(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6760931
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】インスリン特性を改善するためのホエイタンパク質ミセル及び多糖類の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/20 20060101AFI20200910BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20200910BHJP
A61K 31/723 20060101ALI20200910BHJP
A61K 31/734 20060101ALI20200910BHJP
A61K 31/732 20060101ALI20200910BHJP
A61K 31/731 20060101ALI20200910BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20200910BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20200910BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20200910BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20200910BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20200910BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20200910BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20200910BHJP
A23L 33/19 20160101ALI20200910BHJP
A23L 29/231 20160101ALI20200910BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20200910BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20200910BHJP
A23L 29/25 20160101ALI20200910BHJP
A23C 21/08 20060101ALI20200910BHJP
A23C 9/12 20060101ALI20200910BHJP
A23L 2/38 20060101ALI20200910BHJP
A23L 2/66 20060101ALI20200910BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
A61K35/20
A61K31/715
A61K31/723
A61K31/734
A61K31/732
A61K31/731
A61P3/10
A61P3/00
A61P7/00
A61P43/00 121
A61K9/107
A61K38/16
A61K9/10
A23L33/19
A23L29/231
A23L29/269
A23L29/256
A23L29/25
A23C21/08
A23C9/12
A23L2/38 P
A23L2/00 J
A23L2/00 F
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-521253(P2017-521253)
(86)(22)【出願日】2015年11月9日
(65)【公表番号】特表2018-502052(P2018-502052A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】EP2015076074
(87)【国際公開番号】WO2016078952
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2018年10月23日
(31)【優先権主張番号】14193824.1
(32)【優先日】2014年11月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, クリストフ ジョセフ エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】プトー, エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ポパ ニタ, シミナ フローレンティナ
(72)【発明者】
【氏名】ドナト−カペル, ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ボヴェット, リオネル ジャン レネ
【審査官】
渡部 正博
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−508057(JP,A)
【文献】
特表2007−528228(JP,A)
【文献】
特表2009−509537(JP,A)
【文献】
Food Res Int,2012年,Vol.49,p.560-566
【文献】
Milk Sci,2002年,Vol.51, No.1,p.23-26
【文献】
調理科学,1986年,Vol.19, No.2,p.8-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
A61K 31/00−31/80
A61K 9/00−9/72
A61K 38/00−38/58
A61P 1/00−43/00
A23L 2/00−2/84
A23L 29/00−29/30
A23L 33/00−33/29
A23C 9/00−9/20
A23C 21/00−21/10
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における食後血漿インスリンの上昇に関連した疾患の治療又は予防における使用のための、多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含む組成物であって、前記多糖類はpH値2.5〜4.5の範囲で負のζ(ゼータ)電位を有し、かつ、アルギネート、キサンタン、ペクチン、カラヤゴム、アラビアゴム、及びカラギーナンからなる群から選ばれるものであり、多糖類に対するホエイタンパク質ミセルの重量比は30:1〜0.8:1であり、前記ホエイタンパク質ミセルは、ミネラル除去した未変性ホエイタンパク質水溶液のpHを5.8〜6.6の値に調整し、前記水溶液を80〜98℃の温度に10秒〜2時間かけることによって得ることが可能なものである、組成物。
【請求項2】
前記疾患が、糖尿病(例えば妊婦糖尿病)、グルコース代謝の障害、高インスリン血症、又はインスリン抵抗性からなる群から選択される、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記対象が糖尿病患者又は糖尿病前症患者である、請求項1又は2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記組成物が、多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む液体組成物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記組成物の前記タンパク質含量が0.1〜22重量%であり、前記組成物が熱処理された組成物である、請求項4に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記多糖類と前記ホエイタンパク質ミセルとが多糖類−ホエイタンパク質ミセル複合体の形態である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記組成物が飲料又はヨーグルトの形態である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含む組成物の、食後血漿インスリン濃度を低減するための非治療的使用であって、前記多糖類はpH値2.5〜4.5の範囲で負のζ電位を有し、かつ、アルギネート、キサンタン、ペクチン、カラヤゴム、アラビアゴム、及びカラギーナンからなる群から選ばれるものであり、多糖類に対するホエイタンパク質ミセルの重量比は30:1〜0.8:1であり、前記ホエイタンパク質ミセルは、ミネラル除去した未変性ホエイタンパク質水溶液のpHを5.8〜6.6の値に調整し、前記水溶液を80〜98℃の温度に10秒〜2時間かけることによって得ることが可能なものである、組成物の非治療的使用。
【請求項9】
前記組成物が、多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む液体組成物である、請求項8に記載の非治療的使用。
【請求項10】
前記組成物の前記タンパク質含量が0.1〜22重量%であり、前記組成物が熱処理された組成物である、請求項9に記載の非治療的使用。
【請求項11】
前記多糖類と前記ホエイタンパク質ミセルとが多糖類−ホエイタンパク質ミセル複合体の形態である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の組成物の非治療的使用。
【請求項12】
多糖類−ホエイタンパク質ミセル複合体を形成するための方法であって、
a.ミネラル除去した未変性ホエイタンパク質水溶液のpHを5.8〜6.6の値に調整し、前記水溶液を80〜98℃の温度に10秒〜2時間かけることによってホエイタンパク質ミセルを形成する工程と、
b.多糖類をホエイタンパク質ミセルの水性分散液と組み合わせ、前記多糖類がpH値2.5〜4.5の範囲で負のζ電位を有し、かつ、アルギネート、キサンタン、ペクチン、カラヤゴム、アラビアゴム、及びカラギーナンからなる群から選ばれるものであり、多糖類に対するホエイタンパク質ミセルの重量比が30:1〜0.8:1である、多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む組成物を形成する工程と、
c.多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む前記組成物のpHがあらかじめ2.5〜4.5でない場合に、前記組成物のpHを2.5〜4.5に調整して多糖類−ホエイタンパク質ミセル複合体を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項13】
多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む前記組成物を、72℃より高い温度まで少なくとも3秒間加熱することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記多糖類が、アルギネート、キサンタン、ペクチン、カラヤゴム、アラビアゴム、カラギーナン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12又は13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象における食後血漿インスリンの上昇に関連した疾患の治療又は予防に使用するための、多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含む組成物に関する。本発明はまた、多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含む組成物の、食後血漿インスリン濃度を低減するための非治療的使用にも関する。本発明の更なる態様は、多糖類−ホエイタンパク質ミセル複合体を形成するためのプロセスである。
【背景技術】
【0002】
全世界において、約2億8000万人の人々が2型糖尿病であると推定されている。発病率は世界の異なる地域において大きく異なるが、これはほぼ間違いなく、遺伝、栄養、環境、及び生活様式の要因によるものである。米国においては、概算で2100万人の患者が糖尿病であると診断され、その90%が2型糖尿病であり、更に810万人の人々が診断未確定の糖尿病罹患者であると推定されている。糖尿病は、米国における7番目の主な死因となっている。米国において糖尿病にかかった全費用は、2012年に2450億ドルであった。伝統的に成人の病気であると考えられてきた2型糖尿病が、小児期の食事パターンや生活様式の変化による肥満率の上昇に伴い、小児において多く診断されつつある。
【0003】
糖尿病の主な早期発症は、食事に対するインスリンの反応、すなわち、より具体的には、第1相のインスリン放出が異常となったときにみることができ(Gerich JE,2002,Diabetes,51:S117〜S121)、経時的に高血糖が不可避となる。次いで、慢性高血糖症によってインスリン要求量が上昇し、やがてβ細胞が分泌機能不全となり、膵臓のβ細胞の疲弊を引き起こす(Porte DJ,2001,Diabetes Metab Res Rev,17(3):181〜188)。インスリン分泌の機能不全は、肝臓及び抹消のインスリン作用の機能不全と平行して出現するものと考えられており、空腹時高血中インスリンを誘発するインスリン抵抗性とみなされる。インスリン分泌及びインスリン抵抗性が高まると、両者が協働して血中インスリンを上昇させ、2型糖尿病の発症に好都合な状態となる。その結果、食後血中インスリンが低下し、反応が適切であることは、健康な対象又は糖尿病前症者の生体によって、インスリンが適切に分泌され、適切に利用されていることの徴候となり得る。この食後血中インスリンの低減により、膵臓の機能が保全され、同時にインスリン感受性が改善される。長期的には、食後のインスリン要求量を低減することにより、(1)糖尿病前症者における2型糖尿病発症のリスク、及び(2)2型糖尿病における血糖調節の悪化を低減することができる。
【0004】
タンパク質はインスリン分泌を促進することが知られており、高タンパク食には、2型糖尿病患者において血漿グルコース及び空腹時トリグリセリドを低下させる潜在力がある[Van Loon LJ et al.,2000,Am J Clin Nutr 72:96〜105、Gannon MC et al.,2003,Am J Clin Nutr 78:734〜741]。最近の研究では、2型糖尿病患者における高脂肪試験食後の食後脂肪血症に対する、異なる種類のタンパク質による急性効果が評価されている[Mortensen LS et al.,2009,Am J Clin Nutr.90:41〜48]。この研究では、タンパク源が異なる4つの等カロリー食、すなわち、ホエイ、カゼイン、グルテン、及びタラタンパク質が比較され、これらの患者における食後脂肪血症の低減には、ホエイタンパク質が最も効果的であるとの結論となった。Shertzer HGらによって発表された更なる研究[2011,J Nutr 141:582〜587]によると、マウスに投与した食餌のホエイタンパク質分離物が、代謝性疾患のリスク及び高脂肪食の摂取に関連する糖尿病発症のリスクを低減した。
【0005】
国際公開第2011/112695号は、ホエイタンパク質がもたらす健康上の利益として、糖尿病患者に好適な血糖の調節があることを開示している。国際公開第2013/057232号は、ホエイタンパク質ミセルが、対象における食後血漿インスリンの上昇に関連した疾患の治療又は予防に使用され得ることを開示している。
【0006】
食品業界において、糖尿病患者、糖尿病発症のリスクがある対象、及びグルコース代謝に障害がある対象に提供する栄養学的解決策を更に改善する必要性が依然として残っている。
【0007】
本発明の目的は、最新技術を改善し、患者、特に糖尿病患者又は糖尿病前症者における食後インスリン特性を改善するための、新規のより良い栄養学的解決策を提供することである。
【0008】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項が、本発明の着想を更に発展させる。
【0009】
それに応じて、本発明は、第1の態様において、対象における食後血漿インスリンの上昇に関連した疾患の治療又は予防に使用するための、多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含む組成物を提供し、多糖類はpH値2.5〜4.5の範囲で負のζ(ゼータ)電位を有し、多糖類に対するホエイタンパク質ミセルの重量比は30:1〜0.8:1である。
【0010】
更なる態様において、本発明は、多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含む組成物の、食後血漿インスリン濃度を低減するための非治療的使用に関し、多糖類はpH値2.5〜4.5の範囲で負のζ電位を有し、多糖類に対するホエイタンパク質ミセルの重量比は30:1〜0.8:1である。
【0011】
また、更なる態様において、本発明は、多糖類−ホエイタンパク質ミセル複合体を形成するためのプロセスに関し、このプロセスは、
(a)多糖類をホエイタンパク質ミセルの水性分散液と組み合わせ、多糖類がpH値2.5〜4.5の範囲で負のζ電位を有し、多糖類に対するホエイタンパク質ミセルの重量比が30:1〜0.8:1である、多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む組成物を形成する工程と、
(b)多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む組成物のpHがあらかじめ2.5〜4.5でない場合に、組成物のpHを2.5〜4.5に調整して多糖類−ホエイタンパク質ミセル複合体を形成する工程と、を含む。
【0012】
「ホエイタンパク質ミセル」は、本明細書において、欧州特許第1839492(A1)号に記載のとおり定義される。特に、「ホエイタンパク質ミセル」は、欧州特許第1839492(A1)号に開示されているプロセスによって得ることができるホエイタンパク質ミセル濃縮物中に含まれるミセルである。この開示において、ホエイタンパク質ミセル濃縮物の調製プロセスは、
a)ホエイタンパク質水溶液のpHを3.0〜8.0の値に調整する工程と、
b)水溶液を80〜98℃の温度にかける工程と、
c)工程b)で得られた分散液を濃縮する工程と、を含む。この工程によって、調製されたミセルは非常に鋭いサイズ分布を有し、調製されたミセルの80%超が直径1ミクロン未満のサイズを有し、好ましくは100nm〜900nmのサイズである。「ホエイタンパク質ミセル」は液体濃縮物又は粉末形態とすることもできる。重要であるのは、濃縮物、粉末において、また粉末から例えば水で再構成する際に、ホエイタンパク質の基本的なミセル構造が維持されることである。「ホエイタンパク質ミセル」は、分散液中で、粉末として、更に噴霧乾燥中又は凍結乾燥中も、物理的に安定である。
【0013】
「インスリン」は、食事に反応して膵臓のβ細胞によって分泌されるホルモンである。インスリンは、生体における炭水化物及び脂肪代謝制御の中核である。
【0014】
高インスリン分泌促進性栄養物は、β細胞に対して慢性的な刺激となり、細胞の適応肥大及び進行性の調節異常を誘発し、その結果、食後高インスリン血症をもたらす。食後高インスリン血症は体重増加、脂肪沈着、並びにインスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、グルコース不耐性、及び2型糖尿病の発症を促進し得る(Kopp W.,Metabolism.2003,Jul;52(7):840〜844)。
【発明の概要】
【0015】
驚くべきことに、多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含む組成物の摂取により、多糖類を含まない、ホエイタンパク質分離物(WPI)のみ又はホエイタンパク質ミセル(WPM)のみを有する等カロリー及び等窒素の組成物の摂取と比較して、食後血漿インスリン反応が低減されることが、発明者らによって見出された。無作為化二重盲検クロスオーバー前臨床試験の結果を、実施例の項に開示する。以前の試験により、WPI又はWPMの形態のホエイタンパク質は、食後インスリンの低減及び糖尿病の発症リスクの低減に有効であることが実証されていた。それに対し、本発明者らは、ホエイタンパク質を、多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含む組成物の形態で提供することにより、所望の健康上の利益のために更に良好な栄養学的解決策を見出した。その結果、糖尿病患者及び糖尿病前症者に対する更なる利益として、多糖類とホエイタンパク質ミセルとの分散液を含む組成物を提供することにより、WPI及びWPMと比較して、食後血漿インスリン濃度を低減することができる。
【0016】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、ホエイタンパク質ミセルが多糖類と共に胃内容排出の遅延を誘発するか、又はホエイタンパク質ミセル単独の場合よりも、ホエイタンパク質ミセルがゆっくり消化されるのではないかと考えている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】濃度0.1重量%の溶液中のWPM及びペクチンについてのpHの関数としてのT=25℃における表面電荷(ζ電位)の変化を示すグラフ図である。
【
図2】タンパク質濃度1重量%及び異なるペクチン濃度(重量比WPM:ペクチン1:1〜10:1)のWPM/ペクチン系(pH=4)における粒度分布を示すグラフ図である。結果は、体積基準の粒径に対する散乱光強度として示した。
【
図3】タンパク質濃度1重量%及び異なるペクチン濃度(重量比WPM:ペクチン1:1〜10:1)のWPM/ペクチン系(pH=4)における粒度分布を示すグラフ図である。結果は、粒径に対する全体積の百分率として示した。
【
図4】0.1重量%のホエイタンパク質ミセル及びλ−カラギーナンの、pHの関数としての、25℃で測定したζ電位の変化を示すグラフ図である。縦線は標準偏差を示す。水平の点線は粒子の電気的中性を示す。
【
図5】0.1重量%WPM/λ−カラギーナン複合体の、pHの関数としての、25℃におけるz平均径を示すグラフ図である。
【
図6】ミニブタによる食餌の摂食後の大動脈インスリンの血漿中濃度を示すグラフ図である。
【
図7】ミニブタによる食餌の摂食後の大動脈グルコースの血漿中濃度を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、対象における食後血漿インスリンの上昇に関連した疾患の治療又は予防に使用するための多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含む組成物に関し、多糖類はpH値2.5〜4.5の範囲で負のζ電位を有し、多糖類に対するホエイタンパク質ミセルの重量比は30:1〜0.8:1である。本発明の組成物中のホエイタンパク質ミセルは、ホエイタンパク質水溶液のpHを3.0〜8.0の値に調整し、水溶液を80〜98℃の温度にかけることによって得ることが可能であり得る(例えば得ることができる)。例えば、本発明の組成物中のホエイタンパク質ミセルは、ミネラル除去した未変性のホエイタンパク質水溶液のpHを5.8〜6.6の値に調整し、水溶液を80〜98℃の温度に10秒間〜2時間かけることによって得ることが可能であり得る(例えば得ることができる)。
【0019】
本発明は、対象における食後血漿インスリンの上昇に関連した疾患の治療又は予防に使用するための薬剤の製造のための、多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含む組成物の使用を提供し、多糖類はpH値2.5〜4.5の範囲で負のζ電位を有し、多糖類に対するホエイタンパク質ミセルの重量比は30:1〜0.8:1である。
【0020】
負のζ電位を有する多糖類は、負の表面電荷を有する。負のζ電位を有する多糖類としては、アルギネート、キサンタン、ペクチン、カラヤゴム、アラビアゴム、及びカラギーナンが挙げられる。粒子の電気泳動移動度、ζ電位、に対応する表面電荷は、Malvernによって供給されるZetasizer等の粒子移動分布装置によって測定することができる。本発明の組成物中の多糖類は、塩化ナトリウムがない状態で測定される負のζ電位を有し得る。pH値2.5〜4.5の範囲で、ホエイタンパク質ミセルは正のζ電位(正の表面電荷)を有するため、これらのpH値では、ホエイタンパク質ミセルと多糖類とは反対の電荷を帯びており、静電複合体を形成することができる。胃内消化中に生じるpH範囲は2.5〜4.0であるため、pHがこの範囲内ではない本発明の組成物が摂取された場合、多糖類−ホエイタンパク質ミセル複合体が胃内消化中に形成される。あるいは、多糖類−ホエイタンパク質ミセル複合体は、摂取前に組成物のpHを2.5〜4.5(例えば3.8〜4.2)に調整することによって形成することができる。本発明の組成物内に含まれる多糖類とホエイタンパク質ミセルとは、多糖類−ホエイタンパク質ミセル複合体の形態とすることができる。多糖類−ホエイタンパク質ミセル複合体は、静電複合体とすることができる。本発明の組成物内に含まれ、pH値2.5〜4の範囲で負のζ電位を有する多糖類は、アルギネート、キサンタン、ペクチン、カラヤゴム、アラビアゴム、及びカラギーナンからなる群から選択することができる。本発明の組成物内に含まれる多糖類は、ペクチン(例えば高メチルエステル化ペクチン)又はカラギーナン(例えばλ−カラギーナン)とすることができる。
【0021】
本発明の組成物は、ホエイタンパク質ミセルを少なくとも0.1重量%含有し得る。本発明の組成物中の、多糖類に対するホエイタンパク質ミセルの重量比は、30:1〜0.8:1、例えば10:1〜1:1とすることができる。本発明の組成物のタンパク質含量は0.1〜22重量%、例えばホエイタンパク質含量を0.1〜22重量%とすることができる。
【0022】
典型的には、食後高インスリン血症はインスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、グルコース不耐性、及び2型糖尿病の発症を促進し得る[Kopp W.,Metabolism.2003,Jul;52(7):840〜844]。しかしながら、食後のインスリン要求量を低下させることにより、一方では2型糖尿病における血糖調節の悪化を低減することができ、他方では2型糖尿病に罹患しやすい対象において発症のリスクを低減することができる。したがって、好都合なことに、ホエイタンパク質ミセルは糖尿病(例えば2型糖尿病又は妊婦糖尿病)、グルコース代謝の障害、高インスリン血症、若しくはインスリン抵抗性の治療又は予防に使用される。
【0023】
本発明の一実施形態において、ホエイタンパク質ミセルは糖尿病患者又は糖尿病前症患者において使用される。「糖尿病前症患者」とはインスリン抵抗性又はグルコース代謝障害を示す対象であり、例えば家族歴、生活様式、又は遺伝的性質によって、後年になって糖尿病を発症しやすい。インスリン分泌を低下させることによって長期的に膵臓が疲弊するリスクが低減されることから、糖尿病前症者又は代謝疾患を有する患者における膵臓の管理にとって有益である。したがって、多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含む組成物の使用により、これらの対象における糖尿病、グルコース代謝障害、高インスリン血症、若しくはインスリン抵抗性のリスク及び/又は発症を低減し得る。
【0024】
糖尿病、インスリン抵抗性、又はグルコース不耐性の罹患は主として成人において認められる。しかしながら、ますます多くの小児が罹患し、又は罹患しやすくなり、このような障害を後年になって発症するリスクを有する。したがって、これらの障害の予防及び/又は治療が、好都合なことに、若年期に早くも開始される。あるいは、ヒトにおいて認められるのと同様に、糖尿病、高インスリン血症、又はインスリン抵抗性は、動物、特にペットとして飼育される動物においてもますます広まっている。したがって、本発明はまた、ネコ及びイヌにも関連する。
【0025】
本発明による使用のための組成物は任意の好適な構成とすることができ、例えば、組成物はバー、フレーク、又はペレットの形態とすることができる。本発明による使用のための組成物は、液体組成物とすることができる。液体は、特に固形食の咀嚼及び嚥下が困難な患者に対し、好都合な用量構成を提供する。本発明による使用のための組成物は、動的粘度が20℃で1Pa.s未満の液体とすることができる。例えば、本発明の組成物は、動的粘度が0.5Pa.s未満、更には例えば20℃で0.3Pa.s未満の液体とすることができる。
【0026】
本発明による使用のための組成物は、飲料の形態、例えば液状飲料、シェイクドリンク、栄養組成物、又は流動食リプレースメントの形態で提供することができる。ホエイタンパク質ミセルは、ホエイタンパク質分離物と比較して、より「乳状の」外観を有する。これによって、液状飲料又は食事代替物の外観を向上することができる。本発明による使用のための組成物は、ヨーグルト、例えばスプーンですくえるヨーグルト、飲用ヨーグルト、又は水切りヨーグルト(strained yoghurt)等の発酵乳製品とすることができる。本発明に関連して、ヨーグルトという用語は、これらに限定されるものではないが、用語「ヨーグルト」に関する地域ごとの食品表示規則に適合する材料を含むことができる。
【0027】
固体形態の多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含む組成物は、消化器系の酸性水溶液環境において複合体を形成することが予想されるが、複合体の形成については、多糖類とホエイタンパク質ミセルとが水性分散液である組成物を提供することが好都合である。本発明による使用のための組成物は、多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む液体組成物とすることができる。
【0028】
食品の衛生リスクを管理する重要な方法は、食物病原体又は腐敗生物の住みかとなり得る食用組成物を熱処理することである。このような熱処理の周知の例は、例えば食用材料を72℃に15秒間加熱する低温殺菌、例えば食用材料を135℃より高く、少なくとも2秒間加熱する超高温(UHT)処理である。多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む液体組成物が熱処理後に液体のままであることは、好都合である。熱処理は、組成物を高齢者又は入院患者等の、感染に対する免疫が減弱した対象に投与する場合には重要であり得る。一般的に、加熱滅菌される液体組成物中に含むことができるタンパク質含量は極めて限定される。タンパク質を高含量で含む組成物は加熱に際して濃厚なゲルを形成するため、一旦熱処理されると、好都合な液体構成が得られない。例えば、負のホエイタンパク質分散液は、0.1M塩化ナトリウムの存在下、わずか4%のタンパク質濃度で、85℃、15分間の熱処理後にゲルを形成する。多糖類を添加すると、ゲル化の問題が更に悪化するものと予想される。例えば、ペクチン又はカラギーナン等の多糖類をホエイタンパク質に添加すると、タンパク質のゲル化濃度又は熱処理の際のゲル化時間を低下することが見出されている[J.C.Harrington et al.,Food Hydrocolloids,23,468〜489(2009)][S.L.Turgeon et al.,Food Hydrocolloids,15,583〜591(2001)]。したがって、ホエイタンパク質ミセルを多糖類の存在下で熱処理することができ、依然として液体のままであるという驚くべき知見により、有益な液体組成物を提供することが可能となる。本発明による使用のための組成物は、比較的小容量で、悪い味覚又は悪い口当たりなしに、大量のタンパク質を送達することが可能である。本発明による使用のための組成物は液体組成物とすることができ、タンパク質含量が0.1〜22重量%であり、熱処理された組成物とすることができる。例えば、本発明による使用のための組成物は熱処理された液体組成物であり、タンパク質含量は5〜20重量%とすることができ、更に例えば、本発明による使用のための組成物は熱処理された液体組成物であり、タンパク質含量は10〜15重量%とすることができる。
【0029】
本発明による使用のための組成物は流動食リプレースメントとすることができ、例えば、ホエイタンパク質ミセルが、流動食の代替する物の全乾燥重量の少なくとも1重量%、例えば少なくとも10重量%、更に例えば少なくとも15重量%の量で存在する。流動食リプレースメントは、経腸栄養で使用するためのものとすることができる。これによって、このようなミールリプレースメントは、好都合に、例えば、集中治療室又は病院において、例えば外傷による患者がインスリン抵抗性であっても、回復のために高タンパク食を必要とする場合に使用することができる。このように、流動食リプレースメントは非常に好都合であり、必要な量のタンパク質を、適切に調製された配合物の形態で提供する。これに伴い、「経腸栄養」は、鼻、胃、又は小腸に装着された管を通して食物又は栄養を提供する方法と定義される。経腸栄養はまた、経管栄養法と呼ばれることも多い。組成物は、脂質及び炭水化物を更に含み、適切な栄養を提供することができる。
【0030】
本発明による使用のための組成物は、体重1kg当たりホエイタンパク質ミセルの乾燥重量0.10g〜0.75g、例えば体重1kg当たりホエイタンパク質ミセルの乾燥重量0.15g〜0.5gを提供する1日用量で投与することができる。これらの用量は、少なくとも中期間において、確実に所望の効果を提供するのに十分な1日用量でなくてはならない。
【0031】
本発明による使用のための組成物は、通常の食事の一部として、又は通常の食事の終わりに提供することができる。例えば、組成物は食事の一部として又は食事の終わりに提供することができ、この食事と組み合わせてインスリンの食後反応を低減することによる利益をもたらす。組成物を食事の終わりに、例えばデザートの一部として提供することにより、効果の改善が期待できる。
【0032】
本発明の更なる態様は、多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含む組成物の、食後血漿インスリン濃度を低減するための非治療的使用であり、多糖類はpH値2.5〜4.5の範囲で負のζ電位を有し、多糖類に対するホエイタンパク質ミセルの重量比は30:1〜0.8:1である。本発明によって使用される組成物中のホエイタンパク質ミセルは、ホエイタンパク質水溶液のpHを3.0〜8.0の値に調整し、水溶液を80〜98℃の温度にかけることによって得ることが可能であり得る(例えば得ることができる)。例えば、本発明によって使用される組成物中のホエイタンパク質ミセルは、ミネラル除去した未変性のホエイタンパク質水溶液のpHを5.8〜6.6の値に調整し、水溶液を80〜98℃の温度に10秒間〜2時間かけることによって得ることが可能であり得る(例えば得ることができる)。
【0033】
多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含む組成物を、例えば、2型糖尿病、インスリン抵抗性、又はグルコース不耐性を後のある時点で発症するリスクのある健康な対象等の対象にも投与できることは有益である。多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含む組成物は、本明細書に開示のとおり、摂取後にインスリン濃度の低下をもたらす。この作用は、これらの対象の健康状態を向上するために十分な量の高品質タンパク質(すなわちホエイ)を提供するのと同時に、インスリン要求量及び潜在的な膵臓の疲弊を制限するのに最も好都合である。
【0034】
本発明によって非治療的に使用される組成物は、多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む液体組成物とすることができる。本発明によって非治療的に使用される組成物は熱処理した液体組成物とすることができ、タンパク質含量は0.1〜22重量%とすることができる。例えば、本発明によって非治療的に使用される組成物は熱処理された液体組成物とすることができ、タンパク質含量は5〜20重量%とすることができる。本発明によって非治療的に使用される組成物は熱処理された液体組成物とすることができ、タンパク質含量は10重量%を超えてもよく、例えば10〜15重量%とすることができる。本発明による液体組成物が熱処理できること、例えば、保存中にタンパク質が濃厚なゲル又は沈殿を形成することなく保全できることは、有益である。
【0035】
本発明によって非治療的に使用される組成物は多糖類とホエイタンパク質ミセルとを含むことができ、多糖類とホエイタンパク質ミセルとは多糖類−ホエイタンパク質ミセル複合体、例えば静電複合体の形態である。本発明によって非治療的に使用される組成物は、飲料又はヨーグルトの形態とすることができる。
【0036】
本発明の別の態様は、多糖類−ホエイタンパク質ミセル複合体(例えば多糖類−ホエイタンパク質ミセル複合体の製造のプロセス)を形成するためのプロセスを提供し、このプロセスは、
a.ホエイタンパク質水溶液のpHを3.0〜8.0の値に調整し、水溶液を80〜98℃の温度にかけることによってホエイタンパク質ミセルを形成する工程と、
b.多糖類をホエイタンパク質ミセルの水性分散液と組み合わせ、多糖類がpH値2.5〜4.5の範囲で負のζ電位を有し、多糖類に対するホエイタンパク質ミセルの重量比が30:1〜0.8:1である、多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む組成物を形成する工程と、
c.多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む組成物のpHがあらかじめ2.5〜4.5でない場合(例えばpHがあらかじめ3.8〜4.2でない場合)に、組成物のpHを2.5〜4.5(例えば3.8〜4.2)に調整して多糖類−ホエイタンパク質ミセル複合体を形成する工程と、を含む。
【0037】
本発明のプロセスにおけるホエイタンパク質ミセルの形成は、ミネラル除去した未変性のホエイタンパク質水溶液のpHを5.8〜6.6の値に調整し、水溶液を80〜98℃の温度に10秒間〜2時間かけることによることができる。
【0038】
多糖類と組み合わされた、多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む組成物は、ホエイタンパク質ミセルを少なくとも0.1重量%含有し得る。多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む組成物中の、多糖類に対するホエイタンパク質ミセルの重量比は、例えば10:1〜1:1とすることができる。多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む組成物中の多糖類は、塩化ナトリウムがない状態で測定される負のζ電位を有し得る。多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む組成物は、圧力をかけて均質化し、確実に良好な分散とすることができる。
【0039】
多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む組成物のpHは、任意の既知の方法によって調整することができ、例えばpHは、酸、塩基を(例えば緩衝液の形態で)組成物に加えることによって調整することができる。このように複合体を呼び形成することにより、より良好な管理が可能となり、形成される複合体の量を増加させることができる。
【0040】
組成物のpHは、組成物の摂取行為によって調整することもでき、摂取された組成物は、例えばヒトの胃の下部において、pH2.5〜4.5の環境に生じる。多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む組成物のpHは、組成物を哺乳動物の消化管を通過させることにより、2.5〜4.5(例えば3.8〜4.2)に調整することができる。多糖類−ホエイタンパク質複合体は、静電複合体とすることができる。多糖類は、ペクチン又はカラギーナンとすることができる。
【0041】
本発明のプロセスにおける、多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む組成物のタンパク質含量は0.1〜22重量%であってもよく、例えば、本発明のプロセスにおける、多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む組成物のタンパク質含量は5〜20重量%とすることができる。タンパク質含量は10重量%を超えてもよく、例えば10〜15重量%とすることができる。
【0042】
本発明のプロセスは、熱処理の工程を更に含むことができる。例えば、本発明のプロセスは、多糖類とホエイタンパク質ミセルとの水性分散液を含む組成物を72℃より高い温度まで少なくとも3秒間、例えば135℃より高温で少なくとも3秒間、加熱することを更に含むことができる。本発明のプロセスにおいてホエイタンパク質ミセルの水性分散液と組み合わされる多糖類は、アルギネート、キサンタン、ペクチン、カラヤゴム、アラビアゴム、カラギーナン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。多糖類は、ペクチン又はカラギーナンとすることができる。
【0043】
当業者であれば、本明細者に開示される本発明の全ての特徴を自由に組み合わせることができることを認識するであろう。特に、組成物の治療的使用について記載された特徴を非治療的使用と組み合わせることができ、逆もまた同様である。更に、本発明の異なる実施形態について記載された特徴を組み合わせることができる。本発明の更なる利点及び特徴は、図面及び実施例から明らかである。
【実施例】
【0044】
実施例1:ペクチン−ホエイタンパク質ミセル複合体の調製
静電複合体の形成
ホエイタンパク質分離物(Prolacta 90)のタンパク質4重量%、pH5.89の分散液を85℃/15分で熱処理し、次いで精密濾過による濃縮によって全固形物を最大22重量%とし、噴霧乾燥することによって、ホエイタンパク質ミセル粉末(WPM)を調製した。
【0045】
脱イオン水中で、60℃で2〜3時間撹拌することにより、5重量%ペクチン(高メチルエステル化ペクチン,Classic CU201,Herbstreith & Fox KG)原液を調製した。糖鎖が完全に水和するように、この溶液を4℃で終夜撹拌した。15重量%、pH3.5のWPM原液を調製した。まず、粉末を135mMのHCl溶液中に、4℃で終夜分散した。次いで分散液を250バールで2回、50バールで1回均質化した。最終の乾燥物及び次いでタンパク質濃度を、HR73 Halogen Moisture Analyzer(Mettler Toledo)によって確認し、粒度を動的光散乱法(Zetasizer Nanoseries,Malvern,UK)によって確認した。典型的な値は、流体力学的径Dh=300nm、多分散指数pdI=0.15であった。2つの溶液を混合し(必要に応じて水を加えることにより)、異なるタンパク質濃度(範囲0.1〜10重量%)及びWPM/ペクチン重量比(範囲1:1〜10:1)の混液を得た。次いで混液を500バール、25℃で2回均質化した。系の最終pHを、1M NaOHを使用してpH4.0に調整した。
【0046】
系の物理化学的特徴解析
表面電荷
粒子の電気泳動移動度、ζ電位、に対応する表面電荷は、粒子移動分布装置(Zetasizer Nanoseries,Malvern,UK)によって測定した。1MのHCl及びNaOH滴定溶液を備えた多目的滴定装置(MPT 2,Malvern)を使用して、pHを8〜2まで0.5の間隔で、pHの精度目標を0.3として変化させた。セルDTS1060Cを使用し、測定は25℃で行った。0.1重量%溶液15mLを使用した。データ処理は自動で行った。
【0047】
粒度分布
粒度分布は、マルチアングル静的光散乱を使用し、Mastersizer S long bench(Malvern,UK)によって測定した。屈折率は分散相に対して1.36、連続相に対して1.33、後方散乱率は0.1(3JHD presentation)を計算に使用した。残余値は常に1.5未満であった。使用した分散相の屈折率及び数学的モデル(粒子が球状であると仮定している)が任意の選択であることを考慮すると、本測定は、粒度の定量的測定というよりは、系における凝集の定性的な指標を提供するのみである。
【0048】
結果
I.WPM/タンパク質静電複合体の形成を可能とするpH条件の確認
WPM及びペクチンの表面電荷(ζ電位)をpHの関数として
図1に示す。pHが2〜8に上昇するのに従い、ペクチンのζ電位は中性から−45mVまで低下した。この変化は、ペクチン骨格上のカルボキシ基に関連付けることができ、低pHにおいて、これらの基が中和されると、ζ電位値はゼロに近づく。WPMについては、ζ電位はpH2における20mVからpH3.8における40mVに変化し、pH8では−45mVに低下し、電気的中性はpH4.6において測定された。後者については、WPMの主要構成タンパク質であるβ−ラクトグロブリンの等電点に関連付けることができる。
【0049】
これらの結果により、pH範囲2.5〜4.5において2つの構成成分は反対の電荷に帯電しており、したがって静電複合体の形成が可能であることが示された。
【0050】
II.粒度分布
WPMへのペクチンの添加によって誘導された変化を評価するため、粒度分布を測定し、
図2及び3に、WPM:ペクチン重量比10:1〜1:1に対応する、WPM1重量%と、ペクチンの増加量0.1重量%〜1重量%とを含有する系について得られた結果を示す。
【0051】
低ペクチン濃度(0.1重量%)では、粒子の平均径は10μmより大きく、全試料体積の10%未満が直径1μm未満の粒子であった。ペクチン濃度が1重量%まで上昇すると、平均径は1μm未満に低下し、全体積の80%を上回る粒子が直径1μm未満の粒子であった。ペクチン濃度1重量%において、粒子の平均サイズはWPM単独の場合と同等であった。高WPM:ペクチン比(すなわち低ペクチン濃度)では、電荷効果によるWPMとペクチン間の相互作用が起きやすく、大きい凝集体が主として形成される。ペクチン濃度が上昇するにつれ、おそらくはWPMの表面におけるペクチン鎖の圧縮により、WPMのサイズと同等の複合体が形成される。
【0052】
この結果は、ペクチンとホエイタンパク質ミセルとの水性分散液は、pH条件2.5〜4.5において、ペクチン−ホエイタンパク質ミセル複合体を形成することを示している。
【0053】
実施例2:ホエイタンパク質ミセルとλ−カラギーナンとの複合体形成
I.WPM/λ−カラギーナン静電複合体の形成を可能とするpH条件の確認
λ−カラギーナン(Benvisco CSP−82,Shemberg)分散液は、必要量の粉末をMilliQTM水中に室温で2時間分散させることによって得た。確実にWPMを適切に分散させるため、WPM分散液を250/50バールで均質化した。WPM及びλ−カラギーナン(CAR)両者のζ電位を、pHの関数として、希釈条件で測定した(
図4)。λ−カラギーナンは高い電荷密度を呈する高度に硫酸化された多糖類である(1糖残基当たり3個の硫酸基)。したがって、λ−カラギーナンは強酸として挙動し、pHとは無関係に、硫酸基は完全に解離している。これによって、WPMと強い静電複合体を形成することができる。強酸に関して予想されるとおり、測定した全てのpHに対してζ電位は一定で、約−40/45mVであった。WPMはpH4.72未満で正の電荷を呈するため、pH範囲2.5〜4.5を含む胃のpH条件において静電複合体が形成される。
【0054】
II.粒度分布
粒度は、Nanosizer ZS(Malvern Instruments,UK)を使用し、動的光散乱法によって測定した。WPMとCARとの分散液を0.1重量%で、様々なpH及び混合比で混合し、正方形のプラスチック製キュベット(Sarstedt,Germany)に注いだ。測定は25℃で実施した。試料の濁度に応じ、光の経路長は装置によって自動的に設定した。自己相関関数G2(t)を、経時的な散乱強度の変動から算出した。「キュムラント」法を使用した相関関数の対数の多項式フィットから、拡散する粒子は単分散の球体であると仮定して、粒子のz平均流体力学的径を計算した。
【0055】
WPMとCARとの分散液を0.1重量%で、様々なpH及び混合比で混合した。WPMは極端なpHでは250nmの平均径を示し、pH4.5付近のこれらのIEPに近づくと凝集する傾向がある(
図5)。CARの添加によって、複合体のサイズは、混合比50:1、20:1、及び5:1に対して大幅に増大する。この大きなサイズによって、概して複合体の急激な沈殿が起こる。高い混合比(過剰のCAR)では、複合体のみかけの直径はWPMと比較して1μmまでわずかに増大したが、pH範囲全体において一定であった。
【0056】
実施例3:ホエイタンパク質ミセル及び多糖類のインスリン産生への影響
本発明者らは、健康なミニブタにおける無作為化二重盲検のクロスオーバー試験において、インスリンの食後反応をモニターした。2つの食餌の間に少なくとも6日間のウォッシュアウト期間をとり、この間、ミニブタには通常の食餌を与えた。
【0057】
下記の等カロリー及び等窒素の食餌を比較した。
【表1】
【0058】
全ての食餌は約300mLで、タンパク質(WPI又はWPM)30g、脂質11g、及びマルトデキストリン30gを含有していた。食餌Cはλ−カラギーナン(Benvisco CSP−82,Shemberg Corp.)1.5gを含有し、食餌Dはペクチン(高メチルエステル化ペクチン、Classic CU201,Herbstreith & Fox KG)3gを含有していた。発熱量及びタンパク質含量を分析によって測定し、確実に等カロリー及び等窒素となるように、各試験食のサイズをわずかに調整した。食餌A、B、及びCは中性のpH、食餌Dは酸性のpHだった。λ−カラギーナン及びWPMを含む組成物(食餌C)は、λ−カラギーナンとWPMとの複合体が食餌中で形成されないように、pHを2.5〜4.5の範囲外に維持した。複合体は、一回でも食餌がミニブタの消化器系の低pH部位を通過する際にのみ形成される。λ−カラギーナンとWPMの複合体はコロイド安定性が低いことが判明し、液体組成物で形成された場合には、望ましくない沈殿を生成する場合がある。対照的に、食餌D中においてpH4で形成されたペクチンとWPMとの複合体は良好なコロイド安定性を有しているため、ミニブタによって摂食される前に既に液体組成物中に存在することができる。
【0059】
食餌A:WPI(Prolacta 90)を、4%Citrem乳化剤によって安定化された、40%水中油型の均質化したエマルションと混合した。マルトデキストリン(DE 21)を加え、混液を148℃で3秒間UHT処理した後、無菌ボトルに充填した。
【0060】
食餌B:WPI(Prolacta 90)の4重量%タンパク質分散液(pH5.89)を85℃で15分間加熱処理し、続いて精密濾過によって固形物22重量%まで濃縮し、噴霧乾燥することにより、WPM粉末を調製した。WPMの全固形物15%の溶液(pH7)を均質化し、4%Citrem乳化剤によって安定化された、40%水中油型の均質化したエマルションと混合した。マルトデキストリン(DE 21)を加え、混液を148℃で3秒間UHT処理した後、無菌ボトルに充填した。
【0061】
食餌C:WPM粉末を、食餌Bと同様に調製した。WPMの全固形物15%の溶液(pH7)を均質化し、λ−カラギーナン及びマルトデキストリンと60℃で1時間混合した後250バールで均質化し、4%Citrem乳化剤によって安定化された、40%水中油型の均質化したエマルションと混合した。pHを確認し、pH7に調整した。混液を148℃で3秒間UHT処理した後、無菌ボトルに充填した。
【0062】
食餌D:WPM粉末を、食餌Bと同様に調製した。WPMの全固形物15%の溶液(pH4)を均質化し、ペクチン及びマルトデキストリンと60℃で1時間混合した後250バールで均質化し、4%Citrem乳化剤によって安定化された、40%水中油型の均質化したエマルションと混合した。pHを確認し、pH4に調整した。混液を148℃で3秒間UHT処理した後、無菌ボトルに充填した。
【0063】
血液試料を食前30分から食後270分までの11の時点で採取し、血漿インスリン(
図6)及びグルコース(
図7)を測定した。食後インスリン反応は、WPM/カラギーナンを含む食餌(C)及びWPM/ペクチンを含む食餌(D)において、多糖類を含まない、WPIを含有する食餌(A)又はWPMを含有する食餌(B)よりも低いことがわかる。一方、グルコースの除去は実質的に同じであった。この結果は、WPM又はWPI単独の食餌よりも、多糖類及びWPMの食餌後の方が、血中からグルコースを除去するのに必要なインスリンが低下したことと、食後グルコース反応がインスリンの低下を誘発したことを実証している。この研究により、血漿インスリンを低下させるのに、多糖類とWPMとの水性分散液が有益であることが示された。