料載置部における試料容器の位置とLC−MSのオートサンプラの試料載置部における試料容器との位置との対応関係が容易に把握できないと、目的とする試料を選択するのに手間が掛かってしまう。
【0013】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、オペレータが前処理装置の試料載置部における試料容器の位置と、該容器内の試料が前処理されたあとの試料が収容されている又は収容される予定である試料容器が置かれている分析装置の試料載置部における位置との対応関係を、容易に且つ正確に把握することができる自動分析システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために成された本発明は、試料に対して所定の前処理を実行したあと該前処理済みの試料に対し所定の分析を実行する自動分析システムであって、
a)それぞれ試料が収容された複数の試料容器が載置される試料載置部を有し、該試料載置部に載置されている試料容器中の試料に対して前処理を実行する前処理装置と、
b)
前記前処理装置による前処理が終了した試料が一時的に収容される容器を後記分析装置の所定位置まで移送する前処理済み試料移送部と、
c)
前記前処理済み試料移送部により所定位置まで移送された容器中の前処理済み試料が採取され収容される試料容器を複数載置する試料載置部を有し、該試料載置部に載置されている試料容器中の前処理済み試料に対して分析を実行する分析装置と、
d)前記前処理装置の試料載置部における一つの試料容器と、該試料容器に収容されている試料が前処理された前処理済み試料が収容されて前記分析装置の試料載置部に載置されている試料容器とに同じ試料容器識別子を割り当てて管理する試料容器識別子管理部と、
e)前記前処理装置の試料載置部における複数の試料容器の配置状態を示す第1の試料配置画像と、前記分析装置の試料載置部における複数の試料容器の配置状態を示す第2の試料配置画像とを同じ画面上の異なる領域に表示するとともに、前記試料容器識別子管理部による管理に従って、前記第1の試料配置画像における各試料容器に対応する表示領域と前記第2の試料配置画像における各試料容器に対応する表示領域とで、同じ試料に由来する試料が収容されるそれぞれの試料容器の表示領域に対して同じ試料容器識別子を表示する表示処理部と、
を備えることを特徴としている。
【0015】
本発明における分析装置における分析手法は特に限定されないが、分析装置は例えば液体クロマトグラフ(LC)、ガスクロマトグラフ(GC)、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC−MS)、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC−MS)などである。また、前処理装置における前処理の内容も特に限定されないが、例えば試料が生体試料である場合、前処理は、分析に支障となる様々な成分(タンパク質など)を除去する処理などとすることができる。ここでいう生体試料とは、血液などの生体から採取された試料そのものである場合もあるが、上述したような細胞や生体組織を培養する際にそれらから出る成分を含む培地試料であってもよい。
【0016】
本発明においては、分析に先立って、例えば培地試料などの生体試料がそれぞれ収容された多数の試料容器が前処理装置の試料載置部に用意される。試料容器は例えばバイアルであり、その場合、試料載置部は例えばバイアルの底部が収容される凹部が形成されたラックである。前処理が開始されると、前処理装置は、用意された試料容器中の試料に対する前処理を順次実行する。例えば前処理が終了した試料は試料容器とは別の容器に一旦収容され、該容器が分析装置の所定位置に移送される。
【0017】
分析装置では所定位置に移送された容器中から前処理済み試料を所定量吸引して該分析装置の試料載置部に置かれている試料容器(前処理に使用された試料容器とは異なる試料容器)に注入する。その際に希釈などを行ってもよい。この動作を繰り返すことで、分析装置の試料載置部に載置されている試料容器には、それぞれ異なる前処理済み試料が収容される。分析装置は、この試料容器中の前処理済み試料に対する分析を順次実行し、試料毎に分析結果を取得する。例えば分析装置がLC−MSである場合、分析結果は一又は複数の質量電荷比における所定の時間範囲の抽出イオンクロマトグラム(マスクロマトグラムともいう)データである。
【0018】
試料容器識別子管理部は、前処理装置の試料載置部に載置される各試料容器の試料容器識別子と分析装置の試料載置部に載置される各試料容器の試料容器識別子とについて、同じ試料由来の試料が同じ識別子になるように該識別子を割り当て、その割り当て情報を管理する。試料容器識別子は典型的には試料容器番号であるが、適宜の記号や符号であってもよい。
【0019】
分析の開始前や分析中、或いは分析終了後などの任意の時点でのオペレータの所定の操作に応じて、表示処理部は、前処理装置の試料載置部における複数の試料容器の配置状態を示す第1の試料配置画像と、分析装置の試料載置部における複数の試料容器の配置状態を示す第2の試料配置画像とを同じ画面上の異なる領域に配置した画面を作成して表示部に表示する。このとき、試料容器識別子管理部による識別子の管理情報に基づき、第1の試料配置画像における各試料容器に対応する表示領域と第2の試料配置画像における各試料容器に対応する表示領域とについて、一つの試料の前処理前と前処理後の試料がそれぞれ収容されている二つの試料容器に対応する表示領域に同じ識別子を表示する。
【0020】
これにより、前処理装置の試料載置部における試料容器の配置状態と分析装置の試料載置部における試料容器の配置状態とが同じ画面上に表示される。そして、それぞれの試料載置部における試料容器の配置状態を示す第1の試料配置画像と第2の試料配置画像とでは、或る試料が収容されている試料容器に対応する表示領域とそれを前処理した前処理済み試料が収容されている試料容器に対応する表示領域とに同じ試料容器識別子が付される。したがって、オペレータはその試料容器識別子から、両試料載置部における試料容器の位置の対応関係を容易に且つ確実に把握することができる。
【0021】
また本発明において好ましくは、前記表示処理部は、前記前処理装置及び前記分析装置からそれぞれ動作の進行状況を示す情報を受け取り、その進行状況に応じて、前記第1の試料配置画像における各試料容器に対応する表示領域の表示の態様と、前記第2の試料配置画像における各試料容器に対応する表示領域の表示の態様とをそれぞれ変更する構成とするとよい。
【0022】
表示の態様の変更とは典型的には表示色を変更すればよいが、表示領域を示す線の種類や太さを変更してもよいし、或いは表示領域に対応する試料容器番号の表示色やフォントの種類などを変更してもよい。
この構成によれば、オペレータは前処理の動作の進行状況と分析の動作の進行状況とを一つの画面上で容易に且つ正確に把握することができる。
【0023】
また本発明では、
前記第1の試料配置画像における各試料容器に対応する表示領域の一つ又は複数をユーザが指示するための表示領域指示部と、
前記表示処理部に含まれ、前記表示領域指示部を介して一つ又は複数の表示領域が指示されたとき、該一つ又は複数の表示領域に対応付けられている試料容器に収容されている試料の情報をユーザに入力させるための入力設定画面を表示する試料情報設定画面表示処理部と、
前記試料情報設定画面表示処理部により表示されている入力設定画面上でユーザの操作により入力された試料情報を試料容器識別子に対応付けて記憶する試料情報取得部と、
をさらに備える構成とすることができる。
【0024】
ここでいう試料情報の内容は試料の種類によって異なる。例えば試料が上述したような細胞を培養している培地由来の培地試料である場合、試料情報は、培養名、播種日時、試料の採取日時、培養プレート番号などの少なくとも一つを含むものとすることができる。この構成によれば、オペレータは前処理の動作の進行状況と分析の動作の進行状況とが確認可能な画面上で、簡単な操作によって、試料情報を入力設定することができる。
【0025】
なお、試料情報を入力設定する際に、前処理装置の試料載置部における各試料容器について試料情報が未設定であるのか或いは試料情報を設定済みであるのかが、第1の試料配置画像上で一目で分かったほうが都合がよい。
そこで、本発明において、前記表示処理部は、前記第1の試料配置画像における各試料容器に対応する表示領域の表示の態様を、試料情報が設定されているものといないものとで変更する構成とするとよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、前処理装置の試料載置部における試料容器の位置と、該試料容器に収容されている試料を前処理した前処理済み試料が収容されている、分析装置の試料載置部における試料容器の位置との対応関係を、視覚上で容易に且つ的確に把握することができる。それによって、例えばオペレータが手動操作で試料を選択して分析したり試料を採取したりする場合でも、試料の取り違いを防止することができるとともに、作業効率を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る自動分析システムの一実施例である培地試料自動分析システムについて、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1は本実施例の培地試料自動分析システムの概略ブロック構成図である。本実施例のシステムは、多能性細胞などの被検細胞が培養される培地の培養上清におけるバイオマーカー(細胞による代謝物)の存在量に基づいて、その被検細胞の分化状態を評価するために用いられる、培養細胞評価システムである。
【0030】
本実施例のシステムは、前処理装置2、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC−MS)3、データ処理部4、制御部5、主制御部6、操作部7、表示部8などを備える。
図1中に点線で記載したブロックの培養装置1は本システムには含まれず、本システムで分析の対象となる培地試料を提供するものである。
【0031】
概略的にいうと、本システムでは、培養装置1において得られる多数の培地試料が前処理装置2に提供され、前処理装置2では多数の培地試料に対して所定の前処理が順次行われる。そして、前処理装置2により前処理が行われたあとの各培地試料(前処理済み試料)がLC−MS3に送られ、該LC−MS3において各培地試料中の成分が順次分析される。その分析により得られたデータはデータ処理部4に送られ、データ処理部4は所定のデータ処理を実施してその結果を主制御部6を通して表示部8に出力してユーザ(オペレータ)に提示する。制御部5は上記のような処理のために、前処理装置2、LC−MS3及びデータ処理部4を制御する。主制御部6は主として操作部7や表示部8を通したユーザインターフェイスの機能を有する。
各部の構成について詳しく説明する。
【0032】
培養装置1は被検細胞を培養するための装置である。ここでは被検細胞は例えば幹細胞、典型的にはES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞である。また、幹細胞から分化誘導を行った細胞も被検細胞として用いることができる。こうした被検細胞の培養に使用される培地としては、幹細胞の培養に一般的に使用される様々な培地、例えばDMEM/F12や、DMEM/F12を主成分とする培地(mTeSR1など)を用いることができる。こうした培地上で細胞を培養する際に、細胞による各種の代謝物が培養上清中に混じる。オペレータは手作業で培養上清の一部を採取して所定のバイアル(試料容器)に注入することで培地試料を調製する。もちろん、培養上清の一部が毎日決まった時刻に自動的に採取される、つまりは、培地試料が自動的に調製されるようにしてもよい。
【0033】
前処理装置2は、多数のバイアルが載置されるサンプルラックを含む試料載置部20と、該試料載置部20に載置されている多数のバイアルの中から選択した一つのバイアル中の培地試料に対し、試料分注、試薬分注、撹拌、濾過等の工程を通して例えばタンパク質などの不要な成分を除去する前処理を実行する前処理実行部21と、前処理が終了した培地試料が一時的に収容される容器をLC−MS3の所定位置まで移送する前処理済み試料送出部22と、を備える。
【0034】
本例では、後述するように、前処理装置2で使用されるサンプルラックは上面視で略円弧状であり、試料載置部20には6個のサンプルラックが円環の周方向に沿って並べられている。1個のサンプルラックには10本又は11本のバイアルを載置可能である。即ち、各サンプルラックには複数のバイアルの底部をそれぞれ収納可能な大きさの凹部が形成されており、その各凹部にそれぞれバイアルを載置することができる。
【0035】
また、タンパク質を除去する前処理は、具体的には、培地試料に内部標準試料としてのイソプロピルリンゴ酸を試薬として添加し、例えばメタノール、クロロホルム及び水を2.5:1:1の比率で混合した抽出溶液で処理するものとすることができる。ただし、前処理はタンパク質除去に限られるものではなく、培地試料に対して他の前処理が行われてもよい。なお、前処理装置2としては例えば特許文献4、非特許文献2などに開示されている装置を利用することができるが、本発明はこれに限るものでもない。
【0036】
LC−MS3は、図示しないものの送液ポンプ、インジェクタ、カラム等を含む液体クロマトグラフ(LC)部31と、多数の培地試料のうちの一つを選択してLC部31に導入するオートサンプラ30と、LC部31のカラムで時間方向に分離された試料中の成分に対し質量分析を行う質量分析(MS)部32と、を含む。オートサンプラ30は、前処理装置2で用いられたものとは異なる多数のバイアルが載置されるサンプルラックを含む試料載置部302と、前処理装置2の前処理済み試料送出部22により所定位置まで移送された容器中の前処理済み培地試料を吸引して超純水を加えて所定倍率に希釈したあとに、試料載置部302に載置されているバイアルに分注する試料希釈部301と、試料載置部302に載置されている多数のバイアルの中の一つのバイアルから前処理及び希釈済みの培地試料を所定量採取してLC部31のインジェクタに導入する試料採取部303と、を含む。
【0037】
本例では、後述するように、オートサンプラ30で使用されるサンプルラックは上面視で矩形状であり、1個のサンプルラックにn行m列(この例では12行8列)の行列状にバイアルを並べることが可能である。
【0038】
被検細胞の分化状態を評価するために、MS部32では、バイオマーカーとしての、例えばプトレシン、キヌレニン、シスタチオニン、アスコルビン酸、リボフラビン、ピルビン酸、セリン、システイン、トレオン酸、クエン酸及びオロト酸からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物をターゲットとした質量分析が行われる。MS部32として用いられる質量分析装置の方式は大気圧イオン源を備えたものであれば特に限定されず、例えば四重極型質量分析装置、タンデム四重極型質量分析装置、四重極−飛行時間型質量分析装置などを用いることができる。
【0039】
データ処理部4は、サンプル情報記憶部40、データ記憶部41、定量分析部42、分析結果記憶部43、結果表示処理部44などの機能ブロックを含む。サンプル情報記憶部40は、後述するように前処理装置2において培地試料が収容されているバイアル毎に入力設定されるサンプル情報を記憶するものである。データ記憶部41はLC−MS3において分析が行われることで収集されたデータを記憶するものである。定量分析部42は特定の化合物をターゲットとして得られたデータ毎に抽出イオンクロマトグラムを作成し、予め作成された検量線に利用し、該クロマトグラムにおいて観測されるピークの面積値や高さ値に基づいてその化合物の濃度値などを計算するものである。分析結果記憶部43は定量分析部42などによる計算結果を記憶するものである。結果表示処理部44は計算された分析結果などに基づくグラフを作成するとともに該グラフを配置した所定形式の画面を作成し、これを主制御部6を介して表示部8に出力するものである。
【0040】
制御部5は、前処理実行制御部50、LC−MS実行制御部51、表示制御部52、入力処理部53、バイアル番号管理部54、設定情報記憶部55などの機能ブロックを含む。前処理実行制御部50は前処理装置2における前処理動作を制御するものである。LC−MS実行制御部51はLC−MS3における分析動作を制御するものである。表示制御部52は後述するように、前処理装置2及びLC−MS3での動作状態を表示する画面や、前処理装置2に供される培地試料の情報(サンプル情報)或いは各サンプルについての分析条件などをオペレータが設定するための画面を作成し、これを主制御部6を介して表示部8に出力するものである。入力処理部53はオペレータによる操作部7の入力操作に応じて所定の処理を実行するものである。バイアル番号管理部54は予め決められた規則に従って、或いは、ユーザによる手動設定に応じて、試料載置部20と試料載置部302それぞれにおけるバイアル位置にバイアル番号を割り当て、その割当ての情報を管理するものである。また、設定情報記憶部55はオペレータの入力操作等によって入力設定された、各培地試料についてのサンプル情報や分析条件などを記憶しておくものである。
【0041】
なお、データ処理部4、制御部5、及び主制御部6の実体はパーソナルコンピュータ(又はより高性能なワークステーション)であり、該コンピュータにインストールされた専用の一又は複数のソフトウェアを該コンピュータ上で動作させることにより、上記各ブロックの機能が達成される構成とすることができる。この構成では、操作部7はパーソナルコンピュータ等に付設されているキーボードやマウス等のポインティングデバイスであり、表示部8はディスプレイモニタである。
【0042】
上述したように本システムでは、前処理装置2において試料載置部20に載置される多数のバイアルの中の一つのバイアルに収容されている培地試料が前処理及び希釈の操作を受けて、オートサンプラ30の試料載置部302に載置される多数のバイアルの中の一つのバイアル中に注入される。したがって、前処理装置2における試料載置部20に載置されている多数のバイアルとオートサンプラ30における試料載置部302に載置されている多数のバイアルとは原則として一対一に対応付けることができる。そのバイアル同士の対応関係をオペレータが容易に且つ正確に把握できるように、特徴的な表示制御を実施している。次にその表示制御について説明する。
【0043】
オペレータが操作部7で所定の操作を行うと、主制御部6を介して指示を受けた表示制御部52は、所定の形式の装置状態確認画面を作成し表示部8の画面上に表示させる。
図2はこの装置状態確認画面100の一例を示す模式図である。この装置状態確認画面100は、前処理装置2の動作及びLC−MS3の動作に関する情報を同時に表示するための画面である。即ち、装置状態確認画面100は概ね左右に二分割されており、左方が前処理状態表示領域110、右方が分析状態表示領域120となっている。
【0044】
装置状態確認画面100の前処理状態表示領域110には、前処理装置2における試料載置部20の上面視画像をグラフィカルに表す第1の試料配置画像111が表示されている。この第1の試料配置画像111は、実際の試料載置部20と同じように、円環の周方向に沿って並べられた6個の略円弧状のサンプルラックに対応付けて6個の円弧状領域112に分割されており、その各円弧状領域112に複数(この例では11本)のバイアルにそれぞれ対応する円形状領域113が設けられている。
【0045】
ここでは
図2に記載されているように、6個の円弧状領域112にそれぞれ、「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」の英文字が領域名として与えられている。また、各円弧状領域112中の複数の円形状領域113にそれぞれ、「1」〜「11」の連続番号である数字が与えられている。第1の試料配置画像111中の全ての円形状領域113はその円形状領域113が属する円弧状領域112を表す英文字と、その円弧状領域112における連続番号である数字とを組み合わせたバイアル番号により特定され、その円形状領域113に対応する位置に置かれるバイアルにはそのバイアル番号が試料容器識別子として割り当てられる。試料載置部20におけるバイアルの位置とバイアル番号との関係はバイアル番号管理部54により管理される。
【0046】
それぞれの円形状領域113の表示色は、その円形状領域113に対応する位置のバイアル中の培地試料に対する前処理の実行状況等を示している。具体的に、ここで表される前処理の実行状況等としては、サンプル名等のサンプル情報が未だ設定されていない「サンプル情報未設定」、サンプル情報は設定されているものの未だ前処理は実行されていない「サンプル情報設定済」、前処理の実行中である「前処理実行中」、前処理が終了している「前処理実行済」、その位置にバイアルが存在しないことを示す「バイアルなし」、前処理中に異常が生じた「データ異常」、の6種類である。ただし、ここでは図面の制約上、色を表現できないために、塗りつぶしの相違や領域を示す線種の相違等により前処理の実行状況等を示している。
【0047】
図2の例では、バイアル番号が「A1」〜「A5」である5本のバイアルに対応する円形状領域113が「前処理実行済」の状態になっており、バイアル番号が「A6」である1本のバイアルに対応する円形状領域113が「前処理実行中」の状態になっている。また、それ以外は全て「サンプル情報設定済」の状態になっている。
【0048】
前処理状態表示領域110中の第1の試料配置画像111の上部には、前処理装置2の動作状態を示す動作状態表示部114が設けられている。この例では、前処理装置2における前処理の動作が可能な準備完了状態となっているため動作状態表示部114には「準備完」と表示されているが、例えば前処理装置2が停止しているときには「停止中」などと、また起動されて未だ準備が完了していないときには「準備中」などと動作状態表示部114の表示は切り替わる。
【0049】
一方、装置状態確認画面100の分析状態表示領域120には、オートサンプラ30における試料載置部302の上面視画像をグラフィカルに表す第2の試料配置画像121が表示されている。この第2の試料配置画像121には、実際の試料載置部302と同じように、n行m列(この例では12行8列)の行列状に並べられた複数のバイアルにそれぞれ対応する円形状領域122が設けられている。
【0050】
ここでは
図2に示すように、第2の試料配置画像121中の各列に「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」、[G]、「H」の英文字が割り当てられ、各行に「1」〜「12」の連続番号である数字が割り当てられている。第2の試料配置画像121中の全ての円形状領域122はその行上及び列上の位置に応じて、英文字と数字とを組み合わせたバイアル番号により特定され、その円形状領域122の位置にあるバイアルにはそのバイアル番号が試料容器識別子として割り当てられている。試料載置部302におけるバイアルの位置とバイアル番号との関係もバイアル番号管理部54により管理される。
【0051】
それぞれの円形状領域122の表示色は、その円形状領域122に対応する位置のバイアル中の前処理及び希釈済みの培地試料に対するオートサンプラ30での希釈動作の状況並びにLC部31及びMS部32での分析の実行状況等を示している。具体的に、ここで表される希釈動作及び分析の実行状況としては、未だ希釈処理が実行されていない「希釈未」、希釈処理は終了しているものの測定は行われていない「希釈済」、分析の実行中である「分析中」、分析が終了した「分析済」の4種類である。もちろん、ここでも色の代わりに、塗りつぶしの相違等により希釈動作及び分析の実行状況等を示している。
【0052】
図2の例では、サンプル番号が「A1」〜「A5」である5本のバイアルに対応する円形状領域122が「希釈済」の状態になっている。それ以外の全てのバイアルに対応する円形状領域122は「希釈未」の状態である。前述したように、本システムでは、希釈が行われた培地試料が各バイアルに注入されるから、円形状領域122が「希釈未」の状態である位置のバイアルには未だ培地試料が注入されていないことを意味する。
【0053】
分析状態表示領域120中の第2の試料配置画像121の上部には、LC部31及びMS部32の動作状態を示す動作状態表示部123が設けられている。この例では、LC部31及びMS部32の動作が可能な準備完了状態となっているため動作状態表示部123には「準備完」と表示されているが、例えばLC部31及びMS部32が停止しているときには「停止中」などと、また起動されて未だ準備が完了していないときには「準備中」などと動作状態表示部123の表示は切り替わる。
【0054】
また装置状態確認画面100の最上部には、分析を開始する際に操作される開始(Start)ボタン130、分析を一時停止させる際に操作される一時停止(Pause)ボタン131、分析を停止させる際に操作される停止(Stop)ボタン132、が配置されている。分析者は、予め登録されている分析メソッドを選択した後、開始ボタン130をクリック操作することにより、前処理を含む一連の分析の開始を指示することができる。ただし、
図2では、既に開始ボタン130が操作されて分析が進行している状態を示している。
【0055】
上述したように、バイアル番号管理部54は、前処理装置2の試料載置部20に置かれているバイアルの位置とバイアル番号との関係を管理するとともに、オートサンプラ30の試料載置部302に置かれているバイアルとバイアル番号との関係も管理している。この管理の下で、前処理装置2の試料載置部20に置かれている或るバイアル番号のバイアル中の培地試料を前処理したあとの試料(実際にはさらに希釈もされた試料)が、オートサンプラ30の試料載置部302に置かれている同じバイアル番号のバイアルに分注されるように、試料載置部20中のバイアルと試料載置部302中のバイアルとが対応付けられている。したがって、装置状態確認画面100内の第1の試料配置画像111上と第2の試料配置画像121上とで同じバイアル番号を有する領域に相当する位置のバイアルには、同じ培地試料由来の試料が収容されていることが保証される。それにより、オペレータは、一方の試料載置部20又は302に置かれているバイアル中の試料と同じ試料(ただし、前処理や希釈の有無は異なる)が他方の試料載置部302又は20のいずれの位置に置かれているバイアル中にあるのかを表示上で簡単に把握することができる。
【0056】
また、それぞれの試料載置部20、302に置かれているバイアル中の培地試料がどのような前処理又は分析の段階にあるのかも表示上で簡単に把握することができる。例えば
図2において一点鎖線で示したように、第1の試料配置画像111においてバイアル番号が「A1」〜「A5」である5本のバイアル中の培地試料について前処理装置2での前処理が終了し、それらがオートサンプラ30に移送されて既に希釈済の状態であることを第2の試料配置画像121において容易に認識することができる。
【0057】
図2に示した例は、前処理装置2の試料載置部20に載置されている全てのバイアルについてサンプル情報が設定されており既に分析が開始されている状態である。一方、分析開始前にオペレータは、前処理装置2の試料載置部20に載置した全てのバイアルについて、各バイアル中の培地試料についてのサンプル情報を入力設定するとともに、各培地試料をLC−MS4で分析するための分析条件を入力設定する。サンプル情報は、播種日時、培養名、培養プレート番号、採取日時などを含む。設定されたサンプル情報、及び分析条件を含む分析メソッドはバイアル番号に対応付けて設定情報記憶部55に記憶される。一つの方法として、サンプル情報は次のようにして設定することができる。
【0058】
図2に示すような装置状態確認画面100上の第1の試料配置画像111においてサンプル情報が未設定であるバイアルが存在する場合、オペレータはサンプル情報を設定したいバイアルに対応する円形状領域113を操作部7に含まれるポインティングデバイスによりクリック操作する。すると、表示制御部52はその操作を受けて、
図3に示すような、指示されたバイアル番号に対応するサンプル情報設定画面400を新たに開いて表示部8の画面上に表示する。
図3は「A1」であるバイアル番号が割り当てられた円形状領域113が指示されたときの例である。
【0059】
このサンプル情報設定画面400には、播種日時、培養名、培養プレート番号、採取日時、リファレンスなどのサンプル情報を入力するテキストボックス401が配置されている。リファレンスとは後述する分析結果の算出や処理の際に必要に応じて用いられる値であり、例えば本システムには含まれない別の装置における測定や観察により取得された、当該培地試料が得られた元の培養容器内の細胞数、乳酸値(糖が消費される際に生成される物質の量)、菌の濃度、或いは、培養液の吸光度など、任意の項目の値とすることができる。
【0060】
オペレータはサンプル情報に関する上記のような各項目について適宜の情報を入力し又は選択し、そのあと、確定ボタン402をクリック操作する。すると、入力処理部53はこの操作を受けて、そのときのバイアル番号に対するサンプル情報を確定させ、バイアル番号毎にサンプル情報を含むサンプル情報ファイルを作成し、該ファイルを設定情報記憶部55に記憶する。
【0061】
上記手順では、オペレータはバイアル毎にサンプル情報を入力設定する必要があるが、複数のバイアルつまりは培地試料について、播種日時、培養名、培養プレート番号、採取日時などのサンプル情報を予めまとめたテーブルを作成しておき、サンプル情報が未設定である複数のバイアルを選択指示したうえで、上記テーブル上で対応する複数のサンプル情報を選択することにより、複数のバイアルに対応するサンプル情報を一括して設定することもできる。
【0062】
上述したように入力処理部53は、バイアル毎にサンプル情報を含むサンプル情報ファイルを設定情報記憶部55に記憶するが、その際に、そのファイルの属性情報の一つであるカスタムプロパティにサンプル情報の各項目の情報を自動的に登録する。
図4は、ファイルプロパティのダイアログ画面410上でカスタムプロパティ411にサンプル情報が自動的に登録されている状態の一例を示す図である。ここでは、カスタムプロパティの値の種類としてテキストが設定され、播種日時、採取日時、培養名、培養プレート番号、QC値の情報がそれぞれ、「C2MAP_CultureStartingDate」、「C2MAP_CultureSamplingDate」、「C2MAP_CulturePlateNumber」、「C2MAP_CultureName」、「C2MAP_QC」という名前に対応する値として登録される。
上述したように制御部5においてバイアル毎に設定されたサンプル情報を含むファイルは適宜の時点でデータ処理部4に転送され、サンプル情報記憶部40にも記憶される。
【0063】
サンプル情報が格納されるファイルのデータ形式は本システムを製造するメーカーによって異なる可能性があるが、ファイルプロパティは例えばウィンドウズ(登録商標)などの同じOSベースであれば共有が可能である。これにより、例えば本システムを構成する前処理装置2のメーカーとLC−MS3のメーカーとが異なり、LC−MS3によるデータを処理するデータ処理部4で上記サンプル情報が格納されたファイルのデータを読み取ることができない場合であっても、そのファイルのプロパティを利用してサンプル情報を取得することができる。
【0064】
次に、本システムにおいて多数の培地試料に対する分析が実行されたあとの分析結果の表示の態様について説明する。
上述したように多数の培地試料についてLC−MS3で分析を行うことで収集されたデータはデータ記憶部41に保存される。定量分析部42はそのデータを用いて、バイアル毎に一又は複数の所定の化合物について抽出イオンクロマトグラムを作成し、当該化合物に対応するピークの面積値を計算する。さらに、予め作成しておいた検量線を参照して、ピーク面積値から濃度値を算出する。これにより、バイアル毎につまりは培地試料毎に、一又は複数の化合物についてのピーク面積値と濃度値とが求まり、それらは一つのファイルとして分析結果記憶部43に保存される。
【0065】
このとき、分析結果記憶部43に記憶される試料毎の分析結果のファイルは、サンプル情報記憶部40に記憶されている同じ培地試料についてのサンプル情報をデータとするファイルと紐付けされる。また、データ記憶部41に格納されている試料毎のデータファイルもサンプル情報のファイルと紐付けされる。これにより、例えばサンプル情報からその試料についての分析結果ファイルやデータファイルに簡便にアクセスすることができ、また逆に分析結果ファイルやデータファイルからその試料についてのサンプル情報を簡便に取得することもできる。その結果、分析に関するトレーサビリティを適切に管理することができる。
【0066】
通常、本システムが利用される培地分析では、培養中の被検細胞の分化状況を評価するために、一つの培養容器中の培養上清を例えば毎日同じ時刻に培養終了まで継続的に分析する。そのため、同じ培養名が付された培地試料が毎日分析され、それぞれデータファイルと分析結果ファイルとが作成されて記憶される。同じ培養容器由来の培地試料中の化合物(例えば細胞による代謝物)の量は日々変化するため、この時間的な変化を観察することは細胞評価において重要である。本システムでは以下のようにして、分析結果に基づくグラフをサンプル情報に対応付けて表示するようにしている。
【0067】
即ち、オペレータが操作部7で培養名などを指定したうえで所定の操作を行うと、結果表示処理部44は指定された情報に対応するサンプル情報のファイルと分析結果ファイルとをサンプル情報記憶部40及び分析結果記憶部43から読み出し、そのファイル中のデータに基づいて
図5、
図6に示すような主分析結果表示画面200を作成し表示部8に表示する。
図5は主分析結果表示画面200の全体を示す図、
図6は主分析結果表示画面200の左方の一部を示す図である。主分析結果表示画面200は概ね上下に二分割されており、上方にはテーブル表示領域210、下方にはグラフ表示領域220が設けられている。
【0068】
テーブル表示領域210内の左方上部には、サンプル情報である培養名、播種日時が表示されるサンプル情報表示領域211が設けられ、その下にトレンドテーブル212が配置されている。トレンドテーブル212は、縦方向に分析対象の化合物(代謝物)の種類が並べられ、横方向に培養日(培養開始からの経過日数)及び採取日時毎の培養プレート番号が並べられたテーブルである。この例では、同じ条件の下で培養される培養容器(培養プレート)は三つであるため、培養プレート番号は1〜3のみであるが、この数はさらに増やすこともできる。
【0069】
トレンドテーブル212の各セルには、或る一つの種類の化合物の、或る培養日の一つの培養プレート番号に対する定量値が表示されている。ここでいう定量値は、ピーク面積値、特定の条件の下でのピーク面積値に対する面積比(例えば採取日時初日の面積値を1としたときの面積比)、濃度値、特定の条件の下での濃度値に対する濃度比(例えば採取日時初日の濃度値を1としたときの濃度比)、或いは、それらの値を上述したリファレンスの値で除した計算値のいずれかである。定量値としていずれの値を表示するのかは別の設定画面でオペレータが適宜選択することができるが、いずれにしても定量分析部42で化合物毎に算出された分析結果がここに表示されることになる。
【0070】
テーブル表示領域210内の右方上部には詳細モード/平均表示モード選択ボタン215が設けられている。
図5、
図6はこのボタン215で詳細モードが選択されている状態であり、このときには同じ採取日時における培養プレート番号が異なる三つの試料の結果が全て表示されている。一方、詳細モード/平均表示モード選択ボタン215で平均表示モードが選択されると、結果表示処理部44は同じ採取日時における培養プレート番号が異なる三つの試料の結果を化合物毎に平均し、その平均値をトレンドテーブル212中に表示する。同じ条件で培養されていても細胞の増殖等に差異が生じることは避けられず、同じ採取日時における三つの試料の結果には或る程度のはらつきがあるから、通常は平均表示モードにより平均値のみを確認すればよい。ただし、結果に疑義がある場合等には詳細表示モードを選択することにより、個々のピーク面積値や濃度値を確認することで異常な値の有無の確認等を行うことができる。
【0071】
主分析結果表示画面200のグラフ表示領域220には、トレンドテーブル212において選択された一つの化合物のピーク面積値等の変化を示すグラフ(トレンドグラフ)が表示される。オペレータがトレンドグラフを確認したい化合物をトレンドテーブル212上で操作部7により指示すると、結果表示処理部44は指示された化合物について分析結果を収集し、トレンドグラフを作成してグラフ表示領域220中の表示を更新する。
図5の例では、トレンドテーブル212の4行目の「Hexose(Glucose)」が選択されており、それに対するピーク面積値の変化を示すトレンドグラフが表示されている。このグラフ上の値は同じ採取日時における培養プレート番号が異なる三つの試料についての平均値であり、その値のばらつきがエラーバーで以て表示される。このエラーバー表示に用いる値は、別の設定画面で分散、標準偏差などの中からオペレータが選択することができる。
【0072】
また、エラーバー表示される値のばらつきが大きすぎる場合には、何らかの異常が生じている可能性が高い。そこで、別の設定画面でエラーに対する閾値をオペレータが指定できるようにし、エラーがこの閾値を超えている場合にはエラーバーを通常の表示色とは異なる表示色で表示する等により、エラーの程度が異常であることをオペレータに警告できるようにしてもよい。
【0073】
主分析結果表示画面200では指定された一つの培養名についてのトレンドグラフしか確認することができないが、培養名が異なる複数の培地試料の結果を比較したい場合、オペレータは主分析結果表示画面200の最上部に表示されているメインモード/比較モード選択ボタン216で比較モードを選択する。すると、結果表示処理部44は
図7に示すような比較分析結果表示画面300を表示部8に表示する。
【0074】
図7は比較分析結果表示画面300の全体を示す図、
図8は比較分析結果表示画面300の左方の一部を示す図である。比較分析結果表示画面300は概ね三分割されており、左上方には試料種類テーブル表示領域310、左下方には化合物テーブル表示領域320、それらの右方にはグラフ表示領域330が設けられている。試料種類テーブル表示領域310には一つの培養名を一行とする試料種類テーブルが表示され、化合物テーブル表示領域320には一つの化合物を一行とする化合物テーブルが表示されている。試料種類テーブル及び化合物テーブルには各行にチェックボックスが設けられ、チェックボックスにチェックが付されたものの分析結果であるトレンドグラフがグラフ表示領域330に表示される。
【0075】
図7、
図8の例では、培養名が「Ecto」である培地試料についてのAscorbic acid 2-phosphate以外の化合物のトレンドグラフがグラフ表示領域330に表示されている。トレンドグラフ自体は主分析結果表示画面200のグラフ表示領域220に表示されるものと同じであり、採取日毎のピーク面積値や濃度値などの平均値及びエラーバーが表示される。これにより、異なる化合物のピーク面積値などの時間的な変化を容易に比較することができる。
【0076】
また比較分析結果表示画面300において、異なる培養名である培地試料の分析結果を比較することもできる。即ち、オペレータが別の設定画面で比較したい複数の培養名を指定すると、結果表示処理部44は
図9、
図10に示すような比較分析結果表示画面300を表示部8に表示する。
図9は比較分析結果表示画面300の全体を示す図、
図10は比較分析結果表示画面300の左方の一部を示す図である。このとき、試料種類テーブル表示領域310には指定された複数の培養名が列記された試料種類テーブルが表示される。各培養名にはそれぞれ異なるグラフ色が割り当てられる。ただし、ここでは色を表現できないために、グラフ上のプロット点の形状を異なるものとしている。
【0077】
そして、培養名が相違する異なる試料に対応する折れ線グラフが重畳されたトレンドグラフをグラフ表示領域330に表示させる。
図9、
図10の例では、培養名が「Ecto」、「Meso」、「End」、「No diff」である4種類の培地試料についてのAscorbic acid 2-phosphate以外の化合物のトレンドグラフがグラフ表示領域330に表示されている。これにより、異なる培養細胞における同じ化合物の定量値の変化を容易に比較することができる。
【0078】
さらにまた、複数の培地試料のいずれか一つを基準として、該基準の分析結果と他の分析結果との差を表示させることもできる。即ち、
図11、
図12に示すように、オペレータが試料種類テーブル表示領域310に表示されている試料種類テーブル上で基準としたい一つの試料に対応する行の参照ラジオボタン312にチェックを入れると、結果表示処理部44は化合物毎に、基準とされた試料におけるピーク面積値や濃度値とそれ以外の試料におけるピーク面積値や濃度値との差異をそれぞれ計算し、その差の時間的変化を示すトレンドグラフを作成する。そして、そのトレンドグラフをグラフ表示領域330に表示する。
【0079】
図11、
図12の例では、培養名が「No diff」である培地試料が基準とされ、それ以外の3種類の試料についてのAscorbic acid 2-phosphate以外の化合物のトレンドグラフがグラフ表示領域330に表示されている。このトレンドグラフでは、基準に対する定量値の差異の変化をより直感的に把握することができる。
【0080】
なお、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜に変更、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
【0081】
例えば上記実施例のシステムにおいて試料載置部20、302において載置可能なバイアルの数は適宜変更しても構わないし、試料載置部20、302においてバイアルを載置するラックの形状も適宜変更することができる。また、バイアル番号の付与の仕方も適宜に変更することができる。
【0082】
また上記実施例は培地試料に含まれる代謝物等の化合物をLC−MSにより分析するシステムであったが、培地試料の他の生体由来の試料中の化合物を分析するものであってもよい。また、分析装置はLC−MSに限らず、GC−MSでもよいし、或いはそれ以外の光学分析装置等の分析装置でもよい。また上述したように、前処理装置による前処理はタンパク質やそのほかの不所望の成分の除去に限らず、様々な前処理とすることができる。また、上記実施例のシステムでは、試料の希釈をLC−MSにおけるオートサンプラで実施していたが、希釈を前処理装置で行うようにしてもよい。