(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工具装着検知部は、前記工作機械に前記工具が装着された際に、前記工具の前記工具名及び前記工具が装着されたマガジン及びポットを識別し、前記識別した情報を、前記工具の装着状態に関する情報として前記工具管理装置に通知することを特徴とする
請求項2記載の工具管理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1を含む従来の工具管理手法には次のような課題があった。
1)CNCのオペレータは、NCプログラムに記載された工具番号や工具種類番号と、工作機械のマガジンやポットに装着された工具と、が正しい対応関係となるように、工具を目視で確認して装着及び登録する必要あり、これには時間と手間がかかる。
【0009】
2)CNCは、工具番号、工具種類番号、マガジン番号、ポット番号により工具情報を管理するが、これらの対応関係は工作機械毎に相違しうる。工具番号、工具種類番号が示す工具は、マガジンやポットへの工具の装着状態次第である。そのため、段取り違いが発生しやすく、間違った工具で加工する危険性があった。全ての工作機械で工具の装着状態等を共通化できれば便利であるが、その運用には多大な時間と手間がかかる。
【0010】
3)CNCは、工具オフセット量を、工具番号、工具種類番号、マガジン番号、ポット番号の対応を定義したテーブルとは別のデータテーブルで管理する。したがって、工具番号と工具オフセット量とを改めて関連付ける必要があった。そのため、例えば工作機械Aで使用していた工具を工作機械Bに移設して使用するといった場合に、工作機械Aで測定した当該工具のオフセット量を工作機械Bで流用することは、運用上困難であった。
【0011】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、効率的な工具管理を行うための工具管理システム、工具管理装置及び工具管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態にかかる工具管理システムは、プログラムにしたがって加工を行う工作機械が使用する工具に関する情報を管理する工具管理装置と、前記工作機械を制御する数値制御装置と、を含み、前記数値制御装置は、前記工作機械
において前記工具
が意図したとおり正しく装着されているかを示す装着状態に関する情報を、前記工具管理装置に通知する工具装着検知部を有し、前記工具管理装置は、工具種類に共通する情報を含む工具種類データと、工具個体に関する情報を含む工具オブジェクトデータと、を対応付けた工具管理データを格納する工具管理データ格納部を有し、前記工具オブジェクトデータは、前
記装着状態に関する情報を含むことを特徴とする。
本発明の一実施形態にかかる工具管理システムは、前記工具種類データは工具種類名により一意に識別可能であり、前記工具オブジェクトデータは工具名により一意に識別可能であり、前記プログラムは、前記工具種類名により使用工具を指定するものであり、前記数値制御装置は、前記工具管理データを参照して、前記プログラムに記述されている前記工具種類名に基づき、
加工に使用すべき工具
名を
特定する工具選択部をさらに有することを特徴とする。
本発明の一実施形態にかかる工具管理システムは、前記プログラムを作成するCAMをさらに含み、前記CAMは、前記工具種類名を使用して前記プログラムを作成するためのプログラム作成部を有することを特徴とする。
本発明の一実施形態にかかる工具管理システムは、前記工具装着検知部は、前記工作機械に前記工具が装着された際に、前記工具の前記工具名及び前記工具が装着されたマガジン及びポットを識別し、前記識別した情報を、前記工具の装着状態に関する情報として前記工具管理装置に通知することを特徴とする。
本発明の一実施形態にかかる工具管理システムは、前記工具装着検知部は、前記工具の寿命又はオフセットに関する情報を、前記工具の装着状態に関する情報としてさらに前記工具管理装置に通知することを特徴とする。
本発明の一実施形態にかかる工具管理装置は、プログラムにしたがって加工を行う工作機械が使用する工具に関する情報を管理する工具管理装置であって、工具種類に共通する情報を含む工具種類データと、工具個体に関する情報を含む工具オブジェクトデータと、を対応付けた工具管理データを格納する工具管理データ格納部と、前記工作機械
において前記工具
が意図したとおり正しく装着されているかを示す装着状態に関する情報を受信する工具オブジェクトデータ生成部と、を有し、前記工具オブジェクトデータは、前
記装着状態に関する情報を含むことを特徴とする。
本発明の一実施形態にかかる工具管理方法は、工具管理装置が、プログラムにしたがって加工を行う工作機械が使用する工具に関する情報を管理する工具管理方法であって、前記工作機械
において前記工具
が意図したとおり正しく装着されているかを示す装着状態に関する情報を受信するステップと、前
記装着状態に関する情報を含む工具オブジェクトデータを生成するステップと、工具種類に共通する情報を含む工具種類データと、工具個体に関する情報を含む前記工具オブジェクトデータと、を対応付けた工具管理データを格納するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、効率的な工具管理を行うための工具管理システム、工具管理装置及び工具管理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2は、工具管理システム100の概略的なハードウェア構成図である。工具管理システム100は、工具管理装置1、CAM2、CNC3を含む。工具管理装置1、CAM2、CNC3は有線又は無線により通信可能に接続される。
【0016】
図3は、工具管理装置1の概略的なハードウェア構成図である。工具管理装置1は、工具情報を管理する情報処理装置であり、例えばPC(パーソナルコンピュータ)である。工具管理装置1は、CPU11、ROM12、RAM13、不揮発性メモリ14、入出力装置15、インタフェース16、インタフェース17、バス10を有する。
【0017】
CPU11は、工具管理装置1を全体的に制御するプロセッサである。典型的には、CPU11は、ROM12に格納されたシステム・プログラムをバス10を介して読み出し、システム・プログラムに従って工具管理装置1全体を制御する。
【0018】
ROM12は、システム・プログラムを予め格納している。
【0019】
RAM13は、一時的な計算データや表示データ、後述する入出力装置15、インタフェース16、インタフェース17を介して入出力されるデータ等を一時的に格納する。
【0020】
不揮発性メモリ14は、工具管理装置1の電源が遮断されても記憶状態を保持する。例えば、不揮発性メモリ14は、工具管理プログラムや工具管理データ等を格納する。不揮発性メモリ14に記憶されたプログラムやデータは、実行時及び利用時にはRAM13に展開されても良い。
【0021】
入出力装置15は、ディスプレイ等の表示装置、キーボード等の入力装置を含むデータ入出力装置である。例えば入出力装置15は、CPU11から受けた情報をディスプレイに表示する。また、キーボードから入力されたデータをCPU11に渡す。
【0022】
インタフェース16は、有線又は無線の通信手段によりCAM2と通信を行うためのインタフェースである。CPU11が出力するデータは、インタフェース16を介してCAM2に渡される。CAM2が出力するデータは、インタフェース16を介してCPU11に渡される。
【0023】
インタフェース17は、有線又は無線の通信手段によりCNC3と通信を行うためのインタフェースである。CPU11が出力するデータは、インタフェース17を介してCNC3に渡される。CNC3が出力するデータは、インタフェース17を介してCPU11に渡される。
【0024】
図4は、CAM2の概略的なハードウェア構成図である。CAM2は、ワークを加工するためのNCプログラムを生成、出力する情報処理装置であり、例えばPC(パーソナルコンピュータ)である。CAM2は、CPU21、ROM22、RAM23、不揮発性メモリ24、入出力装置25、インタフェース26、インタフェース27、バス20を有する。
【0025】
CPU21は、CAM2を全体的に制御するプロセッサである。典型的には、CPU21は、ROM22に格納されたシステム・プログラムをバス20を介して読み出し、システム・プログラムに従ってCAM2全体を制御する。
【0026】
ROM22は、システム・プログラムを予め格納している。
【0027】
RAM23は、一時的な計算データや表示データ、後述する入出力装置25、インタフェース26、インタフェース27を介して入出力されるデータ等を一時的に格納する。
【0028】
不揮発性メモリ24は、CAM2の電源が遮断されても記憶状態を保持する。例えば、不揮発性メモリ24は、NCプログラム作成プログラムや工具データ等を格納する。不揮発性メモリ24に記憶されたプログラムやデータは、実行時及び利用時にはRAM23に展開されても良い。
【0029】
入出力装置25は、ディスプレイ等の表示装置、キーボード等の入力装置を含むデータ入出力装置である。例えば入出力装置25は、CPU21から受けた情報をディスプレイに表示する。また、キーボードから入力されたデータをCPU21に渡す。
【0030】
インタフェース26は、有線又は無線の通信手段により工具管理装置1と通信を行うためのインタフェースである。CPU21が出力するデータは、インタフェース26を介して工具管理装置1に渡される。工具管理装置1が出力するデータは、インタフェース26を介してCPU21に渡される。
【0031】
インタフェース27は、有線又は無線の通信手段によりCNC3と通信を行うためのインタフェースである。CPU21が出力するデータは、インタフェース27を介してCNC3に渡される。CNC3が出力するデータは、インタフェース27を介してCPU21に渡される。
【0032】
図5は、CNC3の概略的なハードウェア構成図である。CNC3は、NCプログラムにしたがって工作機械を制御する数値制御装置である。CNC3は、CPU31、ROM32、RAM33、不揮発性メモリ34、入出力装置35、インタフェース36、インタフェース37、インタフェース38、インタフェース39、軸制御回路391、サーボアンプ392、バス30を有する。
【0033】
CPU31は、CNC3を全体的に制御するプロセッサである。典型的には、CPU31は、ROM32に格納されたシステム・プログラムをバス30を介して読み出し、システム・プログラムに従ってCNC3全体を制御する。
【0034】
ROM32は、システム・プログラムを予め格納している。
【0035】
RAM33は、一時的な計算データや表示データ、後述する入出力装置35、インタフェース36、インタフェース37、インタフェース38、インタフェース39を介して入出力されるデータ等を一時的に格納する。
【0036】
不揮発性メモリ34は、CNC3の電源が遮断されても記憶状態を保持する。例えば、不揮発性メモリ34は、NCプログラムや各種データ等を格納する。不揮発性メモリ34に記憶されたプログラムやデータは、実行時及び利用時にはRAM33に展開されても良い。
【0037】
入出力装置35は、ディスプレイ等の表示装置、キーボード等の入力装置を含むデータ入出力装置である。例えば入出力装置35は、CPU31から受けた情報をディスプレイに表示する。また、キーボードから入力されたデータをCPU31に渡す。
【0038】
インタフェース36は、有線又は無線の通信手段によりCAM2と通信を行うためのインタフェースである。CPU31が出力するデータは、インタフェース36を介してCAM2に渡される。CAM2が出力するデータは、インタフェース36を介してCPU31に渡される。
【0039】
インタフェース37は、有線又は無線の通信手段により工具管理装置1と通信を行うためのインタフェースである。CPU31が出力するデータは、インタフェース37を介して工具管理装置1に渡される。工具管理装置1が出力するデータは、インタフェース37を介してCPU31に渡される。
【0040】
インタフェース38には、センサ40が接続される。センサ40は、工具が装着されたマガジン番号、ポット番号、及び装着された工具の工具名を識別するセンサである。例えばセンサ40は、工具、マガジン、ポットに予め貼付された2次元コード等にエンコードされたマガジン番号、ポット番号、工具名を取得する画像センサである。なお本発明はこれに限定されるものでなく、センサ40は、工具、マガジン、ポットを一意に識別可能な任意の情報を取得するものであって良い。センサ40は、取得したマガジン番号、ポット番号、及び工具名のセットをインタフェース38を介してCPU31に渡す。
【0041】
インタフェース39には、工具交換装置60が接続される。工具交換装置60は1以上のマガジンを備え、マガジンは1以上のポットを備え、ポットには工具が装着される。CPU31は、インタフェース39を介し、工具交換装置60に対してマガジン番号及びポット番号を指令する。工具交換装置60は、指令に従ってマガジン及びポットを選択し、選択されたポットに装着された工具を使用できるよう準備する。
【0042】
軸制御回路391は、工作機械の動作軸を制御する。軸制御回路391は、CPU31が出力する軸の移動指令量を受けて、動作軸の移動指令をサーボアンプ392に出力する。
【0043】
サーボアンプ392は、軸制御回路391が出力する軸の移動指令を受けて、サーボモータ50を駆動する。
【0044】
サーボモータ50は、サーボアンプ392により駆動されて工作機械の動作軸を動かす。サーボモータ50は、典型的には位置・速度検出器を内蔵する。位置・速度検出器は位置・速度フィードバック信号を出力し、この信号がCPU31にフィードバックされることで、位置・速度のフィードバック制御が行われる。
【0045】
なお、
図5では軸制御回路391、サーボアンプ392、サーボモータ50は1つずつしか示されていないが、実際には制御対象となる工作機械に備えられた軸の数だけ用意される。
【0046】
図6は、工具管理システム100の概略的な機能構成を示すブロック図である。工具管理システム100は、工具管理装置1、CAM2、CNC3を含む。
【0047】
工具管理装置1は、工具管理データ格納部101、工具種類データ生成部102、工具オブジェクトデータ生成部103を有する。
【0048】
工具管理データ格納部101は、工具種類データと、工具オブジェクトデータと、からなる工具管理データを格納する記憶領域(データベース)である。
【0049】
工具種類データは、複数の工具に共通する属性情報の集合である。例えば工具種類データは、ユニークな工具種類名と、これに対応付けられたカタログデータと、を含む。カタログデータは、工具のメーカ名、型番、寸法、切削条件、画像等を含む。この場合、工具種類名は、あるメーカのある型番に属する工具すべて(=工具種類)に共通する属性情報のラベルとして機能する。
【0050】
工具オブジェクトデータは、個別の工具の属性情報の集合である。例えば工具オブジェクトデータは、ユニークな工具名と、これに対応付けられた工具種類名、工作機械名、マガジン番号、ポット番号、工具寿命、オフセットデータと、を含む。この場合、工具名は、その工具の工具種類名は何か、どのように工作機械に装着されているか、工具寿命やオフセットデータはどのような値であるか等を参照するためのラベルとして機能する。
【0051】
通常、複数の工具オブジェクトデータに対し、同一の工具種類名が付されうる。同一メーカ、型番の工具が複数存在しうるからである。したがって、工具種類データと工具オブジェクトデータとは、1対多の関係で紐付けられる。換言すれば、個々の工具オブジェクトは、工具種類データとして定義された属性を承継するインスタンスであり、このような工具オブジェクトは複数(工具の実体の数だけ)生成されうる。
【0052】
なお、工具管理データ格納部101は、工具管理データをネットワークに公開されたストレージや外部メモリなど、外部からアクセス可能な記憶領域に配置することが好ましい。これにより、CAM2やCNC3が工具管理データにアクセスすることができる。また、図示しない解析装置に工具管理データに集約される工具寿命などの情報にアクセスさせ、工具使用の最適化のための方策立案等に供することも可能である。
【0053】
工具種類データ生成部102は、上述の工具種類データを生成する。典型的には、工具種類データ生成部102は通信ネットワーク等を介して所定の記憶領域(例えばウェブサーバやクラウドストレージ等)を参照し、工具メーカ等が提供する工具のカタログデータを取得する。工具種類データ生成部102は、例えばメーカのカタログデータに含まれる型番に1対1に対応するように、ユニークな工具種類名を割り振る。典型的には、メーカ名や型番を工具種類名に含めることができる。このように工具種類名を割り振る場合は、工具種類名を付与した後は、メーカ名及び型番を工具種類データから除いて構わない。
【0054】
工具オブジェクトデータ生成部103は、上述の工具オブジェクトデータを生成する。典型的には、工具オブジェクトデータ生成部103はインタフェース17を介してCNC3と通信を行い、ポットに取付けられている工具各々について、工具名、工具種類名、工作機械名、マガジン番号、ポット番号、工具寿命、オフセットデータを取得する。工具名及び工具種類名と、工具が装着されているマガジン番号、ポット番号の取得方法については追って例示する。工作機械名、工具寿命、オフセットデータについては、CNC3の標準機能を用いて取得することが可能であるため、ここでは説明を行わない。なお、工具各々には予めユニークな工具名が割り当てられているものとする。
【0055】
CAM2は、NCプログラム作成部201、工具種類データ取得部202を有する。
【0056】
NCプログラム作成部201は、典型的にはCADデータに基づいてNCプログラムを作成する。なお、NCプログラム作成部201の動作は公知技術であるため詳細な説明は行わない。
【0057】
工具種類データ取得部202は、インタフェース26を介して工具管理装置1と通信を行い、工具管理データ格納部101から工具種類データを取得し、図示しない記憶領域に蓄積する。NCプログラム作成部201は、工具種類データ取得部202が取得、蓄積した工具種類データを参照し、工具管理データ格納部101で定義されている工具種類名を使用してNCプログラムを作成する。すなわち、NCプログラム作成部201が作成するNCプログラム内では、工具管理データ格納部101に記述されている工具種類名によって使用工具が指定される。
【0058】
CNC3は、NCプログラム実行部301、工具管理データ取得部302、工具選択部303、マガジン制御部304、工具装着検知部305を有する。
【0059】
NCプログラム実行部301は、NCプログラム作成部201が作成したNCプログラムを解釈し、実行する。なお、NCプログラム実行部301の動作は公知技術であるため詳細な説明は行わない。NCプログラム実行部301は、NCプログラム内に工具種類名が記載されている場合は、その工具種類名を工具選択部303に引き渡す。
【0060】
工具管理データ取得部302は、インタフェース37を介して工具管理装置1と通信を行い、工具管理データ格納部101から工具管理データを取得し、図示しない記憶領域に蓄積する。
【0061】
工具選択部303は、工具管理データ取得部302が取得及び蓄積した工具管理データを参照し、NCプログラム内で使用されている工具種類名を具体的な工具名に変換することにより、加工に使用すべき工具名を特定する。
【0062】
工具選択部303が使用すべき工具名を特定する処理について、より具体的に説明する。工具選択部303はまず、工具管理データ取得部302が取得及び蓄積した工具管理データの中から、制御対象の工作機械名が含まれるレコードのみを抽出する。次に、NCプログラムの中で工具種類名が記載されていた場合、工具選択部303は、工具管理データにおいて当該工具種類名に対応付けられている工具名を探索する。発見された工具名が1つであれば、その工具名が加工において使用すべき工具である。工具選択部303は、工具管理データにおいて工具名に対応付けられているマガジン番号、ポット番号をマガジン制御部304に引き渡す。一方、発見された工具名が複数であれば、工具選択部303は、その工具名を含むレコードの1つを任意の条件に基づいて選択し、選択した工具を加工において使用するものとする。工具選択部303は、例えば工具寿命(残り寿命)の最も短い(少ない)工具を選択することができる。
【0063】
マガジン制御部304は、工具選択部303から引き渡されたマガジン番号、ポット番号を選択するよう、インタフェース39を介して工具交換装置60に指令する。これにより、工具選択部303が特定した工具が使用可能となる。
【0064】
工具装着検知部305は、ポットに工具を装着する作業を行った際に動作する。事前準備として、例えば工具には工具名及び工具種類名をエンコードした2次元コード、マガジンにはマガジン番号をエンコードした2次元コード、各ポットにはポット番号をエンコードした2次元コードをそれぞれ貼付してあるものとする。工具装着検知部305は、工具が装着されたことを検知すると、センサ40である画像センサにより、工具、工具が装着されたマガジン及びポットに貼付された2次元コードをそれぞれ読み取る。工具装着検知部305は、読み取った2次元コードをデコードして工具名、工具種類名、マガジン番号、ポット番号を得る。工具装着検知部305は、得られた情報をセットにして工具オブジェクトデータ生成部103に送信する。工具オブジェクトデータ生成部103は、工具装着検知部305から受信した情報を使用して、工具オブジェクトデータのレコードを追加又は更新する。すなわち、受信した情報に含まれる工具名が工具オブジェクトデータ中に既に存在する場合は、当該レコードの内容を受信した情報で上書きする。一方、受信した情報に含まれる工具名が工具オブジェクトデータ中に存在しない場合は、受信した情報を内容とするレコードを追加する。
【0065】
図7乃至
図13を用いて、工具管理システム100の動作例についてさらに具体的に説明する。
【0066】
<工具情報>
図7及び
図8は、工具管理データ(工具種類データ、工具オブジェクトデータを含む)の生成、更新、及び取得フローを示す図である。
図7の(1)において、工具管理装置1が、工具カタログデータを基に工具種類データを生成する。通常、工具種類データは、工具の種類(メーカ名や型番)の数だけ生成される。(2)において、CAM2が、工具種類データを取得する。工具種類データは、NCプログラムを作成する際に使用される。(3)において、CNC3に装着された工具に関する情報が工具管理装置1に送られ、この情報を基に工具管理装置1が工具オブジェクトデータを生成する。ここで、工具種類データと工具オブジェクトデータとが関連付けられ、工具管理データが完成する。(4)において、CNC3が工具管理データを取得する。工具管理データは、NCプログラムを実行する際に使用される。
【0067】
図8は、CNC3が複数存在する場合における工具管理データの生成、更新、及び取得フローを示す図である。CNC3が複数存在する場合でも、
図7において示したものと同様のフローにより工具管理データを生成、更新、及び取得できる。但し、CNC3はそれぞれ自己が制御する工作機械に装着された工具に関する情報のみを工具管理装置1に送れば良い。また、自己が制御する工作機械に関係する工具管理データのみを工具管理装置1から取得すれば良い。
【0068】
<工具交換>
図9及び
図10は、NCプログラムの指令により工具交換を実行する際のCNC3の動作を示す図である。
図9において、NCプログラムには「MILL_INDEX_DIE_2」という工具種類名に工具交換を行う指令が記載されている。NCプログラム実行部301は、この工具種類名を工具選択部303に引き渡す。工具選択部303は、工具種類名をキーとして工具管理データを検索し、対応する工具オブジェクトデータを得る。なお、対応する工具オブジェクトデータが複数存在する場合、工具選択部303は、例えば工具寿命の最も短いもの、ポット番号が現在位置から最も近いものといった所定の基準に従って、1つの工具オブジェクトデータを選択する。工具選択部303は、工具オブジェクトデータからマガジン番号、ポット番号を抽出し、マガジン制御部304に引き渡す。マガジン制御部304は、工具交換装置60に指令を出力し、現在使用中の工具から、当該マガジン番号及びポット番号に装着された工具への交換を実行する。
【0069】
図10は、工具選択部303は、工具寿命が最も短い工具オブジェクトデータを選択する際の動作を示す図である。
図10に示す工具管理データには、NCプログラムで指定された工具種類名「MILL_INDEX_DIE_2」に該当する工具オブジェクトデータが3件含まれている。工具選択部303は、最初の工具交換指令M06において、これらの3件のうち最も工具寿命が短い「MILL_005_0106」を使用工具として選択する。さて、続く加工において、工具名「MILL_005_0106」の残り寿命が0になったものとする。この場合、工具選択部303は、2番目の工具交換指令M06においては、工具寿命が尽きた「MILL_005_0106」は選択対象から除外し、残る2件から使用工具を選択することが好ましい。すなわち、残る2件のうち最も工具寿命が短い「MILL_005_0105」を使用工具として選択する。なお、「MILL_005_0106」の工具寿命が尽きていなければ、工具選択部303は、2番目の工具交換指令M06で工具交換を行うことなく、「MILL_005_0106」を引き続き使用することができる。
【0071】
図11は、複数のCNC3が共通の工具管理データを利用する場合におけるCNC3の動作を示す図である。
図11の例では、工作機械A,B,Cにそれぞれ接続された3台のCNC3が、共通の工具管理データを参照している。各CNC3は、共通の工具管理データから、自己が制御する工作機械に関係する工具管理データのみを抽出してローカルエリアに保持する。
【0072】
いま、工作機械A,B,Cにそれぞれ接続された3台のCNC3が、同じNCプログラムを実行するものとする。NCプログラムには、工具種類名「MILL_INDEX_DIE_2」への工具交換指令が含まれている。各CNC3の工具選択部303は、工具種類名をキーとしてローカルエリアに保持した工具管理データを検索し、対応する工具オブジェクトデータを得る。ここで各CNC3の保持している工具管理データは内容が異なるため、検索される工具オブジェクトデータも異なりうる。そのため、例えば工作機械Aを制御するCNC3では、工具名「MILL_005_0107」「MILL_005_0108」のいずれかに工具交換が行われる。工作機械Bを制御するCNC3では、工具名「MILL_005_0109」に工具交換が行われる。そして工作機械Cを制御するCNC3では、工具名「MILL_005_0105」「MILL_005_0106」「MILL_005_0110」のいずれかに工具交換が行われる。このように、本発明によれば共通のNCプログラムで、工作機械毎の工具装着状態に応じた適切な工具を選択することが可能である。
【0073】
<工具オブジェクトデータの登録>
図12は、工作機械に装着された工具に関する工具オブジェクトデータが、自動的に工具管理データに登録される際の処理フローを示す図である。
図12の(1)において、ポットに工具が装着される。(2)において、工具装着検知部305は、装着された工具の工具名及び工具種類名を読み出す。(3)において、工具装着検知部305は、工具が装着されたマガジン及びポットのマガジン番号及びポット番号を読み出す。(4)において、工具装着検知部305は工具名、工具種類名、マガジン番号、ポット番号をセットにして、一旦図示しない記憶領域に格納する。また、工具装着検知部305は、CNC3の標準機能を用いて工作機械名、工具寿命、オフセットデータを取得及び一時格納する。(5)において、工具装着検知部305は、これらのデータをセットにして工具オブジェクトデータ生成部103に送信する。工具オブジェクトデータ生成部103は、受信したデータを内容とする新たな工具オブジェクトデータを工具管理データ内に追加するか、既存の工具オブジェクトデータの内容を受信したデータで更新する。(6)において、工具管理データ取得部302は、更新された工具管理データを受信する。
【0074】
ここで、(4)において工具管理装置1に送信された工具寿命、オフセットデータは、他のCNC3からも参照可能な工具管理データとして、工具管理データ格納部101が保持することになる。したがって、この工具が今後新たなCNC3に移設された場合、新たなCNC3においては、以前のCNC3で使用されていた工具寿命、オフセットデータといった値を流用できる。
【0075】
なお、(4)において工具名、工具種類名、マガジン番号、ポット番号、工作機械名、工具寿命、オフセットデータをローカルに一時保存している場合は、追加又は更新後の工具オブジェクトデータに相当する情報を既にローカルに保持していることになる。よって、工具管理データ取得部302は、一時保存した工具オブジェクトデータに対応する工具種類データ(典型的にはカタログデータ相当の情報を含む)や、工具オブジェクトデータのうちローカルに保持されていない情報のみを工具管理装置1から取得し、取得した差分データを一時保存された情報と組み合わせることで、ローカルで工具管理データを更新することとしても良い。
【0076】
<他の実施例>
図13は、工具管理システム100の様々な実施例を示す図である。
上述の実施の形態では、工具に貼付された2次元コードに工具名及び工具種類名がエンコードされており、センサ40がこれを読み取る例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、他の手法により工具名と工具種類名との対応関係が与えられても良い。例えば
図13の(1)に示すように、ユーザにより工具名と工具種類名との対応関係が工具管理装置1に入力されても良い。この場合、工具に貼付された2次元コードには、工具名のみがエンコードされていれば良い。
【0077】
また、(2)に示すように、工具管理装置1は、工具、マガジン、ポットに貼付するための2次元コード等をシール等の形で出力するコード生成部をさらに有していても良い。これにより、本発明をより正確かつ効率的に実施することが可能となる。
【0078】
また、上述の実施の形態では、CNC3の工具管理データ取得部302が、工具管理データをローカルに保持する例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、工具管理データ取得部302は、少なくとも工具オブジェクトデータのみをローカルに保持することとしても良い。工具オブジェクトデータがローカルに保持されていれば、工具選択部303が適切な工具を選択することは可能である。一方、工具種類データを含む工具管理データをローカルに保持することにより、例えばカタログデータをCNC3上で参照することが可能となり、作業効率を向上させることができる。
【0079】
本実施の形態によれば、工作機械の設定等に依存しないユニークな工具名で、工具を個別に特定することができる。また、NCプログラムにおいては工具名でなく、工具種類名で工具を特定できるので、特定の工具や工作機械に依存しない汎用的なプログラムを提供することが可能である。すなわち、同じ種類の工具を使用する複数の工作機械で、同じNCプログラムを、編集の必要なく使用することができる。
【0080】
また、本実施の形態によれば、ユニークな工具名で工具個体を管理し、工具名と工具固有の情報(工具寿命や工具オフセット等)を1対1の関係で保持し、かつそれらの情報を他の工作機械と共有することができる。そのため、工具固有の情報を複数の工作機械間で共有することができ、工作機械毎に行っていた工具の登録作業を削減することが可能である。
【0081】
また、本実施の形態によれば、工具を装着した際に、工具名、工具種類名、マガジン番号、ポット番号を画像センサ等が読み取って、工具オブジェクトデータを登録する。そのため、従来手作業で行っていた工具の登録作業の大部分を自動化することが可能である。
【0082】
以上、本発明の主要な実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例のみに限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。例えば、上述の実施の形態では工具管理装置1をCAM2、CNC3とは別の装置として説明したが、本発明はこれに限定されず、工具管理装置1をCAM2又はCNC3の一機能として構成しても良い。又は、工具管理装置1はいわゆるクラウドコンピューティング等の技術により、仮想的に実現されるものであっても構わない。