(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記対象が、前記対象から体液サンプルが採取される時点で急性心血管イベントの診断歴を有さず、ここで前記急性心血管イベントが、心筋梗塞、脳卒中、急性心不全及び心筋
梗塞、脳卒中又は急性心不全に関連する心血管死を含む群から選択される、請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
さらに、年齢、性別、収縮期血圧、拡張期血圧、血圧降下治療(AHT)、ウエスト周囲径、ウエストヒップ比、現在の喫煙、糖尿病の遺伝及び前の心血管疾患(CVD)を含む群から選択される少なくとも1つの臨床パラメーターが決定される、請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
前記サンプルが、血液サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、脳脊髄液サンプル、唾液サンプル、及び尿サンプル、又は前記サンプルのいずれかの抽出物を含む群から選択される、請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
脂肪処理活性は、人体における脂肪の吸収、代謝及び/又は貯蔵として定義される。脂肪処理活性は、身体における脂肪の摂取、又は摂取され、そして変換される貯蔵脂肪の能力と同意語であり、高脂肪処理活性を有する女性は、肥満になるリスクが高い。
【0009】
食事脂肪葉、様々の極性及び非極性脂質から成る。トリアシルグリセロール(TAG)は、食事中の主要脂肪であり、食事脂肪に由来する総エネルギーの90〜95%を占める。食事脂肪はまた、リン酸質、ステロール(例えば、コレステロール)及び多くの他の脂質(例えば、脂溶性ビタミン)も含む。脂肪の消化は、トリグリセリドの消化工程を開始するために舌の腺により分泌される舌リパーゼの暴露を通して口腔内で始まる。消化は、舌及び胃の酵素の両者の作用により胃において継続する。胃はまた、食事脂肪及び脂溶性ビタミンの乳化の主要な部位であり、そして蠕動運動が主要な寄与因子である。脂質の粗エマルジョンは、細かな脂質小滴として十二指腸に入り、そして次に、胆汁及び膵液と混合し、化学的及び物理的形態の著しい変化を受ける。乳化は、腸壁を横切っての吸収のための調製において、加水分解及びミセル化と共に十二指腸で継続する。胆汁及び膵液は、膵臓のリパーゼ、胆汁塩及びコリパーゼを提供し、それらは脂質の消化及び吸収の効率を保証するために協力的に機能する。TAGは、空腸の上部における膵臓リパーゼにより主に消化される。遊離脂肪酸は、腸管腔から腸細胞に取り込まれ、そして中性脂肪の生合成に使用される。腸細胞内に入ると、TAG加水分解の生成物は、細胞質を横断して、小胞体(ER)に達し、ここでそれらは、複雑な脂質を合成するために使用される。
【0010】
腸により分泌される主要なリポタンパク質は、VLDL及びキロミクロン(chylomicron)である。それらのうち、キロミクロンは、腸内で独立的に合成され、食事脂肪及び脂溶性ビタミンを血液中に輸送する。キロミクロンは、主に、PL、コレステロール、ビタミンE、ビタミンA及びタンパク質を血液中に輸送する。キロミクロンは、主に、PL、コレステロール、ビタミンE、ビタミンA及びタンパク質を含む、非常に大きな球形のTAGに富んでいる粒子である。リポタンパク質は、TAG、コレステリルエステル及び脂溶性ビタミンを含み、そしてその表面はリン脂質(主に、ホスファチジルコリン)、遊離コレステロール及びタンパク質の単相を含む。
【0011】
それらが循環すると、キロミクロンのトリアシルグリセロール、筋肉及び脂肪組織の細胞血管内皮細胞の表面に位置する酵素であるリポタンパク質リパーゼによる加水分解を受ける。循環するキロミクロンは、5〜10分の半減期を有する。キロミクロンの加水分解は、キロミクロンのコアから脂肪酸及びグリセロールの放出、及びそれらの粒子表面コートからのエステル化されていないコレステロールの放出をもたらす。脱脂は、リポタンパク質リパーゼにより放出される脂肪酸を吸収し、そして酸化し、又は貯蔵する脂肪、筋肉及び心臓組織において主に起こる。
【0012】
腸吸収を逃れる、脂肪酸、コレステロール及び胆汁酸は、糞便脂肪酸、及び中性及び酸性ステロールとして、それぞれ排泄される。
【0013】
効果的脂肪処理活性を有する対象においては、胃腸管により吸収される脂肪の割合は低く、吸収される脂肪の量はほぼ完全に代謝され、そしてわずか少量の脂肪のみが対象の脂肪細胞に輸送され、そして貯蔵されるか、又はまったく輸送されず、そして貯蔵されない。対照的に、非効率的な脂肪処理活性を有する対象においては、胃腸管による脂肪吸収の割合は高いが、しかし吸収された脂肪はより少ない程度しか代謝されず、そしてより多くの脂肪が対象の脂肪細胞に輸送され、そして貯蔵される。
【0014】
用語「対象(subject)」とは、本明細書において使用される場合、生存しているヒト又は非ヒト生物を示す。好ましくは、本明細書においては、対象はヒト対象である。本発明の特定の実施形態によれば、前記対象は、非糖尿病対象である。本発明の別の特定の実施形態によれば、前記対象は、非IFG(非プレ糖尿病)対象である。本発明の別の特定の実施形態によれば、対象は、メタボリック・シンドロームに罹患している。本発明の別の特定の実施形態によれば、対象は、心臓疾患を罹患していない。本発明の別の特定の実施形態によれば、対象は女性対象である。
【0015】
用語「心疾患(cardiac disease)」とは、心筋梗塞、虚血性心疾患、脳卒中、心不全(急性又は慢性心不全)、心房細動及び心房粗動を包含する。
【0016】
用語「新発症性肥満のリスク(risk of new-onset-obesity)」とは、体液サンプルが対象から採取される時点で、前記対象は肥満でない「肥満のリスク(risk of obesity)」とは同義語である。
【0017】
本発明の1つの実施形態によれば、体液中のプロニューロテンシン又は少なくとも5個のアミノ酸のそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドのレベルは、プロニューロテンシン又は少なくとも5個のアミノ酸のそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドの空腹時レベルである。空腹時レベルとは、血液サンプルの10時間又は好ましくは12時間前、食物摂取していないことを意味する。
【0018】
プロニューロテンシン又は少なくとも5個のアミノ酸のそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドの空腹時レベルは最近の脂肪摂取によっては誘発されないので、1つの実施形態によれば、空腹時レベルは、前記対象の脂肪処理活性を定量化するための尺度であると思われる。これは、何人かの対象は多量の摂取された脂肪を処理するにつれて、肥満になる可能性があるのに対して、低レベルのプロニューロテンシン又は少なくとも5個のアミノ酸のそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドは低レベルの脂肪処理活性を有する理由を説明するミッシングリンクであり得る。しかしまた、非空腹時サンプル中のプロニューロテンシン又は少なくとも5個のアミノ酸のそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドの測定は、何人かの対象は、同じ量の摂取された脂肪により誘発される他の対象よりも高いレベルの脂肪処理活性を有するので、その脂肪処理活性の指標であり得る。後者の設定では、プロニューロテンシン又は少なくとも5個のアミノ酸のそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドが脂肪摂取の前、ベースラインで測定され得るのに対して、増強された脂肪処理活性を有する対象は、脂肪摂取に基づいてより多量の放出されたプロニューロテンシン又は少なくとも5個のアミノ酸のそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドと反応するであろう。
【0019】
従って、本発明の1つの実施形態は、対象における肥満の脂肪処理活性を決定し、そして/又は肥満のリスクを測定するための方法であり、ここで前記方法は、以下の工程を含み:
・前記対象から得られた体液中の非空腹時又は空腹時サンプル中のプロニューロテンシン1−117若しくはその少なくとも5個のアミノ酸のフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドのレベルを、イムノアッセイにより決定する工程、又は
・前記対象から得られた体液中の非空腹時又は空腹時サンプル中のプロニューロテンシン1−117又はその少なくとも5個のアミノ酸のフラグメントのレベルを決定する工程;そして
・前記対象の脂肪に投与する工程;
・脂肪摂取の後、前記対象から得られた体液のサンプル中のプロニューロテンシン1−117若しくはその少なくとも5個のアミノ酸のフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドのレベルを、イムノアッセイにより決定する工程、又は
・脂肪摂取の後、前記対象から得られた体液のサンプル中のプロニューロテンシン1−117又はその少なくとも5個のアミノ酸のフラグメントのレベルを決定する工程;そして
・脂肪摂取の後及び前、前記レベル間の差異を計算する工程;そして
・脂肪摂取の後及び前、プロニューロテンシン1−117又はそのフラグメント又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドの前記レベル間の前記差異と、前記対象における脂肪処理活性及び/又は肥満の発症リスクとを相関させる工程、ここでより高い差異が増強された脂肪処理活性の指標であり、及び/又は肥満の増強されたリスクの予測であり、そして前記対象は、その対象から体液のサンプルが採取される時点で肥満ではない。
【0020】
これは、脂肪採取の前、プロニューロテンシン1−117又は少なくとも5個のアミノ酸のそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドの間の差異、及び脂肪摂取の後の前記レベルが脂肪処理活性の指標であり得ることを意味する。脂肪摂取の前の対象の状態は、空腹でも又は非空腹でもあり得る。標準化された量の脂肪、例えば特定量の脂肪を含む特定量のクリームが、前記対象に投与される(経口脂肪耐性試験)。実施例4において、何人かの個人は他の固体よりも脂肪摂取に対してより敏感に反応し、そして従ってより高い脂肪処理活性を有することが示されている。
【0021】
新たに発症する肥満のリスクを予測し、そして脂肪処理活性を示す対象から得られる体液中のプロニューロテンシン1−117又は少なくとも5個のアミノ酸のそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドのレベルは、小腸から放出されるレベルである。小腸からのニューロテンシンの放出は、食物摂取により、特に脂肪により刺激され(Go and Demol 1981. Peptides (Suppl. 2): 267-269)、そして胃腸運動及び膵臓及び胆汁分泌を調節することが知られている(Reinecke 1985. Prog Histochem Cytochem 16: 1-172)。プロニューロテンシン1−117及びそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドは、ニューロテンシン及びプロニューロテンシン1−117及びそのフラグメント又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドは、等モル量で、プロニューロテンシンから放出されるので、放出されたニューロテンシンのための代替マーカーとして使用される。
【0022】
ニューロテンシン/プロニューロテンシン1−117又は少なくとも5個のアミノ酸のそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドの末梢分泌は、新発症肥満を発症する対象の感受性を示し、そして脂肪処理活性の尺度である。従って、脂肪摂取の減少としての食事手段は、前記対象における前記リスクを低めることができる。
【0023】
前記対象から得られた体液中のプロニューロテンシン又は少なくとも5個のアミノ酸のそのフラグメント、又はPNT1−117含有ペプチドのレベルと、肥満を発症するリスク及び又は脂肪処理活性との相関は、連続的であり、すなわちレベルが高いほど、リスクも高くなる。
【0024】
実用性のために、当業者は閾値を使用することができる。
【0025】
用語「高められたレベル(elevated level)」とは、一定の閾値レベル超のレベルを意味する。
【0026】
閾値レベルは、特定の状態(例えば、肥満)を発症した対象からのサンプル、及びその状態を発症しなかった対象からのサンプルを測定することにより決定され得る。閾値を決定する1つの可能性は、「正常(normal)」集団(例えば、肥満の状態を発症しなかった対象)及び「疾病(disease)」集団(例えば、肥満の状態を発症した対象)におけるその相対頻度に対する変数の値をプロットする、レシーバー操作特性曲線(ROC曲線)の計算である。特定の状態を発症しているか、又は発症していない対象についてのマーカーレベルの分布はたぶん重複するであろう。そのような条件下で、試験は「正常」と「疾病」とを100%の精度で絶対的に区別するものではなく、そして重複の領域は、その試験が正常と疾病とを区別できない場所を示す。閾値が選択され、その閾値以上では(又はそれ以下では、「疾病」によりマーカーがどのように変化するかに依存する)、試験は異常であると見なされ、そしてそれ以下では、試験は正常であると見なされる。ROC曲線以下の領域は、知覚された測定が1つの状態の正しい同定を可能にする確立の尺度である。ROC曲線は必ずしも、試験結果が正確な数値を示さない場合でさえ、使用され得る。結果をランク付けできる限り、ROC曲線を作成することができる。例えば、「疾病」サンプルに対する試験の結果は、程度(例えば、1=低、2=正常、及び3=高)に従ってランク付けされ得る。このランキングは、「正常」集団の結果と相関し、そしてROC曲線が作成される。それらの方法は、周知である(Hanley et al. 1982. Radiology 143: 29-36)。好ましくは、閾値は、約0.5よりも大きい、より好ましくは、約0.7よりも大きい、さらにより好ましくは、約0.8よりも大きい、さらにより好ましくは、約0.85よりも大きく、及び最も好ましくは、約0.9よりも大きなROC曲線領域で提供するよう選択される。本明細書における用語「約(about)」とは、所定の測定値の+/−5%を言及する。ROC曲線の水平軸は、(1−特異性)を表し、これは誤った陽性の割合を高める。曲線の縦軸は感度を表し、これは針の陽性の割合を高める。従って、選択された特定のカットオフに関しては、(1−特異性)の値が決定され得、そして対応する感度が得られる。ROC曲線下の領域は、測定されたマーカーレベルが疾患又は状態の正しい同定を可能にする確率の尺度である。従って、ROC曲線下の領域は、試験の有効性を決定するために使用され得る。オズ比(odd ratio)は、2つのバイナリーデータ値間の関連性又は非独立性の強度を説明する、効果サイズの尺度である(例えば、試験陽性群で発生するイベントのオッズに対する、試験陰性群で発生するイベントのオッズの比である)。
【0027】
閾値レベルは、例えばKaplan-Meier分析から得られ、ここで疾患の発生又は重度の状態及び/又は死亡の確率は例えば、集団内でのそれぞれのマーカーの四分位数と相関する。この分析によれば、75パーセンタイル以上のマーカーレベルを有する対象は、本発明の疾患を罹患する有意に高められたリスクを有する。この結果はさらに、従来のリスク因子についての調整を伴ってのCox回帰分析により支持される。すべての他の対象に対する最高の四分位数は、本発明による疾患を罹患する高められたリスク、又は重度の状態及び/又は死亡の確率に非常に有意に関する。
【0028】
他の好ましいカットオフ値は例えば、参照集団の90、95又は99パーセンタイルである。75パーセンタイルよりも高いパーセンタイルを用いることにより、同定される異なった陽性の数を低めることができるが、しかし中程度であるが、しかしまだ高められたリスクである対象を同定することができない。従って、「誤った陽性」の同定をまた犠牲にしてリスクのある対象のほとんどを同定することがより適切であると思われるかどうか、又は中程度のリスクでいくつかの欠落する対象を犠牲にして高いリスクで主に同定することがより適切であると思われるかに依存して、カットオフ値を適応させることができる。
【0029】
個体のマーカーレベル値及び他の予後実験及び臨床パラメーターを用いることによる個体のリスクを計算する他の数学的可能性は、例えばNRI(ネット再分類指標)又はIDI(統計差別指標)である。指標は、Pencina(Pencina MJ, et al.: Evaluating the added predictive ability of a new marker: from area under the ROC curve to reclassification and beyond. Stat Med. 2008;27:157-172)に従って計算され得る。
【0030】
体液は、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)、及び唾液を含む群から選択され得る。1つの特定の実施形態によれば、体液は、血液、血清、血漿を含む群から選択され得る。
【0031】
このデータは、プロニューロテンシン又はそのフラグメント、特にプロニューロテンシン1−117又はそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドと、新発症性肥満の発症及び脂肪処理活性との強い相関性を示唆している。
【0032】
体液中で決定され得るプロニューロテンシンのフラグメントは、例えば下記のものであり得:
配列番号1(プロニューロテンシン1−147):
SDSEEEMKAL EADFLTNMHT SKISKAHVPS WKMTLLNVCS LVNNLNSPAE ETGEVHEEEL VARRKLPTAL DGFSLEAMLT IYQLHKICHS RAFQHWELIQ EDILDTGNDK NGKEEVIKRK IPYILKRQLY ENKPRRPYIL KRDSYYY
配列番号2 (プロニューロテンシン1-125 (大きなニューロメジン N))
SDSEEEMKAL EADFLTNMHT SKISKAHVPS WKMTLLNVCS LVNNLNSPAE ETGEVHEEEL VARRKLPTAL DGFSLEAMLT IYQLHKICHS RAFQHWELIQ EDILDTGNDK NGKEEVI KR KIPYIL
配列番号3 (ニューロメジン N:)
KIPYIL
配列番号4 (ニューロテンシン)
pyroQLYENKPRRP YIL
配列番号5 プロニューロテンシン1-117)
SDSEEEMKAL EADFLTNMHT SKISKAHVPS WKMTLLNVCS LVNNLNSPAE ETGEVHEEEL VARRKLPTAL DGFSLEAMLT IYQLHKICHS RAFQHWELIQ EDILDTGNDK NGKEEVI
配列番号6 (プロニューロテンシン1-132)
SDSEEEMKAL EADFLTNMHT SKISKAHVPS WKMTLLNVCS LVNNLNSPAE ETGEVHEEEL VARRKLPTAL DGFSLEAMLT IYQLHKICHS RAFQHWELIQ EDILDTGNDK NGKEEVIKRK IPYILKRQLY EN
配列番号7: (プロニューロテンシン1-140 (大きなニューロテンシン)
SDSEEEMKAL EADFLTNMHT SKISKAHVPS WKMTLLNVCS LVNNLNSPAE ETGEVHEEEL VARRKLPTAL DGFSLEAMLT IYQLHKICHS RAFQHWELIQ EDILDTGNDK NGKEEVIKRK IPYILKRQLY ENKPRRPYIL
配列番号8 (プロニューロテンシン120-140)
KIPYILKRQL YENKPRRPYI L
配列番号9 (プロニューロテンシン120-147)
KIPYILKRQL YENKPRRPYIL KRDSYYY
配列番号10 (プロニューロテンシン128-147)
QLYENKPRRP YILKRDSYYY。
【0033】
本発明の方法のより特定の実施形態によれば、プロニューロテンシン1−117のレベルが決定される。
【0034】
特定の実施形態によれば、プロニューロテンシン、特にプロニューロテンシン1−117又はそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドのレベルは、イムノアッセイにより測定される。より特定には、イムノアッセイは、Ernst et al. Peptides 27 (2006) 1787-1793に記載のようにして、使用される。1つの特定の実施形態によれば、以下の意味を有する、プロニューロテンシン1−117の免疫反応性が決定される:
【0035】
プロニューロテンシン又はそのフラグメントのレベルの決定は、プロニューロテンシン又はそのフラグメント、例えばニューロテンシン及びニューロメジンNに対する免疫反応性が決定されることを意味する。結合の領域に依存して、プロニューロテンシン又はそのフラグメント、例えばニューロテンシン及びニューロメジンNの決定のために使用される結合剤は、上記に示される分子の2つ以上に結合することができる。これは、当業者に明らかである。
【0036】
従って、本発明によれば、上記ペプチド及びペプチドフラグメント(すなわち、プロニューロテンシン(プロ−NT)及び配列1〜10の何れかに従ってのフラグメント)の何れかのアミノ酸配列内の領域に結合する、少なくとも1つの結合剤を用いることによる免疫反応性分析物のレベルが、前記対象から得られた体液において決定され;そして臨床的関連性の特定の実施形態に相関される。
【0037】
本発明の方法のよる特定の実施形態によれば、プロ−NT 1−117のレベルが決定される(配列番号5:プロニューロテンシン1−117)。より特定の実施形態によれば、プロ−NT 1−117に結合する少なくとも1つの結合剤を用いることにより免疫反応性分析物のレベルが決定され、そして本発明の臨床的関連性の特定の実施形剤に相関される。
【0038】
本発明の別の実施形態によれば、ニューロテンシン及びニューロメジンNを含まない、プロニューロテンシン又はそのフラグメントに対する免疫反応性が決定される。
【0039】
プロニューロテンシン又は少なくとも5個のアミノ酸のそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドのレベルの決定のために有用であり得るイムノアッセイは、実施例2に概略される工程を含むことができる。プロニューロテンシン又は少なくとも5個のアミノ酸のそのフラグメント又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドのレベルの決定に有用であり得るイムノアッセイは、プロニューロテンシン1−117内のエピトープに対して向けられた少なくとも1つの抗体又は少なくとも2つの抗体を含むことができる。少なくともそれらの抗体は標識され得る。すべての閾値及び値は、実施例2に従って使用される試験及び較正を考慮して見られる必要がある。当業者は、閾値の絶対値が使用される較正により影響され得ることを知ることができる。これは、本明細書に与えられるすべての値及び閾値が本明細書(実施例2)に使用される較正と関連して理解されるべきであることを意味する。ヒトプロ−NT−キャリブレーターは、ICI-Diagnostics, Berlin, Germanyにより入手可能である。他方では、アッセイは、合成又は組換えプロ−NT 1−117又はそのフラグメントにより較正され得る(あた、Ernst et.al., 2006も参照のこと)。
【0040】
本発明の1つの実施形態によれば、完全自動アッセイシステムを必要とせずに、患者の近くで1時間内に試験の実施を可能にする試験技法である、いわゆるPOC試験(ポイント−オブ−ケア)である。この技法についての1つの例は、免疫クロマトグラフィー試験技法である。
【0041】
本発明の1つの実施形態によれば、そのようなアッセイは、酵素標識、化学発光標識、電気化学発光標識、好ましくは完全自動アッセイ(但し、それらだけには限定されない)を含む任意の種類の検出技法を用いるサンドイッチイムノアッセイである。自動又は完全自動アッセイの例は、以下のシステムの1つのために使用され得るアッセイであり得る:Roche Elecsys(登録商標)、Abbott Architect(登録商標)、Siemens Centauer(登録商標)、Brahms Kryptor(登録商標)、 Biomerieux Vidas(登録商標)、 Alere Triage(登録商標)。
【0042】
種々なイムノアッセイが知られており、そして本発明のアッセイ及び方法のために使用され得、それらは以下のアッセイを含む:ラジオイムノアッセイ(RIA)、同種酵素増幅イムノアッセイ(EMIT)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、アポ酵素再活性化イムノアッセイ(ARIS)、ディップスティックイムノアッセイ及び免疫クロマトグラフィーアッセイ。
【0043】
本発明の1つの実施形態によれば、前記2種の結合剤の少なくとも1つは、検出されるために標識される。
【0044】
好ましい検出方法は、種々の形式でのイムノアッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光および蛍光イムノアッセイ、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、Luminexに基づくビーズアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、迅速なテストフォーマット、例えば免疫クロマトグラフィーストリップ試験を含む。
【0045】
好ましい実施形態によれば、前記標識は、化学発光標識、酵素標識、蛍光標識、放射性ヨウ素標識を含む群から選択される。
【0046】
アッセイは、同種又は異種アッセイ、競争アッセイ及び非競争アッセイであり得る。1つの実施形態によれば、アッセイは、非競争イムノアッセイであるサンドイッチアッセイの形態で存在し、ここで検出され、そして/又は定量化される分子が第1抗体及び第2抗体に結合されている。前記第1抗体は、固相、例えばビーズ、ウェル又は他の容器の表面、チップ又はストリップに結合され得、そして前記第2抗体は、例えば色素、放射性同位体、反応性又は触媒的活性成分により標識される抗体である。次に、分析物に結合される標識された抗体の量が適切な方法により測定される。「サンドイッチアッセイ」に関与する一般的組成及び手順は、十分に確立されており、そして当業者に知られている。
【0047】
別の実施形態によれば、アッセイは、2種の捕捉分子、好ましくは、液体反応混合物中に分散体として両者とも存在する抗体を含み、ここで第1の標識成分は、第1捕捉分子に結合され、そして蛍光又は化学発光−消光又は増幅に基づく標識システムの一部であり、そして前記マーキングシステムの第2標識成分は、前記第2捕捉分子に結合され、結果的に、分析物への両捕捉分子に基づいて、測定可能なシグナルが生成され、サンプルを含む溶液中の形成されたサンドイッチ複合体の検出を可能にする。
【0048】
別の実施形態によれば、前記標識システムは蛍光色素又は化学発光色素、特にシアニンタイプの色素と組合して、希土類クリプテート又は希土類キレートを含む。
【0049】
本発明においては、蛍光に基づくアッセイは、色素の使用を含み、色素はFAM(5-または6−カルボキシフルオレセイン)、VIC、NED、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、IRD−700/800、例えばシアニン色素、CY3、CY5、CY3.5、CY5.5、Cy7、キサンテン、6−カルボキシ−2 ‘、4’、7 ‘、4,7−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、TET、6−カルボキシ−4’、5‘−ジクロロ−2 ’、7‘−ジメチルフルオレセイン(JOE)、N、N、N ’、N‘−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、5−カルボキシローダミン−6G(R6G5)、6−カルボキシローダミン−6G(RG6)、ローダミン、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ローダミン110、BODIPY色素、例え場BODIPY TMR、オレゴングリーン、クマリン、例えばウンベリフェロン、ベンズイミド、例えばHoechst 33258; フェナントリジン類、例えばテキサスレッド、ヤキマイエロー、アレクサフルオロ、PET、エチジウムブロマイド、例えばアクリジニウム色素、カルバゾール色素、フェノキサジン色素、ポルフィリン色素、ポリメチン色素、及び同様のものを含む群から選択される。
【0050】
本発明においては、化学発光に基づくアッセイは、(24)において化学発光物質について記載される物理的原理に基づいて、色素の使用を含む。好ましい化学発光色素は、アクリジニウムエステルである。
【0051】
本明細書においては言及される場合、「アッセイ」又は「診断アッセイ」とは、診断の分野において適用される任意のタイプのものであり得る。そのようなアッセイは、特定の親和性を有する1又は2以上の捕捉プローブへの検出される分析物の結合に基づかれ得る。捕捉分子と、標的分子又は目的の分子との間の相互作用に関して、親和性定数は好ましくは、10
8M
−1よりも高い。
【0052】
本発明においては、「結合剤分子(binder molecules)」とは、サンプルからの標的分子又は目的の分子、すなわち分析物(すなわち、本発明においては、プロニューロテンシン及びそのフラグメント)を結合するために使用され得る分子を意味する。従って、結合剤分子は、標的分子又は目的の分子を特異的に結合するために、空間的に、及び表面特徴、例えば表面電荷、疎水性、親水性、ルイスドナー及び/又は受容体の不在又は存在に関して、適切に形状化されるべきである。それにより、結合は、例えばイオン、ファンデルワールス、pi−pi、疎水性又は水素結合相互作用、又は捕捉分子と、標的分子又は目的の分子との間の前述の相互作用の複数の組合せにより媒介され得る。本発明においては、結合剤分子は例えば、核酸分子、炭水化物分子、PNA分子、タンパク質、抗体、ペプチド又は糖タンパク質を含む群から選択され得る。好ましくは、結合剤分子は、抗体、例えば標的又は目的の分子への十分な親和性を有するそのフラグメント、及び組換え抗体又は組換え抗体フラグメント、並びに、前記抗体の化学的に及び/又は生化学的に修飾された誘導体、又はその少なくとも12個の長さのアミノ酸を有する変異鎖に由来するフラグメントである。
【0053】
化学発光標識は、アクリジニウムエステル標識、イソルミノール標識を含むステロイド標識及び同様のものであり得る。
【0054】
酵素標識は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、クレアチニンキナーゼ(CPK)、アルカリホスファターゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、酸性ホスファターゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、等であり得る。
【0055】
本発明の1つの実施形態によれば、前記2つの結合剤のうち少なくとも1つは、磁性粒子としての固相、及びポリスチレン表面に結合される。
【0056】
新規発症肥満を発症する対象のリスクを決定するための閾値は、60pmol/l以上、好ましくは90pmol/l以上の、より好ましくは123pmol/l以上のpro−NTである。特定の実施形態によれば、前記閾値は、180pmol/l以上又は190pmol/l以上である。それらの閾値は、上述の較正方法に関連する。前記閾値以上のpro−NT値は、対象が新規発症肥満を発症する増強されたリスクを有することを意味する。
【0057】
肥満は、30kg/m
2以上の肥満度指数として定義される。
【0058】
非肥満対象は、30kg/m
2以上の肥満度指数により定義される。
【0059】
新規発症肥満は、一定の追跡時間の後、非肥満対象の肥満発症として定義される。
【0060】
肥満度指数(BMI)は、体重(kg)を身長(平方メートル)で割ったものとして定義された。
【0061】
追跡の時間は、1年まで、好ましくは2年まで、より好ましくは5年まで、さらに好ましくは10年以上、さらにより好ましくは15年まで、さらにより好ましくは16.5年まで、最も好ましくは18年までである。
【0062】
糖尿病の定義は次の通りである:医師の診断の履歴、又は抗糖尿病薬の投与歴、又はベースライン試験での空腹時全血中グルコース>/=6.1mmol/l(血漿中、7.0mmol/l以上か、又は等しい)。
【0063】
糖尿病前症又は空腹時血糖障害(IFG)は、>/=5.4〜<6.1mmol/l(血漿中、6.1〜6.9mmol/lに対応する)の空腹時全血中グルコースとして定義される。
【0064】
)本発明の方法の特定の実施形態によれば、前記対象は、5.4mmol/l未満(血漿中、6.1mmol/l未満に対応する)の空腹時全血中グルコースを有する非糖尿病対象である。メタボリック・シンドロームとは、以下の1つ:(1)II型糖尿病;(2)空腹時グルコース障害;(3)耐糖能障害;又は(4)正常な空腹時血糖値(110mg/dL未満)を有する対象に関しては、高インスリン血症、正常血糖状態下での調査下でバックグラウンド集団についての最も低い四分位値以下のグルコース摂取、及び以下の2つ:(1)血圧:>140/90mmHg;(2)脂質異常症:トリグリセリド(TG):≧1.695mmol/l及び高密度リボタンパク質コレステロール(HDL−C)≦0.9mmol/l(男性)、≦1.0mmol/l(女性);(3)中枢性肥満:ウェス:ヒップ比>0.90(男性);>0.85(女性)、又は肥満度指数>30kg/m
2;(4)微小アルブミン尿症:尿中アルブミン排泄率≧20μg/分又はアルブミン:クレアチニン比≧30mg/g、により同定されるインスリン抵抗性の存在を必要とする世界保健機構の基準(Alberti and Zimmet. 1998. Diabet Med. 15:539-553; World Health Organization. 1999. Definition, diagnosis and classification of diabetes mellitus and its complications: report of a WHO Consultation. Part 1: diagnosis and classification of diabetes mellitus. Geneva, Switzerland: World Health Organization)により定義される。
【0065】
対象は、正常血圧(BP)を有することができる。前記対象は、正常血圧/高血圧であり得る。
【0066】
正常血圧/高血圧(HBP)の定義は、次の通りである:
HBP:収縮期BP> / = 140mmHg又は拡張期BP> / = 90mmHg、又は抗高血圧薬下にある。正常血圧(BP)を有する対象は、他のすべて対象であり、すなわち収縮期BP <140mmHg又は拡張期BP <90mmHgを有するか、又は抗血圧薬下にある対象である。
【0067】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、新発症肥満を発症する対象のリスクの予測は、少なくとも1つの実験室パラメーター、又は空腹時全血又は血漿グルコース、トリグリセリド、HDLコレステロール又はその画分、LDLコレステロール又はその画分、シスタチンC、インスリン、CRP、推定糸球体濾過率(eGFR)を含む群から選択された追加のマーカーを、さらに決定し、そして使用することにより改善される。
【0068】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、さらに、年齢、性別、収縮期血圧、拡張期血圧、抗高血圧治療(AHT)、ウェスト周囲、ウエストヒップ比、現在の喫煙、糖尿病の遺伝、癌の遺伝及び以前の心血管疾患(CVD)を含む群から選択された少なくとも1つの臨床パラメーターが決定される。
【0069】
本発明のさらなる実施形態は、脂質処理活性を決定し、そして/又は新発症肥満のリスクを予測するための方法であり、ここでプロニューロテンシン又はそのフラグメントのレベルは、単独で、又は他の予後的有用な実験室又は臨床パラメーターと共に、対象における脂肪処理活性の決定及び/又は新発症肥満のリスクの予測のために、以下の選択肢から選択され得る方法により使用される:
−明らかに健康な対象集団における所定のサンプルのアンサンブルに中のプロニューロテンシン又はそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドのレベルの中央値との比較、
−明らかに健康な対象集団における所定のサンプルのアンサンブルに中のプロニューロテンシン又はそのフラグメント、又はプロニューロテンシン1−117含有ペプチドのレベルの分位値との比較、
−Cox Proportional Hazards分析に基づくか、又はリスク指標計算、例えばNRI(ネット再分類指数)又はIDI(統合された差別指標)を用いることによる計算。
【0070】
本発明の1つの実施形態によれば、サンプルは、血液サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、脳脊髄液サンプル、唾液サンプル及び尿サンプル、又は前述のサンプルのいずれかの抽出物を含む群から選択される。本発明の方法の特定の実施形態によれば、プロニューロテンシン又はそのフラグメント、又は少なくとも5個の長さのアミノ酸を有するペプチドを含むプロニューロテンシン1−117のレベルは、診断アッセイ、好ましくはイムノアッセイにより決定される。
【0071】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、前記方法は、新発症肥満の発症のリスクをモニターするか、又は非肥満である対象における新発症肥満の発症のリスクを減じるために前記対象の治療の経過をモニターするために、複数回、実施される。
【0072】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、前記モニターリングは、実施された予防及び/又は治療手段に対する前記対象の応答を評価するために実施される。
【0073】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、前記方法は、前記対象をリスク群に層別化するために使用される。
【0074】
本発明の方法を実施するためのポイント−オブ−ケア(point-of-care)装置がまた、本発明により包含される。
【0075】
本発明の方法を実施するためのアッセイ及び/又はキットがまた、本発明により包含される。
【実施例】
【0076】
実施例1
抗体の開発
免疫化のためのペプチド/接合体:
ウシ血清アルブミン(BSA)へのペプチドの接合のための追加のN末端システイン残基を有する免疫化のためのペプチドを、合成した(JPT Technologies, Berlin, Germany)。前記ペプチドを、スルホ−SMCC(Perbio-Science, Bonn, Germany)を用いることにより、BSAに共有結合した。カップリング手順を、Perbioのマニュアルに従って実施した。
【0077】
標識された抗体(LA)ペプチド(P−NT 1−19):
H−CSDSEEEMKALEADFLTNMH−NH2
【0078】
固相抗体(SPA)ペプチド(P−NT44−62)
H−CNLNSPAEETGEVHEEELVA−NH2
【0079】
抗体を以下の方法に従って生成した:
BALB/cマウスを、0及び14日で100μgのペプチド−BSA−接合体(100μlの完全フロイントアジュバントに乳化された)、及び21及び28日で50μgのペプチド−BSA−接合体(100μlの不完全フロイントアジュバントに乳化された)により免疫化した。融合実験を実施する3日前、動物に、100μlの生理食塩水に溶解された接合体50μgを、1回の腹腔内注射として及び1回の静脈内注射として投与した。
【0080】
免疫化されたマウスからの脾臓細胞及び骨髄腫細胞系SP2/0の細胞を、1mlの50%ポリエチレングリコールと共に37℃で30秒間、融合した。洗浄の後、細胞を96ウェル細胞培養プレートに播種した。ハイブリッドクローンを、HAT培地(20%ウシ胎児血清及びHAT−サプリメントにより補充されたRPMI1640培養培地)における増殖により選択した。2週間後、HAT培地を、HT培地により3回継代した後、正常細胞培養培地に戻した。
【0081】
細胞培養上清液を、融合の3週間後、抗原特異的IgG抗体について一次スクリーンした。試験された陽性マイクロ培養物を、増殖のために24ウェルプレートに移した。再試験の後、選択された培養物をクローニングし、そして限界希釈法を用いて再クローニングし、そしてアイソタイプを決定した(Lane, R.D. (「モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマの産生を増加させる短時間のポリエチレングリコール融合技法」(A short-duration polyethylene glycol fusiontechnique for increasing production of monoclonal antibody-secreting hybridomas), J. Immunol. Meth. 81: 223-228; (1985), Ziegler, B. et al. 「グルタメートデカルボキシラーゼ(GAD)は、サイトフルオロメトリーおよびモノクローナルGAD抗体の補体依存性抗体媒介性細胞殺害性によって試験されたラット膵島細胞の表面上で検出されない」(Glutamate decarboxylase (GAD) is not detectable on the surface of rat islet cells examined by cytofluorometry and complement-dependent antibody-mediated cytotoxicity of monoclonal GAD antibodies), Horm. Metab. Res. 28: 11-15, (1996))。
【0082】
モノクローナル抗体の製造
抗体を、標準抗体製造方法(Marx et al, Monoclonal Antibody Production, ATLA 25, 121, 1997)により製造し、そしてプロテインA−クロマトグラフィーにより精製した。抗体純度は、SDSゲル電気泳動分析に基づいて、95%以上であった。
【0083】
実施例2
ヒトプロニューロテンシンの定量化のためのイムノアッセイ
使用される技法は、アクリジニウムエステル標識に基づくサンドイッチ被覆発光イムノアッセイであった。
【0084】
標識された化合物(トレーサー):100μg(100μl)のLA(PBS中、1mg/ml、pH7.4)を10μlのアクリジウムNHS−エステル(アセトニトリル中、1mg/ml、Invent GmbH、Germany)(欧州特許第0353971号)と共に混合し、そして室温で20分間インキュベートした。標識されたLAを、Bio-Sil SEC 400-5 (Bio-Rad Laboratories, Inc., USA)上でのゲル濾過HPLCにより精製した。精製されたLAを(300mmol/ lのリン酸カリウム、100mmol/lのNaCl、10mmol/lのNa−EDTA、5g/lのウシ血清アルブミン、pH7.0)に希釈した。最終濃度は、200μl当たり約800,000の標識された化合物(約20ngの標識された抗体)の相対光単位(RLU)であった。AutoLumat LB 953 (Berthold Technologies GmbH & Co. KG)を用いて、アグリジニウムエステル化学発光を測定した。
【0085】
固相::ポリスチレン管(Greiner Bio-One International AG, Austria)を、SPA(1.5μgのSPA/0.3mlの100mmol/lのNaCl、50mmol/lのIRIS/HCl、pH7.8)により被覆した(室温で18時間)。5%ウシ血清アルブミンによりブロックした後、菅をPBS(pH7.4)により洗浄し、そして真空乾燥した。
【0086】
較正:
アッセイを、プロ−NT−含有ヒト血清の希釈液を用いて較正した。高プロ−NT− 免疫反応性を有するヒト血清のプール(InVent Diagostika, Hennigsdorf, Germany)を、ウマ血清((Biochrom AG, Deutschland)(アッセイ標準)で希釈した。
【0087】
標準を、ヒトプロ−NT−キャリブレーター(ICI-Diagnostics, Berlin, Germany)の使用により較正した。他方では、アッセイを、合成又は組換えプロ−NT1−117又はそのフラグメントにより較正することができる(また、Ernst et al., 2006を参照のこと)。
【0088】
プロ−NTイムノアッセイ:
50μlのサンプル(又はキャリブレーター)を、SPA被覆管にピペットで入れ、標識されたLA(200μl)の添加の後、菅を10−25℃で16−22時間インキュベートした。末結合トレーサーを、洗浄溶液(20 mM のPBS、pH 7.4、0.1 % Triton X−100)による5度(各1ml)の洗浄により除去した。
【0089】
AutoLumat LB953を用いて、管に結合したLAを測定した。
【0090】
図1は、典型的なP−NT用量/シグナル曲線を示す。
【0091】
実施例3
集団調査
マルメダイエット及びガン(Malmo Diet and Cancer )((MDC)研究はスウェーデン南部のマルメ市で、1991〜1996年の間にベースライン試験を受けた28,449人の男性(1923〜1945年生まれ)及び女性(1923〜1950年生まれ)の集団ベースの将来の疫学コホートである(Minisymposium: The Malmo Diet and Cancer Study. Design, biological bank and biomarker programme. J Intern Med 233, 39-79 (1993))。このコホートから、1991〜1994年の間に、頸動脈疾患の疫学を調査するよう企画され、MDC心血管コホート(MDC−CC)に参加するために、6,103人の個人をランダムに選択した(Persson et al. 2008. Atherosclerosis 200: 191-198)。ベースライン試験での空腹時血漿サンプルは、プロニューロテンシン(pro−NT)の分析のために利用可能であり、そしてMDC−CCの合計4,632人の参加者の中で都合よく測定された。それらのうち、完全なデータは、4,626人のBMI、4,625人の胴囲、及び4,468人のインスリン低抗性の恒常性デル評価(HOMA−IR)(空腹時血糖濃度×空腹時血漿インスリン濃度/22.5)(Matthews et al. 1985. Diabetologia 28: 412-419)を用いての推定インスリン抵抗性程度について利用可能であった。BMIは、体重(kg)を身長(m)で割ったものとして定義され、そして肥満をBMI≧30kg/m
2として定義した。腹部肥満は、国際糖尿病連盟の定義(Alberti et al. 2006. Diabet Med 23: 469-489)によれば、男性では95cm以上及び女性では80cm以上の胴囲として定義された。インスリン低抗性は、MDC−CCのHOMA−IR値の上位25%に属する対象に存在すると見なされた。「新発症肥満(New-Onset Obesity)」とは、16.5±1.5年の平均追跡時間の後、再試験され、そして肥満と診断された非肥満MDC−CC参加者での肥満発症として定義される。
【0092】
プロ−NTを、以前に記載されているように(Ernst et al. 2006. Peptides 27: 1787-1793)、プロ−NT前駆体フラグメント(プロ−NT1−117)を検出するために最近の化学発光サンドイッチイムノアッセイを用いて、MDC−CCベースライン試験で、直ちに−80℃に凍結された保存空腹時血漿検体で測定した。血糖及び血漿インスリンの分析を、国家標準化及び品質管理システムに添付されるマルメ大学病院臨床化学部のベースライン試験の時点で実施した(Enhorning et al. 2010. Circulation 121: 2102-2108)。BMI及びプロ−NTに関するベースラインデータを有する4,626人の対象のうち、2,900人の対象を、16.5±1.5年の平均追跡の後、BMIの新たな測定値で再試験した。肥満症の分析では、ベースライン試験がすでに肥満であった対象を除外し、肥満症に関連してプロ−NTの分析のために合計2,606人の非肥満対象を残した。すべての参加者は、文書によるインフォームド・コンセントを与え、そして研究は、Lund University, Lund, Swedenでの倫理委員会により承認された。
【0093】
統計学的分析
MDC−CCベースライン試験での全対象を、空腹時プロ−NTの値に従って上昇四分位に分割した。クロスセクション分析において、本発明者は、年齢及び性別により調整されたロジスティック回帰モデルを用いて、プロ−NTのベースライン四分位値を、肥満、腹部肥満及びインスリン抵抗性の二分値に関連づけた。肥満症の分析においては、本発明者は、ベースライン年齢、性別及びBMIのために調整されたロジスティック回帰を用いてプロ−NTのベースライン四分位値を二分位結果に関連づけた。データは、オッズ比(95%の信頼区間)として表され、そしてプロ−NTの最低四分位に属する対象が対照群(オッズ比=1)として定義される。「傾向のためのP(P for trend)」とは、四分位数1〜4にわたっての線形傾向のためのP値を示す。
【0094】
研究結果
本発明者は、集団ベースのマルメダイエット及び癌研究心血管コホート(Malmo Diet and Cancer Study Cardiovascular Cohort)(表1)の4,632人の中年の対象の空腹時血漿中のプロ−NTレベルを測定した。肥満、腹部肥満及びインスリン抵抗性の年齢及び性別調整された可能性は、プロ−NTの四分位値にわたって有意に上昇した(表2)。非肥満対象の中で、平均16.5±1.5年の追跡の間、肥満を発症するリスクは、ベースライン肥満指数、年齢及び性別とは無関係に、プロ−NT四分位値と共に徐々に高まった。プロ−NTメジアン濃度は第1分位で60.1pmol/l(範囲3.3−75.9pmol/l)、第2四分位で89.3pmol/l(範囲75.9−105pmol/l)、第3四分位で123pmol/l(範囲105−149pmol/l)、及び第4四分位で190pmol/l(範囲149−1155pmol/l)であった。ベースラインプロ−NTレベルの上位四分位での非肥満対象は、最低四分位における対象に比較して、肥満発症のリスクの2倍以上(OR2.06(1.38−3.06の95%信頼区間)を有した(表2)。
【0095】
式に同じ変数を用いて、本発明者は、新発症肥満の予測のための異なったサブグループを調査し(表3)、ベースラインで、それぞれ、糖尿病(DM)及び障害性空腹時血糖(IFG)、高血圧/抗高血圧治療(AHT)、メタボリックシンドローム(MeSy)、eGFR <60(ml /分/1.73m
2)、癌の遺伝、一般癌、喫煙者の対象は除外された。最も高いプロ−NTレベルの四分位での非肥満対象は、上述の状態の何れも、最低のプロ−NT四分位での対象に比較して、肥満を発症するリスクの2倍以上を示した(表3)。最も高いプロ−NTレベルの四分位でのそれらの状態を有さない非肥満対象(超健康な対象)でさえ、最低のプロ−NT四分位の対象に比較して、肥満を発症するリスクの3倍以上の上昇を示した。
【0096】
実施例4
経口脂肪摂取試験(クリーム試験)の前後のPNT濃度
合計54人の患者、19人の健常対照対象及び35人の心不全の診断の患者を選択した。対象は少なくとも10時間、絶食させ、そして標準化された脂肪濃縮飲料溶液(30%の脂肪を含むクリーム)を摂取した。ベースライン及びクリーム摂取の1、2及び3時間後、採血した。プロニューロテンシンを、上記のようにして、イムノアッセイにより測定した。ベースラインプロ−NTを100%として定義し、そして3つの異なった時点でのレベルをそれらに関連づけた。プロ−NTは、健常対照及びHFを有する患者の両方で、クリーム摂取の1時間後、有意に上昇し、そして2及び3時間後、低下したが、ベースラインレベルには達しなかった(
図2)。さらに、プロ−NTの相対濃度は、健常対照とHF患者との間で間で、すべての3つの時点で、有意に異なった(p<0.05)。
【0097】
【表1】
【0098】
データは、正常分布変数について平均±標識偏差として、及び空腹時インスリン濃度について中央値及び四分位範囲として与えられる。カテゴリーデータは、数値(%)として表される。「N」は、完全なデータを有する数を示し;従って、分析に含まれる。「HOMA−IR」は、インスリン抵抗性の恒常性モデル評価(空腹時血漿インスリン濃度×空腹時血糖濃度/22.5)を表す。
【0099】
【表2】
【0100】
「N/N症例」とは、分析中の対象の総数/問題の疾患の症例の症例の数を示す。「プロ−NT」とは、MDC−CCベースライン試験でのプロニューロテンシンの空腹時血漿濃度を示す。「プロ−NT四分位数1−4」とは、プロ−NTのMDC−CC集団四分位数(最低〜最高)を定義する。データは、オッズ比(95%信頼区間)として表され、そしてプロ−NTの最低四分位に属する対象は、対照群(オッズ比=1)として定義された。「傾向のためのP(P for trend)」とは、四分位数1−4にわたっての線形傾向についてのP−値を示す。「罹患率(prevalent)」とは、対照がベースラインで「問題の疾患」をすでに有することを意味するが、ところが一般的な肥満を有する対象は、新発症肥満のリスク予測の分析においては除外された。
【0101】
【表3】
【0102】
「N/N症例」とは、分析中の対象の総数/問題の疾患の症例の症例の数を示す。「プロ−NT」とは、MDC−CCベースライン試験でのプロニューロテンシンの空腹時血漿濃度を示す。「プロ−NT四分位数1−4」とは、プロ−NTのMDC−CC集団四分位数(最低〜最高)を定義する。データは、オッズ比(95%信頼区間)として表され、そしてプロ−NTの最低四分位に属する対象は、対照群(オッズ比=1)として定義された。「傾向のためのP(P for trend)」とは、四分位数1−4にわたっての線形傾向についてのP−値を示す。
【0103】
癌の遺伝性とは、ベースラインで家族歴に知られている癌が存在しないことを意味し、一般的な癌はベースラインで癌の診断を意味するものではなく、一般的な心疾患はベースラインで、心筋梗塞、虚血性心疾患、脳卒中、心不全(急性又は慢性心不全)、心房細動及び心房粗動を意味するものではない。BP =血圧、AHT =抗高血圧療法、eGFR =推定糸球体濾過率、IFG =空腹時グルコース障害、DM =糖尿病、MeSy =メタボリックシンドローム。
【0104】
【表4】
PNT値は、ベースライン値に関連して%で与えられ、ベースライン値は両方のグループについて、それぞれの100%として定義される。