【0008】
A.積層フィルムの製造方法
図1は、本発明の1つの実施形態による積層フィルムの製造方法を示す概略断面図である。本発明の積層フィルムの製造方法は、第1のフィルムと第2のフィルムとを含む積層フィルムの製造方法である。この製造方法は、第1のフィルム10と上記第1のフィルム10の片側に積層された表面保護フィルム20との積層体30を搬送しながら(
図1(a))、積層体30から表面保護フィルム20を剥離し(
図1(b))、第1のフィルム10と第2のフィルム40とを貼り合せる(
図1(c))ことを含む。これにより、第1のフィルム10と第2のフィルム40とを含む積層フィルム100が得られる。代表的には、長尺状の積層体30を長手方向に搬送しながら、表面保護フィルム20を剥離し、いわゆるロールトゥロールにより、第1のフィルム10における表面保護フィルム20剥離面とは反対側の面を、第2のフィルム40に連続的に貼り合せる。第1のフィルム10は長尺状であり、破断強度が1.9N/mm以下である。
図1(a)は、積層体30を幅方向に沿って切断したときの概略断面図である。
図1(a)に示すように、積層体30は、その両端部において、表面保護フィルム20が第1のフィルム10の端部から幅方向にはみ出している。表面保護フィルム20のはみ出し幅は、1mm以上20mm未満である。第1のフィルム10を第2のフィルム40との貼り合せに供するまで第1のフィルム10に表面保護フィルム20を積層しておくことにより、第1のフィルム10を保護することができる。さらに、第1のフィルム10よりも幅広な表面保護フィルム20を用い、積層体30における表面保護フィルム20のはみ出し幅が1mm以上20mm未満であることにより、第1のフィルム10の端面を保護することができる。その結果、第1のフィルム10から表面保護フィルム20を剥離した後、第1のフィルム10と第2のフィルム40とを貼り合せる前の第1のフィルム10の破断が抑制され得る。本発明の製造方法は、任意の第1および第2のフィルムを含む積層フィルムの製造に用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
(1)厚み
ダイヤルゲージ(PEACOCK社製、製品名「DG−205」、ダイヤルゲージスタンド(製品名「pds−2」))を用いて測定した。
(2)基材フィルムの破断強度
引張試験をJIS−K−7127に準じて行った。測定試料は、JIS−K−7127に記載の試験片タイプ2の形に切断した基材フィルムを用い、チャック間隔50mm、試験片幅10mm、試験速度300mm/minにて行った。また、測定に使用した試験機は、インストロン型引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ)であった。引張試験時の試料が破断した際の強度を、N/mmで算出した。
(3)基材フィルムの破断
参考例、実施例および比較例の基材フィルム/偏光膜の偏光板(積層フィルム)について、基材フィルムが破断しているか否かを確認した。
(4)ハンドリング性
参考例、実施例および比較例の表面保護フィルム/基材フィルムの積層体を20m/分の搬送速度で搬送したときのハンドリング性を、以下の基準で評価した。
○・・・搬送により積層体に折れおよびシワが生じることなく、かつ、表面保護フィルムを容易に剥離することができた。
×・・・搬送により積層体に折れ若しくはシワが生じ、または、表面保護フィルムを剥離することが困難であった。
【0032】
[製造例1]
(偏光膜の作製)
吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のIPA共重合PETフィルム(厚み:100μm)基材の片面にコロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、樹脂基材上に厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、最終的に得られる偏光子の単体透過率が42%となるように染色液(ヨウ素:ヨウ化カリウム=1:7重量部)濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4.0重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
これにより、樹脂基材と厚み5μmの偏光膜との積層体(偏光子積層体)を作製した。
【0033】
[参考例1]
1.表面保護フィルムと基材フィルムとの積層体の作製
シクロオレフィン系樹脂を主成分とするフィルム(日本ゼオン株式会社製、製品名「ZD12」、厚み28μm、幅1300mm)の片側に、厚み2μmのハードコート層を形成することにより、基材フィルムAを作製した。基材フィルムAの破断強度は2.0N/mmであった。
次いで、基材フィルムAのハードコート層側の面に、アクリル系粘着剤を介して、表面保護フィルム(東レフィルム加工株式会社製、製品名「#30 7832C」、厚み30μm)を貼り合せることにより、表面保護フィルム/基材フィルムAの積層体を作製した。このとき、積層体の両端部において、表面保護フィルムの端部と基材フィルムAの端部とが揃うようにして表面保護フィルムを貼り合せた(表面保護フィルムの幅方向へのはみ出し幅が0mm)。
2.偏光板の作製
表面保護フィルム/基材フィルムAの積層体を搬送しながら、積層体から表面保護フィルムを剥離し、そのまま基材フィルムAを搬送しながら、基材フィルムAのハードコート層とは反対側の面を、PVA系接着剤を介して、上記偏光膜積層体の偏光膜側の面に連続的に貼り合せることにより、基材フィルム/偏光膜積層体の構成を有する偏光板を得た。
【0034】
[参考例2]
ウレタン系の易接着層を表面に塗工された、ラクトン環を含有したポリメチルメタクリレートを主成分とするアクリル系樹脂フィルム(厚み40μm、幅1330mm)を基材フィルムBとして用いた。基材フィルムBの破断強度は4.3N/mmであった。
基材フィルムBを用いたこと以外は参考例1と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムBの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0035】
[参考例3]
基材フィルムBが表面保護フィルムの端部から幅方向に5mmはみ出すようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は参考例2と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムBの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0036】
[実施例1]
シクロオレフィン系樹脂を主成分とするフィルム(日本ゼオン株式会社製、製品名「ZF12」、厚み27μm、幅1320mm)の片側に、厚み2μmのハードコート層を形成することにより、基材フィルムCを作製した。基材フィルムCの破断強度は1.3N/mmであった。
基材フィルムCを用いたこと、および、表面保護フィルムが基材フィルムCの端部から幅方向に5mmはみ出すようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は参考例1と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムCの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0037】
[実施例2]
ウレタン系の易接着層を表面に塗工された、ラクトン環を含有したポリメチルメタクリレートを主成分とするアクリル系樹脂フィルム(厚み20μm、幅1330mm)を基材フィルムDとして用いた。基材フィルムDの破断強度は1.9N/mmであった。
基材フィルムDを用いたこと以外は実施例1と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムDの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0038】
[実施例3]
シクロオレフィン系樹脂を主成分とするフィルム(日本ゼオン株式会社製、製品名「ZF14」、厚み13μm、幅1330mm)を基材フィルムEとして用いた。基材フィルムEの破断強度は0.9N/mmであった。
基材フィルムEを用いたこと以外は実施例1と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムEの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0039】
[実施例4]
表面保護フィルムが基材フィルムEの端部から幅方向に1mmはみ出すようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は実施例3と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムEの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0040】
[実施例5]
表面保護フィルムが基材フィルムEの端部から幅方向に10mmはみ出すようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は実施例3と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムEの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0041】
[比較例1]
表面保護フィルムの端部と基材フィルムDの端部とが揃うようにして表面保護フィルムを貼り合せた(表面保護フィルムの幅方向へのはみ出し幅が0mm)こと以外は実施例2と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムDの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0042】
[比較例2]
基材フィルムDが表面保護フィルムの端部から幅方向に5mmはみ出すようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は実施例2と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムDの積層体を作製し、上記積層体を用いて偏光板を作製した。
【0043】
[比較例3]
表面保護フィルムが基材フィルムBの端部から幅方向に20mmはみ出すようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は参考例2と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムBの積層体を作製した。
上記積層体を用いて偏光板の作製を試みたが、積層体はハンドリング性が低く、搬送しながら表面保護フィルムを剥離して基材フィルムと偏光膜とを貼り合せることができなかった。
【0044】
[比較例4]
表面保護フィルムの端部と基材フィルムCの端部とが揃うようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は実施例1と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムCの積層体を作製した。
【0045】
[比較例5]
表面保護フィルムの端部と基材フィルムEの端部とが揃うようにして表面保護フィルムを貼り合せたこと以外は実施例3と同様にして表面保護フィルム/基材フィルムEの積層体を作製した。
【0046】
参考例、実施例および比較例の偏光板について、基材フィルムの破断の有無、および積層体のハンドリング性を、上記(3)および(4)に基づいて評価した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
破断強度が2.0N/mm以上の基材フィルムを用いた参考例では、基材フィルムの破断は発生しなかったが、破断強度が1.9N/mm以下の基材フィルムを用いた比較例1、2、4および5では、基材フィルムの破断が発生した。これに対して、表面保護フィルムのはみ出し幅が1mm以上20mm未満である実施例1〜5では、破断強度が1.9N/mm以下の基材フィルムを用いたにもかかわらず、基材フィルムの破断は発生しなかった。