特許第6760553号(P6760553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許6760553-アンテナモジュールおよび通信装置 図000003
  • 特許6760553-アンテナモジュールおよび通信装置 図000004
  • 特許6760553-アンテナモジュールおよび通信装置 図000005
  • 特許6760553-アンテナモジュールおよび通信装置 図000006
  • 特許6760553-アンテナモジュールおよび通信装置 図000007
  • 特許6760553-アンテナモジュールおよび通信装置 図000008
  • 特許6760553-アンテナモジュールおよび通信装置 図000009
  • 特許6760553-アンテナモジュールおよび通信装置 図000010
  • 特許6760553-アンテナモジュールおよび通信装置 図000011
  • 特許6760553-アンテナモジュールおよび通信装置 図000012
  • 特許6760553-アンテナモジュールおよび通信装置 図000013
  • 特許6760553-アンテナモジュールおよび通信装置 図000014
  • 特許6760553-アンテナモジュールおよび通信装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6760553
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】アンテナモジュールおよび通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 23/00 20060101AFI20200910BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20200910BHJP
   H01P 5/02 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   H01Q23/00
   H01Q21/06
   H01P5/02 603B
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2020-530390(P2020-530390)
(86)(22)【出願日】2020年1月20日
(86)【国際出願番号】JP2020001643
【審査請求日】2020年6月2日
(31)【優先権主張番号】特願2019-8420(P2019-8420)
(32)【優先日】2019年1月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 克人
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−204410(JP,A)
【文献】 特開2010−251904(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0365617(US,A1)
【文献】 特表2012−521716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00− 11/00
H01Q 1/00− 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナモジュールであって、
積層構造を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板に配置され、各々が複数のアンテナ素子を含む第1アンテナ群および第2アンテナ群と、
前記第1アンテナ群および前記第2アンテナ群に、高周波電力をそれぞれ供給するように構成された第1給電回路および第2給電回路と、
入力された第1高周波信号を分配して前記第1給電回路および前記第2給電回路に出力する分配回路とを備え、
前記第1給電回路および前記第2給電回路は、前記誘電体基板の実装面に実装され、
前記分配回路は、
前記誘電体基板において、前記第1アンテナ群および前記第2アンテナ群が配置される層よりも前記実装面側の層に配置され、
当該分配回路が挿入される信号伝達系のインピーダンスである第1インピーダンスより低い第2インピーダンスの回路系で構成されたウィルキンソン型の第1分配器を有する、アンテナモジュール。
【請求項2】
前記分配回路の入力端に接続され、かつ前記第1インピーダンスを前記第2インピーダンスに変換するように構成された第1インピーダンス変換部と、
前記分配回路の出力端に接続され、かつ前記第2インピーダンスを前記第1インピーダンスに変換するように構成された第2インピーダンス変換部とをさらに備える、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項3】
前記アンテナモジュールは、
前記誘電体基板に配置され、各々が複数のアンテナ素子を含む第3アンテナ群および第4アンテナ群と、
前記第3アンテナ群および前記第4アンテナ群に、高周波電力をそれぞれ供給するように構成された第3給電回路および第4給電回路とをさらに備え、
前記分配回路は、
前記第1分配器の2つの出力端のうち一方の出力端に接続され、前記第1分配器で分配された前記第1高周波信号をさらに分配して前記第1給電回路および前記第2給電回路に出力する第2分配器と、
前記第1分配器の2つの出力端のうち他方の出力端に接続され、前記第1分配器で分配された前記第1高周波信号をさらに分配して前記第3給電回路および前記第4給電回路に出力する第3分配器とをさらに備える、請求項1または請求項2に記載のアンテナモジュール。
【請求項4】
前記第1分配器の一方の出力端と前記第2分配器の入力端との間、および、前記第1分配器の他方の出力端と前記第3分配器の入力端との間の少なくとも一方は、前記第2インピーダンスの信号線路のみで接続されている、請求項3に記載のアンテナモジュール。
【請求項5】
前記第1高周波信号は、前記第1給電回路および前記第2給電回路で用いられる基準周波数信号であり、
前記アンテナモジュールは、前記第1高周波信号が入力される端子をさらに備え、
前記端子から前記分配回路までの前記第1インピーダンスの信号線路の長さは、前記端子から前記分配回路までの前記第2インピーダンスの信号線路の長さよりも短い、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項6】
前記第1給電回路および前記第2給電回路は、基準周波数信号である前記第1高周波信号を第2高周波信号と混合することによって高周波電力を生成し、
前記アンテナモジュールは、互いに異なる層に配置された、第1接地導体と、第2接地導体と、第3接地導体とをさらに備え、
前記第2高周波信号を伝達する信号線路は、前記第1接地導体と前記第2接地導体との間の層に配置され、
前記分配回路は、前記第2接地導体と前記第3接地導体との間の層に配置される、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項7】
前記信号線路は、前記アンテナモジュールを平面視したときに、前記分配回路と重なるように配置される、請求項6に記載のアンテナモジュール。
【請求項8】
前記複数のアンテナ素子は、二次元配列される、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項9】
アンテナモジュールであって、
積層構造を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板に配置され、各々が複数のアンテナ素子を含む第1アンテナ群および第2アンテナ群と、
前記第1アンテナ群および前記第2アンテナ群に、高周波電力をそれぞれ供給するための第1端子電極および第2端子電極と、
第1高周波信号が入力される第3端子電極と、
前記第1高周波信号を出力する第4端子電極および第5端子電極と、
前記第3端子電極から入力された前記第1高周波信号を分配して前記第4端子電極および前記第5端子電極に出力する分配回路とを備え、
前記第1端子電極、前記第2端子電極、前記第3端子電極、前記第4端子電極、および前記第5端子電極は、前記誘電体基板の実装面に配置され、
前記分配回路は、
前記誘電体基板において、前記第1アンテナ群および前記第2アンテナ群が配置される層よりも前記実装面側の層に配置され、
当該分配回路が挿入される信号伝達系のインピーダンスである第1インピーダンスより低い第2インピーダンスの回路系で構成されたウィルキンソン型の第1分配器を有する、アンテナモジュール。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のアンテナモジュールを備える通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、アンテナモジュールおよび通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯端末などの無線通信の分野において、送信側および受信側で複数のアンテナ素子(たとえば、2〜8個)を用いて通信するMIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)技術が知られている。MIMO技術を用いることで、通信周波数の帯域幅と送信出力を強化しなくとも、データのスループットとリンクできる距離を改善することができるという利点がある。
【0003】
国際公開第2016/067969号(特許文献1)には、積層構造の誘電体基板にアンテナ素子と高周波半導体素子とが一体化して実装されたアンテナモジュールが開示されている。特許文献1に開示されたアンテナモジュールにおいては、1つの高周波半導体素子から複数のアンテナ素子に高周波信号が供給されており、上記のMIMOにも適用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/067969号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、スマートフォンなどの携帯端末のユーザ数が増加し、さらにはIoTなどの技術革新により無線通信機能を有する電子機器も増加している。これにより、無線ネットワークの通信トラフィックが増大し、通信速度および通信品質が低下してしまうことが懸念されている。
【0006】
このような課題を解決するために、上記のようなMIMO技術をさらに発展させたマッシブMIMO(Massive MIMO)が注目されている。マッシブMIMOは、通常のMIMOよりも多くの数(たとえば、128個)のアンテナ素子を用いて高度なビームフォーミングおよび空間多重などの技術を実現することによって、端末ごとに個別の電波を割り当てて、通信速度の高速化および通信品質の向上を図る技術である。
【0007】
このような多数のアンテナ素子を用いた無線送信を行なう場合、複数の高周波半導体素子の各々から複数のアンテナ素子に送信すべき高周波信号が出力される。また、複数の高周波半導体素子には、同一の基準信号が入力される。そのため、アンテナモジュールにおいては、当該基準信号を複数の高周波半導体素子に分配するための分配器が用いられる。一方で、携帯端末などの通信装置については、さらなる小型化,薄型化が要求されており、これに伴ってアンテナモジュール自体の小型化,薄型化が必要とされている。
【0008】
本実施形態は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、分配器を内蔵したアンテナモジュールにおいて、小型化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある局面に従うアンテナモジュールは、積層構造を有する誘電体基板と、前記誘電体基板に配置され、各々が複数のアンテナ素子を含む第1アンテナ群および第2アンテナ群と、前記第1アンテナ群および前記第2アンテナ群に、高周波電力をそれぞれ供給するように構成された第1給電回路および第2給電回路と、分配回路とを備える。分配回路は、入力された第1高周波信号を分配して前記第1給電回路および前記第2給電回路に出力する。前記第1給電回路および前記第2給電回路は、前記誘電体基板の実装面に実装される。分配回路は、前記誘電体基板において、前記第1アンテナ群および前記第2アンテナ群が配置される層よりも前記実装面側の層に配置される。分配回路は、当該分配回路が挿入される信号伝達系のインピーダンスである第1インピーダンスより低い第2インピーダンスの回路系で構成されたウィルキンソン型の第1分配器を有する。
【発明の効果】
【0010】
本実施形態によるアンテナモジュールにおいては、分配器を内蔵したアンテナモジュールにおいて、小型化を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るアンテナモジュールが適用される通信装置のブロック図である。
図2】アンテナモジュールがBBICに実装された状態の断面図である。
図3】アンテナモジュールを法線方向から平面視した場合の図である。
図4】分配器などの詳細な構成を説明するための図である。
図5】分配器をより具体的に示した図である。
図6】第2実施形態に係るアンテナモジュールが適用される通信装置のブロック図である。
図7】分配回路等の主要な部分を示した図である。
図8】分配回路等の構成をさらに詳細に示した図である。
図9】第3実施形態のアンテナモジュールを法線方向から平面視した場合の図である。
図10】第3実施形態のアンテナモジュールの断面図である。
図11】第3実施形態の分配器などを示した図である。
図12】変形例に係るアンテナモジュールの断面図である。
図13】変形例に係るアンテナモジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
[第1実施形態]
(通信装置の基本構成)
図1は、本実施形態に係るアンテナモジュール100が適用される通信装置10のブロック図である。通信装置10は、たとえば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどの携帯端末や、通信機能を備えたパーソナルコンピュータなどである。
【0014】
図1を参照して、通信装置10は、アンテナモジュール100と、ベースバンド信号処理回路を構成するBBIC200と、発振器130(OSC)とを備える。
【0015】
アンテナモジュール100は、2つのRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)110A,110Bと、アンテナアレイ120と、分配器(DIV)140と、合成チップ151と、分配チップ152とを備える。
【0016】
アンテナアレイ120は複数のアンテナ素子121を含む。図1においては、複数のアンテナ素子121として8個のアンテナ素子121が4×2に二次元配列されている。図1では、アンテナモジュール100はパッチアンテナとして機能する例として示す。また、4個のアンテナ素子121で構成されるアンテナ群123A,123Bに対して、RFIC110A,110Bがそれぞれ設けられる構成を例として説明する。アンテナ群123Aは、「第1アンテナ群」に対応し、アンテナ群123Bは、「第2アンテナ群」に対応する。また、RFIC110Aは、「第1給電回路」に対応し、RFIC110Bは、「第2給電回路」に対応する。
【0017】
なお、図1では、説明を容易にするために、アンテナ群123Aに対応するRFIC110Aの詳細構成が示されており、同様の構成を有する他のRFIC110Bに対応する構成については省略されている。
【0018】
なお、以降の説明において、RFIC110A,110Bを総称して「RFIC110」とも称し、アンテナ群123A,123Bを総称して「アンテナ群123」とも称する。
【0019】
発振器130は、各RFIC110において用いられる基準周波数信号を生成する発振器である。基準周波数信号は、たとえば、23〜26GHzである。基準周波数信号は、波長がミリ単位の信号であり、いわゆるミリ波の信号である。基準周波数信号は、「第1高周波信号」に対応する。発振器130は、「第1出力回路」に対応する。発振器130は、入力端子302により、アンテナモジュール100に接続されている。入力端子302は、「端子」と対応する。発振器130は、入力端子302を介して、基準周波数信号をアンテナモジュール100に送信する。
【0020】
分配器140は、該分配器140に入力された第1高周波信号を分配してRFIC110A(第1給電回路)およびRFIC110B(第2給電回路)に出力する。本実施形態では、分配器140は、該分配器140に入力された第1高周波信号を分配してRFIC110A(第1給電回路)のミキサ118およびRFIC110B(第2給電回路)のミキサ118に出力する。また、分配器140は、「第1分配器1401」と称することもある。
【0021】
また、BBIC200は、中間周波数の信号をアンテナモジュール100に対して送信する。中間周波数の信号は、たとえば、3.5GHz±0.5GHzの信号であり、第1高周波信号よりも周波数が低い信号である。中間周波数の信号は、「第2高周波信号」に対応する。また、BBIC200は、「第2出力回路」に対応する。
【0022】
また、BBIC200から出力された信号が伝送される信号線路には分配チップ152が設けられる。分配チップ152は、BBIC200から出力された信号を、RFIC110A,110Bに分配する。
【0023】
また、各RFIC110A,110Bの増幅回路119から出力された信号が伝送される信号線路には合成チップ151が設けられる。合成チップ151は、各RFIC110A,110Bの増幅回路119から出力された信号を合成して、BBIC200に出力する。
【0024】
RFIC110は、スイッチ111A〜111D,113A〜113D,117と、パワーアンプ112AT〜112DTと、ローノイズアンプ112AR〜112DRと、減衰器114A〜114Dと、移相器115A〜115Dと、信号合成/分波器116と、ミキサ118と、増幅回路119とを備える。なお、図1の例では、ミキサ118は、RFIC110Aに搭載されている例が示されているが、ミキサ118は、他のIC(たとえば、BBIC200等)に搭載されるようにしてもよい。
【0025】
高周波信号を送信する場合には、スイッチ111A〜111D,113A〜113Dがパワーアンプ112AT〜112DT側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の送信側アンプに接続される。高周波信号を受信する場合には、スイッチ111A〜111D,113A〜113Dがローノイズアンプ112AR〜112DR側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の受信側アンプに接続される。
【0026】
BBIC200から出力された第2高周波信号は、分配チップ152で分配されて各RFIC110A,110Bの増幅回路119に分配して伝達される。該伝達された信号は、増幅回路119で増幅され、ミキサ118でアップコンバートされる。アップコンバートされた送信信号は、信号合成/分波器116で4分波され、4つの信号経路を通過して、それぞれ異なるアンテナ素子121に給電される。このとき、各信号経路に配置された移相器115A〜115Dの移相度が個別に調整されることにより、アンテナアレイ120の指向性を調整することができる。
【0027】
また、各アンテナ素子121で受信された受信信号は、それぞれ、異なる4つの信号経路を経由し、信号合成/分波器116で合波される。合波された受信信号は、ミキサ118でダウンコンバートされ、増幅回路119で増幅される。各RFIC110A,110Bの増幅回路119で増幅された信号の全ては、合成チップ151に出力される。合成チップ151は、各RFIC110A,110Bの増幅回路119で増幅された信号の全てを合成して、BBIC200に出力する。
【0028】
RFIC110は、例えば、上記回路構成を含む1チップの集積回路部品として形成される。あるいは、RFIC110に含まれる機器のうち、各アンテナ素子121に対応する機器(スイッチ、パワーアンプ、ローノイズアンプ、減衰器、移相器)については、対応するアンテナ素子121毎に1チップの集積回路部品として形成されてもよい。
【0029】
RFIC110のミキサ118は、第1高周波信号と第2高周波信号とを混合することによって高周波電力を生成する。RFIC110は、該生成された高周波電力を各アンテナ素子121に供給する給電回路として機能する。
【0030】
通信装置10は、BBIC200からアンテナモジュール100へ伝達された信号を高周波信号にアップコンバートしてアンテナアレイ120から放射するとともに、アンテナアレイ120で受信した高周波信号をダウンコンバートしてBBIC200にて信号処理する。
【0031】
(アンテナモジュールの構成)
図2は、図1のアンテナモジュール100がBBIC200に実装された状態の断面図である。誘電体基板125の積層構造における積層方向の軸をZ軸とする。Z軸に直交する軸をX軸およびY軸とする。Z軸の方向を法線方向ともいう。図3は、アンテナモジュール100を法線方向から平面視した場合の図であり、分配器140等を示した図である。図2および図3を参照して、アンテナモジュール100は、積層構造の誘電体基板125を備える。誘電体基板125は、たとえば低温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics:LTCC)で形成される。また、誘電体基板125は、たとえば、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、より低い誘電率を有する液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、フッ素系樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、あるいは、LTCC以外のセラミックス多層基板としてもよい。
【0032】
誘電体基板125の内部の層には、図1で説明したアンテナ素子121が配置される。図2においては、アンテナ群123Aおよびアンテナ群123Bに含まれるアンテナ素子がそれぞれ2つずつ示されている。
【0033】
誘電体基板125の実装面126には、第1端子電極401、第2端子電極402、第3端子電極403、第4端子電極404、第5端子電極405等が形成される。誘電体基板125の実装面126には、図示されていないが、機器を実装するための電極パターンおよび電極パターン同士を電気的に接続する配線パターンが形成されている。
【0034】
また、後述するように、分配器140の入力端には、第1インピーダンス変換部181が設けられるとともに、分配器140の2つの出力端には第2インピーダンス変換部182,183がそれぞれ設けられる。以下では、第1インピーダンス変換部181、および第2インピーダンス変換部182,183をまとめて「インピーダンス変換部」ともいう。インピーダンス変換部(第1インピーダンス変換部、第2インピーダンス変換部)の線路長は、伝達する代表的な高周波信号の波長をλとするとλ/4となるように設計されている。つまり、本実施形態では、インピーダンス変換部は、いわゆる、λ/4変成器である。
【0035】
RFIC110AおよびRFIC110Bは、はんだバンプ155を介して実装面126に実装される。
【0036】
RFIC110Aは、はんだバンプ155、第1端子電極401、および給電線128Aを介して、アンテナ群123Aに含まれるアンテナ素子に接続される。したがって、アンテナ群123Aに含まれるアンテナ素子には、はんだバンプ155、第1端子電極401、および給電線128Aを介して、RFIC110Aからの高周波電力が供給される。第1端子電極401は、アンテナ群123Aに高周波電力を供給するための電極である。
【0037】
RFIC110Bは、はんだバンプ155、第2端子電極402、および給電線128Bを介して、アンテナ群123Bに含まれるアンテナ素子に接続される。したがって、アンテナ群123Bに含まれるアンテナ素子には、はんだバンプ155、第2端子電極402、および給電線128Aを介して、RFIC110Bからの高周波電力が供給される。第2端子電極402は、アンテナ群123Bに高周波電力を供給するための電極である。
【0038】
図2の例では、給電線128A,128Bの各々は、接地電極GND1,接地電極GND2を貫通して、各アンテナ群に含まれるアンテナ素子121に接続される。
【0039】
実装面126に実装された各機器は、樹脂135によってモールドされている。樹脂135には、BBIC200との信号を授受するためのI/O用の貫通電極160が形成される。貫通電極160の実装面126側の端部は、実装面126に形成された配線パターンに接続されている。また、貫通電極160のBBIC200側の面に露出した端部は、電極パターン165およびはんだバンプ170を介してBBIC200表面の接続端子210に接続されている。貫通電極160および実装面126の配線パターンを経由して、BBIC200と各RFIC110との間で信号が授受される。
【0040】
また、発振器130からの信号(第1高周波信号)を授受するためのI/O用の貫通電極161が形成される。貫通電極161は、入力端子302に対応する。貫通電極161の実装面126側の端部は、はんだバンプ155および第3端子電極403を介して、第1インピーダンス変換部181に接続される。第3端子電極403は、第1高周波信号が入力される電極である。また、貫通電極161の発振器130側の面に露出した端部は、電極パターン166およびはんだバンプ171を介して発振器130表面の接続端子211に接続されている。貫通電極161および実装面126の配線パターンを経由して、発振器130からの第1高周波信号は、分配器140に入力される。第1高周波信号は、該分配器140において各RFIC110に分配される。
【0041】
RFIC110Aは、はんだバンプ155および第4端子電極404を介して、第2インピーダンス変換部182に接続される。第4端子電極404は、分配器140で分配された第1高周波信号を、RFIC110Aに出力する電極である。
【0042】
RFIC110Bは、はんだバンプ155および第5端子電極405を介して、第2インピーダンス変換部183に接続される。第5端子電極405は、分配器140で分配された第1高周波信号を、RFIC110Bに出力する電極である。
【0043】
誘電体基板125において、アンテナ素子121と実装面126との間の層に接地電極GND1(第1接地電極)が形成され、接地電極GND1と実装面126との間の層にさらに接地電極GND2(第2接地電極)が形成される。接地電極GND2に、貫通口300が形成される。ビアは、貫通口300を貫通する。このビアは、貫通電極161と第1インピーダンス変換部181を接続するものである。貫通口300以外のXY平面においては、接地電極GND2が配置される。
【0044】
なお、本実施形態では、誘電体基板125の、アンテナ素子121が配置される層よりも表面127側の層において、各アンテナ素子121に対向する位置に無給電素子122が配置される。
【0045】
誘電体基板125の接地電極GND1よりも表面127側の部分は、アンテナモジュール100において実質的なアンテナとして機能し、本明細書においてはこの領域を「アンテナ層ANT」と称する。また、誘電体基板125において、接地電極GND1と接地電極GND2との間の領域には、実装面126に実装された各機器同士、あるいは各機器とアンテナ素子との間を接続する配線パターンが形成され、本明細書においてはこの領域を「配線層LINE」と称する。さらに、樹脂135でモールドされた領域を、本明細書においては「部品層PRT」と称する。
【0046】
分配器140は、誘電体基板125において、アンテナ群123Aおよびアンテナ群123Bが配置される層よりも実装面126側の層に配置される。
【0047】
分配器140は、上記の配線層LINEの層に配置される。分配器140は、実装面126に実装された発振器130に接続されるとともに、配線層LINEに形成される配線パターン129によって各RFIC110に接続される。分配器140は、発振器130からの基準周波数信号を受け、当該基準周波数信号を各RFIC110に分配する。
【0048】
また、アンテナ素子121、配線パターン129、貫通電極160,161等を構成する導体は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、および、これらの合金を主成分とする金属で形成されている。
【0049】
図2図3、および図9では、合成チップ151および分配チップ152の記載を省略しているが、図2図3、および図9には、合成チップ151および分配チップ152が記載されるようにしてもよい。
【0050】
また、図3に示すように、アンテナモジュール100をZ軸方向から平面視した場合において、分配器140と、RFIC110A,110Bとは、重ならない構成が採用されている。このような構成が採用されていることにより、「分配器140と、RFIC110A,110Bとは、重畳している構成」と比較して、アンテナモジュール100の高さ(Z軸方向の長さ)を低くすることができる(低背化することができる)。なお、アンテナモジュール100をZ軸方向から平面視した場合において、分配器140の少なくとも一部が、RFIC110A,110Bに重なる構成が採用されてもよい。このような構成が採用される場合には、電磁的結合の防止のために、分配器140と、RFIC110A,110Bとの間にGNDが設けられることが好ましい。
【0051】
また、図3に示すように、アンテナモジュール100を法線方向から平面視した場合において、第1インピーダンス変換部181は、RFIC110Aと、RFIC110Bとの間に設けられる。したがって、X軸方向にアンテナモジュール100が延伸しないようにすることができることから、アンテナモジュール100を小型化でき、その結果、長い配線を設ける必要もなくなり、信号の伝送ロスが低減できる。
【0052】
また、図2の例では、第1インピーダンス変換部181は、分配器140の下層に配置されるとともに、第2インピーダンス変換部182,183は、分配器140と同一の層に配置されている例が示されている。しかしながら、第1インピーダンス変換部181は、分配器140と同一の層に設けられるようにしてもよい。また、第2インピーダンス変換部182,183は、分配器140と異なる層に配置されるようにしてもよい。
【0053】
また、図2の例では、分配器140が、第2インピーダンス変換部182,183よりも厚みが厚いように図示されている。しかしながら、分配器140と、第2インピーダンス変換部182,183とは、厚みが同一であるように構成されてもよい。また、分配器140は、第2インピーダンス変換部182,183よりも厚みが薄いように構成されてもよい。ただ、アンテナモジュール100の低背化を実現するために、分配器140と、第2インピーダンス変換部182,183とは、線路厚みが同一であるように構成されることが好ましい。
【0054】
(分配器などの構成)
図4は、発振器130から各RFICへ伝達される第1高周波信号の伝達経路を示す図である。本実施形態においては、分配器140として、ウィルキンソン型分配器を用いる。ウィルキンソン型分配器は、他のタイプの分配器に比べて低損失であり、かつ、分配された信号の位相が同位相となるという特徴を有する。
【0055】
分配器140は、入力端147、線路142、線路144、抵抗器194、第1出力端148、および第2出力端149を含む。
【0056】
本実施形態の入力端147は、該入力端147に入力される信号を2つに分岐する分岐部の機能を有する。入力端147には、線路141の一端が接続される。線路141の他端には、接続部308を介して第1インピーダンス変換部181の一端が接続される。第1インピーダンス変換部181の他端には、接続部306を介して線路304の一端が接続される。線路304の他端は、入力端子302を介して、発振器130に接続される。
【0057】
第1出力端148には、線路143の一端が接続される。線路143の他端には、接続部310を介して第2インピーダンス変換部182の一端が接続される。第2インピーダンス変換部182の他端には、接続部314を介して線路316の一端が接続される。線路316の他端は、出力端子318を介して、RFIC110Aに接続される。
【0058】
第2出力端149には、線路145の一端が接続される。線路145の他端には、接続部312を介して第2インピーダンス変換部183の一端が接続される。第2インピーダンス変換部183の他端には、接続部320を介して線路322の一端が接続される。線路322の他端は、出力端子324を介して、RFIC110Bに接続される。
【0059】
また、分岐された2つの出力のアイソレーションを確保するために、第1出力端148と第2出力端149との間に、抵抗器194が接続される。
【0060】
次に信号の流れを説明する。発振器130から出力された基準周波数信号は、入力端子302、線路304、接続部306、第1インピーダンス変換部181、接続部308、線路141、入力端147(分岐部)の順序で伝送される。入力端147(分岐部)に入力された基準周波数信号は、該入力端147(分岐部)で2個の信号に分岐される。
【0061】
入力端147(分岐部)において分岐された2個の信号のうち一方の信号は、線路142、第1出力端148、線路143、接続部310、第2インピーダンス変換部182、接続部314、線路316、出力端子318の順序で伝送され、RFIC110Aに入力される。
【0062】
入力端147(分岐部)において分岐された2個の信号のうち他方の信号は、線路144、第2出力端149、線路145、接続部312、第2インピーダンス変換部183、接続部320、線路322、出力端子324の順序で伝送され、RFIC110Bに入力される。このように、分配器140は、入力端147から入力された基準周波数信号を、RFIC110AおよびRFIC110Bに分配する。
【0063】
次に、分配器140などのインピーダンスなどを説明する。線路304、線路316、および線路322のインピーダンスの値をそれぞれZ0とする。線路141、線路143、線路145のインピーダンスの値をそれぞれZ1とする。ただし、Z0>Z1となるように設定されている。Z0は、「第1インピーダンス」に対応する。Z1は、「第2インピーダンス」に対応する。
【0064】
抵抗器194のインピーダンスZRは、2×Z1に設定される。線路142、線路144のインピーダンスZLは、√2×Z1に設定される。線路142,144、第1インピーダンス変換部181、第2インピーダンス変換部182、および第2インピーダンス変換部183の線路長は、伝達する代表的な高周波信号の波長をλとするとλ/4となるように設定されている。
【0065】
次に、インピーダンス変換部(第1インピーダンス変換部181、第2インピーダンス変換部182、第2インピーダンス変換部183)について説明する。λ/4の長さのインピーダンス変換部のインピーダンスZ2と、該インピーダンス変換部の一方に接続されている線路のインピーダンスZ0と、該インピーダンス変換部の他方に接続されている線路のインピーダンスZ1とでは、以下の式(1)が成立する。
【0066】
【数1】
【0067】
たとえば、インピーダンスZ0(線路304、線路316、線路322のインピーダンス)=50Ωとし、インピーダンスZ1(線路141、線路143、線路145のインピーダンス)=25Ωとした場合には、各インピーダンスの値は以下のようになる。
Z2(インピーダンス変換部のインピーダンス)=約35.3Ω
ZL(線路142、線路144のインピーダンス)=約35.3Ω
ZR(抵抗器194のインピーダンス)=50Ω
このように、第1インピーダンス変換部181、第2インピーダンス変換部182、および第2インピーダンス変換部183は、それぞれ、いわゆるλ/4変成器とし、該λ/4変成器のそれぞれのインピーダンスは、約35.3Ωに設計される。
【0068】
第1インピーダンス変換部181は、線路141を介して、分配器140の入力端147に接続される。また、第1インピーダンス変換部181は、第1インピーダンス(線路304のインピーダンスZ0)を、第2インピーダンス(線路304のインピーダンスZ1)に変換するように構成されている。
【0069】
第2インピーダンス変換部182は、線路143を介して、分配器140の第1出力端148に接続される。また、第2インピーダンス変換部182は、第2インピーダンス(線路143のインピーダンスZ1)を、第1インピーダンス(線路316のインピーダンスZ0)に変換するように構成されている。
【0070】
第2インピーダンス変換部183は、線路145を介して、分配器140の第2出力端149に接続される。また、第2インピーダンス変換部183は、第2インピーダンス(線路145のインピーダンスZ1)を、第1インピーダンス(線路322のインピーダンスZ0)に変換するように構成されている。
【0071】
また、分配器140は、第1インピーダンスの信号伝達系に挿入されている。図4の例では、分配器140は、第1インピーダンスの一例としてインピーダンスがZ0である線路で構成された信号線である。第1インピーダンスの信号伝達系の信号線は、「線路304、線路316、および線路322」に対応する。
【0072】
また、分配器140は、第2インピーダンスの回路系で構成されたウィルキンソン型の分配器である。本実施形態では、「第2インピーダンスの回路系で構成された分配器140」とは、第2インピーダンス(25Ω)を基準に設定された分配器である。換言すれば、「第2インピーダンスの回路系で構成された分配器140」とは、第1インピーダンス(50Ω)よりも入力インピーダンスおよび出力インピーダンスが低い(25Ω)の分配器である。
【0073】
以降、「第1インピーダンスの信号伝達系」を「第1インピーダンス系」と称し、「第2インピーダンスの回路系」を「第2インピーダンス系」と称して説明する場合がある。
【0074】
図4の例では、分配器140は、第2インピーダンスの一例であるインピーダンスZ1を基準に設定された分配器である。なお、分配器140(第1分配器1401)の入力インピーダンス、および出力インピーダンスのそれぞれは、第2インピーダンスであればよく、分配器140を構成する伝送線路の特性インピーダンスは、第1インピーダンスよりも高い構成としてもよい。
【0075】
なお、本実施形態では、Z2=ZLとなり、インピーダンス変換部に係る線路と、線路142と、線路144とのそれぞれのインピーダンスは同一となる。
【0076】
図5は、分配器140を図4よりも具体的に示した図である。図5においては、線路142と、線路144とが湾曲して記載されている。また、図5においては、インピーダンスが低いほど、線路の幅が太く記載されている。
【0077】
たとえば、線路304のインピーダンスは50Ωであり、第1インピーダンス変換部181に係る線路のインピーダンスは35.3Ωであり、線路141のインピーダンスは25Ωである。線路141の幅=A、第1インピーダンス変換部181に係る線路の幅=B、線路304の幅=Cとすると、A>B>Cとなるように、図5では記載されている。
【0078】
ここで、本実施形態では、線路304の長さL1は、線路141の長さL2よりも短くなるように設定されている。
【0079】
一般的に、ストリップ線路あるいはマイクロストリップ線路で形成される分配器のインピーダンスは、分配器を構成する線路(本実施形態では、図2の140に対応)とGND(本実施形態では、図2の接地電極GND1あるいは接地電極GND2に対応)との距離が大きいほど、大きくなる。したがって、分配器のインピーダンスが高くなると、線路とGNDとの距離を大きくすることが必要となり、結果的に、分配器が配置される誘電体基板の誘電体層(本実施形態では、配線層LINEに対応)が厚くなる。よって、分配器が配置される誘電体層が厚くなると、アンテナモジュール全体の厚み(本実施形態では、アンテナモジュール100の積層方向の長さ)が厚くなってしまう。
【0080】
そこで、本実施形態では、分配器140は、第1インピーダンス系の信号線路間(線路304、線路316、線路322の間)に挿入されている。さらに、この分配器140は、第1インピーダンスより低い第2インピーダンス系で構成されている。
【0081】
したがって、「本実施形態の低インピーダンス系である第2インピーダンス系のアンテナモジュール」においては、「第1インピーダンス系で構成されている分配器を有するアンテナモジュール」と比較して、分配器140が配置される誘電体層(たとえば、配線層LINE)を薄くすることができる。その結果、「第1インピーダンス系で構成されている分配器を有するアンテナモジュール」と比較して、アンテナモジュールの厚みを薄くすることができる。
【0082】
また、アンテナモジュールの厚みを一定とした場合には、分配器140が配置される配線層LINEを薄くすることができると、アンテナ層ANTの厚みを確保することができる。したがって、アンテナ層ANTでの配線の配置の自由度を向上させることができる。
【0083】
また、アンテナ層ANTの厚みを確保することにより、電極(図2の例では、アンテナ素子121、無給電素子122)の厚みを太くすることができる。したがって、アンテナモジュールの製造ばらつきによるアンテナモジュールの特性差を低減できる。
【0084】
また、本実施形態のアンテナモジュールでは、第1インピーダンス変換部181を、分配器140の接続部308に接続させる。また、第2インピーダンス変換部182を分配器140の第1出力端148に接続させるとともに、第2インピーダンス変換部183は、分配器140の第2出力端149に接続させる。
【0085】
たとえば、アンテナモジュール100は、第1インピーダンス変換部181を有することにより、線路304、第1インピーダンス変換部181、線路141それぞれのインピーダンスは、50Ω、37.3Ω、25Ωとなる。したがって、「インピーダンス変換部を有さないアンテナモジュール」と比較して、インピーダンスの変化量を緩やかにすることができる。よって、「インピーダンス変換部を有さないアンテナモジュール」と比較して、信号(たとえば、基準周波数信号)の反射などを低減でき、信号の損失を低減できる。
【0086】
特に、本実施形態では、第1インピーダンス変換部181の線路長がλ/4である。これにより、第1インピーダンス変換部181の入力側インピーダンスが50Ωとなり、第1インピーダンス変換部181の出力側インピーダンスが25Ωとなる。したがって、信号の反射による損失を一層低減できる。
【0087】
また、入力端147、第1出力端148、および第2出力端149の全てにインピーンダンス変換部を接続させない構成、たとえば、入力端147にはインピーダンス変換部を接続する一方、第1出力端148、および第2出力端149にはインピーダンス変換部を接続させない構成が考えられる。
【0088】
しかしながら、この構成であれば、分配器140の入力側のインピーダンスと、分配器140の出力側のインピーダンスとが異なってしまう。その結果、分配器140に入力される信号の反射等によって損失が増加して通信特性が低下するおそれがある。
【0089】
そこで、本実施形態では、入力端147、第1出力端148、および第2出力端149の全てにインピーンダンス変換部を接続させる。これにより、分配器140の入力側のインピーダンスと、分配器140の出力側のインピーダンスとを同一にすることができる。本実施形態では、分配器140の入力側のインピーダンスと、分配器140の出力側のインピーダンスとを共に50Ωとすることができる。したがって、分配器140に入力される信号の反射等が生じることを低減できる。
【0090】
また、図5に示したように、アンテナモジュール100は、入力端子302から分配器140までの第1インピーダンス系(たとえば、50Ω)の信号線路として、線路304を有する。アンテナモジュール100は、入力端子302から分配器140までの第2インピーダンス系(たとえば、25Ω)の信号線路として、線路141を有する。線路304は、線路141よりも高周波信号の損失が大きい線路である。
【0091】
そこで、本実施形態では、図5に示すように、高周波信号の損失が大きい線路304の長さL1は、高周波信号の損失が小さい線路141の長さL2よりも短くなるように設定されている。したがって、本実施形態のアンテナモジュール100は、「L1≧L2となるアンテナモジュール」と比較して、信号(たとえば、基準周波数信号)の損失を低減させることができる。
【0092】
また、図1に示すように、本実施形態のアンテナモジュール100の複数のアンテナ素子121は、二次元配列される。したがって、本実施形態のアンテナモジュール100は、アンテナアレイ120の指向性を調整することができる。
【0093】
[第2実施形態]
第2実施形態のアンテナモジュール100Aは、1の基準周波数信号を4つのRFICに分配するアンテナモジュールである。第2実施形態のアンテナモジュール100Aは、1の基準周波数信号を4つのRFICに分配するために、3つの分配器を備える。図6は、第2実施形態のアンテナモジュール100Aが適用される通信装置10Aのブロック図である。
【0094】
図1図6とを比較すると、図1のアンテナモジュール100は、RFICの数、およびアンテナ群の数はそれぞれ2個であるのに対し、図6のアンテナモジュール100Aは、RFICの数、およびアンテナ群の数はそれぞれ4個である。アンテナモジュール100Aは、4個のアンテナ素子121で構成される4個のアンテナ群123A〜123Dと、4個のRFIC110A〜110Dとを備える。4個のRFIC110A〜110Dのそれぞれは、4個のアンテナ群123A〜123Dに対して高周波信号を出力する。RFIC110Cは、「第3給電回路」に対応し、RFIC110Dは、「第4給電回路」に対応する。また、アンテナ群123Cは、「第3アンテナ群」に対応し、アンテナ群123Dは、「第4アンテナ群」に対応する。
【0095】
また、図1のアンテナモジュール100は、分配器140を有するのに対し、図6のアンテナモジュール100Aは、分配回路150(DIV)を有する。図7は、図6の主要な部分を示した図である。図7にも示すように発振器130から出力された基準周波数信号は、分配回路150により、RFIC110A〜110Dのそれぞれに分配される。さらに、RFIC110A〜110Dは、4個のアンテナ群123A〜123Dのそれぞれに対して高周波電力を供給する。
【0096】
図7の分配回路150での3つの分岐点にも示されるように分配回路150は、3つの分配器を含む。発振器130で生成された基準周波数信号は、分配回路150で4つに分波されて、各RFIC110A〜110Dのミキサ118へ出力される。
【0097】
BBIC200から出力された信号は、分配チップ152で4つに分波されて、各RFIC110A〜110Dの増幅回路119へ出力される。合成チップ151は、各RFIC110A〜110Dの増幅回路119から出力された信号を合成して、BBIC200に出力する。
【0098】
図8は、第2実施形態での発振器130から各RFICへと伝達される第1高周波信号の伝達経路を示す図である。図9は、アンテナモジュール100Aを法線方向から平面視した場合の図であり、第1分配器1401と、第2分配器1402と、第3分配器1403等を示した図である。図8および図9の例では、分配回路150は、3つの分配器として、第1分配器1401と、第2分配器1402と、第3分配器1403とを有する。また、第1分配器1401と、第2分配器1402と、第3分配器1403との構成、および各分配器に含まれる各線路のインピーダンスは、分配器140(第1実施形態参照)と同一である。第1分配器1401と、第2分配器1402と、第3分配器1403は全て、第2インピーダンス系で構成されたウィルキンソン型の分配器である。
【0099】
第2分配器1402は、入力端1472、線路1421、線路1442、抵抗器1942、第1出力端1482、および第2出力端1492を含む。
【0100】
第3分配器1403は、入力端1473、線路1422、線路1443、抵抗器1943、第1出力端1483、および第2出力端1493を含む。
【0101】
線路143の一端には、第1出力端148が接続され、線路143の他端には、第2分配器1402の入力端1472が接続される。第2分配器1402の第1出力端1482には、線路1432の一端が接続される。線路1432の他端には、接続部3102を介して第2インピーダンス変換部1811の一端が接続される。第2インピーダンス変換部1811の他端には、接続部3142を介して線路1911の一端が接続される。線路1911の他端は、出力端子1921を介して、RFIC110Aに接続される。
【0102】
また、第2分配器1402の第2出力端1492には、線路1452の一端が接続される。線路1452の他端には、接続部3202を介して第2インピーダンス変換部1812の一端が接続される。第2インピーダンス変換部1812の他端には、接続部3242を介して線路1912の一端が接続される。線路1912の他端は、出力端子1922を介して、RFIC110Bに接続される。
【0103】
線路145の一端には、第2出力端149が接続され、線路145の他端には、第3分配器1403の入力端1473が接続される。第3分配器1403の第1出力端1483には、線路1433の一端が接続される。線路1433の他端には、接続部3103を介して第2インピーダンス変換部1813の一端が接続される。第2インピーダンス変換部1813の他端には、接続部3143を介して線路1913の一端が接続される。線路1913の他端は、出力端子1923を介して、RFIC110Cに接続される。
【0104】
また、第3分配器1403の第2出力端1493には、線路1453の一端が接続される。線路1453の他端には、接続部3203を介して第2インピーダンス変換部1814の一端が接続される。第2インピーダンス変換部1814の他端には、接続部3243を介して線路1914の一端が接続される。線路1914の他端は、出力端子1924を介して、RFIC110Dに接続される。
【0105】
次に信号の流れを説明する。発振器130から出力された基準周波数信号は、入力端子302、線路304、接続部306、第1インピーダンス変換部181、接続部308、線路141、入力端147(分岐部)の順序で伝送される。入力端147(分岐部)に入力された基準周波数信号は、該入力端147(分岐部)で2個の信号に分岐される。
【0106】
第1分配器1401の入力端147で分配された2個の信号のうち第1信号は、線路142、第1出力端148、線路143を介して、第2分配器1402の入力端1472(分岐部)に入力される。
【0107】
第2分配器1402の入力端1472(分岐部)で分配された2個の第1信号のうち一方の第1信号は線路1442、第1出力端1482、線路1432、接続部3102、第2インピーダンス変換部1811、接続部3142、線路1911、出力端子1921の順序で伝送され、RFIC110Aに入力される。
【0108】
入力端1472(分岐部)で分配された2個の第1信号のうち他方の第1信号は線路1421、第2出力端1492、線路1452、接続部3202、第2インピーダンス変換部1812、接続部3242、線路1912、出力端子1922の順序で伝送され、RFIC110Bに入力される。
【0109】
第1分配器1401の入力端147で分配された2個の信号のうち第2信号は、線路144、第2出力端149、線路145を介して、第3分配器1403の入力端1473(分岐部)に入力される。
【0110】
入力端1473(分岐部)で分配された2個の第2信号のうち一方の第2信号は線路1443、第1出力端1483、線路1433、接続部3103、第2インピーダンス変換部1813、接続部3143、線路1913、出力端子1923の順序で伝送され、RFIC110Cに入力される。
【0111】
第3分配器1403の入力端1473(分岐部)で分配された2個の第2信号のうち他方の第2信号は線路1422、第2出力端1493、線路1453、接続部3203、第2インピーダンス変換部1814、接続部3243、線路1914、出力端子1924の順序で伝送され、RFIC110Dに入力される。
【0112】
次に、インピーダンスを説明する。線路304、線路1911、線路1912、線路1913、線路1914のインピーダンスは、Z0(第1インピーダンス、たとえば、50Ω)となる。
【0113】
線路141、線路143、線路145、線路1432、線路1452、線路1433、線路1453のインピーダンスは、Z1(第2インピーダンス、たとえば、25Ω)となる。
【0114】
第1インピーダンス変換部181、第2インピーダンス変換部1811、第2インピーダンス変換部1811、第2インピーダンス変換部1813、および第2インピーダンス変換部1814のインピーダンスは、約35.3Ω(式(1)参照)となる。
【0115】
線路142、線路144、線路1421、線路1442、線路1422、および線路1443のインピーダンスは、√2×Z1(たとえば、約35.3Ω)となる。
【0116】
抵抗器194、抵抗器1942、抵抗器1943のインピーダンスは、2×Z1(たとえば、約35.3Ω)となる。
【0117】
また、第1分配器1401の一方の第1出力端148と第2分配器1402の入力端1472との間は、第1インピーダンス系の線路が設置されておらず、第2インピーダンス系の線路143のみで接続されている。また、第1分配器1401の他方の第2出力端149と第3分配器1403の入力端1473との間は、第1インピーダンス系の線路が設置されておらず、第2インピーダンス系の線路145のみで接続されている。
【0118】
なお、変形例として、第1出力端148と第2分配器1402の入力端1472との間、および第2出力端149と第3分配器1403の入力端1473との間のいずれか一方を、第2インピーダンス系の線路143のみで接続させるようにしてもよい。また、他方を、たとえば、他のインピーダンス系の線路(たとえば、第1インピーダンス系の線路)で接続するようにしてもよい。つまり、第1出力端148と第2分配器1402の入力端1472との間、および第2出力端149と第3分配器1403の入力端1473との間のうち、少なくとも一方を、第2インピーダンス系の線路143のみで接続させるようにしてもよい。
【0119】
本実施形態では、図8に示すように、第2分配器1402は、第1分配器1401の2つの出力端のうち一方の第1出力端148に接続される。第2分配器1402は、第1分配器1401で分配された第1高周波信号(上述の第1信号)をさらに分配して第1給電回路(RFIC110A)および第2給電回路(RFIC110B)に出力する。
【0120】
また、第3分配器1403は、第1分配器の2つの出力端のうち他方の第2出力端149に接続される。第3分配器1403は、第1分配器1401で分配された第1高周波信号(上述の第2信号)をさらに分配して第3給電回路(RFIC110C)および前記第4給電回路(RFIC110D)に出力する。したがって、発振器130からの信号を4個のRFIC110A〜110Dに分配できる。
【0121】
また、本実施形態のアンテナモジュール100Aでは、分配回路150の入力側のインピーダンスと、分配回路150の出力側のインピーダンスとを同一にすることができる。本実施形態では、分配回路150の入力側のインピーダンスと、分配回路150の出力側のインピーダンスとを共に50Ωとすることができる。したがって、アンテナモジュール100における信号の反射などを低減でき、信号の損失を低減できる。
【0122】
また、第1分配器1401の一方の第1出力端148と第2分配器1402の入力端1472との間は、第1インピーダンス系の線路が設置されておらず、第2インピーダンス系の線路143のみで接続されている。また、第1分配器1401の他方の第2出力端149と第3分配器1403の入力端1473との間は、第1インピーダンス系の線路(高インピーダンス系の線路)などが設置されておらず、第2インピーダンス系の線路145(低インピーダンス系の線路)のみで接続されている。したがって、「第1出力端148と第2分配器1402の入力端1472との間に第1インピーダンス系の線路が含まれており、第2出力端149と第3分配器1403の入力端1473との間は、第1インピーダンス系の線路が含まれているアンテナモジュール」と比較して、第1分配器1401および第2分配器1402の間での信号の損失、および第1分配器1401および第3分配器1403の間での信号の損失を低下させることができる。
【0123】
また、図9の例において、4つの無給電素子122とRFICとの組が4つある。図9の例では、アンテナモジュール100Aを法線方向から平面視した場合の形状は矩形状となる。この4つの組は、それぞれ、該矩形状の4隅に配置されている。また、4つの組の中央に、第1分配器1401、第2分配器1402、および第3分配器1403が配置される。このような構成により、アンテナモジュール100Aを小型化できる。
【0124】
[第3実施形態]
第3実施形態では、合成チップ151とRFIC110A〜110Dとを結ぶ線路と、分配チップ152とRFIC110A〜110Dとを結ぶ線路とをまとめて「線路群」という。線路群は、BBIC200(第2出力回路)からの第2高周波信号を、RFIC110A〜RFIC110Dに伝送する。第3実施形態のアンテナモジュールでは、線路群が配置される層と、分配回路150が配置される層が別個に設けられている。
【0125】
図10は、第3実施形態のアンテナモジュール100Bの断面図である。アンテナモジュール100Bは、接地電極GND1と、接地電極GND2と、接地電極GND3とを有する。図10の例では、誘電体基板125の厚み方向において、アンテナ素子121が配置されている層から、実装面126に向かって、接地電極GND1、接地電極GND2、および接地電極GND3の順番で、接地電極GND1、接地電極GND2、および接地電極GND3は設けられている。接地電極GND1、接地電極GND2、および接地電極GND3は、それぞれ「第1接地導体」、「第2接地導体」、および「第3接地導体」に対応する。
【0126】
図10の例では、線路群305(合成チップ151とRFIC110A〜110Dとを結ぶ線路と、分配チップ152とRFIC110A〜110Dとを結ぶ線路)は、接地電極GND1および接地電極GND2の間の層に配置される。また、分配回路150は、接地電極GND2および接地電極GND3の間の層に配置される。
【0127】
また、分配回路150(第1分配器1401、第2分配器1402、および第3分配器1403)が配置される層を「分配器層DIV」と称する。線路群305が配置される層を、「配線層LINE」と称する。線路群305は、「信号線路」に対応する。
【0128】
図11は、アンテナ素子121および無給電素子122が形成されている側から誘電体基板125の厚み方向において平面視した場合の線路群305、および分配回路150を示した図である。図11の例では、分配回路150の記載については、1個の分配器として記載している。
【0129】
図11(A)は比較例を示し、図11(B)は本実施形態を示す。図11(A)の比較例では、線路群と、分配回路150とは、同一のGNDの間に配置されている。仮に、誘電体基板125の厚み方向において平面視した場合に、線路群305と、分配回路150とが重畳するように、線路群305と分配回路150とが配置された場合には、線路群305と分配回路150とが電磁的結合が生じてしまうおそれがあった。そこで、図11(A)に示すように、比較例では、誘電体基板125の厚み方向において平面視した場合に、線路群305と、分配回路150とが重畳しないように(線路群305を迂回させるように)、線路群305と分配回路150とを配置させる必要がある。
【0130】
図11(A)のような構成であると、誘電体基板125の厚み方向と垂直な平面(つまり、図11のXY平面)において、線路群305が配置される領域が増大してしまう。さらに、誘電体基板125の厚み方向において平面視した場合に、線路群305と、分配回路150とが重畳しないように配置させる必要があるため、線路群305の配置の自由度を狭めることにもなる。
【0131】
そこで、本実施形態では、図10に示すように、線路群305を、接地電極GND1および接地電極GND2の間の層に配置させる。また、分配回路150を、接地電極GND2および接地電極GND3の間の層に配置させる。
【0132】
第2実施形態でも説明したように、第1分配器1401、第2分配器1402、および第3分配器1403は、第2インピーダンス系で構成されていることから、第1分配器1401、第2分配器1402、および第3分配器1403が配置される誘電体層(分配回路150が配置されるDIV層)を薄くすることができる。
【0133】
したがって、接地電極GND3を追加して、線路群305を、接地電極GND1および接地電極GND2の間の層に配置させ、分配回路150を、接地電極GND2および接地電極GND3の間の層に配置させることが可能となる。
【0134】
このような構成により、線路群305と、分配回路150との間に、シールド層(図10の例では、接地電極GND2)を設けることができる。したがって、図11(B)に示すように、アンテナ素子121および無給電素子122が形成されている側の誘電体基板125の厚み方向においてアンテナモジュール100を平面視した場合において、線路群305は、分配回路150と重なるように配置させることができる。したがって、第3実施形態のアンテナモジュール100Bによれば、誘電体基板125の厚み方向と垂直な平面(つまり、図11のXY平面)において、線路群305が配置される領域を、比較例と比較して小さくすることができる。さらに、第3実施形態のアンテナモジュール100Bによれば、図11(A)の比較例のように線路群305を迂回させる必要がないことから、該比較例と比較して、線路群305の配置の自由度を向上させることができる。
【0135】
また、線路群305と分配回路150とが重なるように、線路群305と分配回路150とが配置された場合であっても、接地電極GND2により、線路群305と、分配回路150との間での電磁的結合を低減できる。よって、アンテナモジュールの特性が低下することを抑制できる。また、本実施形態では、アンテナモジュールの設計によっては、線路群305と分配回路150とが重ならないように、線路群305と分配回路150とを配置させるようにしてもよい。
【0136】
[変形例]
以上、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。本発明は、上記の実施形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。
【0137】
(1) 本実施形態では、インピーダンス変換部を備えるとして説明した。しかしながら、インピーダンス変換部を備えないようにしてもよい。このような構成によれば、インピーダンス変換部を備えるアンテナモジュールと比較して、インピーダンス変換部に関するコストを低減させることができる。
【0138】
(2) 図4などにおいては、インピーダンス変換部を線路を介して分配器に接続するとして説明した。たとえば、図4の例では、第1インピーダンス変換部181を線路141を介して分配器140に接続するとして説明した。しかしながら、インピーダンス変換部を線路を介さずに、直接的に、分配器に接続するようにしてもよい。このような構成によれば、該線路を備えるアンテナモジュールと比較して、該線路に関するコストを低減させることができる。
【0139】
(3) 図5において、線路304、第1インピーダンス変換部181、線路141のように、インピーダンスは、50Ω、約35.3Ω、25Ωの3段階で変化するとして説明した。しかしながら、この段階数は、4以上としてもよい。
【0140】
(4) 出力端子から分配器までの第1インピーダンス系の信号線路の長さは、出力端子から分配器までの第2インピーダンス系の信号線路の長さよりも短くなるようにしてもよい。たとえば、図5において、図5の出力端子318からまでの分配器140までの第1インピーダンス系の線路316の長さL3は、出力端子318からまでの分配器140までの第2インピーダンス系の線路143の長さL4よりも短いようにしてもよい。この構成によれば、「L3≧L4となるアンテナモジュール」と比較して、高周波信号の損失を低減させることができる。
【0141】
(5) 本実施形態の第1分配器1401、第2分配器1402、および第3分配器1403は、入力端側の第2インピーダンスの信号線路および出力端側の第2インピーダンスの信号線路を有していないとして説明した。たとえば、図5では、第1分配器1401は、第2インピーダンスの信号線路として「入力端側の信号線路141、出力端側の信号線路143、および出力端側の信号線路145」を有していないとして説明した。しかし、第1分配器1401、第2分配器1402、および第3分配器1403のうちの少なくとも1つは、入力端側の第2インピーダンスの信号線路および出力端側の第2インピーダンスの信号線路の少なくとも1つを有する構成としてもよい。たとえば、第1分配器1401、第2分配器1402、および第3分配器1403は、入力端側の第2インピーダンスの信号線路および出力端側の第2インピーダンスの信号線路の双方を有する構成としてもよい。
【0142】
(6) 図13は、変形例のアンテナモジュール100Dの断面図である。図2の例では、第1端子電極401、第2端子電極402、第3端子電極403、第4端子電極404、第5端子電極405、RFIC110A,110B、およびはんだバンプ155は、樹脂135によってモールドされているとして説明した。しかしながら、図13に示すように、第1端子電極401、第2端子電極402、第3端子電極403、第4端子電極404、第5端子電極405、RFIC110A,110B、およびはんだバンプ155は、モールドされていなくてもよい。図13の例では、RFIC110A,110Bは、アンテナモジュール100Dに対して外付けされる。RFIC110A,110Bは、はんだバンプ155を介して、アンテナモジュール100Dに接続されている。図13の例のアンテナモジュール100Dは、RFIC110A,110Bを含まずに、誘電体基板125、アンテナ群123A,123B、第1端子電極401、第2端子電極402、第3端子電極403、第4端子電極404、第5端子電極405、および分配器140を含む。図13の例では、アンテナモジュール100Dが含まないRFIC110A,110B、およびはんだバンプ155が破線で示されている。
【0143】
(7) 本実施形態では、RFIC110Aは「第1給電回路」に対応し、RFIC110Bは「第2給電回路」に対応する構成を説明した。しかしながら、第1給電回路および第2給電回路の少なくとも一方は、高周波電力を供給する機能を有する回路の一部としてもよい。
【0144】
(8) 図2のアンテナモジュール100では、アンテナ素子121および無給電素子122が配置されている誘電体基板と、分配器140が配置されている誘電体基板とが同一であるとして説明した。図12は、変形例のアンテナモジュール100CがBBIC200に実装された状態の断面図である。図12に示すように、アンテナモジュール100Cでは、アンテナ素子121および無給電素子122が配置されている誘電体基板と、分配器140が配置されている誘電体基板とが異なる。図12の例では、誘電体基板125Aにアンテナ素子121および無給電素子122が配置されており、誘電体基板125Bに分配器140が配置されている。誘電体基板125Aおよび誘電体基板125Bは、はんだバンプ655を介して一体化される。また、誘電体基板125Aおよび誘電体基板125Bは、導線を介して接続されてもよい。この場合には、誘電体基板125Aおよび誘電体基板125Bは例えば接着剤などにより一体化される。
【0145】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本実施形態の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0146】
10 通信装置、100 アンテナモジュール、111A〜111D,113A〜113D,117 スイッチ、112AR〜112DR ローノイズアンプ、112AT〜112DT パワーアンプ、114A〜114D 減衰器、115A〜115D 移相器、116 信号合成/分波器、118 ミキサ、119 増幅回路、120 アンテナアレイ、121 アンテナ素子、122 無給電素子、125 誘電体基板、126 実装面、127 表面、128A,128B 給電線、129 配線パターン、130 発振器、135 樹脂、140 分配器、150 分配回路、155,170,171 バンプ、160,161,211 貫通電極、165,166 電極パターン、181 第1インピーダンス変換部、182,183,1811,1812,1813,1814 第2インピーダンス変換部、1401 第1分配器、1402 第2分配器、1403 第3分配器。
【要約】
第1アンテナ群および第2アンテナ群に、高周波電力をそれぞれ供給するように構成されたRFIC(110A)、およびRFIC(110B)と、入力された基準周波数信号を分配してRFIC(110A)、およびRFIC(110B)に出力する分配器(140)とを備え、分配器(140)は、当該分配器(140)が挿入される信号伝達系のインピーダンスである第1インピーダンスより低い第2インピーダンスの回路系で構成されたウィルキンソン型の第1分配器である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13