(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本明細書に添付した図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更したり、誇張したりしている場合がある。本明細書等において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む範囲であることを意味する。本明細書等において、「フィルム」、「シート」、「板」等の用語は、呼称の相違に基づいて相互に区別されない。例えば、「板」は、「シート」、「フィルム」と一般に呼ばれ得るような部材をも含む概念である。
【0014】
〔シーラント〕
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るシーラント10は、シリコン材料を輸送する際に用いられる包装体(シリコン材料の輸送用包装体)用のものであって、第1面11A及びそれに対向する第2面11Bを有するシーラント基材11を備える。シーラント基材11は、第1面11A側に位置する第1表面層111と、第2面11B側に位置する第2表面層112と、第1表面層111及び第2表面層112の間に挟まれている中間層113とを有する積層構造体であってもよいし(
図1参照)、第1面11A及び第2面11Bを有する単層構造体であってもよい(
図2参照)。
【0015】
図1に示す態様において、第1面11A側に位置する第1表面層111は、スリップ剤が実質的に添加されていない低密度ポリエチレン(LDPE)を含む層である。第2面11B側に位置する第2表面層112は、第1表面層111と同様に、例えば、スリップ剤が実質的に添加されていない低密度ポリエチレン(LDPE)を含む層であり、第1表面層111と第2表面層112との間に挟まれている中間層113は、例えば、スリップ剤が実質的に添加されていないリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む層である。なお、本実施形態において「スリップ剤が実質的に添加されていない」とは、スリップ剤としてシーラントの表面の滑り性を実際に向上させる成分がシーラントの表面の滑り性に実際に影響を与える目的でシーラントの表面の滑り性に実際に影響を与える量を超えて添加されていないことを意味する。スリップ剤としては、例えば、炭酸カルシウムまたはタルクなどの粒子や、シリコーン樹脂または四級アンモニウム塩化合物などの界面活性剤が挙げられる。
【0016】
シリコン材料の輸送用包装体の最内層に位置するシーラント10に由来する揮発成分(シーラント10由来のアウトガス成分等)が内容物であるポリシリコンやシリコンウェハに付着してしまうと、当該シリコンウェハを用いて製造される半導体装置において欠陥を生じさせてしまうおそれがある。そのため、シーラント10に由来する揮発成分は、可能な限り少ないのが望ましい。シーラント10に由来する揮発成分を低減させるためには、シーラント10の厚みT10を可能な限り薄くするのが望ましい。シーラント10の厚みT10が相対的に薄いことで、シーラント10に由来する揮発成分がフィルム外部へ放出されるため、シーラント10に由来する揮発成分を低減させることができる。一方で、シーラント10の厚みT10を薄くし過ぎると、引張強度等の機械的特性に対する耐性が低くなってしまい、内容物を梱包する袋として機能が低下するおそれがある。この点、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)は、低密度ポリエチレン(LDPE)に比べ、伸縮性が高く、折り曲げに対する耐性が高いため、シーラント10としてリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることで、シーラント10の厚みT10を相対的に薄くすることができる。
【0017】
また、シリコン材料の輸送用包装体40に樹脂ケース51を収容した後、当該包装体40から脱気して梱包されるため、当該包装体40を構成する包装材料に含まれるシーラント10には、良好な追従性が求められる。この点においても、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)は相対的に高い伸縮性を有するため、当該リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)が用いられることで、シーラント10の追従性を良好にすることができる。
【0018】
シーラントがリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)の単層で構成されれば、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)の単層で構成されるシーラントの押込弾性率を150MPa〜600MPa程度に調整することができるため、シーラントの厚みを薄くすることができると考えられる。また、シーラントの追従性を良好にすることを考慮しても、シーラントがリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)の単層で構成されるのは好ましいということができる。しかし、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)の重合時の圧力は、低密度ポリエチレン(LDPE)の重合時の圧力よりも低いために、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)においては、低密度ポリエチレン(LDPE)に比べて低分子成分が揮発しやすい。そのため、シーラントがリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)の単層で構成されていると、シーラントの厚みを薄くすることができたとしても、シーラントに由来する揮発成分によってシリコン材料が汚染されてしまうおそれがあると考えられる。また、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)は、低密度ポリエチレン(LDPE)よりも滑り性が低くなる傾向があるため、シーラントがリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)の単層で構成されていると、シーラントの表面の滑り性が低くなるおそれがあると考えられる。シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントは、異物になるおそれがあるスリップ剤は実質的に添加されないことが好ましいため、スリップ剤の使用以外の手段で滑り性を向上させることが好ましい。本実施形態においては、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む中間層113が、低密度ポリエチレン(LDPE)を含む第1表面層111及び第2表面層112により挟まれている。そのため、本実施形態に係るシーラント10によれば、厚みT10を相対的に薄くすることができ、追従性や滑り性も良好であり、また中間層113に含まれるリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)から低分子成分が揮発するのを防止することができる。
【0019】
図2に示すシーラント10において、単層構造体のシーラント基材11は、低密度ポリエチレン(LDPE)とリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)とを含む。このシーラント基材11において、低密度ポリエチレン(LDPE)とリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)との配合比が、50:50〜70:30程度であればよい。このように、低密度ポリエチレン(LDPE)の配合量がリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)の配合量よりも多いことで、シーラント基材11の第1面11A側において低密度ポリエチレン(LDPE)の存在量を多くすることができるとともに、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)によりシーラント10の厚みT10を薄くするという効果、すなわち低分子成分が揮発するのを防止するという効果が奏される。なお、シーラント基材11の厚み方向で見たときに、低密度ポリエチレン(LDPE)とリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)とが実質的に均一に存在していてもよいし、第1面11A側及び第2面11B側に低密度ポリエチレン(LDPE)が偏在していてもよい。
【0020】
本実施形態に係るシーラント10の厚みT10は、当該シーラント10を含む包装材料により構成されるシリコン材料の輸送用包装体の厚さ等に応じて適宜設定され得るものであるが、例えば、35μm〜60μm程度であればよい。
【0021】
図1に示す態様において、低密度ポリエチレン(LDPE)を含む第1表面層111及び低密度ポリエチレン(LDPE)を含む第2表面層112が中間層113を挟んで配置されていることで、シーラント10の一方面側の内部応力と他方面側の内部応力とがある程度相殺され、シーラント10がカールすることを抑制できる。また、
図1に示す態様において第1表面層111及び第2表面層112のそれぞれの厚みT111,T112は、いずれも中間層113の厚みT113よりも薄い。第1表面層111及び第2表面層112のそれぞれの厚みT111,T112が中間層113の厚みT113よりも薄く構成されていることで、シーラント10に所定の追従性が付与され得る。第1表面層111の厚みT111と中間層113の厚みT113との比は、1:1〜10程度であればよく、1:2〜3程度であるのが好ましい。当該厚みの比が上記範囲であることで、中間層113に含まれる低密度リニアポリエチレン(LLDPE)による十分な追従性がシーラント10に付与され、シーラント10の押込弾性率を300MPa〜500MPaの範囲とすることができる。なお、押込弾性率は、微小硬さ試験機(製品名「ピコデンター(PICODENTOR) HM500」、フィッシャー・インスツルメント社製)により測定され得る。
【0022】
シーラントのシール強度は、ヒートシール時のシール温度、シール圧力、シール時間等によりコントロール可能であることが知られている。一般に、シール温度が高くなるほどに、シール強度が向上する傾向を有するが、シール温度が高すぎると、必要以上にシーラントが溶融してしまい、却ってシール強度を低下させてしまうおそれがある。本実施形態においては、シール温度150℃、シール圧力0.1MPa、シール時間1秒のヒートシール条件下で、シーラント10の第1面11A同士をシールしたときのシール強度が、30N/15mm以上であればよく、50N/15mm以上60N/15mm未満であるのが好ましい。当該シール強度が30N/15mm未満であると、シーラント10を有する包装材料20により構成されるシリコン材料の輸送用包装体40に包装されたシリコン材料の輸送途中に、当該シリコン材料の輸送用包装体40のヒートシール部(例えば上面ヒートシール部HST等(
図7参照))が剥離してしまうおそれがある。
【0023】
上述したように、シーラント10の厚みT10を相対的に薄くする観点から、シーラント10の構成材料としてリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)を使用するのが好適であると考えられる。しかしながら、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)により構成されるシーラントにおいては、所定のシール強度を得るために必要なシール温度が相対的に高くなってしまう。この点、本実施形態においては、シーラント10の第1表面層111が低密度ポリエチレン(LDPE)を含むことで、所定のシール強度を得るために必要なシール温度を相対的に低下させることができる。
【0024】
本実施形態に係るシーラント10のヘイズは、25%以下であればよく、20%以下であるのが好ましい。シーラント10のヘイズが20%以下であることで、、シーラント10を有する包装材料20から製造されるシリコン材料の輸送用包装体40においてその内部の視認性を良好にすることができる。また、シリコン材料をシリコン材料の輸送用包装体に包装する前に、シーラント10の第1面11Aに異物が付着しているか否かを確認することができ、シリコン材料の汚染を未然に防止することもできる。なお、シーラント10のヘイズは、例えば、ヘイズメーター(製品名:HM−150,村上色彩研究所社製)を用いて、JIS−K7136に準拠して測定され得る。
【0025】
上述した構成を有するシーラント10は、従来公知のフィルム成膜法を用いて製造され得る。例えば、
図1に示す構成を有するシーラント10は、ダイコート法、インフレーション法等の塗工法等を用いて、第2表面層112、中間層113及び第1表面層111を積層形成することで製造され得る。
図2に示す構成を有するシーラント10も同様に、上記塗工法、押出インフレーション法等を用いて製造され得る。
【0026】
〔包装材料〕
図3に示すように、本実施形態における包装材料20は、基部21の一方面側に第2面11Bを当接させるようにして上記シーラント10を積層してなる多層構造を有する。
基部21は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(登録商標,Ny)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等から選択される1種の樹脂材料又は2種以上の樹脂材料の積層体により構成される。なお、
図3に示す例においては、基部21が2種の樹脂材料の積層体(第1樹脂層211及び第2樹脂層212)により構成されており、第1樹脂層211がシーラント10の第2面11Bに対する接着層として機能している。この場合において、例えば、第1樹脂層211はポリエチレン(PE)により構成され、第2樹脂層212はポリエチレンテレフタレート(PET)により構成されていればよい。
【0027】
上記包装材料20におけるシーラント10は、当該包装材料20から製造されるシリコン材料の輸送用包装体40(
図6参照)にシリコン材料が包装されたときに、当該包装体40内部を視認可能な程度の透明性を有する。そのため、当該シーラント10を有する包装材料20においても、同様に、包装体40内部を視認可能な程度の透明性を有しているのが望ましい。そのような観点から、本実施形態における包装材料20のヘイズは、例えば、30%以下であればよく、25%以下であるのが好ましい。包装材料20のヘイズが30%を超えると、包装材料20から製造されるシリコン材料の輸送用包装体40の内部の視認性が悪化してしまったり、シリコン材料の輸送用包装体40におけるシーラント10の第1面11Aに異物が付着しているか否かの確認が困難になったりするおそれがある。なお、包装材料20のヘイズは、例えば、ヘイズメーター(製品名:HM−150,村上色彩研究所社製)を用いて、JIS−K7136に準拠して測定され得る。
【0028】
本実施形態において、基部21の他方面側にガスバリア層22を有していてもよい(
図4参照)。ガスバリア層22を有することで、包装材料20から製造されるシリコン材料の輸送用包装体40の外部から、シリコン材料表面を汚染するガス等が侵入するのを防止することができる。ガスバリア層22は、例えば、シリカもしくはアルミナ等の無機酸化物等を樹脂層(例えばPET層等)に蒸着させてなる蒸着膜等であればよい。また、包装材料20は、基材21の他方面側に、アルミニウム等の金属を蒸着させてなる金属蒸着膜や、アルミニウム等の金属箔を有していてもよい。これらの金属蒸着膜や金属箔を基材21の他方面側に有する場合、包装材料20において透明性が確保されないが、包装材料20から製造されるシリコン材料の輸送用包装体40にガスバリア性の他、光遮蔽性をも付与することができる。また、この態様において、基材21の一方面側に設けられているシーラント10が所定の透明性を有することで、包装材料20から作製されるシリコン材料の輸送用包装体40におけるシーラント10の第1面11Aに異物が付着しているか否かを、より容易に確認することができる。
【0029】
上述した構成を有する包装材料20は、従来公知のフィルム等の作製方法により作製すればよいが、例えば、
図5に示すように、第1ロール61、第2ロール62、第3ロール63及びTダイ64を有する製造装置60を用いて作製され得る。かかる製造装置において、シーラント10の第2面11Bと、第2樹脂層212との間に、第1樹脂層211を構成する樹脂材料がフィルム状にTダイ64から押し出され、第1ロール61、第2ロール62及び第3ロール63により面状圧接されて冷却されることで、包装材料20が作製される。
【0030】
〔シリコン材料の輸送用包装体〕
図6に示すように、本実施形態におけるシリコン材料の輸送用包装体40は、広げることで略方体状(略直方体状)となる包装袋であって、第1側面フィルム41、第2側面フィルム42、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44によって構成されている。第1側面フィルム41、第2側面フィルム42、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44は、いずれも上記包装材料20により構成されている。シリコン材料の輸送用包装体40は、第1側面フィルム41、第2側面フィルム42、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44のいずれものシーラント10の第1面11Aが最内面に位置し、基部21の他方面側が最外面に位置するように構成されている。
【0031】
上記シリコン材料の輸送用包装体40において、第1側面フィルム41の2つの対向する側縁部の一方と折り込まれた第1ガゼットフィルム43の2つの対向する側縁部の一方とを重ね合わせてヒートシールにより溶着させてなる第1ヒートシール部HS1が形成され、第1側面フィルム41の上記側縁部の他方と折り込まれた第2ガゼットフィルム44の2つの対向する側縁部の一方とを重ね合わせてヒートシールにより溶着させてなる第2ヒートシール部HS2が形成されている。また、第2側面フィルム42の2つの対向する側縁部の一方と折り込まれた第1ガゼットフィルム43の上記側縁部の他方とを重ね合わせてヒートシールにより溶着させてなる第3ヒートシール部HS3が形成され、第2側面フィルム42の上記側縁部の他方と折り込まれた第2ガゼットフィルム44の上記側縁部の他方とを重ね合わせてヒートシールにより溶着させてなる第4ヒートシール部HS4が形成されている。第1側面フィルム41及び第2側面フィルム42のそれぞれの側縁部を重ね合わせてヒートシールにより溶着させてなる底面ヒートシール部HSBが形成され、底面ヒートシール部HSBに対向して位置する第1側面フィルム41及び第2側面フィルム42のそれぞれの側縁部は、ヒートシールされずにシリコン材料の輸送用包装体40の開口部45を形成している。
【0032】
第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44を折り込んだシリコン材料の輸送用包装体40が多数積み重ねられている状態で、第1側面フィルム41又は第2側面フィルム42を吸着保持して上方に持ち上げることで、開口部45を開くことができる。その開いた開口部45から、シリコン材料の輸送用包装体40内にシリコン材料52を格納する樹脂ケース51(
図7参照)を収容し、当該開口部45における第1側面フィルム41及び第2側面フィルム42のそれぞれの側縁部を重ね合わせてヒートシールすることで、上面ヒートシール部HSTを形成してシリコン材料の梱包体50(
図7参照)を作製することができる。
【0033】
本実施形態におけるシリコン材料の輸送用包装体40においては、その最内層に位置するシーラント10の第1面11A側に低密度ポリエチレン(LDPE)が含まれ、それよりも第2面11B側にリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)が含まれている。シーラント10を構成するリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)により、シーラント10の厚みT10を相対的に薄くすることができ、追従性を良好することができるとともに、シーラント10の第1面11A側に含まれる低密度ポリエチレン(LDPE)によって、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)からの低分子成分の揮発を防止することができる。なお、シリコン材料の輸送用包装体40を構成する包装材料20の基材21の他方面側に金属蒸着膜や金属箔が設けられている場合、所定の透明性が確保されないが、包装材料20の基材21の他方面側に金属蒸着膜や金属箔が設けられていることで、シリコン材料の輸送用包装体40にガスバリア性や光遮蔽性を付与することができる。また、基材21の一方面側に設けられているシーラント10において所定の透明性が確保されていることで、シリコン材料の輸送用包装体40におけるシーラント10の第1面11Aに異物が付着しているか否かを容易に確認することができる。
【0034】
以上説明した実施形態は、本開示の理解を容易にするために記載されたものであって、本開示を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本開示の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0035】
上記実施形態におけるシリコン材料の梱包体50は、上記シリコン材料の輸送用包装体40を内袋とし、それと同様の構成を有する外袋をさらに有するものであってもよく、この場合において、内袋としてのシリコン材料の輸送用包装体40にシリコン材料52を収容し、さらに外袋に収容すればよい。この外袋の第1側面フィルム41、第2側面フィルム42、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44のそれぞれを構成する包装材料は、
図3及び
図4に示す構成を有する包装材料20であってもよいし、帯電防止機能を有する樹脂フィルム(例えば、帯電防止層付きナイロンフィルム(製品名:ボニールAS,興人フィルム&ケミカルズ株式会社製)等))、ガスバリア層22、第1樹脂層211及びシーラント10をこの順で積層してなる積層体等であってもよい。
【0036】
上記実施形態におけるシリコン材料の輸送用包装体40は、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44を有しないものであってもよい。この場合において、第1側面フィルム41及び第2側面フィルム42を、互いのシーラント10の第1面11Aを対向させるようにして3つの側縁部をヒートシールすればよい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例等を挙げて本開示をさらに詳細に説明するが、本開示は下記の実施例等により何ら限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1〕
第1表面層111の構成材料として低密度ポリエチレン(スリップ剤が実質的に添加されていないLDPE,宇部丸善ポリエチレン社製,製品名:UBEポリエチレンB128)を用い、中間層113の構成材料として低密度ポリエチレン(スリップ剤が実質的に添加されていないLDPE,宇部丸善ポリエチレン社製,製品名:UBEポリエチレンB128)及びリニア低密度ポリエチレン(スリップ剤が実質的に添加されていないLLDPE,プライムポリマー社製,製品名:ウルトゼックス3500ZA)の溶融混合物(配合比=1:1(質量基準))を用い、第2表面層112の構成材料として低密度ポリエチレン(スリップ剤が実質的に添加されていないLDPE,宇部丸善ポリエチレン社製,製品名:UBEポリエチレンB128)を用い、多層共押出インフレーション成膜法により、
図1に示す構成を有するシーラント10(第1表面層111(膜厚:8μm)、中間層113(膜厚:24μm)、第2表面層112(膜厚:8μm))を作製した。
【0039】
〔実施例2〕
低密度ポリエチレン(スリップ剤が実質的に添加されていないLDPE,宇部丸善ポリエチレン社製,製品名:UBEポリエチレンB128)のペレット及びリニア低密度ポリエチレン(スリップ剤が実質的に添加されていないLLDPE,プライムポリマー社製,製品名:ウルトゼックス3500ZA)のペレットを配合比7:3(質量基準)で溶融混合し、インフレーション成膜法により、
図2に示す構成を有するシーラント10(厚み:40μm)を作製した。
【0040】
〔比較例1〕
無添加リニア低密度ポリエチレン(無添加LLDPE,タマポリ社製,製品名:NB−1)シーラント(厚み:50μm)を準備した。
【0041】
〔試験例1〕
実施例1〜2及び比較例1のシーラントを100mm×25mmに切り出した切片を被験試料として準備し、当該被験試料をエタノールに60℃1週間分間浸漬させた。エタノールに浸漬させた被験試料からの揮発成分を、下記条件のGC/MSにて分析し、マススペクトルを得た。得られたマススペクトルを
図8A〜
図8Cに示す。
【0042】
<GC/MS条件>
・ガスクロマトグラフ:GCMS−QP2010(島津製作所社製)
・カラム:670−15003−03(長さ:30mm,内径:0.25mm,島津製作所社製)
・カラムオーブン温度:50℃
・注入量:1μL
・キャリアガス:He(57.1mL/分)
・気化室温度設定:300℃
・測定モード:スプリット
【0043】
〔試験例2〕押込弾性率
実施例1〜2及び比較例1のシーラントから所望サイズで切り出した切片を被験試料として準備し、当該被験試料について、ISO14577:2015に準拠して、温度23℃±2℃、湿度60%RH±5%RHの雰囲気で押込弾性率を測定した。まず、20mm×20mmの大きさに切り出した被験試料の第1面11Aが上面となるように市販のスライドガラスに、接着樹脂(製品名「アロンアルフア(登録商標)一般用」、東亜合成社製)を介して固定した。具体的には、スライドガラス1(製品名「スライドガラス(切放タイプ)1−9645−11」、アズワン社製)の中央部に上記接着樹脂を滴下した。この際、接着樹脂を塗り広げず、また後述するように押し広げたときに接着樹脂が被験試料からはみ出さないように1滴の接着樹脂を滴下した。その後、上記大きさに切り出した被験試料を第1面11A側が上面になり、かつ被験試料の中央部に接着樹脂が位置するようにスライドガラスに接触させ、スライドガラス1と被験試料の間で接着樹脂を押し広げ、仮接着した。そして、別の新しいスライドガラス2を被験試料の上に載せ、スライトガラス1/接着樹脂/被験試料/スライドガラス2の積層体を得た。次いで、スライドガラス2の上に30g以上50gの重りを置き、12時間室温で放置した。その後、重りとスライドガラス2を取り外し、これを測定用サンプルとした。そして、この測定用サンプルを除振台に平行に設置した微小硬さ試験機(製品名:ピコデンター(PICODENTOR)HM500、フィッシャー・インスツルメント社製)の測定ステージに固定した。この固定は、測定サンプルが動かないように、スライドガラス1の4辺をテープ(製品名:セロテープ(登録商標)、ニチバン社製)で固定した。次に、被験試料の第1面11Aにおいて、ビッカース圧子(対面角136°の正四角錐のダイヤモンド圧子)を装着させた超微小負荷硬さ試験機(ピコデンターHM500,フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて、押込速度0.15μm/秒、押込深さ3μm、保持時間5秒間、引き抜き速度0.15μm/秒の条件で押込弾性率を測定した。1つの被験試料において、少なくとも異なる5箇所で測定し、それらの測定値の平均を、シーラントについてその条件での押込弾性率の値とした。結果を表1に示す。
【0044】
〔試験例3〕シール強度
実施例1〜2及び比較例1のシーラントの第1面同士を下記表2に示す条件でヒートシールし、ヒートシール部を含む15mm幅のヒートシール試験片を採取し、当該ヒートシール試験片をJIS−Z1711に準拠してシール強度を求めた。結果を表2に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
図8A〜
図8Cに示す結果から明らかなように、実施例1及び実施例2のシーラントにおいては、揮発成分が検出されなかったが、比較例1のシーラントにおいては、揮発成分が検出された。この結果から、実施例1及び実施例2のように、第1面11A側に位置する第1部分が低密度ポリエチレン(LDPE)を含む、それよりも第2面11B側に位置する第2部分がリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)を含むことで、シーラントから低分子成分の揮発を防止可能であると推察される。
【0048】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1及び実施例2の押込弾性率は、比較例1の押込弾性率よりも大きいものの、実用上、十分な追従性を発揮可能な程度に伸縮性を有し、耐屈曲性を有するものと推察される。また、実施例1及び実施例2のシーラントは、十分な透明性を確保可能であることが確認された。
【0049】
表2に示す結果から明らかなように、実施例1及び実施例2のシーラントにおいては、比較例1〜3のシーラントに比して、より低いシール温度で高いシール強度を得ることができることが確認された。
【課題】シリコン材料の輸送用包装体に用いられる、揮発成分を低減させ、シール強度を向上させたシーラント、包装材料、シリコン材料の輸送用包装体及びシリコン材料の梱包体を提供する。
【解決手段】シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントは、第1面及び第1面に対向する第2面を有するシーラント基材を備え、シーラント基材は、第1面を含む第1部分と、第1部分よりも第2面側に位置する第2部分とを含み、第1部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、第2部分は、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む。