(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リードは、鉄基金属材からなるアウターリードと、前記アウターリードの片端に突合せ接合したアルミニウムからなるインナーリードとを有する、請求項1に記載の気密端子。
前記ベースの前記外周面と前記ケースの前記開口部の前記内周面とを固定する工程は、前記ベースが前記ケースの前記開口部に圧入されることで前記ベースが前記ケースに圧着される工程を含む、請求項9に記載のアルミ電解コンデンサの製造方法。
前記ベースの前記外周面と前記ケースの前記開口部の前記内周面とを固定する工程は、前記ベースの前記外周面が前記ケースの前記開口部の前記内周面に隙間なく抵抗溶接またはレーザー溶接される工程を含む、請求項9に記載のアルミ電解コンデンサの製造方法。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子等に用いる一般的な気密端子は、コバール材(鉄:54%、ニッケル:28%、コバルト:18%の合金)からなるベースと、同じくコバール材からなるリードと、ベースとリードとを封着する絶縁ガラスと、ベースが圧入されて固定される鉄製のキャップとを備えている。ベースには一対の通孔が形成されており、この通孔をリードが貫通する。リードとベースとの隙間は絶縁ガラスによって気密封止されている。絶縁ガラスによって、リードとベースとは電気絶縁されている。
【0003】
このような従来の気密端子においては、プリント基板実装時のアウターリードのはんだ付け性の確保のため、気密端子の全表面にはんだ合金めっきや、錫めっき、ニッケルめっき、金めっきなどの電解めっきが施される。
【0004】
電解めっきの方法としては、バレルめっき法が採用されている。バレルめっき法においては、多数の気密端子を通液性の有るバレル内に収納し、バレルごとめっき浴内に浸漬させる。浸漬させたバレルを回転させ、多数の気密端子に一度にめっきを施す。
【0005】
また、はんだ合金めっき、ニッケルめっき、金めっき、銀めっき、ロジウムめっきなどを、ベースとリードに対して選択的にめっきする方法として、たとえば特許文献1に記載の方法がある。
【0006】
ここで、電子回路を構成する受動部品にアルミ電解コンデンサがある。アルミ電解コンデンサは、陽極用高純度アルミニウム箔と、陰極用アルミニウム箔と、電解液と、コンデンサ紙から構成されている。陽極用高純度アルミニウム箔は、表面に形成された誘電体となる酸化被膜を有している。
【0007】
アルミ電解コンデンサは、陽極箔と陰極箔を対向させ、両極間にコンデンサ紙を挿み込んで円筒状に巻き込んだコンデンサ素子を有している。ただし、この状態では静電容量は僅少である。コンデンサ紙に電解液を含浸させて電解紙とすることで、陽極箔表面と陰極箔表面が電気的につながり、陽極箔表面のアルミニウム酸化皮膜を誘電体とする大きな静電容量を有するコンデンサ素子が得られる(非特許文献1参照)。
【0008】
この電解液は真の陰極の役割を果たしており、電解液がドライアップしてしまうとアルミ電解コンデンサは寿命を終える。一般にアルミ電解コンデンサは、電子回路を構成する部品のうち最も寿命が短い部類に属するため、近年、その長寿命化が模索されている。
【0009】
最近の電子回路において電子部品は、狭隘な隙間に実装されることが多い。アルミ電解コンデンサにおいても、従来の円筒ケース型のアルミ電解コンデンサに加えて、高さの低い平板型をしたアルミ電解コンデンサなど非円筒形状のものが増加している。これらの非円筒型形状のアルミ電解コンデンサにおいては、ケース底部の形状が方形や楕円形となる。従来の円筒ケース型のアルミ電解コンデンサにおいては、円板状ゴムパッキンを円筒ケースに挿着し、ケース端部を均等にかしめてシールしていた。ケース底部の形状が方形や楕円形の場合には、均等にかしめてシールすることが困難である。
【0010】
アルミ電解コンデンサの長寿命化を図るため、コンデンサ素子を収めるケースの封止に上記の気密端子が利用できれば好都合である。気密端子を用いることで、気密性が向上して電解液のドライアップを防止することができる。加えて、気密端子とケースを封止する際に圧入や抵抗溶接を用いることができるので、ケースの形状に影響されずに気密性を確保することができる。
【0011】
しかし、従来の気密端子は、鉄または鉄基合金の母材に、はんだめっき、錫めっき、ニッケルめっき、金めっきなどの軟質金属の電気めっき被覆を施したものである。これらの従来のめっき被膜を電解液に長期間接触させると、めっき金属あるいは母材を構成する金属が電解液に次第に溶け込んで電解液を汚染する。電解液の汚染は、コンデンサの特性に悪影響を及ぼすため、従来の気密端子をアルミ電解コンデンサに用いることはできない。
【0012】
一方、アルミニウムで気密端子のベースおよびリードを構成することも考えられるが、アルミニウムと熱膨張係数が適合するガラス材料が無いことや、気密端子のガラス封着の工程において約1,000℃に加熱する必要があったためアルミ材が溶解してしまうことなどの理由で実現できなかった。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明に基づいた各実施の形態における気密端子、気密端子を用いたアルミ電解コンデンサおよびアルミ電解コンデンサの製造方法について、図を参照しながら説明する。なお、各実施の形態において、同一または相当箇所については、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0031】
(実施の形態1)
以下、本発明に係る実施の形態1について、
図1Aから
図2Cを参照して説明する。
【0032】
図1Aないし
図1Cに示すように、本実施の形態に係る気密端子10は、ベース11と、リード12と、絶縁ガラス13とを備えている。この実施の形態および後続の実施の形態の説明において、気密端子がアルミ電解コンデンサに用いられた状態を基準に、
図1Bにおける上側を内部側、
図1Bにおける下側を外部側という。
【0033】
ベース11は、鉄基金属材からなる母材11aの両方の表面をアルミニウム製の表面材11bで覆ったクラッド材で構成されている。ベース11は、円盤状の本体部と、本体部の外周から直角に折れ曲がって外部側に向かって延びる円筒状部とを有している。本体部にはその中心部を挟んで一対の通孔が設けられている。通孔を囲むように直角に折れ曲がって外部側に向かって延びる円筒状部が設けられている。ベース11は、クラッド材をプレス成型することにより製造される。
【0034】
ベース11を構成するクラッド材の端面には母材11aが露出している。本体部の外周部および通孔の外周部を外部側に向かって直角に折り曲げることにより、ベース11の内部側に向かう面は全てアルミニウムからなる表面材11bで覆われ、母材11aは露出しない。
【0035】
アルミニウムはアルミ電解コンデンサの電解液に対して耐蝕性を有する。鉄基金属材からなる母材11aは電解液に対して耐蝕性を有しないが、アルミ電解コンデンサの内部側にはベース11の母材11aが露出しないので、母材11aがアルミ電解コンデンサの電解液に溶出することがない。
【0036】
二つの通孔の各々には、リード12が貫通している。リード12は、鉄基金属材からなるアウターリード12bと、アルミニウム製のインナーリード12aとからなる。アウターリード12bの片方の端部は、インナーリード12aの片方の端部に突合せ接合されている。
【0037】
アウターリード12bとインナーリード12aとの接合部は、通孔の内部かつ内部側寄りに位置している。言い換えると、通孔を貫通するリード12の長さ方向において、多くの部分をアウターリード12bが占め、内部側のわずかな部分のみがインナーリード12aで構成される。
【0038】
アウターリード12bは円柱状である。インナーリード12aは、本体部が矩形の平板状である。インナーリード12aのアウターリード12bに接合される側は、徐々に幅が小さくなるように形成されている。インナーリード12aのアウターリード12bとの突合せ部はアウターリード12bと同じ直径を有する円柱状である。インナーリード12aの形状は、接合されるコンデンサ素子の形状に応じて種々の形状に変更することができる。
【0039】
ベース11の母材11aおよびリード12のアウターリード12bを構成する鉄基金属材とは、鋼、ステンレス鋼、低炭素鋼、コバール合金および鉄ニッケル合金の群から選択される材料を意味する。また、鉄基金属材は、アルミニウムに比べてはんだ付け性において優れる。鉄基金属材をアウターリードに用いることで良好なはんだ付け性を確保することができる。
【0040】
母材11aおよびアウターリード12bを構成する材料としては、上記のような条件を満たす材料が好ましい。上記条件を満たす材料であれば、鉄基金属材以外の材料を用いてもよい。
【0041】
リード12とベース11とは絶縁ガラス13によって気密封着されている。具体的には、ベース11の通孔の内周面と、リード12の通孔の内周面に対向する部分との間の隙間が絶縁ガラス13によって埋められている。
【0042】
リード12のインナーリード12aとアウターリード12bとの間の接合部は、絶縁ガラス13で覆われている。インナーリード12aとアウターリード12bとの接合部が絶縁ガラス13で覆われていることにより、アウターリード12bは内部側に露出しない。これにより、鉄基金属材からなるアウターリード12bが電解液に接触することはない。リード12のうち電解液に対して耐蝕性を有するアルミニウム製のインナーリード12aのみが電解液に接触するので、金属が溶出して電解液を汚染することがない。
【0043】
ベース11の母材11aおよびリード12のアウターリード12bを構成する鉄基金属材の熱膨張率と、アルミニウムの熱膨張率を比べると、鉄基金属材の熱膨張率の方がガラスの熱膨張率に近い。ベース11の体積において多くの部分が鉄基金属材により構成された母材11aである。また、リード12のうち絶縁ガラス13と接触する部分の多くが鉄基金属材により構成されたアウターリード12bである。これらの構成により温度変化時の熱膨張の差による悪影響を受けにくくすることができる。
【0044】
絶縁ガラス13は、一例としてビスマス含有ガラスなどの低融点ガラスである。低融点ガラスを用いることで、炉内で絶縁ガラス13を溶融させてベース11とリード12との間を気密封着する工程において、アルミニウムが溶融することを防止することができる。
【0045】
低融点ガラスの具体例としては、日本電気硝子社製の製品名BG−0800がある。同材料の軟化点は510℃であり、アルミニウムの融点よりも低い。発明者らが行なった実験において、同材料は、ガラス耐水性評価、ガラス耐酸性評価、アルミ板への濡れ性評価、ヒートサイクル試験、高温高湿試験のいずれにおいても好評価であった。
【0046】
なお、当該実験には、ベースとしてアルミニウムとSUS304のクラッド材を用い、リードとしてFeとアルミニウムとをアーク溶接したものを用いた。ヒートサイクル試験においては、125℃の加熱と−55℃の冷却を繰り返し、一定サイクル後にHeのリークをチェックした。高温高湿試験においては、気温85℃、湿度85%の環境に置き、一定時間後にリークをチェックした。
【0047】
次に、気密端子10を用いたアルミ電解コンデンサ20について
図2Aないし
図2Cを参照して説明する。アルミ電解コンデンサ20は、
図2Bに示すように、気密端子10とコンデンサ素子15とケース16とを備えている。
【0048】
コンデンサ素子15は、酸化被膜を表面に形成した陽極用アルミニウム箔と、電解液を含浸させた電解紙と、陰極用アルミニウム箔とを円筒状に巻き込んだものである。コンデンサ素子15の陽極用アルミニウム箔と陰極用アルミニウム箔の各々にはインナーリード12aが接続されている。
【0049】
ケース16は内部空間および開口部を有する円筒状である。ケース16はアルミニウムで形成されている。ケース16の内部にはコンデンサ素子15が収容される。ケース16の開口部には、気密端子10が気密圧着されている。ケース16の気密圧着は、ケース16の開口部に気密端子10のベース11を圧入することで行なう。
【0050】
ケース16と気密端子10とが気密圧着されているので、ケース16と気密端子10との間の気密性を確保することができる。また気密端子10のベース11とリード12との間も絶縁ガラス13で気密封着することにより高い気密性が確保されている。これらにより、ケース16内の電解液のドライアップを防止することができ、アルミ電解コンデンサの長寿命化を図ることができる。
【0051】
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2について、
図3Aから
図4Cを参照して説明する。
【0052】
図3Aないし
図3Cに示すように、本実施の形態に係る気密端子30は、ベース31と、リード32と、絶縁ガラス33とを備えている。
【0053】
ベース31は、鉄基金属材からなる母材31aの両方の表面をアルミニウム製の表面材31bで覆ったクラッド材で構成されている。ベース31は、円盤状に形成されている。ベース31にはその中心部を挟んで一対の通孔が設けられている。ベース31を構成するクラッド材の端面には母材31aが露出しているが、ベース31の内部側に向かう面は全てアルミニウムからなる表面材31bで覆われ、母材31aは露出しない。
【0054】
アルミニウムはアルミ電解コンデンサの電解液に対して耐蝕性を有する。鉄基金属材からなる母材31aは電解液に対して耐蝕性を有しないが、アルミ電解コンデンサの内部側にはベース31の母材31aが露出しないので、母材31aがアルミ電解コンデンサの電解液に溶出することがない。
【0055】
二つの通孔の各々には、リード32が貫通している。リード32は、鉄基金属材からなるアウターリード32bと、アルミニウム製のインナーリード32aとからなる。アウターリード32bの片方の端部は、インナーリード32aの片方の端部に突合せ接合されている。
【0056】
アウターリード32bとインナーリード32aとの接合部は、通孔の内部かつ内部側寄りに位置している。言い換えると、通孔を貫通するリード32の長さ方向において、多くの部分をアウターリード32bが占め、内部側のわずかな部分のみがインナーリード32aで構成される。
【0057】
アウターリード32bは円柱状である。インナーリード32aは、本体部が矩形の平板状である。インナーリード32aのアウターリード32bに接合される側は、徐々に幅が小さくなるように形成されている。インナーリード32aのアウターリード32bとの突合せ部はアウターリード32bと同じ直径を有する円柱状である。インナーリード32aの形状は、接合されるコンデンサ素子の形状に応じて種々の形状に変更することができる。
【0058】
リード32とベース31とは絶縁ガラス33によって気密封着されている。具体的には、ベース31の通孔の内周面と、リード32の通孔の内周面に対向する部分との間の隙間が絶縁ガラス33によって埋められている。
【0059】
リード32のインナーリード32aとアウターリード32bとの間の接合部は、絶縁ガラス33で覆われている。インナーリード32aとアウターリード32bとの接合部が絶縁ガラス33で覆われていることにより、アウターリード32bは内部側に露出しない。これにより、電解液にアウターリード32bが接触することはない。リード32のうち、電解液に対して耐蝕性を有するアルミニウム製のインナーリード32aのみが電解液に接触するので、金属が溶出して電解液を汚染することがない。
【0060】
次に、気密端子30を用いたアルミ電解コンデンサ40について
図3Aないし
図4Cを参照して説明する。アルミ電解コンデンサ40は、
図4Bに示すように、気密端子30とコンデンサ素子35とケース36とを備えている。
【0061】
コンデンサ素子35は、酸化被膜を表面に形成した陽極用アルミニウム箔と、電解液を含浸させた電解紙と、陰極用アルミニウム箔とを円筒状に巻き込んだものである。コンデンサ素子35の陽極用アルミニウム箔と陰極用アルミニウム箔の各々にはインナーリード32aが接続されている。
【0062】
ケース36は内部空間および開口部を有する円筒状である。ケース36はアルミニウムで形成されている。ケース36の内部にはコンデンサ素子35が収容される。ケース36の開口部には、気密端子30が気密封着されている。ケース36の気密封着は、ケース36の端部内周面とベース31の外周面とを全周に亙って隙間なく溶接することにより行なう。より具体的には、ケース36の端部内周面と、ベース31の内部側の表面材31bの外周面とを溶接する。溶接工程においては抵抗溶接またはレーザー溶接を用いることができる。
【0063】
ケース36と気密端子30とが気密封着されているので、ケース36と気密端子30との間の気密性を確保することができる。また気密端子30のベース31とリード32との間も絶縁ガラス33により気密封着することにより高い気密性が確保されている。これらにより、ケース36内の電解液のドライアップを防止することができ、アルミ電解コンデンサの長寿命化を図ることができる。
【0064】
(実施の形態3)
以下、本発明に係る実施の形態3について、
図5Aおよび
図5Bを参照して説明する。
【0065】
図5Aおよび
図5Bに示すように、本実施の形態に係る気密端子50は、ベース51と、リード52と、絶縁ガラス53とを備えている。
【0066】
ベース51は、鉄基金属材からなる母材51aの一方の表面をアルミニウム製の表面材51bで覆ったクラッド材で構成されている。ベース51は、円盤状に形成されている。ベース51には一対の通孔が設けられている。ベース51の外周面には拡径部51sが設けられている。拡径部51sには、アルミ電解コンデンサのケースの開口部側の端部が当接される。母材51aと表面材51bとの界面は拡径部51sの厚み内に位置している。
【0067】
ベース51を構成するクラッド材の端面には母材51aが露出しているが、ベース51の拡径部51sの内周側の内部側に向かう面は全てアルミニウムからなる表面材51bで覆われ、母材51aは露出しない。拡径部51sの内部側の面およびベース51の拡径部51sより内部側の表面は全てアルミニウムで覆われている。
【0068】
アルミニウムはアルミ電解コンデンサの電解液に対して耐蝕性を有する。鉄基金属材からなる母材51aは電解液に対して耐蝕性を有しないが、アルミ電解コンデンサの内部側にはベース51の母材51aが露出しないので、ベース51がアルミ電解コンデンサの電解液に溶出することがない。
【0069】
二つの通孔の各々には、リード52が貫通している。リード52は、鉄基金属材からなるアウターリード52bと、アルミニウム製のインナーリード52aとからなる。アウターリード52bの片方の端部は、インナーリード52aの片方の端部に突合せ接合されている。
【0070】
アウターリード52bとインナーリード52aとの接合部は、通孔の内部かつ内部側寄りに位置している。言い換えると、通孔を貫通するリード52の長さ方向において、多くの部分をアウターリード52bが占め、内部側のわずかな部分のみがインナーリード52aで構成される。
【0071】
アウターリード52bおよびインナーリード52aは円柱状である。インナーリード52aの形状は、接合されるコンデンサ素子の形状に応じて種々の形状に変更することができる。
【0072】
リード52とベース51とは絶縁ガラス53によって気密封着されている。具体的には、ベース51の通孔の内周面と、リード52の通孔の内周面に対向する部分との間の隙間が絶縁ガラス53によって埋められている。
【0073】
リード52のインナーリード52aとアウターリード52bとの間の接合部は、絶縁ガラス53で覆われている。インナーリード52aとアウターリード52bとの接合部が絶縁ガラス53で覆われていることにより、アウターリード52bは内部側に露出しない。これにより、電解液にアウターリード52bが接触することはない。電解液にはリード52のうち、電解液に対して耐蝕性を有するアルミニウム製のインナーリード52aのみが接触するので、金属が溶出して電解液を汚染することがない。
【0074】
気密端子50には、図示しないケースおよびコンデンサ素子が取り付けられてアルミ電解コンデンサが構成される。気密端子50はケースの開口部に気密封着される。ケースの気密封着は、ケースの端部内周面とベース51の拡径部51sより内部側の外周面とを全周に亙って隙間なく抵抗溶接またはレーザー溶接することにより行なう。
【0075】
ケースと気密端子50とが気密封着されているので、ケースと気密端子50との間の気密性を確保することができる。また気密端子50のベース51とリード52との間も絶縁ガラス33で気密封着することにより高い気密性が確保されている。これらにより、ケース内の電解液のドライアップを防止することができ、アルミ電解コンデンサの長寿命化を図ることができる。
【0076】
(製造方法)
実施の形態1および2の気密端子およびアルミ電解コンデンサの製造方法について
図6Aおよび
図6Bを用いて説明する。
【0077】
図6Aに示す実施の形態1に係る気密端子10の製造方法においては、まず、鉄基金属製の母材11aの表面をアルミニウム製の表面材11bで覆った金属板を、プレス成形して通孔を有するベース11を製造する。
【0078】
次に、鉄基金属製のアウターリード12bの片端にアルミニウム製のインナーリード12aを突合せ接合してリード12を製造する。
【0079】
次に、ベース11の通孔にリード12を挿入し、リード12とベース11との隙間に、融点がアルミニウムより低い低融点ガラスからなる絶縁ガラス13のタブレットをセットする。
【0080】
次に、セットされたベース11、リード12および絶縁ガラス13のタブレットをアルミニウムの融点以下の温度に調温された加熱炉に通して、リード12とベース11とを絶縁ガラス13によって封着して気密端子が完成する。
【0081】
図6Aに示す気密端子10を用いたアルミ電解コンデンサ20の製造方法においては、酸化被膜を表面に有する陽極用アルミニウム箔と、電解液を含浸させた電解紙と、陰極用アルミニウム箔とからなるコンデンサ素子15を、気密端子10に電気的に接続する。
【0082】
次に、開口部を有するアルミニウム製のケース16にコンデンサ素子15を挿入し、ベース11の外周面とケース16の開口部の内周面とを固定する。この固定においては、ベース11をケース16に圧入することで圧着する。
【0083】
図6Bに示す実施の形態2に係る気密端子30の製造方法においては、まず、鉄基金属製の母材31aの表面をアルミニウム製の表面材31bで覆った金属板を、プレス成形して通孔を有するベースを製造する。
【0084】
次に、鉄基金属材からなるアウターリード32bの片端にアルミニウムからなるインナーリード32aを突合せ接合してリード32を製造する。
【0085】
次に、ベース31の通孔にリード32を挿入し、リード32とベース31との隙間に、融点がアルミニウムより低い低融点ガラスからなる絶縁ガラス33のタブレットをセットする。
【0086】
次に、セットされたベース31、リード32および絶縁ガラス33のタブレットをアルミニウムの融点以下の温度に調温された加熱炉に通して、リード32とベース31とを絶縁ガラス33によって封着して気密端子を製造する。
【0087】
図6Bに示す気密端子30を用いたアルミ電解コンデンサ40の製造方法においては、酸化被膜を表面に有する陽極用アルミニウム箔と、電解液を含浸させた電解紙と、陰極用アルミニウム箔とからなるコンデンサ素子35を、気密端子30に電気的に接続する。
【0088】
次に、開口部を有するアルミニウム製のケース36にコンデンサ素子35を挿入し、ベース31の外周面とケース36の開口部の内周面とを固定する。この固定する工程においては、ベース31の外周面をケース36の開口部の内周面に隙間なく抵抗溶接またはレーザー溶接する。
【0089】
(実施の形態4)
以下、本発明に係る実施の形態4について、
図7Aおよび
図7Bを参照して説明する。
【0090】
図7Aおよび
図7Bに示すように、本実施の形態に係る気密端子70は、ベース71と、リード72と、絶縁ガラス73とを備えている。
【0091】
ベース71は、鉄基金属材からなる母材71aの一方の表面をアルミニウム製の表面材71bで覆ったクラッド材で構成されている。ベース71は、平行な一対の側面と、その側面をつなぐ円弧を有する長円形に形成されている。ベース71には一対の通孔が設けられている。
【0092】
ベース71を構成するクラッド材の端面には母材71aが露出しているが、ベース71の内部側に向かう面は全てアルミニウムからなる表面材71bで覆われ、母材71aは露出しない。
【0093】
アルミニウムはアルミ電解コンデンサの電解液に対して耐蝕性を有する。アルミ電解コンデンサの内部側にはベース71の母材71aが露出しないので、ベース71がアルミ電解コンデンサの電解液に溶出することがない。
【0094】
二つの通孔の各々には、リード72が貫通している。リード72は、鉄基金属材からなるアウターリード72bと、アルミニウムからなるインナーリード72aとからなる。アウターリード72bの片方の端部は、インナーリード72aの片方の端部に突合せ接合されている。
【0095】
アウターリード72bとインナーリード72aとの接合部は、通孔の内部かつ内部側寄りに位置している。言い換えると、通孔を貫通するリード72の長さ方向において、多くの部分をアウターリード72bが占め、内部側のわずかな部分のみがインナーリード72aで構成される。
【0096】
アウターリード72bおよびインナーリード72aは円柱状である。インナーリード72aの形状は、接合されるコンデンサ素子の形状に応じて種々の形状に変更することができる。
【0097】
リード72とベース71とは絶縁ガラス73によって気密封着されている。具体的には、ベース71の通孔の内周面と、リード72の通孔の内周面に対向する部分との間の隙間が絶縁ガラス73によって埋められている。
【0098】
リード72のインナーリード72aとアウターリード72bとの間の接合部は、絶縁ガラス73で覆われている。インナーリード72aとアウターリード72bとの接合部が絶縁ガラス73で覆われていることにより、アウターリード72bは内部側に露出しない。これにより、電解液にアウターリード72bが接触することはない。電解液にはリード72のうち、電解液に対して耐蝕性を有するアルミニウム製のインナーリード72aのみが接触するので、金属が溶出して電解液を汚染することがない。
【0099】
気密端子70には、図示しないケースおよびコンデンサ素子が取り付けられてアルミ電解コンデンサが構成される。ケースの平面形状は、
図7Aに示すベース71の平面形状に対応する細長い形状となる。ケースの開口部に、気密端子70は気密封着される。ケースの気密封着は、ケースの端部内周面とベース71の外周面とを全周に亙って隙間なく抵抗溶接することにより行なう。より具体的には、ケースの端部内周面と、ベース71の表面材71bの外周面とを溶接する。溶接工程においては抵抗溶接またはレーザー溶接を用いることができる。
【0100】
ケースと気密端子70とが気密封着されているので、ケースと気密端子70との間の気密性を確保することができる。特に、本実施の形態においては、ケースは非円筒形状であるが、そのようなケースを有するアルミ電解コンデンサであっても高い気密性を確保することができる。また気密端子70のベース71とリード72との間も絶縁ガラス73によって気密封着することにより高い気密性が確保されている。これらにより、ケース内の電解液のドライアップを防止することができ、アルミ電解コンデンサの長寿命化を図ることができる。
【0101】
(実施の形態5)
以下、本発明に係る実施の形態5について、
図8を参照して説明する。
図8に示すように、本実施の形態に係る気密端子80は、ベース81と、リード82と、絶縁ガラス83とを備えている。
【0102】
ベース81は、鉄基金属材からなる母材81aの一方の表面をアルミニウム製の表面材81bで覆うと共に、母材81aと表面材81bとの間に中間層81cとしてニッケルの薄板を挿入したクラッド材で構成されている。ベース81は、平行な一対の側面と、その側面をつなぐ円弧を有する略矩形状に形成されている。ここでは鉄基金属材として、SUS304を用いている。ベース81には一対の通孔が設けられている。
【0103】
表面材81bは外側に広がった拡大部81sを有している。ベース81を構成するクラッド材の端面には母材81aおよび中間層81cが露出しているが、ベース81の拡大部81sの内周側の内部側に向かう面は全てアルミニウムからなる表面材81bで覆われ、母材81aおよび中間層81cは露出しない。
【0104】
アルミニウムはアルミ電解コンデンサの電解液に対して耐蝕性を有する。アルミ電解コンデンサの内部側にはベース81の母材81aおよび中間層81cが露出しないので、母材81aがアルミ電解コンデンサの電解液に溶出することがない。
【0105】
二つの通孔の各々には、リード82が貫通している。リード82は、鉄基金属材からなるアウターリード82bと、アルミニウムからなるインナーリード82aとからなる。アウターリード82bの片方の端部は、インナーリード82aの片方の端部に突合せ接合されている。
【0106】
アウターリード82bとインナーリード82aとの接合部は、通孔の内部かつ内部側寄りに位置している。言い換えると、通孔を貫通するリード82の長さ方向において、多くの部分をアウターリード82bが占め、内部側のわずかな部分のみがインナーリード82aで構成される。
【0107】
アウターリード82bおよびインナーリード82aは円柱状である。インナーリード82aはアウターリード82bよりも大径である。インナーリード82aの形状は、接合されるコンデンサ素子の形状に応じて種々の形状に変更することができる。
【0108】
リード82とベース81とは絶縁ガラス83によって気密封着されている。具体的には、ベース81の通孔の内周面と、リード82の通孔の内周面に対向する部分との間の隙間が絶縁ガラス83によって埋められている。
【0109】
リード82のインナーリード82aとアウターリード82bとの間の接合部は、絶縁ガラス83で覆われている。インナーリード82aとアウターリード82bとの接合部が絶縁ガラス83で覆われていることにより、アウターリード82bは内部側に露出しない。これにより、電解液にアウターリード82bが接触することはない。電解液にはリード82のうち、電解液に対して耐蝕性を有するアルミニウム製のインナーリード82aのみが接触するので、金属が溶出して電解液を汚染することがない。
【0110】
次に、気密端子80には、図示しないケースおよびコンデンサ素子が取り付けられてアルミ電解コンデンサを構成する。ケースの平面形状は、
図8Aに示すベース81の平面形状に対応する細長い形状となる。ケースの開口部に、気密端子80は気密封着される。ケースの気密封着は、ケースの端部内周面とベース81の拡大部81sより内部側の外周面とを全周に亙って隙間なく抵抗溶接またはレーザー溶接する。
【0111】
ケースと気密端子80とが気密封着されているので、ケースと気密端子80との間の気密性を確保することができる。特に、本実施の形態においては、ケースは非円筒形状であるが、そのようなケースを有するアルミ電解コンデンサであっても高い気密性を確保することができる。また気密端子80のベース81とリード82との間も絶縁ガラス83で気密封着されることにより高い気密性が確保されている。これらにより、ケース内の電解液のドライアップを防止することができ、アルミ電解コンデンサの長寿命化を図ることができる。
【0112】
(実施の形態6)
以下、本発明に係る実施の形態6について、
図9Aおよび
図9Bを参照して説明する。
【0113】
図9Aおよび
図9Bに示すように、本実施の形態に係る気密端子90は、ベース91と、リード92と、絶縁ガラス93とを備えている。
【0114】
ベース91は、鉄基金属材からなる母材91aの一方の表面をアルミニウム製の表面材91bで覆ったクラッド材で構成されている。ベース91は、平面視において長方形に形成されている。ベース91には等間隔に3つの通孔が設けられている。
【0115】
ベース91を構成するクラッド材の端面には母材91aが露出しているが、ベース91の内部側に向かう面は全てアルミニウムからなる表面材91bで覆われ、母材91aは露出しない。
【0116】
アルミニウムはアルミ電解コンデンサの電解液に対して耐蝕性を有する。アルミ電解コンデンサの内部側にはベース91の母材91aが露出しないので、母材91aがアルミ電解コンデンサの電解液に溶出することがない。
【0117】
3つの通孔のうち隣接する2つの通孔の各々には、リード92が貫通している。リード92は、鉄基金属材からなるアウターリード92bと、アルミニウム製のインナーリード92aとからなる。アウターリード92bの片方の端部は、インナーリード92aの片方の端部に突合せ接合されている。
【0118】
アウターリード92bとインナーリード92aとの接合部は、通孔の内部かつ内部側寄りに位置している。言い換えると、通孔を貫通するリード92の長さ方向において、多くの部分をアウターリード92bが占め、内部側のわずかな部分のみがインナーリード92aで構成される。
【0119】
アウターリード92bおよびインナーリード92aは円柱状である。インナーリード92aの形状は、接合されるコンデンサ素子の形状に応じて種々の形状に変更することができる。
【0120】
リード92とベース91とは絶縁ガラス93によって気密封着されている。具体的には、ベース91の通孔の内周面と、リード92の通孔の内周面に対向する部分との間の隙間が絶縁ガラス93によって埋められている。
【0121】
リード92のインナーリード92aとアウターリード92bとの間の接合部は、絶縁ガラス93で覆われている。インナーリード92aとアウターリード92bとの接合部が絶縁ガラス93で覆われていることにより、アウターリード92bは内部側に露出しない。これにより、電解液にアウターリード92bが接触することはない。電解液にはリード92のうち、電解液に対して耐蝕性を有するアルミニウム製のインナーリード92aのみが接触するので、金属が溶出して電解液を汚染することがない。
【0122】
3つめの通孔91hは、内圧が過剰となった時に電解液溶媒の蒸気を逃がすために設けられている。この通孔91hには、弁または外部側に破孔する蓋体または栓などが装着される。
【0123】
気密端子90には、図示しないケースおよびコンデンサ素子が取り付けられてアルミ電解コンデンサを構成する。ケースの平面形状は、
図9Aに示すベース91の平面形状に対応する長方形となる。ケースの開口部に、気密端子90は気密封着される。ケースの気密封着は、ケースの端部内周面とベース91の外周面とを全周に亙って隙間なく溶接することにより行なう。より具体的には、ケースの端部内周面と、ベース91の表面材91bの外周面とを溶接する。溶接工程においては抵抗溶接またはレーザー溶接を用いることができる。
【0124】
ケースと気密端子90とが気密封着されているので、ケースと気密端子90との間の気密性を確保することができる。特に、本実施の形態においては、ケースは非円筒形状であるが、そのようなケースを有するアルミ電解コンデンサであっても高い気密性を確保することができる。また気密端子90のベース91とリード92との間も絶縁ガラス93により気密封着されて高い気密性が確保されている。これらにより、ケース内の電解液のドライアップを防止することができ、アルミ電解コンデンサの長寿命化を図ることができる。
【0125】
(実施の形態7)
以下、本発明に係る実施の形態7について、
図10Aおよび
図10Bを参照して説明する。
【0126】
図10Aおよび
図10Bに示すように、本実施の形態に係る気密端子100は、ベース101と、リード102と、絶縁ガラス103とを備えている。
【0127】
ベース101は、鉄基金属材からなる母材101aの一方の表面をアルミニウム製の表面材101bで覆ったクラッド材で構成されている。ベース101は、円盤状に形成されている。ベース101には1つの通孔が設けられている。
【0128】
ベース101を構成するクラッド材の端面には母材101aが露出しているが、ベース101の内部側に向かう面は全てアルミニウムからなる表面材101bで覆われ、母材101aは露出しない。
【0129】
アルミニウムはアルミ電解コンデンサの電解液に対して耐蝕性を有する。アルミ電解コンデンサの内部側にはベース101の母材101aが露出しないので、母材101aがアルミ電解コンデンサの電解液に溶出することがない。
【0130】
ベース101の外部側の面には突出部101gが設けられている。突出部101gは、円柱状に構成されている。ベース101にはコンデンサ素子のグランド側が、直接またはケースを介して電気的に接続される。
【0131】
ベース101の通孔には、リード102が貫通している。リード102は、鉄基金属材からなるアウターリード102bと、アルミニウム製のインナーリード102aとからなる。アウターリード102bの片方の端部は、インナーリード102aの片方の端部に突合せ接合されている。
【0132】
アウターリード102bおよびインナーリード102aは円柱状である。インナーリード102aの内部側にはコンデンサ素子が電気的に接続される。インナーリードの形状は、接合されるコンデンサ素子の形状に応じて種々の形状に変更することができる。
【0133】
リード102とベース101とは絶縁ガラス103によって気密封着されている。具体的には、ベース101の通孔の内周面と、リード102の通孔の内周面に対向する部分との間の隙間の一部が絶縁ガラス103によって埋められている。
図10Bに示すように、絶縁ガラス103によって埋められているのは、通孔の長さ方向の一部である。絶縁ガラス103が、通孔の長さ方向の全長に亙るようにしてもよい。
【0134】
リード102のインナーリード102aとアウターリード102bとの間の接合部は、絶縁ガラス103で覆われている。インナーリード102aとアウターリード102bとの接合部が絶縁ガラス103で覆われていることにより、アウターリード102bは内部側に露出しない。これにより、電解液にアウターリード102bが接触することはない。電解液にはリード102のうち、電解液に対して耐蝕性を有するアルミニウム製のインナーリード102aのみが接触するので、金属が溶出して電解液を汚染することがない。
【0135】
気密端子100には、図示しないケースおよびコンデンサ素子が取り付けられてアルミ電解コンデンサを構成する。ケースの開口部に、気密端子100は気密封着される。ケースの気密封着は、ケースの端部内周面とベース101の外周面とを全周に亙って隙間なく溶接することにより行なう。より具体的には、ケースの端部内周面と、ベース101の表面材101bの外周面とを溶接する。溶接工程においては抵抗溶接またはレーザー溶接を用いることができる。
【0136】
ケースと気密端子100とが気密封着されているので、ケースと気密端子100との間の気密性を確保することができる。また気密端子100のベース101とリード102との間も絶縁ガラス103で気密封着することにより高い気密性が確保されている。これらにより、ケース内の電解液のドライアップを防止することができ、アルミ電解コンデンサの長寿命化を図ることができる。
【0137】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。