(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による油膜検出システムの構成例を示す図である。
図1において、油膜検出システム100は、参照用擬似油膜11、赤外線撮像装置12、画像処理部13、輝度閾値設定部14、画像輝度比較部15、画素グルーピング部16、油膜有無判定部17及び記憶部18の各々が備えられている。
参照用擬似油膜11は、施設内の排水などを貯水するプールの水面に浮遊させ、水面における油膜を検出するための参照として用いる樹脂で生成された樹脂膜である。また、参照用擬似油膜11は、赤外光(赤外線光)の反射率が油膜と同様の樹脂膜が用いられる。
【0015】
図2は、本実施形態の油膜検出システムにおいて参照用擬似油膜11の必要性を説明するための概念図である。
図2(a)は、通常の撮像装置で撮像した、貯めた水の水面151に油膜が存在するトレイ101の画像と、貯めた水の水面152に油膜が存在しないトレイ102の画像とを示している。通常の撮像装置で撮像した撮像画像において、水面151及び水面152の各々においては、油膜が撮像されていない。
一方、
図2(b)は、赤外光を撮像する赤外線撮像装置で撮像した、貯めた水の水面151Aに油膜が存在するトレイ101の画像101Aと、貯めた水の水面152Aに油膜が存在しないトレイ102の画像102Aとを示している。
図2(a)の場合と異なり、水面151Aには水面における油膜の画像200Aが撮像されており、水面152Aにおいては、油膜が撮像されていない。この実験結果から、水面及び油膜からの赤外光を撮像することにより、水面と油膜との判別が行えることが判る。
【0016】
このため、水面に常に安定した大きさの油膜が存在していれば、水からの赤外光の反射であるか、油膜からの赤外光の反射であるかを区別することができる。
ここで、水面と油膜とにおける反射率がそれほど大きくないため、反射を検知する温度(赤外線画像の輝度)範囲を特定する必要がある。しかしながら、反射率の違いが検知可能な温度範囲が、油膜と水との温度差や、昼と夜との赤外光の光量の変化などの環境による影響を受ける。このため、本実施形態における参照用擬似油膜11を用いることにより、形状が明確であるため、赤外光を測定する温度範囲を変更させ、参照用擬似油膜11の形状を抽出することにより、いずれにその参照用擬似油膜11が存在するかが明確に判明する。この結果、この参照用擬似油膜11からの反射光を参照することで、水面における油膜からの反射を検知する精度を向上させることができる。
【0017】
また、参照用擬似油膜11は、常に水面に配置されているため、油膜と同一の水温に維持されているため、油膜の反射光を検出するための参照用として最適な状態にある。
また、参照用擬似油膜11は、雨が降った場合など、表面に水が溜らないように、表面に撥水性を持たせる構成としてもよい。
また、参照用擬似油膜11は、雨が降った場合など、表面に水が溜らないように、赤外光に対する反射率に影響を与えない形状の範囲内において、中央部分が周縁部より高く形成された傾斜を有する形状としてもよい。
【0018】
図2(c)は、屈折率から求めた灯油(油膜)と水との反射率を示す図である。
図2(c)においては、媒質1(空気)の屈折率n1と、媒質2(液体)の屈折率n2との各々を用いて、図に示す式により求めた、水面、油膜それぞれにおける反射率を示している。水面の反射率が2.0(%)であり、油膜の反射率が3.4であるため、水面及び油膜の各々の反射率は、非常に近い値となっている。ここで、灯油(油膜)の場合、屈折率が水より高いため、屈折率から計算される反射率は水より大きな数値となる。
【0019】
図3は、本実施形態の油膜検出システムにおける参照用擬似油膜11を説明するための概念図である。
図3(a)は、油膜検出システム100の赤外線撮像装置12による、貯めた水の水面152に参照用擬似油膜11を配置したトレイ102と、貯めた水の水面302に油膜200が存在するトレイ103との撮像を示す概念図である。
図3(a)においては、油膜検出システム100における赤外線撮像装置12が有線で油膜検出システム100の他の構成と接続されているが、無線により撮像画像のデータなどの送受信を行なう構成としてもよい。
図3(b)は、
図2(c)に示す式で、灯油とPE(Polyethylene:ポリエチレン)との各々の屈折率n2で計算した反射率を示すテーブルである。テーブルにおいて示されるように、灯油の反射率「3.4」とPEとの反射率「4.4」との各々は、水の反射率「2.0」と比較して非常に近い値である。
【0020】
図3(c)は、
図3(a)に示す形態で撮像されたトレイ102の画像である画像102Aと、トレイ103の画像である画像103Aとを示している。
画像102Aにおいては、PEで形成した参照用擬似油膜11の画像11Aと、水面301の画像301Aとが異なる輝度値の画素(あるいはピクセル)となっていることが判る。また、画像103Aにおいては、油膜200の画像200Aと、水面302の画像302Aとが異なる輝度値の画素となっていることが判る。
【0021】
ここで、参照用擬似油膜11の画像11Aと油膜200の画像200Aとの各々の輝度値は、ほぼ同様の数値となっている。このことから、参照用擬似油膜11の画像11Aと水面301の画像301Aとの各々が判別できる温度範囲で撮像することにより、油膜200の画像200A、水面302の画像302Aそれぞれが判別できることが判る。すなわち、参照用擬似油膜11が油膜と同様の赤外光に対する反射率を有するため、油膜と参照用擬似油膜11とは同様の輝度値で撮像されることになり、この参照用擬似油膜11と同等以上の輝度値を有する画素を検出することにより、容易に油膜の存在を検出することができる。
ここで、参照用擬似油膜11の形状は、できれば、油膜の形状としては存在しない、油膜の形状と識別できる形状とすることが望ましい。
【0022】
図1に戻り、赤外線撮像装置12は、赤外光の波長領域の光を検出して撮像できる赤外線カメラなどであり、油膜及び水面において反射される赤外光を検出する撮像画像を撮像する撮像装置である。
画像処理部13は、撮像する撮像画像において、参照用擬似油膜11の形状が水面と最も区別できる、赤外光を検出する温度範囲を抽出する。すなわち、画像処理部13は、撮像画像において、参照用擬似油膜11の形状を示す参照用画像領域と、水面の画像領域との輝度値の差が最も大きく検出される、赤外光を検出する検出温度範囲を抽出する。そして、画像処理部13は、抽出した検出温度範囲内において赤外光の撮像画像を撮像し、例えば、上記参照用画像領域を枠で囲んだ後、輝度閾値設定部14に対して出力する。
【0023】
輝度閾値設定部14は、画像処理部13から供給される撮像画像における、所定の枠で囲まれた参照用画像領域の画素の輝度値を平均し、平均された輝度値を輝度閾値として、画像輝度比較部15に対して出力する。
画像輝度比較部15は、参照用画像領域以外の撮像画像の領域における画素の輝度値と、輝度閾値とを比較する。そして、画像輝度比較部15は、輝度閾値を超える輝度値を有する画素を検出し、例えば、輝度閾値を超える輝度値を有する第1画素と、輝度閾値以下の輝度値を有する第2画素とを二値化する。
【0024】
画素グルーピング部16は、上記二値化した撮像画像において、上記第1画素が隣接して複数存在する領域をグルーピングし、そのグルーピングされた領域を対象画像領域とし、所定の枠で囲む。
油膜有無判定部17は、対象画像領域に含まれる第1画素の画素数が予め設定された画素数閾値を超えるか否かにより、油膜が存在するか否かの判定を行なう。すなわち、油膜有無判定部17は、対象画像領域に含まれる第1画素の画素数が予め設定された画素数閾値を超える場合に、この対象画像領域が油膜の撮像された画像であると判定する。一方、油膜有無判定部17は、対象画像領域に含まれる第1画素の画素数が予め設定された画素数閾値以下である場合に、この対象画像領域が油膜の撮像された画像でない(ノイズである)と判定する。
【0025】
記憶部18には、撮像画像における画素毎の画素値を示す画素テーブルと、対象画像領域毎の画素を示す画素グループテーブルとの各々が書き込まれて記憶されている。
図4は、記憶部18に書き込まれて記憶されている画素テーブルの構成例を示す図である。
図4において、画素テーブルは、レコード毎に、画素座標と、輝度値と、判定値との各々の欄が設けられている。画素座標は、撮像画像の2次元座標系における画素の各々の座標位置を示している。輝度値は、対象物で反射された赤外光を撮像した撮像画像における画素の輝度値を示している。判定値は、輝度閾値を超えるか否かにより判定した二値化の数値を示している。この判定値は、輝度閾値を超える輝度値を有する画素に対しては「1」の輝度値となり、輝度閾値以下の輝度値を有する画素に対しては「0」の輝度値となる。
【0026】
ここで、画像処理部13は、撮像画像における画素の各々の輝度値を、画素それぞれの画素座標に対応して、記憶部18における画素テーブルに書き込んで記憶させる。画像輝度比較部15は、撮像画像における参照用画像領域以外の画素の輝度値を順番に上記画素テーブルから読み出し、画素の輝度値が輝度閾値を超えるか否かを判定し、判定結果を判定値として、画素テーブルの各画素の判定値の欄に書き込んで記憶させる。
【0027】
図5は、記憶部18に書き込まれて記憶されている画素グループテーブルの構成例を示す図である。
図5において、画素グループテーブルは、レコード毎に、グループ識別情報と、中心画素座標と、画素座標群と、画素数と、判定結果との各々の欄が設けられている。グループ識別情報は、隣接した第1画素をグルーピングしたグループを識別する情報である。中心画素座標は、グルーピングされて形成された対象画像領域の中心にある画素の座標である。画素座標群は、対象画像領域における全ての画素の各々の画素座標のリストである。画素数は、対象画像領域に含まれる画素の数である。判定結果は、油膜であるか否かが示され、油膜である場合に「油膜」と、油膜でない場合に「ノイズ」と記述される。
【0028】
画素グルーピング部16は、記憶部18における画素テーブルの判定値が「1」の画素を、複数が隣接している場合、これをグループ化し、グループ識別情報を付加し、画素グループテーブルに書き込んで記憶させる。このとき、画素グルーピング部16は、グルーピングされて形成された対象画像領域における中心画素座標、画素座標群及び画素数(第1画素の画素数)を求めて、グループ識別情報に対応させて、記憶部18における画素グループテーブルに書き込んで記憶させる。
また、油膜有無判定部17は、記憶部18における画素グループテーブルを参照し、グループ識別情報毎に、順次、第1画素の画素数が画素数閾値を超えるか否かの判定結果を、「油膜」あるいは「ノイズ」として、画素グループテーブルの判定結果の欄に書き込んで記憶させる。
【0029】
次に、
図6及び
図7の各々を用いて、本実施形態における参照用擬似油膜を用いた水面における油膜の有無の検出を行なう油膜検出システムの処理の流れを説明する。
図6は、本実施形態における参照用擬似油膜を用いた水面における油膜の有無の検出を行なう油膜検出システムの処理の流れ動作例を示すフローチャートである。このフローチャートの油膜検出の処理が所定の周期(例えば、1時間毎、1日毎など)で行なわれる。
図7は、フローチャートにおける処理を説明するための貯水槽と、貯水槽の水面を撮像する赤外線撮像装置12の位置関係を示す図である。
図7において、貯水槽500には、水が貯められており、水面501には参照用擬似油膜11が配置されている。さらに、油膜及び参照用擬似油膜の赤外線画像を明瞭化するため、赤外線光源(不図示)を設け、この赤外線光源の赤外光を水面501に照射する構成としてもよい。この参照用擬似油膜を用いて、
図6のフローチャートにより油膜200の検出を行なう。
以下、
図6のフローチャートにおける処理の流れに従い、参照用擬似油膜を用いた水面における油膜の有無の検出の動作の説明を行なう。
【0030】
ステップS1:
画像処理部13は、赤外線撮像装置12の撮像した
図8に示す撮像画像を順次入力する。このとき、画像処理部13は、赤外光を検出する温度範囲を変化させつつ、参照用擬似油膜11の画像11Aと水面501の領域との輝度値の差分が最大となる(検出感度が最大となる)赤外光の測定を赤外線撮像装置12において行なう温度範囲を抽出する。ここで、画像処理部13は、他の領域よりも輝度値の高い領域が、予め記憶されている参照用擬似油膜11の形状と類似しているか否かにより、参照用擬似油膜11の画像11Aであることを検出する。
そして、画像処理部13は、抽出された温度範囲において、赤外線撮像装置12により撮像された画像500Aを判定に用いる撮像画像とする。
【0031】
ステップS2:
画像処理部13は、参照用擬似油膜11の形状をした、他の領域よりも輝度値の高い領域を抽出する。そして、画像処理部13は、参照用擬似油膜11の画像11Aを参照用画像領域として抽出し、所定の枠で囲んだ後、輝度閾値設定部14に対して出力する。また、画像処理部13は、撮像画像における画素の各々の輝度値を、画素それぞれの画素座標に対応させて、記憶部18の画素テーブルに書き込んで記憶させる。
【0032】
ステップS3:
輝度閾値設定部14は、記憶部18の画素テーブルから、参照用画像領域における画素の各々の輝度値を抽出する。
【0033】
ステップS4:
輝度閾値設定部14は、抽出した参照用画像領域における画素の各々の輝度値を平均化し、平均化した輝度値を輝度閾値とする(輝度閾値の抽出)。
【0034】
ステップS5:
画像輝度比較部15は、輝度閾値設定部14が求めた輝度閾値と、参照用画像領域以外の領域における画素の各々の輝度値とを順次比較する。
【0035】
ステップS6:
画像輝度比較部15は、画素の輝度値が輝度閾値以下の場合、処理をステップS7へ進める。
一方、画像輝度比較部15は、画素の輝度値が輝度閾値を超えている場合、処理をステップS8へ進める。
【0036】
ステップS7:
画像輝度比較部15は、画素の輝度値が輝度閾値以下の場合、記憶部18の画素テーブルの判定値を、二値化における輝度値「0」を書き込む処理を行なう。
【0037】
ステップS8:
画像輝度比較部15は、画素の輝度値が輝度閾値を超えている場合、記憶部18の画素テーブルの判定値を、二値化における輝度値「1」を書き込み、この画素を第1画素とする処理を行なう。
【0038】
ステップS9:
画像輝度比較部15は、記憶部18の画素テーブルにおける全ての画素座標の画素の輝度値と、輝度閾値との比較が終了したか否かの判定を行なう。
このとき、画像輝度比較部15は、記憶部18の画素テーブルにおける全ての画素座標の画素の輝度値と、輝度閾値との比較が終了した場合、処理をステップS10へ進める。
一方、画像輝度比較部15は、記憶部18の画素テーブルにおける全ての画素座標の画素の輝度値と、輝度閾値との比較が終了していない場合、処理をステップS5へ進め、画素テーブルにおける次の画素座標の画素に対する比較の処理を行なう。
【0039】
ステップS10:
画素グルーピング部16は、記憶部18の画素テーブルを参照し、画素座標が隣接した輝度値「1」の第1画素をグルーピングする。
そして、画素グルーピング部16は、グルーピングされた第1画素の集合を対象画像領域として、グループ識別情報を付与する。また、画素グルーピング部16は、付与したグループ識別情報とともに、対象画像領域の中心にある中心画素座標と、対象画像領域に含まれる画素の画素座標を示す画素座標群と、対象画像領域に含まれる画素の数を示す画素数とを、記憶部18の画素グループテーブルに書き込んで記憶させる。
【0040】
このとき、画像処理部13、輝度閾値設定部14及び画像輝度比較部15の各々が、ステップS1からステップS9までの処理を、異なる時間に取得した撮像画像の各々に対して行ない、複数の撮像画像それぞれを二値化した画素テーブルを生成する構成としてもよい。この場合、画素グルーピング部16は、ステップS1からステップS9までの処理を、異なる時間に取得した撮像画像の各々の画素テーブルを参照し、全て、あるいは予め設定した数の画素テーブルにおいて、同一の画素座標の輝度値(判定値)が「1」である画素を第1画素として抽出し、この抽出された画素座標の第1画素による複合画素テーブルを生成する構成とする。そして、この複合画素テーブルを対象画像領域を生成する処理における画素テーブルとして用いる。これにより、水面の波の影響などにより、油膜が存在しないにもかかわらず、なんらかの原因により偶然に輝度値が高くなった画素を、第1画素とせずにノイズ成分として除去することができ、油膜の検出の精度を向上させることができる。
【0041】
ステップS11:
油膜有無判定部17は、記憶部18の画素グループテーブルを参照し、対象画像領域における第1画素の数が、予め設定されている画素数閾値を超えるか否かの判定を行なう。
ここで、画素数閾値は、対象画像領域の面積の大きさが油膜であるかノイズであるかの判定を行なうために用いる面積閾値である。
すなわち、本ステップにおいては、油膜有無判定部17が、記憶部18の画素グループテーブルを参照し、対象画像領域の面積が、予め設定されている面積閾値(油膜であると判定する面積の閾値)を超えるか否かの判定を行なうことを示している。このため、上記画素数閾値は、赤外線撮像装置12の分解能と、実験で求められた油膜と判定できる面積とにより、予め設定される。
【0042】
ステップS12:
油膜有無判定部17は、対象画像領域における第1画素の数が、予め設定されている画素数閾値を超える場合、処理をステップS13へ進める。
一方、油膜有無判定部17は、対象画像領域における第1画素の数が、予め設定されている画素数閾値以下の場合、処理をステップS14へ進める。
【0043】
ステップS13:
油膜有無判定部17は、対象画像領域における第1画素の数が、予め設定されている画素数閾値を超える場合、記憶部18の画素グループテーブルにおける判定結果の欄に「油膜」を書き込む処理を行なう。これにより、油膜有無判定部17は、
図7における水面501の油膜200の画像領域(対象画像領域)を油膜と判定する。
【0044】
ステップS14:
油膜有無判定部17は、対象画像領域における第1画素の数が、予め設定されている画素数閾値以下の場合、記憶部18の画素グループテーブルにおける判定結果の欄に「ノイズ」を書き込む処理を行なう。
【0045】
ステップS15:
油膜有無判定部17は、記憶部18の画素グループテーブルにおける全てのグループ識別情報の対象画像領域の画素数と、画素数閾値との比較が終了したか否かの判定を行なう。
このとき、油膜有無判定部17は、記憶部18の画素グループテーブルにおける全てのグループ識別情報の対象画像領域の画素数と、画素数閾値と比較が終了した場合、処理をステップS16へ進める。
一方、油膜有無判定部17は、記憶部18の画素グループテーブルにおける全てのグループ識別情報の対象画像領域の画素数と、画素数閾値との比較が終了していない場合、処理をステップS11へ進め、画素グループテーブルにおける次のグループ識別情報の対象画像領域に対する比較の処理を行なう。
【0046】
ステップS16:
油膜有無判定部17は、記憶部18の画素グループテーブルを参照し、判定結果が「油膜」となっているグループ識別情報を抽出する。
そして、油膜有無判定部17は、油膜検出システムにおける表示部(不図示)の表示画面に、
図8に示す判定された油膜検出画像を表示する。
図8における画像200Aが上述した処理により検出された油膜として表示される。
図8は、
図7において赤外線撮像装置12により撮像された貯水槽500の撮像画像かにより判定した油膜検出画像の概念図である。
図8においては、貯水槽の画像500A(撮像画像)には、水面の画像501Aにおける参照用擬似油膜11の画像11Aと、油膜と判定された油膜200の画像200Aとが示されている。
【0047】
上述したように、本実施形態によれば、検出対象の油膜と同様の赤外線の反射率を有する参照用擬似油膜11を用いることにより、参照用擬似油膜11の所定の形状から、油膜と水面との輝度値の差分が最大となる、赤外線撮像装置12の赤外光の検出を行なう温度範囲を抽出することができ、油膜検出の際に周囲の環境による影響を受けることなく、フーリエ変換やフィルタ処理などのコンピュータに対して負荷をかける処理を必要とせずに、従来に比較して容易に高い精度により、水面における油膜を検出することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態によれば、参照用擬似油膜11が常に油膜とともに水面に配置されているため、参照用擬似油膜11と、油膜と、水面の水の温度との各々が同様になっているため、それぞれの間において温度差が生じず、温度差による油膜検出における誤差を排除することができ、かつ周囲の環境光における赤外光あるいは熱源から放射される赤外光が同様の条件で照射されるため、従来に比較して容易に高い精度により、水面における油膜を検出することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態と同様に、撮像に用いる赤外線撮像装置12を一台とし、この赤外線撮像装置12の撮像方向を制御する機構を設ける構成としてもよい。この場合、貯水槽500の水面501を複数の領域に分割し、所定の時間毎に分割した領域を撮像できる撮像方向に赤外線撮像装置12の撮像方向を移動させ、それぞれの領域の撮像画像(分割画像)を撮像し、撮像した撮像画像(分割画像)を合成し、貯水槽500における水面501全体の撮像画像を生成し、油膜の判定に用いる構成としてもよい。
これにより、複数台の赤外線撮像装置12を用いることにより、赤外線撮像装置12で水面501全体を撮像した撮像画像に比較して、画素数の多い、すなわち分解能の高い撮像画像を得ることができ、油膜の検出精度を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態において、一台の赤外線撮像装置12により、貯水槽500の全体を撮像する構成としているが、貯水槽500の水面501を複数の領域に分割し、分割した領域毎に一台の赤外線撮像装置12を配置し、この複数の赤外線撮像装置12が撮像した撮像画像(分割画像)を合成し、貯水槽500における水面501全体の撮像画像を生成し、油膜の判定に用いる構成としてもよい。
これにより、複数台の赤外線撮像装置12を用いることにより、一台の赤外線撮像装置12で撮像した撮像画像に比較して、画素数の多い、すなわち分解能の高い撮像画像を得ることができ、油膜の検出精度を向上させることができる。
【0051】
また、
図1における油膜検出システム100の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述した水面における油膜を検出する処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0052】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0053】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。