(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6760710
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20200910BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20200910BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20200910BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20200910BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20200910BHJP
A61K 31/16 20060101ALI20200910BHJP
A61K 31/185 20060101ALI20200910BHJP
A61K 31/366 20060101ALI20200910BHJP
A61K 31/4525 20060101ALI20200910BHJP
A61K 31/51 20060101ALI20200910BHJP
A61K 31/70 20060101ALI20200910BHJP
A61K 36/18 20060101ALI20200910BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20200910BHJP
A61K 36/75 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/00 F
A23L33/10
A23L33/15
A23L33/17
A61K31/16
A61K31/185
A61K31/366
A61K31/4525
A61K31/51
A61K31/70
A61K36/18
A61K36/28
A61K36/75
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-171056(P2014-171056)
(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-77124(P2015-77124A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2017年8月9日
【審判番号】不服2019-10011(P2019-10011/J1)
【審判請求日】2019年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-190320(P2013-190320)
(32)【優先日】2013年9月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】畑中 大
(72)【発明者】
【氏名】石田 恵美
(72)【発明者】
【氏名】新井 寛子
【合議体】
【審判長】
村上 騎見高
【審判官】
櫛引 智子
【審判官】
齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−86954(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/141018(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第2532252(EP,A1)
【文献】
特開2009−57372(JP,A)
【文献】
特表平11−500725(JP,A)
【文献】
特開2006−296356(JP,A)
【文献】
特開2013−241393(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/010658(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/010656(WO,A1)
【文献】
特開2007−246402(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/049773(WO,A1)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硝酸チアミン、並びに
(B)以下の(b1)、(b2)、及び(b4)からなる群から選ばれる香辛料成分または香辛料の少なくとも1種を含有することを特徴とする、アルコールの含有量が1%未満の非炭酸飲料。
(b1)クワッシンまたはニガキ抽出物
(b2)スピラントールまたはオランダセンニチ抽出物
(b4)サンショオール、花椒抽出物または山椒抽出物
【請求項2】
チアミン又はその塩、タウリン及びカラメルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するアルコールの含有量が1%未満の非炭酸飲料に、
以下の(b1)〜(b4)からなる群から選ばれる香辛料成分または香辛料の少なくとも1種を配合することにより、前記非炭酸飲料のドライ感又はキレを向上する方法。
(b1)クワッシンまたはニガキ抽出物
(b2)スピラントールまたはオランダセンニチ抽出物
(b3)ピペリンまたはコショウ抽出物
(b4)サンショオール、花椒抽出物または山椒抽出物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チアミン又はその塩、タウリン及びカラメルの少なくとも1種を含有し、アルコール1%未満かつ炭酸を含まない飲料に、ドライ感又はキレを付与した飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドライ感やキレが強調されたアルコール飲料やビール等の炭酸飲料が開発・製品化され、非常に高い人気を得ている。例えば、特許文献1には、原料中の麦芽の使用比率を高率とすることにより飲み応えを確保しつつ、かつ、喉越しのキレを付与した麦芽発酵飲料が開示されている。また、特許文献2には、高甘味度甘味料を含有する炭酸飲料の香味(ボディ感、後口のキレ等)と気泡感とを向上させた、風味良好な炭酸飲料が開示されている。また、特許文献3には、乳成分含有飲料の呈味性改善剤が開示され、乳成分と甘味料を配合した飲食品にポリフェノール類を添加して、すっきりとした後味、味のキレを出すことが開示されている。
【0003】
一方、チアミン、タウリン又はカラメルは、医薬品や医薬部外品の内服液剤や食品の飲料などに広く配合され、甘味料や各種香料と配合し、服用しやすくした製品が市販されている。
【0004】
しかしながら、これら内服液剤や食品飲料について、ドライ感と後味のキレを付与する検討を行った例はない。近年の風味に対する高度な要求に対応すべく、検討の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−314333号公報
【特許文献2】特許5175167号公報
【特許文献3】特開2005−6503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、チアミン又はその塩、タウリン、又はカラメルを含有するアルコール1%未満かつ非炭酸飲料において、ドライ感と後味のキレを付与した飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、チアミン又はその塩、タウリン、カラメルのいずれか一種以上含有した飲料に、特定の香辛料成分又は香辛料を配合すると、ドライ感又や後味のキレを付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、
(1)(A)チアミン又はその塩、タウリン及びカラメルからなる群から選ばれる少なくとも1種、及び(B)以下の(b1)〜(b4)からなる群から選ばれる香辛料成分または香辛料の少なくとも1種を含有することを特徴とする、アルコールの含有量が1%未満の非炭酸飲料、
(b1)クワッシンまたはニガキ抽出物
(b2)スピラントールまたはオランダセンニチ抽出物
(b3)ピペリンまたはコショウ抽出物
(b4)サンショオール、花椒抽出物または山椒抽出物、
(2)チアミン又はその塩、タウリン及びカラメルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するアルコールの含有量が1%未満の非炭酸飲料に、以下の(b1)〜(b4)からなる群から香辛料成分または香辛料の選ばれる少なくとも1種を配合することにより、前記非炭酸飲料のドライ感又はキレを向上する方法、
(b1)クワッシンまたはニガキ抽出物
(b2)スピラントールまたはオランダセンニチ抽出物
(b3)ピペリンまたはコショウ抽出物
(b4)サンショオール、花椒抽出物または山椒抽出物、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、チアミン又はその塩、タウリン、カラメルをいずれか一種以上含有した飲料において、ドライ感及びキレを付与した飲料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、チアミン又はその塩とは、チアミン、塩酸チアミン、硝酸チアミン、フルスルチアミン,塩酸ジセチアミンなどをあげることができる。チアミン又はその塩の含有量は、飲料全量に対して通常0.00001〜1.0W/V%であり、好ましくは0.0001〜0.1W/V%、より好ましくは0.001〜0.01%である。
【0011】
本発明において、タウリンとは合成品又はタウリンを含むいか、たこやかきなどからの抽出品などをあげることができる。タウリンの含有量は、飲料全量に対して通常0.001〜10W/V%であり好ましくは0.01〜5W/V%、より好ましくは0.1〜3W/V%である。
【0012】
本発明において、カラメルとは、砂糖、ぶどう糖等の食用炭水化物を熱処理して得られたものである。カラメルの含有量は、飲料全量に対して通常0.0001〜5W/V%であり、好ましくは0.001〜1W/V%、より好ましくは0.01〜0.5W/V%である。
【0013】
本発明に用いる(b1)クワッシンまたはニガキ抽出物は、ニガキ科ニガキ属の植物であるニガキ(別名クワッシャ,学名 Picrasma quassioides)の樹皮をそのまま、あるいは必要に応じて、乾燥、破砕、粉砕処理等を行った後に抽出することにより得られる。抽出処理方法は、特に限定されず、常法に従って行うことができる。また、クワッシンまたはニガキ抽出物を含む他の植物からの抽出物や調合香料を用いても良い。
【0014】
本発明に用いる(b2)スピラントールまたはオランダセンニチは、キク科スピランテス属の植物であるオランダセンニチ(別名ハトウガラシ 学名 Spilanthes acmella)の花や葉をそのまま、あるいは必要に応じて、乾燥、破砕、粉砕処理等を行った後に抽出することにより得られる。抽出処理方法は、特に限定されず、常法に従って行うことができる。また、スピラントールまたはオランダセンニチを含む他の植物からの抽出物や調合香料を用いても良い。
【0015】
本発明に用いる(b3)ピペリンまたは胡椒は、コショウ科コショウ属であるコショウ(学名 Piper nigrum)の果実をそのまま、あるいは必要に応じて、乾燥、破砕、粉砕処理等を行った後に抽出することにより得られる。抽出処理方法は、特に限定されず、常法に従って行うことができる。また、ピペリンまたは胡椒を含む他の植物、例えばヒハツやヒハツモドキなどからの抽出物や調合香料を用いても良い。
【0016】
本発明に用いる(b4)サンショオール、花椒抽出物または山椒抽出物は、ミカン科サンショウ属であるサンショウ(学名 Zanthoxylum pipertum)やカホクザンショウ(別名花山椒、学名Zanthoxylum bungeanum)の果実や果皮をそのまま、あるいは必要に応じて、乾燥、破砕、粉砕処理等を行った後に抽出することにより得られる。抽出処理方法は、特に限定されず、常法に従って行うことができる。また、サンショオールまたはサンショウを含む他の植物からの抽出物や調合香料を用いても良い。
【0017】
上記のクワッシンまたはニガキ抽出物、スピラントールまたはオランダセンニチ、ピペリンまたは胡椒、サンショオール、花椒抽出物または山椒抽出物は1種又は2種以上を任意組み合わせて用いることができる。これら成分は、チアミン又はその塩1質量部に対しては通常0.01〜1000質量部、本発明の効果の点から0.1〜100質量部配合するのが好ましく、タウリンに対しては0.000001〜10質量部、本発明の効果の点から0.0001〜1質量部配合するのが好ましい。また、カラメルに対しては0.00001〜100質量部、本発明の効果の点から0.0001〜10質量部配合するのが好ましい。
【0018】
本発明の飲料としては、「非炭酸飲料」であり、炭酸飲料は除かれる。非炭酸飲料とは、ガス内圧力が0.2kg/cm
3未満の飲料であり、本発明の飲料としては、例えば内服液剤、ドリンク剤等の医薬品及び医薬部外品の他、栄養機能性食品、特定保険用食品等の各種飲料や、果実・野菜系飲料、スポーツ・健康機能性飲料、乳性飲料といった食品飲料領域における各種飲料が挙げられる。
【0019】
本発明の飲料は、特に限定されず、例えば、pH2.0〜7.0である。風味の観点からは低pHであることが好ましく、さらに好ましくはpH2.5〜4.0であり、特に好ましくは、pH2.5〜3.0である.飲料組成物のpH調整は、可食性の酸をpH調整剤として用いることができる。pH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸などの有機酸及びそれらの塩類、塩酸、リン酸などの無機酸及びそれらの塩類、水酸化ナトリウム等の無機塩基などが挙げられる。これらのpH調整剤は一種又は二種以上使用できる。
【0020】
本発明の飲料にはその他の成分としてビタミン類、ミネラル類、アミノ酸又はその塩類、生薬、生薬抽出物、カフェイン、ローヤルゼリーなどを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0021】
さらに必要に応じて、抗酸化剤、着色料、香料、矯味剤、界面活性剤、増粘剤、安定剤、保存剤、甘味料、酸味料などの添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0022】
本発明の飲料は、常法により調製することができ、その方法は特に限定されるものではない。内服液剤の場合、通常、各成分をとり適量の精製水で溶解した後、pHを所望の酸性域に調整し、さらに精製水を加えて容量調整し、必要に応じてろ過、殺菌処理を施すことにより得られる。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例等を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。
【0024】
参 考 例 1
抽出物の調製:
花椒粉末5gに対し95%エタノール30mLを加え、室温で2時間攪拌後、ろ紙で濾過して抽出物を得た(花椒抽出物)。また、ピペリン溶液はpiperine 20mgを99.5%エタノール4mLに溶解させて調整した。オランダセンニチ抽出物およびニガキ抽出物、シナモン抽出物、クローブ抽出物、トウガラシ抽出物は市販品を用いた。これらの抽出物を以下の実施例で用いた。
【0025】
実 施 例 1
非炭酸飲料の調製:
下記表1に記載の処方および次の方法に従い非炭酸飲料を調製した。まず、リン酸二水素ナトリウムとリン酸で調整したpH3.0のリン酸緩衝液を調整した.全量の9割程度のpH3.0のリン酸緩衝液にVB1硝酸塩を添加し、十分に攪拌し溶解後、pH3.0のリン酸緩衝液を加えて全量し飲料原液とした。最後にこの飲料原液にオランダセンニチ抽出物を添加し、非炭酸飲料を得た。
【0026】
実施例2〜29、比較例1〜16も実施例1と同様に調整を行った。
これらの非炭酸飲料を65℃で3日保存し、試験液とした。20代〜40代の3人をパネルとして、試験液のキレとドライ感について評価した。評価は香辛料抽出物を配合していない試験液をコントロールとして相対評価した。実施例1〜4は比較例1をコントロールとし、同様に実施例5〜8は比較例2、実施例9〜12は比較例3、実施例13〜16は比較例4、実施例17〜20は比較例5、実施例21〜24は比較例6、実施例25〜29は比較例7、比較例8〜10は比較例1、比較例11〜13は比較例2、比較例14〜16は比較例3をコントロールとした。キレ、ドライ感が「コントロールより非常に強い」を3点、「コントロールより強い」を2点、「コントロールよりやや強い」を1点、「コントロールと同程度」を0点、「コントロールよりやや弱い」を−1点、「コントロールより弱い」を−2点、「コントロールより非常に弱い」を−3点とした7段階の評価で行った。コントロールの評価は絶対評価で行い、キレ、ドライ感を「非常に強く感じる」を7点、「強く感じる」を6点、「やや強く感じる」を5点、「感じる」を4点、「やや弱く感じる」を3点、「弱く感じる」を2点、「非常に弱く感じる」を1点とした7段階の評価で行い、パネル3名の平均を評価点として示した。処方を表1〜表3に結果を表4〜表7に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】
【表6】
【0033】
【表7】
【0034】
上記結果から明らかなようにオランダセンニチ抽出物、ピペリン溶液、花椒抽出物、ニガキ抽出物は、チアミン又はその塩、タウリン、カラメルをいずれか一種以上含有した非炭酸飲料にキレとドライ感を付与する効果がみられた。一方、他の香辛料であるシナモン抽出物、クローブ抽出物又はトウガラシ抽出物にはキレやドライ感を付与する効果がみられなかった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明により、チアミン又はその塩、タウリン又はカラメルを含有したノンアルコール非炭酸飲料に、新しい風味を付与した飲料の提供が可能となった。