特許第6761144号(P6761144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6761144-積層フィルムの製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761144
(24)【登録日】2020年9月7日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20200910BHJP
   B65H 39/16 20060101ALI20200910BHJP
   B32B 37/02 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   G02B5/30
   B65H39/16
   B32B37/02
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-510034(P2020-510034)
(86)(22)【出願日】2019年3月25日
(86)【国際出願番号】JP2019012367
(87)【国際公開番号】WO2019188906
(87)【国際公開日】20191003
【審査請求日】2020年7月28日
(31)【優先権主張番号】特願2018-67400(P2018-67400)
(32)【優先日】2018年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 亮
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼永 幸佑
【審査官】 植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−7094(JP,A)
【文献】 特開2016−71351(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/204162(WO,A1)
【文献】 特開2018−36655(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/025703(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00−43/00
B65H39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフィルムと第2のフィルムとを含む積層フィルムの製造方法であって、
破断強度が1.9N/mm以下である長尺状の前記第1のフィルムと前記第1のフィルムの片側に積層された表面保護フィルムとの積層体を搬送しながら、前記積層体から前記表面保護フィルムを剥離して前記第1のフィルムと前記第2のフィルムとを貼り合せることを含み、
前記積層体の両端部において、前記第1のフィルムの端部から幅方向への前記表面保護フィルムのはみ出し幅が1mm以上20mm未満である、積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第2のフィルムが偏光膜であり、
前記第1のフィルムが前記偏光膜の保護層として機能する基材フィルムである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
接着剤を介して前記第1のフィルムと前記第2のフィルムとを貼り合せる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
粘着剤を介して前記第1のフィルムと前記第2のフィルムとを貼り合せる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1のフィルムの厚みが30μm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1のフィルムが、シクロオレフィン系樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、または、アクリル系樹脂フィルムである、請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のフィルムからなる積層フィルムの製造方法として、長尺状のフィルムを搬送しながら他のフィルムに連続的に貼り合せることにより、効率的に積層フィルムを製造する方法が知られている。近年の積層フィルムの薄型化の要望に応じてフィルムを薄型化した場合、フィルムの破断強度が低下し、その結果、貼り合せ工程においてフィルムが破断する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−36655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、フィルムの貼り合せ工程におけるフィルムの破断を抑制した積層フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の積層フィルムの製造方法は、第1のフィルムと第2のフィルムとを含む積層フィルムの製造方法であって、破断強度が1.9N/mm以下である長尺状の上記第1のフィルムと上記第1のフィルムの片側に積層された表面保護フィルムとの積層体を搬送しながら、上記積層体から上記表面保護フィルムを剥離して上記第1のフィルムと上記第2のフィルムとを貼り合せることを含み、上記積層体の両端部において、上記第1のフィルムの端部から幅方向への上記表面保護フィルムのはみ出し幅が1mm以上20mm未満である。
1つの実施形態においては、上記第2のフィルムが偏光膜であり、上記第1のフィルムが上記偏光膜の保護層として機能する基材フィルムである。
1つの実施形態においては、接着剤を介して上記第1のフィルムと上記第2のフィルムとを貼り合せる。
1つの実施形態においては、粘着剤を介して上記第1のフィルムと上記第2のフィルムとを貼り合せる。
1つの実施形態においては、上記第1のフィルムの厚みが30μm以下である。
1つの実施形態においては、上記第1のフィルムが、シクロオレフィン系樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、または、アクリル系樹脂フィルムである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の1つの実施形態による積層フィルムの製造方法を示す概略断面図である。
図2】表面保護フィルムと基材フィルムとの積層体を幅方向に沿って切断したときの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0008】
A.積層フィルムの製造方法
図1は、本発明の1つの実施形態による積層フィルムの製造方法を示す概略断面図である。本発明の積層フィルムの製造方法は、第1のフィルムと第2のフィルムとを含む積層フィルムの製造方法である。この製造方法は、第1のフィルム10と上記第1のフィルム10の片側に積層された表面保護フィルム20との積層体30を搬送しながら(図1(a))、積層体30から表面保護フィルム20を剥離し(図1(b))、第1のフィルム10と第2のフィルム40とを貼り合せる(図1(c))ことを含む。これにより、第1のフィルム10と第2のフィルム40とを含む積層フィルム100が得られる。代表的には、長尺状の積層体30を長手方向に搬送しながら、表面保護フィルム20を剥離し、いわゆるロールトゥロールにより、第1のフィルム10における表面保護フィルム20剥離面とは反対側の面を、第2のフィルム40に連続的に貼り合せる。第1のフィルム10は長尺状であり、破断強度が1.9N/mm以下である。図1(a)は、積層体30を幅方向に沿って切断したときの概略断面図である。図1(a)に示すように、積層体30は、その両端部において、表面保護フィルム20が第1のフィルム10の端部から幅方向にはみ出している。表面保護フィルム20のはみ出し幅は、1mm以上20mm未満である。第1のフィルム10を第2のフィルム40との貼り合せに供するまで第1のフィルム10に表面保護フィルム20を積層しておくことにより、第1のフィルム10を保護することができる。さらに、第1のフィルム10よりも幅広な表面保護フィルム20を用い、積層体30における表面保護フィルム20のはみ出し幅が1mm以上20mm未満であることにより、第1のフィルム10の端面を保護することができる。その結果、第1のフィルム10から表面保護フィルム20を剥離した後、第1のフィルム10と第2のフィルム40とを貼り合せる前の第1のフィルム10の破断が抑制され得る。本発明の製造方法は、任意の第1および第2のフィルムを含む積層フィルムの製造に用いることができる。
【0009】
1つの実施形態においては、接着剤を介して第1のフィルムと第2のフィルムとを貼り合せる。別の実施形態においては、粘着剤を介して第1のフィルムと第2のフィルムとを貼り合せる。接着剤および粘着剤としては、任意の適切な接着剤および粘着剤が用いられ、代表的には、ポリビニルアルコール系接着剤、およびアクリル系粘着剤が用いられ得る。第1のフィルムの厚みは、好ましくは30μm以下である。第1のフィルムは、好ましくは、シクロオレフィン系樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、または、アクリル系樹脂フィルムである。
【0010】
破断強度が1.9N/mm以下である長尺状の第1のフィルム、および、第2のフィルムとしては、任意のフィルムを用いることができる。1つの実施形態においては、第2のフィルムは偏光膜であり、第1のフィルムは偏光膜の保護層として機能し得る基材フィルム(偏光膜保護フィルム)である。この場合、得られる積層フィルムは、偏光膜と、偏光膜の片側に積層された基材フィルムとを有する偏光板である。
【0011】
以下では、本発明の1つの実施形態として、第1のフィルムが基材フィルムであり、第2のフィルムが偏光膜である、偏光板の製造方法を例に挙げて説明する。
【0012】
B.積層体
図2は、表面保護フィルム20と基材フィルム11との積層体30を幅方向に沿って切断したときの概略断面図である。積層体30は、長尺状の基材フィルム11と、基材フィルム11の片側に積層された表面保護フィルム20とを含む。表面保護フィルムは、基材フィルムを偏光膜との貼り合せに供するまで基材フィルムを保護し、基材フィルムを偏光膜に貼り合せる前の任意の適切な時点で剥離される。積層体は長尺状であり、ロール状に巻回されていてもよい。
【0013】
図2に示すように、積層体30の両端部において、表面保護フィルム20が基材フィルム11の端部から幅方向にはみ出しており、表面保護フィルム20のはみ出し幅は1mm以上20mm未満である。表面保護フィルムの幅方向への上記はみ出し幅が1mm以上であることにより、表面保護フィルムを剥離した後の基材フィルムの破断が抑制され得る。具体的には、表面保護フィルムによって基材フィルムの端面が保護されることにより、例えば、積層体原反の輸送中や、積層体原反の巻取り、繰り出しなどの作業時に生じ得る、基材フィルムの端部における幅方向のクラックの発生が抑制され得る。その結果、表面保護フィルム剥離後に、長手方向に張力をかけながら基材フィルムを単独で搬送した場合であっても、破断を抑制することが可能となる。さらに、表面保護フィルムの幅方向への上記はみ出し幅が20mm未満であることにより、表面保護フィルムのはみ出しによる積層体のハンドリング性(搬送性)の低下が抑制され得る。はみ出し幅が20mm以上である場合、表面保護フィルムの端部が基材フィルムの端部に巻きつくことにより表面保護フィルムが剥離し難くなる等の問題が生じる場合があるが、はみ出し幅が20mm未満であれば、このような問題を回避することができる。上記はみ出し幅は、好ましくは3mm〜18mmであり、より好ましくは5mm〜16mmであり、特に好ましくは7mm〜14mmである。積層体の一方の端部における上記はみ出し幅と、他方の端部における上記はみ出し幅とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0014】
1つの実施形態においては、表面保護フィルムは、粘着剤層を介して基材フィルムに積層されている。別の実施形態においては、表面保護フィルムは自己粘着型のフィルムで構成され、粘着剤層を介することなく基材フィルムに積層されている。
【0015】
基材フィルムと表面保護フィルムとの積層に用いられる粘着剤としては、(メタ)アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとする粘着剤を適宜に選択して用いることができる。透明性、耐候性、耐熱性などの観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤層の厚さ(乾燥膜厚)は、必要とされる粘着力に応じて決定される。通常1〜100μm程度、好ましくは5〜50μmである。
【0016】
B−1.基材フィルム
基材フィルムは、上記のとおり、長尺状であり、破断強度が1.9N/mm以下である。基材フィルムの破断強度は、好ましくは0.3N/mm〜1.6N/mmであり、より好ましくは0.5N/mm〜1.3N/mmである。基材フィルムの破断強度は、例えば、JIS−K−7127に準じた引張試験により測定することができる。
【0017】
基材フィルムの厚みは、代表的には30μm以下であり、好ましくは1μm〜25μm以下であり、より好ましくは3μm〜20μmである。
【0018】
基材フィルムは、偏光膜の保護層として機能し得る任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、シクロオレフィン系樹脂フィルムや、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。基材フィルムは、好ましくは、シクロオレフィン系樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、または、アクリル系樹脂フィルムである。
【0019】
基材フィルムには、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0020】
基材フィルムは、好ましくは、実質的に光学的に等方性を有する。本明細書において「実質的に光学的に等方性を有する」とは、基材フィルムの面内位相差Re(550)が0nm〜10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が−10nm〜+10nmであることをいう。Re(550)は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(550)は、式:Re(550)=(nx−ny)×dによって求められる。Rth(550)は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(550)は、式:Rth(550)=(nx−nz)×dによって求められる。ここで、nxは遅相軸方向の屈折率であり、nyは進相軸方向の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚み(nm)である。
【0021】
B−2.表面保護フィルム
表面保護フィルムの厚みは、好ましくは25μm〜250μmであり、より好ましくは50μm〜200μmであり、特に好ましくは70μm〜150μmである。十分な厚みおよび剛性を有する表面保護フィルムを用いることにより、基材フィルムのカールを抑制し得、さらには、基材フィルムの搬送性が向上し得る。
【0022】
表面保護フィルムは、検査性や管理性などの観点から、好ましくは等方性を有する透明フィルムである。
【0023】
表面保護フィルムを構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。これらのなかでもポリエステル系樹脂が好ましい。
【0024】
表面保護フィルムには、基材フィルムとの接着面の反対側の面に、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの低接着性材料により、剥離処理層を設けることができる。
【0025】
C.偏光膜
偏光膜としては、任意の適切な偏光膜が採用され得る。例えば、偏光膜を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0026】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光膜の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光膜が用いられる。
【0027】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3〜7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0028】
積層体を用いて得られる偏光膜の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光膜が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光膜は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光膜とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光膜の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光膜の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光膜の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光膜の製造方法の詳細は、例えば特開2012−73580号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0029】
偏光膜の厚みは、例えば30μm以下であり、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは1μm〜12μmであり、さらに好ましくは3μm〜12μmであり、特に好ましくは3μm〜8μmである。偏光膜の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0030】
偏光膜は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光膜の単体透過率は、上記のとおり43.0%〜46.0%であり、好ましくは44.5%〜46.0%である。偏光膜の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
(1)厚み
ダイヤルゲージ(PEACOCK社製、製品名「DG−205」、ダイヤルゲージスタンド(製品名「pds−2」))を用いて測定した。
(2)基材フィルムの破断強度
引張試験をJIS−K−7127に準じて行った。測定試料は、JIS−K−7127に記載の試験片タイプ2の形に切断した基材フィルムを用い、チャック間隔50mm、試験片幅10mm、試験速度300mm/minにて行った。また、測定に使用した試験機は、インストロン型引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ)であった。引張試験時の試料が破断した際の強度を、N/mmで算出した。
(3)基材フィルムの破断
参考例、実施例および比較例の基材フィルム/偏光膜の偏光板(積層フィルム)について、基材フィルムが破断しているか否かを確認した。
(4)ハンドリング性
参考例、実施例および比較例の表面保護フィルム/基材フィルムの積層体を20m/分の搬送速度で搬送したときのハンドリング性を、以下の基準で評価した。
○・・・搬送により積層体に折れおよびシワが生じることなく、かつ、表面保護フィルムを容易に剥離することができた。
×・・・搬送により積層体に折れ若しくはシワが生じ、または、表面保護フィルムを剥離することが困難であった。
【0032】
[製造例1]
(偏光膜の作製)
吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のIPA共重合PETフィルム(厚み:100μm)基材の片面にコロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、樹脂基材上に厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、最終的に得られる偏光子の単体透過率が42%となるように染色液(ヨウ素:ヨウ化カリウム=1:7重量部)濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4.0重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
これにより、樹脂基材と厚み5μmの偏光膜との積層体(偏光子積層体)を作製した。
【0033】
[参考例1]
1.表面保護フィルムと基材フィルムとの積層体の作製
シクロオレフィン系樹脂を主成分とするフィルム(日本ゼオン株式会社製、製品名「ZD12」、厚み28μm、幅1300mm)の片側に、厚み2μmのハードコート層を形成することにより、基材フィルムAを作製した。基材フィルムAの破断強度は2.0N/mmであった。
次いで、基材フィルムAのハードコート層側の面に、アクリル系粘着剤を介して、表面保護フィルム(東レフィルム加工株式会社製、製品名「#30 7832C」、厚み30μm)を貼り合せることにより、表面保護フィルム/基材フィルムAの積層体を作製した。このとき、積層体の両端部において、表面保護フィルムの端部と基材フィルムAの端部とが揃うようにして表面保護フィルムを貼り合せた(表面保護フィルムの幅方向へのはみ出し幅が0mm)。
2.偏光板の作製
表面保護フィルム/基材フィルムAの積層体を搬送しながら、積層体から表面保護フィルムを剥離し、そのまま基材フィルムAを搬送しながら、基材フィルムAのハードコート層とは反対側の面を、PVA系接着剤を介して、上記偏光膜積層体の偏光膜側の面に連続的に貼り合せることにより、基材フィルム/偏光膜積層体の構成を有する偏光板を得た。
【0034】
[参考例2]
ウレタン系の易接着層を表面に塗工された、ラクトン環を含有したポリメチルメタクリレートを主成分とするアクリル系樹脂フィルム(厚み40μm、幅1330mm)を基材フィルムBとして用いた。基材フィルムBの破断強度は4.3N/mmであった。
基材フィルムBを用いたこと以外は参考例1と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムBの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0035】
[参考例3]
基材フィルムBが表面保護フィルムの端部から幅方向に5mmはみ出すようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は参考例2と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムBの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0036】
[実施例1]
シクロオレフィン系樹脂を主成分とするフィルム(日本ゼオン株式会社製、製品名「ZF12」、厚み27μm、幅1320mm)の片側に、厚み2μmのハードコート層を形成することにより、基材フィルムCを作製した。基材フィルムCの破断強度は1.3N/mmであった。
基材フィルムCを用いたこと、および、表面保護フィルムが基材フィルムCの端部から幅方向に5mmはみ出すようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は参考例1と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムCの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0037】
[実施例2]
ウレタン系の易接着層を表面に塗工された、ラクトン環を含有したポリメチルメタクリレートを主成分とするアクリル系樹脂フィルム(厚み20μm、幅1330mm)を基材フィルムDとして用いた。基材フィルムDの破断強度は1.9N/mmであった。
基材フィルムDを用いたこと以外は実施例1と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムDの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0038】
[実施例3]
シクロオレフィン系樹脂を主成分とするフィルム(日本ゼオン株式会社製、製品名「ZF14」、厚み13μm、幅1330mm)を基材フィルムEとして用いた。基材フィルムEの破断強度は0.9N/mmであった。
基材フィルムEを用いたこと以外は実施例1と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムEの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0039】
[実施例4]
表面保護フィルムが基材フィルムEの端部から幅方向に1mmはみ出すようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は実施例3と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムEの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0040】
[実施例5]
表面保護フィルムが基材フィルムEの端部から幅方向に10mmはみ出すようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は実施例3と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムEの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0041】
[比較例1]
表面保護フィルムの端部と基材フィルムDの端部とが揃うようにして表面保護フィルムを貼り合せた(表面保護フィルムの幅方向へのはみ出し幅が0mm)こと以外は実施例2と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムDの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0042】
[比較例2]
基材フィルムDが表面保護フィルムの端部から幅方向に5mmはみ出すようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は実施例2と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムDの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0043】
[比較例3]
表面保護フィルムが基材フィルムBの端部から幅方向に20mmはみ出すようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は参考例2と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムBの積層体を作製した。
上記積層体を用いて偏光板の作製を試みたが、積層体はハンドリング性が低く、搬送しながら表面保護フィルムを剥離して基材フィルムと偏光膜とを貼り合せることができなかった。
【0044】
[比較例4]
表面保護フィルムの端部と基材フィルムCの端部とが揃うようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は実施例1と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムCの積層体を作製した。
【0045】
[比較例5]
表面保護フィルムの端部と基材フィルムEの端部とが揃うようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は実施例3と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムEの積層体を作製した。
【0046】
参考例、実施例および比較例の偏光板について、基材フィルムの破断の有無、および積層体のハンドリング性を、上記(3)および(4)に基づいて評価した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
破断強度が2.0N/mm以上の基材フィルムを用いた参考例では、基材フィルムの破断は発生しなかったが、破断強度が1.9N/mm以下の基材フィルムを用いた比較例1、2、4および5では、基材フィルムの破断が発生した。これに対して、表面保護フィルムのはみ出し幅が1mm以上20mm未満である実施例1〜5では、破断強度が1.9N/mm以下の基材フィルムを用いたにもかかわらず、基材フィルムの破断は発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の積層フィルムの製造方法は、偏光板の製造方法として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0050】
10 第1のフィルム
20 表面保護フィルム
30 積層体
40 第2のフィルム
100 積層フィルム
図1
図2