特許第6760971号(P6760971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6760971天然弁葉を把持および保持する機構を含む房室弁ステント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6760971
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】天然弁葉を把持および保持する機構を含む房室弁ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20200910BHJP
【FI】
   A61F2/24
【請求項の数】20
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-562576(P2017-562576)
(86)(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公表番号】特表2018-519891(P2018-519891A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】EP2016062663
(87)【国際公開番号】WO2016193437
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年5月17日
(31)【優先権主張番号】15170736.1
(32)【優先日】2015年6月4日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2016/052452
(32)【優先日】2016年2月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514272210
【氏名又は名称】エピゴン
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ・パスクウィーノ
(72)【発明者】
【氏名】マルシオ・スコルシン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファーノ・パスクウィーノ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレーア・マルキージオ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツィオ・ヴァレリオ
(72)【発明者】
【氏名】セルジョ・カサレグノ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ガルド
(72)【発明者】
【氏名】ピエトロ・アルー
【審査官】 白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0257467(US,A1)
【文献】 特表2014−532457(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/113906(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0208297(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/160439(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0324164(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0004299(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/045338(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/069048(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00
A61F 2/02−2/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状形状を有する房室弁ステント(1)であって、
下位弁輪前側(2)と、
下位弁輪後側(3)と、
下位弁輪横側(13)とを含み、
該下位弁輪前側(2)は、ステント(1)が潰れているとき、前記下位弁輪前側(2)の直線延長部を形成し、ステント(1)が拡張状態にあるとき、それ自体の上に折り畳まれる、自己折り畳み式天然弁葉係合部材(4〜9)を含み;前記係合部材(4〜9)は、ステント(1)の一体部材を形成し、そして、ステントの中心軸への投影された長さに関して、下位弁輪横側(13)は、ステント(1)が拡張状態にあるとき、自己折り畳み式天然弁葉係合部材(4〜9)が配置される前記下位弁輪前側(2)よりも長く、ここで、潰れた状態で、直線延長部を形成する自己折り畳み式天然弁葉係合部材は、自己折り畳み式天然弁葉係合部材がそれ自体の上に折り畳まれる拡張状態と比較して、弁ステントの全長を増加させない
前記房室弁ステント。
【請求項2】
前記下位弁輪後側(3)は、ステント(1)が拡張状態にあるとき、前記下位弁輪前側(2)よりも長い、請求項1に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項3】
前記下位弁輪後側(3)は、ステント(1)が拡張状態にあるとき、前記下位弁輪前側(2)よりも短い、請求項1に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項4】
前記下位弁輪後側(3)および前記下位弁輪前側(2)は、ステント(1)が拡張状態にあるとき、同じ長さを有する、請求項1に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項5】
前記係合部材(4〜9)および前記前側(2)は、少なくとも単一の点を通る、請求項1〜のいずれか1項に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項6】
前記係合部材(4〜9)は、少なくとも1つの波状ライン(6、6’)から作られる折り畳み可能部分(5)を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の房室弁ステント(1
)。
【請求項7】
2つの対称の波状ライン(6、6’)を含み、第1のライン(6)の少なくとも1つの波は、第2のライン(6’)の1つの波に結合される、請求項に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項8】
前記係合部材(4〜9)は、フレアにされる自由端(8)を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項9】
少なくとも1つの自己配向延長本体(10’’’)から作られる前側天然弁ロッキングシステムを含み、延長本体は、ステントの一体部材を形成し前記下位弁輪前側(2)内に配置され、前記延長本体(10’’’)は、ステント(1)が潰れているとき、前記下位弁輪前側(2)と一致し、ステント(1)が拡張状態にあるとき、別の方向に向く、請求項1〜のいずれか1項に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項10】
前記延長本体(10’’’)は、ステント(1)が拡張状態にあるとき、前記下位弁輪前側(2)の近位端に向かって約30°で向く、請求項に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項11】
いくつかの係合部材(4〜9、11)を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項12】
ステント後側(3)に配置される1つの天然後側弁葉係合部材(11)を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項13】
少なくとも1つの自己配向延長本体(10’’’)から作られる後側天然弁ロッキングシステムを含み、延長本体(10’’’)は、ステントの一体部材を形成し前記後側(3)内に配置され、ステント(1)が潰れているとき、前記下位弁輪後側(3)と一致し、ステント(1)が拡張状態にあるとき、別の方向に向く、請求項10に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項14】
少なくとも1つの延長本体(10)は、窓フレームによって囲繞され、前記延長本体(10)の一端は、前記フレームの一方側に固定される、請求項13のいずれか1項に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項15】
前記延長本体は、フレーム上側に固定される、請求項14に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項16】
前記延長本体は、フレーム下側に固定される、請求項14に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項17】
前記延長本体は、ステントが拡張状態にあるとき、フレームと60°〜120°の範囲の角度を形成する、請求項9、10、13のいずれか1項に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項18】
前記延長本体は、ステントが拡張状態にあるとき、ステント壁と150°〜180°の範囲の角度を形成する、請求項13のいずれか1項に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項19】
前記延長本体全体は、平坦ブレードから作られる、請求項13のいずれか1項に記載の房室弁ステント(1)。
【請求項20】
前記平坦ブレードは、その端部がキャップによって覆われる、請求項19に記載の房室弁ステント(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓弁ステントに関し、より詳細には、天然弁葉ロッキング機構と/または、心臓組織への固定システムとを含む、房室弁ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
僧帽弁(図1参照)は、弁だけでなく、左心室の一部でもある。僧帽弁器官は、弁として一緒に働く、乳頭筋と、腱索と、2つの弁葉と、僧帽弁輪とを含む。解剖学的に、2つの交連部または2つの三角の僧帽弁輪の間の前側セグメント(僧帽弁輪の長さの1/3)は動かない。それとは対照的に、僧帽弁輪の後側セグメント(僧帽弁輪の長さの2/3)は、左心室収縮に従って動く。
【0003】
心臓切開僧帽弁手術は、高い罹患率および死亡率の危険性を引き起こすことが周知であり、その主な理由のうちの1つとして、僧帽弁疾患が左心室障害の原因または結果であり、心臓機能にダメージを受けている患者の手術は、高い死亡率を伴うことが挙げられる。技術的な観点から、弁置換の実施のとき、天然僧帽弁は、切除されるか、(心室機能を維持するために)切除されない場合は弁葉が縫合によりブロックされ、それによって心臓補綴物が適切に働くようになり、弁下器官によって乱されなくなる。
【0004】
心臓切開手術に代わる1つの有望なものは、経カテーテル術による弁置換であり、すなわち補綴物は、カテーテルに潰れた状態で導入されるステントを含む。本明細書において、「ステント」および「弁ステント」は、同じものを指す。ステントは、カテーテルがその最終位置に到達する直前にカテーテルを離れるときに拡張し、標準的な外科手術におけるような外科的な縫合材料の助けなしに、前に弁があった部位を占領する。
【0005】
したがって、僧帽弁経カテーテル心臓弁補綴物の安全性および有効性は、解剖学的構造に対するその固定システムに密接に関連する。収縮期の間の圧力ピークは、200mmHgよりも高いことがあり、したがって、補綴物を左心房内に変位させることができる程度の排出力が弁に加えられることが重要となる。
【0006】
房室補綴物についてこれまで開発されてきた固定システムは、様々な発想に基づいており、それらの中には、僧帽弁輪を把持するフック、または前側および/もしくは後側弁葉もしくは僧帽弁三角を把持する固定具がある。他の解決策は、補綴物を左心室心尖の外面に固定するある種の改変された腱を含む。簡素化するため、2つの異なるタイプのアプローチ;すなわち侵襲的固定および解剖学的固定が特定されている。
【0007】
侵襲的アプローチは、ステントから出て弁輪または下位弁輪レベルで心臓組織に貫入するフックにより固定する試みである。この発想は、弁を所定位置に保つ外科縫合によく似ている。この方法の主な利点は、補綴物が低い心室プロファイルを有することができることである。というのも、それらは、僧帽弁器官を使用するまたは固定予定の僧帽弁葉を捕らえる必要がないので、左心室の閉塞路の作成の危険が減少し、それによって左心室の心尖から(逆行)または左心房から(順行)のどちらからも展開可能になる。しかし、このアプローチを用いることには3つの主な欠点;すなわち(i)特に僧帽弁疾患および心房細動を患う患者において、左心房は、血栓塞栓症と関連しており、このタイプの弁の大きな心房突起がその合併症の危険を増加させる恐れがあることが一理あるということが周知であり;(ii)低いプロファイルの心室弁は、しばしば、弁ステントと弁輪/心室細胞との間における取り付け領域が限定されることにより、危険性の高い弁膜周囲漏出に関連するという欠点;ならびに、(iii)二次感染(心内膜炎)を助長する恐れのあるフックによる組織貫入による腱炎症の存在がある。
【0008】
解剖学的アプローチは、僧帽弁の解剖学的特徴、すなわち、弁葉およびそれらの腱、線維三角、ならびに後側下位弁輪の溝を生かして弁ステントを固定する試みである。この発想は、ステントを所定位置に保つように、外傷性の低い係合部材、平坦ブレード、または延長本体をそれらの解剖学的要素に正確に配置することである。収縮圧は、僧帽弁補綴物の上に排出力を引き起こし、それが組織損傷および弁変位を引き起こすことがある。中心となる発想は、より良い力の分配のために可能な限り多くの固定構造を配置する、というものである。このアプローチの主な利点としては、理論上、心臓組織への損傷が少なく、僧帽弁葉をよく捕らえ、そのことが固定、さらには心室流の遮断を防ぐ助けとなることが挙げられる。弁葉を捕らえることは、さらなる利点がある。そのことで、収縮期の間、張力により僧帽弁器官(腱索および乳頭筋)が保たれ、それによって心室リモデリングおよび心室拡張が防止される。これは、経カテーテル僧帽弁の最大の利点のうちの1つが、左心室の機能が衰えた患者のためのものであることから、非常に重要な態様であり、したがって、心室機能を維持するために僧帽弁器官の完全性を維持することに関係する。
【0009】
経カテーテル僧帽弁補綴物が天然弁の置換に使用されるとき、切除は適さず、天然弁を所定位置に留まらせなければならない。経カテーテル僧帽弁埋め込み術における主な問題のうちの1つは、(以降使用しない)天然前側弁葉の存在が左心室流出路(LVOT)を遮断する恐れがあることである。実際、僧帽弁位置にステントを埋め込むと、金属構造が弁を所定位置に固定する径方向の力を生み出し、その結果、僧帽弁の前側弁葉が大動脈弁の方に向かって押され、それによって、潜在的にLVOTの遮断が引き起こされることがある。この問題を克服する1つの方策としては、心室部が非常に短くなるように、弁輪面の上にステントを非常に高く、すなわち上流に配置することが挙げられる。補綴物の心房化は、最終的にはLVOT遮断の危険を減少させることができるが、心房血栓症および塞栓症の危険を増加させてしまう。
【0010】
他の解決策は、例えば特許文献1に開示されるように、天然弁の弁葉を捕らえてブロックする係合部材を作成することである。しかし、係合部材は僧帽弁葉を効果的にブロックすることができても、ステントが心室により深くまで突き出すので、LVOT遮断の危険がより高くなる。この危険は、前側ステント側の高さが後側の高さよりも長い場合である、特許文献1に開示されるいくつかの例において、特に高くなる。
【0011】
潰れてカテーテルに挿入されるときはステントの前側が後側と同じ高さであるが、カテーテルから解放された後、最終的には後側よりも低い高さになるようにすることは、特許文献2に開示されるように、本発明者らによってすでに提案されている。この先行技術は、やはりまた、前側天然弁葉ロッキング機構を開示する。ステントは最初対称であり、形状記憶材料から作られる。前側は、熱によりめくり返り(ステントが潰れた状態にあるとき、めくれて広げられた位置に予め形作られており)、前側天然弁葉についての係合部材を形成する。
【0012】
この最新の解決策は革新的であるが、十分に申し分がないとはいえない。完成したステント前側がめくれることは、この領域におけるステントの特性に悪影響を及ぼすことがある。ステントは、堅すぎたり、および/または厚すぎたりすることがある。この不都合さは、さらに、前側、後側または横側である任意のステントの任意の対称または非対称のセグメントで起こる。
【0013】
上述したように、僧帽弁の形態学および生理学を考慮に入れた、ステントの形状および長さ、ならびに最も良い固定システムに関連した問題がいくつもある。
したがって、既存の房室弁ステントを改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願第2011/208297A1
【特許文献2】WO2013/160439A1
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した問題は、本発明による房室弁ステントにより克服される。
【0016】
本発明によるステントは、有利には、しかし排他的でなく、僧帽弁の置換に使用することができる。
【0017】
より詳細には、本発明は、管状形状を有する房室弁ステントであって、下位弁輪前側と、下位弁輪後側と、下位弁輪横側とを含み、下位弁輪前側は、ステントが潰れているとき、前記下位弁輪前側の直線延長部を形成し、ステントが拡張状態にあるとき、それ自体の上に折り畳まれる、自己折り畳み式天然弁葉係合部材を含み;前記係合部材は、ステントの一体部材を形成し、各下位弁輪横側は、ステントが拡張状態にあるとき、前記下位弁輪前側よりも長い、房室弁ステントに関する。
【0018】
本明細書において、「前側」または「ステント前側」という表現は、ステントが、天然弁複合体内におけるその最終位置に配向されたときに、大動脈弁の方に直接向くステント側を指す。「後側」は、前側と反対のステント側を指す。
【0019】
「下位弁輪」という表現は、ステントがその最終位置に配置されたときの、心室内における弁輪の下のステント領域を指す。
【0020】
弁ステントは、LVOTの遮断の危険を減少させるために、本発明に従って展開されたとき、下位弁輪前側においてより短いことが好ましい。
【0021】
弁ステントは、収縮期の間の弁のより良い固定を得るために、展開されたとき、後側においてより長くてよい。
【0022】
本発明によるステントは、ステントと後側心室壁との間の接触を減少させるように下位弁輪後側においてより短く、それによって時間外のステント破砕の危険が減少する。
【0023】
好ましい一実施形態では、潰れた状態では、係合部材の長さが加わった下位弁輪前側の高さは、下位弁輪後側の高さと同じ、より短い、またはより長くてよい(後側が、ステント全長よりも短い場合)。しかしながら、係合部材があっても、それはステント構造内部から出るので、潰れた状態では、ステント全長は増加しない。この実施形態は、2つの重要な利点をもたらす。第一に、ステントの長さが増加せず、したがって弁を解放するのに必要な送達システムの長さが増加しないことによって、僧帽弁位置に至る経路が直線でない順行(例えば、左心房からの)アクセスによる経カテーテルアプローチが容易になる。ステントがより長い、したがって送達システムの弁カバーがより長いと、経大腿アプローチにより僧帽弁に到達できる可能性が低くなる。第二の重要な利点は、潰れた状態では、同じ心室長さを有し、それによって、埋め込みアクセスが逆行(例えば、左心室から)の場合、送達システムの弁カバー内における弁の保持が可能になることである。
【0024】
他の実施形態では、潰れた状態では、係合部材の長さが加わった下位弁輪前側の高さは、係合部材が後側弁葉を捕らえるように後側にもある場合、後側の高さと等しくてよい。
【0025】
ステントが解放されると、係合部材は、少なくとも90°(好ましくは160〜180°)曲がる。それによって、前側に何もないスペースが生み出され、したがって、心室流が遮断されず、それと同時に、前側弁葉が把持され、心室流出路から離される。後側係合部材に関する限り、後側係合部材の回転によって生み出される後側の何もないスペースは、後側左心室壁とステントの間の接触を減少させる。
【0026】
他の実施形態では、係合部材は、ステントが解放されると、180°またはその値近くに曲がる。屈曲角度は、ステントの製造のときに予め決められる。
【0027】
好ましくは、係合部材は、形状記憶材料から作られる。その場合、屈曲角度は、熱によって形作られる。
【0028】
他の実施形態では、係合部材は、ステントの一体部材を形成する。
【0029】
係合部材をステント前側/後側に結合する点が1つだけしかないことが有利である。
【0030】
他の実施形態では、係合部材は、少なくとも1つの波状ラインを含む特定の幾何形状を備える。そうした構造によって、ねじりが最小限に抑えられた屈曲が可能になり、それによって、金属結晶構造の損傷が回避され、形状記憶材料の超弾性の特性が維持される。
【0031】
他の実施形態では、ステントは、天然弁葉ロッキングシステムを含む。有利には、このロッキングシステムは、ステント構造から好ましくは30°外側に曲がる、少なくとも1つ、好ましくは2つの延長本体によって画成される。ロッキングシステムは、LVOTとの相互干渉を妨げる天然弁葉を把持および保持する働きをし、それによって弁に対する効果的な前側固定がもたらされる。ロッキング機構は、カテーテルからのステントの解放の間に起こる一連のイベントに基づいている。はじめに、延長本体が解放され、例えば約30°に開く。次いで、係合部材が解放され、前側僧帽弁葉のリムを上方に動かすように、所定角度、通常は160〜180°の間の角度に外側に曲がり、それによって延長本体は天然弁葉を保持することができるようになる。最後に、天然弁葉が摘ままれ、延長本体と係合部材との間に保持される。
【0032】
本発明による他の実施形態では、ステントは、1つの前側係合部材と、1つの後側係合部材とを含む。それらは、前側および後側の僧帽弁葉をそれぞれブロックし、両方ともステント下位弁輪縁に配置される。前側および後側僧帽弁葉の長さは異なる。前側僧帽弁輪と前側弁葉の自由縁(A2の中間)との間の解剖学的距離は、約28mmである。後側僧帽弁輪と後側弁葉の縁(P2)との間の距離は、約20mmである。2つの係合部材が両方の弁葉のブロックに使用される場合、それらは下位弁輪ステント構造において異なるレベルで解放可能である。前側係合部材は、より長い弁葉を把持する必要があるので、より下に解放可能である。そうではなく、後側係合部材は、より短い弁葉を把持する必要があるので、より高いレベルで解放可能である。
【0033】
弁葉組織におけるいかなる外傷性損傷も防ぐために、係合部材を覆うスリーブを使用することができる。同じ目的で、心臓組織の損傷を防ぐように、保護キャップによって係合部材の遠位端を保護することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、係合部材に加えて、ステントの固定をさらに向上させることを目的に、ステントを所定位置に固定するように、ステント弁輪域、すなわちステントの心室部の底部ではないところに固定される少なくとも2つ以上の延長本体が僧帽弁輪の下に配置される。このタイプの解剖学的固定は、計画的に僧帽弁葉を捕らえるので、逆行および順行アプローチの両方に完璧かつ安全に使用することができる。
【0035】
心臓組織のあらゆる外傷性損傷を防ぐために、周囲組織に接触する延長本体の遠位端を覆う保護キャップを使用することができ、それによって組織損傷を防ぎ、さらに接触表面積を増大させることができる。固定領域をより大きくすれば、ステントの安定性がさらに向上し、それが、心室収縮の間の排出力をより良く分配する助けとなる。
【0036】
他の実施形態では、解剖学的固定は、ステントの心室部の底部から出る延長本体とともに、三角に配置されるように設計される弁輪部からの延長本体により得られる。この延長本体は、保護キャップの存在に応じて、非外傷的または部分的に外傷的となり得る。
【0037】
他の実施形態では、解剖学的固定は、ステントの後側セグメントの弁輪部から出る2つの延長本体とともに、三角に配置されるように設計される弁輪部からの延長本体により得られる。この延長本体は、保護キャップの存在に応じて、非外傷的または部分的に外傷的となり得る。2つの前側係合部材は、前側弁葉を捕らえ、同様のやり方で固定だけでなくLVOT遮断を防止する働きをし、後側係合部材は、やはりまた2つの機能を有し、後側弁葉を捕らえ、その最終位置において追加の固定として心房の溝の下に配置される。これらの2つの係合部材は、4つの延長本体に関連付けることができる。したがって、この実施形態は、7つの固定点を有する。
【0038】
有利には、延長本体は、ステントの一体部材を形成する、すなわちステントフレームから直接得られる。それによって、ステントの画成されたプロファイル(ステントの遠位端)の下(を越えて)に配置され100〜180°に外に曲げられる追加の固定構造、またはステント構造に重なり合う溶接または機械的グリップによって追加される外部構造が回避される。本発明による延長本体は、ステントフレームから出ることが好ましく、したがってステント長さが増加せず、潰れた構造におけるステントの厚さも増加しない。これらは、経カテーテル弁についての重要な特徴である。
【0039】
以下の図面に示される例を用いて、本発明を以下により詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】天然の僧帽弁の図である。
図2】本発明による僧帽弁ステントの一例の図である。
図3図2のステントの前側をより良く示す図である。
図4】平坦構造にある、本発明によるステントの一部分の図である。
図5】本発明によるステントによって保持されている天然弁葉の図である。
図6】ロックされた位置にある、図5の弁葉の図である。
図7】本発明による係合部材の様々な配向の図である。
図8】ステント本体への係合部材の固定を示す他の例の図である。
図9】1つだけの前側係合部材を含む、潰れた状態の本発明によるステントの図である。
図10】1つの前側係合部材と、1つの後側係合部材の両方を含む、潰れた状態の本発明によるステントの図である。
図11】中間位置にある、本発明による係合部材の動きの一例の図である。
図12】最終位置にある、図11の係合部材の図である。
図13A】1つの前側係合部材と、1つの後側係合部材とを含む、本発明によるステントの概略図である。
図13B】ステントの下位弁輪セグメントを端緒とする後側係合部材の他の構造の図である。
図14】本発明による他のステントの概略図である。
図15】本発明による他のステントの概略図である。
図16】本発明による他のステントの概略図である。
図17】本発明による他の係合部材の図である。
図18】ステント部分と一緒になった、本発明による他の係合部材の図である。
図19】ロッキングシステムが太線になっている、図18の係合部材の図である。
図20】本発明による係合部材の他の例の図である。
図21】本発明による係合部材の他の例の図である。
図22】本発明による係合部材の他の例の図である。
図23】本発明による係合部材の他の例の図である。
図24】本発明による係合部材の他の例の図である。
図25】本発明による係合部材の他の例の図である。
図26】本発明による係合部材の他の例の図である。
図27】2つの係合部材である前側および後側係合部材と、三角に配置予定の前側に2つの延長本体と、2つの後側延長本体とを含む、本発明による僧帽弁ステントの一例の図である。
図28】2つの係合部材である前側および後側係合部材と、ステントフレームから出ている2つの延長本体とを含む、本発明による僧帽弁ステントの他の例の図である。
図29】下位弁輪の溝を示す解剖学的な図である。
図30A】三角延長本体の図である。
図30B】三角延長本体の図である。
図31A】後側延長本体の例の図である。
図31B】後側延長本体の例の図である。
図31C】後側延長本体の例の図である。
図32A】延長本体の例の図である。
図32B】延長本体の例の図である。
図32C】延長本体の例の図である。
図32D】延長本体の例の図である。
図33】2つの波状ラインの図である。
図34】スリーブによって囲繞されている、図33の波状ラインの図である。
図35】より透明なスリーブによって囲繞されている、図33の波状ラインの図である。
図36】様々なスリーブの断面図である。
図37A】異なるスリーブ形状の図である。
図37B】異なるスリーブ形状の図である。
図37C】異なるスリーブ形状の図である。
図38A】2つの要素から作られている保護キャップの図である。
図38B】2つの要素から作られている保護キャップの図である。
図39A】1つの単一要素から作られている保護キャップの図である。
図39B】1つの単一要素から作られている保護キャップの図である。
図40A】キャップを延長本体に固定するいくつかの実施形態の図である。
図40B】キャップを延長本体に固定するいくつかの実施形態の図である。
図40C】キャップを延長本体に固定するいくつかの実施形態の図である。
図40D】キャップを延長本体に固定するいくつかの実施形態の図である。
図41A】円筒形保護キャップの図である。
図41B】円筒形保護キャップの図である。
図42A】異なる保護キャップの図である。
図42B】異なる保護キャップの図である。
図42C】異なる保護キャップの図である。
図42D】異なる保護キャップの図である。
図42E】異なる保護キャップの図である。
図43A】異なる保護キャップの図である。
図43B】異なる保護キャップの図である。
図43C】異なる保護キャップの図である。
図44A】異なる保護キャップの図である。
図44B】異なる保護キャップの図である。
図44C】異なる保護キャップの図である。
図44D】異なる保護キャップの図である。
図45A】単一の後側延長本体を含むステントの一実施形態の図である。
図45B】単一の後側延長本体を含むステントの一実施形態の図である。
図46】送達システム(具体的には、後側延長本体)からのステントの展開の概略図である。
図47A】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図47B】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図47C】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図47D】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図48A】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図48B】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図49A】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図49B】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図50A】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図50B】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図51A】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図51B】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図52A】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図52B】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図53A】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図53B】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図54A】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図54B】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図55A】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図55B】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図56A】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
図56B】本発明による延長本体または係合部材の異なる実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図2および図3に示されるステント1は、拡張状態にあり、前側に1つの係合部材4と、ステント1のロッキングシステム(交連−交連線)とを含む。
【0042】
係合部材4は、ステント本体の壁部に対して平行な方向に沿って配向される(図2参照)。
【0043】
図4は、潰れた状態の形態になる前の平坦構造にあるステント1の一部分を示している。係合部材4は、平坦状態(0°角度)にあり、弁が送達システムに装入されるときにこの状態になる。
【0044】
この例では、係合部材4が加わった下位弁輪の前側の高さは、下位弁輪の後側3の高さ以下である。
【0045】
図5は、本発明による係合部材4および延長本体10’’’(ロッキング機構)を使った、中間弁葉セグメントA2における前側天然弁葉12の把持および保持の図である。この例では、係合部材4は、前側弁葉12をロックし、延長本体10’’’は、その後ろに位置する。天然弁葉12の中間セグメントA2を保持するこの解決策は、それを腱がない部分に固定することを目的としており、したがって腱裂傷(cordage ruptures)の危険が最低限に抑えられる。
【0046】
図6は、ロックされた位置にある、図4の弁葉12を示している。ロッキング機構は、延長本体10’’と係合部材4の接合動作によって起動される。延長本体は、弁葉12を把持および保持し、係合部材4は、弁葉12を摘まみ、そうして完全にブロックする。係合部材4は、前側弁葉12をロックし、延長本体10’’’は、その前に位置する。ロッキング機構は、両方の構造で働く。
【0047】
図7は、ステント1が拡張状態にあるときの係合部材4の様々な配向の図である。係合部材4は、ステント構造の一部である。この図面では、係合部材4の様々な開き角度が示されている。具体的には、図7Cおよび図7Dでは、係合部材4を支えるステント支柱は、可変角度(0°〜40°)に外側に曲がることができ、それによって前側僧帽弁葉12の把持がより効果的になる。
【0048】
図8は、ステント本体への係合部材4の固定を示す他の例を示している。この場合、係合部材4は、最初、ステント構造の一部ではない。これは、係合部材4が開けられたときにそのねじれを減少させるための一代替デザイン解決策である。この解決策は、ニチノールまたは他の金属合金から作られる、ステントの構造から得られる支持部に対して溶接またはクリンプされるワイヤの使用を採用する。この構造では、ステント1への係合部材4の固定は、様々な技術により得られる。
【0049】
図9には、潰れた状態のステント1が示されている。ここで、係合部材の長さによりステント1の長さが増加することはない。係合部材4の遠位端は、ステント1の後側セグメントの遠位端と同じレベルにある。
【0050】
図10には、潰れた状態のステント1が示されている。ここでもやはり、係合部材の長さ(前側および後側)によりステント1の長さが増加することはない。前側係合部材4および後側係合部材11の遠位端は、ステント1の遠位端と同じレベルにあり、展開中、同じ高さおよびタイミングで解放可能である。
【0051】
図11は、中間位置にある、本発明による送達システムから解放されるときの係合部材4または11の動きの例を示している。
【0052】
図12は、最終位置にある、図10の係合部材4または11を示している。
【0053】
図13Aに示されるステント1は、1つの前側および1つの後側の係合部材4、11を含む。両方の係合部材とも、ステント心室部分の遠位端に配置される。図13Bは、ステントの下位弁輪セグメントを端緒とする後側係合部材11の他の構造を示している。この構造では、ステント後側3がない。
【0054】
図14の例では、ステント1は、ステント心室部分の前側部の遠位端に配置される1つの前側係合部材4と、後側3の中間の高さに配置される1つの後側係合部材11とを含む。この図は、僧帽弁の解剖学的特徴に従っている。前側弁葉12は、後側弁葉よりも長く;したがって係合部材4、11は、異なる高さで解放されなければならない。
【0055】
図15の例では、2つの係合部材4は、ステント前側に配置されている。
【0056】
図16の例では、ステント1は、前側に配置される2つの係合部材4と、後側に配置される2つの係合部材11とを含む。
【0057】
図17は、本発明による他の係合部材4を示している。この場合、係合部材4および/または11は、2つの平行な波状ライン6によってセグメント9の中を通ってステント1に固定される。
【0058】
図18は、ステント本体から延びる、本発明による他の係合部材4および/または11を示している。係合部材4および/または11は、ステント本体を構成する、1つよりも多い、例えばニチノールである同じ形状記憶材料からなる部材である。そうした構造は、腐食または直流電気力(galvanic force)のあらゆる危険を防ぐ。
【0059】
図19は、延長本体10’’’が(太線で)強調されている、図16の係合部材4を示している。
【0060】
図20は、本発明による他の係合部材を示している。この例では、波状ライン6は、ブリッジ7によって互いに結合されている。
【0061】
図21は、本発明による他の係合部材を示している。波状ライン6は、互いに結合され、非対称である。ステントの前側部の連続性は、3つの要素である、1つの主要素および2つの副要素によって作られる。
【0062】
図22は、本発明による他の係合部材を示している。
【0063】
図23は、本発明による他の係合部材を示している。
【0064】
図24は、本発明による他の係合部材を示している。
【0065】
図25は、本発明による他の係合部材を示している。この例では、波状ライン6は、あまり目立たず、より直線的である。
【0066】
図26は、本発明による2つの係合部材4を示している。ブレード8は、異なる方向に沿って対称に配向される。
【0067】
図27は、1つの前側係合部材4と1つの後側係合部材11とを含むステント1の心房の図を示している。前側部材4は、ステント心室部分の遠位端に配置され、後側部材11は、ステント1の下位弁輪セグメントを端緒とする。4つの延長本体である、2つの前側延長本体(三角延長本体10’)、および2つの後側延長本体(後側延長本体10’’)は、下位弁輪セグメントを端緒とする。
【0068】
図28は、1つの前側および1つの後側の係合部材4、11を含むステント1の側面図である。前側係合部材は、ステント心室部分の遠位端に配置され、後側係合部材11は、ステント1の下位弁輪セグメントを端緒とする。2つの延長本体である、1つの前側延長本体10’、および1つの後側延長本体10’’は、下位弁輪セグメントを端緒とし、ステント窓フレーム14から出ている。
【0069】
図29は、下位弁輪の溝、すなわちステント下位弁輪側が配置される場所を示す解剖学的な図である。
【0070】
図30Aおよび図30Bは、天然の僧帽弁の三角(前側弁葉P1と後側弁葉P3との間の境界移行部)の一致するところに配置される:三角延長本体を示している。図1を参照されたい。この延長本体は、天然の三角の線維組織に接触し、生体補綴物を安定化させ効果的な固定機能をもたらす。この延長本体は、窓のフレームの上側または下側の部分に取り付けられ、外側に曲げられる。延長本体は、窓のフレームの下側部分を端緒とする場合、5°〜45°に外側に曲げられる(図30A)。それとは対照的に、延長本体が窓のフレームの上側部を端緒とする場合、屈曲は、好ましくは30°〜120°の範囲の角度を有する(図30B)。
【0071】
図31は、後側延長本体を示しており:単一延長本体が、後側からステントを固定し天然の後側弁葉P2の腱がない中間部分を捕らえ、後側下位弁輪の溝のレベルで心筋組織(図29)に接触する。2つの固定延長本体は、後側弁葉を捕らえる必要なくして、好ましくは天然の後側弁葉(P1/P2およびP3/P2)の裂溝(図1および図29)に対応する、後側下位弁輪凹部のレベルに位置する。後側延長本体は、窓のフレームの上側部分または下側部分に取り付けられ、外側に曲げられる。延長本体が窓のフレームの下側部分に取り付けられる場合、屈曲角度は、5°〜45°の間で可変であってよい(図31A)。それとは対照的に、延長本体が上側部に取り付けられる場合、屈曲角度は、90°〜180°の範囲であってよい(図31B)。
【0072】
後側固定システムの他のタイプは、1つの単一窓フレームを端緒とする二重延長本体により得ることができる。第1の本体は、窓フレームの上側部を端緒とし、5°〜45°の間の角度に外側に曲げられ、バランスアームの機能を果たし、第2の本体は、窓フレーム(図31C)の上側部から離れるように90°〜180°の間の角度に外側に曲げられ、後側天然弁葉を捕らえ僧帽弁の溝のレベルに着座させる機能を果たす。
【0073】
代替固定システムは、第2の本体が第1の本体の中間または下側部を端緒とし、5°〜45°の間の角度に外側に曲げられる場合である。
【0074】
複数の延長本体:補綴物は、ステント構造を端緒としステントの円周の全周に分配される、複数の延長本体に解剖学的に固定される。そうした延長本体の構造は、心臓壁の前側または後側部分についてのもの、または三角についてのものと同様であってよく、またはそうした延長本体の組み合わせであってよい。
【0075】
本発明の他の独自の態様は、固定システムを得る方法に関する。
【0076】
固定システムは、様々な方法でステントプロファイルまたはステントに取り付けられる外部部材の上に突出する屈曲構造のないステント構造から直接得られる。
【0077】
前側係合部材を除き、後側係合部材の同じ実施形態では、三角および後側延長本体は、1つまたはそれ以上(好ましくは1つまたは2つ)の挿入点を含む窓フレームの上側、下側または横側の部分を端緒とすることができる。延長本体は、心臓組織への最適な固定を得るために、様々な角度に外側に曲げられる。いくつかの例を図32A図32Dに示す。
【0078】
後側係合部材は、窓フレーム14を端緒とすることができる、またはフレームのない前側係合部材と同様であってよい。
【0079】
延長本体は、2つの重要な要素を含むことが好ましい。ステント本体(フレーム窓)と平坦ブレード(「パドル」とも称される)との間には波状ライン連結ブリッジがある。いくつかの実施形態では、延長本体は、平坦ブレードによってのみ構築可能であると言及することができる(図32Bおよび図32D)。ブレードおよび波状ラインは、スリーブによって覆われ、保護キャップによって遠位から保護される。波状ライン連結ブリッジの機能は、ステント材料にかかる疲労ストレスを最低限に抑えるように窓フレームからの延長本体の必要な外側屈曲(180°に近い高角度でさえも)を提供することである。パドルまたは保護キャップは、心臓組織に損傷を与えることなく、また組織の急速かつ均一な線維化がもたらされることなく、心臓組織に接触し、そのときに弁の固定を安定化させることを目的として設計される。
【0080】
波状ライン連結ブリッジ、具体的には天然弁葉を捕らえることを目的とするもの(前側および後側の係合部材)は、繰り返し応力の後、弁葉組織の引き裂きを招くことがある(図33)。この潜在的な合併症を解決するために、有利には、スリーブ15は、延長本体の可撓性および固定運動を妨げないために十分な可撓性を有するスリーブ15が、各連結ブリッジを覆うことができる。この解決策は、ステントの延長本体にあるすべての波状ラインまたは平坦ブレード連結ブリッジに使用することができる。スリーブは、波状ラインの周りに巻き付けられるまたは縫い付けられる平坦面材料(図34)から得られる、または弾性特性を活用した単純な拡張により波状ラインの上に取り付けられる管状構造から得ることができる。材料は、生分解特性のある、またはない、生物由来材料または合成材料であってよい。生物由来材料は、様々な由来(ウシ、ブタなど)の心膜組織からなってよい。合成材料は、ポリエステルもしくはポリテトラフルオロエチレンの織物もしくはフェルトなどの布地(織られたもの、もしくは編まれたもの)、または、様々な技術(例えば、制限なく、浸漬、エレクトロスピニング、もしくは押し出し)により得られる微小管の形の、長期にわたる生体適合性が証明されている連続高分子フィルムのような不織布(non fablic)であってよい。好ましい材料は、ポリウレタン、炭化されたまたはされていないシリコーンまたはポリテトラフルオロエチレンからなってよい。微小管構造は、非対称的な厚さの(疲労引き裂きの危険を減少させるように横側がより厚くなっている)円形、卵形、楕円形または矩形の断面で得ることができる(図36)。これらの微小管構造の壁は、非対称の厚さを有する他に、可能な技術的解決策の広範な範囲内において、異なる硬度を有する異なる材料の異なる数の層によって構成することができる(図37A図37C)。壁の厚さは、例えば、5〜10μmから100〜200μmの範囲であってよい。
【0081】
心臓組織に直接接触する延長本体の遠位部は、周囲組織に急性および慢性の損傷を招く恐れがある。この潜在的な問題を解決するため、延長本体の自由端は、保護キャップ16によって覆われるまたはそれに取って代わられる。キャップは、より大きな面にわたって、繰り返しの最大収縮期圧をより均一に分配するので、潜在的に起こる心臓組織の損傷がなくなる。保護キャップは、2つの部材からなってよく、サンドウィッチ様構造でパドルの両側に取り付けられる(図38Aおよび図38B)、または1つの単一片でより良く実現される(図39Aおよび図39B)。後者の場合、保護キャップは、様々な技術(機械的固定、接着、浸漬、現場成形、超音波溶接、レーザー溶接など)を用いて、延長本体の特別に設計された遠位端にしっかりと固定される。機械的固定は、保護キャップの取り付け後、それらが外れる可能性のないしっかりとした取り付けを与えるために、例えば、二重矢印(図40A図40D)のように延長本体の平坦ブレードを設計することで実現することができる。機械的固定を得る他の技術的な解決策は、図41Aおよび図41Bに示されるような2つの横方向アームによって保持される円筒形保護キャップによってもたらされる。円筒形保護キャップは、堅くてもよく、または、別法として、そのより長い軸周りに回転することができる。接着は、単独でも、機械的固定に関連付けて適用することもできる。様々な解決策として、水に対する長時間曝露および組織の異物反応に耐えるシアノ−アクリル生体適合性接着剤を用いることを想定することができる。浸漬技術によって、所望の角のとれた形状を得るまでポリマーで継続的にコーティングされたパドル様形状の延長本体の遠位端の形成を得ることができる。さらに、潜在的に、機械的固定または接着に関連して、溶接を取り入れることもできる。具体的には、超音波溶接を、機械的に固定された保護キャップに施すこともできる(図42A図42E)。
【0082】
保護キャップは、様々な生物由来材料(例えば、ポリアセタール樹脂(polyacetalic resin)、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、セラミック、金属など)、様々な技術(機械加工、圧力または射出成形、シンセリゼーション(syntherization)、浸漬など)、テクスチャ表面、および形状(図43A図43C)により実現することができる。保護キャップの表面のテクスチャは、選んだ材料、その剛性、および、それが接触する組織の性質に従って変えることができる。保護キャップの表面粗さは、短期的には固定システムの把持の促進の助けとなり、長期的にはそれは、ステントの長期にわたる保持をもたらす細胞内部成長のための適切な基体をもたらすので、非常に重要である(図44A図44D)。薬剤溶出保護キャップは、瘢痕形成の加速、または感染、血栓形成などの減少など任意の他のかたちで利点を得るために使用することができる。心エコーまたは蛍光透視鏡マーカーを、弁の展開を促進し埋め込み後のキャップの識別を容易にするために加えることもできる。それらは、X線不透過材料で製造することができる。
【0083】
以下に記載する実施形態は、後側延長本体に言及する。
【0084】
単一後側延長本体は、後側からステントを固定し、天然後側弁葉の腱のない中間位置を把持し、後側下位弁輪凹部のレベルで心筋組織に接触することに使用される。一代替解決策は、天然後側弁葉(図18C)を捕らえる必要なくして、後側下位弁輪の溝(図29)を弁葉(P1/P2およびP3/P2)の裂溝に対応するところに固定する2つ以上の延長本体に基づいている。
【0085】
図45Aおよび図45Bは、単一の後側延長本体を含むステントの一実施形態を示している。
【0086】
図46は、送達システム(具体的には、後側延長本体)からのステントの展開を概略的に示している。
【0087】
図47図56は、本発明による延長本体または係合部材の様々な実施形態を示している。
【0088】
当然のことながら、本発明は、図示の例に限定されない。ステント、延長本体および係合部材には、あらゆる適当な幾何形状または材料を使用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 ステント
2 ステント下位弁輪前側
3 ステント下位弁輪後側
4 前側天然弁係合部材
5 係合部材折り畳み可能部分
6 波状ライン
7 ブリッジ
8 ブレード
9 結合セグメント
10 延長本体(10’ 三角延長本体、10’’ 後側壁延長本体、10’’’ 天然前側弁葉のための延長本体ロッキングシステム)
11 後側天然弁係合部材
12 前側天然弁葉
13 ステント下位弁輪横側
14 窓フレーム
15 スリーブ
16 キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30A
図30B
図31A
図31B
図31C
図32A
図32B
図32C
図32D
図33
図34
図35
図36
図37A
図37B
図37C
図38A
図38B
図39A
図39B
図40A
図40B
図40C
図40D
図41A
図41B
図42A
図42B
図42C
図42D
図42E
図43A
図43B
図43C
図44A
図44B
図44C
図44D
図45A
図45B
図46
図47A
図47B
図47C
図47D
図48A
図48B
図49A
図49B
図50A
図50B
図51A
図51B
図52A
図52B
図53A
図53B
図54A
図54B
図55A
図55B
図56A
図56B