(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6760747
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】滅菌用紙
(51)【国際特許分類】
D21H 17/52 20060101AFI20200910BHJP
D21H 17/17 20060101ALI20200910BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20200910BHJP
B32B 29/06 20060101ALI20200910BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20200910BHJP
B65D 81/24 20060101ALI20200910BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20200910BHJP
B65B 55/02 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
D21H17/52
D21H17/17
B32B27/12
B32B29/06
B65D77/04 B
B65D81/24 L
B65D65/02 E
B65B55/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-67283(P2016-67283)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-179644(P2017-179644A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】507369811
【氏名又は名称】特種東海製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前野 佑樹
【審査官】
長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−197858(JP,A)
【文献】
特開2002−173900(JP,A)
【文献】
特開2003−027390(JP,A)
【文献】
特開2000−238760(JP,A)
【文献】
特開2008−125760(JP,A)
【文献】
特表2005−508800(JP,A)
【文献】
特開2003−026156(JP,A)
【文献】
特開2004−017984(JP,A)
【文献】
渡邊篤史,ウエットエンド化学の基礎と実践,紙パ技協誌,日本,紙パルプ技術協会,2008年11月 1日,第62巻第11号,第2−9頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B53/00−55/24
B65D65/00−79/02
81/18−81/30
81/38
85/88
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ、湿潤紙力増強剤、中性サイズ剤及び硫酸バンドを含有し、該湿潤紙力増強剤の含有量がパルプ固形分に対して固形分換算で0.3〜3.0質量%、該硫酸バンドの含有量がパルプ固形分に対して固形分換算で1.0〜10.0質量%であり、縦方向の湿潤引張強度が1.30kN/m以上である滅菌用紙。
【請求項2】
前記中性サイズ剤の含有量がパルプ固形分に対して固形分換算で0.5〜1.5質量%である請求項1に記載の滅菌用紙。
【請求項3】
前記湿潤紙力増強剤の含有量がパルプ固形分に対して固形分換算で0.3〜2.5質量%、前記硫酸バンドの含有量がパルプ固形分に対して固形分換算で1.0〜7.0質量%である請求項1又は2に記載の滅菌用紙。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の滅菌用紙と樹脂製シート基材とが積層一体化された、レトルト殺菌処理が可能な包装材料。
【請求項5】
樹脂製内装容器と紙製外装容器とが組み合わされた複合容器であって、該紙製外装容器が請求項1〜3の何れか1項に記載の滅菌用紙からなる、レトルト殺菌処理が可能な複合容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱処理が施される内容物の包装材料として有用な滅菌用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品、医薬品、化粧品、洗剤、化学品等を密封する紙容器として、紙を基材とし、その紙基材における紙容器の内面側となる面にプラスチックフィルムを積層した複合シート材料を用いたものが使用されており、箱状、自立性袋状などの種々の形態が知られている。このような紙容器は、紙を主体とすることに起因して、使用後の廃棄処理の際には焼却もできるし、紙基材を分離してリサイクルすることもできるなど、種々の利点を有するため近年用途が拡大しており、容器への充填密封後に加熱殺菌あるいは加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)処理が施される内容物の包装用途、例えばレトルト食品などにも利用されている(例えば特許文献1及び2)。レトルト殺菌処理を施す内容物の包装材料には、耐熱性、耐衝撃性、剛性、ヒートシール性、バリヤー性を有することが要求される。
【0003】
特許文献3には、耐熱水性に優れ、レトルト殺菌処理などに使用しても変色し難い紙として、抄紙工程において、パルプスラリー中にアルキルケテンダイマー若しくはアルキルケテンダイマーと硫酸バンドによる中性サイズがなされ、且つ、紙力増強剤として添加されるエピクロルヒドリンがパルプに対して0.3%以下である紙が記載されており、また、紙の湿潤強度を向上させる目的で、イソシアネート樹脂を含浸させることも記載されている。また、特許文献3の〔0019〕には、抄紙時のウエブの安定性の観点から湿潤紙力増強剤であるエピクロルヒドリン系の内添剤を添加することが好ましいが、エピクロルヒドリン系の薬剤は熱安定性に優れるものではなく、特に熱水中にさらされると変色を起こしやすいため、抄紙安定性及び抄紙後の紙力強度の確保と熱水処理における変色防止とのバランスの観点から、エピクロルヒドリン系の薬剤添加量はパルプに対して0.3%以下とすることが好ましい旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−115118号公報
【特許文献2】特開2004−196343号公報
【特許文献3】特開2003−27390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3記載の紙は、湿潤紙力増強剤に起因する変色の発生は抑えられているものの、耐水性が不十分で湿潤引張強度不足による不都合などが発生するおそれがあり、例えば、レトルト殺菌処理が施される内容物の包装材料として使用するには改善の余地がある。
【0006】
本発明の課題は、耐水性に優れ湿潤状態で実用上十分な紙力を有し、且つ加熱処理が施されても変色し難い滅菌用紙を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、パルプ、湿潤紙力増強剤及び中性サイズ剤を含有し、該湿潤紙力増強剤の含有量がパルプ固形分に対して固形分換算で0.3〜3.0質量%であり、縦方向の湿潤引張強度が1.30kN/m以上である滅菌用紙である。
【0008】
また本発明は、前記の本発明の滅菌用紙と樹脂製シート基材とが積層一体化された、レトルト殺菌処理が可能な包装材料である。
また本発明は、樹脂製内装容器と紙製外装容器とが組み合わされた複合容器であって、該紙製外装容器が前記の本発明の滅菌用紙からなる、レトルト殺菌処理が可能な複合容器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐水性に優れ湿潤状態で実用上十分な紙力を有し、且つ加熱処理が施されても変色し難い滅菌用紙が提供される。また本発明の包装材料及び複合容器は、斯かる特長を有する本発明の滅菌用紙を含んで構成されているため、レトルト殺菌処理などの加熱処理が施される内容物の包装用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の滅菌用紙は、パルプスラリーを抄紙する抄紙工程によって製造され、湿潤紙力増強剤及び中性サイズ剤を含有し、該湿潤紙力増強剤の含有量がパルプ固形分に対して固形分換算で0.3〜3.0質量%であり、該抄紙工程における流れ方向即ち縦方向の湿潤引張強度が1.30kN/m以上である。本発明の滅菌用紙はパルプを主体とし、パルプの含有量は、滅菌用紙全体の質量の90質量%以上を占める。
【0011】
抄紙に用いるパルプとしては、湿式抄造される紙に通常用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の木材漂白化学パルプ;砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミカルサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ;麻、竹、藁、ケナフ、三椏、楮、木綿等の非木材パルプ;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ等;古紙パルプ等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの天然パルプ又は古紙パルプに加えて、必要に応じ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂からなる合成繊維を用いることもできる。
【0012】
本発明の滅菌用紙は、パルプに加えて湿潤紙力増強剤を含有する。湿潤紙力増強剤としては、従来公知の紙用内添湿潤紙力増強剤を特に制限なく用いることができ、例えば、ポリエピクロロヒドリン樹脂系、メラミンホルマリン樹脂系、尿素ホルマリン樹脂系が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にポリエピクロロヒドリン樹脂系は、ホルマリンの発生が無く、中性サイズ剤の歩留まり向上剤としても使用できるため好ましい。
【0013】
本発明の滅菌用紙における湿潤紙力増強剤の含有量は、滅菌用紙中のパルプ固形分に対して固形分換算で0.3〜3.0質量%であり、好ましくは0.5〜3.0質量%、さらに好ましくは1.0〜2.5質量%である。湿潤紙力増強剤の含有量が0.3質量%未満では、引張強度等の強度特性が十分に得られないため湿潤紙力増強剤を使用する意義に乏しく、逆に湿潤紙力増強剤の含有量が3.0質量%超では、抄紙装置が汚れやすくなる、紙の変色が大きくなる等のおそれがあり、さらに、紙力向上効果が頭打ちとなる傾向が散見され非経済的である。本発明では後述するように、ポリエピクロロヒドリン樹脂系などの湿潤紙力増強剤に起因する紙の変色を防止する目的で中性サイズ剤を併用しているが、湿潤紙力増強剤の含有量が3.0質量%を超えると、中性サイズ剤を併用していていも紙の変色が大きくなるおそれがある。湿潤紙力増強剤は通常、抄紙工程においてパルプスラリーに内添される。
【0014】
本発明の滅菌用紙は、パルプ及び湿潤紙力増強剤に加えてさらに、中性サイズ剤を含有する。サイズ剤の使用目的は通常、耐水性、筆記性、印刷適性の向上等であるが、本発明におけるサイズ剤の使用目的には、こうした一般的な使用目的に加えてさらに、湿潤紙力増強剤に起因する滅菌用紙の変色を防止する目的が含まれる。即ち、ポリエピクロロヒドリン樹脂系などの湿潤紙力増強剤は、特許文献3にも記載されている通り熱安定性に優れるものではなく、例えば、これを含有する紙がレトルト殺菌処理などにおいて熱水中にさらされると変色するおそれがあるが、紙の添加薬剤として湿潤紙力増強剤と中性サイズ剤とを併用することで、このような湿潤紙力増強剤に起因する紙の変色を効果的に抑制することができる。この点、特許文献3記載発明においては、ポリエピクロロヒドリン樹脂系の湿潤紙力増強剤に起因する紙の変色を防止する観点から、該湿潤紙力増強剤の対パルプ添加量を0.3%以下の比較的少量としているが、本発明者の知見によれば前述した通り、湿潤紙力増強剤の含有量をパルプ固形分に対して固形分換算で0.3〜3.0質量%と比較的多量にしても、湿潤紙力増強剤と中性サイズ剤とを併用することによって、湿潤紙力増強剤に起因する紙の変色を効果的に抑制しつつ、湿潤強度の向上を図ることが可能となる。
【0015】
このように、本発明の滅菌用紙にはポリエピクロロヒドリン樹脂系等の湿潤紙力増強剤が実用上十分な湿潤強度を発現し得る量含有されているから、該湿潤紙力増強剤以外の他の湿潤強度の向上を目的とした成分は基本的に不要であり、例えば特許文献3に記載の如くイソシアネート樹脂を併用する必要はない。また例えば、本発明の滅菌用紙の用途がレトルト殺菌やボイル殺菌などが施される食品用包装材料の場合、該滅菌用紙に使用する湿潤紙力増強剤は、ポリエピクロロヒドリン樹脂系のみで十分であり、基本的に、湿潤紙力増強剤を2種類以上併用しなくても十分な紙力が得られる。
【0016】
本発明で用いる中性サイズ剤としては、従来公知の中性サイズ剤を特に制限なく用いることができ、例えば、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、無水ステアリン酸、中性ロジンサイズ剤が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にアルキルケテンダイマーは、熱安定性、抄紙系の汚れを少なくする点から好ましい。
【0017】
本発明の滅菌用紙における中性サイズ剤の含有量は、滅菌用紙中のパルプ固形分に対して固形分換算で好ましくは0.5〜1.5質量%、さらに好ましくは0.8〜1.2質量%である。中性サイズ剤の含有量が少なすぎると、サイズ効果や湿潤紙力増強剤に起因する紙の変色防止効果などの所定の効果が十分に発現しないおそれがあり、中性サイズ剤の含有量が多すぎると、中性サイズ剤自体に起因する紙の変色につながるおそれがあり、さらに所定の効果が頭打ちとなる傾向が散見され非経済的である。中性サイズ剤は通常、抄紙工程においてパルプスラリーに内添されるが、抄紙工程を経て得られた紙の表面に塗布しても良い。
【0018】
本発明の滅菌用紙には、前記の中性サイズ剤の定着剤として、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)を含有させることができる。中性サイズ剤と硫酸バンドとを併用することで、紙の変色防止効果などの中性サイズ剤による所定の効果がより一層確実に発現し得る。本発明の滅菌用紙における硫酸バンドの含有量は、滅菌用紙中のパルプ固形分に対して固形分換算で好ましくは1.0〜10.0質量%、さらに好ましくは3.0〜7.0質量%である。硫酸バンドの含有量が少なすぎるとこれを使用する意義に乏しく、硫酸バンドの含有量が多すぎると、硫酸バンドの使用に起因する弊害の発生、例えば紙の保存性の低下や紙の変色等につながるおそれがある。硫酸バンドは通常、抄紙工程において中性サイズ剤と共にパルプスラリーに内添される。湿潤紙力増強剤、中性サイズ剤及び硫酸バンドを含有するパルプスラリーのpHは6.5〜8.0程度が好ましい。
【0019】
本発明の滅菌用紙には填料を含有させることができる。滅菌用紙に填料を含有させることで、白色度、不透明度、地合及び表面平滑性の向上、印刷時のインキ抜けの防止等の効果が期待できる。填料としては湿式抄紙において通常用いられているものを特に制限なく用いることができ、例えば、クレー、焼成クレー、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料;尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子などの有機填料が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の滅菌用紙における填料の含有量は、滅菌用紙中のパルプ固形分に対して固形分換算で好ましくは1.0〜10.0質量%、さらに好ましくは3.0〜7.0質量%である。
【0020】
本発明の滅菌用紙には、必要に応じ、湿式抄紙において従来使用されている各種の製紙用助剤が含有されていても良い。具体的には例えば、硫酸バンド以外の他の塩基性アルミニウム化合物(例えば塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ);各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド、ポリアミン樹脂、ポリアミン、ポリエチレンイミン、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド;染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等が挙げられる。
【0021】
本発明の滅菌用紙は、長網式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の従来公知の抄紙機を用いて、常法に従って製造することができる。本発明の滅菌用紙の坪量は特に限定されないが、例えば、樹脂製シート基材と積層一体化されて、スタンディングパウチなどの紙容器用の複合シート材料として使用される場合は、好ましくは40〜140g/m
2である。
【0022】
本発明の滅菌用紙は、縦方向、即ち該滅菌用紙を製造するための抄紙工程における流れ方向(MD:Machine Direction)の湿潤引張強度が1.30kN/m以上であり、好ましくは1.50kN/m以上である。湿潤引張強度は、JISP8135に準じて測定することができる。滅菌用紙の縦方向の湿潤引張強度が1.30kN/m未満では、抄紙工程における湿紙の搬送時に湿紙が破断するなどの不都合が生じるおそれがあり、また例えば、レトルト殺菌処理用途において滅菌用紙が熱水にさらされた場合などに破断するおそれがある。この滅菌用紙の縦方向の1.30kN/m以上という強力な紙力は、滅菌用紙における湿潤紙力増強剤の含有量を前記特定範囲に設定することで実現することができる。
【0023】
本発明の滅菌用紙は、種々の用途に適用可能であるが、熱水にさらされる等して加熱されても変色し難く且つ高い湿潤引張強度を有するという特長を活かして、加熱処理が施される内容物の包装材料として特に有用であり、具体的には例えば、レトルト殺菌やボイル殺菌などが施される食品用包装材料として有用である。本発明の滅菌用紙は、スタンディングパウチなどのパウチ類、ふた材、真空包装、スキンパック、深絞り包装、ロケット包装等のフィルム包装に使用することもできるし、あるいは、カップ状、トレー状、ボトル状、チューブ状等の種々の形状の紙容器の材料として使用することもできる。
【0024】
本発明の滅菌用紙は、樹脂製シート基材と積層一体化されることで、前記用途により適したものとなる。即ち、本発明の滅菌用紙と樹脂製シート基材とが積層一体化された包装材料は、レトルト殺菌処理が可能であり、レトルト殺菌処理が施される内容物のフィルム包装や紙容器の材料として好適である。斯かる包装材料においては、滅菌用紙の片面又は両面に樹脂製シート基材が接合されている。また、滅菌用紙と樹脂製シート基材との一体化の形態は特に制限されず、例えば、滅菌用紙に樹脂製シート基剤が融着している形態、両者が接着剤を介して互いに接合されている形態があり得る。滅菌用紙と積層一体化される樹脂製シート基材の材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等が挙げられる。
【0025】
本発明には、樹脂製内装容器と紙製外装容器とが組み合わされた複合容器であって、該紙製外装容器が前記の本発明の滅菌用紙からなる、レトルト殺菌処理が可能な複合容器が含まれる。この本発明の複合容器は、前記の「本発明の滅菌用紙と樹脂製シート基材とが積層一体化された包装材料」を製函するなどして所定の形状に加工することで製造することもできるし、あるいは、本発明の滅菌用紙を製函するなどして所定形状の外装容器を得、該外装容器を真空成形金型などの金型の内部に挿入し、該外装容器の内面に樹脂製シート基材を成形することで製造することもできる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
【0027】
〔実施例1〜12及び比較例1〜2〕
パルプとして、NBKPとLBKPとの質量比1:1の混合物を使用し、ダブルディスクリファイナーでカナディアンスタンダードフリーネスによる叩解度が535mlのパルプスラリーを調製し、さらにこのパルプスラリーに、湿潤紙力増強剤、中性サイズ剤、硫酸バンド、填料をそれぞれ所定量添加した後、このパルプスラリーを長網抄紙機により常法に従って湿式抄紙して、坪量80g/m
2の滅菌用紙を得た。使用した各種成分の詳細は下記の通り。尚、各実施例及び比較例の滅菌用紙における填料の含有量は、何れもパルプ固形分に対して固形分換算で5.0質量%であった。
・湿潤紙力増強剤:ポリエピクロロヒドリン樹脂系(荒川化学工業製、商品名「アラフィックス255LOX」)
・中性サイズ剤:アルキルケテンダイマー(星光PMC製、商品名「サイズ剤AD1602」)
・硫酸バンド:硫酸アルミニウム(朝日化学工業製、商品名「液体硫酸ばんど」)
・填料: カオリン(イメリス ミネラルズ・ジャパン製、商品名「アルファテックス」)、酸化チタン(石原産業製、商品名「タイペークW−10」)
【0028】
〔評価試験〕
各実施例及び比較例の滅菌用紙について、縦方向の湿潤引張強度を前記方法により測定すると共に、変色防止性を下記方法により評価した。その結果を下記表1に示す。下記表1中、グループIは湿潤紙力増強剤の含有量を適宜変更した例であり、グループIIは中性サイズ剤の含有量を適宜変更した例であり、グループIIIは硫酸バンドの含有量を適宜変更した例である。
【0029】
<変色防止性の評価方法>
評価対象の紙を、温度105℃、湿度0%R.H.の恒温恒湿槽内(アズワン製、商品名「スチール強制対流乾燥機」)に24時間放置することで加熱し、その加熱後の紙について、測色計(Lorentzen&Wettre製、商品名「エルレフォ分光光度計」)を用いて、加熱前からの色差(ΔE)を測定し、ΔEが2.5未満の場合を◎、ΔEが2.5以上で3.0未満の場合を○、ΔEが3.0以上で3.5未満の場合を△、ΔEが3.5以上の場合を×とした。△は実用下限レベルである。
【0030】
【表1】