(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨークから径方向に沿って内周側に延在するティース基部と、前記ティース基部の径方向内周側に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部を有する、固定子コアのティースに装着される絶縁部材であって、
前記ティース基部が挿入される貫通孔を有する胴部と、
前記胴部の、径方向内周側の端部に設けられ、前記胴部から飛び出ている第1の鍔部と、
前記胴部の、径方向外周側の端部に設けられ、前記胴部から飛び出ている第2の鍔部を有し、
前記貫通孔は、前記ティース基部が前記貫通孔に挿入された状態において、軸方向一方側に配置され、径方向および周方向に沿って延在する第1の内周面と、軸方向他方側に配置され、径方向および周方向に沿って延在する第2の内周面と、周方向一方側に配置され、径方向および軸方向に沿って延在する第3の内周面と、周方向他方側に配置され、径方向および軸方向に沿って延在する第4の内周面によって形成され、
前記第1の内周面は、前記ティース基部が前記貫通孔に挿入された状態において径方向に沿った断面で見て、径方向に対して傾斜した状態で延在する第1の傾斜面と、前記第1の傾斜面より径方向内周側に配置され、径方向に対して傾斜した状態で延在する第1の内周側内周面と、前記第1の傾斜面より径方向外周側に配置され、径方向と平行に延在する第1の外周側内周面を有し、
前記第2の内周面は、前記ティース基部が前記貫通孔に挿入された状態において径方向に沿った断面で見て、径方向に対して傾斜した状態で延在する第2の傾斜面と、前記第2の傾斜面より径方向内周側に配置され、径方向に対して傾斜した状態で延在する第2の内周側内周面と、前記第2の傾斜面より径方向外周側に配置され、径方向と平行に延在する第2の外周側内周面を有し、
前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面は、前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面との間の軸方向に沿った間隔が、径方向内周側から径方向外周側に向かって減少するように形成され、
前記第1の内周側内周面と前記第2の内周側内周面は、前記第1の内周側内周面と前記第2の内周側内周面との間の軸方向に沿った間隔が、径方向内周側から、前記第1の内周側内周面と前記第1の傾斜面との接続部および前記第2の内周側内周面と前記第2の傾斜面との接続部に向かって減少するように形成され、前記貫通孔への前記ティース基部の挿入をガイドするガイド面を構成し、
前記第3の内周面は、前記ティース基部が前記貫通孔に挿入された状態において軸方向と直角な断面で見て、径方向に対して傾斜した状態で延在する第3の傾斜面と、前記第3の傾斜面より径方向内周側に配置され、径方向に対して傾斜した状態で延在する第3の内周側内周面を有し、
前記第4の内周面は、前記ティース基部が前記貫通孔に挿入された状態において軸方向と直角な断面で見て、径方向に対して傾斜した状態で延在する第4の傾斜面と、前記第4の傾斜面より径方向内周側に配置され、径方向に対して傾斜した状態で延在する第4の内周側内周面を有し、
前記第3の傾斜面と前記第4の傾斜面は、前記第3の傾斜面と前記第4の傾斜面との間の周方向に沿った間隔が、径方向内周側から径方向外周側に向かって減少するように形成され、
前記第3の内周側内周面と前記第4の内周側内周面は、前記第3の内周側内周面と前記第4の内周側内周面との間の周方向に沿った間隔が、径方向内周側から、前記第3の内周側内周面と前記第3の傾斜面との接続部および前記第4の内周側内周面と前記第4の傾斜面との接続部に向かって減少するように形成され、前記貫通孔への前記ティース基部の挿入をガイドするガイド面を構成していることを特徴とする絶縁部材。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
本明細書では、「軸方向」という記載は、固定子コアの中心点P(
図1、
図2参照)を通る固定子コア中心線(回転子が固定子に対して回転可能に支持されている状態において、回転子の回転中心点を通る回転子中心線)の方向を示す。「周方向」という記載は、軸方向に直角な断面で見て、固定子コアの中心点Pを中心とする円周方向を示す。「径方向」という記載は、軸方向に直角な断面で見て、固定子コアの中心点Pを通る方向を示す。
なお、絶縁部材に対しては、「軸方向」、「周方向」、「径方向」という記載は、絶縁部材が固定子コアのティース(詳しくは、ティース基部)に装着されている状態における「軸方向」、「周方向」、「径方向」を表している。
【0012】
図1に、本発明の固定子の一実施形態が示されている。なお、
図1は、本実施形態の固定子10を、
軸方向から見た図である。
固定子10は、固定子コア20、絶縁部材100、固定子巻線50により構成されている。
【0013】
固定子コア20は、分割構造の固定子コアとして構成されている。本実施形態では、固定子コア20は、
図2に示されているように、第1のコア部材30と第2のコア部材40により構成されている。なお、
図2には、第1のコア部材30と第2のコア部材40の軸方向に直角な断面図が示されている。
第1のコア部材30(「インナーコア」と呼ばれる)は、複数の電磁鋼板を積層した積層体により構成され、径方向に沿って延在するとともに、周方向に沿って配置されている複数のティース31を有している。ティース31は、ティース基部32とティース先端部33を有している。周方向に隣接するティース31のティース先端部33は、連結部35によって連結されている。
第2のコア部材40(「アウターコア」と呼ばれる)は、複数の電磁鋼板を積層した積層体により構成され、周方向に沿って延在するヨーク41を有している。ヨーク41の内周面に、第1のコア部材30のティース基部32の径方向外周側の端部が嵌合可能な凹部42が形成されている。
固定子コア20は、第1のコア部材30のティース基部32の、ティース先端部33と反対側(径方向外周側)の端部を第2のコア部材40の凹部42に圧入(もしくは、焼き嵌めまたは冷し嵌め)することによって形成される。すなわち、固定子コア20は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨーク41と径方向に沿って延在する複数のティース31を有し、ティース31は、ヨーク41から径方向に沿って内周側に延在するティース基部32と、ティース基部32の径方向内周側に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部33を有する。
なお、ティース先端部33の径方向内周側にはティース先端面34が形成されており、ティース先端面34によって、回転子(図示省略)が挿入される回転子挿入空間20aが形成される。固定子10と、回転子挿入空間20aに挿入される回転子によって電動機が構成される。
【0014】
固定子巻線50は、ティース31に装着された絶縁部材100の回りに巻き付けられる。すなわち、固定子巻線50は、集中巻き方式でティース31に巻き付けられている。固定子巻線50を巻き付ける方法としては、ティース31に絶縁部材100を装着した状態で絶縁部材10の回りに固定子巻線50を巻き付ける方法、あるいは、絶縁部材100の周りに固定子巻線50を巻き付けた状態で絶縁部材100をティース31に装着する方法を用いることができる。
本実施形態では、固定子巻線50は、径方向内周側から巻き始め、径方向外周側で巻き終わるように巻き付けられている。すなわち、
図1に示されているように、固定子巻線50の巻き始め部50aが径方向内周側に配置され、巻き終わり部50bが径方向外周側に配置されている。
固定子巻線50の巻き始め部50aと巻き終わり部50bが径方向に離れて配置されることにより、固定子巻線50の結線間違いを防止することができる。例えば、各相の固定子巻線50の一方側の端部を共通に接続して中性点を形成し、他方側の端部を外部電源に接続する場合には、径方向内周側に配置されている、各相の固定子巻線50の巻き始め部50aを共通に接続し、径方向外周側に配置されている、各相の固定子巻線50の巻き終わり部50bを外部に引き出す作業を行えばよい。また、各相の固定子巻線50の巻き始め部50aと巻き終わり部50bをバスバーに接続する場合にも、接続間違いを防止することができる。例えば、径方向内周側に配置されている、各相の固定子巻線50の巻き始め部50aとバスバーの、径方向内周側に設けられている接続部を接続し、径方向外周側に配置されている、各相の固定子巻線50の巻き終わり部50bとバスバーの、径方向外周側に設けられている接続部を接続すればよい。
【0015】
絶縁部材100の構成を、
図3〜
図7を参照して説明する。
図3は、絶縁部材100を一方向から見た斜視図であり、
図4は、絶縁部材100を異なる方向から見た斜視図である。
図5は、
図3の矢印Vで示す方向から見た図であり、
図6は、
図3のVI−VI線断面図(径方向に沿った断面図)であり、
図7は、
図3のVII−VII線断面図(軸方向に直角な断面図)である。
【0016】
絶縁部材100は、絶縁特性を有する材料、本実施形態では、絶縁特性を有する樹脂により形成されている(「樹脂ボビン」と呼ばれている)。絶縁部材100は、胴部160と、鍔部110および150を有している。
胴部160は、径方向に貫通している貫通孔170が形成されている。貫通孔170には、ティース31のティース基部32が挿入される。
貫通孔170は、上面171、下面172、左側面173および右側面174により形成されている。本実施形態では、
図8に示されているように、ティース31のティース基部32が貫通孔170に挿入される場合、貫通孔170の上面171、下面172、左側面173および右側面174が、それぞれティース基部32の上面32a、下面32b、左側面32cおよび右側面32dが対向するように挿入される。
上面171は、
図5、
図6に示されているように、径方向に沿った断面で見て、傾斜面171b、傾斜面171bより径方向内周側(鍔部150側)に配置されている内周側内周面171a、傾斜面171bより径方向外周側(鍔部110側)に配置されている外周側内周面171cを有している。下面172も同様に、内周側内周面172a、傾斜面172b、外周側内周面172cを有している。
左側面173は、
図5、
図7に示されているように、軸方向に直角な断面で見て、傾斜面173b、傾斜面173bより径方向内周側(鍔部150側)に配置されている内周側内周面173a、傾斜面173bより径方向外周側(鍔部110側)に配置されている外周側内周面173cを有している。右側面174も同様に、内周側内周面174a、傾斜面174b、外周側内周面174cを有している。
【0017】
傾斜面171b、172b、173b、174bは、ティース基部32に対する絶縁部材100のずれを防止するずれ防止面である。
本実施形態では、上面171の傾斜面171bと下面172の傾斜面172bは、両者の軸方向に沿った間隔が、径方向内周側から径方向外周側に向かって減少するように傾斜している。例えば、
図6に示されているように、傾斜面171bの径方向に対する傾斜角度がα、傾斜面172bの径方向に対する傾斜角度が−αに設定されている。なお、傾斜面171bと172bは、両者の軸方向に沿った間隔の最小値がティース基部32の軸方向に沿った長さ(
図8に示されている、ティース基部32の上面32aと下面32bの間の長さ)より小さくなるように形成される。これにより、絶縁部材100の軸方向のずれを防止することができる。
また、左側面173の傾斜面173bと右側面174の傾斜面174bは、両者の周方向に沿った間隔が、径方向内周側から径方向外周側に向かって減少するように傾斜している。例えば、
図7に示されているように、傾斜面173bの径方向に対する傾斜角度がβ、傾斜面174bの径方向に対する傾斜角度が−βに設定されている。なお、傾斜面173bと174bは、両者の周方向に沿った間隔の最小値がティース基部32の幅(
図9に示されている、ティース基部32の左側面32cと右側面32dの間の長さN)と同等かそれより小さくなるように形成される。これにより、絶縁部材100の周方向のずれを防止することができる。
なお、傾斜角度αと傾斜角度βは、異なる角度であってもよいし、同じ角度であってもよい。傾斜面171bの傾斜角度と傾斜面172bの傾斜角度は、異なる角度であってもよい。傾斜面173bの傾斜角度と傾斜面174bの傾斜角度は、異なる角度であってもよい。
【0018】
内周側内周面171a、172a、173a、174aは、ティース基部32を貫通孔170に挿入する際に、ティース基部32の径方向外周側の端部を貫通孔170内にガイドするガイド面である。
本実施形態では、上面171の内周側内周面171aと下面172の内周側内周面172aは、両者の軸方向に沿った間隔が径方向内周側から径方向外周側(内周側内周面171aと傾斜面171bとの接続部および内周側内周面172aと傾斜面172bとの接続部)に向かって減少するテーパー面に形成されている。
同様に、左側面173の内周側内周面173aと右側面174の内周側内周面174aは、両者の周方向に沿った間隔が径方向内周側から径方向外周側に向かって減少するテーパー面に形成されている。
【0019】
外周側内周面171c、172c、173c、174cは、貫通孔170にティース基部32の端部が挿入された絶縁部材100を、ティース基部32の端部に対して安定に保持する保持面である。
本実施形態では、上面171の外周側内周面171cと下面172の外周側内周面172cは、径方向に平行(「略平行」を含む)に延在するように形成されている。すなわち、外周側内周面171cと172cの間の軸方向に沿った間隔が、径方向に沿って等しくなる(「略等しい」を含む)ように設定されている。なお、外周側内周面171cと172cは、両者の軸方向に沿った間隔がティース基部32の軸方向に沿った長さより小さくなるように形成される。これにより、絶縁部材100は、ティース基部32の上面32aおよび下面32bと平行(「略平行」を含む)に保持される。
左側面173の外周側内周面173cと右側面174の外周側内周面174cは、周方向に平行(「略平行」を含む)に延在するように形成されている。すなわち、外周側内周面173cと174cの間の周方向に沿った間隔が、径方向に沿って等しくなる(「略等しい」を含む)ように設定されている。なお、外周側内周面173cと174cは、両者の周方向に沿った間隔がティース基部32の幅N(
図9参照)と同等かそれより小さくなるように形成される。これにより、絶縁部材100は、ティース基部32の左側面32cおよび右側面32dと平行(「略平行」を含む)に保持される。
【0020】
鍔部110および150は、胴部160のヨーク41側(径方向外周側)の端部およびティース先端部33側(径方向内周側)の端部に設けられ、胴部160から飛び出ている。本実施形態では、鍔部110および150は、胴部160から軸方向および周方向に沿って延在している、四角形状の外周部を有する板状部材として形成されている。これにより、胴部160と鍔部110および150によって、固定子巻線50が巻き付けられる空間が形成される。
【0021】
また、鍔部110の径方向外周側の端面110Aには、突部が設けられている。本実施形態では、端面110Aの、軸方向上側の端部に突部120と130が設けられ、軸方向下側に突部140が設けられている。
突部120は、軸方向下側(突部140と対向する側)に、第2のコア部材40(ヨーク41)の軸方向上側の端面40A(
図10〜
図12参照)が当接可能な当接面121を有している。また、外周側に、四角形状のコーナー部を切り欠いた形状(例えば、R面状、直線状に面取された形状)の外周面122を有している。また、周方向右側(突部130と対向する側)に側面123を有している。突部120(詳しくは、突部120の側面123)は、貫通孔170を形成する左側面173より周方向左側(周方向一方側)に離れた位置に形成されている。
突部130は、軸方向下側(突部140と対向する側)に、第2のコア部材40(ヨーク41)の軸方向上側の端面40Aが当接可能な当接面131を有している。また、四角形状のコーナー部を切り欠いた形状(R面状、直線状に面取りされた形状)の外周面132を有している。また、周方向左側(突部120と対向する側)に側面133を有している。突部130(詳しくは、突部130の側面133)は、貫通孔170を形成する右側面174より周方向右側(周方向他方側)に離れた位置に形成されている。
突部140は、貫通孔170を形成する下面172に対して、軸方向に沿って重なる位置に形成されている。突部140は、軸方向上側(突部120および130と対向する側)に、上面141を有している。好適には、上面141は、貫通孔170を形成する下面172(詳しくは、下面172の外周側内周面172c)と面一(同一面)となるように形成される。勿論、上面141を、下面172(外周側内周面172c)より軸方向下側に離れた位置に形成することもできる。また、突部140の軸方向下側には、貫通孔170に挿入されたティース基部32の端部を第2のコア部材40の凹部42に圧入する際に、ティース基部32の端部を凹部42内にガイドするガイド面142が形成されている。本実施形態では、ガイド面142は、軸方向下側から軸方向上側に向って径方向外周側に飛び出ているテーパー面に形成されている。
本実施形態では、突部140は、ガイド面142全体が、軸方向に沿って下面172と重なるように(下面172より軸方向下側に離れた位置に配置されるように)形成されているが、ガイド面142の少なくとも一部が、軸方向に沿って下面172と重なるように形成されていればよい。
突部120、130、140には、径方向外周側が開口している凹部120a、130a、140aが形成されている。突部120、130、140に凹部120a、130a、140aを形成することにより、絶縁部材100を形成する樹脂の量および重量を低減することができる。
なお、鍔部150の外周部のコーナー部151、152、153および154は、四角形状のコーナー部が切り欠かれた形状を有している。
【0022】
本実施形態では、貫通孔170を形成する上面171、下面172、左側面173および右側面174が、それぞれ本発明の「軸方向一方側に配置された第1の内周面」、「軸方向他方側に配置された第2の内周面」、「周方向一方側に配置された第3の内周面」および「周方向他方側に配置された第4の内周面」に対応する。
また、上面171の内周側内周面171a、傾斜面171b、外周側内周面171cが、それぞれ本発明の「第1の内周側内周面」、「第1の傾斜面」、「第1の外周側内周面」に対応し、下面172の内周側内周面172a、傾斜面172b、外周側内周面172cが、それぞれ本発明の「第2の内周側内周面」、「第2の傾斜面」、「第2の外周側内周面」に対応し、左側面173の内周側内周面173a、傾斜面173b、外周側内周面173cが、それぞれ本発明の「第3の内周側内周面」、「第3の傾斜面」、「第3の外周側内周面」に対応し、右側面174の内周側内周面174a、傾斜面174b、外周側内周面174cが、それぞれ本発明の「第4の内周側内周面」、「第4の傾斜面」、「第4の外周側内周面」に対応する。
また、鍔部150が、本発明の「胴部の径方向内周側の端部に設けられた第1の鍔部」に対応し、鍔部110が、本発明の「胴部の径方向外周側に設けられた第2の鍔部」に対応する。
また、突部120が、本発明の「軸方向一方側の端部に形成された第1の突部」に対応し、突部130が、本発明の「軸方向一方側の端部に形成された第2の突部」に対応し、突部140が、本発明の「軸方向他方側の端部に形成された第3の突部」に対応する。
【0023】
次に、第1のコア部材30と第2のコア部材40を組み付ける動作を、
図8、
図9を参照して説明する。
先ず、第1のコア部材30のティース31に絶縁部材100を装着する。本実施形態では、ティース31のティース基部32の端部を絶縁部材100の貫通孔170に、鍔部150側(径方向内周側)から挿入する。この時、貫通孔170を形成する上面171、下面172、左側面173および右側面174の内周側内周面171a、172a、173aおよび174aにより、ティース基部32の端部が貫通孔170内にガイドされる。
ティース基部32の端部を更に貫通孔170内に挿入すると、ティース基部32の端部の上面32aと下面32bが貫通孔170を形成する上面171と下面172の傾斜面171bと172bに当接し、絶縁部材100は、ティース基部32に対する軸方向に沿った移動が規制される。また、ティース基部32の端部の左側面32cと右側面32dが貫通孔170を形成する左側面173と右側面174の傾斜面173bと174bに当接し、絶縁部材100は、ティース基部32に対する周方向に沿った移動が規制される。
ティース基部32の端部を更に貫通孔170内に挿入すると、ティース基部32の端部の上面32aと下面32bが貫通孔170を形成する上面171と下面172の外周側内周面171cと172cに当接し、絶縁部材100は、軸方向に関し、ティース基部32の上面32aおよび下面32bと平行(「略平行」を含む)に保持される。また、ティース基部32の端部の左側面32cと右側面32dが貫通孔170を形成する左側面173と右側面174の外周側内周面173cと174cに当接し、絶縁部材100は、周方向に関し、ティース基部32の左側面32cおよび右側面32dと平行(「略平行」を含む)に保持される。
これにより、ティース31(詳しくは、ティース基部32)に絶縁部材100を装着した状態で第1のコア部材30と第2のコア部材40を組み付ける際における、絶縁部材100のティース31(詳しくは、ティース基部32)に対するずれやティース31からの脱落等を防止することができる。
【0024】
そして、第1のコア部材30のティース31に絶縁部材100が装着された状態、すなわち、絶縁部材100の貫通孔170にティース基部32の端部が挿入された状態で固定子巻線50を巻き付ける。本実施形態では、ティース基部32を覆っている絶縁部材100の、胴部160と鍔部110および150によって形成される空間に固定子巻線50を巻き付ける。
この時、前述したように、径方向内周側から巻き始め、径方向外周側で巻き終わるように、すなわち、巻き始め部50aが径方向内周側に配置され、巻き終わり部50bが径方向外周側に配置されるように固定子巻線50を巻き付けるのが好ましい。これにより、固定子巻線50の結線間違いや、固定子巻線50と
バスバーとの接続間違いを防止することができる。
なお、絶縁部材100の装着および固定子巻線50の巻き付けに関しては、固定子巻線50を絶縁部材100の、胴部160と鍔部110および150によって形成される空間に固定子巻線50を巻き付けた状態で、第1のコア部材30のティース31に絶縁部材100を装着する方法を用いることもできる。
【0025】
そして、ティース31に絶縁部材100が装着されているとともに、固定子巻線50が巻き付けられた状態で、第1のコア部材30と第2のコア部材40を組み付けて固定子コア20を構成する。本実施形態では、絶縁部材100の貫通孔170に挿入され、鍔部110の径方向外周側の端面110Aから飛び出ている、ティース基部32の端部を、第2のコア部材40のヨーク41の内周面に形成されている凹部42に圧入することによって第1のコア部材30と第2のコア部材40を組み付けている。
【0026】
第1のコア部材30と第2のコア部材40を組み付けて構成した固定子コア20と固定子巻線50を有する固定子10が
図10〜
図12に示されている。なお、
図10は、
図1の矢印Xで示されている部分の斜視図であり、
図11は、
図1のXI−XI線断面図(径方向に沿った断面図)であり、
図12は、
図1のXII−XII線断面図(周方向に沿った断面図)である。
【0027】
ここで、第2のコア部材40の軸方向に沿った長さが第1のコア部材30の軸方向に沿った長さより長いと、第2のコア部材40を構成する電磁鋼板の一部の凹部42に第1のコア部材を構成する電磁鋼板のティース基部32の先端部が圧入されない。すなわち、第2のコア部材40を構成する電磁鋼板の一部が、第1のコア部材30を構成する電磁鋼板と組み付けられない。この場合、第2のコア部材40を構成する電磁鋼板と組み付けられていない、第2のコア部材40を構成する電磁鋼板の一部がずれるあるいは脱落するおそれがある。
本実施形態では、
図11に示されているように、第2のコア部材40(ヨーク41)の軸方向に沿った長さL1を、第1のコア部材30(ティース31)の軸方向に沿った長さL2より短く(L1<L2)設定している。これにより、第2のコア部材40を構成する電磁鋼板の全てを第1のコア部材30を構成する電磁鋼板と組み付けることができ、第2のコア部材40を構成する電磁鋼板の一部のずれや脱落を防止することができる。なお、第1のコア部材30を構成する電磁鋼板は、絶縁部材100の貫通孔170に挿入されるため、ずれや脱落のおそれはない。
【0028】
また、本実施形態では、第1のコア部材30のティース基部32の端部を第2のコア部材40の凹部42に圧入する(第1のコア部材30と第2のコア部材40を組み付ける)際、第2のコア部材40の軸方向上側の端面40Aが、絶縁部材100の鍔部110に設けられている突部120の当接面121および突部130の当接面131の少なくとも一方に当接するように、第1のコア部材30のティース基部32の端部を第2のコア部材40の凹部42に圧入する。
これにより、第2のコア部材40を構成する電磁鋼板の全てを、第1のコア部材30を構成する電磁鋼板に確実に組み付けることができる。したがって、第2のコア部材40を構成する電磁鋼板の一部のずれや脱落をより確実に防止することができる。
【0029】
また、第1のコア部材30のティース基部32の端部を第2のコア部材40の凹部42に圧入する際、第1のコア部材30あるいは絶縁部材100と第2のコア部材40が強い力で接触すると、第1のコア部材30や第2のコア部材40が変形し、あるいは、絶縁部材100にクラックが発生するおそれがある。
本実施形態では、絶縁部材100は、鍔部110の径方向外周側の端面110Aに、貫通孔170を形成する下面172より軸方向下側で、下面172と軸方向に沿って重なる位置に突部140が形成されている。また、突部140は、軸方向下側(ティース基部23の端部を凹部42に挿入する側)にガイド面142が形成されている。
これにより、絶縁部材100の貫通孔170に挿入されたティース基部32の端部を、第2のコア部材40の凹部42に軸方向上側(軸方向一方側)から挿入する際に、ティース基部32の端部より軸方向下側(軸方向他方側)に配置されている突部140の軸方向下側に形成されているガイド面142によって、ティース基部32の端部が凹部42内にガイドされる。したがって、第1のコア部材30あるいは絶縁部材100と第2のコア部材40が強い力で接触するのを防止することができ、第1のコア部材30や第2のコア部材40が変形し、あるいは、絶縁部材100にクラックが発生するのを防止することができる。
【0030】
また、ティース基部32の端部を第2のコア部材40の凹部42に圧入する方法として、
図9に示されているように、圧入治具500を用いて、絶縁部材100の貫通孔170から飛び出ているティース基部32の端部の上面32aに、ティース基部32を軸方向下側に移動させる力を加える方法を用いることができる。
この場合、圧入治具500の周方向に沿った幅Dがティース基部32の端部の上面32aの幅Nより小さいと、圧入治具500によって加えられる力によって、ティース基部32の端部の上面32aに窪みが発生するおそれがある。ティース基部32の端部の上面32aに窪みが発生すると、ティース基部32の端部が周方向および径方向に膨らみ、ティース基部32の端部を第2のコア部材40の凹部42に圧入する作業が困難となる。
本実施形態では、絶縁部材100の鍔部110の径方向外周側の端面110Aに形成されている突部120と130との間の間隔Kを、ティース基部32の端部の幅Nより大きい幅Dを有する圧入治具500を、突部120と130の間の空間に隙間を有する状態で挿入可能な値に設定されている。すなわち、突部120の側面123を、貫通孔170を形成する左側面173より周方向左側(周方向一方側)に離れた位置に配置するとともに、突部130の側面133を、貫通孔170を形成する右側面174より周方向右側(周方向他方側)に離れた位置に配置している。具体的には、[K>D>N]を満足するように設定される。
これにより、ティース基部32の幅Nより大きい幅Dを有する圧入治具500を用いることができるため、ティース基部32の端部を凹部42に圧入する際にティース基部32の端部が周方向および径方向に膨らむのを防止することができ、圧入作業が容易となる。
【0031】
また、
図5に示されているように、本実施形態の絶縁部材100では、鍔部110および150は、四角形状の外周を有しているとともに、外周のコーナー部の少なくとも一つが切り欠かれた形状(例えば、R面状、直線状に面取りされた形状)を有している。すなわち、鍔部110の端面110Aの、軸方向上側の端部に形成されている突部120および130の外周面122および132、鍔部150のコーナー部151〜154(
図5参照)が、四角形状のコーナー部が切り欠かれた形状を有している。
ティース31(詳しくは、ティース基部32)に巻き付けられた固定子巻線50の巻き始め部50aや巻き終わり部50bは、通常、縛り紐等の結束部材を用いて結束される。固定子巻線50を縛り紐で結束する場合には、鍔部110および150に縛り紐を通す空間を設ける必要がある。
本実施形態では、第1のコア部材30と第2のコア部材40を組み付けた場合、
図10に示されているように、周方向に隣接する鍔部110の、切り欠かれた形状を有するコーナー部の間に空間110aが形成される。また、周方向に隣接する鍔部150の、切り欠かれた形状を有するコーナー部の間に空間150aが形成される。
このため、本実施形態では、固定子巻線50を結束する結束部材を通すめための空間を鍔部110や150に形成する必要がない。
【0032】
本発明の絶縁部材の第2の実施形態200を、
図13、14を参照して説明する。なお、
図13は、絶縁部材200の径方向に沿った断面図であり、
図14は、絶縁部材200軸方向に直角な断面図である。
第2の実施形態の絶縁部材200は、第1のコア部材30のティース基部32の端部が挿入される貫通孔270の形状が第1の実施形態の絶縁部材100の貫通孔170の形状と相違している。したがって、以下では、貫通孔270の形状のみを説明する。
貫通孔270は、上面271、下面272、左側面273および右側面274により形成されている。
上面271は、傾斜面271bを有している。本実施形態では、上面271は、内周側内周面および外周側外周面を有していない。
下面272は、内周側内周面272aと傾斜面272bを有している。本実施形態では、下面272は、外周側外周面を有していない。
左側面273は、内周側内周面273aと傾斜面273bを有し、右側面274は、内周側内周面274aと傾斜面274bを有している。本実施形態では、左側面273および右側面274は、外周側外周面を有していない。
本実施形態では、上面271の傾斜面271bが、本発明の「第1の傾斜面」に対応し、下面272の内周側内周面272a、傾斜面272bが、それぞれ本発明の「第2の内周側内周面」、「第2の傾斜面」に対応し、左側面273の内周側内周面273a、傾斜面273bが、それぞれ本発明の「第3の内周側内周面」、「第3の傾斜面」に対応し、右側面274の内周側内周面274a、傾斜面274bが、それぞれ本発明の「第4の内周側内周面」、「第4の傾斜面」に対応する。
【0033】
傾斜面271bと272bは、貫通孔270にティース基部32の端部が挿入された絶縁部材200を、ティース基部32の端部から落下しないように保持する保持面である。
本実施形態では、上面271の傾斜面271bと下面272の傾斜面272bは、両者の軸方向に沿った間隔が径方向に沿って等しく(「略等しい」を含む)なるように傾斜している。例えば、
図13に示されているように、傾斜面271bの径方向に対する傾斜角度が−α、傾斜面272bの径方向に対する傾斜角度が−αに設定されている。なお、傾斜面271bと272bは、両者の軸方向に沿った間隔がティース基部32の軸方向に沿った長さより大きくなるように形成される。
下面272の内周側内周面272aは、上面271の傾斜面271bと下面272の内周側内周面272aとの間の軸方向に沿った間隔が、径方向内周側から内周側内周面272aと傾斜面272bとの接続部に向かって減少するテーパー面に形成されている。なお、内周側内周面272aの、径方向に対する傾斜角度は、貫通孔270を形成する上面271の傾斜面271bおよび下面272の傾斜面272bが、ティース基部32の上面32aおよび下面32bに倣う(平行に)ように、絶縁部材200がティース基部32の端部に対して傾斜可能な角度に設定される。
また、左側面273の傾斜面273bと右側面274の傾斜面274bは、両者の周方向に沿った間隔が、径方向内周側から径方向外周側に向かって減少するように傾斜している。例えば、
図14に示されているように、傾斜面273bの径方向に対する傾斜角度が−β、傾斜面274bの径方向に対する傾斜角度がβに設定されている。なお、傾斜面273bと274bは、両者の周方向に沿った間隔の最小値がティース基部32の幅Nより小さくなるように形成される。
左側面273と右側面274の内周側内周面273aと274aは、ティース基部32の端部を貫通孔270に挿入する際に、ティース基部32の端部を貫通孔270内にガイドするガイド面として形成されている。本実施形態では、内周側内周面273aと274aは、両者の軸方向に沿った間隔が、径方向内周側から径方向外周側に向かって減少するテーパー面に形成されている。
【0034】
本実施形態の絶縁部材200を第1のコア部材30のティース31に装着する動作を説明する。
ティース31のティース基部32の端部を絶縁部材200の貫通孔270に挿入する際には、上面271の傾斜面271b、下面272の内周側内周面272a、左側面273の内周側内周面273a、右側面274の内周側内周面274aによって、ティース基部32の端部が貫通孔270内にガイドされる。
ティース基部32の端部を更に貫通孔270内に挿入すると、絶縁部材200は、貫通孔270を形成する上面271および下面272の傾斜面271bおよび272bが、ティース基部32の端部の上面32aおよび下面32bに倣うように(平行になるように)、ティース基部32の端部に対して傾斜する。すなわち、絶縁部材200は、径方向に沿った断面で見て、ティース基部32の端部に対して、傾斜面271bおよび272bの傾斜角度αに対応する角度だけ傾斜した状態となる。また、ティース基部32の端部の左側面32cおよび右側面32dが、貫通孔270を形成する左側面273の傾斜面273bおよび右側面274の傾斜面274bに当接する。これにより、絶縁部材200は、ティース基部32の端部に対する周方向に沿った移動が規制される。
【0035】
以上のように、本実施形態の絶縁部材200をティース31に装着する(貫通孔270にティース基部32の端部を挿入する)と、絶縁部材200は、ティース基部32に対する周方向に沿った移動が規制されるとともに、径方向に沿った断面で見て、径方向に対して、上面271の傾斜面271bおよび下面272の傾斜面272bの傾斜角度に対応する角度だけ傾斜した状態となる。本実施形態では、径方向内周側から径方向外周側に向かって軸方向上側に傾斜した状態となるように傾斜面271bおよび272bの傾斜角度が設定されている。
これにより、ティース31に絶縁部材200を装着した状態で第1のコア部材30と第2のコア部材40を組み付ける際に、絶縁部材200がティース31(ティース基部32)から脱落するのを防止することができる。また、絶縁部材200が、ティース基部32に対して、径方向内周側から径方向外周側に向かって軸方向上側に傾斜した状態となるため、ティース基部32の端部が貫通孔270に挿入された絶縁部材200による干渉を防止することができ、ティース基部32を第2のコア部材40の凹部42に容易に挿入することができる。
【0036】
本発明の絶縁部材の第3の実施形態300を、
図15を参照して説明する。なお、
図15は、絶縁部材300の径方向に沿った断面図である。
第3の実施形態の絶縁部材300は、第1の実施形態の絶縁部材100および第2の実施形態の絶縁部材200と同様に、上面、下面、左側面および右側面により形成される貫通孔370を有している。なお、貫通孔370を形成する左側面および右側面は、貫通孔170を形成する左側面173および右側面174あるいは貫通孔270を形成する左側面273および右側面274と同じ形状に形成することができる。したがって、以下では、貫通孔370を形成する上面と下面の形状について説明する。
本実施形態の絶縁部材300では、貫通孔370を形成する上面371は、内周側内周面371aと傾斜面371bを有し、下面372は、内周側内周面372a、傾斜面372bと外周側内周面372cを有している。本実施形態では、上面371は、外周側内周面を有していない。
本実施形態では、上面371の内周側内周面371a、傾斜面371bが、それぞれ本発明の「第1の内周側内周面」、「第1の傾斜面」に対応し、下面372の内周側内周面372a、傾斜面372b、外周側内周面372cが、それぞれ本発明の「第2の内周側内周面」、「第2の傾斜面」、「第2の外周側内周面」に対応する。
【0037】
上面371の傾斜面371bと下面372の傾斜面372bは、第1の実施形態の絶縁部材100の上面171の傾斜面171bと下面172の傾斜面172bと同様に、両者の軸方向に沿った間隔が径方向に沿って減少するように傾斜している。すなわち、傾斜面371bと372bは、ティース基部32に対する絶縁部材300のずれを防止するずれ防止面である。
上面371の内周側内周面371aと下面372の外周側内周面372cは、貫通孔370にティース基部32の端部が挿入された絶縁部材300を、ティース基部32の端部に対して安定に保持する保持面である。
本実施形態では、内周側内周面371aと外周側内周面372cは、径方向に平行(「略平行」を含む)に延在するように形成されている。すなわち、内周側内周面371aと外周側内周面372cの間の軸方向に沿った間隔が、径方向に沿って等しくなる(「略等しい」を含む)ように設定されている。内周側内周面371aと外周側内周面372cとの間の軸方向に沿った間隔は、ティース基部32の軸方向に沿った長さより小さくなるように設定されている。
下面372の内周側内周面372aは、上面371の
内周側内周面371aと内周側内周面372aとの間の軸方向に沿った間隔が、径方向内周側から径方向外周側に向かって減少するテーパー面に形成されている。
なお、本実施形態では、上面に内周側内周面を設け、下面に外周側内周面を設けたが、上面に外周側内周面を設け、下面に内周側内周面を設けてもよい。すなわち、上面と下面の一方が、径方向に平行に延在する内周側内周面を有し、他方が、径方向に平行な外周側内周面を有していればよい。この場合、傾斜状の内周面は、他方側に設けられる。
【0038】
本実施形態の絶縁部材300を第1のコア部材30のティース31に装着する動作を説明する。なお、左側面と右側面による動作および効果は、第1の実施形態の絶縁部材100における左側面173と右側面174による動作および効果あるいは第2の実施形態の絶縁部材200における左側面273と右側面274による動作および効果と同様であるため説明を省略する。
ティース31のティース基部32の端部を絶縁部材300の貫通孔370に挿入する際には、上面371の傾斜面371bと下面372の内周側内周面372aによって、ティース基部32の端部が貫通孔370内にガイドされる。
ティース基部32の端部を更に貫通孔370内に挿入すると、ティース基部32の端部の上面32aおよび下面32bが貫通孔370を形成する上面371の傾斜面371bおよび下面372の傾斜面372bに当接する。これにより、絶縁部材300は、ティース基部32に対する軸方向に沿った移動が規制される。
ティース基部32の端部を更に貫通孔370内に挿入すると、ティース基部32の端部の上面32aおよび下面32bが貫通孔370を形成する上面371および下面372の内周側内周面371aおよび外周側内周面371cに当接し、絶縁部材300は、軸方向に関し、ティース基部32の上面32aおよび下面32bと平行(「略平行」を含む)に保持される。
【0039】
本発明の絶縁部材の第4の実施形態を、
図16を参照して説明する。
図16は、第4の実施形態の絶縁部材400の斜視図である。
本実施形態の絶縁部材400は、第1の実施形態の絶縁部材100と同様に、胴部460、鍔部410および450、鍔部410の径方向外周側の端面に設けられた突部420、430および440、上面471、下面472、左側面473および右側面474により形成される貫通孔470を有している。
本実施形態では、突部420の当接面421および突部430の当接面431の配置位置が第1の実施形態の絶縁部材100と相違している。
すなわち、突部420の当接面421は、貫通孔470を形成する左側面473より周方向左側(周方向一方側)に離れているとともに、上面471より軸方向下側(軸方向他方側)に距離Hだけ離れた位置に設けられている。また、突部430の当接面431は、貫通孔470を形成する右側面474より周方向右側(周方向他方側)に離れているとともに、上面471より軸方向下側(軸方向他方側)に距離Hだけ離れた位置に設けられている。なお、本実施形態の構成は、貫通孔470を形成する上面471が、当接面421および431より軸方向上側(軸方向一方側)に距離Hだけ離れた位置に配置されていると表現することもできる。
【0040】
本実施形態の絶縁部材400を用いた、他の実施形態の固定子が
図17〜
図19に示されている。なお、
図17は、他の実施形態の固定子の一部の斜視図であり、
図18は、径方向に沿った断面図であり、
図19は、周方向に沿った断面図である。
本実施形態の固定子では、絶縁部材400の突部420および430の当接面421および431が、貫通孔470を形成する上面471より軸方向下側に離れた位置に設けられているため、第2のコア部材40(ヨーク41)の軸方向に沿った長さL3と、第1のコア部材30(ティース31)の軸方向に沿った長さL4との差を大きくすることができる。これにより、第2のコア部材40を構成する電磁鋼板を、第1のコア部材30を構成する電磁鋼板により確実に組み付けることができる。
【0041】
本発明は、以下のように構成することができる。
(態様1)
軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨークから径方向に沿って内周側に延在するティース基部と、前記ティース基部の径方向内周側に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部を有する、固定子コアのティースに装着される絶縁部材であって、
前記ティース基部が挿入される貫通孔を有する胴部と、
前記胴部の、径方向内周側の端部に設けられ、前記胴部から飛び出ている第1の鍔部と、
前記胴部の、径方向外周側の端部に設けられ、前記胴部から飛び出ている第2の鍔部を有し、
前記貫通孔は、前記ティース基部が前記貫通孔に挿入された状態において、軸方向一方側に配置され、径方向および周方向に沿って延在する第1の内周面と、軸方向他方側に配置され、径方向および周方向に沿って延在する第2の内周面によって形成され、
前記ティース基部が前記貫通孔に挿入された状態において径方向に沿った断面で見て、前記第1の内周面は、径方向に対して傾斜した状態で延在する第1の傾斜面を有し、前記第2の内周面は、径方向に対して傾斜した状態で延在する第2の傾斜面を有していることを特徴とする絶縁部材。
(態様2)
態様1の絶縁部材であって、前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面は、前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面との間の軸方向に沿った間隔が等しくなるように延在していることを特徴とする絶縁部材。
(態様3)
態様1または2の絶縁部材であって、前記第1の内周面は、前記第1の傾斜面より径方向外周側に第1の外周側内周面を有し、前記第2の内周面は、前記第2の傾斜面より径方向外周側に第2の外周側内周面を有し、前記第1の外周側内周面と前記第2の外周側内周面は、径方向に平行に延在していることを特徴とする絶縁部材。
(態様4)
態様1の絶縁部材であって、前記第1の内周面は、前記第1の傾斜面より径方向外周側に、径方向と平行に延在する第1の外周側内周面を有しているとともに、前記第2の内周面は、前記第2の傾斜面より径方向内周側に、径方向と平行に延在する第2の内周側内周面を有し、あるいは、前記第1の内周面は、前記第1の傾斜面より径方向内周側に、径方向と平行に延在する第1の内周側内周面を有しているとともに、前記第2の内周面は、前記第2の傾斜面より径方向外周側に、径方向と平行に延在する第2の外周側内周面を有していることを特徴とする絶縁部材。
(態様5)
態様1〜3のうちのいずれかの絶縁部材であって、前記第1の内周面は、前記第1の傾斜面より径方向内周側に第1の内周側内周面を有し、前記第2の内周面は、前記第2の傾斜面より径方向内周側に第2の内周側内周面を有し、前記第1の内周側内周面と前記第2の内周側内周面は、前記第1の内周側内周面と前記第2の内周側内周面との間の軸方向に沿った間隔が、径方向内周側から径方向外周側に向けて減少するように形成され、前記貫通孔への前記ティース基部の挿入をガイドするガイド面を構成することを特徴とする絶縁部材。
(態様6)
態様1〜5のうちのいずれかの絶縁部材であって、前記貫通孔は、前記ティース基部が前記貫通孔に挿入された状態において、周方向一方側に配置され、径方向および軸方向に沿って延在する第3の内周面と、周方向他方側に配置され、径方向および軸方向に沿って延在する第4の内周面によって形成され、前記ティース基部が前記貫通孔に挿入された状態において軸方向と直角な断面で見て、前記第3の内周面は、径方向に対して傾斜して延在する第3の傾斜面を有し、前記第4の内周面は、径方向に対して傾斜して延在する第4の傾斜面を有し、前記第3の傾斜面と前記第4の傾斜面は、前記第3の傾斜面と前記第4の傾斜面との間の周方向に沿った間隔が、径方向内周側から径方向外周側に向けて減少するように形成されていることを特徴とする絶縁部材。
(態様7)
態様6の絶縁部材であって、前記第3の内周面は、前記第3の傾斜面より径方向外周側に第3の外周側内周面を有し、前記第4の内周面は、前記第4の傾斜面より径方向外周側に第4の外周側内周面を有し、前記第3の外周面側内周面と前記第4の外周側内周面は、径方向に平行に延在していることを特徴とする絶縁部材。
(態様8)
態様6または7の絶縁部材であって、前記第3の内周面は、前記第3の傾斜面より径方向内周側に第3の内周側内周面を有し、前記第4の内周面は、前記第4の傾斜面より径方向内周側に第4の内周側内周面を有し、前記第3の内周側内周面と前記第4の内周側内周面は、前記第3の内周側内周面と前記第4の内周側内周面両者との間の周方向に沿った間隔が、径方向内周側から径方向外周側に向けて減少するように形成され、前記貫通孔への前記ティース基部の挿入をガイドするガイド面を構成することを特徴とする絶縁部材。
(態様9)
態様1〜8のうちのいずれかの絶縁部材であって、前記第1の鍔部および前記第2の鍔部は、四角形状の外周を有しているとともに、少なくとも1つのコーナー部が切り欠かれていることを特徴とする絶縁部材。
(態様10)
固定子コアと、絶縁部材と、固定子巻線を備え、
前記固定子コアは、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨークと、径方向に沿って延在するティースを有し、前記ティースは、前記ヨークから径方向に沿って内周側に延在するティース基部と、前記ティース基部の径方向内周側に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部を有し、
前記絶縁部材は、前記ティースに装着され、
前記固定子巻線は、前記ティースに装着されている前記絶縁部材の回りに巻き付けられている固定子であって、
前記絶縁部材として、態様1〜9のうちのいずれか載の絶縁部材が用いられていることを特徴とする固定子。
(態様11)
態様10の固定子であって、前記固定子コアは、前記ティースを有する第1のコア部材と、前記ヨークを有する第2のコア部材により構成されていることを特徴とする固定子。
(態様12)
態様10または11の固定子であって、前記固定子巻線は、巻き始め部が径方向内周側に配置され、巻き終わり部が径方向外周側に配置されていることを特徴とする固定子。
(態様13)
態様10〜12のうちのいずれかの固定子であって、前記第2のコア部材の軸方向に沿った長さが、前記第1のコア部材の軸方向に沿った長さより短く設定されていることを特徴とする固定子。
(態様14)
固定子と、前記固定子に対して相対的に回転可能な回転子を備える電動機であって、
前記固定子として態様10〜13のうちのいずれかの固定子が用いられていることを特徴とする電動機。
【0042】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
本発明は、絶縁部材として構成することもできるし、固定子コア、絶縁部材と固定子巻線を備える固定子として構成することもできるし、固定子と、固定子に対して相対的に回転可能な回転子を備える電動機として構成することもできる。あるいは、固定子コアと絶縁部材を備える固定子を製造する固定子製造方法として構成することもできる。
絶縁部材の貫通孔は、種々の形状に形成することができる。例えば、軸方向に対向する面(軸方向一方側の面と軸方向他方側の面)が少なくとも傾斜面を有している形状、あるいは、周方向に対向する面(周方向一方側の面と周方向他方側の面)が少なくとも傾斜面を有している形状に形成することができる。
実施形態では、第1の突部と第2の突部が軸方向上側に配置され、第3の突部が軸方向下側に配置されるようにティース基部の端部を絶縁部材の貫通孔に挿入したが、第1の突部と第2の突部が軸方向下側に配置され、第3の突部が軸方向上側に配置されるようにティース基部の端部を絶縁部材の貫通孔に挿入することもできる。
径方向外周側の鍔部の径方向外周側の端面には、第2のコア部材(ヨーク)の一方側の端面が当接可能な当接面を有する少なくとも1つの突部が設けられていればよい。
径方向外周側の鍔部の径方向外周側の端面に設ける突部の形状、数や配置位置は、適宜設定可能である。
実施形態では、連結部によって連結されている複数のティースを有する1つの第1のコア部材を用いたが、1つのティースを有する第1のコア部材を複数用いることもできる。
実施形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数を組み合わせて用いることもできる。