特許第6760915号(P6760915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6760915
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】フロー式反応装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/24 20060101AFI20200910BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20200910BHJP
   C01B 6/10 20060101ALI20200910BHJP
   B01F 5/00 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   B01J19/24 Z
   B01J19/00 321
   B01J19/00 H
   C01B6/10
   B01F5/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-233618(P2017-233618)
(22)【出願日】2017年12月5日
(65)【公開番号】特開2019-98275(P2019-98275A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2019年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 和也
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼岡 慎也
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−208718(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/111119(WO,A1)
【文献】 特開2012−241441(JP,A)
【文献】 特開平10−015371(JP,A)
【文献】 特開平07−243596(JP,A)
【文献】 特開2007−105668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
B01J 19/24
B01F 3/04
B01F 5/00
C01B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の原料物質を連続的に反応させるフロー式反応装置であって、
2種以上の前記原料物質を混合する混合部と、
前記混合部の二次側に設けられるとともに、前記原料物質を反応させて生成物を得る反応部と、を備え、
前記混合部は、2種以上の前記原料物質を混合する混合器と、前記混合器にそれぞれの前記原料物質を供給する2以上の供給配管と、を有し、
前記混合器に前記供給配管がそれぞれ接続されるとともに、
前記供給配管の少なくとも1つが、当該供給配管と前記混合器との接続部分の近傍に、前記混合器から当該供給配管へ向かう流体の移動を抑制する絞りを有し、
前記原料物質の少なくとも1つが三ハロゲン化ホウ素ガスであり、ジボランガスを目的物質として生成する、フロー式反応装置。
【請求項2】
2種以上の原料物質を連続的に反応させるフロー式反応装置であって、
1種以上の気体原料と、1種以上の液体原料とを前記2種以上の前記原料物質として混合する混合部と、
前記混合部の二次側に設けられるとともに、前記原料物質を反応させて生成物を得る反応部と、を備え、
前記混合部は、2種以上の前記原料物質を混合する混合器と、前記混合器にそれぞれの前記原料物質を供給する2以上の供給配管と、を有し、
前記混合器に前記供給配管がそれぞれ接続されるとともに、
前記気体原料を前記混合器に供給する前記供給配管の少なくとも1つが、前記混合器が設置された平面に対して上方から当該混合器に接続されるとともに、
前記液体原料を前記混合器に供給する前記供給配管の少なくとも1つが、前記混合器が設置された平面に対して平行に当該混合器に接続され、
前記気体原料の少なくとも1つが三ハロゲン化ホウ素ガスであり、ジボランガスを目的物質として生成する、フロー式反応装置。
【請求項3】
2種以上の原料物質を連続的に反応させるフロー式反応装置であって、
2種以上の前記原料物質を混合する混合部と、
前記混合部の二次側に設けられるとともに、前記原料物質を反応させて生成物を得る反応部と、を備え、
前記混合部は、2種以上の前記原料物質を混合する混合器と、前記混合器にそれぞれの前記原料物質を供給する2以上の供給配管と、を有し、
前記混合器に前記供給配管がそれぞれ接続され、
前記供給配管の少なくとも1つが、当該供給配管と前記混合器との接続部分の近傍に、前記混合器から当該供給配管へ向かう流体の移動を抑制する絞りを有するとともに、
前記供給配管の少なくとも1つが、前記混合器が設置された平面に対して上方から当該混合器に接続され、
前記原料物質の少なくとも1つが三ハロゲン化ホウ素ガスであり、ジボランガスを目的物質として生成する、フロー式反応装置。
【請求項4】
2種以上の前記原料物質が、1種以上の気体原料と、1種以上の液体原料との組み合わせである、請求項1又は3に記載のフロー式反応装置。
【請求項5】
前記反応部の二次側に設けられるとともに、前記生成物からジボランガスを分離する分離部をさらに備える、請求項1〜のいずれか一項に記載のフロー式反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロー式反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原料を反応場に連続的に供給し、連続的に化学反応させるフロー式反応装置が、注目されている。フロー式反応装置はいわゆるバッチ式の反応装置に比べて、高い生産効率で目的物質を製造でき、化学反応を人為的に制御でき、反応設備が小型で安全である等の利点を有している。
【0003】
ところが、フロー式反応装置は、原料を反応場に供給する供給配管が、化学反応で副生的に生成する固体等によって閉塞しやすいという問題がある。そこで、特許文献1〜3は、上記閉塞に対処するための技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−228666号公報
【特許文献2】特開2004−344877号公報
【特許文献3】特開2006−181525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の装置にあっては、化学反応の進行により、反応場で突発的な圧力変動等が生じると、装置内における液体の逆流が頻繁に発生する。この逆流に起因して、供給配管に液体が付着し、固体の析出が起きることにより、供給配管の閉塞が生じるという問題があった。
【0006】
そのため、特許文献1〜3に記載の装置は、装置を長時間運転すると、逆流に起因する供給配管等の閉塞が起き、原料を反応場に供給できなくなる。よって、特許文献1〜3に記載の装置は、化学反応の進行に伴い、反応効率が低下し、実用化に十分な運転時間と高い生産性とを確保できない。また、反応効率の低下により、未反応の原料物質が最終生成物に混入し、目的物質の純度等の品質が低下する。
【0007】
また、特許文献1に記載の装置は、供給配管に超音波振動を与える超音波振動子等を必須の構成としているため、反応設備の小型化、及び低コスト化に適していない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、実用化に十分な反応効率と生産性とを長時間維持でき、かつ、反応設備を小型化、及び低コスト化できるフロー式反応装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] 2種以上の原料物質を連続的に反応させるフロー式反応装置であって、2種以上の前記原料物質を混合する混合部と、前記混合部の二次側に設けられるとともに、前記原料物質を反応させて生成物を得る反応部と、を備え、前記混合部は、2種以上の前記原料物質を混合する混合器と、前記混合器にそれぞれの前記原料物質を供給する2以上の供給配管と、を有し、前記混合器に前記供給配管がそれぞれ接続されるとともに、前記供給配管の少なくとも1つが、当該供給配管と前記混合器との接続部分の近傍に、前記混合器から当該供給配管へ向かう流体の移動を抑制する抑制機構を有する、フロー式反応装置。
[2] 2種以上の原料物質を連続的に反応させるフロー式反応装置であって、2種以上の前記原料物質を混合する混合部と、前記混合部の二次側に設けられるとともに、前記原料物質を反応させて生成物を得る反応部と、を備え、前記混合部は、2種以上の前記原料物質を混合する混合器と、前記混合器にそれぞれの前記原料物質を供給する2以上の供給配管と、を有し、前記混合器に前記供給配管がそれぞれ接続されるとともに、前記供給配管の少なくとも1つが、前記混合器が設置された平面に対して上方から当該混合器に接続される、フロー式反応装置。
[3] 2種以上の原料物質を連続的に反応させるフロー式反応装置であって、2種以上の前記原料物質を混合する混合部と、前記混合部の二次側に設けられるとともに、前記原料物質を反応させて生成物を得る反応部と、を備え、前記混合部は、2種以上の前記原料物質を混合する混合器と、前記混合器にそれぞれの前記原料物質を供給する2以上の供給配管と、を有し、前記混合器に前記供給配管がそれぞれ接続され、前記供給配管の少なくとも1つが、当該供給配管と前記混合器との接続部分の近傍に、前記混合器から当該供給配管へ向かう流体の移動を抑制する抑制機構を有するとともに、前記供給配管の少なくとも1つが、前記混合器が設置された平面に対して上方から当該混合器に接続される、フロー式反応装置。
[4] 2種以上の前記原料物質が、1種以上の気体原料と、1種以上の液体原料との組み合わせである、[1]〜[3]のいずれかのフロー式反応装置。
[5] 2種以上の前記原料物質が、1種以上の気体原料と、1種以上の液体原料との組み合わせであり、前記気体原料を前記混合器に供給する前記供給配管の少なくとも1つが、前記混合器が設置された平面に対して上方から当該混合器に接続されるとともに、前記液体原料を前記混合器に供給する前記供給配管の少なくとも1つが、前記混合器が設置された平面に対して平行に当該混合器に接続される、[2]又は[3]のフロー式反応装置。
[6] 前記反応部の二次側に設けられるとともに、前記生成物から目的物質を分離する分離部をさらに備える、[1]〜[5]のいずれかのフロー式反応装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフロー式反応装置によれば、実用化に十分な反応効率と生産性とを長時間維持でき、かつ、反応設備を小型化、及び低コスト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用した第1の実施形態に係るフロー式反応装置の構成の一例を模式的に示す系統図である。
図2】第1の実施形態に係るフロー式反応装置が備える混合器を示すxy平面方向の断面図である。
図3】本発明を適用した第2又は第3の実施形態に係るフロー式反応装置の構成の一例を模式的に示す系統図である。
図4】第2の実施形態に係るフロー式反応装置が備える混合器を示すxz平面方向の断面図である。
図5】第3の実施形態に係るフロー式反応装置が備える混合器を示すxz平面方向の断面図である。
図6】実施例1における気体原料の供給量の経時変化を示す図である。
図7】実施例2における気体原料の供給量の経時変化を示す図である。
図8】実施例3における気体原料の供給量の経時変化を示す図である。
図9】比較例1における気体原料の供給量の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した一実施形態のフロー式反応装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0013】
<第1の実施形態>
まず、本発明を適用した一実施形態である第1の実施形態に係るフロー式反応装置1の構成について説明する。
図1は、フロー式反応装置1の構成の一例を模式的に示す系統図である。図1中、z軸方向は、鉛直上向きを示している。図1に示すように、フロー式反応装置1は、2種以上の原料物質を混合する混合部10と、混合部10で混合された、上記原料物質が反応する反応部20と、反応部20で生成した生成物から目的物質を分離する分離部30とを備えて構成されている。
以下にフロー式反応装置1の各構成要素に関して詳しく説明を行う。
【0014】
混合部10の構成としては、2種以上の原料物質を混合し、各原料物質を含む混合物を、反応部20に供給できる形態であれば、特に限定されない。2種以上の原料物質としては、1種以上の気体原料と1種以上の液体原料との組み合わせであってもよく、2種以上の気体原料の組み合わせであってもよく、2種以上の液体原料の組み合わせであってもよい。
以下、2種以上の原料物質が、1種以上の気体原料と1種以上の液体原料との組み合わせであり、目的物質がジボランガスである場合を一例として、第1の実施形態に係るフロー式反応装置1の混合部10の構成を説明する。
【0015】
混合部10は、1種以上の気体原料(BF、BCl等の三ハロゲン化ホウ素ガス)の供給源11と、1種以上の液体原料(NaH、NaBH等の還元剤を含む、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒)の供給源12と、気体原料の供給経路L11と、液体原料の供給経路L12と、2つの供給経路L11、L12に接続される混合器(ミキサー)13と、を有している。
【0016】
供給経路L11には、一次側(上流側)から、圧力調整弁16、マスフローコントローラ17が設けられている。さらに、供給経路L12には、一次側(上流側)から、送液ポンプ18、マスフローコントローラ19が設けられている。
【0017】
供給経路L11は、混合器13に気体原料物質を供給するための経路である。同様に、供給経路L12は、混合器13に液体原料を供給するための経路である。
供給経路L11、L12を構成する配管の材質は、気体原料又は液体原料によって腐食しない形態であれば、特に限定されず、各原料物質の性状に応じて適宜選択できる。配管の材質としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂製の配管、SUS等の金属製の配管が例示される。
【0018】
供給経路L11、L12を構成する配管の径は、特に限定されず、混合器13への各原料物質の各供給量に応じて、適宜選択できる。例えば、供給経路L11、L12を構成する配管として、外径が6〜7(mm)、内径が4〜5(mm)の配管を用いることができる。
【0019】
混合器13は、図1に示すxy平面上に水平に設置されている。混合器13は、2つの供給経路L11、L12を介してそれぞれ供給される原料物質(気体原料と液体原料との組み合わせ)を混合できる形態であれば特に限定されない。混合器13としては、ミキサー等が例示される。
混合器13は、反応部20が備える供給経路L21と接続されている。これにより、混合部10は、各原料物質の混合物を反応部20に供給できる。
【0020】
第1の実施形態では、供給経路L11の混合器13との接続部分の一次側の部分L11Aが、図1に示すxy平面上に水平に設置されている。同様に、第1の実施形態では、供給経路L12の混合器13との接続部分の一次側の部分L12Aが、図1に示すxy平面上に水平に設置されている。すなわち、第1の実施形態では、供給経路L11、L12の混合器13との接続部分の一次側の部分L11A、L12Aが、混合器13と同一平面上に水平に設置されている。
【0021】
図2は、フロー式反応装置1が備える混合器13を示すxy平面方向の断面図である。図2中に示す矢印は、各供給経路L11、L12を流れる各原料物質、及び供給経路L21を流れる原料物質の混合物の向きを示している。
【0022】
図2に示すように、第1の実施形態においては、供給経路L11が、当該供給経路L11と混合器13との接続部分の近傍に、絞りSを有している。
絞りSは、供給経路L11を構成する配管内の気体原料の流路(原料物質の流路)のうち、少なくとも一部分を狭めるためのものである。混合器13との接続部分の近傍の供給経路L11Aに絞りSが設けられていることにより、気体原料の流路の一部が狭められ、混合器13から供給経路L11に向かって液体等の流体が逆流することを防止できる。このように、絞りSは、混合器13から供給経路L11へ向かう混合器13内の流体の移動を抑制する抑制機構の一形態例である。
【0023】
絞りSの形状は、混合器13内の液体の逆流を防止できる形態であれば特に限定されない。絞りSは、原料物質の性状、供給経路L11を構成する配管の内部構造に応じて適宜選択できる。絞りSとしては、オリフィス、及び異径のティー継ぎ手等が例示される。
【0024】
図2中、S1は、供給経路L21を構成する配管の内径を示し、S2は、絞りSによって流路が局所的に狭められている部分の流路径を示す。
第1の実施形態においては、絞り比率(S2/S1)は0.1〜0.75程度が好ましい。上記絞り比率が上記下限値以上であると、気体原料の供給圧力が安定しやすく、各原料を混合器13に連続的に供給しやすくなる。上記絞り比率が上記上限値以下であると、反応部20における圧力変動に起因する液体の逆流を抑制しやすく、供給経路L11を構成する配管の閉塞を防止しやすくなる。
【0025】
図2中、S3は、気体原料の供給方向の絞りSの長さを示す。第1の実施形態においては、上記絞りの長さS3は、0.1〜10mm程度が好ましい。上記絞りの長さS3が上記下限値以上であると、絞りSの物理的な強度を維持しやすく、絞りSの損傷が起きにくい。上記絞りの長さS3が上記上限値以下であると、供給経路L11を構成する配管の閉塞が起きにくく、反応効率を長時間維持しやすくなる。
【0026】
図2中、S4は、絞り解放後の供給経路L11の長さを示す。第1の実施形態においては、気体配管側の絞り解放後長さS4は0〜10mmが好ましい。上記長さS4が上記範囲であると、合成収率の低下が起きにくい。
以上説明したS1、S2、S3、S4の各パラメータは、フロー式反応装置1を適用する化学反応系に応じて適宜選択できる。すなわち、上記各パラメータは、2種以上の原料物質の組み合わせ等に応じて適宜選択できる。
【0027】
以上の構成を備える混合部10は、気体原料と液体原料とを混合器13に連続的に供給し、混合器13で混合することにより、気体原料と液体原料とを含む混合物を反応部20に連続的に供給できる。このように混合部10は、連続的に供給される2種以上の原料物質を混合する装置の一形態例である。
なお、供給経路L11、L12には、ヒーター等の温度調節手段が設けられてもよい。これにより、供給経路L11、L12の温度を原料物質の化学反応に適した温度に調整できる。
【0028】
反応部20は、混合部10の二次側に設けられている。反応部20は、混合部10で混合された原料物質の混合物の供給経路L21と、供給経路L21に設けられた反応場21と、反応場21と分離部30との間の供給経路L21に設けられた背圧弁22と、を有している。
【0029】
供給経路L21は、混合部10と、分離部30とを結ぶ経路である。供給経路L21を構成する配管は、第1の端部が混合器13に接続され、第2の端部が分離部30に接続されている。これにより、反応部20は、供給経路L21内を流れる流体を分離部30に供給できる。
【0030】
供給経路L21を構成する配管の材質は、特に限定されず、上述した供給経路L11、L12と同様の材質を適用できる。
供給経路L21を構成する配管の径は、分離部30への混合物の供給量に応じて、適宜選択できる。具体的には、例えば、外径が1〜30mmの配管を用いることができる。
【0031】
反応場21は、2種以上の原料物質(気体原料と液体原料)が化学反応する場である。反応場21は、化学反応の反応時間を制御できる形態であれば特に限定されない。例えば、本実施形態においては、反応場21が渦巻き状の配管で構成されている。
【0032】
反応場21を構成する配管の長さは、原料物質、目的物質、化学反応の反応効率等の種々の要因に応じて適宜選択できる。例えば、反応時間を長時間に設定する場合は、反応場21の配管長を長くすればよい。反応時間を短時間に設定する場合、又は化学的に不安定な反応中間体を目的物質として製造する場合は、反応場21の配管長を短くすればよい。同様に、反応場21を構成する配管の材質は、化学反応時の温度、及び圧力等の種々の要因に応じて適宜選択できる。
【0033】
反応場21を構成する配管の内径は2mm以上が好ましい。上記内径が上記下限値以上であると、反応場21における閉塞を防止しやすいため、原料物質の供給量を十分に維持でき、高い生産性を実現しやすい。
反応場21を構成する配管の内径は30mm以下が好ましい。上記内径が上記上限値以下であると、反応場21における化学反応の反応効率が上昇しやすい。
【0034】
背圧弁22は、反応場21の圧力を制御する弁である。これにより、反応場21の圧力を原料物質の化学反応に最適な圧力に維持できるとともに、反応場21で生成する生成物を安定した流量で分離部30に供給できる。また、分離部30の一次側(上流側)に背圧弁22を設けることにより、分離部30が備える気液分離器31の減圧状態を維持しながら、上記生成物を気液分離器31に連続的に供給できる。
【0035】
以上の構成を備える反応部20によれば、混合部10で混合された原料物質を連続的に化学反応させて生成物を得ることができる。さらに、反応部20は、上記化学反応による生成物(ジボランガスと溶媒とを気液の共存状態で含む混合物)を、分離部30に連続的に供給できる。このように反応部20は、原料物質の連続的な化学反応を制御する装置の一形態例である。
【0036】
分離部30は、反応部20の二次側に設けられている。分離部30は、供給経路L21に接続される気液分離器31と、気液分離器31内の気体を気液分離器31の外側に排出する気体回収経路L31と、気液分離器31内の液体を気液分離器31の外側に排出する液体回収経路L32と、制御装置32と、を有している。
【0037】
気液分離器31は、気体と液体とを気液の共存状態で含む混合物を気体と液体とに分離して、内側に設けられた気密空間にそれぞれ貯留する容器である。
気液分離器31の内側の空間は、供給経路L21と連通している。これにより、供給経路L21を介して上記混合物が気液分離器31内に供給される。また、気液分離器31内の気密空間は、気相31Aと液相31Bとに分かれている。
【0038】
気液分離器31は、例えばSUS等の金属製の容器であってもよい。また、気液分離器31は、減圧状態(例えば20〜40kPa abs.)に耐えうることが好ましい。
気液分離器31の容積、内径、及び高さは、目的物質の収率、フロー式反応装置1の大きさ等の要因に応じて適宜選択できる。
本実施形態では、気液分離器31の内径は、50〜200mmが好ましい。上記内径が、上記下限値以上であると、気液の分離が十分に進行し、目的物質の収率が向上しやすい。また、上記内径が、上記上限値以下であると、フロー式反応装置1を小型化しやすい。
また、本実施形態では、気液分離器31の高さは、200〜800mmが好ましい。上記高さが、上記下限値以上であると、気液の分離が十分に進行し、目的物質の収率が向上しやすい。また、上記高さが、上記上限値以下であると、フロー式反応装置1を小型化しやすい。
【0039】
ここで、気液分離器31としては、気体と液体とを気液の共存状態で含む混合物を気体と液体とに分離して、内側に設けられた気密空間にそれぞれ貯留できれば、特に容器の形態に限定されない。例えば、供給経路L21と液体回収経路L32との間をつなぐ配管の一部を、少なくとも供給経路L21よりも大きな径とすることで気密空間を設ける構成としてもよい。このような構成により、気体と液体とを気液の共存状態で含む混合物を気体と液体とに分離して、内側に設けられた気密空間にそれぞれ貯留できる。
【0040】
気液分離器31には、液面計33が設けられている。液面計33は、気液分離器31の内側の空間の気相31Aと液相31Bとの界面(すなわち、液面)の高さを検出できる。ここで、液面計33としては、気液分離器31内の液面の高さを検出できる形態であれば、特に限定されない。液面計33としては、フロート式、反射式、チューブ式、透視式等の液面計が例示される。
【0041】
気体回収経路L31は、気液分離器31の気相31Aと連通する配管である。また、気体回収経路L31には、開度調整弁34と、減圧装置35とが、一次側(上流側)からこの順に設けられている。
【0042】
開度調整弁34は、気体回収経路L31を構成する配管の開度を調整する弁である。これにより、気体回収経路L31を流れる気体の流量を調整できる。
開度調整弁34としては、特に限定されないが、自動式ニードル弁、バタフライ弁等が例示される。
【0043】
減圧装置35は、気体回収経路L31内を減圧する装置である。減圧装置35としては、特に限定されないが、減圧ポンプ等が例示される。減圧装置35は、上記気液分離器31内の気相31Aから目的物質(ジボランガス)を吸引して回収するために、気体回収経路L31に設けられている。
【0044】
減圧装置35の能力としては、気液分離器31の気相31Aを所要の圧力(例えば、50〜500hPa abs.程度)に減圧できる形態であれば、特に限定されない。減圧装置35は、気液分離器31内に供給される混合物の成分に応じて適宜選択できる。減圧装置35としては、真空・減圧ポンプ(例えば、イワキ社製、「BA−106F」等)等が例示される。
【0045】
フロー式反応装置1によれば、減圧装置35を運転することにより、気液分離器31の気相31Aの圧力を、例えば、50〜500hPa abs.程度の一定の減圧状態とできる。そして、減圧装置35の二次側から目的物質(ジボランガス)を回収できる。
【0046】
このように、気体回収経路L31は、気液分離器31の気相31Aに連続的に供給される目的物質等を、流量を調整しながら気液分離器31から排出できる。
気体回収経路L31を構成する配管の材質は、特に限定されるものではなく、上記供給経路L11、L12、L21と同様の材質を適用できる。また、気体回収経路L31を構成する配管の径は、特に限定されず、上記供給経路L11、L12、L21と同様の径の配管を用いることができる。
【0047】
なお、気体回収経路L31の減圧装置35の二次側には、回収した目的物質(ジボランガス)の収量を計測する流量計、上記目的物質を保管する容器、上記目的物質を精製する精製器、又は上記目的物質の濃度を分析する分析器(例えば、FT−IR等)等の機器を必要に応じて適宜設けられてもよい。また、気体回収経路L31は、減圧装置35の二次側で、後段の反応装置等と接続されてもよい。
【0048】
液体回収経路L32は、気液分離器31の液相31Bと連通する配管である。液体回収経路L32には、開閉弁(開閉装置)36が設けられている。
開閉弁36は、液体回収経路L32を構成する配管の開閉を切り替える形態であれば特に限定されない。開閉弁36としては、手動ダイヤフラム弁、ボール弁等が例示される。
【0049】
開閉弁36を開状態とすることで、気液分離器31内から液体回収経路L32への液体の排出を開始できる。一方、開閉弁36を閉状態とすることで、気液分離器31から液体回収経路L32への液体の排出を停止できる。これにより、液体回収経路L32は、気液分離器31に連続的に供給される液体を排出できる。
【0050】
液体回収経路L32を構成する配管の材質は、特に限定されるものではなく、上記供給経路L11、L12、L21ないし気体回収経路L31と同様の材質を適用できる。また、液体回収経路L32を構成する配管の径は、特に限定されず、上記供給経路L11、L12、L21ないし気体回収経路L31と同様の径の配管を用いることができる。
【0051】
なお、液体回収経路L32の開閉弁36の二次側には、エバポレーター等の溶媒を凝縮できる精製装置が設けられてもよい。これにより、気液分離器31内から排出されたエーテル系溶媒は、上記精製装置に導入される。これにより、凝縮、精製されたエーテル系溶媒を液体原料として再利用できる。上記溶媒に混入している固体は、溶媒と分離され、固体として廃棄される。
また、上記精製装置では、エーテル系溶媒中に溶存するジボランガスが上記液体から分離され回収される。これにより、目的物質(ジボランガス)をさらに高効率で回収できる。
【0052】
制御装置32は、運転制御系として、各駆動部の駆動を行うコントローラと、各コントローラの制御を行う制御部とを備えている。各コントローラは、例えば、PID制御器等からなり、液面計33、開度調整弁34、開閉弁36等に備えられたアクチュエーター等と電気的に接続されており、各部の起動・停止・調整等を行う。これにより、各コントローラは、気液分離器31内の圧力、及び液面の高さ等の条件を一定に制御できる。
【0053】
以上の構成を備える分離部30によれば、反応部20で生成した生成物(ジボランガスと溶媒とを気液の共存状態で含む混合物)から、目的物質であるジボランガスを分離できる。このように、分離部30は、少なくとも気体と液体とを気液の共存状態で含む混合物から気体と液体とを分離して、それぞれを回収する装置の一形態例である。
【0054】
以下、フロー式反応装置1の運転方法の一例について、説明する。
まず、混合部10において、液体原料の供給源12から、供給経路L12を介して、マスフローコントローラ19によって流量を調整しながら、送液ポンプ18によって混合器13にエーテル系溶媒を連続的に供給する。
【0055】
次に、気体原料の供給源11から供給経路L11を介して、BF、BCl等の三ハロゲン化ホウ素ガスを、圧力調整弁16によって圧力を、マスフローコントローラ17によって流量を、それぞれ調整しながら混合器13に供給する。
【0056】
ここで、液体原料の供給条件は、特に限定されず、種々の要因に応じて適宜選択できる。例えば、液体原料の供給に際しては、圧力0.1〜1.5MPaG、流量50〜2000mL/分、濃度0.25〜2mol/Lの条件を適用できる。同様に、気体原料の供給条件は、特に限定されず、種々の要因に応じて適宜選択できる。例えば、気体原料の供給に際しては、圧力0.1〜1.5MPaG、流量1.5〜3L/分、濃度100mol%の条件を適用できる。
【0057】
混合器13では、気体原料と液体原料とが混合される。気体原料と液体原料との混合の態様は特に限定されない。例えば、気体原料と液体原料とを交互に連続的に供給し、気体原料と液体原料とが小さなセグメント状に交互に分割されているプラグ流を形成して混合してもよい。これにより、気体原料と液体原料とを即座に混合でき、かつ、高い混合均一性を実現できる。
【0058】
反応部20では、混合された気体原料と液体原料とが連続的に反応する。これにより、目的物質であるジボランガスとエーテル系溶媒とを気液の共存状態で含む生成物が連続的に生成する。なお、上記生成物中には、反応の副生成物が含まれることがある。
上記生成物は、供給経路L21に設けられた背圧弁22を介して気液分離器31内に、安定流量で連続的に供給される。この間、気液分離器31内では、背圧弁22により減圧状態が維持される。
【0059】
ここで、反応部20の反応条件は、特に限定されず、種々の要因に応じて適宜選択できる。例えば、上記生成物の生成に際しては、反応場21における滞留時間1秒〜10分、反応場21の圧力0.01〜1MPaGの条件を適用できる。
【0060】
気液分離器31内に供給された生成物は、ジボランガスとエーテル系溶媒とに分離されて、気液分離器31内で気相31Aと液相31Bとをそれぞれ形成する。気液分離器31内は、気相31Aと連通する気体回収経路L31に設けられた減圧装置35によって、減圧される。
【0061】
気液分離器31内の減圧状態は、制御装置32によって一定に保たれるように制御される。気液分離器31内の圧力、及び液面の高さ等の条件は、特に限定されず、種々の要因に応じて適宜選択できる。例えば、気液分離器31内の圧力を20〜40kPa abs.とし、気液分離器31内の液面の高さを気液分離器31の底部から70〜100mmとする条件を適用できる。
【0062】
ここで、気液分離器31内のジボランガスは、減圧装置35の二次側から回収される。なお、回収したジボランガスは、後段に設けられた精製器等で精製した後に回収してもよいし、後段に設けられた反応装置等へ供給してもよい。
【0063】
気液分離器31内に生成物を連続的に供給し、ジボランガスを回収すると、気液分離器31内の液相31Bが増加し、液面が上昇する。上記液面の位置が液面計33に入力された所定の設定値に到達すると、その信号値が制御装置32に送信される。
次に、制御装置32から開閉弁36に開信号が送信される。信号を受けた開閉弁36が開状態となり、気液分離器31内のエーテル系溶媒は、液体回収経路L32に排出される。これにより、副生成物を含むエーテル系溶媒が回収される。なお、排出されたエーテル系溶媒、及び副生成物は、後段に設けられた精製器等で精製した後に回収してもよいし、液体原料の供給源12に供給して再利用してもよい。
【0064】
上記エーテル系溶媒を回収すると、気液分離器31内の液相31Bが減少し、液面が下降する。上記液面の位置が液面計33に入力された所定の設定値に到達すると、その信号値が制御装置32に送信され、制御装置32から開閉弁36へ閉信号が送られる。信号を受けた開閉弁36が閉状態となり、気液分離器31内のエーテル系溶媒の、液体回収経路L32への排出が停止される。
【0065】
以上説明したように、フロー式反応装置1は、気体原料と液体原料とを連続的に供給し、これらの原料を連続的に反応させ、目的物質であるジボランガスを連続的に製造できる。なお、本実施形態では、ジボランガス製造を一例としてフロー式反応装置1について説明したが、その他の化学物質の製造にも適用できる。
【0066】
例えば、フロー式反応装置1は、原料物質として、酢酸、塩酸等の酸と、NaH,NaBH等の水素化金属とを用いて、水素を製造する構成としてもよい。また、原料として、炭酸カルシウムと、塩酸とを用いて、二酸化炭素を製造する構成としてもよい。また、原料として、過塩素酸と、塩酸とを用いて、塩素ガスを製造する構成としてもよい。なお、ここで例示した化合物は一例であり、フロー式反応装置1の適用はこれらの例示に限定されない。
【0067】
以上説明した第1の実施形態に係るフロー式反応装置1によれば、化学反応により反応場21の圧力が突発的に変動し、混合器内で液体が逆流しようとしても、当該液体を絞りSによって押し戻すことができる。そのため、フロー式反応装置1は、混合器内で液体が逆流しにくく、逆流に起因する供給経路の閉塞を防止できる。したがって、フロー式反応装置1は、気体原料を混合器に連続的に供給できるため、長期間装置の運転をしても反応効率が低下しにくく、高い生産性を維持できる。
【0068】
また、フロー式反応装置1は、供給経路L11の内部に、絞りSを設けることで配管の閉塞を防止できる。絞りSは、超音波振動子等の機器のような複雑な構成を必要としないため、装置の小型化、及び低コスト化を実現できる。
【0069】
第1の実施形態に係るフロー式反応装置1は、供給された原料物質が混合器13に滞留しても、化学反応の反応効率等に影響を与えにくい化学反応系に好適に適用できる。
【0070】
(第1の実施形態の変形例1)
以下、第1の実施形態の変形例1に係るフロー式反応装置について説明する。第1の実施形態の変形例1においては、供給経路L12と、混合器13との接続部分の近傍の供給経路L12Aに絞りSが設けられており、供給経路L11と、混合器13との接続部分の近傍の供給経路L11Aに絞りSが設けられていない点においてフロー式反応装置1と異なり、これ以外は、上述したフロー式反応装置1と同様の構成を備えている。
第1の実施形態の変形例1に係るフロー式反応装置でも、フロー式反応装置1と同様の作用効果が得られる。
【0071】
(第1の実施形態の変形例2)
以下、第1の実施形態の変形例2に係るフロー式反応装置について説明する。第1の実施形態の変形例2においては、供給経路L11と混合器13との接続部分の近傍の供給経路L11Aと、供給経路L12と混合器13との接続部分の近傍の供給経路L12Aとの両方に絞りSが設けられている点においてフロー式反応装置1と異なり、これ以外は、上述したフロー式反応装置1と同様の構成を備えている。
第1の実施形態の変形例2に係るフロー式反応装置でも、フロー式反応装置1と同様の作用効果が得られる。
【0072】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態に係るフロー式反応装置2の構成について説明する。
図3は、フロー式反応装置2の構成の一例を模式的に示す系統図である。図3中、z軸方向は、図1同様に鉛直上向きを示している。図3に示すように、第2の実施形態に係るフロー式反応装置2は、混合器13の代わりに混合器14を備えている。また、第2の実施形態では、供給経路L11の混合器14との接続部分の一次側の部分L11Aが、図3に示すxy平面に対して上方から混合器14に接続されている。
第2の実施形態に係るフロー式反応装置2は、以上説明した構成においてフロー式反応装置1と異なり、これら以外は上述したフロー式反応装置1と同様の構成を備えている。以下、フロー式反応装置1と同一の構成部分についての説明を省略する。
【0073】
図4は、フロー式反応装置2が備える混合器14を示すxz平面方向の断面図である。図4に示すように、第2の実施形態においては、供給経路L11の混合器14との接続部分の一次側の部分L11Aが、xy平面に対して上方からz軸方向に、すなわち鉛直上方から、混合器14に接続されている。なお、第2の実施形態においては、混合器14と各供給経路L11、L12の接続部分の近傍の各供給経路には、絞りが設けられていない。
【0074】
第2の実施形態においては、気体原料が供給経路L11を介して、混合器14の上方(z軸方向)から導入される。これにより、供給経路L11に向かって液体が逆流しようとしても、気体原料の供給により、当該液体を上から押し戻すことができる。また、混合器14内の液体が供給経路L11に向かって逆流しようとしても、気体原料の供給に加えて、重力の作用により、当該液体が、逆流しにくくなる。
【0075】
以上説明した第2の実施形態に係るフロー式反応装置2によれば、混合器14内の液体が逆流しにくく、当該液体が仮に逆流したとしても、当該液体は、重力の作用を受け、供給経路L11を構成する配管から速やかに導出されやすく、当該配管に長期間滞留しにくい。これにより、液体の乾燥、及び固体の析出に起因する閉塞が起きにくくなる。よって、フロー式反応装置2は、第1の実施形態に係るフロー式反応装置1と同様の作用効果を奏する。
【0076】
第2の実施形態に係るフロー式反応装置2は、化学反応に際して、2種以上の原料物質間における圧縮性の差が少ない化学反応系、化学反応による圧力変動が少ない化学反応系等に好適に適用できる。
【0077】
(第2の実施形態の変形例)
以下、第2の実施形態の変形例に係るフロー式反応装置について説明する。第2の実施形態の変形例においては、供給経路L11の混合器14との接続部分の一次側の部分L11Aが、z軸に対してω°の角度を形成して、xy平面に対して上方から混合器14に接続されている点においてフロー式反応装置2と異なり、これ以外は、上述したフロー式反応装置2と同様の構成を備えている。
上記ωは、0〜45°の範囲内に設定することが好ましい。上記ωが上記上限値以下であると、混合器14内の液体が仮に逆流したとしても、当該液体が、供給経路L11を構成する配管から速やかに導出されやすくなる。
第2の実施形態の変形例に係るフロー式反応装置でも、フロー式反応装置2と同様の作用効果が得られる。
【0078】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態に係るフロー式反応装置3の構成について説明する。
図3は、フロー式反応装置3の構成の一例を模式的に示す系統図である。図3に示すように、第3の実施形態に係るフロー式反応装置3は、混合器13、14の代わりに混合器15を備えている。また、第3の実施形態では、供給経路L11の混合器15との接続部分の一次側の部分L11Aが、図3に示すxy平面に対して上方から混合器15に接続されている。
第3の実施形態に係るフロー式反応装置3は、以上説明した構成においてフロー式反応装置1と異なり、これら以外は上述したフロー式反応装置1と同様の構成を備えている。以下、フロー式反応装置1と同一の構成部分についての説明を省略する。
【0079】
図5は、フロー式反応装置3が備える混合器15を示すxz平面方向の断面図である。図5に示すように、第3の実施形態においては、供給経路L11と混合器15との接続部分の近傍の供給経路L11Aに絞りSが設けられている。
混合器15との接続部分の近傍の供給経路L11Aに絞りSが設けられていることにより、混合器15から供給経路L11に向かって液体が逆流することを防止できる。なお、絞りSの形状、種類、絞り比率(S2/S1)、絞りの長さS3、絞り解放後長さS4等の詳細な構成は、第1の実施形態で説明した内容と同様の構成とすることができる。
【0080】
図5に示すように、第3の実施形態においては、供給経路L11の混合器15との接続部分の一次側の部分L11Aが、xy平面に対して上方からz軸方向、すなわち鉛直上方から、混合器15に接続されている。これにより、供給経路L11に向かって液体が逆流しても、気体原料の供給により、逆流した液体を上から押し戻すことができる。また、混合器15内の液体が供給経路L11に向かって逆流しても、逆流した液体が、重力の作用を受けてすみやかに供給経路L11から導出される。
【0081】
以上説明した第3の実施形態に係るフロー式反応装置3によれば、第1の実施形態に係るフロー式反応装置1と同様の作用効果が得られるほか、実用化に十分な生産性と反応効率をより長時間維持できる。また、フロー式反応装置3は、フロー式反応装置1、2に比べて、混合器内部の逆流の防止効果及び滞留抑制効果が強いため、1MPaG程度の高圧の目的物質(ジボランガス)であっても連続的に製造できることに加え、液体の乾燥及び固体の析出に起因する閉塞が起きにくくなるため、フロー式反応装置の稼動及び停止を任意に何度でも繰り返し行うことができる。
【0082】
(第3の実施形態の変形例1)
以下、第3の実施形態の変形例1に係るフロー式反応装置について説明する。第3の実施形態の変形例1においては、供給経路L12と、混合器15との接続部分の近傍の供給経路L12Aに絞りSが設けられており、供給経路L11と、混合器15との接続部分の近傍の供給経路L11Aに絞りSが設けられていない点においてフロー式反応装置3と異なり、これ以外は、上述したフロー式反応装置3と同様の構成を備えている。
第3の実施形態の変形例1に係るフロー式反応装置でも、フロー式反応装置3と同様の作用効果が得られる。
【0083】
(第3の実施形態の変形例2)
以下、第3の実施形態の変形例2に係るフロー式反応装置について説明する。第3の実施形態の変形例2においては、供給経路L11と混合器15との接続部分の近傍の供給経路L11Aと、供給経路L12と混合器15との接続部分の近傍の供給経路L12Aとの両方に絞りSが設けられている点においてフロー式反応装置3と異なり、これ以外は、上述したフロー式反応装置3と同様の構成を備えている。
第3の実施形態の変形例2に係るフロー式反応装置でも、フロー式反応装置3と同様の作用効果が得られる。
【0084】
<他の実施形態例>
以下、本発明の他の実施形態例に係るフロー式反応装置の構成について説明する。
本実施形態例のフロー式反応装置は、分離部30が、減圧装置35に加えて、第2の減圧装置を備えている以外は、上述したフロー式反応装置1と同様の構成を備えている。
【0085】
第2の減圧装置は、液体回収経路L32に設けられている。これにより、第2の減圧装置は、液体回収経路L32内を減圧できる。また、第2の減圧装置は、制御装置32と電気的に接続されている。
【0086】
第2の減圧装置の能力としては、気液分離器31内の圧力(気相31Aの圧力)と同等以上に減圧できる形態であれば、特に限定されず、減圧装置35の能力に応じて適宜選択できる。また、第2の減圧装置は、減圧装置35と同じものであってもよいし、異なっていてもよい。
【0087】
本実施形態例では、気液分離器31の液相31Bの液面の位置が液面計33に入力された所定の設定値に到達すると、その信号値が制御装置32に送信され、制御装置32から第2の減圧装置へ運転信号が送られる。これにより、第2の減圧装置は、気液分離器31内の圧力よりも、液体回収経路L32が低い圧力となるような条件で運転を開始する。
【0088】
以上説明した他の実施形態例に係るフロー式反応装置によれば、液体回収経路L32を気液分離器31内よりも減圧状態とできる。そのため、本実施形態例によれば、液体回収経路L32を介して、気液分離器31内から液相31Bから液体を回収しやすくできるともに、減圧状態である気液分離器31内に空気が混入しにくくできる。
【0089】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されない。また、本発明は特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が加えられてよい。
例えば、以上説明した実施形態においては、液体原料の供給経路L12の混合器との接続部分の一次側の部分L12Aがxy平面上に配置され、混合器に接続されているが、上記部分L12が、xy平面に対して上方から混合器に接続されていてもよい。
他にも、ミキサー等の混合器を用いずに、供給経路L11の二次側の端部と、供給経路L12の二次側の端部とを接続し、供給経路L11と、供給経路L12とが合流する合流部分を、混合器の代わりに用いて、当該合流部分で2種以上の原料物質を混合する構成を採用してもよい。
【0090】
<実施例>
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0091】
(実施例1)
第1の実施形態に係るフロー式反応装置1を用いて、連続的にジボランガスを合成した。具体的な反応条件としては、気体原料としてBFを用い、液体原料としてエーテルに還元剤を溶解させたエーテル系溶媒を用いた。さらに、絞りSの絞り比率(S2/S1)を0.25、絞りの長さS3を1mm、絞り解放後長さを0mmとした。
【0092】
使用した液体原料は、L32の二次側(下流側)に設けられたエバポレーター(図示略)によって蒸留、及び精製し、再度液体原料の供給源12に導入して循環させて再利用した。気体回収経路L31から回収されたジボランガスの流量を、減圧装置35の二次側に設置した浮き子式流量計(図示略)で測定した。また、製造したジボランガスの純度を減圧装置35の二次側に設置したFT−IR(図示略)で測定した。
【0093】
図6は、実施例1における気体原料の供給量の経時変化を示す図である。図6に示すとおり、実施例1では、35分以上、BFガスを連続的に供給でき、ジボランガスを連続的に合成できた。また、流量計で測定した結果、ジボランガスの収率は、85〜90%程度であった。得られたジボランガスをFT−IRで分析した結果、ジボランガスの純度は99mol%であった。
なお、実施例1において、BFガスの供給開始40分後にBFガスの供給を停止し、合成反応を停止させたのち、再度合成反応を開始させようとした。その結果、図1中の横軸の50分前後のピークに示すように、実施例1のフロー式反応装置の合成反応の停止中に供給経路の配管が閉塞し、合成反応を再開させようとしてもBFガスを供給できなかった。
【0094】
(実施例2)
第2の実施形態に係るフロー式反応装置2を用いた以外は、実施例1と同様の条件でジボランガスを合成した。
【0095】
図7は、実施例2における気体原料の供給量の経時変化を示す図である。図7に示すとおり、実施例2では、20分程度、BFガスを連続的に供給でき、ジボランガスを連続的に合成できた。しかし、その後、BFガスの供給量が急速に低下し、供給経路の配管の閉塞等が示唆された。また、流量計で測定した結果、ジボランガスの収率は、85〜90%程度であった。得られたジボランガスをFT−IRで分析した結果、ジボランガスの純度は99mol%であった。
【0096】
(実施例3)
第3の実施形態に係るフロー式反応装置3を用いた以外は、実施例1と同様の条件でジボランガスを合成した。
【0097】
図8は、実施例3における気体原料の供給量の経時変化を示す図である。図8に示すとおり、実施例3では、160分以上、BFガスを連続的に供給でき、ジボランガスを連続的に合成できた。また、流量計で測定した結果、ジボランガスの収率は、85〜90%程度であった。得られたジボランガスをFT−IRで分析した結果、ジボランガスの純度は99%であった。なお、エバポレーターで回収した溶媒をFT−IRで分析した結果、気体原料であるBFガスの残留は確認されなかった。
なお、実施例3においても実施例1のように合成反応を停止させたのち、再度合成反応を開始させようとした。その結果、合成反応の停止中に供給経路の配管の閉塞等を示唆する兆候はなく、合成反応を停止する前と同様にBFガスをスムーズに供給できた。
【0098】
(比較例1)
図1に示すフロー式反応装置において、混合器13を絞りのない混合器に置換するとともに、供給経路L11と、当該混合器との接続部分の一次側の部分L11Aを、当該混合器の鉛直上方ではなく、xy平面上に水平に設置した以外は、実施例1と同様にしてジボランガスを合成した。
【0099】
図9は、比較例1における気体原料の供給量の経時変化を示す図である。図9に示すとおり、比較例では運転開始から15分を経過すると、気体原料の供給量が不安定化し、20分を経過すると、気体原料をまったく供給できなくなった。供給経路L11の内部を目視で確認すると、溶媒と固体の析出が確認され、逆流による配管閉塞が示唆された。運転開始から15分以下までの間では、ジボランガスの純度、収率ともに各実施例と大きな差は認められなかったが、15分経過以降は、ジボランガスの収量が大きく減少し、ジボランガスの純度も低下した。
【0100】
以上の実施例及び比較例の結果より、実施例1〜3のフロー式反応装置は、連続的に長時間、装置を運転できることが示された。また、実施例3のフロー式反応装置は、合成反応の停止及び再開を繰り返すことができることが示された。
なお、各実施例で得られたジボランガスの収率は、実用化に十分な水準であった。さらに、ジボランガスの純度は高く、高品質のジボランガスが得られた。
【符号の説明】
【0101】
1,2,3…フロー式反応装置、10…混合部、11…気体原料の供給源、12…液体原料の供給源、13,14,15…混合器、16…圧力調整弁、17…マスフローコントローラ、18…送液ポンプ、19…マスフローコントローラ、20…反応部、21…反応場、22…背圧弁、30…分離部、31…気液分離器、31A…気相、31B…液相、32…制御装置、33…液面計、34…開度調整弁、35…減圧装置、36…開閉弁、L11、L12、L21…供給経路、L31…気体回収経路、L32…液体回収経路、S…絞り、S1…内径、S2…流路径、S3…絞りの長さ、S4…絞り解放後の供給経路の長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9