特許第6760970号(P6760970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘキシマ リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6760970
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】インビボ治療の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20200910BHJP
   A61K 36/81 20060101ALI20200910BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20200910BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20200910BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20200910BHJP
   C07K 14/415 20060101ALN20200910BHJP
   C12N 15/29 20060101ALN20200910BHJP
【FI】
   A61K38/16ZNA
   A61K36/81
   A61K45/00
   A61P31/10
   A61P31/04
   !C07K14/415
   !C12N15/29
【請求項の数】10
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-561882(P2017-561882)
(86)(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公表番号】特表2018-520121(P2018-520121A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】AU2015050294
(87)【国際公開番号】WO2016191790
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2018年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】515140129
【氏名又は名称】ヘキシマ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HEXIMA LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デル ヴェールデン,ニコール ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,マリリン アン
【審査官】 春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/078900(WO,A1)
【文献】 特表2011−521902(JP,A)
【文献】 特開2010−279691(JP,A)
【文献】 特表2013−530965(JP,A)
【文献】 特表2014−506461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
A61K 36/00−36/9068
A61K 45/00−45/08
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物の被験体においてインビボ組織に対する又はおけるカンジダ種(Candida spp)感染の治療又は予防のための医薬の製造における植物デフェンシンの使用であって、
植物デフェンシンが、配列番号24のコンセンサスアミノ酸配列を含み、かつ植物デフェンシンとして単独で使用される、使用
【請求項2】
前記インビボ組織が粘膜又は上皮内部組織、又は皮膚の皮下層である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記感染が、粘膜のカンジダ感染をもたらす、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記感染が、口腔カンジダ症(oral thrush)又は膣カンジダ症(vaginal thrush)をもたらす、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記植物デフェンシンが医療器具又はコンドームにコーティングされている、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記デフェンシンが、配列番号1、配列番号2及び配列番号3からなる群より選ばれるものであり、それぞれN末端アラニン残基を有していてもよい、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
N末端アラニンを有するデフェンシンが、配列番号25、配列番号26、及び配列番号27からなる群より選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記デフェンシンが、抗菌剤との相乗的組合せで製剤化される、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記抗菌剤が、約0.4〜約12kDのペプチド又はプロテイナーゼ阻害剤である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記被験体がヒトである、請求項1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、ヒト及び動物におけるインビボ微生物感染の制御に関する。非外部の組織、表面及び膜の微生物感染の制御に有用な作用物質ならびに天然の及び合成の製剤及び抽出物もまた、本開示によって包含される。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の記載)
本明細書にて著者により参照された刊行物の文献的詳細は記載の最後にアルファベット順に収集されている。
【0003】
本明細書における従来技術への言及は、この従来技術が任意の国における一般的な技術常識の一部を形成するという承認又は任意の形態の提案としては解釈されないし、且つ解釈されるべきではない。
【0004】
微生物感染はヒト及び動物にて重大な健康問題を招き得る。例には、粘膜組織、呼吸器表面、創傷及び深部組織の真菌及び細菌による感染が挙げられる。
【0005】
抗生物質及び化学的殺菌剤を含む抗菌剤はヒト及び獣医学にて上手く行っているが、耐性の蔓延した発生を含む多くの理由のためにこれら殺菌剤の継続使用による様々な環境的な及び規制上の懸念がある。微生物病原体によるヒト及び動物における感染を制御する代わりのメカニズムを開発する、又は少なくとも既存の抗菌剤を補足する必要性が明らかに存在する。
【0006】
最も頻繁に見られるヒトの真菌病原体はカンジダである。カンジダは、共生生物であり、集団の30〜50%については正常細菌叢の一部であるが、免疫障害を持つ患者又は、たとえば、抗生物質の使用を介して天然の微生物叢が壊されている患者では疾患の原因となり得る。カンジダ・アルビカンス(Canida albicans)、C.グラブラタ(C.glabrata)、C.パラシローシス(C.parasilosis)、C.トロピカリス(C.tropicalis)及びC.クルゼイ(C.krusei)を含むカンジダの幾つかの種はヒトで感染を引き起こすことができる。一般的なカンジダ感染には、口腔カンジダ症及び膣カンジダ症のような粘膜の感染が挙げられる。口腔カンジダ症(口腔咽頭)はHIVを患っているもので見られる最も一般的な感染の1つである(Singhら.(2014),Journal of Oral and Maxillofacial Pathology,18(Supp1):S81−S85)。さらに深刻なカンジダ感染には、全身性の血流感染(カンジダ性敗血症)及び埋め込まれた医療器具上のバイオフィルムが挙げられる。カンジダ性敗血症は、病院の集中治療入院の1000人当たり2〜8人に関与し、約30%の30日死亡率を有する。カンジダ性敗血症は、重要臓器のほとんどすべてにて膿瘍を作り出し、臓器の機能不全を誘導し、50%の罹患率につながる、カンジダ細胞の全身への広がりを特徴とする。ポリエン、アゾール及びエキノカンジンのファミリーに属する抗真菌剤がカンジダ症を治療するのに使用されているが、すべてが毒性、薬剤/薬剤の相互作用及び耐性のような望ましくない副作用を有する。カンジダ症は動物で一般に見られ、C.アルビカンス(C.albicans)が原因となることが多い。C.アルビカンス(C.albicans)は動物種の常在菌であるが、それは日和見病原体であり得る。鳥類は最も一般的に冒される。表在感染はブタ及びコウマで記載されている。全身性カンジダ症は、抗生物質への長期曝露に続いてウシ、コウシ、ヒツジ及びコウマで観察されている。
【0007】
別の重篤な真菌感染はアスペルギルス症である。アスペルギルス症は、他の臓器系も冒され得るが、主として肺を冒すアスペルギルスが原因で起きるスペクトルの大きな真菌疾患を含む。肺アスペルギルス症の臨床症状は、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、慢性壊死性アスペルギルス症、アスペルギルス腫及び最も深刻な浸潤性アスペルギルス症(IA)である。IAは免疫障害のある患者における最も一般的な糸状菌感染である(Pattersonら.(2000),Medicine,79(4):250−60)。Aspergillus属には185を超える種が含まれ、それは自然界では遍在し、特に土壌及び腐りかけの植物にて一般的である。ヒトで疾患を引き起こす最も一般的な病原体は、A.フラブス(A.flavus)、A.テレウス(A.terreus)、A.ニガー(A.niger)及びA.ツビンゲンシス(A.tubingensis)である。報告は、IAが原因の死亡率は80%を超えることを示している(Fisherら.(1981),The American Journal of Medicine,71(4):571−7)。現在の治療には、それぞれアンフォテリシンb及びイサブコナゾールを含むポリエン系及びアゾール系のメンバーが含まれる。これらの治療は、毒性、薬剤/薬剤相互作用のような望ましくない副作用を示し、イサブコナゾールについては死亡率は18%のままである。アスペルギルス症は動物でも認められる一般的な真菌感染である。それは、たとえば、A.フミガタス(A.fumigatus)、A.テレウス(A.terreus)、A.ニガー(A.niger)、A.ニヅランス(A.nidulans)、A.ヴィリドヌタンス(A.viridnutans)、A.フラバス(A.flavus)及びA.フェリス(A.felis)のような幾つかのアスペルギルス種が原因でそれは起きる。冒される動物には鳥類、ウマ、イヌ、ネコ及びウシが挙げられる。
【0008】
クリプトコッカス症は真菌病原体が原因で起きる別の感染性疾患である。症状は無症候性から軽度の気管支肺炎、中枢神経系の命を脅かす感染にまで及ぶ(CNS;Mitchell & Perfect(1995),Clinical Microbiology Reviews,8(4):515−48)。さらに、クリプトコッカス髄膜炎はAIDSを患っている患者で最も広く見られる感染の1つである(Vibhagoolらl.(2003),Clinical Infectious Diseases,36(10):1329−31)。クリプトコッカス症の主な原因病原体は、Cryptococcus科の、一般にC.ネオフォルマンス(C.neoformans)及びC.ガッティ(C.gatti)に由来する。クリプトコッカス症の最も重篤な型は、制御されない肺クリプトコッカス症から生じ、それはクリプトコッカス髄膜炎に進行する。この進行は免疫抑制のある患者でのみ生じる傾向がある。クリプトコッカス髄膜炎の最も一般的な治療はフルシトシンとの組合せでのアンフォテリシンBである。早期の適当な治療は死亡率を14〜25%から6%まで低下させているが、低血圧、拒食症、嘔吐、頭痛及び多臓器損傷を含むアンフォテリシンBに由来する毒性の副作用が一般的である。クリプトコッカス症は動物でも認められる。それはネコで最も一般的であるが、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、鳥類及び野生動物でも報告されている。伝染は胞子の吸入を介して又は創傷の汚染を介して生じる。
【0009】
ペニシリウム症はHIV患者における別の一般的な日和見感染であり、HIV患者の9.36%がペニシリウム症を発症する。ペニシリウム症の原因病原体はペニシリウム・マルネッフェイ(Penicillium marneffei)(タラロマイセス・マルネッフェイ(Talaromyces marneffei)としても知られている)である。ペニシリウム・マルネッフェイ(Penicillium marneffei)感染を患っているAIDS患者は発熱、貧血、体重低下、リンパ節腫脹症、呼吸器症状及び皮膚病変の症状を示す。治療を受けないものの死亡率は少なくとも75%である(Supparatpinyoら.(1996),Lancet,344(8915):110−3)。
【0010】
ムーコル菌症は免疫抑制のある患者で見られる2番目に最も頻繁な菌糸感染である。ほとんどのムーコル菌症は命を脅かし、最も一般的な症状は副鼻腔の深刻な感染であり、それは脳に広がり得る。感染病原体はケカビ目に属し、最も認識された原因病原体はリゾプス属に属する(リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae))。しかしながら、アポフィソマイセス・エレガンス(Apophysomyces elegans)、クンニンハメラ・ベルトレチア(Cunninghamella bertholletiae)、サクセネア・ヴァシフォルミス(Saksenaea vasiformis)、リゾムコール・プシラス(Rhizomucor pusillus)、シンセファラストラム・ラセモサム(Syncephalastrum racemosum)、コケロマイセス・レキュルヴァタス(Cokeromyces recurvatus)、アクチノムコール・エレガンス(Actinomucor elegans)を含むムーコル菌症を起こす追加の種が特定されている(Gomesら.(2011),Clinical Microbiology Reviews,24(2):411−45)。死亡率は40%〜85%の間で非常に高い。皮膚形態の感染は15%で最低の死亡率を表し、播種性疾患は100%に近い死亡率を呈する。治療には現在のところ、アンフォテリシンB、外科処置、及びポサコナゾールのようなアゾール治療が挙げられる。
【0011】
ピシウム感染は、新たに出現した命を脅かす感染性疾患である。それは一般にウマを冒し、イヌ、ネコ及びウシのような他の動物で見られ、皮膚、腸管及び動脈にて肉芽腫性感染を引き起こす(Wanachiwanawinら.(2004),Vaccine,22(27−28):3613−21)。ヒトの感染の最初の報告は1985年タイで報告され、以来熱帯及び亜熱帯の国々で報告されている。その疾患は、皮膚又は皮下の合併症を伴った眼の感染、角膜潰瘍を含む局所形態として現れ得る。しかしながら、それはまた全身性の感染又は血管の感染としても症状が見つかる可能性があり、これが普通、最も深刻である(Wanachiwanawinら.(2004),Vaccine,22(27−28):3613−21)。臨床的な特徴は四肢の虚血及び壊疽であり、感染が主要動脈に達すると、患者は全身性ピシウム感染のために死亡するであろう。主要な病原体は門オーミコタ(phylum Oomycota)に由来する真菌様の水生生物であるピシウム・インシジオサム(Pythium insidiosum)である。アンフォテリシンB及び種々のアゾールのような抗真菌治療は全身性及び血管性のピシウム感染には不十分な有効性しか示さず、最も有効な治療は感染の部位の切断であるとみなされている。
【0012】
真菌性角膜炎は世界の多くの地方、特に熱帯領域で報告されている。2つの主要な形態があり、一方は、たとえば、フザリウム及びアスペルギルスのような糸状菌が原因であり、もう一方の形態はカンジダのような酵母様の病原体が原因である。外傷は糸状菌によって引き起こされる角膜炎の主要な素因である。関与する主要な糸状菌の種は、F.ソラニ(F.solani)、F.オキシスポラム(F.oxysporum)、A.フミガタス(A.fumigatus)及びA.フラブス(A.flavus)である(Thomas(2003),Eye,(London,England),17(8):853−62)。局所のナタマイシン及びアンフォテリシンBが第1選択の治療として使用されるが、深部病変が存在する場合、経口のケトコナゾール、イトラコナゾール又はフルコナゾールが理に適った反応速度で投与されてもよい(Thomas(2003)、上記)。薬物療法が上手く行かない場合、外科的介入が必要であってもよい。
【0013】
ヒストプラスマ症は、熱二形性真菌であるヒストプラスモーシス・カプスラツム(Histoplasmosis capsulatum)の胞子の吸入後に罹患した真菌感染である。この病原体は北アメリカ、南アメリカ、アフリカ及びアジアで見いだされる。ヒストプラスマ症には幾つかの型があり、最も軽度の形態は症状をほとんど生じないか、又は全く生じない。しかしながら、幼児又は免疫系に欠陥があるものは、進行性で播種性のヒストプラスマ症を発症する可能性があり、放置すれば致命的であり得る(Wheatら.(1990),Medicine,69(6):361−74)。症状には発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛及び空咳が挙げられる。深刻な感染については、アンフォテリシンBを1〜2週間、その後のイトラコナゾールが推奨される。アンフォテリシンBは非常に高い、幾分致命的なレベルの毒性を示す。
【0014】
ヒストプラスマ症は多くの動物種でも記載されているが、感染はイヌ及びネコでは稀である。感染は普通、気道への噴霧曝露に続いて生じる。
【0015】
ブラストミセス症は二形性真菌であるブラストマイセス・ダーマティティディス(Blastomyces dermatitidis)が原因で起きる。感染はイヌ及びネコにおいて最も一般的であるが、ウマ、フェレット、オオカミ、シカ、ライオン及びイルカにおいても観察されている。それは北アメリカに限定され、伝染は噴霧化した分生子の吸入を介すると考えられる。
【0016】
植物デフェンシンは4〜5個のジスルフィド結合を持つ小分子(45〜54アミノ酸)の塩基性タンパク質である(Janssenら.(2003),Biochemistry,42(27):8214−8222)。それらは、共通するジスルフィド結合のパターン及び共通する構造上の折り畳みを共有し、三本鎖の逆平行βシートが3つのジスルフィド結合によってαらせんに繋がれてシステインで安定化されたαβモチーフを形成する。第4のジスルフィド結合もN末端とC末端を連結し、極度に安定な構造をもたらす。植物の背景では一般的に、抗細菌活性、タンパク質合成阻害及びα−アミラーゼとプロテアーゼの阻害を含む種々の機能はデフェンシンに起因している(Colillaら.(1990),FEBS Lett,270(1−2):191−194;Bloch及びRichardson,(1991),FEBS Lett,279(1):101−104)。
【0017】
デフェンシンの構造は、システイン残基間の領域として定義される7つの「ループ」からなる。ループ1は、第1のβ鎖(1A)、ならびに第1の2つの不変システイン残基間でこのβ鎖をαらせん(1B)に接続する柔軟な領域の大部分を包含する。ループ2、3及び4の始め(4A)は、αらせんを構成する一方で、残りのループ(4B〜7)はβ鎖2及び3、ならびにそれらを接続する柔軟な領域(βヘアピン領域)を構成する(van der Weerdenら.(2013),Cell Mol.Life Sci.70(19):3545−3570)。植物デフェンシンのループ5は抗真菌活性に必須であり、これらタンパク質の作用のメカニズムにとって重要な決定基であることが知られている(Sagaramら,(2011),PLoS One,6.4:e18550)。
【0018】
植物デフェンシンは一般に8つの完全に保存されたシステイン残基を共有する。これらの残基は、その存在、位置及び接続性がデフェンシンの間で保存されているので、共通して「不変(invariant)システイン残基」と呼ばれる。配列の類似性に基づいて、植物デフェンシンは異なる群に分類することができる。各群内では配列相同性は相対的に高いのに対して群間のアミノ酸の類似性は低い(van der Weerdenら.(2013),Fungal.Biol.Rev.26:121−131)。異なる群に属する植物デフェンシンは一般に異なる生物活性を有し、又は同じ生物活性について異なる作用機序を有する。
【0019】
植物デフェンシンには2つの主要なクラスがある。クラスIのデフェンシンは小胞体(ER)のシグナル配列に続く成熟デフェンシンのドメインからなる。クラスIIのデフェンシンは約33アミノ酸のC末端プロドメイン又はプロペプチド(CTPP)を伴ったさらに大きな前駆体として産生される。今日までに特定されたクラスIIデフェンシンのほとんどはナス科(Solanaceous)植物種にて見いだされている。
【0020】
ヒト及び動物において微生物の感染をさらに効果的に管理するためのプロトコールを開発する必要性がある。一部のデフェンシンが抗真菌特性を有する一方で、様々な真菌病原体にわたるその活性は有意に変化し、実証された活性の大半は植物真菌病原体に向いている。
【発明の概要】
【0021】
アミノ酸配列は配列識別子番号(配列番号)によって言及される。配列番号は配列識別子に数的に対応する(<400>1(配列番号1)、<400>2(配列番号2)等)。配列識別子の要約は表1に提供されている。配列表は特許請求の範囲の後に提供されている。
【0022】
本開示は、被験体におけるインビボ組織にて微生物による感染を阻止する方法を教示し、該方法は、微生物の増殖又はコロニー形成を根絶する又はさもなければ制御するのに十分な時間及び条件下で、植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体(variant)、配列番号1〜47からなる群より選択される植物デフェンシン、誘導体若しくは変異体、又は最適な配列比較ののち配列番号1〜47のいずれか1つに対して少なくとも約80%のアミノ酸配列類似性を有する植物デフェンシンの有効量に、インビボ組織を接触させることを含む。植物病原体を標的とするように進展しているにもかかわらず、本明細書で定義されている植物デフェンシンは、微生物に対して強力な活性を有するが、哺乳類細胞においては活性がないか、又は医学的に許容できる最少のオフ・ターゲット活性がある。さらに驚くべきことに、デフェンシンの多くは接触による殺菌活性を有する。
【0023】
配列番号1〜47によって定義されるデフェンシンを表1及び2で定義する。本発明は、外部の皮膚、毛髪又は爪ではない内部の表面組織または膜の治療を包含する。実施形態では、デフェンシンは、コンセンサスアミノ酸配列である配列番号24、又は最適な配列比較ののち配列番号24に対して少なくとも80%の類似性を有する、その機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体によって定義される。ここで、配列番号24は、N末端アラニン残基を有していてもよい。例には、配列番号1、配列番号2及び配列番号3、及びN末端アラニン残基を有するそれらの変異体(それぞれ配列番号25〜27)が挙げられる。「外表皮膚」への言及は外表皮膚又は表面創傷の皮下層を排除しない。
【0024】
微生物感染の例には、真菌及び細菌による感染が挙げられる。これらには、たとえば、粘膜(たとえば、鵞口瘡)、消化管及び血流のカンジダ感染、髄膜炎のようなクリプトコッカス感染、呼吸器感染のようなアスペルギルス感染、ムーコル症のような皮下感染、細菌性胃腸炎、呼吸器感染、創傷感染及び性伝染病をもたらす感染が含まれる。含まれるのはまた、下痢及び尿路感染のような大腸菌感染ならびに耳感染、髄膜炎、尿路感染及び敗血症のようなバチルス感染である。
【0025】
治療プロトコールでの使用のために意図されたデフェンシンは、表1に列挙した配列番号1〜47から選択され、且つ表2にさらに特徴付けられたアミノ酸配列、ならびに最適な配列比較ののち配列番号1〜47のいずれか1つに対して少なくとも80%の類似性を有するデフェンシンによって定義される。簡潔さのために、以後「配列番号1〜47」への言及には、配列番号1〜47のいずれか1つに対して少なくとも80%の類似性を有するデフェンシンが含まれる。実施形態では、デフェンシンは透過性(permeabilizing)デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体である。合成変異体の例には、クラスIデフェンシンに由来するループ1Bがナス科(Solanaceous)のクラスIIデフェンシンを置換している場合が挙げられる。これらにはHXP4、HXP34及びHXP35が挙げられる。他の変異体又は誘導体には、表2に列挙したデフェンシン、又は表2に列挙したデフェンシンに対して少なくとも80%の類似性を有するデフェンシンが挙げられ、その際、デフェンシンはN末端にアラニン残基を含む(すなわち、配列番号25〜47)。デフェンシンのN末端でのアラニンの付加は、STE13プロテアーゼ部位を必要とすることなくピキア・パストリス(Pichia pastoris)発現系にてペプチドが組換えで産生されるようにする。STE13部位は通常KEX2によるα−接合因子の分泌シグナルの効率的なプロセッシングを可能にする。しかしながら、高発現負荷のもとでは、STE13プロテアーゼ切断は、ペプチドのN末端に残っているGlu−Ala反復に対する役に立たないリードであり得る。これらの反復によって付与される追加の負の電荷は植物デフェンシンの活性に有害であり得る。STE13プロテアーゼ部位をアラニンで置き換えて不完全なプロセシングを防ぐことができる(Cabralら,(2003),Protein Expres Purif,31(1):115−122)。N末端アラニンの存在は赤血球を溶解するデフェンシンの能力を低下させることもできる(WO2011/16074)。
【0026】
実施形態では、表2に列挙したデフェンシン(配列番号1〜47)を修飾してペプチドの安定性を高める。さらなる実施形態では、このことは、アスパラギン及びグルタミンのような脱アミド化を受け易いアミノ酸、又はアスパラギン酸のような異性化を受け易いアミノ酸を修飾を受け易くないアミノ酸で置き換えることによって達成される。特定の実施形態では、デフェンシンHXL008、HXL035又はHXL036は18位、36位又は42位で修飾されている。
【0027】
実施形態では、表2に列挙したデフェンシン(配列番号1〜47)を修飾してペプチドの正の電荷を増やす。正の電荷は、植物デフェンシンを含む抗菌ペプチドの活性に重要であることが知られている(Sagaramら,(2011),PLoS One,6.4:e18550)。実施形態では、正の電荷の増加は、たとえば、グルタミン酸又はアスパラギン酸のような負に荷電した残基の中性アミノ酸による置き換えによって達成される。好ましい実施形態では、中性アミノ酸はアラニン又はグリシンである。別の実施形態では、正の電荷の増加は、中性アミノ酸を、リジン又はアルギニンのような正に荷電した残基で置き換えることによって達成される。
【0028】
実施形態では、治療には、非デフェンシンペプチド、プロテイナーゼ阻害剤、別のデフェンシン、又は抗生物質を始めとする、タンパク様若しくは非タンパク様(すなわち、化合物)殺菌剤との組合せにおけるデフェンシンが含まれる。
【0029】
実施形態では、デフェンシンは、経口、吸入、静脈内、舌下、腹腔内、直腸又は皮下の投与によることを含む任意の手段によって提供される。或いは、それは局所的に内部の組織、表面若しくは膜に、又は創傷に適用される。デフェンシンは徐放性の貼付剤又はインプラント(たとえば、皮下インプラント)を介して投与することもできる。デフェンシンは、たとえば、カテーテル及びインプラントのような医療器具又はコンドーム又は他の鞘状物の表面にコーティングすることもできる。
【0030】
本明細書でさらに教示されるのは、配列番号1〜47から選択される植物デフェンシンを含む製剤又は抽出物である。製剤又は抽出物はさらに別の活性剤又は製剤若しくは抽出物の組み合わせを含んでもよく、その際、少なくとも1つの製剤又は抽出物は本明細書で定義されているようなデフェンシンを含み、それらは使用に先立って混合される、又はいずれかの順序で順次使用される。本明細書で定義されているような植物デフェンシン又はそれを含む抽出物は、たとえば、ハーブ製剤及び植物抽出物を始めとする、全身性の又は局所の製剤、コーティング、ゲル、軟膏、クリーム、スプレー、泡状物、カプセル、錠剤、経口製剤、吸入可能又は噴霧化製剤等の形態で使用されてもよい。
【0031】
本明細書で可能になるのは、被験体におけるインビボ組織の微生物感染の治療又は予防のための薬物の製造における、配列番号1〜47によって定義されているような植物デフェンシンの使用である。本明細書で教示されるのはまた、被験体におけるインビボ組織の微生物感染の治療又は予防において使用するための配列番号1〜47によって定義されているような植物デフェンシンである。本明細書でさらに教示されるのは、被験体におけるインビボ組織の微生物感染の治療にて使用される場合の配列番号1〜47によって定義されているような植物デフェンシンである。実施形態では、デフェンシンは哺乳類細胞に対して有害活性を有さない、又は医学的に許容できる最少限の活性を有する。哺乳類細胞に対する活性は皮膚刺激及び他の副作用の可能性を高めるであろう。
【0032】
上記で示したように、デフェンシンは配列番号1〜47のいずれか1つによって定義されているようなデフェンシンの機能的な天然の又は合成の誘導体又は変異体であってもよい。被験体はヒト被験体又は非ヒト動物被験体であってもよい。
【0033】
本明細書でさらに意図されるのは、微生物を含む組成物の製造で使用するために本明細書で定義されているようなデフェンシンを発現するように操作された単離された微生物である。実施形態では、微生物は、たとえばピキアのような、しかし、これに限定されない酵母である。そのような組成物は、プロバイオティックの形態におけるようなヒト及び動物の治療において有用である。或いは、デフェンシンは植物抽出物又は微生物抽出物を含む細胞抽出物として提供される。
【0034】
配列番号1〜47からなる群より選択される植物デフェンシンである、植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を含む区画形態でのキットも本明細書で教示されている。任意の実施形態では、別の区画は第2の活性剤と、さらなる区画にて任意で別に、又は既存の区画で一緒に、薬学上又は獣医学上許容できる希釈剤、キャリア、又は賦形剤とを含む。実施形態では、デフェンシンは配列番号24で示されるコンセンサスアミノ酸配列によって定義される。例には、HXL008(配列番号1)、HXL035(配列番号2)、HXL036(配列番号3)及びそれぞれN末端がアラニンの形態である配列番号25〜27が挙げられる。
【0035】
実施形態では、本明細書で使用するのに意図されるデフェンシンはN末端アラニン残基を含んでもよいし、又は含まなくてもよい。これはN末端アラニン残基を含む一部の組換えデフェンシンに特に当てはまる。本明細書で「デフェンシン」の定義によって包含されるのは、N末端アラニンを有する配列番号1〜23のいずれかである。これらは配列番号25〜47として表される。コンセンサスアミノ酸配列である配列番号24はN末端アラニン残基を有していてもよい。
【0036】
デフェンシンのN末端でのアラニンの付加は、STE13プロテアーゼ部位を必要とすることなくピキア・パストリス(Pichia pastoris)の発現系にてペプチドが優勢に産生されるようにする(Cabralら.(2003),Protein Express Purif,31(1):115−122)。N末端アラニンの存在は赤血球を溶解するデフェンシンの能力を低下させることもできる。
【0037】
実施形態では、表2に列挙したデフェンシン(配列番号1〜47)を修飾してペプチドの安定性を高める。さらなる実施形態では、このことは、アスパラギン及びグルタミンのような脱アミド化を受け易いアミノ酸、又はアスパラギン酸のような異性化を受け易いアミノ酸を、修飾を受け易くないアミノ酸で置き換えることによって達成される。特定の実施形態では、デフェンシンHXL008、HXL035又はHXL036は18位、36位又は42位で修飾されている。
【0038】
実施形態では、表2に列挙したデフェンシン(配列番号1〜47)を修飾してペプチドの正の電荷を増やす。正の電荷は、植物デフェンシンを含む抗菌ペプチドの活性に重要であることが知られている。実施形態では、正の電荷の増加は、たとえば、グルタミン酸又はアスパラギン酸のような負に荷電した残基の中性アミノ酸による置き換えによって達成される。実施形態では、中性アミノ酸はアラニン又はグリシンである。別の実施形態では、正の電荷の増加は、中性アミノ酸を、たとえば、リジン又はアルギニンのような正に荷電したアミノ酸で置き換えることによって達成される。
【0039】
保存的アミノ酸の変化も本明細書では考慮される。
【0040】
【表1-1】
【0041】
【表1-2】
【0042】
HXLタンパク質のアミノ酸配列は米国特許第6,911,577号及び関連する対応特許のメンバーにて引用されている。
【0043】
【表2-1】
【0044】
【表2-2】
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1(a)】図1(a)は、本明細書で包含される種々のデフェンシンのアミノ酸の配列比較を示す図である。
図1(b)】図1(b)は、本明細書で包含される種々のデフェンシンのアミノ酸の配列比較を示す図である。
図1(c)】図1(c)は、本明細書で包含される種々のデフェンシンのアミノ酸の配列比較を示す図である。
図1(d)】図1(d)は、本明細書で包含される種々のデフェンシンのアミノ酸の配列比較を示す図である。
図1(e)】図1(e)は、本明細書で包含される種々のデフェンシンのアミノ酸の配列比較を示す図である。
図2(a)】図2(a)は、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)のインビトロでの臨床単離体の増殖に対する植物デフェンシンNaD1(破線)及びHXL008(実線)の効果を示すグラフを示す図である。真菌の増殖は、増殖培地への植菌の72時間後に達成された595nmでの光学密度(A595)の上昇によって測定し、タンパク質濃度(μg/ml、横軸)に対して無タンパク質コントロール(縦軸)を比べた増殖の百分率としてプロットしている。
図2(b)】図2(b)は、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)のインビトロでの臨床単離体の増殖に対する植物デフェンシンNaD1(破線)及びHXL008(実線)の効果を示すグラフを示す図である。真菌の増殖は、増殖培地への植菌の72時間後に達成された595nmでの光学密度(A595)の上昇によって測定し、タンパク質濃度(μg/ml、横軸)に対して無タンパク質コントロール(縦軸)を比べた増殖の百分率としてプロットしている。
図2(c)】図2(c)は、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)のインビトロでの臨床単離体の増殖に対する植物デフェンシンNaD1(破線)及びHXL008(実線)の効果を示すグラフを示す図である。真菌の増殖は、増殖培地への植菌の72時間後に達成された595nmでの光学密度(A595)の上昇によって測定し、タンパク質濃度(μg/ml、横軸)に対して無タンパク質コントロール(縦軸)を比べた増殖の百分率としてプロットしている。
図2(d)】図2(d)は、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)のインビトロでの臨床単離体の増殖に対する植物デフェンシンNaD1(破線)及びHXL008(実線)の効果を示すグラフを示す図である。真菌の増殖は、増殖培地への植菌の72時間後に達成された595nmでの光学密度(A595)の上昇によって測定し、タンパク質濃度(μg/ml、横軸)に対して無タンパク質コントロール(縦軸)を比べた増殖の百分率としてプロットしている。
図3図3(a)〜(e)は、100μMのHXL008で72時間処理した後の紅色白癬菌増殖の生き残りコロニーの写真を示す図である。パネル(a)〜(d)はそれぞれ臨床単離体14−01、14−02、14−03及び14−04を表す。生き残っているコロニーは黒い四角で印を付けている。パネル(e)はHXL008で処理しなかった紅色白癬菌の増殖を示す図である。
図4図4は、HXL008、HXL035及びHXL036のアミノ酸配列比較及びこれら3つの配列のコンセンサス配列を示す図である。同一アミノ酸は黒色で強調し、保存されたアミノ酸は灰色で強調する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本明細書の全体を通して、文脈が要求しない限り、単語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」のような変形は、述べられる要素又は整数又は方法工程又は要素若しくは整数若しくは方法工程の群の包含を意味するが、任意の要素又は整数又は方法工程、又は要素若しくは整数若しくは方法工程の群の排除を意味しないことが理解されるであろう。
【0047】
本明細書で使用されるとき、単数形態「a」、「an」及び「the」は、文脈が明瞭に指示しない限り、複数態様を含む。従って、たとえば、「デフェンシン(a defensin)」への言及は、単一のデフェンシン、および2以上のデフェンシンを含み;「作用物質(an agent)」への言及は、単一の作用物質、および2以上の作用物質を含み;「開示(the disclosure)」への言及は、本開示によって教示される単一及び複数の態様を含む。本明細書で教示され、可能になる態様は用語「発明」によって包含される。そのような態様はすべて本発明の幅広さの範囲内で可能になる。本明細書で意図される任意の変異体及び誘導体は本発明の「形態」によって包含される。
【0048】
「デフェンシン」への言及は、抗菌活性を保持する以下の植物デフェンシンの1以上を意味する。
(i)配列番号24で示されるコンセンサスアミノ酸配列を有するデフェンシン;
(ii)HXL008(配列番号1)、HXL035(配列番号2)及びHXL036(配列番号3)からなる群より選択されるデフェンシン;
(iii)HXL001(配列番号4)、HXL002(配列番号5)、HXP35(配列番号3)、HXL003(配列番号6)、HXL004(配列番号7)、HXL005(配列番号8)、HXL009(配列番号9)、HXL012(配列番号10)、HXL013(配列番号11)、HXL015(配列番号12)、HXL032(配列番号13)、HXL033(配列番号14)、HXL034(配列番号15)、NsD1(配列番号16)、NsD2(配列番号17)、NaD1(配列番号18)、NoD173(配列番号19)、DmAMP1(配列番号20)、HXP4(配列番号21)、HXP34(配列番号22)及びHXP35(配列番号23)からなる群より選択されるデフェンシン;
(iv)配列番号1〜47のいずれか1つの機能的な天然に存在する又は合成の誘導体又は変異体;
(v)最適な配列比較ののち配列番号1〜47のいずれか1つに対して少なくとも80%の類似性を有するデフェンシン;
(vi)N末端アラニン残基を含む配列番号1〜47のいずれか1つ(すなわち、配列番号25〜47)及び/又は
(vii)最適な配列比較ののち配列番号1〜3のいずれか1つに対して少なくとも80%の類似性を有するデフェンシン。
【0049】
実施形態では、デフェンシンは配列番号1〜3によって定義され、又はN末端アラニン残基を含有する(それぞれ配列番号25〜27)。便宜上、これらのデフェンシンは配列番号24で示されるコンセンサスアミノ酸配列の範囲内に包含される。
【0050】
以後、「デフェンシン」又は「本明細書で定義される」デフェンシンへの言及は、上記段落(i)〜(vii)に列挙したようなデフェンシンを意味する。(i)〜(vii)によって包含される様々なデフェンシンは本発明の様々な形態を表す。
【0051】
本明細書のデフェンシンが殺菌剤との組合せで使用され、その殺菌剤がデフェンシンである場合、そのときは第2のデフェンシンは任意のデフェンシンであってもよい。
【0052】
ヒト被験体又は非ヒト動物被験体における特定のインビボの解剖上の部位又は領域にて微生物の感染又はコロニー形成の管理を円滑にするのに使用されるプロトコールが本明細書に記載されている。該プロトコールは、インビボの組織に対する又はおける微生物の増殖又はコロニー形成を阻害する又はさもなければ制御するための植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体の使用を含む。本プロトコールは皮膚、毛髪及び爪の治療を排除する。しかしながら、皮膚への言及は皮膚の皮下感染又は外傷を排除しない。実施形態では、デフェンシンは哺乳類細胞に対して有害活性を有さず、又は医学的に許容できる最少限の活性を有する。任意の実施形態では、デフェンシンは別の抗菌剤との相乗的組合せで使用される。後者の作用物質には、非デフェンシンペプチド、プロテイナーゼ阻害剤、別のデフェンシン、及び抗生物質を始めとする、抗菌特性を有するタンパク様又は非タンパク様(化合物)の作用物質が挙げられる。
【0053】
微生物感染の例には真菌及び細菌による感染が挙げられる。これらには、アスペルギルス症、たとえば、粘膜のカンジダによる感染(たとえば、鵞口瘡(thrush))、全身性カンジダ症、クリプトコッカス症、ムーコル菌症のような皮下感染、細菌性胃腸炎、呼吸器感染、創傷感染、及び性伝染病をもたらす感染が挙げられる。
【0054】
本明細書で可能になるのは、被験体におけるインビボ組織に対する又はおける微生物による感染を阻止する方法であり、該方法は、微生物又は微生物を含む組織を、有効量の植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体に接触させることを含む。実施形態では、インビボ組織は、粘膜又は上皮の内表面又は組織、又は皮膚の皮下層である。従って本明細書で教示されるのは、インビボの粘膜又は上皮の組織又は皮下層に対する又はおける微生物の増殖又はコロニー形成を阻害する方法であり、該方法は、組織又は微生物を、有効量の植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の変異体若しくは誘導体に接触させることを含む。一般に接触は、微生物の増殖を阻害するのに十分な時間及び条件下である。デフェンシンは、たとえば、カテーテル及びインプラントのような医療器具又はコンドーム又は他の鞘状物の表面にコーティングすることもできる。
【0055】
「微生物阻害」にはコントロールに比べた微生物バイオマスの低下(又は生存性の喪失)によって測定されるような殺菌活性及び静菌活性の双方が含まれる。微生物の増殖は微生物に応じた当該技術で既知の多数の様々な方法によって測定することができる。真菌については、たとえば、糸状菌の増殖を測定する一般的に使用される方法は、好適な増殖培地にて芽胞を出芽させることと、測定できる増殖を達成するのに十分な時間インキュベートすることと、特定されたインキュベート時間ののち培養物における上昇した光学密度を測定することとを有する。光学密度は増殖の増加とともに上昇する。通常、微生物の増殖又はコロニー形成は病態形成に必要である。従って、病原体の増殖の阻害は微生物疾患からの防御の好適な指標を提供し、すなわち、阻害が大きければ大きいほど、防御はさらに効果的である。さらに、殺菌活性又は静菌活性の有効性は、試料からの顕微鏡検査若しくは培養法、又は疾患の症状(たとえば、発熱、発赤、圧痛等)の改善によって決定することができる。
【0056】
微生物への言及には真菌及び細菌が含まれる。
【0057】
治療プロトコールには、リスクがある被験体の感染からの予防法(すなわち、予防)が含まれる。「リスクがある」被験体は特定の場所又は人口動態にある被験体であってもよい。従って、本文脈にて「感染を予防すること」は、微生物感染若しくはそれに関連する疾患症状を回避するように、又は低下した若しくは出来るだけ抑えられた若しくは頻度の少ない微生物感染若しくはそれに関連する疾患症状を示すようにヒト又は動物の宿主をデフェンシンで治療することを意味し、それはデフェンシンに曝露されなかった宿主に比べると宿主/微生物の相互作用の当然の結果である。つまり、微生物感染が疾患及び/又は関連する疾患症状を引き起こすのを防ぐ又は軽減する。感染及び/又は症状は、本明細書で教示されているプロトコールによってそのように治療されなかった宿主に比べて少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%以上低減される。低減百分率は宿主及び微生物に適する好都合な手段によって測定することができる。微生物は「病原体」であることなく、被験体にて天然に存在していてもよい。しかしながら、微生物があるレベルまで数を増やすと病原性になる状況が生じ得る。
【0058】
デフェンシンの作用は、数ある他の阻害活性の中で微生物の増殖、複製、感染及び/又は維持を阻害すること、及び/又は微生物のレベル又は生体におけるその場所(すなわち、インビボの組織、表面又は膜にて)が病原性の結果を生じた場合、微生物感染の症状の改善を誘導することである。
【0059】
本明細書で可能になるのは、被験体におけるアスペルギルス症又は関連する状態の治療又は予防の方法であり、該方法は、アスペルギルス症の症状を改善するのに十分な時間及び条件下で、植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を、被験体における感染部位に接触させること、又は被験体に投与することを含む。
【0060】
実施形態では、微生物感染はカンジダの種又は株による感染である。
【0061】
本明細書で可能になるのは、被験体における粘膜のカンジダ感染の治療又は予防の方法であり、該方法は、感染の症状を改善するのに十分な時間及び条件下で、植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を、被験体における感染部位に接触させること、又は被験体に投与することを含む。
【0062】
実施形態では、カンジダ感染は鵞口瘡をもたらす。
【0063】
実施形態では、微生物感染は全身性カンジダ症である。
【0064】
従って、本明細書で教示されるのは、被験体における全身性カンジダ症の治療又は予防の方法であり、該方法は、感染の症状を改善するのに十分な時間及び条件下で植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を被験体に投与することを含む。
【0065】
実施形態では、微生物感染はクリプトコッカス症である。
【0066】
従って、本明細書で教示されるのは、感染の症状を改善するのに十分な時間及び条件下で植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を被験体における感染部位に接触させること又は被験体に投与することを含む、被験体におけるクリプトコッカス症の治療又は予防の方法である。
【0067】
実施形態では、微生物感染はムーコル菌症又は関連する状態である。従って、本明細書で可能になるのは、感染の症状を改善するのに十分な時間及び条件下で植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を、被験体における感染部位に接触させること又は被験体に投与することを含む、被験体におけるムーコル菌症の治療又は予防の方法である。
【0068】
実施形態では、微生物感染は皮下感染である。従って、本明細書で教示されるのは、被験体における皮下皮膚層の感染の治療又は予防の方法であり、該方法は、感染の症状を改善するのに十分な時間及び条件下で植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を、被験体における感染部位に接触させること又は被験体に投与することを含む。
【0069】
実施形態では、微生物感染はヒストプラスマ症である。従って、本明細書で教示されるのは、感染の症状を改善するのに十分な時間及び条件下で、植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を、被験体における感染部位に接触させること又は被験体に投与することを含む、被験体におけるヒストプラスマ症の治療又は予防の方法である。
【0070】
実施形態では、微生物感染は胃腸炎をもたらす。
【0071】
従って、本明細書は、感染の症状を改善するのに十分な時間及び条件下で植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を被験体に投与することを含む、被験体における微生物性胃腸炎の治療又は予防の方法について指導的である。
【0072】
実施形態では、微生物感染は呼吸器感染である。
【0073】
本明細書で可能になるのは、被験体における呼吸器感染の治療又は予防の方法であり、該方法は、感染の症状を改善するのに十分な時間及び条件下で植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を被験体に投与することを含む。
【0074】
実施形態では、微生物感染は創傷感染である。
【0075】
本明細書は、被験体における又は対する創傷感染の治療又は予防の方法を教示し、該方法は、感染の症状を改善するのに十分な時間及び条件下で植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を、被験体における創傷に接触させること又は被験体に投与することを含む。
【0076】
実施形態では、微生物感染は性伝染病をもたらす。
【0077】
従って、本明細書で可能になるのは、被験体における性伝染病の治療又は予防の方法であり、該方法は、感染の症状を改善するのに十分な時間及び条件下で植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を被験体における感染部位に接触させること又は被験体に投与することを含む。
【0078】
実施形態では、デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体は医療器具又はコンドームの表面にコーティングされる。医療器具の例にはカテーテル及びインプラントが挙げられる。たとえば、コンセンサスアミノ酸配列である配列番号24によって定義されるデフェンシン、又は最適な配列比較ののち配列番号24に対して少なくとも80%の類似性を有するデフェンシンを含む、その機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体(配列番号24は、N末端アラニン残基を有していてもよい)のような、しかし、これらに限定されない、本明細書で定義されるデフェンシンのいずれかがこれらの方法で使用されてもよい。例には、配列番号1、配列番号2及び配列番号3及びN末端アラニン残基を有するその変異体(それぞれ配列番号25〜27)が挙げられる。
【0079】
「接触させること」によって、ヒト被験体又は動物被験体への投与又は適用に続く微生物又は微生物を含む組織、表面若しくは膜若しくは部位のデフェンシンに対する曝露が含まれる。それにはまた、被験体又は感染部位への全身性の、局部の、局所の又は非経口の投与も含まれる。接触は、精製された植物デフェンシン又はそれを含む製剤、又は天然にデフェンシンを含む又はデフェンシンを産生するように操作されている植物抽出物との接触であってもよい。製剤には、ハーブ製剤及び医薬製剤が挙げられる。「接触させること」への言及には、被験体又は被験体における感染部位に投与することの停止が含まれる。
【0080】
本明細書で可能になるのは、ヒト被験体又は動物被験体におけるインビボ組織に対する又はおける微生物による感染を阻止するのに使用するための植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を含む製剤である。
【0081】
さらに本明細書で可能になるのは、ヒト被験体又は動物被験体におけるインビボ組織に対する又はおける微生物による感染を阻止するための薬物の製造における植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を含む製剤の使用である。
【0082】
可能になるのはまた、ヒト被験体又は動物被験体におけるインビボ組織に対する又はおける微生物による感染を阻止するのに使用される場合の植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を含む製剤である。
【0083】
実施形態では、本明細書で教示されるのは、区画が植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体を含む、区画又は区画形態を含む治療用キットである。第2の区画又はさらなる区画は、たとえば、抗生物質又は他の殺菌剤又は静菌剤のような他の抗菌剤を始めとする、他の作用物質又は賦形剤を含んでもよい。使用に先立って又は任意の順序で順次使用されるのに先立って各区画の内容物が混合されてもよい。他の抗菌剤には、非デフェンシンペプチド、プロテイナーゼ阻害剤、別のデフェンシン、又は抗生物質を始めとする、タンパク様若しくは非タンパク様(すなわち、化合物)の殺菌剤が挙げられる。
【0084】
「植物デフェンシン」への言及は、表1及び表2を参照して本明細書で定義されているものを意味する。本明細書で定義されているように、デフェンシンには配列番号1〜47のいずれか1つに対して少なくとも約80%の類似性を有するデフェンシンが挙げられる。80%の類似性は、最適な配列比較ののち、且つ必要に応じて適当なスペースを使用して配列比較を最適化したのち決定される。「少なくとも80%」又は「少なくとも約80%によって、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び100%が含まれる。実施形態では、デフェンシンは、コンセンサスアミノ酸配列である配列番号24、又は最適な配列比較ののち配列番号25に対して少なくとも80%の類似性を有するデフェンシンを含むその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体によって定義され、配列番号24はN末端アラニン残基を有していてもよい。例には、配列番号1、配列番号2及び配列番号3、ならびにN末端アラニン変異体であるそれぞれ配列番号25〜27が挙げられる。本明細書で使用される一部のデフェンシンは、「天然に存在する」、「修飾された」、「変異体」、「変異させた」、「合成の誘導体又は変異体」、「キメラ」のデフェンシンと呼ばれてもよい。そのようなデフェンシンはすべて抗菌活性を保持する。
【0085】
従って、本明細書で教示されるのは、被験体におけるインビボ組織に対する又はおける微生物による感染を阻止する方法であり、該方法は、感染の症状を改善するのに十分な時間及び条件下で、配列番号1〜47から選択される植物デフェンシン又はその機能的な天然の若しくは合成の誘導体若しくは変異体又は最適な配列比較ののち配列番号1〜47のいずれか1つに対して少なくとも80%の類似を有するデフェンシンの有効量を、微生物若しくは微生物を含む組織に接触させること、又は被験体に投与することを含む。デフェンシンは、たとえば、配列番号25〜47のようにN末端アラニン残基を有してもよい。
【0086】
用語「類似性」には本明細書で使用されるとき、アミノ酸レベルで比較された配列間の正確な同一性が含まれる。アミノ酸レベルでの非同一性がある場合、「類似性」には、それにもかかわらず構造的な、機能的な、生化学的な及び/又は立体構造でのレベルで互いに関連するアミノ酸が含まれる。実施形態では、アミノ酸配列の比較は類似性ではなく同一性のレベルで行われる。
【0087】
2以上のポリペプチド間での配列関係を記載するのに使用される用語には、「参照配列」、「比較ウインドウ」、「配列類似性」、「配列同一性」、「配列類似性百分率」、「配列同一性百分率」、「実質的に類似する」及び「実質的な同一性」が挙げられる。「参照配列」は、少なくとも12、しかし、頻繁には15〜18、多くは少なくとも25以上、たとえば、30アミノ酸残基の長さである。2つのポリペプチドはそれぞれ、(1)2つのポリペプチド間で類似する配列(すなわち、完全なアミノ酸配列の一部だけ)及び(2)2つのポリペプチド間で多様である配列を含んでもよいので、2つ(以上)のポリペプチド間の配列比較は通常、「比較ウインドウ」にわたって2つのポリペプチドを比較して配列類似性の局所領域を特定し、比較することによって実施される。「比較ウインドウ」は参照配列と比較される通常12個の連続する残基の概念セグメントを指す。比較ウインドウは、2つの配列の最適な配列比較について参照配列(付加又は欠失を含まない)に比べて約20%以下の付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。比較ウインドウを並べるための配列の最適な配列比較は、アルゴリズム(GAP,BESTFIT,FASTA,Clustal W2 and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package Release,7.0,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,WI,USA)のコンピュータ化した実施によって、又は選択される種々の方法のいずれかによって生成される検査及び最良の配列比較(すなわち、比較ウインドウにわたって最高の相同性百分率を生じる)によって行われてもよい。たとえば、Altschulら.(1997),Nucl.Acids.Res.25(17):3389−3402によって開示されたプログラムのBLASTファミリーも参照してもよい。配列解析の詳細な議論はAusubelらのUnit 19.3.(1994−1998) In: Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons Incにて見いだすことができる。他の配列比較のソフトウエアには、BWA(Li and Durbin (2010) Bioinformatics,26:589−595)及びBowtie(Langmeadら,(2009),Genome Biol 10:R25 and BLAT(Kent,(2002),Genome Res,12:656−664)が挙げられる。
【0088】
用語「配列類似性」及び「配列同一性」は本明細書で使用されるとき、比較のウインドウにわたってアミノ酸対アミノ酸の基準で配列が同一である又は機能的に若しくは構造的に類似する程度を指す。従って、「配列同一性の百分率」は、たとえば、比較のウインドウにわたって最適に並べられた配列を比較し、同一のアミノ酸残基(たとえば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys及びMet)が双方の配列に存在する位置の数を決定して一致した位置の数を得、一致した位置の数を比較のウインドウにおける位置の総数(すなわち、ウインドウのサイズ)で割り、結果に100を乗じて配列同一性の百分率を得ることによって算出される。本発明の目的では、「配列同一性」は、好適な方法又はソフトウエアを有する参照マニュアルで使用されるような標準の初期設定を用いたコンピュータアルゴリズムによって算出される「一致の百分率」を意味するように理解されるであろう。配列類似性に関して同様のコメントが適用される。
【0089】
本明細書で使用される一部のデフェンシンはその供給源に応じて、「天然に存在する」デフェンシン、「修飾された」デフェンシン、「変異体」デフェンシン、「変異させた」デフェンシン、又は「キメラ」デフェンシンと呼ばれてもよい。
【0090】
実施形態では、デフェンシンはクラスIIのナス科(Solanaceous)のデフェンシンである。実施形態では、デフェンシンは、デフェンシンの第1のβ鎖(β鎖1)とN末端位置でのαらせんとの間のループ領域で修飾される。実施形態では、ループ領域は第2の不変システイン残基又はその同等物のN末端で6アミノ酸を含む。この領域は「ループ1B」と定義される。クラスIIのナス科(Solanaceous)のデフェンシンは、成熟ドメインの相対的に保存されたC末端部分によって他のデフェンシンから区別される。
【0091】
本明細書に含まれるのは、β鎖1とN末端部分でのαらせんとの間のループ領域が単一又は複数のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失によって修飾されて抗病原体活性を有する変異体デフェンシンを生成する、修飾されたクラスIIのナス科(Solanaceous)のデフェンシンの骨格(backbone)を含む人工的に作り出されたデフェンシンの使用である。実施形態では、ループ領域は、第2の不変システイン残基に対してN末端の6アミノ酸残基によって定義されるループ1Bである。デフェンシンにおけるその同等領域が本明細書で意図される。実施形態では、人工的に作り出されたデフェンシンは修飾されたクラスIIデフェンシンを含む。
【0092】
好適なデフェンシンの例はアミノ酸配列(表1)によって定義され、さらに表1にて特徴付けられている。これらは、たとえば、HXP4(配列番号21)、HXP34(配列番号22)及びHXP35(配列番号23)又はN末端アラニン残基を有する同じデフェンシン(それぞれ配列番号45、46及び47)のような合成デフェンシン変異体を含む。
【0093】
本明細書で教示されるのは、被験体において又は対してインビボ組織に対する又はおける微生物による感染を阻止する方法であり、該方法は、有効量の、配列番号1〜47からなる群より選択される植物デフェンシン又はその機能的な誘導体若しくは変異体を、微生物又は微生物を含む組織に接触させること、又は被験体に投与することを含む。一般に、デフェンシンは、感染の症状を改善するのに十分な時間及び条件下で適用される。
【0094】
デフェンシンは0.1%〜100%w/vの間の濃度にて、1日1回、1日2回、2日に1回、週に1回、2週ごとに1回、又は月に1回の頻度で、1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月又は12ヵ月までの期間、提供されてもよい。
【0095】
任意の実施形態では、デフェンシン又はその誘導体若しくは変異体は別の抗菌剤との組合せで使用される。デフェンシン及び抗菌剤は相乗的に作用することが提案されている。他の作用物質の例には、非デフェンシン抗菌ペプチド、プロテイナーゼ阻害剤、別のデフェンシン、又は抗生物質を始めとする、タンパク様又は非タンパク様の化学的的殺菌剤が挙げられる。
【0096】
相乗作用への言及は、所与のデフェンシン又は他の作用物質のみの阻止効果が、それぞれ単独で使用されるのに比べて双方が一緒に使用される場合、さらに大きいことを意味する。Grecoら.(1995),Pharmacol Rev.47:331−385は、組合せでの2つの作用物質の使用がそれぞれ単独でアッセイされる相加効果に比べて大きな活性を有することに基づいて相乗作用のカテゴリーを定義している。従って、本明細書で採用される定義には、一緒に作用する2つの作用物質の組合せ効果が単独で作用する個々の作用物質の合計よりも大きいという条件でそのような状況のすべてが含まれる。さらに、濃度を含むがこれらに限定されない一連の条件が存在するならば、一緒に作用する2つの作用物質の組合せ効果が単独で作用する個々の作用物質の合計よりも大きい場合、その用語が本明細書で意図されるので、作用物質の組合せは相乗的であるとみなされる。Richer(1987),Pestic Sci.19:309−315は相乗作用の証明を実証する数学的アプローチを記載している。このアプローチは、2つの阻害剤X及びYの組合せの存在における阻害の観察されたレベル(Io)を、組合せ効果を測定するのに使用されるのと同じ各濃度でそれぞれ別々に作用するX又はYから生じる予想される相加効果(Ee)と比較するためのLimpelの方程式を使用する。相加阻害の百分率EeはX+Y−XY/100として算出され、X及びYは阻害百分率として表される。Io>Eeであれば相乗性が存在する。
【0097】
相乗作用は相乗スケールとして表現されてもよい。実施形態では、たとえば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14のような14までの値は有意ではない相乗作用を表し、たとえば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28又は29のような15から29までの値は低い相乗作用を表し、たとえば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60のような30から60までの値は中程度の相乗作用を表し、60を超える値は高い程度の相乗作用を表す。「60を超える」によって61、70、80、90及び100を含む61から100までが含まれる。
【0098】
本方法は、インビボ組織に対する又はおける感染を有する被験体の治療又は予防に有用である。配列番号1〜47によって定義されるデフェンシンは表1及び表2で定義されている。本発明は外部皮膚、毛髪及び爪ではない内部の表面組織又は膜の治療を包含する。「外部皮膚」への言及は、外部皮膚の皮下層又は表面創傷を排除しない。用語「被験体」には、任意の年齢のヒト、又は家畜(たとえば、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、ロバ、ラクダ、ラマ、アルパカ)又は家禽(たとえば、ニワトリ、アヒル、シチメンチョウ、キジ、クジャク)、ペット動物(たとえば、イヌ又はネコ)、実験動物(たとえば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット又はハムスター)、又は捕獲野生動物(たとえば、野生のヤギ)のような動物が含まれる。
【0099】
微生物は真菌又は細菌であってもよい。「真菌」への言及には、皮膚糸状菌、酵母及び非皮膚糸状系のカビ(非皮膚糸状菌)が含まれる。皮膚糸状菌には、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・インターディジィタル(Trichophyton interdigitale)、トリコフィトン・ビオラセウム(Trichophyton violaceum)、トリコフィトン・トンズランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン・ソウダネンセ(Trichophyton soudanense)及びトリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)を含むトリコフィトン種、ミクロスポルム・フルブム(Microsporum fluvum)、エピデルモフィトン・フロッコースム(Epidermophyton floccosum)及びミクロスポラム・ジプセウム(Microsporum gypseum)が挙げられる。酵母は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・パラシローシス(Candida parasilosis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)及びカンジダ・クルゼイ(Candida krusei)を含むカンジダ種、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)及びクリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)を含むクリプトコッカス種、ならびにマラセチア・グロボサ(Malassezia globosa)、マラセチア・フルフル(Malassezia furfur)、マラセチア・ダーマティス(Malassezia dermatis)及びマラセチア・レストリクタ(Malassezia restricta)を含むマラセチア種、ならびにペニシリウム・マルネッフェイ(Penicillium marneffei)を包含する。非皮膚糸状系のカビには、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラブス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)及びアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)を含むアスペルギルス種、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)を含むリゾプス種、ネオシタリディウム(Neoscytalidium)、スコプラリオプシス(Scopulariopsis)、アクレモニウム(Acremonium)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、フザリウム(Fusarium)及びオキシスポラム(oxysporum)を含むフザリウム種、シタリディウム(Scytalidium)が挙げられ、及び卵菌綱にはピシウム・インシディオサム(Pythium insidiosum)が挙げられる。細菌への言及には、スタフィロコッカス種(Staphylococcus spp)、ストレプトコッカス種(Streptococcus ssp)、サルモネラ種(Salmonella spp)、プロテウス種(Proteus spp)、大腸菌種(E.coli spp)、バシラス種(Bacillus spp)、ミコバクテリウム種(Mycobaterium spp)、ミコプラズマ種(Mycoplasma spp)、バクテロイデス種(Bacteroides spp)、フゾバクテリウム種(Fusobacterium spp)が含まれる。
【0100】
成分又は抽出物は、細胞及び個体に対して毒性ではない医薬キャリアと共に投与される。
【0101】
キャリアは、たとえば、経口又は非経口(静脈内を含む)又は全身性の投与にとって所望される製剤の形態に応じて多種多様な形態を取ってもよい。経口剤形用の組成物を調製することにおいて、たとえば、懸濁液、エリキシル及び溶液のような経口液体製剤の場合、たとえば、水、グリコール、油、アルコール、風味剤、保存剤、着色剤等のような普通の医薬媒体;又は、たとえば、粉末、カプセル及び錠剤のような経口固体製剤の場合、たとえば、デンプン、糖類、微細結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等のようなキャリアのいずれかが採用されてもよく、固体経口製剤の方が液体経口製剤よりも好まれる。投与の容易さのために、錠剤及びカプセルは、固体医薬キャリアの場合が明白に採用される最も有利な経口の単位剤形を表す。所望であれば、標準の水性又は非水性の技法によって錠剤がコーティングされてもよい。
【0102】
経口投与に好適な治療法で使用される本発明の医薬組成物は、粉末又は顆粒として、又は水性液体、非水性液体、水中油エマルション又は油中水エマルションにおける溶液又は懸濁液としてそれぞれ所定の量の有効成分を含有するカプセル、カシェ剤又は錠剤のような個別単位として提示されてもよい。そのような組成物は薬学の方法のいずれかによって調製されてもよいが、方法はすべて1以上の必要な成分を構成するキャリアに有効成分を組み合わせる工程を含む。一般に、組成物は、液体キャリア又は微粉化した固体キャリア又はその双方と有効成分を均一に且つ密接に混合し、必要に応じて生成物を所望の形状に成形することによって調製される。たとえば、錠剤は1以上の補助成分と共に圧縮する又は成形することによって調製されてもよい。圧縮された錠剤は、任意で結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、表面活性剤又は分散剤と混合した、たとえば、粉末又は顆粒のような自由に流れる形態での有効成分を好適な機械で圧縮することによって調製されてもよい。成形された錠剤は不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を好適な機械で圧縮することによって作られてもよい。
【0103】
本発明の特定された成分及び/又は抽出物は、従来の非毒性の薬学上許容できるキャリア、補助剤及びビヒクルを含有する投与量単位の製剤にて経口で、非経口で、又は全身性に(皮下注射、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内の注射、鼻内又は点滴法を含む)、吸入スプレーによって、又は直腸に投与されてもよい。
【0104】
鼻噴霧又は吸入によって投与される場合、これらの組成物は、医薬製剤の当該技術で周知の技法に従って調製されるが、生理食塩水中の溶液として、ベンジルアルコール又は他の好適な保存剤、生体利用効率を高める吸収促進剤、フッ化炭素、及び/又は当該技術で既知の他の安定剤又は分散剤を採用して調製されてもよい。
【0105】
本発明のデフェンシンはまた、すべて薬学技術の当業者に周知の形態を用いて静脈内(ボーラス及び点滴の双方)、腹腔内、皮下、閉塞の有無にかかわらず局所、又は筋肉内の形態でも投与されてもよい。注射によって投与される場合、注射用の溶液又は懸濁液は、たとえば、マンニトール、1,3−ブタンジオール、水、リンガー溶液又は等張の塩化ナトリウム溶液のような好適な非毒性の非経口で許容できる希釈剤若しくは溶媒、又は合成のモノグリセリド又はジグリセリドを含む殺菌した、無菌の固定油、及びオレイン酸を含む脂肪酸のような好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、既知の技術に従って製剤化されてもよい。
【0106】
坐薬の形態で直腸に投与される場合、これらの組成物は、普通の温度では固体であるが、直腸腔では液化し、及び/又は溶解して薬剤を放出する、たとえば、ココアバター、合成のグリセリドエステル又はポリエチレングリコールのような好適な非刺激性の賦形剤と薬剤を混合することによって調製されてもよい。
【0107】
治療法で採用されるデフェンシンの有効な投与量は、採用される特定の化合物、投与の方式、治療される状態及び治療される状態の重症度に応じて変化してもよい。従って、本発明の化合物を利用する投与計画は、患者の種類、種、年齢、体重、性別及び病状;治療される状態の重症度;投与の経路;患者の腎機能及び肝機能;及び採用されるその特定の化合物を含む種々の因子に従って選択される。普通の技量の内科医、臨床医又は獣医は、状態の進行を防ぐ、対抗する又は停止させるのに必要とされる薬剤に有効量を容易に決定し、処方することができる。毒性がなく有効性を得られる範囲内で薬剤の濃度を達成することにおける最適な精度は、標的部位に対する薬剤の利用性の動態に基づく投薬計画を必要とする。これには薬剤の分布、平衡及び排泄の検討が関与する。
【0108】
デフェンシンは、一般に感染の症状を改善するのに十分な時間及び条件下で、直接感染部位に投与されてもよいし、又は全身性に提供されてもよく、又は他の好都合な手段によって提供されてもよい。
【0109】
別の態様は、微生物が感染したインビボ組織を有するヒト被験体のような哺乳類を含む動物を治療する又は予防するためのプロトコール又は方法を提供し、該プロトコール又は方法は、感染を治療するのに十分な時間及び条件下で植物デフェンシンを含む、抗菌有効量の組成物を被験体又は感染の部位に投与することを含む。
【0110】
本デフェンシンは、たとえば、ペプチド又はタンパク質の合成機を用いて1以上のアミノ酸残基の標準的な段階的付加を用い、そのアミノ酸配列に基づいて製造されてもよい。或いは、デフェンシンは組換え手段で作られる。組換えデフェンシンにはそのN末端での追加のアラニン残基が含まれてもよい。従って、本明細書で意図されるデフェンシンはN末端アラニン残基を含有してもよい。
【0111】
加えて、デフェンシンは化学修飾に供されてデフェンシンを化学的類似体にしてもよい。そのようなデフェンシン類似体は、組織と接触した時点でさらに大きな安定性又はさらに長い半減期を示してもよい。
【0112】
本明細書で意図される類似体には、側鎖に対する修飾、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の合成の間での非天然アミノ酸及び/又はその誘導体の組込み及び架橋剤の使用及びデフェンシン分子上で立体的制約を課す他の方法が挙げられるが、これらに限定されない。この用語はまた、デフェンシンの修飾、たとえば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化等を排除しない。デフェンシンの範囲内に含まれるのは、たとえば、アミノ酸の1以上の類似体(たとえば、非天然アミノ酸を含む)を含有するデフェンシン、又は置換された結合を有するデフェンシンである。そのような類似体は向上した安定性及び/又は浸透性を有してもよい。
【0113】
本発明によって意図される側鎖修飾の例には、アルデヒドとの反応とその後のNaBH4による還元による還元性アルキル化;メチルアセチミデートによるアミド化;無水酢酸によるアシル化;シアネートによるアミノ基のカルバモイル化;2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化;無水コハク酸と無水テトラヒドロフタル酸によるアミノ基のアシル化;及びピリドキサール−5−リン酸によるリジンのピリドキシル化とその後のNaBH4による還元のようなアミノ基の修飾が挙げられる。
【0114】
アルギニン残基のグアニジン基は、たとえば、2,3−ブタンジオン、フェニルグリオキサール及びグリオキサールのような試薬による複素環縮合生成物の形成によって修飾されてもよい。
【0115】
カルボキシル基は、O−アシルイソ尿素の形成を介したカルボジイミドの活性化とその後の、たとえば、相当するアミドへの誘導体化によって修飾されてもよい。
【0116】
スルフヒドリル基は、ヨード酢酸又はヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化;過ギ酸のシステイン酸への酸化;他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸又は他の置換されたマレイミドとの反応;4−クロロ水銀ベンゾエート、4−クロロ水銀フェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2−クロロ水銀−4−ニトロフェノール及び他の水銀剤を用いた水銀誘導体の形成;アルカリpHでのシアネートによるカルバモイル化のような方法によって修飾されてもよい。
【0117】
トリプトファン残基は、たとえば、N−ブロモスクシンイミドによる酸化、又は臭化2−ヒドロキシ−5−ニトロベンジル又はスルフェニルハロゲン化合物によるインドール環のアルキル化によって修飾されてもよい。一方チロシン残基は、テトラニトロメタンによるニトロ化によって変化して3−ニトロチロシン誘導体を形成してもよい。
【0118】
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体によるアルキル化又はジエチルピロカーボネートによるN−カルボエトキシル化によって達成されてもよい。
【0119】
ペプチド合成の間に非天然アミノ酸及び誘導体を組み込むことの例には、ノルロイシン、4−アミノ酪酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸、6−アミノヘキサン酸、t−ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸、2−チエニルアラニン及び/又はアミノ酸のD異性体の使用が挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、n=1からn=6までの(CH2)nのスペーサー基を有する二官能性イミドエステル、グルタールアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルのような二官能性架橋剤、及びたとえば、N−ヒドロキシスクシンイミドのようなアミノ反応性部分及びたとえば、マレイミド又はジチオ部分(SH)又はカルボジイミド(COOH)のような別の基に特異的に反応性の部分を普通含有するヘテロ二官能性試薬。加えて、たとえば、Cα及びNα−メチルアミノ酸の組込み、アミノ酸のCα原子とCβ原子との間の二重結合の導入、ならびにN末端とC末端の間での、2つの側鎖の間での、又は側鎖とN又はC末端との間でのアミド結合の形成のような共有結合を導入することによる環状のペプチド又は類似体の形成によって、ペプチドを立体的に拘束することができる。
【0120】
模倣体はデフェンシン類似体の別の有用な群である。その用語は、デフェンシンに対して相当な化学的類似性を有し、且つその抗真菌活性を模倣する物質を指すように意図されている。ペプチド模倣体は、タンパク質の二次構造の要素を模倣するペプチド含有の分子であってもよい(Johnsonら,Peptide Turn Mimetics in Biotechnology and Pharmacy,Pezzutoら,Eds.,Chapman and Hall,New York,1993)。ペプチド模倣体の使用の背後の根底にある理論的根拠は、タンパク質のペプチド主鎖が主として、活性作用を円滑にするような方法でアミノ酸側鎖を向けるように存在することである。
【0121】
本明細書で使用されるとき、「含む(comprising)」は「含む(including)」、「含む(containing)」又は「特徴付けられる(characterized by)」と同義であり、包括的であり、又は制限がなく、追加の引用されていない要素又は方法工程を排除しない。本明細書で使用されるとき、「からなる(consisting of)」はクレームの要素で特定されていない任意の要素、工程又は成分を排除する。本明細書で使用されるとき、「から本質的になる(consisting essentially of)」はクレームの基本的な且つ新規の特徴に実質的に影響を与えない物質又は工程を排除しない。特に組成物の成分の記載における、又は装置の要素の記載における用語「含む(comprising)」の本明細書での引用は、引用された成分又は要素から本質的に成る及びそれからなるそれら組成物及び方法を包含するように理解される。本明細書で説明に役立って好適に記載されている本開示は、本明細書で具体的に開示されていない要素(単数)又は要素(複数)、限定(単数)又は限定(複数)の非存在下で好適に実践されてもよい。
【0122】
マーカッシュ群又は他のグループ分けが本明細書で使用される場合、群の個々のメンバーすべて及び群の考えられる組み合わせ及び従属組み合わせのすべては本開示にて個々に含められるように意図される。
【0123】
本明細書で範囲が引用される場合、述べられた範囲の中での部分的な範囲すべて及び述べられた範囲の中での整数値すべては、部分的な範囲及び整数値がそれぞれあたかも引用されたかのように意図される。
【実施例】
【0124】
本明細書で開示され、可能になっている態様は、以下の非限定的な実施例にて今や記載されている。
【0125】
方法
ピキア・パストリス(Pichia pastoris)からのデフェンシンの精製
単一のpPINK−デフェンシン、P.パストリス(P.pastoris) PichiaPink(商標)の株1のコロニーを用いて250mLのフラスコにて25mLのBMG培地(Invitrogenのピキア発現マニュアルに記載)に植菌し、30℃の振盪インキュベータ(140rpm)にて2〜3日にわたってそれをインキュベートする。培養物を用いて1Lのバッフル付きフラスコにおける200mLのBMGに植菌し、それを30℃の振盪インキュベータ(140rpm)に一晩入れた。細胞を遠心分離(1,500×g、10分間、4℃)によって回収し、5Lのバッフル付きフラスコにおけるBMG培地の1Lに再懸濁させ、28℃の振盪インキュベータにて3日間(NaD1については2日間)インキュベートした。t=24及び48時間で培養を誘導する。発現培地を遠心分離(6000rpm、20分間、4℃)によって細胞から分離する。培地をpH3.0に調整し、その後、100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で予備平衡化したSPセファロースカラム(1cm×1cm、Amersham Biosciences)にそれを適用する。次いで100mLの100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)によってカラムを洗浄する(HXL004については2回の洗浄)。500mMのNaClを含有する100mMのリン酸カリウム緩衝液10×10mLで結合したタンパク質を溶出する。ドットブロットを行って溶出タンパク質の最高濃度の分画を特定し、遠心カラムを用いてそれら分画を1mLに濃縮し、無菌のMilliQの超純水を用いて5回洗浄する。タンパク質標品としてのウシ血清アルブミン(BSA)と共にビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイ(Pierce Chemical Co.)を用いて、Pichia発現デフェンシンのタンパク質濃度を測定する。
【0126】
本明細書で使用するために意図されているデフェンシンは、表1及び2に列挙されており、最適な配列比較ののち列挙されたデフェンシンのいずれか1つに対して少なくとも80%の類似性を有するデフェンシンを含む。
【0127】
図1(a)〜(e)は多数のデフェンシンの間でのアミノ酸配列の類似性を示す配列比較を提供している。図4は、HXL008(配列番号1)、HXL035(配列番号2)、及びHXL036(配列番号3)のアミノ酸配列の配列比較を提供している。コンセンサスアミノ酸配列を生成するように公表されたこの配列比較は、配列番号24にて設定した。これらの配列のいずれかは、N末端アラニン残基を任意に含有してもよい。
【0128】
実施例1
植物デフェンシンの存在下でのトリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)及びミクロスポラム・フルブム(Microsporum fluvum)の増殖の阻害
植物デフェンシンには、ナス科(Solanaceous)のクラスIIデフェンシン(NaD1)、修飾されたループ1B変異体(HXP4)及びクラスIデフェンシン(HXL001、HXL002、HXL004、HXL005、HXL008、HXL009、HXL012、HXL013、HXL015)が含まれる。
【0129】
トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)、T.インターディジィタル(T.interdigitale)、ミクロスポラム・フルブム(Microsporum fulvum)及びC.アルビカンス(C.albicans)(すべてNational Mycology Reference Centre,South Australia Pathology at the Women’s and Children’s Hospital,Adelaide,Australiaから入手)の増殖に対する植物デフェンシンの阻害効果は、Broekaertら.(1990),FEMS Microbiol.Lett.69:55−59によって記載されたように本質的に測定される。
【0130】
1/2の濃度のサブロー培地デキストロース寒天上で増殖している胞子形成している真菌からT.ルブルム(T.rubrum)、T.インターディジィタル(T.interdigitale)及びM.フルバム(M.フルブム)の胞子を単離する。1/2の濃度のジャガイモデキストロースブロス(PDB)の添加によって胞子をプレートから取り出した。C.アルビカンス(C.albicans)の細胞を酵母ペプトンブロス(YPD)にて16時間増殖させる。血球計算盤を用いて胞子及び細胞の濃度を測定する。
【0131】
抗真菌アッセイは、本明細書に記載されているように、本質的に96穴マイクロタイタープレートにて実施される。20μLのフィルター滅菌した(0.22μm注射器フィルター、Millipore)デフェンシン(各最終濃度について10×ストック)又は水と、1/2の濃度のPDB中の5×10個の胞子/mL(T.ルブルム(T.rubrum)、T.インターディジィタル(T.interdigitale)、M.フルバム(M.フルブム)又は5,000個の細胞/mL(C.アルビカンス(C.albicans))80μLをウェルにロードする。プレートを30℃でインキュベートする。マイクロタイタープレートリーダー(SpectraMax Pro M2;Molecular Devices)を用いて595nm(A595)にて光学密度を測定することによって真菌の増殖をアッセイする。任意の試験用デフェンシンの非存在下で真菌の光学密度(OD)が0.2のODに達するまで増殖が進行するようにする。各試験は2連で行う。
【0132】
72時間のインキュベート後、100g/mLのHXL008と共にインキュベートしたT.ルブルム(T.rubrum)の臨床単離体を含有するウェルの培地を、新鮮なサブロー培地デキストロース寒天上に置いた。プレートを30℃で5日間インキュベートし、写真撮影する前にコロニーが発生するようにした。
【0133】
阻害アッセイの結果を表3に示す。HXL005、HXL008及びHXL035は真菌病原体の範囲にわたって最も有効な植物デフェンシンである。HXL001及びHXL009は調べた濃度では活性を示さなかった。HXL002及びNaD2はM.フルバム(M.フルブム)及びC.アルビカンス(C.albicans)の非常に不十分な阻害剤である。HXL004、HXL012、HXL013及びHXL015は病原体の範囲にわたって中間の活性を示す。
【0134】
HXL008(実線)及びNaD1(点線)によるT.ルブルム(T.rubrum)の臨床単離体の阻害の結果を図2(a)〜2(d)にて示す。双方のペプチドは、4種の臨床単離体に対して20μg/mLを下回るIC50の低濃度で真菌の増殖を阻害した。しかしながら、全ての場合で、HXL008はNaD1よりも低い濃度で増殖を阻害した。
【0135】
T.ルブルム(T.rubrum)の臨床単離体についての細胞生存アッセイの結果を図3(a)〜3(e)にて示す。植物デフェンシンと共にインキュベートされなかった細胞を植菌したプレートは、増殖にてほぼ完全に覆われた。コントロール的に、HXL008の存在下でインキュベートされた細胞を植菌したプレートは、1〜3個のコロニーしか有しなかった。このことは、ほとんどすべての細胞が死滅したことを示している。
【0136】
【表3】
【0137】
実施例2
植物デフェンシンの存在下での真菌病原体の増殖の阻害
植物デフェンシンには、ナス科(Solanaceous)のクラスIIデフェンシン(NaD1)、及びクラスIデフェンシン(HXL001、HXL002、HXL003、HXL004、HXL005、HXL008、HXL009、HXL012、HXL013、HXL015、HXL035、NaD2)が含まれる。
【0138】
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)(National Mycology Reference Centre,South Australia Pathology at the Women’s and Children’s Hospital,Adelaide,Australiaから入手)、C.グラブラタ(C.glabrata)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、A.フラバス(A.flavus)、A.ニガー(A.niger)、A.フミガタス(A.fumigatus)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)及びC.ガッティ(C.gattii)(Dee Carter,University of Sydney,New South Wales,Australiaから入手)の増殖に対する植物デフェンシンの阻害効果は、Broekaertら.(1990),FEMS Microbiol.Lett.69:55−59によって記載されたように本質的に測定される。
【0139】
A.フラバス(A.flavus)、A.ニガー(A.niger)及びA.フミガタス(A.fumigatus)の胞子を、1/2濃度のサブロー培地デキストロース寒天上で増殖している胞子形成している真菌から単離する。1/2濃度のジャガイモデキストロースブロス(PDB)の添加によって胞子をプレートから取り出した。C.アルビカンス(C.albicans)、C.グラブラタ(C.glabrata)、C.トロピカリス(C.tropicalis)、C.ネオフォルマンス(C.neoformans)及びC.ガッティ(C.gattii)の細胞を酵母ペプトンブロス(YPD)にて16時間増殖させる。血球計算盤を用いて胞子及び細胞の濃度を測定する。
【0140】
抗真菌アッセイは、本明細書に記載されているように本質的に96穴マイクロタイタープレートにて実施される。20μLのフィルター滅菌した(0.22μm注射器フィルター、Millipore)デフェンシン(各最終濃度について10×ストック)又は水と、1/2濃度のPDB中の5×10個の胞子/mL(A.フラバス(A.flavus)、A.ニガー(A.niger)、A.フミガタス(A.fumigatus))又は5,000個の細胞/mL(C.アルビカンス(C.albicans)、C.グラブラタ(C.glabrata)、C.トロピカリス(C.tropicalis))又は1×10個の細胞/mL(C.ネオフォルマンス(C.neoformans)、C.ガッティ(C.gattii))80μLをウェルにロードする。プレートを30℃でインキュベートする。マイクロタイタープレートリーダー(SpectraMax Pro M2;Molecular Devices)を用いて595nm(A595)にて光学密度を測定することによって真菌の増殖をアッセイする。任意の試験用デフェンシンの非存在下で真菌の光学密度(OD)が0.2のODに達するまで増殖が進行するようにする。各試験は2連で実施する。
【0141】
抗真菌アッセイの結果を表4に提示する。
【0142】
【表4】
【0143】
実施例3
植物デフェンシンの存在下での大腸菌(Escherishia coli)及びバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)の増殖の阻害
単一の大腸菌又はバチルス・サブチリスのコロニーを用いて5mLのLuria−Bertani培地に植菌し、37℃で一晩増殖させた。翌日、培養物の光学密度を測定し、Mueller−Hintonブロスにて600nmでの光学密度(OD600)0.01に細菌を希釈した。希釈した大腸菌又はバチルス・サブチリスを、20μM、10μM、5μM、2.5μM、1.25μM、0.625μM、又は0.3125μMの濃度でデフェンシンを含む96穴プレートに加えた。OD595にてプレートを読み取りゼロ時点でのデータを得た。プレートを37℃で18時間インキュベートし、その後、OD595にて再び読み取り、細菌の増殖の量を評価した。
【0144】
大腸菌及びバチルス・サブチリスの阻害の結果を表5に示す。植物デフェンシンHXL004は大腸菌及びバチルス・サブチリス双方の増殖をそれぞれ2.5μM及び2.6μMのIC50で阻害した。この活性は、大腸菌に対するLL37コントロールに類似している。HXL012及びHXL013は、バチルス・サブチリスの増殖をそれぞれ20μM及び10μMのIC50で阻害した。デフェンシンHXL001、HXL002、HXL003、HXL005、HXL008及びNaD1は、調べた濃度では大腸菌又はバチルス・サブチリスの増殖を阻害しなかった。
【0145】
【表5】
【0146】
当業者は、本明細書に記載されている開示が具体的に記載されているもの以外の変化及び修飾の影響を受け易いことを十分に理解するであろう。本開示はそのような変化及び修飾のすべてを意図することが理解されるべきである。本開示はまた、本明細書で言及されている又は示されている工程、特徴、組成物及び化合物のすべてを個々に又はまとめて可能にし、且つ工程又は特徴又は組成物又は化合物の任意の2以上の組み合わせのいずれか及び全てを可能にする。
【0147】
参考文献

Altschul et al. (1997) Nucl. Acids. Res. 25(17):3389−3402

Ausubel et al. (1994−1998) In: Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc

Bloch and Richardson (1991) FEBS Lett 279(1):101−104

Broekaert et al. (1990) FEMS Microbiol Lett 69:55−59

Cabral et al., (2003) Protein Expres Purif 31(1):115−122

Colilla et al. (1990) FEBS Lett 270(1−2):191−194

Fisher et al. (1981) The American Journal of Medicine 71(4):571−7

Gomes et al. (2011) Clinical Microbiology Reviews 24(2):411−45

Greco et al. (1995) Pharmacol Rew 47:331−385

Janssen et al. (2003) Biochemistry 42(27):8214−8222

Johnson et al., Peptide Turn Mimetics in Biotechnology and Pharmacy,Pezzuto et al., Eds., Chapman and Hall, New York, 1993

Kent (2002) Genome Res 12: 656−664

Langmead et al (2009) Genome Biol 10:R25

Li and Durbin (2010) Bionformatics 26:589−595

Mitchell & Perfect (1995) Clinical Microbiology Reviews 8(4):515−48)

Patterson et al. (2000) Medicine 79(4):250−60

Richer (1987) Pestic Sci 19:309−315

Sagaram et al., (2011) PLoS One 6.4: e18550

Singh et al. (2014) Journal of Oral and Maxillofacial Pathology 18(Supp1):S81−S85

Supparatpinyo et al. (1996) Lancet 344(8915):110−3

Thianprasit et al. (1996) Current Topics in Medical Mycology 7(1):43−54

Thomas (2003) Eye (London, England) 17(8):853−62

US Patent No. 6,911,577 (Pioneer Hi−Bred International, Inc. and E.I. DuPont DeNemours and Company)

Wanachiwanawin et al. (2004) Vaccine 22(27−28):3613−21

van der Weerden et al. (2013) Cell Mol Life Sci 70(19) 3545−3570

van der Weerden et al. (2013) Fungal Biol Rev 26:121−131

Vibhagool et al. (2003) Clinical Infectious Diseases 36(10):1329−31
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図1(e)】
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]