(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記基材における、上記コード状ヒータが配設される面には、上記コード状ヒータ以外は配設されないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒータユニット。
当該ヒータユニットは、ホイール芯材と、被覆材との間に積層され、上記基材における上記コード状ヒータを配設した側を上記被覆材の側に接着してあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒータユニット。
上記基材は、気孔率の異なる複数の発泡体の層で構成され、上記コード状ヒータが配設される発泡体の気孔率が、積層される他の発泡体の層の気孔率よりも高いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒータユニット。
高分子発泡体からなる基材と、コード状ヒータとからなるヒータユニットの製造方法であって、上記基材上に、所定のパターン形状で上記コード状ヒータを配設し、上記基材を平板によって加熱加圧することで、上記基材における上記コード状ヒータが配設される箇所の厚さを、該コード状ヒータの形状に沿うように薄くし、それによって概ね平坦な形状のヒータユニットとし、
上記コード状ヒータは、ヒータ芯の外周に導体素線を巻装した芯材を有し、
上記コード状ヒータにおける上記コード状ヒータの芯線を包み込む最外層に熱融着部が形成され、
上記コード状ヒータの熱融着部が溶融して上記高分子発泡体に浸透した固定部を有しており、
上記固定部の幅が、上記コード状ヒータの上記芯材の幅の3倍を超えるヒータユニットの製造方法。
請求項1に記載のヒータユニットと、ホイール芯材と、被覆材とからなり、上記ホイール芯材と上記被覆材の間に上記ヒータユニットが設置されるステアリングホイール。
上記ヒータユニットは、上記基材における上記コード状ヒータを配設した側を上記被覆材の側に接着してあることを特徴とする請求項11に記載のステアリングホイール。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、本実施の形態におけるコード状ヒータ1の構成から説明する。本実施の形態におけるコード状ヒータ1は
図5に示すような構成になっている。まず、外径約0.2mmの芳香族ポリアミド繊維束からなるヒータ芯3の外周に、素線径0.08mmの錫銅合金線からなる導体素線5aを7本引き揃え、ピッチ1.00mmで螺旋状に巻装してコード状ヒータ1を構成する。なお、導体素線5aには、ポリウレタンからなる絶縁被膜5bが厚さ約0.005mmで被覆されている。この外周に、熱融着部9としての難燃剤が配合されたポリエチレン樹脂が0.25mmの厚さで押出・被覆されている。コード状ヒータ1はこのような構成になっていて、その仕上外径は0.9mmである。
【0012】
次に、上記構成をなすコード状ヒータ1を配設する基材10の構成について説明する。実施の形態1における基材10は、見かけ密度0.04g/cm
3、(JIS K7222準拠)、硬さ220N(JIS K6400−2準拠)、厚さ8mmの発泡ポリウレタン樹脂からなる。
【0013】
次に、上記コード状ヒータ1を基材10上に所定のパターン形状で配設して接着・固定する構成について説明する。
図6はコード状ヒータ1が配設された基材を加熱加圧するためのホットプレス式ヒータ製造装置13の構成を示す図である。まず、ホットプレス治具15があり、このホットプレス治具15上には複数個の係り止め機構17が設けられている。上記係り止め機構17は、
図7に示すように、ピン19を備えていて、このピン19はホットプレス冶具15に穿孔された孔21内に下方より差し込まれている。このピン19の上部には先端が針となった係り止め部材23が軸方向に移動可能に取り付けられていて、コイルスプリング25によって常時上方に付勢されている。そして、
図7中仮想線で示すように、これら複数個の係り止め機構17の係り止め部材23にコード状ヒータ1を引っ掛けながら、一方の基材10上に、コード状ヒータ1を所定のパターン形状にて配設することになる。
【0014】
図6に戻って、上記複数個の係り止め機構17の上方にはプレス熱板27が昇降可能に配置されている。すなわち、コード状ヒータ1を複数個の係り止め機構17の係り止め部材23に引っ掛けながら所定のパターン形状にて配設し、その上に基材10を置く。その状態で上記プレス熱板27を降下させてコード状ヒータ1と基材10に、加熱加圧を施すものである。このプレス熱板27の効果にあたっては、少なくとも、基材10の圧縮量がコード状ヒータ1の外径よりも大きくなるように設計する必要がある。それによって、基材10が圧縮されるとともに、コード状ヒータ1の熱融着層9が融着してコード状ヒータ1と基材10が接着・固定されることになる。尚、上記プレス熱板27の降下による加熱加圧時には複数個の係り止め機構17の係り止め部材23はコイルスプリング25の付勢力に抗して下方に移動するものである。本実施の形態においては、この後に基材10を裏返し、コード状ヒータ1を配設した側の面から更にプレス熱板によって加熱加圧を行った。
【0015】
上記作業を行うことにより、
図1及び
図2に示すようなステアリングホイール用のヒータユニット31を得た。なお、
図2は
図1の要部を拡大して示す断面図である。基材10は、平板のプレス熱板27によって圧縮されることになるため、コード状ヒータ1が配設される箇所については、より強く加圧されることになる。これにより、基材10におけるコード状ヒータ1が配設される箇所は、コード状ヒータ1の形状に沿うような形状で、他の箇所よりも薄くなる。また、コード状ヒータ1の熱融着層9についても、加熱加圧により大きく変形して、基材10と接しない箇所の厚さが薄くなって実質的に平坦な形状になる。これらにより、ヒータユニット31は、コード状ヒータ1が配設される箇所においても凹凸がなく、概ね平坦な形状となるとともに、熱融着層9の形状保持により、この概ね平坦な形状が維持されることになる。また、このようにして得られたヒータユニット31は、基材10が圧縮され高密度になっているため、機械的強度を向上させることができる。なお、本実施の形態によって得られたヒータユニットの厚さは1.00mmであり、コード状ヒータ1が配設された箇所における基材10の最小厚さは0.52mmであり、コード状ヒータ1が配設されていない箇所における基材10の厚さは1.00mmであった。
図9に、ヒータユニット31の断面における要部のSEM写真を示す。コード状ヒータ1の熱融着層9は、基材10の表面から約0.5mmの部分まで含浸されていた。例えば、コード状ヒータ1が配設される箇所において、周囲の厚みと比較しても凹凸がなく、±10%程度の範囲内の厚みの変化は、概ね平坦であるし、実質的にほぼ一定の厚みである。または、厚みの変化は使用者が視認的にも感触的にも凹凸を感じない範囲なら概ね平坦とも言える。
【0016】
上記のようにして得られた実施の形態によるヒータユニット31について、コード状ヒータ1の両端は、引き出されてリード線35に接続され、このリード線35により、コード状ヒータ1、温度制御装置39、及び、コネクタ(図示しない)が接続されている。温度制御装置はコード状ヒータ1上に配置され、コード状ヒータ1の発熱によってヒータユニットの温度制御を行うこととなる。また、基材10に突出部10fを形成しておいてもよい。温度制御装置39及びコード状ヒータ1とリード線35との接続部は、衝撃等からの防御のため、基材の突出部10fで包まれて保護される構成も考えられる。この観点から、突出部10fには加熱加圧をしないことも考えられる。そして、上記したコネクタを介して図示しない車両の電気系統に接続されることになる。又、上記構成をなすヒータユニット31は、
図3に示すような状態で、ステアリングホイール71のホイール芯材77と被覆材78の間に設置されることになる。
【0017】
基材10には、ヒータユニット31とステアリングホイールの被覆材78とを接着するための接着層(図示しない)が形成される。接着層の形成は、予め離型シート上に接着剤のみからなる接着層を形成し、該接着層を上記離型シートから上記基材10の表面に転写することが好ましい。これにより、接着剤は基材10の内部には侵入せず、基材10の表面のみに接着層が形成されることになる。なお、実施の形態3においては、ヒータユニット31と被覆材78とを接着する際、コード状ヒータ1を配設した側と被覆材78とを接着するより、コード状ヒータ1を配設しない側と被覆材78とを接着する方が好ましい。これは、コード状ヒータ1による凹凸が被覆材78表面に表れにくくなるためである。
【0018】
上記のようにして得られた実施の形態によるヒータユニット31について、
図3に示すようにステアリングホイールに組み込んだ状態で、実使用に供し、違和感の確認を行った。確認は、10人の使用者がステアリングホイールを握り、左右10回ずつ操舵作業を行って、コード状ヒータ1による凹凸を感じるかを聞き取り調査した。その結果、実施の形態のものについて、違和感を覚えると回答した使用者は0人だった。
【0019】
(第2の実施形態)
基材10として、見かけ密度0.04g/cm
3(JIS K7222準拠)、硬さ220N(JIS K6400−2準拠)、厚さ6mmの発泡ポリウレタン樹脂からなる1枚の発泡体を使用し、実施の形態1と同様にコード状ヒータを配設した。このようにして、
図1及び
図2に示すようなヒータユニットを得た。この際、厚さ1mmになるまで基材10を加熱加圧して圧縮しており、加熱加圧後は、見かけ密度0.32g/cm
3(JIS K7222準拠)となっている。
【0020】
(第3の実施形態)
基材10として、見かけ密度0.04g/cm
3、(JIS K7222準拠)、硬さ220N(JIS K6400−2準拠)、厚さ4mmの発泡ポリウレタン樹脂からなる発泡体2枚を重ねて使用し、本実施の形態と同様にコード状ヒータを配設した。このようにして、
図1及び
図10に示すようなステアリングホイール用のヒータユニット31を得た。なお、
図10は
図1の要部を拡大して示す断面図である。この際、厚さ1mmになるまで基材10を加熱加圧して圧縮しており、加熱加圧後は、見かけ密度0.32g/cm
3(JIS K7222準拠)となっている。実施の形態3では便宜的に、コード状ヒータ1が配設される側の発泡体を第1の発泡体11、反対側の発泡体を第2の発泡体とする。
この際、熱融着層9が、基材10を構成する第1の発泡体11及び第2の発泡体12の両方に含浸されるようにすれば、第1の発泡体11と第2の発泡体12が強固に接着される。そのため、第1の発泡体11と第2の発泡体12が分離してしまうことを防止できる。
なお、コード状ヒータ1を熱融着する際に、第1の発泡体11と第2の発泡体12に対して充分に加熱加圧して高圧縮とした場合、接着層を使用しなくても、コード状ヒータ1が配設されていない箇所について、第1の発泡体11と第2の発泡体12を固定させることができる。これは、一方の発泡体の気孔中にもう一方の発泡体の非気孔部が入り込み、アンカー効果によって2つの発泡体を固定させることによるものである。このようにして2枚の発泡体が積層された基材10に対し、剥離強度を測定した。剥離強度の測定は、剥離強度は、プッシュプルゲージによって測定される。基材10を25mm×150mmに切り出し、長手方向端部から50mmの部分を予め剥離しておき、第1の発泡体11の端部をプッシュプルゲージに固定し、第2の発泡体12の端部を掴持して、10mm/sの速度でプッシュプルゲージと反対の方向に引き剥がし(剥離角度180度)、最大荷重となった値を剥離強度とした。このようにして測定された実施の形態3によるヒータユニット31における第1の発泡体11と第2の発泡体12との剥離強度は、6.2Nであり、実使用上充分な値であった。また、剥離後の状態を確認したところ、界面剥離ではなく、材料破壊による剥離であることが確認でき、この点からも充分な接着が得られていることが確認された。参考までに、第1の発泡体11と第2の発泡体12とを両面粘着テープで接着したサンプルを使用して、同様に剥離強度を測定したところ、剥離強度は、13.7Nであった。また、コード状ヒータ1を使用せず、単に第1の発泡体11と第2の発泡体12とを上記実施の形態3と同様に加熱加圧して高圧縮とし、第1の発泡体11と第2の発泡体12とを固定したサンプルを使用して、同様に剥離強度を測定したところ、剥離強度は、5.0Nであり、界面剥離がされていた。
通常の発泡体1つのみからなる基材10の場合、万が一、発泡体に亀裂や裂けが生ずると、その亀裂や裂けが拡大していって、基材10として断裂してしまうことになる。ここで、複数の発泡体を積層した基材であれば、1つの発泡体に亀裂や裂けが生じても、その亀裂や裂けの拡大は、当該発泡体のみで収まり、他の発泡体には影響しない。そのため、基材10として断裂に至ることを防止できる。
また、基材10が、第1の発泡体11及び第2の発泡体12を積層してなるものであれば、これら2つの発泡体を異なる特性のものとすることで、複合的な特性を有する基材とすることができる。例えば、以下のようなものが考えられる。一方の発泡体について、気孔率の高いものを選択することが考えられる。コード状ヒータ1を配設する側の発泡体を気孔率の高いものとすることで、コード状ヒータ1がより確実に発泡体中に入り込み、概ね平坦なヒータユニット31を得ることができる。また、コード状ヒータ1を配設しない側の発泡体を気孔率の高いものとし、その他の樹脂を溶融充填して複合材料とすることも考えられる。ヒータユニット31をホイール芯材77上に接着し、その上にウレタン樹脂等を射出成型することで、ヒータユニット31が埋設されたステアリングホイールを得ることができるが、コード状ヒータ1を配設しない側の発泡体を気孔率の高いものとした発泡体を使用すれば、射出成型したウレタン樹脂等が発泡体の気孔中に充填され、確実にヒータユニット31が固定されることになる。また、硬度が異なる発泡体を積層することで、ヒータユニット31やそれを組み込んだ製品に使用者が触れた際に、コード状ヒータ1が存在することを感じにくくさせることができる。また、難燃性に優れる発泡体、引張強度の高い発泡体、耐薬品性に優れる発泡体、耐熱性に優れる発泡体、耐電圧特性に優れる発泡体、電磁波遮蔽特性を備える発泡体、低反発性を有する発泡体、低温脆性に優れる発泡体、熱伝導率が高い発泡体等、種々の発泡体を組合せることによって、付加的な機能が付与されたヒータユニット31にすることができる。また、薄い発泡体を積層したものであれば、コード状ヒータを熱融着により配設する際にも、薄い発泡体に配設した後に、他の発泡体を貼付するような工程を取ることができ、発泡体による断熱の影響による融着不良を防ぐことができる。また、更に第3の発泡体等、他の発泡体を積層させた多層構造としても良い。この場合、全ての発泡体の気孔に熱融着層9が含浸されていることが好ましい。
図11に、実施の形態3によるヒータユニット31の断面における要部のSEM写真を示す。熱融着層9が第1の発泡体11及び第2の発泡体12の気孔中に含浸されていることが確認される。また、第1の発泡体11の気孔中に第2の発泡体12の非気孔部が入り込み、且つ、第2の発泡体12の気孔中に第1の発泡体11の非気孔部が入り込み、アンカー効果によって第1の発泡体11と第2の発泡体12が固定されていることが確認される。また、コード状ヒータ1の熱融着層9は、基材10の表面から約5mmの部分まで含浸されていた。
【0021】
(第4の実施形態、第5の実施形態、第6の実施形態)
次に、
図12A〜
図14Cを参照して、第4の実施形態、第5の実施形態、第6の実施形態を説明する。
図12A〜12Cはヒータユニットの表面外観を示す図であり、
図12Aは第4の実施形態を示し、
図12Bは第5の実施形態を示し、
図12Cは第6の実施形態を示している。
図13A〜13Cはヒータユニットの裏面外観を示す図であり、
図13Aは第4の実施形態を示し、
図13Bは第5の実施形態を示し、
図13Cは第6の実施形態を示している。
図14A〜14Cはヒータユニットの断面のSEM写真を示す図であり、
図14Aは第4の実施形態を示し、
図14Bは第5の実施形態を示し、
図14Cは第6の実施形態を示している。
第4〜第5の実施形態のヒータユニットは、高分子発泡体からなる基材と、コード状ヒータとからなる。コード状ヒータは、上述したように、外径約0.19mmの芳香族ポリアミド繊維束からなるヒータ芯の外周に、素線径0.08mmの錫銅合金線からなる導体素線を7本引き揃え、ピッチ1.00mmで螺旋状に巻装して形成されている。導体素線の絶縁被膜の厚みは、0.005mmである。このようにしてヒータ芯の外周に導体素線を螺旋状に巻装した状態のことを芯材と呼ぶ。芯材の外周に、熱融着部9としての難燃剤が配合されたポリエステル系樹脂が押出・被覆されている。
芯材の径は、第4〜第6の実施形態において共通の0.37mmであり、熱融着部9の厚み(量)を変えることで、コード状ヒータの外径は、第4の実施形態において0.60mm、第5の実施形態において0.77mm、第6の実施形態において0.97mmとなっている。また、それぞれにおいて、熱融着部の厚さは、第4の実施形態において0.115mm、第5の実施形態において0.20mm、第6の実施形態において0.30mmとなっている。
このヒータユニットでは、ヒータの芯材を包み込む最外層には熱融着部9が形成され、コード状ヒータを基材10上に配設させた上で加熱加圧する。この過程でコード状ヒータの熱融着部9が溶融するため、液状となって基材10の高分子発泡体に浸透し、固定部を形成する。熱融着部9の厚み(量)が変わることで、溶融したときに高分子発泡体である基材10に含浸される範囲に変化が生じる。固定部は、コード状ヒータの熱融着部が溶融し、押圧されている基材10の高分子発泡体に浸透して固着している部位を指している。
熱融着部9が溶融して固定部を形成しており、熱融着部9の原形をとどめている必要はない。むしろ、コード状ヒータは基材10に対して押圧されているので、加熱加圧される前は基材10から反発力を受けている。加熱加圧されることで、熱溶着部9は一部または全部が溶融して液状となり、基材10と接していた部分から高分子発泡体の気泡内に入り込むと考えられる。加熱加圧を終了して冷却した状態では、断面視で基材10を基準とした幅方向および厚み方向に浸透した形状となっていることが分かる。その最外層部分で高分子発泡体である基材10と合体した部位を形成することになる。このように両者が合体した部位を形成することにより、コード状ヒータと基材10との接着強度が強固になっていると推察される。
また、コード状ヒータは固定部の内部にあり、さらに固定部は基材10に入り込んでいる。コード状ヒータを配設した部位の厚さは、コード状ヒータを配設していない基材10だけの部位の厚さを超えていない。ただし、本実施例では、コード状ヒータを配設した部位の厚さは、コード状ヒータを配設していない基材10だけの部位の厚さを超えていないが、コード状ヒータを配設した部位の厚さがわずかにコード状ヒータを配設していない基材10の部位の厚さを超えている場合を完全に排除するものではない。わずかに超えているとしても、ステアリングを操作して違和感を感じない範囲であれば、本発明の範囲といえる。別の観点で、コード状ヒータを内蔵する固定部の堅さによっては、基材10よりも厚くても違和感を感じなかったり、基材10よりも薄くても違和感を感じなかったりすることは想定可能である。
基材10の厚さ(KA)、芯材(芯+素線)の径(KB)、基材に含浸した熱融着部(固定部)の幅(KC)、基材に含浸した熱融着部(固定部)の基材の深さ(KD)とすると、以下の結果であった。
【表1】
ここで、熱融着部の基材への含浸の状況を表すため、本実施形態においては、固定部の厚さと基材の厚みの比(KD/KA)、固定部の幅と芯材の幅の比(KC/KB)、固定部の厚さと芯材の幅の比(D/B)を計測したところ、以下の結果であった。
【表2】
まず、本実施形態のヒータユニットは、高分子発泡体からなる基材と、ヒータの芯材を包み込む最外層には熱融着部が形成されて前記基材上に配設されるコード状ヒータとからなるヒータユニットであって、上記コード状ヒータの熱融着部が溶融して上記高分子発泡体に浸透した固定部を有している。
また、このヒータユニットの製造方法は、上記コード状ヒータの熱融着部を溶融せしめて上記高分子発泡体に浸透した固定部を形成させることを特徴としている。
さらに、これらに共通して、以下の特徴がある。
第4の実施形態より、上記固定部の厚さが、上記基材の厚みの60%を超えているといえる。
第5および第6の実施形態より、上記固定部の厚さが、上記基材の全体の厚みと略同一といえる。
第4の実施形態より、上記固定部の幅が、上記芯材の幅の3倍を超えるといえる。
第5および第6の実施形態より、上記固定部の幅が、上記芯材の幅の5倍を超えない
といえる。
第4の実施形態より、上記固定部の厚さが、上記芯材の幅の1.3倍を超えるといえる。
第5の実施形態より、上記固定部の厚さが、上記芯材の幅の2.5倍を超えないといえる。
むろん、少なくとも上記数値は一実施形態の具体例に過ぎないから、当業者の一般的な感覚を考慮しても、下限値の50%〜上限値の200%の範囲、好ましくは下限値の75%〜上限値の150%の範囲、さらに好ましくは下限値の90%〜上限値の110%の範囲では、同様の効果を発することは期待できる。
発明者の考察は、以下のようであった。
現時点では、熱融着部厚さ=0.115mmのものが、現実的には実施可能な最も薄いものといえる。
熱融着部の含浸深さは、深いほど接着力は強くなる。基材裏側まで達するようなもの(KD/KA=100%)の場合、その部分が異物になってステアリング表面に浮き出て違和感となってしまう可能性はある。
固定部の幅や深さは、芯材(芯や素線)を基材に確実に固定するために必要な値が設計されるため、芯材(芯+素線)の径と対比する必要があると考えた。本実施形態では、当社品はヒータ芯に素線を横巻する構成としたが、ヒータ芯を使用せず複数の素線を撚り合わせるだけのものとして実現することも可能である。
固定部の幅も、広いほど接着力は強くなる。広すぎても違和感の原因となる。この点に関しては、300%≦KC/KB≦500%程度が好適であると考える。
芯材(芯+素線)に対する固定部の深さについて、基材からはみ出ないようにするためKD/KB>100%とする必要がある。深すぎても違和感の原因となるため、KD/KB≦250%程度にすることが好適であると考える。
製造方法に関して(見かけ密度0.04g/cm
3のポリウレタンを0.8mmに圧縮する)
第4の実施形態〜第5の実施形態の製造条件は以下のとおりであった。
熱圧縮条件
プレス熱板27 215℃±10℃
ホットプレス冶具15 15230℃±10℃
下降圧力 1回目0.3MPa 2回目0.5〜1.0MPa
圧縮時間 25±2秒(s)
成果物の形態が異なる場合、例えば、基材や熱融着部に他種類の材料を使用する、基材の見かけ密度・気孔率が異なるものを使用する、圧縮後の厚さを変更する、等といった場合、この条件とは異なる条件にて加熱加圧することになる。また、もっと低い温度にして圧縮時間を長くする等、この条件に当てはまらない製法でも得られるものが同じになる可能性もある。
【0022】
尚、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。コード状ヒータ1には、従来公知の如何なるコード状ヒータも使用することができる。例えば、特許第4202071号公報に記載されているような、ヒータ芯の外周に発熱体素線を引き揃えて構成された発熱体が巻回され、その外周にFEPからなる絶縁体層、必要に応じてポリエチレンからなる熱融着層が形成されたコード状ヒータ、特願2007−158452明細書に開示されているような、ヒータ芯3が熱収縮性及び熱溶融性を有するものであるコード状ヒータ、特願2007−158453明細書に開示されているような、発熱体が絶縁被膜により被覆された導体素線を引き揃えたものから構成されたコード状ヒータ、特開2007−134341公報に開示されているような、発熱体が銅固溶体と銅銀共晶がファイバー状になった銀入り銅合金線の素線であるものから構成されたコード状ヒータなどを使用しても良い。また、
図4に示すような構成のものも考えられる。具体的には、まず、外径約0.2mmの芳香族ポリアミド繊維束からなるヒータ芯3の外周に、素線径0.08mmの錫銅合金線からなる導体素線5aを7本引き揃え、ピッチ1.00mmで螺旋状に巻装してコード状ヒータ1を構成する。なお、導体素線5aには、ポリウレタンからなる絶縁被膜5bが厚さ約0.005mmで被覆されている。コード状ヒータ1はこのような構成になっていて、その仕上外径は0.38mmある。
【0023】
基材10についても、発泡ポリウレタン樹脂に限定されるものではなく、例えば、他の材質からなる発泡樹脂シート、発泡ゴムシートなど種々の高分子発泡体が考えられる。特に伸縮性に優れるものが好ましく、表面にコード状ヒータの凹凸が現れないように硬度を調節したものが好ましい。また、硬度を調節するには、発泡率を調整する、気泡の状態を独立気泡または連続気泡にする、目的に応じた硬度の材料を使用するなどの方法がある。材料としては、ポリウレタン樹脂、クロロプレンゴム、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ネオプレンゴム、ジエン系ゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体など、種々の樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどから選択すれば良い。また、基材10は複数用いても良い。複数の基材10を層状に積層しても良い。この場合、複数の基材10それぞれを異なる材質のものとしても良い。これにより、表面にコード状ヒータの凹凸が表れにくくなる。また、気泡内など基材10の内部空隙にまで接着剤が侵入しないように接着層を形成すれば、基材10が硬化して伸縮性を損なうことはなく、風合いが悪化することもないため好ましい。
【0024】
また、コード状ヒータ1を基材10に配設する際、加熱加圧による融着によって接着・固定する態様でなく、他の態様によりコード状ヒータ1を基材10に固定しても良い。例えば、縫製によりコード状ヒータ1を基材10に固定しても良いし、他の態様を用いても良い。また、基材10を加熱加圧する際には、プレス熱板27のみでなくホットプレス治具15についても加熱しても良い。この際、プレス熱板27とホットプレス治具15の温度を異なるものとして、基材10の圧縮率を変え、即ち気孔率を変化させることも考えられる。
【0025】
また、接着層としては、例えば、高分子アクリル系粘着剤からなりテープ基材を使用しない接着層や、ポリプロピレンフィルムの両面に接着剤を形成してなる接着層など種々のもの使用できる。それ単独でFMVSS No.302自動車内装材料の燃焼試験に合格するような難燃性を有するものであれば、ヒータユニットの難燃性が向上し好ましい。また、ヒータユニットの伸縮性を損なわないために、粘着剤のみからなる接着層であることが好ましい。
【0026】
本発明によれば、使用者がステアリング操作の際に違和感を覚えることのないようにすることができる。このようなヒータユニットは、例えば、自動車、船舶、各種輸送用車両、各種農耕用車両、各種土木建設用重機などに使用されるステアリングホイールに使用され、そのホイール部を暖めるためのヒータユニットとして好適に使用することができる。また、本発明によるヒータユニットは、コード状ヒータ部分の凹凸がなく概ね平坦なものであることを活かし、ステアリングホイールのみでなく、例えば、電気毛布、電気カーペット、カーシートヒータ、ステアリングヒータ、暖房便座、防曇鏡用ヒータ、加熱調理器具、床暖房用ヒータ、被服用ヒータ等に応用することも考えられる。
【0027】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【0028】
本発明は好適な実施形態に関して提示・記載されているが、添付した請求項に定義された発明の精神や範囲から逸脱しない範囲において、形式や詳細における前述の変更やその他の変更を加えることは、当業者が当然理解するところである。