(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可視光よりも波長が長い所定の波長のレーザ光を反射し、可視光を透過して透明に見える第1面と、前記第1面と表裏をなしていて、前記レーザ光を透過し、可視光を反射して不透明に見える第2面とを有するミラーと、
前記ミラーの前記第1面に照射される前記レーザ光を発光する半導体レーザ素子と、
を備え、
前記第1面及び前記第2面は、前記半導体レーザ素子により照射される前記レーザ光よりも波長が長い光を透過し、
前記第1面における可視光の透過率は、80%以上であり、
前記第2面における可視光の反射率は、70%以上である半導体レーザモジュール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ミラーの裏面にサンドブラストを施すと、ミラーに傷を付けてしまい、ミラーの強度と耐久性が低下する。また、ミラーの表面にはレーザ光が繰り返し照射されるため、ミラーの温度が高頻度に変化して、ミラーが熱サイクルにより破損することがあった。更に、ミラーの裏面にサンドブラストを施せば、工数が増える。
【0007】
また、特許文献1に記載された技術では、ミラーの表面に、反射性能有効範囲の他に、反射性能に影響を及ぼさない部分が必要となる。従って、反射性能に影響を及ぼさない部分を形成する工程が別に必要となり、工数が増える。
【0008】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、ミラーの傷及び工数を低減させることができる半導体レーザモジュール、及び、これを備えるレーザ発振器を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、レーザ光(例えば、後述のレーザ光R1)を反射し、可視光を透過する第1面(例えば、後述の第1面51)と、レーザ光を透過し、可視光を反射する第2面(例えば、後述の第2面52)とを有するミラー(例えば、後述のミラー5,5a,5b,5c)と、前記ミラーの前記第1面に照射されるレーザ光を発光する半導体レーザ素子(例えば、後述の半導体レーザ素子3,31,32,33)と、を備える半導体レーザモジュール(例えば、後述の半導体レーザモジュール10)に関する。
【0010】
(2) (1)の半導体レーザモジュールにおいて、前記第1面及び前記第2面は、前記半導体レーザ素子により照射される前記レーザ光よりも波長が長い光を透過してもよい。
【0011】
(3) (1)又は(2)の半導体レーザモジュールにおいて、前記第2面の表面粗さは前記第1面の表面粗さよりも粗くてもよい。
【0012】
(4) (1)〜(3)のいずれかの半導体レーザモジュールにおいて、前記第2面は球面又はシリンドリカル面であってもよい。
【0013】
(5) (1)〜(4)のいずれかの半導体レーザモジュールにおいて、前記第1面と前記第2面との間の距離(例えば、後述の距離t)は、前記第1面の幅(例えば、後述の幅L)の半分よりも長くてもよい。
【0014】
(6) (1)〜(5)のいずれかの半導体レーザモジュールにおいて、前記第2面は切り込み部(例えば、後述の切り込み部52x)を有してもよい。
【0015】
(7) 本発明は、(1)〜(6)のいずれかの半導体レーザモジュールを備えるレーザ発振器(例えば、後述のレーザ発振器1)に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ミラーの傷及び工数を低減させることができる半導体レーザモジュール及びレーザ発振器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔レーザ発振器の全体構成〕
本発明の一実施形態としてのレーザ発振器について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態としてのレーザ発振器を示す概略構成図である。本実施形態のレーザ発振器1は、複数個(図示の例では3個)の半導体レーザモジュール10(11,12,13)を有する。これらの半導体レーザモジュール10(11,12,13)から光ファイバ20(21,22,23)を通して、共振器又はコンバイナ30(共振器,コンバイナ)にレーザ光が供給される。
【0019】
共振器を備える場合には、半導体レーザモジュール10(11,12,13)からのレーザ光は、共振器の励起光として使用される。コンバイナのみを備える場合には、複数の半導体レーザモジュール10(11,12,13)からのレーザ光をコンバイナでひとつに集光して、使用する。共振器及びコンバイナの両方を備える場合もある。何れかの方式で、レーザ発振器1は、出力用光ファイバ40を通してレーザ光を放射する。
【0020】
〔半導体レーザモジュールの全体構成〕
図2は、
図1のレーザ発振器の半導体レーザモジュールを示す概略平面図である。半導体レーザモジュール10は、その筐体2の中に、半導体レーザ素子3(31,32,33)、レンズ4(41,42,43)、ミラー5(5a,5b,5c)、及びレンズ6を備える。
【0021】
複数(図示の例では3個)の半導体レーザ素子3(31,32,33)は、筐体2の側壁
2Aに配置されている。半導体レーザ素子3(31,32,33)は、レンズ4(41,42,43)に向けてレーザ光R1を出射する。
【0022】
複数(図示の例では3個)のレンズ4(41,42,43)の一方の面(
図2中の下方の面)は、各々の半導体レーザ素子3(31,32,33)の出射口に個別に対向している。各々のレンズ4(41,42,43)は、半導体レーザ素子3(31、32、33)によるレーザ光R1をそれぞれ透過させる。
【0023】
ミラー5(5a,5b,5c)は、レンズ4(41,42,43)の他方の面(
図2中の上側の面)に傾斜して対向している。ミラー5(5a,5b,5c)は、レーザ光R1の進行方向を変える機能を有する。ミラー5(5a,5b,5c)は、複数のレンズ4(41,42,43)の透過光の進行方向(光軸)をそれぞれ直角に屈曲させる。
【0024】
3つのミラー5(5a,5b,5c)は、互いに平行になるように配置され、レンズ4(41,42,43)の光軸に対して同一角度で傾斜している。ミラー5(5a,5b,5c)は、レンズ4(41,42,43)の光軸に対して45°で傾斜している。半導体レーザ素子3(31,32,33)から出射されたレーザ光R1を3つのミラー5(5a,5b,5c)が反射する方向は、同一方向を向いている。ミラー5(5a,5b,5c)がレーザ光R1を反射する方向は、レンズ6を向いている。
【0025】
レンズ6は、3つのミラー5(5a,5b,5c)のうちで最も左方のミラー5aと筐体2の側壁
2Bとの間に配置されている。レンズ6は、レンズ6の光軸がレンズ4の光軸と90°で交わるように配置されている。レンズ6には、全ての半導体レーザ素子3(31,32,33)のレーザ光R1がミラー5(5a,5b,5c)によって反射されて透過する(集まる)。従って、レンズ4(41,42,43)は相対的に低いエネルギーに晒されるのに対し、レンズ6及び光ファイバ20は相対的に高いエネルギーに晒される。
【0026】
筐体2から、光ファイバ20が導出される。光ファイバ20には、半導体レーザ素子3から出射されたレーザ光R1が、3つのレンズ4(41,42,43)、3つのミラー5(5a,5b,5c)及びレンズ6により結合される。
【0027】
図3は、
図2の半導体レーザ素子3、レンズ4、ミラー5の拡大図である。ミラー5は、第1面51と、第1面51の反対面の第2面52と、を有する。半導体レーザ素子3が発光(出射)するレーザ光R1は、ミラー5の第1面51で反射されてレンズ6及び光ファイバ20に導光される。ただし、レーザ光R1の一部は、ミラー5の第1面51を透過して第2面52を透過し、レンズ6及び光ファイバ20に導光されない。このミラー5を透過するレーザ光は、微量である(
図3には、第2面52を透過するレーザ光を示していない)。以下、ミラー5の第1面51と第2面52について詳述する。
【0028】
〔第1面〕
第1面51は、レーザ光R1を反射し、可視光を透過する面である。第1面51におけるレーザ光R1の反射率は、レーザ出力量に大きく影響するために高いことが好ましく、例えば99.5%以上であり、好ましくは99.8%以上である。
【0029】
第1面51における可視光の透過率は、例えば80%以上であり、好ましくは90%以上である。第1面51は可視光を透過するため、透明に見える。なお、第1面51における可視光の反射率は、例えば20%未満であり、好ましくは10%未満である。
【0030】
図4を参照して、半導体レーザモジュール10の外部からミラー5の第1面51へ戻ってくる戻り光の透過率について説明する。
図4は、半導体レーザモジュール10の一部拡大平面図であり、半導体レーザモジュール10の外部からの戻り光R2がミラー5に戻る様子を示す。半導体レーザ素子3のレーザ光R1の波長は900nm台であり、ファイバレーザのレーザ光の波長は1000nm台である。ファイバレーザの共振器やコンバイナから戻ってくる戻り光R2は、ファイバレーザのレーザ光に加えて、SRSなどの更に長波長の成分も含んでいる。
【0031】
SRSは、レーザ光がファイバを構成する分子(SiO
2)の格子振動(光フォノン)と相互作用をすることにより、格子振動のエネルギーだけ波長が長波長にシフトした光(ストークス光)として散乱される現象である。
【0032】
戻り光R2が直接に半導体レーザ素子3まで届くと、半導体レーザ素子3が損傷してしまう。戻り光R2から半導体レーザ素子3を保護するために、戻り光R2のうち半導体レーザモジュール10からのレーザ光R1の波長より長い成分が半導体レーザ素子3に戻らないようにする必要がある。そのために、ミラー5の第1面51及び第2面52には、レーザ光R1の波長よりも長い成分を透過するコーティングが行われる。
【0033】
第1面51における戻り光R2(波長の長いレーザ)の透過率は、高いことが好ましく、例えば99.0%以上であり、好ましくは99.7%以上である。
【0034】
図5Aを参照して、ミラー5の第1面51側の第1コーティング層54について説明する。
図5Aは、ミラー5の拡大断面図である。第1面51の第1コーティング層54は、ガラス基材53の一方の面(
図5A中の左側の面)にコーティングされている。第1面51が高い反射率を得られるようにするために、第1コーティング層54は、高屈折率層及び低屈折率層が30層程度コーティングされている。例えば、第1コーティング層54の厚さは3μm程度である。
【0035】
〔第2面〕
図3の説明に戻って第2面52を説明する。第2面52は、レーザ光R1を透過し、可視光を反射する面である。第2面52におけるレーザ光R1の透過率は、例えば95%以上であり、好ましくは98%以上である。第2面52におけるレーザ光R1の透過率は、レーザ光R1の第2面52における反射成分を減衰させるために、それほど高くなくてもよい。
【0036】
第2面52は可視光を反射するので、不透明に見える。第2面52における可視光の反射率は、例えば70%以上であり、好ましくは90%以上である。第2面52における可視光の反射率は、第2面52であると視認できればよいので、それほど高くなくてもよい。なお、第2面52における可視光の透過率は、例えば30%未満であり、好ましくは10%未満である。
【0037】
図4の説明に戻る。第2面52における戻り光R2(波長の長いレーザ)の透過率は、第1面51と同様に高いことが好ましく、例えば99.0%以上であり、好ましくは99.7%以上である。
【0038】
図5Aの説明に戻る。ミラー5の第2面52の第2コーティング層55について説明する。第2コーティング層55は、ガラス基材53の他方の面(
図5Aの右側の面)にコーティングされている。第2面52の反射率がレーザ光R1の透過と可視光の70%〜90%程度の反射率であるため、第2コーティング層55は10層以下でコーティングされている。例えば、第2コーティング層55の厚さは1μm以下である。第2コーティング層55は、レーザ光R1を反射する性能を求められないので、第1コーティング層54に比べて薄くてもよい。
【0039】
ただし、前述した第1コーティング層54及び第2コーティング層55には、ガラス基材53を引っ張る方向に応力が発生する。その応力のバランスを取るために、第1コーティング層54の厚さと第2コーティング層55の厚さとを同じにする必要があり、例えば、第2コーティング層55に2μm程度の低屈折率層の第3コーティング層56を更にコーティングする。従って、第1コーティング層54の厚さは、第2コーティング層55と第3コーティング層56とを合わせた厚さと略同じに設定される。第3コーティング層56は、レーザ光の反射性能を求められないダミーのような層であり、ミラー5の反りを抑制するために設けられている。
【0040】
図5Bは、半導体レーザモジュール10が有するミラー5の断面図である。第2面52には、第1面51の表面粗さよりも粗い表面粗さのコーティングが施されている。第2面52の表面粗さは、例えばRa1[μm]であり、好ましくはRa3[μm]である。第1面51の表面粗さは、例えばRa0.3[μm]であり、好ましくはRa0.1[μm]である。第2面52は、表面粗さが粗く形成されることにより、レーザ光R1を散乱させて、レーザ光R1の反射率をより低下させる。具体的には、第2面52には、イオンアシストを採用している蒸着装置のイオンアシストの強さを下げて表面粗さを粗くする等の方法が施される。
【0041】
次に、半導体レーザ素子3(31,32,33)から出射されたレーザ光R1が進行する過程を説明する。
図2に示されるように、半導体レーザ素子3(31,32,33)から発光(出射)されたレーザ光R1は、レンズ4(41,42,43)を透過して平行光として進行し、ミラー5(5a,5b,5c)で反射され、レンズ6に導光される。このときに、ミラー5cで反射したレーザ光R1は、ミラー5b、ミラー5aを透過してレンズ6に導光される。ミラー5bで反射したレーザ光R1は、ミラー5aを透過してレンズ6に導光される。ミラー5aで反射したレーザ光R1は、レンズ6に直接に導光される。
【0042】
レンズ6により集光されたレーザ光R1は、光ファイバ20に結合される。そして、
図1に示されるように、レーザ光R1は、共振器又はコンバイナにより増幅され、出力用光ファイバ40に導光される。
【0043】
〔実施形態の効果〕
本実施形態によれば、例えば、以下の効果が奏される。
実施形態の半導体レーザモジュール10は、レーザ光R1を反射し、可視光を透過する第1面51と、レーザ光R1を透過し、可視光を反射する第2面52とを有するミラー5と、ミラー5の第1面51に照射されるレーザ光R1を発光する半導体レーザ素子3と、備える。そのため、ミラー5の傷及び工数を低減させることができる半導体レーザモジュール10及びレーザ発振器1を提供することができる。以下、詳述する。
【0044】
ミラー5の第2面52が可視光を反射して、一方、第1面51が可視光を透過する。これにより、第2面52が不透明に見え、第1面51が透明に見える。従って、製造者は、ミラー5の第2面52と第1面51とで透明性(色)が異なるように認識し、第2面52と第1面51とを容易に区別することができる。ミラー5の第2面52にサンドブラストを施すことが不要となり、半導体レーザモジュール10の製造者はミラー5の第1面51だけではなく、第2面52も研磨処理することができる。その結果、ミラー5の第2面52の傷を減少させることができる。ひいては、ミラー5の熱サイクルの耐久性が向上し、半導体レーザモジュール10の熱サイクルの耐久性が向上する。同時に、ミラー5の製造工数が減少する。ひいては、半導体レーザモジュール10の製造効率が向上する。
【0045】
実施形態の半導体レーザモジュール10では、第1面51及び第2面52は、半導体レーザ素子3により照射されるレーザ光R1よりも波長が光を透過する。そのため、戻り光R2のうちのレーザ光R1よりも波長が長い光がミラー5を透過して除去され、戻り光R2のうちの波長が長い光がミラー5で反射されて半導体レーザ素子3に戻る現象が抑制される。従って、戻り光R2のうちの波長が長い光による半導体レーザ素子3の損傷は低減され、半導体レーザ素子3は保護される。
【0046】
実施形態の半導体レーザモジュール10では、第2面52の表面粗さが第1面51の表面粗さよりも粗い。そのため、第2面52のレーザ光R1の反射率が低減する。
【0047】
〔変形例1〕
図6Aは、変形例1に係るレーザ発振器の半導体レーザモジュール10が有するミラー5Pの概略断面図である。この半導体レーザモジュール10においては、ミラー5に代えてミラー5Pが用いられている。ミラー5Pの第2面52は、球面又はシリンドリカル面である(
図6A中では、第2面52が曲面で示されている)。
【0048】
変形例1のミラー5Pを備える半導体レーザモジュール10では、第2面52は球面又はシリンドリカル面である。そのために、半導体レーザモジュール10の製造者がミラー5の第1面51と第2面52とを反対に間違えてミラー5Pを筐体2に実装した場合に、レーザ光R1が出力用光ファイバ40に結合しない。これにより、出力用光ファイバ40に結合するレーザ出力が大きく下がる。その結果、製造者は、ミラー5Pの実装後に、ミラー5Pの表裏を間違えたことによって半導体レーザモジュール10が不良品となっていることを容易に気付くことができる。
【0049】
また、製造者がミラー5Pを正しく実装した場合でも、第2面52で反射する微量のレーザ光R1の成分がミラー5Pから出射する角度が変化する。この様子を以下に説明する。半導体レーザ素子3から出射されたレーザ光R1は、第1面51に向かって矢印r1の方向に進み、第1面51で反射されて矢印r2の方向に進む。この矢印r2の方向に進むレーザ光R1がレンズ6及び光ファイバ20に向かう。これに対して、矢印r1の方向に進んだレーザ光R1のうち矢印r3の方向に進んだレーザ光R1は、曲面である第2面52で反射して、矢印r4の方向に進んで、第1面51を透過して矢印r5の方向に進む。
【0050】
第2面52で反射して矢印r5の方向に進むレーザ光R1は、第1面51で反射して矢印r2の方向に進むレーザ光R1と出射角度が異なる。その結果、不要な第2面52のレーザ光R1の反射成分がレンズ6及び光ファイバ20に導光することが抑制され、レンズ6及び光ファイバ20の温度の上昇が抑制される。
【0051】
〔変形例2〕
図6Bは、変形例2に係るレーザ発振器の半導体レーザモジュール10が有するミラー5Qの概略断面図である。この半導体レーザモジュール10においては、ミラー5に代えてミラー5Qが用いられている。ミラー5Qでは、変形例1のミラー5Pの第2面52に相当する部分にコーティングが行われて、表面粗さが粗いコーティング層57が形成され、このコーティング層57の表面が第2面52とされる。
【0052】
〔変形例3〕
図7は、変形例3に係るレーザ発振器の半導体レーザモジュール10が有するミラー5Rの概略断面図である。この半導体レーザモジュール10においては、ミラー5に代えてミラー5Rが用いられている。第1面51と第2面52との間の距離t(ミラー5Rの厚さ)は、第1面51の幅Lの半分よりも長い。
【0053】
図7のように、ミラー5Rの厚さをtとしてミラー5Rの幅をLとする。この場合に、半導体レーザ素子3から出射されたレーザ光R1は、矢印r1の方向に進んで第1面51で反射され、矢印r2の方向に進む。
【0054】
一方、矢印r1の方向に進んだレーザ光R1の一部は、矢印r3の方向に進んで第2面52で反射され、矢印r4の方向に進み、ミラー5Rの側面5hで屈折して矢印r5の方向に進む。このときに、第2面52で反射したレーザ光R1の矢印r4の反射光路は、第2面52に入射したレーザ光R1の矢印r3の入射光路よりも短くなり、第1面51に届かない。
【0055】
例えば、矢印r1の方向に進むレーザ光R1が第1面51の中心に対して入射角度45°で入射した場合には、おおよそt=L/2以上(ミラー5Rの厚さがミラー5Rの幅の半分程度の厚み以上)になると、レーザ光R1は第2面52で反射した後に側面5hから出射する。
【0056】
変形例3のミラー5Qを備える半導体レーザモジュール10では、第1面51と第2面52との間の距離tは第1面51の幅Lの半分よりも長い。簡単に言うと、ミラー5Rの厚さが第1面51の幅Lの半分よりも厚い。
【0057】
そのため、レーザ光R1が第1面51に入射して第2面52で反射する場合に、第2面52で反射する微量のレーザ光R1の成分のうちミラー5Rの第1面51と隣り合う側面5hから出射する成分が増える。ミラー5Rの側面5hから出射する矢印r5の方向に進むレーザ光R1は、矢印r2の方向に進むレーザ光R1と出射角度が異なる。その結果、不要な第2面52のレーザ光R1の反射成分がレンズ6及び光ファイバ20に導光することが抑制され、レンズ6及び光ファイバ20の温度上昇が抑制される。
【0058】
〔変形例4〕
図8は、変形例4に係るレーザ発振器の半導体レーザモジュール10が有するミラー5Sの概略断面図である。半導体レーザモジュール10においては、ミラー5に代えてミラー5Sが用いられてもよい。ミラー5Sの第2面52は、切り込み部52xを有する。切り込み部52xは、凹部でもある。なお、凹部は、断面視逆三角形に限らず、断面視で四角形又は半円形であってもよい。
【0059】
変形例4のミラー5Sを備える半導体レーザモジュール10では、第2面52は切り込み部52xを有する。この切り込み部52xは、ミラー5の製造方法がコーティングを行ってからダイシングで切断する製法の場合に、ダイシングの工程においてダイシングソーにより第2面52に容易に形成される。なお、切り込み部52xの形成工程は、実質的にダイシング工程に含まれ、その意味では、工数が減少するとも言える。
【0060】
加えて、第2面52が切り込み部52xを有するので、切り込み部52xによって可視光が乱反射する。製造者は、第1面51と第2面52とを容易に区別することができる。その結果、ミラー5の第1面51と第2面52とが反対に実装されることにより半導体レーザモジュール10の不良品が生じることを抑制することができる。
【0061】
加えて、レーザ光R1の反射に用いられない第2面52に切り込み部52xが設けられるので、第1面51のレーザ光R1の反射性能は影響を受けない。
【0062】
尚、本発明は既述の実施形態には限定されるものではなく、種々、変形変更して実施可能である。本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良も本発明に含まれる。例えば、本実施形態では、半導体レーザ素子3、レンズ4、ミラー5は、3つであるが、この形態に限定されず、1つ又は3つ以外の複数であってもよい。
【0063】
前述した実施形態と変形例1〜4のミラーの構成は、適宜組み合わせて構成されてもよい。