(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6760900
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】沸騰水型原子炉
(51)【国際特許分類】
G21F 9/02 20060101AFI20200910BHJP
G21D 1/00 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
G21F9/02 Z
G21D1/00 Y
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-153866(P2017-153866)
(22)【出願日】2017年8月9日
(65)【公開番号】特開2019-32255(P2019-32255A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2019年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤津 興
(72)【発明者】
【氏名】根本 裕二
(72)【発明者】
【氏名】堀 俊介
(72)【発明者】
【氏名】池坂 武樹
【審査官】
中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭50−050600(JP,A)
【文献】
特開昭53−020003(JP,A)
【文献】
実開昭55−143600(JP,U)
【文献】
特開平03−172798(JP,A)
【文献】
特開平05−087981(JP,A)
【文献】
特開平09−145892(JP,A)
【文献】
特開平10−339794(JP,A)
【文献】
米国特許第4369048(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/02
G21D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸騰水型原子炉において、
蒸気タービンと空気抽出器の間に位置する主復水器内に、所定の非凝縮性ガスの放射能濃度を減衰させる減衰部を設けると共に、
前記主復水器と前記空気抽出器の間に、追加の減衰部を設ける、
沸騰水型原子炉。
【請求項2】
前記減衰部は、前記主復水器内に設置される前記非凝縮性ガスを集める空気集合管の下流側に接続される、
請求項1に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項3】
前記減衰部は、前記主復水器内の気相部に設ける、
請求項2に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項4】
前記減衰部は、前記減衰部を流れる前記所定の非凝縮性ガスの滞留時間が、前記非凝縮性ガスに含まれる所定の放射性核種の半減期よりも長くなるように設定される、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項5】
前記減衰部は、所定の容器内に三次元の通路を形成することにより構成される、
請求項4に記載の沸騰水型原子炉。
【請求項6】
前記所定の放射性核種は、窒素16である、
請求項5に記載の沸騰水型原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉(以下、BWRとも呼ぶ)の運転中において、タービン建屋内の主要な放射性核種である窒素−16(以下、N−16)は、原子炉圧力容器(以下、RPV)内で酸素原子の放射化により生成される。N−16は、その半減期が約7秒と短いため、主に(1)RPV出口から主蒸気系[SH2]を経て、抽気系[SH3]の下流の主復水器入口までの区間と、(2)主復水器出口から復水空気抽出系(以下、AO)を経て、気体廃棄物処理系(以下、OG)の[SH4]排ガス復水器までの区間とに存在する。
【0003】
区間(2)のAOおよびOGでのN−16の寄与は、RPV出口から主復水器入口までの区間(1)および主復水器内でそれぞれ滞留する合計時間によって、減衰が見込めるが、これらの区間での滞留時間は数秒間程度と短い。
【0004】
そのため、N−16の被ばく対策として、タービン建屋内に厚さ約1.4mのコンクリートによる遮へいが必要とされる。また運転中のエリア内への立ち入り作業は、ごく短時間のパトロール等によるものに限られている。
【0005】
BWR運転中におけるタービン建屋内の放射線レベルに関し、最も影響の大きな放射性核種はN−16である。そこで、BWRのタービン建屋では、N−16に対する被ばく対策が重要となる。
【0006】
特許文献1では、主復水器において発生した非凝縮性ガスは空気抽出器により抽出されてOGへ導入される。特許文献1では、活性炭吸着塔において、放射性ガスを吸着して崩壊させる。
【0007】
特許文献2では、主復水器内へ放出された蒸気ならびに非凝縮性ガスの中から蒸気分を、主復水器内で凝縮させる。そして主復水器内で、放射性物質を含んだ凝縮蒸気ならびに非凝縮性ガスを一時保留することにより、放射性物質を崩壊せしめ、放射性濃度を低減させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−197085号公報
【特許文献2】特開平7−128493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術では、N−16の環境への排出を低減する技術が開示されているが、十分ではない。BWR運転中のタービン建屋内の放射線レベルに関して、最も影響の大きな放射性核種であるN−16の被ばく対策として、分厚いコンクリート壁を設けるのではコストが増大し、建屋も大型化する。
【0010】
メンテナンスのためには原子炉を停止させる必要があり、原子炉の稼働率が低下し、発電コストが増大する。運転中にメンテナンスを行うオペレーション(以下、オンラインメンテナンス)を導入できれば、定期検査期間を短縮することができるが、N−16の寄与がある設備は線量率が大きいため、オンラインメンテナンスの実現は難しい。
【0011】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、所定の非凝縮性ガスを減衰させることができるようにした沸騰水型原子炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決すべく、本発明に従う沸騰水型原子炉では、蒸気タービンと空気抽出器の間に位置する主復水器内に、所定の非凝縮性ガスの放射能濃度を減衰させる減衰部を設ける。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、主復水器内で、所定の非凝縮性ガスの放射能濃度を減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】沸騰水型原子炉において非凝縮性ガスの流通経路を示す説明図。
【
図3】第2実施例に係り、主復水器の内外に減衰管を設けた構成の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、以下に詳述するように、主復水器5の出口におけるN−16の放射能濃度を低減させるべく、主蒸気中の非凝縮性ガスの流路を確保するための減衰管55を主復水器5内に配置する。減衰管55は、主復水器5の気相部52の空きスペースに設置するのが好ましい。
【0016】
主復水器5の下流におけるN−16の放射能濃度を低減させるため、主復水器5の気相部52の空きスペースに減衰管55を設置する。これにより、主復水器5の内部または主復水器5の出口から空気抽出器6の入口までの区間において、N−16を含んだ非凝縮性ガスが一定時間保持される。この結果、上述した区間(2)のAOおよびOGでのN−16放射能濃度を低減することができる。したがって、本実施形態によれば、区間(2)のAOおよびOGでのN−16の放射能濃度を低減できるため、BWRのタービン建屋の遮蔽コンクリートの量を低減できる。また、BWRのタービン建屋内でのオンラインメンテナンスの適用範囲を拡大することができる。
【実施例1】
【0017】
図1および
図2を用いて第1実施例を説明する。
図1は、主復水器5の構成例を示す説明図である。
図2は、N−16の流通経路を示す説明図である。
【0018】
先に
図2を用いて、BWRにおける非凝縮性ガス流路の概略を説明する。炉心1を収納したRPV2内で生成されたN−16を含む非凝縮性ガスは、主蒸気管3を通して蒸気タービン4に導かれる。
【0019】
非凝縮性ガスは、高圧タービン(不図示)および低圧タービン41を駆動し、発電機(不図示)を回転させる。蒸気タービン4で仕事を終えた蒸気は主復水器5へ導かれ、冷却されて復水する。復水した冷却水は、給水配管16を介して再び炉内へ導入される。主復水器5において抽出されたN−16を含む非凝縮性ガスは、空気抽出器6により抽出されてOG7に導入される。
【0020】
OG7は、例えば、予熱器8、再結合器9、排ガス復水器10、除湿冷却器11、活性炭吸着塔12、粒子フィルタ13、排ガス真空ポンプ14とを備える。
【0021】
予熱器8は、導入された非凝縮性ガスを予熱する装置である。再結合器9は、水の放射性分解で発生した水素と酸素とを再び結合させる装置である。排ガス復水器10は、水蒸気を水に戻す装置である。除湿冷却器11は、気体廃棄物を冷却し、湿分を除湿する装置である。活性炭吸着塔12は、核分裂により生成した放射性希ガスを保持して減衰させる装置である。粒子フィルタ13は、活性炭吸着塔12にて活性炭が崩壊して生成した粒子を捕集する装置である。排ガス真空ポンプ14は、OG7を負圧に保つ装置である。
【0022】
OG7を通過した気体廃棄物は、排気筒15を通して大気中に排気される。このとき、N−16は、半減期が約7秒と短いため、主に炉心1から排ガス復水器10までの区間に存在する。この区間のうち、主復水器5の下流の区間(2)のN−16の寄与は、RPV2の出口から主復水器5の入口までの区間(1)および主復水器内5の合計の滞留時間によって減衰が見込めるが、本実施例を適用する前の構成では、これら区間での滞留時間は数秒間と短い。
【0023】
そこで、本実施例では、主復水器5の下流におけるN−16の放射能濃度を低減させるため、
図1に示すように、主復水器5の気相部52の空きスペースに、主蒸気中の非凝縮性ガスの流路を確保するための減衰管55を設置する。
【0024】
減衰管55は、例えば、略筒状の容器内に流路を立体的に形成することで構成することができる。ここで、略筒状とは、断面が円形または楕円形をなす略円筒状に限らず、断面が矩形状の略角筒状でもよいし、断面が多角形の筒状でもよい。ここでは、筒状の容器を例示したが、容器の形状は筒状に限定する必要はなく、例えば、主復水器内のスペースを効率良く利用できる複雑形状としてもよい。本実施例では、減衰管55として、所定の容器内にできるだけ流路長が長くなるように、三次元の通路を形成する。流路長は、N−16を含む非凝縮性ガスが減衰管55を通過するのに要する時間が、N−16の半減期以上となるように設定される。
【0025】
図2に示すように、主復水器5は、蒸気タービン4の出口(低圧タービン41の出口)に接続される本体50と、本体50の下側に設けられる管束領域部51と、本体50の上側に設けられる気相部52と、管束領域部51内の海水冷却管(不図示)の群の中に挿通される空気集合管53と、気相部52内に設けられる給水加熱器54と、気相部52内に設けられる減衰管55とを備える。主復水器5の底部には給水配管16が接続されており、主復水器5で復水された冷却水は、給水配管16を介して炉心に戻る。
【0026】
減衰管55は、給水加熱器54の下側に位置して、気相部52内に配置される。減衰管55の流入口は、空気集合管53の流出口に接続されている。減衰管55の流出口は、空気抽出器6の流入口に接続されている。
【0027】
このように構成される本実施例では、主復水器5において発生したN−16を含む非凝縮性ガスは、減衰管55を通過するため、主復水器5から空気抽出器6に流入するまでの間に時間を要する。本実施例では、N−16を含む非凝縮性ガスが主復水器5の内部において一定時間保持された後で、空気抽出器6により抽出されてOG7へ導入される。
【0028】
したがって、本実施例によれば、非凝縮性ガスに含まれるN−16の放射能濃度を低減することができる。この結果、本実施例では、主復水器5の下流で大きな遮へい対策(壁厚さ約1.4m)が必要となっている空気抽出器6の周辺と排ガス復水器10の周辺とで、原子炉運転中の線量率を低減させることができる。これにより、本実施例によれば、オンラインメンテナンスを実現することができ、メンテナンス性を向上できる上に、原子炉の稼働率を高くすることができ、発電コストを低減することができる。
【実施例2】
【0029】
図3を用いて第2実施例を説明する。本実施例は第1実施例の変形例に該当するため、第1実施例との相違を中心に述べる。
【0030】
本実施例では、主復水器5の気相部52内に第1減衰管55(1)を設けるとともに、主復水器5と空気抽出器6の間に、「追加の減衰部」としての第2減衰管55(2)を設ける。
【0031】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、主復水器5の内部に設ける第1減衰管55(1)と主復水器5と空気抽出器6の間に設ける第2減衰管55(2)とにより、N−16を含む非凝縮性ガスの滞留時間を第1実施例よりも長くすることができる。したがって、N−16の放射能濃度をさらに低減することができ、メンテナンス性や原子炉の稼働率を向上することができる。
【0032】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、上述した各実施例は適宜組み合わせて使用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1:炉心、2:圧力容器、3:主蒸気管、4:蒸気タービン、5:主復水器、6:空気抽出器、7:気体廃棄物処理系、8:予熱器、9:再結合器、10:排ガス復水器、11:除湿冷却器、12:活性炭吸着塔、13:粒子フィルタ、14:排ガス真空ポンプ、15:排気筒