特許第6760857号(P6760857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6760857
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】車両用シートバックフレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/64 20060101AFI20200910BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   B60N2/64
   B60N2/68
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-10472(P2017-10472)
(22)【出願日】2017年1月24日
(65)【公開番号】特開2018-118585(P2018-118585A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509264383
【氏名又は名称】リアコーポレーションジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】安池 重暁
(72)【発明者】
【氏名】小村 章吾
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 昭弘
(72)【発明者】
【氏名】菊地 亮
(72)【発明者】
【氏名】安藤 幸範
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−046162(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/021484(WO,A1)
【文献】 特開2004−016710(JP,A)
【文献】 特開2016−150658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/64
B60N 2/68
B60N 2/427
B60N 2/90
A47C 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上下方向に延び、シート幅方向に間隔を空けて配置されている樹脂製の2つのサイドフレームと、シート幅方向に延び、前記各サイドフレームの上部を連結しているアッパークロスメンバーと、を備えている車両用シートバックフレーム構造において、
前記アッパークロスメンバーは、シート幅方向に延びている第1メンバーと、該第1メンバーの下方に配置され、シート幅方向に延びている第2メンバーとを有しており、
前記第1メンバーの下部には、シート幅方向に延び、車両下方に開口する下方開口部が設けられ、
前記第2メンバーは、シート幅方向に延びている下面部と、該下面部の前端から車両上方に張り出している前壁部と、前記下面部の後端から車両上方に張り出している後壁部と、前記下面部のシート幅方向の両端から車両上方に突出している側壁部とを有し、
前記第2メンバーは、前記前壁部の上部と、前記後壁部の上部と、両側の側壁部の上部とにより、車両上方に開口する上方開口部が設けられた箱型形状であり、
前記アッパークロスメンバーには、前記第1メンバーの前記下方開口部の内側に、前記第2メンバーが収容されている状態で接合されることにより、閉断面構造が構成されていることを特徴とする車両用シートバックフレーム構造。
【請求項2】
前記サイドフレームのシート幅方向の内側には、車両上下方向に延び、シート幅方向の内側に開口する内側開口部が設けられ、
記第1メンバーのシート幅方向端部は、前記サイドフレームの前記内側開口部の内側に挿入されている状態で接合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シートバックフレーム構造。
【請求項3】
車両上下方向に延び、シート幅方向に間隔を空けて配置されている樹脂製の2つのサイドフレームと、シート幅方向に延び、前記各サイドフレームの上部を連結しているアッパークロスメンバーと、を備えている車両用シートバックフレーム構造において、
前記アッパークロスメンバーは、シート幅方向に延びている第1メンバーと、該第1メンバーの下方に配置され、シート幅方向に延びている第2メンバーとを有しており、
前記第1メンバーの下部には、シート幅方向に延び、車両下方に開口する下方開口部が設けられ、前記第2メンバーの上部には、シート幅方向に延び、車両上方に開口する上方開口部が設けられ、
前記アッパークロスメンバーには、前記第1メンバーの前記下方開口部と前記第2メンバーの前記上方開口部により、閉断面構造が構成されており、
前記アッパークロスメンバーと前記サイドフレームとが接合される接合部の車両上下方向位置は、前記アッパークロスメンバーの前記閉断面構造の車両上下方向位置よりも車両下方で、前記サイドフレームの前後方向幅が最小となる車両上下方向位置よりも車両上方に配置されていることを特徴とする車両用シートバックフレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートバックフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートは、乗員が着座するシートクッションと、乗員の上肢を支持するシートバックを備えている。シートバックを構成するフレームは、例えば、特許文献1に開示されているように、繊維強化複合材料等の樹脂材料により形成されているものが知られている。この例のシートバックフレームは、シートの強度及び剛性の向上、さらに軽量化を行うために、中空閉断面構造を有している。
【0003】
中空閉断面構造を一体的に形成しようとすると、例えば2つの部材を接合することで中空閉断面構造を形成する場合に比べ、高コストとなる。そのため、通常は、一方が開いている断面形状を有する部材、例えばコ字状の開断面構造を有している2つの部材を組み合わせて接着剤等により接合することによって、中空閉断面構造が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−65341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記例のような構造では、シートバックフレームが全て閉断面構造となるため、高い剛性を求めていない小型車や軽自動車向けの鉄鋼製シートフレームよりも高剛性の構造となり、いわゆるオーバースペックとなる可能性がある。また、これに伴い、シート重量も重くなる可能性もある。
【0006】
また、上記例では、シートバックフレームの上部のシート幅方向に延びる部分(アッパークロスメンバー)となる2つの部品が、シート前後方向に重ねた閉断面構造とし、接着剤で固定する構造となっているが、後突時に乗員が、当該アッパークロスメンバーへ衝突荷重が入力されたときに、アッパークロスメンバーの中央が、後方へ曲がるような変形となる。このような変形が起こると、接着剤による接合部に乖離方向の荷重が入力されることになる。
【0007】
接着剤は、せん断荷重に対して乖離荷重には強度が低くなる可能性がある。このため、接着剤を用いた接合構造に対して、上記のような変形の発生は好ましくない。
【0008】
また、シートバックフレームの上部には、ヘッドレストを支持する部分が設けられているが、当該部分は、複雑な形状であることが多い。そのため、繊維強化樹脂材料により成形する場合、成形の難易度が高くなり、生産性の低下を招く可能性がある。
【0009】
さらに、アウターフレーム部材と、インナーフレーム部材を接着剤で接合しているため、接着剤の塗布面積が大きくなり、これに伴い、接着剤の塗布量も多くなる。また、塗布する位置が複雑なため、作業性悪化や接着剤の材料費が高額になる可能性がある。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、シートバックフレームを構成するアッパークロスメンバーに設けられた閉断面構造の接合部分における接合の剥離を抑制しつつ、アッパークロスメンバーの剛性を確保できる車両用シートバックフレーム構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明に係る車両用シートバックフレーム構造は、車両上下方向に延び、シート幅方向に間隔を空けて配置されている樹脂製の2つのサイドフレームと、シート幅方向に延び、前記各サイドフレームの上部を連結しているアッパークロスメンバーと、を備えている。当該車両用シートバックフレーム構造において、前記アッパークロスメンバーは、シート幅方向に延びている第1メンバーと、該第1メンバーの下方に配置され、シート幅方向に延びている第2メンバーとを有しており、前記第1メンバーの下部には、シート幅方向に延び、車両下方に開口する下方開口部が設けられ、前記第2メンバーは、シート幅方向に延びている下面部と、該下面部の前端から車両上方に張り出している前壁部と、前記下面部の後端から車両上方に張り出している後壁部と、前記下面部のシート幅方向の両端から車両上方に突出している側壁部とを有し、前記第2メンバーは、前記前壁部の上部と、前記後壁部の上部と、両側の側壁部の上部とにより、車両上方に開口する上方開口部が設けられた箱型形状であり、前記アッパークロスメンバーには、前記第1メンバーの前記下方開口部の内側に、前記第2メンバーが収容されている状態で接合されることにより、閉断面構造が構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シートバックフレームを構成するアッパークロスメンバーに設けられた閉断面構造の接合部分における接合の剥離を抑制しつつ、アッパークロスメンバーの剛性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る車両用シートバックフレーム構造にシートクッションカバー等が設置されている状態を示す概略斜視図である。
図2図1の車両用シートバックカバーの一部を切り欠いて、シートバックフレームの上部が部分的に露出している状態を示す概略斜視図である。
図3図2のシートバックフレームの左右の縦フレーム及びアッパークロスメンバーを構成する第1メンバー及び第2メンバーが組み立てられる前の状態を示す分解斜視図である。
図4図3の左側縦フレーム及びアッパークロスメンバーが組み立てられている状態の側面図で、アッパークロスメンバーは断面を示している。
図5図4のA−A矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る車両用シートバックフレーム構造の実施形態について、図面(図1図5)を参照して説明する。
【0015】
本実施形態に係る車両用シートバックフレーム構造は、図1に示すように、例えば、運転席や助手席等の一人掛け用の車両用シートのシートバックフレーム構造を例に挙げて説明する。当該車両用シートは、シートクッション1と、シートバック2と、ヘッドレスト4を備えている。
【0016】
先ず、シートクッション1について説明する。シートクッション1は、図1及び図2に示すように、乗員が着座する座面部1aを有している。シートクッション1は、図示しない車体フロアパネル上に設置されているレール5の上をスライド可能に構成されている。シートクッション1をスライドさせるためのスライド機構についての説明は省略する。
【0017】
シートクッション1の内部には、シートクッション1の骨格を構成するシートクッションフレーム11が設けられている。詳細な図示は省略しているが、シートクッションフレーム11は、シートクッション1の内部において、座面部1aの左右の両側部に配置されている。
【0018】
なお、ここでの左右は、車両用シートに着座した乗員が車両前方を見ているときの左右に対応している。よって、図2に仮想的に示されているシートクッションフレーム11は、左側のシートクッションフレーム11である。
【0019】
シートクッションフレーム11は、炭素繊維強化樹脂材料により形成され、図2に示すように、車体フロアパネルに対して起立している状態で、車両前後方向に延びている板状の部材である。シートクッションフレーム11の下部は、レール5上をスライド可能に構成されている。
【0020】
次に、シートバック2について説明する。シートバック2は、図1及び図2に示すように、乗員の上肢を支持可能な背もたれ部2aを有する部材である。当該シートバック2は、リクライニング機構39によって、シートクッション1に対して、相対回転可能に構成されている。また、シートバック2の上部には、ヘッドレスト4が着脱可能な状態で取り付けられている。
【0021】
シートバック2の内部には、図2に示すように、シートバック2の骨格を構成するシートバックフレーム20が設けられている。以下、シートバックフレーム20について説明する。シートバックフレーム20は、炭素繊維強化樹脂材料により形成された右側縦フレーム(サイドフレーム)21と左側縦フレーム(サイドフレーム)22を有している。
【0022】
右側縦フレーム21と左側縦フレーム22は、シートバック2の背もたれ部2aの左右(シート幅方向両側部)に配置されており、シート幅方向に互いに間隔空けて、対をなすように平行に配置されている。
【0023】
右側縦フレーム21は、図示しない右側のシートクッションフレームの後部から車両上方に延びている部材であり、リクライニング機構39を介して右側のシートクッションフレームに回転可能に取り付けられている。当該右側縦フレーム21は、図2及び図3に示すように、車幅方向外側及び内側に臨む面を有する縦壁部21aと、該縦壁部21aの縁端からシート幅方向中央側に張り出しているフランジ部21b,21cとを有し、これらが一体的に形成されている。
【0024】
該縦壁部21aの後端から、シート幅方向中央側に張り出している後側フランジ部21cは、該縦壁部21aの前端から、シート幅方向中央側に張り出している前側フランジ部21bよりも、張り出している長さ(シート幅方向長さ)が長い。これらのフランジ部21b,21cによりシート幅方向に開口するように内側開口部が構成されている。この例では、縦壁部21aと、前側フランジ部21b及び後側フランジ部21cにより、シート幅方向中央側(内側)に開くコ字状の平断面(開断面構造)が構成されている。
【0025】
縦壁部21aの下部には、リクライニング機構39を取り付けるための設置部21dが設けられている。この例の設置部21dは、1つの径大孔21eと、該径大孔21eの径方向外側に配置されている4つの径小孔21fを有している。径小孔21fは、径大孔21eの周囲を等間隔に配置されている。リクライニング機構39は、これらの孔21e,21fに、締結部材等により取り付けられている。当該リクライニング機構39の詳細な説明は省略しているが、左右の縦フレーム21,22のシート幅方向の両外側に本体が配置され、これらをパイプで連結することにより構成されている。
【0026】
続いて、左側縦フレーム22について説明する。左側縦フレーム22は、図2に示すように、左側のシートクッションフレーム11の後部から車両上方に延びている部材であり、リクライニング機構39を介して左側のシートクッションフレーム11に回転可能に取り付けられている。当該左側縦フレーム22は、図3に示すように、右側縦フレーム21と同様に、該縦壁部22a、前側フランジ部22b及び後側フランジ部22cを有している。これらが一体的に形成され、シート幅方向中央側(内側)に開くコ字状の平断面(開断面構造)が構成されている。
【0027】
左側縦フレーム22の縦壁部22aの下部には、右側縦フレーム21の縦壁部21aと同様に、リクライニング機構39を取り付けるための設置部22dが設けられている。当該設置部22dは、右側縦フレーム21と同様に、1つの径大孔22eと、該径大孔22eの径方向外側に配置されている4つの径小孔22fを有している。
【0028】
さらに、シートバックフレーム20は、図3に示すように、右側縦フレーム21の上部と左側縦フレーム22の上部とを連結しているアッパークロスメンバー30を有している。以下、アッパークロスメンバー30の構成について説明する。
【0029】
アッパークロスメンバー30は、シート幅方向に延びている部材で、2つのメンバー、すなわち、第1メンバー31及び第2メンバー32を有している。
【0030】
第1メンバー31は、図3及び図4に示すように、上面部31aと、第1前壁部31cと、第1後壁部31dと、シート幅方向両側部の側面部31bを有している。上面部31aは、シート幅方向に延びている部分であり、上面部31aのシート幅方向における中央部は、略平坦な面が形成されている。
【0031】
側面部31bは、上面部31aのシート幅方向の両外側端に設けられている部分である。側面部31bは、当該外側端からシート幅方向外側に向かうに従い、車両下方に湾曲しながら傾斜する湾曲傾斜面となっている。湾曲の曲率半径の中心(図示せず)は、上面部31aよりも車両下方に配置されている。
【0032】
第1前壁部31cは、上面部31aの前端から車両下方に張り出している状態でシート幅方向に延びている平坦な板状の部分と、側面部31bの前端から車両下方に張り出している状態でシート幅方向に延びている平坦な板状の部分とにより構成されている。
【0033】
側面部31bの前端に位置する第1前壁部31cは、側面部31bの傾斜に沿って車両下方に湾曲している。側面部31bの前端に配置された第1前壁部31cの下端31eは、上面部31aの前端に配置された第1前壁部31cの下端31fよりも、車両下方に配置されている。すなわち、第1前壁部31cの下端31e,31fの稜線形状は、シート前方視で、下方に開く浅いU字状となるように形成されている。
【0034】
第1後壁部31dは、図3では隠れる部分となるため図示は省略しているが、上面部31aの後端及び側面部31bの後端のそれぞれから車両下方に張り出している状態で、第1前壁部31cと同様に、シート幅方向に延びている平坦な板状の部分である。第1後壁部31dは、第1前壁部31cとほぼ同形状となるように形成されており、第1後壁部31dのシート幅方向の両端部のそれぞれにおいては、側面部31bの傾斜に沿って、車両下方に湾曲している。
【0035】
当該第1メンバー31の下部には、第1前壁部31cの下部と、第1後壁部31dの下部と、左右両側の側面部31bの下部により、車両下方に開口する開口部(下方開口部)が構成されている。第1メンバー31は、車両下方に開口している箱型形状である。
【0036】
当該下方開口部の縁部は、第1前壁部31cの下端31e,31fや第1後壁部31dの下端等により構成され、シート幅方向の両側部において、シート幅方向外側に向かうに従い、車両下方に湾曲するように傾斜している。また、第1メンバー31には、上面部31aと、第1前壁部31c及び第1後壁部31dにより、車両下方に開くコ字状の横断面(開断面構造)が構成されている。
【0037】
また、シートバックフレーム20には、第1メンバー31の左右の側面部31bにおける下部と、左右の縦フレーム21,22の縦壁部21a,22aの上部とが接合される右側の接合部41及び左側の接合部42が設けられている。当該接合部41,42の位置の詳細は、後で説明する。また、側面部31に隣接する第1前壁部31cは、縦フレーム21,22の前側フランジ部21b,22bに接合され、側面部31に隣接する第1後壁部31dは、縦フレーム21,22の後側フランジ部21c,22cに接合されている。詳細は後で説明する。
【0038】
第2メンバー32は、図3に示すように、下面部32aと、第2前壁部32cと、第2後壁部32dと、シート幅方向の両側部の側壁部32bを有している。下面部32aは、シート幅方向に延びている板状の部分で、略平坦な面が形成されている。この例では、ほぼ直線的に延びているが、例えば、シート幅方向における中央部が、シート幅方向両側部よりも上方に位置するように湾曲してもよい。
【0039】
第2前壁部32cは、下面部32aの前端から車両上方に張り出している状態で、シート幅方向に延びている平坦な板状の部分である。第2後壁部32dは、下面部32aの後端から車両上方に張り出している状態で、第2前壁部32cと同様に、シート幅方向に延びている平坦な板状の部分である。
【0040】
側壁部32bは、図3に示すように、下面部32aのシート幅方向外側端から車両上方に突出している。側壁部32bが突出している下面部32aを基準とする車両上下方向高さは、第2前壁部32c及び第2後壁部32dの車両上下方向高さよりも低くなるように構成されている。
【0041】
当該第2メンバー32の上部には、第2前壁部32cの上部と、第2後壁部32dの上部と、それぞれの側壁部32bの上部により、車両上方に開口する上方開口部が構成されている。当該第2メンバー32は、車両上方に開口している箱型形状である。また、第2メンバー32には、下面部32aと、第2前壁部32c及び第2後壁部32dにより、車両上方に開くコ字状の横断面(開断面構造)が構成されている。
【0042】
続いて、第1メンバー31と第2メンバー32の接合について説明する。第2メンバー32は、第1メンバー31の下方開口部の内側に収容されている状態で接合されている。
【0043】
図4に示すように、第2メンバー32の第2前壁部32cの前面(外面)は、第1メンバー31の第1前壁部31cの後面(内面)に当接している状態で接着剤により接着(接合)されている。同様に、第2メンバー32の第2後壁部32dの後面(外面)は、第1メンバー31の第1後壁部31dの前面(内面)に当接している状態で接着剤により接着されている。
【0044】
さらに、図5に示すように、第2メンバー32の側壁部32bの上端は、第1メンバー31の側面部31bの下面側(裏側)に当接している。上記のように第1メンバー31と第2メンバー32を接着剤により接合することにより、図4及び図5に示すように、第1メンバー31と第2メンバー32により、中空閉断面構造35が構成される。なお、図5では、第1前壁部31cに接合される第2前壁部32cの図示は省略している。
【0045】
上記のようにアッパークロスメンバー30等を構成することにより、シートバックフレーム20を構成するアッパークロスメンバー30に設けられた中空閉断面構造35の接合部分における接合の剥離を抑制しつつ、アッパークロスメンバー30の剛性を確保することが可能となる。
【0046】
高い曲げ剛性、ねじり剛性が求められるアッパークロスメンバー30は、中空閉断面構造35を有している。これに対して、アッパークロスメンバー30よりも要求される強度が低い左右の縦フレーム21,22は、内側に開くコ字状の開断面構造としている。これにより、シートバックフレーム20において、全て閉断面構造とする場合に比べて、より軽量なシートバックフレーム構造を得ることができる。
【0047】
また、炭素繊維強化樹脂材料は、鋼材と比較して、高額な材料であるため、シートバックフレーム構造において、中空閉断面構造と、開断面構造を、必要に応じて使い分けていることで、炭素繊維強化樹脂材料の使用量を抑制することができる。その結果、材料費を削減することが可能となる。
【0048】
また、車両上方または下方に開くコ字状の開断面構造の第1メンバー31と第2メンバー32の2部品を、車両上下方向に重ね、接着剤により接合することによって、中空閉断面構造35を構成しているため、接着剤により接合されている接合部分にのみ剥離荷重が作用しないように構成されている。この場合、第1メンバー31と第2メンバー32の接合部分には、剥離荷重と圧縮荷重が作用する。そのため、接着剤による接合部分への剥離荷重を抑制することが可能となる。その結果、接合部分の破断を抑制できる。
【0049】
また、第1メンバー31や第2メンバー32等の個々のメンバーは、単純な絞り形状であるため、製造上の難易度は低い。このため、炭素繊維強化樹脂材料の工法の中では、安価でタクトタイムが短いRTMやプレスを用いた製作が可能となる。
【0050】
続いて、第1メンバー31と、右側縦フレーム21とが接合される右側の接合部41について説明する。第1メンバー31のシート幅方向の右側の側面部31bは、右側縦フレーム21の内側開口部の内側に挿入されている状態で、縦壁部21aに接合されている。
【0051】
上述したように、第1メンバー31において、シート幅方向の右側の側面部31bの前端に配置されている第1前壁部31cの前面(外面)は、右側縦フレーム21の前側フランジ部21bの後面(内面)に当接している状態で接着剤により接着されている。同様に、シート幅方向の右側の側面部31bの後端に配置されている第1後壁部31dの後面(外面)は、右側縦フレーム21の後側フランジ部21cの前面(内面)に当接している状態で接着剤により接着されている。
【0052】
続いて、第1メンバー31と、左側縦フレーム22とが接合される左側の接合部42について説明する。第1メンバー31のシート幅方向の左側の側面部31bは、左側縦フレーム22の開口部の内側に挿入されている状態で、縦壁部22aに接合されている。
【0053】
第1メンバー31において、シート幅方向の左側の側面部31bの前端に配置されている第1前壁部31cの前面(外面)は、左側縦フレーム22の前側フランジ部22bの後面(内面)に当接している状態で接着剤により接着されている。同様に、シート幅方向の左側の側面部31bの後端に配置されている第1後壁部31dの後面(外面)は、左側縦フレーム22の後側フランジ部22cの前面(内面)に当接している状態で接着剤により接着されている。
【0054】
上記のように、アッパークロスメンバー30の第1メンバー31のシート幅方向外側に、左右の縦フレーム21,22を配置することで、例えば、後突荷重が、アッパークロスメンバー30に入力されたときに、左右の縦フレーム21,22は、荷重方向にアッパークロスメンバー30の変形を抑制することができる。その結果、接着剤による接合部41,42で後突荷重を受け、さらに、構造上、縦フレーム21,22でも当該後突荷重を受けることができる。
【0055】
仮に、アッパークロスメンバー30の内側に左右の縦フレーム21,22を配置すると、後突荷重を受ける部分が、接着剤による左右の接合部41,42の接着強度のみとなる。これに対して、上記のように構成しているので、後突荷重に対する強度が向上する。
【0056】
さらに、上記の構成では、接着剤の塗布面積が小さいため、接着剤の使用量が抑制でき、コスト低減につながる。また、主としてメンバーの端部に接着剤を塗布しているため、作業性も良好である。さらに、固定用治具等のサイズを小さくすることも可能である。
【0057】
また、本実施形態では、図4に示すように、第1メンバー31と左右の縦フレーム21,22とが接合される左右の接合部41,42の車両上下方向位置は、第1メンバー31と第2メンバー32で構成される中空閉断面構造35の車両上下方向位置よりも車両下方で、左右の縦フレーム21,22におけるシート前後方向幅が最小となる車両上下方向位置Pよりも車両上方に配置されている。すなわち、図4のXで示されている範囲の領域に接合部41,42を配置している。なお、図4では、左側の接合部42の位置を示しているが、右側の接合部41も同様である。
【0058】
このように、左右の接合部41,42を応力集中部位から離すことで、衝突荷重や疲労による破断を抑制することができる。
【0059】
ここで、ヘッドレストフレーム4aが、アッパークロスメンバー30に取り付けられている状態について説明する。図5に示すように、第1メンバー31の上面部31aには、2つの上側貫通孔31gが形成されている。これらの貫通孔は、シート幅方向に間隔を空けて配置されている。同様に、第2メンバー32の下面部32aにも、2つの下側貫通孔32gが形成され、これらの下側貫通孔32gは、シート幅方向に間隔を空けて配置されている。
【0060】
上面部31aにおける右側の上側貫通孔31gと、下面部32aにおける右側の下側貫通孔32gは、第1メンバー31と第2メンバー32が組み立てられているときに、車両上下方向に連通する。同様に、上面部31aにおける左側の上側貫通孔31gと、下面部32aにおける左側の下側貫通孔32gも、連通している。
【0061】
上下に連通する右側の上側貫通孔31g及び下側貫通孔32gと、上下に連通する左側の上側貫通孔31g及び下側貫通孔32gには、ヘッドレストフレーム4aが挿入される。これらの4つの貫通孔31g,32gは、アッパークロスメンバー30を組み立てる時ときに、位置決め用の孔としても用いることが可能である。例えば、丸棒部材を、上下に連通する貫通孔31g,32gに挿入することで、第1メンバー31と第2メンバー32を接合するときの位置調整が容易になる。
【0062】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0063】
上記実施形態では、第1メンバー31と第2メンバー32で構成される中空閉断面構造35において、第2メンバー32の側壁部32bの上端32hは、第1メンバー31の側面部31bの裏側に当接させているが、これに限らず、接着剤により接合してもよい。また、第1前壁部31cと第2前壁部32cとを、前後を逆にして接合してもよい。すなわち、第1前壁部31cの前面に、第2前壁部32を接合してもよい。第1後壁部31dと第2後壁部32dについても同様である。
【0064】
また、アッパークロスメンバー30と、左右の縦フレーム21,22の接合は、接着剤による接合に限られない。例えば、機械的な接合(リベット接合やカシメ接合)でもよい。また、縦フレーム21,22は、繊維強化樹脂材料に限らず、金属材料、非鉄金属材料、やその他の樹脂材料でもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 シートクッション
1a 座面部
2 シートバック
2a 背もたれ部
4 ヘッドレスト
4a ヘッドレストフレーム
5 レール
11 シートクッションフレーム
21 右側縦フレーム(サイドフレーム)
21a 縦壁部
21b 前側フランジ部
21c 後側フランジ部
21d 設置部
21e 径大孔
21f 径小孔
22 左側縦フレーム(サイドフレーム)
22a 縦壁部
22b 前側フランジ部
22c 後側フランジ部
22d 設置部
22e 径大孔
22f 径小孔
30 アッパークロスメンバー
31 第1メンバー
31a 上面部
31b 側面部
31c 第1前壁部
31d 第1後壁部
31g 上側貫通孔
32 第2メンバー
32a 下面部
32b 側壁部
32c 第2前壁部
32d 第2後壁部
32g 下側貫通孔
39 リクライニング機構
41 右側の接合部
42 左側の接合部
図1
図2
図3
図4
図5