(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記算出部は、通常時の前記生体の脈波振幅と前記生体に電気刺激が与えられた際の前記生体の脈波振幅との比に基づいて前記鎮痛の程度に関連する指標を算出する請求項1または請求項2に記載の指標出力装置。
前記出力部は、共通の始点から異なる方向に伸びる軸上に、前記各種指標をプロットして、当該プロット同士を直線で結んだ形状を表示する請求項1〜3のいずれか一項に記載の指標出力装置。
前記出力部は、前記算出部により算出された前記鎮痛の程度に関連する指標を、前記始点から離れる程小さい値を示す軸にプロットし、前記筋弛緩の程度に関する指標を、前記始点から離れる程、筋弛緩の程度が小さい状態の値を示す軸にプロットする請求項4に記載の指標出力装置。
前記出力部は、前記算出部によって算出された各種指標に含まれる第1の指標を第1の軸とし、前記算出部により算出された各種指標に含まれる第2の指標を前記第1の軸と異なる方向に伸びる第2の軸とする座標系に、前記算出部により算出された各種指標の値を時間ごとにプロットして表示する請求項1〜3のいずれか一項に記載の指標出力装置。
前記出力部は、前記プロットと共に前記プロットにより示される指標の値を評価するための閾値に対応する図形を表示する請求項4〜7のいずれか一項に記載の指標出力装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る指標出力装置の概略構成を示す図である。
【0016】
図1に示すように、指標出力装置100は、CPU110、ROM120、RAM130、ストレージ140、表示部150、操作部160、刺激部170および取得部180を備えており、これらは信号をやり取りするためのバス190を介して相互に接続されている。
【0017】
CPU110は、ROM120やストレージ140に記録されているプログラムにしたがって、上記各部の制御や各種の演算処理を行う。CPU110は、プログラムを実行することによって、算出部および出力部として機能する。ROM120は、各種プログラムや各種データを格納する。RAM130は、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶する。
【0018】
ストレージ140は、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや、各種データを格納する。
【0019】
表示部150は、たとえば、液晶ディスプレイであり、患者の生体情報や算出された各種指標等の情報を表示する。
【0020】
操作部160は、各種入力を行うために使用される。操作部160には、表示部150においてタッチパネル方式によりソフトウェアとして実現される操作キーや、ハードウェアとして設けられる操作ボタン等が含まれる。
【0021】
刺激部170は、患者に電気的な刺激を与えるための端子と接続され、当該端子を介して患者に複数のパターンの電気刺激を与える。たとえば、刺激部170は、患者の腕部に装着された電極クリップを介して患者の尺骨神経に対し、TOFをモニタリングするための電気刺激(以下、TOF刺激と称する)を与える。刺激部170は、尺骨神経以外の他の部位にTOF刺激を与えてもよく、また、複数の端子を介して複数の部位にTOF刺激を与えてもよい。
【0022】
取得部180は、患者の生体反応を検出するための各種センサー等と接続され、患者の脳波や筋の反応、脈波等の生体反応を取得する。たとえば、取得部180は、患者の頭部に装着された電極を介して、患者の脳波を取得する。また、取得部180は、患者の掌部に装着された加速度センサーを介して、刺激部170によって電気刺激を与えた際の患者の母指内転筋の反応を取得する。また、取得部180は、患者の指先等に装着されたパルスオキシメータ用プローブを介して、患者の脈波を取得する。
【0023】
なお、指標出力装置100は、上記構成要素以外の構成要素を含んでいてもよく、あるいは、上記構成要素のうちの一部が含まれていなくてもよい。
【0024】
上記のように構成される本実施形態の指標出力装置100によれば、患者にTOF刺激を与え、複数の生体反応を取得し、取得した複数の生体反応から、鎮静、筋弛緩および鎮痛の程度に関連する各種指標を算出して出力する。以下、指標出力装置100の作用において説明する。
【0025】
(指標出力装置100における処理の概要)
図2は、指標出力装置における処理の手順を示すフローチャートである。
図2のフローチャートに示される指標出力装置100の各処理は、指標出力装置100のストレージ140にプログラムとして記憶されており、CPU110が各部を制御することにより実行される。
【0026】
まず、指標出力装置100は、電気刺激部として、患者に電気刺激を付与する(ステップS101)。具体的には、指標出力装置100のCPU110は、刺激部170を制御して、患者の腕部に装着された電極クリップを介して患者の尺骨神経にTOF刺激を付与する。
【0027】
続いて、指標出力装置100は、取得部として、患者の生体の反応を取得する(ステップS102)。具体的には、指標出力装置100は、患者の頭部に装着された電極を介して、患者の脳波を取得する。また、指標出力装置100は、患者の掌部に装着された加速度センサーを介して、患者の母指内転筋の反応を取得する。また、指標出力装置100は、患者の指先に装着されたパルスオキシメータ用プローブを介して、患者の脈波を取得する。
【0028】
続いて、指標出力装置100は、算出部として、鎮静の程度に関連する指標、筋弛緩の程度に関連する指標および鎮痛の程度に関連する指標を算出する(ステップS103)。
【0029】
具体的には、指標出力装置100は、ステップS102の処理において取得された患者の脳波をスペクトル解析した結果に基づいて、鎮静の程度に関連する指標であるBIS値を算出する。BIS値は、0〜100の範囲の数値として算出される。BIS値が小さいほど、鎮静の程度が大きい、すなわち、患者の催眠状態が深いことを示し、BIS値が大きいほど、鎮静の程度が小さい、すなわち、患者の催眠状態が浅いことを示す。
【0030】
また、指標出力装置100は、ステップS102の処理において取得された患者の母指内転筋の反応から、筋弛緩の程度に関連する指標であるTOFを算出する。TOFには、与える電気刺激の種類や指標の算出方法によって、TOF比、TOFカウント、PTC(Post−Tetanic Count)等の種類がある。TOFについて、詳細は後述する。
【0031】
また、指標出力装置100は、ステップS102の処理において取得された脈波の波形から、鎮痛の程度に関連する指標としてPI比を算出する。PIは、被検者の指先等における拍動性血液量の程度を示す値であり、透過光の脈動成分を透過光強度で正規化した脈波の振幅に基づいて算出される。以降は透過光強度で正規化した脈波信号を脈波と称する。PI比は、通常時のPIの値と、TOF刺激が与えられた際のPIの値との比率である。PI比の値が大きいほど、鎮痛の程度が大きい、すなわち、患者が痛みを感じない状態にあることを示し、PI比の値が小さいほど、鎮痛の程度が小さい、すなわち、患者が痛みを感じる状態にあることを示す。PI比について、詳細は後述する。
【0032】
指標出力装置100は、上記のように算出した各種指標を、ストレージ140に記憶する。
【0033】
続いて、指標出力装置100は、出力部として、各種指標を出力する(ステップS104)。具体的には、指標出力装置100は、ステップS103の処理においてストレージ140に記憶された各種指標を、たとえば
図4に示すようなモニタリング画面200によって表示部150に表示する。モニタリング画面200について、詳細は後述する。
【0034】
(PI比およびTOFの詳細)
図3は、TOF刺激と、PI比との関係を説明するための図である。
図3には、鎮痛されていない状態でのTOF刺激に対する脈波の変動と、鎮痛されている状態でのTOF刺激に対する脈波の変動とが示されている。脈波振幅はPIと相関する値であるため、
図3においては、脈波振幅とPIとが対応付けられて記載されている。以下、PI比およびTOFそれぞれの詳細について説明した後、TOF刺激とPI比との関係について説明する。
【0035】
(PI比について)
PI比は、通常時のPIの値(PI
s)と、TOF刺激が与えられた際のPIの値(PI
ref)との比率であり、「PI比=(PI
s/PI
ref)×100」という数式によって算出される。PIは、上述のように、脈波振幅と相関する値であるため、PI比は、通常時における脈波振幅と、TOF刺激が与えられた際の脈波振幅との比率として算出される。通常時における脈波振幅としては、たとえば、TOF刺激を行う前の所定の期間内における脈波振幅の最大値を用いることができる。また、TOF刺激が与えられた際の脈波振幅としては、たとえば、TOF刺激を行った後の所定の期間内における脈波振幅の最小値を用いることができる。
【0036】
(TOFについて)
図3に示すように、TOF刺激は、たとえば0.5秒おきに連続する4回の刺激T1〜T4を1つのセットとして、15秒毎に繰り返し行われる。上述のように、TOFの種類としては、TOF比、TOFカウント、PTC等がある。TOF比は、筋弛緩の程度が比較的小さい状態で使用される指標であり、TOFカウントおよびPTCは、筋弛緩の程度が比較的大きい状態で使用される指標である。以下、TOF比、TOFカウント、PTCについて詳細に説明する。
【0037】
TOF比は、4回のTOF刺激のうちの1回目の刺激T1に対する反応の大きさと、4回目の刺激T4に対する反応の大きさとの比率を、百分率で表した値である。筋弛緩が行われていない場合、1回目の刺激T1に対する反応の大きさと4回目の刺激T4に対する反応の大きさとは同等であり、TOF比は100%となる。筋弛緩が行われるにつれて、1回目の刺激T1に対する反応と比較して4回目の刺激T4に対する反応が小さくなり、TOF比は減少する。
【0038】
TOFカウントは、刺激に対する4回目の反応まで検知できない、または1回目の刺激T1に対する反応が20%未満まで減少した際に使用される指標であり、連続する4回の刺激に対して反応が検出される回数をカウントした値である。たとえば、4回の刺激に対して反応が3回検出された場合、TOFカウントは3となり、反応が1回も検出されない場合、TOFカウントは0となる。
【0039】
PTCは、TOFカウントが0となるような深い筋弛緩状態で使用される指標である。PTCは、1Hzの刺激を15回(15秒間)与えても反応がない場合に、TOF刺激よりも強い刺激であるテタヌス刺激を5秒間与え、その3秒後に1Hzの単一刺激を15回(15秒間)与えた際に、反応が検出される回数をカウントした値である。PTCの値から、筋弛緩の効果が薄れTOFカウントやTOF比の値が回復する時期を推測できる。
【0040】
(TOF刺激とPI比との関係について)
図3の左側の破線枠内に示すように、鎮痛されていない状態では、TOF刺激に対して患者が痛みを感じるため、TOF刺激が与えられた際のPIの値(PI
s)は、通常時のPIの値(PI
ref)と較べて減少する。したがって、鎮痛されていない状態では、PI比は小さい値となる。一方、
図3の右側の破線枠内に示すように、鎮痛されている状態では、TOF刺激に対して患者が痛みを感じないため、TOF刺激が与えられた際のPIの値(PI
s)は、通常時のPIの値(PI
ref)と同等となる。したがって、PI比は100%程度の大きい値となる。このように、PI比の値が大きいほど、鎮痛の程度が大きく、PI比の値が小さいほど、鎮痛の程度が小さいことが示される。したがって、PI比を確認することによって。鎮痛の状態を把握できる。
【0041】
次に、モニタリング画面200について、詳細に説明する。
【0042】
(モニタリング画面200)
図4は、指標出力装置において表示されるモニタリング画面の一例を示す図である。
【0043】
図4に示すように、モニタリング画面200は、生体情報表示部210、指標表示部220および投与状態表示部230を含む。
【0044】
生体情報表示部210には、たとえば、患者の心電図、血圧、肺動脈圧、中心静脈圧、SpO
2、体温、心拍数、呼吸数等の生体情報が表示される。SpO
2は、たとえば指先および前額部の2か所において測定された値がそれぞれ表示される。
【0045】
指標表示部220には、
図3のステップS102の処理において取得された各種指標が関連付けられて表示される。指標表示部220について、詳細は後述する。
【0046】
投与状態表示部230には、麻酔薬であるフェンタニル、鎮痛薬であるレミフェンタニル、筋弛緩薬であるロクロニウム等の薬物の投与状態に関する情報が表示される。たとえば、投与状態表示部230に表示される実線のグラフは、投与された薬物の血中濃度の推移に関するシミュレーション結果を示し、破線のグラフは、効果部位濃度の推移に関するシミュレーション結果を示す。
【0047】
次に、モニタリング画面200の指標表示部220について詳細に説明する。
【0048】
(指標表示部220)
図5は、モニタリング画面の指標表示部の一例を示す図である。
【0049】
図5に示すように、指標表示部220には、
図2のステップS103の処理において算出されたBIS、TOFおよびPI比(PI
R)の各種指標が相互に関連付けられて表示される。
図5の例において、BIS、TOFおよびPI
Rは、中央部に位置する共通の始点から異なる3方向に向かって伸びる3本の軸上にそれぞれプロットされて表示される。また、プロット同士は互いに直線で結ばれ、各プロットを頂点とする三角形状が表示されている。
【0050】
BISは、始点から離れる程大きい値を示す軸、すなわち、始点が最小値を示し、終点が最大値を示す軸にプロットされている。これにより、鎮静の程度が大きくなるにつれて、BIS値は小さくなるため、プロットが終点側から始点側に移動する。
【0051】
PI
Rは、始点から離れる程小さい値を示す軸、すなわち、始点が最大値を示し、終点が最小値を示す軸にプロットされている。これにより、鎮痛の程度が大きくなるにつれて、PI
Rの値は大きくなるため、プロットが終点側から始点側に移動する。
【0052】
TOFは、1本の軸が3つの部分に分割されている。3つの部分は、軸の終点側から順に、TOF比(TOF
R)、TOFカウント(TOF
C)、PTCの値をそれぞれ示す。3つの部分は、それぞれの部分において、軸の始点から離れる程大きい値を示す。たとえば、
図5の例では、TOF
Rを示す部分は、終点側の端部が100を示し、始点側の端部が0を示す。TOF
Cを示す部分は、軸の終点側の端部が4を示し、軸の始点側の端部が0を示す。PTCを示す部分は、終点側の端部が15を示し、始点側の端部が0を示す。これにより、筋弛緩の程度が大きくなるにつれて、TOF
R、TOF
C、PTCの値はそれぞれ小さくなるため、プロットは終点側から始点側に移動する。
【0053】
図5の例では、BIS値は40であり、TOFはPTCが10であり、PI
Rは56であることが読み取れる。たとえばこの状態から、薬剤の追加投与等によって、鎮静、筋弛緩および鎮痛の程度がさらに大きくなると、各プロットは中央の始点側に移動する。この場合、プロット同士を結ぶ線によって形成される三角形の面積が小さくなる。一方、時間の経過等によって、鎮痛、筋弛緩および鎮痛の程度が小さくなると、各プロットは始点から離れる方向に移動する。この場合、三角形の面積は大きくなる。したがって、ユーザーは三角形の大きさや形状のバランス等を確認することによって、麻酔中の患者の状態を、視覚を通じて容易に把握できる。
【0054】
以上のように、本実施形態の指標出力装置100によれば、生体にTOF刺激を与え、TOF刺激による筋の反応および脈波の反応から、筋弛緩の程度に関連する指標であるTOFと、鎮痛の程度に関連する指標であるPI比とを算出して出力する。これにより、鎮痛の状態を定量的かつ定期的にモニタリングすることができ、麻酔中の患者の状態をより適切に把握することができる。また、TOFを取得するために使用するTOF刺激を、PI比を取得するための入力としても使用するため、PI比を取得するための入力を別途行う必要がなくなり、装置構成や制御プロセス等を簡略化できる。
【0055】
また、指標出力装置100は、生体の脳波から、鎮静の程度に関連する指標をさらに算出して出力する。これにより、麻酔時の患者管理において重要な要素である鎮静、筋弛緩、鎮痛の3つの状態を一度にまとめて把握することができるため、麻酔中の患者の状態をより適切に把握できる。
【0056】
また、指標出力装置100は、通常時の脈波振幅と電気刺激が与えられた際の脈波振幅との比に基づいてPI比を算出する。これにより、脈波波形からPI比を容易に算出することができる。
【0057】
また、指標出力装置100は、モニタリング画面200の指標表示部220において、共通の始点から異なる方向に伸びる軸上に、各種指標をプロットして、当該プロット同士を直線で結んだ形状を表示する。これにより、ユーザーは、各種指標により表される患者の状態を、視覚を通じて容易に把握できる。
【0058】
また、指標出力装置100は、モニタリング画面200の指標表示部220において、PI比を、始点から離れるほど小さい値を示す軸にプロットし、TOFを、始点から離れるほど筋弛緩の程度が小さい状態の値を示す軸にプロットする。これにより、筋弛緩および鎮痛の程度が大きくなるほど、各プロットは始点側に移動するため、各プロットを直線で結んだ形状の面積が小さくなる。また、筋弛緩および鎮痛の程度が小さくなるほど、各プロットは始点から離れる方向に移動するため、各プロットを直線で結んだ形状の面積が大きくなる。したがって、ユーザーはプロットにより形成される形状の面積やバランスを確認することにより、患者の状態を容易に把握できる。
【0059】
また、指標出力装置100は、筋弛緩の程度に関連する指標、鎮痛の程度に関連する指標および鎮静の程度に関連する指標のうち少なくとも2つの指標を互いに関連付けて出力する。したがって、ユーザーは、複数の指標を一見して瞬時に把握できると共に、各指標間の関係についても容易に確認することができる。これにより、鎮静、筋弛緩および鎮痛等の処置をバランスよく行うことができる。
【0060】
(変形例1)
なお、上記の実施形態では、モニタリング画面200の指標表示部220において、BIS、TOF、PI比を、共通の始点から異なる3方向に向かって伸びる3本の軸上にそれぞれプロットして表示する例について説明した。しかし、指標表示部220における表示方法はこれに限定されない。たとえば、各種指標それぞれの推移を時系列にプロットして表示してもよい。以下では、各種指標の推移を時系列にプロットして表示する例について説明する。
【0061】
図6は、モニタリング画面の指標表示部において、各種指標の推移が時系列にプロットされる様子を示す図である。
【0062】
図6に示すように、指標表示部220には、
図2のステップS103の処理において算出されたPI比およびTOFの値の推移が、それぞれ時系列でプロットされている。PI比のグラフは、横軸が時間を示し、縦軸がPI比を示す。TOFのグラフは、横軸が時間を示し、縦軸が上部と下部の2つの部分に分割されている。縦軸の上部はTOF比を示し、下部はTOFカウントおよびPTCを示す。TOFカウントとPTCとは、軸を共有しているため、プロットの色や形状によって互いに区別される。たとえば、
図6の例では、TOFカウントは丸状のプロットで示され、PTCは二重丸状のプロットで示されている。
【0063】
図6の例では、初期状態においては、PI比が小さく、TOF比が大きい。これにより、鎮痛および筋弛緩が進行していないことを確認できる。PI比については、時間の経過と共に増加している。これにより、鎮痛が順調に進行していることを確認できる。また、TOFについては、時間の経過と共にTOF比が減少してゼロになり、その後、TOFカウントもゼロになりPTCが測定されている。これにより、筋弛緩も順調に進行していることを確認できる。このように、各種指標の推移を時系列で表示することにより、ユーザーは、指標の変動傾向や鎮痛等の状態の推移を視覚的に把握できるため、より確実に患者の状態を把握できる。
【0064】
(変形例2)
また、指標出力装置100は、指標表示部220において、BIS、TOF、PI比のうちの2つの指標をそれぞれ第1軸および第2軸とする2次元座標系に、各種指標の値を時間ごとにプロットして表示してもよい。以下では、2次元座標系に、各種指標の値を時間ごとにプロットして表示する例について説明する。
【0065】
図7は、モニタリング画面の指標表示部において、2次元座標系に各種指標の値が時間ごとにプロットされる様子を示す図である。
【0066】
図7に示すように、指標表示部220には、TOFを横軸とし、BISを縦軸とする2次元座標系に、算出されたTOFおよびBISの値が時間ごとにプロットされている。横軸は2つの部分に区分されており、図中右側の部分がTOF比(0%〜100%)を示し、左側の部分がTOFカウント(0〜4)を示す。縦軸はBIS(0〜100)を示す。点線L1は、TOFの値を評価するための閾値を示し、プロットの位置が点線L1よりも左側にあれば、筋弛緩が十分に行われていることを示している。また、点線L2は、BISの値を評価するための閾値を示し、プロットの位置が点線L2よりも下側にあれば、鎮静が十分に行われていることを示している。これにより、ユーザーは、プロットの位置が、点線L1、点線L2、横軸および縦軸によって囲まれる枠の中にあれば、筋弛緩および鎮静が十分に行われていると判断することができる。また、プロットの位置が枠の外にあれば、筋弛緩または鎮静の処置を追加で行うといった判断をすることができる。
【0067】
図7の例では、図中右上のプロットが初期状態の指標値を示し、時間が経過するにつれて、プロットの位置が左下に向かって推移している。左下の二重丸状のプロットは最新の指標値を示している。また、指標の算出タイミングからの経過時間に応じてプロットの色(濃度)が異なるように表示されている。算出タイミングからの経過時間が短い、すなわち新しいプロットほど色(濃度)が濃くなるように表示されている。これにより、ユーザーは、指標の推移を容易に把握できるようになる。
【0068】
本発明は、上述した実施形態および変形例のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。
【0069】
たとえば、上記の実施形態では、PI比を、脈波振幅の最大値と、脈波振幅の最小値との比率として算出したが、PI比の算出方法はこれに限定されない。たとえば、通常時のPIに対応する通常時の脈波振幅を予め測定してストレージ140に記憶しておき、記憶した脈波振幅と、取得した脈波振幅の最小値との比率として、PI比を算出してもよい。この場合、通常時の脈波振幅を毎回取得する必要がなくなるため、処理を簡略化できる。
【0070】
あるいは、通常時のPIに対応する通常時の脈波振幅として、TOF刺激の痛みによる影響を受けにくい前額部等の脈波振幅を使用してもよい。指標出力装置100は、
図4に示したように、指先および前額部等の2か所においてSpO
2を取得できる。したがって、TOF刺激を与えた際の前額部および指先の脈波振幅を取得し、それらの比率としてPI比を算出してもよい。
【0071】
また、上記の実施形態では、指標表示部220に表示される各種指標の軸は、各種指標の最小値から最大値までを均等な目盛りによって示すものとして説明したが、軸の表示方法はこれに限定されない。たとえば、BISの20から80までのように、各種指標の所定の範囲を示す軸としてもよい。あるいは、各種指標に所定の演算を加えてインデックス化した値を示す軸や対数軸等が用いられてもよい。
【0072】
また、上記の実施形態では、指標表示部220に、
図5〜
図7に示すそれぞれの画面が選択的に表示されるものとして説明したが、これに限定されない。
図5〜
図7に示す画面は、複数同時に表示されてもよく、ユーザーの操作等に基づいて各画面を切り替えて表示できるようにしてもよい。
【0073】
また、
図5〜
図7に示される各種指標の表示方法は、それぞれ独立した表示方法ではなく、各方法が適宜組み合わせられてもよい。たとえば、
図5の画面において、
図7の画面のように、指標の経時的な推移がわかるように、プロットの色や濃度、形状等を異ならせて過去の値を示すプロットを表示するようにしてもよい。あるいは、
図7の画面に示された閾値に対応する図形が、
図5、
図6の画面に適用されてもよい。たとえば、
図5の画面において、閾値に対応する図形として各種指標の閾値に対応する点を直線で結んだ三角形が表示されてもよく、
図6において、縦軸の閾値に対応する点から横軸に平行に伸びる直線が表示されてもよい。また、TOFの軸の表示方法についても、
図5〜7に示す表示方法や他の公知の表示方法を適宜採用してもよい。さらに、BIS、TOF、PI比を、他の指標と組み合わせて指標表示部220に表示してもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、
図7に示す指標表示部220において、2つの指標を2次元座標系上にプロットする例について説明したが、これに限定されない。たとえば3つの指標を3次元座標系上にプロットして表示してもよい。
【0075】
また、上記の実施形態では、指標出力装置100が表示部150を有し、各種指標を表示部150に表示して出力するものとして説明したが、各種指標の出力方法はこれに限定されない。たとえば、指標出力装置100は、他の機器に設けられた表示部において各種指標を表示するために、他の機器に各種指標を示す情報を送信することによって各種指標を出力してもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、指標出力装置100は、各種指標を表示し、表示された指標をユーザーが確認することによって患者の状態の確認や判定を行うものとして説明したが、これに限定されない。たとえば、指標出力装置100は、予め設定された各種指標の閾値を用いて、患者の状態を判定してもよい。たとえば、指標出力装置100は、BISが所定の閾値よりも小さくなった場合に、患者が鎮静状態になったと判断し、鎮静状態になったことをユーザーに通知するようにしてもよい。あるいは、BISが所定の閾値よりも大きくなった場合に、鎮静状態ではなくなったことを通知してもよい。
【0077】
上述した実施形態に係る指標出力装置における各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、たとえば、フレキシブルディスクおよびCD−ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送され記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、指標出力装置の一機能としてその装置のソフトウェアに組み込まれてもよい。