(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施例を、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
なお、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートに着座する着座者から見たときの前後方向を意味し、一般的な車両の走行方向と一致する方向である。「左右方向」とは、車両用シートの横幅方向を意味する。「高さ方向」とは、車両用シートの高さ方向を意味し、車両用シートを正面から見たときの上下方向と一致する。
【0013】
<車両用シートSの構成及び動作の概略>
本実施形態に係る車両用シートSの構成及び動作の概略について、
図1及び
図2(a)を参照して説明する。なお、
図1は、車両用シートSを示す斜視図、
図2(a)は、着座可能状態の車両用シートSを示す模式的な側面図である。
【0014】
車両用シートSは、
図2(a)に示すように、乗員が着座可能な状態である着座可能状態と、収納状態であるダイブダウン状態と、シートクッションS1が折り畳まれた状態であるチップアップ状態とに切替可能に構成されたシートであり、車両内のフロアF上に取り付けられている。具体的には、車両用シートSは、フロアFを構成する上部フロアF1上にフロア側回動支持部材2によって回動可能に取り付けられている。
ここで、フロアFは、上部フロアF1と、上部フロアF1から斜め前方に傾斜する段差Faを介して下部フロアF2と、を有する。
詳細には後述するが、車両用シートSは、着座可能状態から、フロア側回動支持部材2を中心にシートバックS2が前方、かつ下方、つまり下部フロアF2側に回動することにより、下部フロアF2上に折り畳まれたダイブダウン状態に変更可能に構成されている。また、車両用シートSは、着座可能状態から、フロア側回動支持部材2を中心にシートクッションS1が上方、かつ後方に回動することにより、シートバックS2に重なるように折り畳まれたチップアップ状態に変更可能に構成されている。
【0015】
車両用シートSは、シートクッションS1と、シートクッションS1の後端に設けられたクッション側ブラケット20と、クッション側ブラケット20を介してシートクッションS1に対して相対的に回動可能に取り付けられたシートバックS2と、から主に構成されている。
【0016】
シートクッションS1は、シートクッションフレームとしてのパイプフレーム25と、パイプフレーム25上に載置されるクッション材1aと、クッション材1aを覆ってパイプフレーム25に取り付けられる表皮1bと、から主に構成されている。シートバックS2についても同様の構成からなる。
特に、シートクッションS1は、
図1に示すように、上面視U字状に形成されたパイプフレーム25を備え、パイプフレーム25に後述する取付ブラケット24を介してロック解除リンク6が取り付けられている。詳細については後述するが、ロック解除リンク6は、ロック機構としてのシート部材間ロック部L2のロックを解除する機能を有し、シートクッションS1の下面側、つまり裏面側から下方に突出するように取り付けられている。
【0017】
シートバックS2の背面側には、シートバックS2(車両用シートS)を着座可能状態に保持、及び保持の解除を行うラッチ装置L1が取り付けられている。このラッチ装置L1は、車体Bに取り付けられたストライカStに対してロック及びロックの解除をして、着座可能状態に保持、及び保持の解除を行う車体ロック部として機能するものである。
【0018】
シートバックS2の上部には、ラッチ装置L1のロックを解除する肩口レバー3が上方に突出するように取り付けられている。この肩口レバー3は、ケーブル3bの上端部に接続されている。ケーブル3bの下端部は、ラッチ装置L1に接続されている。肩口レバー3は、使用者に操作されることによって、ラッチ装置L1のロックを解除し、車両用シートSを着座可能状態からダイブダウン状態に容易に変更させるものである。
シートバックS2は、下方に突出する支持フレーム2aを有する。この支持フレーム2aの下端部が上部フロアF1側の部材であるフロア側回動支持部材2に回動可能に取り付けられている。このため、車両用シートSは、フロア側回動支持部材2を中心に回動可能となっている。
【0019】
<車両用シートSにおける着座可能状態からダイブダウン状態への変更について>
車両用シートSにおける着座可能状態からダイブダウン状態への変更について、
図2(a)に加えて、
図2(b)及び
図2(c)を参照して説明する。なお、
図2(b)は、着座可能状態からダイブダウン状態に移行中の車両用シートSを示す模式的な側面図、
図2(c)は、ダイブダウン状態の車両用シートSを示す模式的な側面図である。
【0020】
使用者は、車両用シートSが着座可能状態にあるときに、車両用シートSに設けられた肩口レバー3を上方に引く操作をすると、ラッチ装置L1のストライカStへのロックが解除される。これにより、不図示のスプリングの付勢力によって、シートバックS2は、
図2(a)から
図2(c)に示すように、支持フレーム2aを中心に前方かつ下方に向けて回動する。
これと同時に、シートバックS2に回動可能に取り付けられたクッション側ブラケット20を介して接続されたシートクッションS1は、上部フロアF1よりも上方の位置から、上部フロアF1よりも下方にある下部フロアF2の上面に接するように移動することとなる。詳細については後述するが、
図2(a)に示す、シート部材間ロック部L2による、シートクッションS1とシートバックS2とが展開した状態のロックは、
図2(b)に示す、ロック解除リンク6が下部フロアF2に当接することによって回動することで、解除されることとなる。そして、
図2(c)に示すように、シートバックS2がシートクッションS1に重なるように折り畳まれた状態であるダイブダウン状態となる。
【0021】
<車両用シートSにおける着座可能状態からチップアップ状態への変更について>
車両用シートSにおける着座可能状態からチップアップ状態への変更について、
図3(a),(b)を参照して説明する。なお、
図3(a)は、着座可能状態の車両用シートSであって、ロック解除リンク6を操作した状態を示す模式的な側面図、
図3(b)は、チップアップ状態の車両用シートSを示す模式的な側面図である。
【0022】
使用者は、車両用シートSが着座可能状態にあるときに、車両用シートSに設けられたロック解除リンク6を上方に回動させる操作をすると、詳細について後述するシート部材間ロック部L2のロックが解除される。これにより、不図示のスプリングの付勢力によって、
図3(a)から
図3(b)に示すように、支持フレーム2aを中心にシートクッションS1が上方かつ後方に向けて回動する。
【0023】
<シート部材間ロック部L2の機構について>
シート部材間ロック部L2の機構について、
図4を主に参照して説明する。なお、
図4は、シート部材間ロック部L2の構成を説明する説明図である。
【0024】
シート部材間ロック部L2は、シートクッションS1とシートバックS2の展開状態のロック、及びロックの解除、並びに折畳み状態のロック、及びロックの解除を行う部位である。
シート部材間ロック部L2は、係合溝10a,10bが形成されたバック側ブラケット10と、ロック解除リンク6の回動に応じて回動する第1リンク21と、第1リンク21に回動可能に係合する第2リンク22と、から主に構成されている。
なお、シート部材間ロック部L2の構成のうち、特表2004−528227号公報に記載されている構成と共通の構成については、その説明を省略する。
【0025】
バック側ブラケット10は、サイドフレーム5の外側面に固定されており、クッション側ブラケット20に回動軸30を介して回動可能に取り付けられている。換言すると、シートクッションS1は、バック側ブラケット10を介して、回動軸30を中心にシートバックS2に回動可能に取り付けられている。
【0026】
また、バック側ブラケット10には、同一形状の係合溝10a,10bが、回動軸30を中心とした円弧上であって略90度ずれた位置に形成されている。
ここで、バック側ブラケット10に形成された係合溝10aは、着座可能状態において、第2リンク22に設けられた係合突起22aに係合して、その状態を保持するためのものである。
一方で、係合溝10bは、チップアップ状態において、第2リンク22の係合突起22aに係合して、その状態を保持するためのものである。なお、ダイブダウン状態においては、後述するフロアFに押圧されて回動するロック解除リンク6が、ケーブル7及び第1リンク21を介して、第2リンク22を回動させることで、係合突起22aが係合溝10aから離間して非係合状態となる。なお、ケーブル7は、インナーケーブル7aと、インナーケーブル7aが通る中空部を有するアウターケーブル7bと、から構成される部材であり、線状部材に相当する部材である。
【0027】
シートクッションS1とシートバックS2の相対的な位置関係に関して、着座可能状態では、係合溝10aが係合突起22aに対向する位置にある。同様に、シートクッションS1とシートバックS2の相対的な位置関係に関して、チップアップ状態においては、係合溝10bが係合突起22aに対向する位置にある。
【0028】
第1リンク21は、後述するロック解除リンク6が上記のようにフロアFに押圧されるか、使用者に操作されることに応じて、ケーブル7を介してシート部材間ロック部L2のロックを解除する方向に回動する。第1リンク21の詳細な構成については上記公報に記載の通りである。
【0029】
第2リンク22は、第1リンク21におけるスプリング43の付勢に抗する方向の回動軸21aを中心とした回動、つまり
図4における時計回り方向の回動に応じて、シート部材間ロック部L2のロックを解除する方向に回動する。第2リンク22の詳細な構成については上記公報に記載の通りである。
【0030】
<ロック解除リンク6について>
次に、ロック解除リンク6について、
図5〜
図8を主に参照して説明する。なお、
図5は、ロック解除リンク6を示す斜視図、
図6は、ロック解除リンク6を示す平面図である。なお、
図5は、
図1に示すシートクッションS1の表皮1b及びクッション材1aを取り去ってパイプフレーム25を露出させた状態を示すものである。また、
図7は、
図5のVII-VII断面であり、ロック解除リンク6の断面を示す断面図、
図8は、ケーブル接続部6a及びフロア当接部6bを外した状態におけるロック解除リンク6を下方から示す底面側斜視図である。
【0031】
ロック解除リンク6は、本発明に係るロック解除部及びリンク部材に相当するものであり、上記のようにシート部材間ロック部L2のロックを解除するためのものである。ロック解除リンク6は、ダイブダウン状態にする際には下部フロアF2に当接することにより回動し、チップアップ状態にする際には使用者の操作により回動することにより、シート部材間ロック部L2のロックを解除するものとして機能する。
【0032】
ロック解除リンク6は、シートクッションS1の前後方向における中央よりも前方において、後述する支持ブラケット27及び取付ブラケット24を介してパイプフレーム25に取り付けられている。このように、ロック解除リンク6がシートクッションS1の中央よりも前方に配置されていることで、車両用シートSをチップアップ状態にする際に、使用者が、シートクッションS1の下方において、前方から手を伸ばしてロック解除リンク6を操作しやすくなる。
【0033】
また、ロック解除リンク6は、ケーブル7に接続されるケーブル接続部6aと、ケーブル接続部6aと一体的に形成され、ダイブダウン状態となる際に下部フロアF2に当接する部位であるフロア当接部6bと、から主に構成されている。
【0034】
ケーブル接続部6aは、ロック解除リンク6において、ケーブル7のインナーケーブル7aと接続される部位である。ケーブル接続部6aは、
図7に示すように、フロア当接部6bの後面から延在する棒状の部材であり、ロック解除リンク6の自然状態においては、後述するケーブル7の保持片24aに向かって延在している。なお、ロック解除リンク6の自然状態とは、ケーブル接続部6aが使用者によって操作されていない状態、又は下部フロアF2に当接していない状態をいう。
ケーブル接続部6aは、保持片24a側の端部に、ケーブル7と接続される接続穴6eを有する。接続穴6eは、ケーブル7のインナーケーブル7aと接続する部位であり、シート幅方向に延在する貫通孔である。
【0035】
フロア当接部6bは、ロック解除リンク6において、下部フロアF2に当接することにより、また、使用者に操作されることにより、ロック解除リンク6を回動させる部位である。フロア当接部6bは、略箱状の部材であり、ロック解除リンク6の自然状態においては、後述するリンク回動軸6cから前方斜め下側に延在しており、開放側が前方斜め上側に向くように取付ブラケット24に取り付けられている。フロア当接部6bは、取付ブラケット24側に設けられたシート幅方向に延在するリンク回動軸6cによって、回動可能に支持されている。
【0036】
略箱状に形成されたフロア当接部6bの内側における上端側であってリンク回動軸6cの近傍は、左右一対のガイド片6baが前方に突出して形成されている。ガイド片6baは、リンク回動軸6c周りを回動するロック解除リンク6の回動をガイドする機能を有し、側面視略L字状に形成されており、ケーブル接続部6aの下側に沿うように形成された側面視円弧状のガイド面を有する。
【0037】
ケーブル接続部6a及びフロア当接部6bは、全体としてキャレット状に屈曲して形成されている。換言すると、ケーブル接続部6aの延在方向に対して、フロア当接部6bは交差する方向であって、後方斜め下側に向かって延在している。
そして、ロック解除リンク6は、キャレット状の屈曲部分、換言すると、フロア当接部6bにおけるフロア当接部6bの延在方向と交差する部分において、取付ブラケット24に取り付けられたリンク回動軸6cにて回動可能に支持されている。
【0038】
取付ブラケット24は、ロック解除リンク6をシートクッションS1内に設けられたパイプフレーム25に取り付けるための部材である。取付ブラケット24は、中央に凹部24cを有して湾曲した板材から成り、ケーブル7のアウターケーブル7bを保持する保持片24aを備え、保持部材として機能する。取付ブラケット24は、凹部24cが上方に窪む向きでパイプフレーム25に溶接により接合されている。この凹部24cは、ロック解除リンク6を収容するスペースを形成するものである。
【0039】
保持片24aは、アウターケーブル7bを斜め前方向きに保持するように、他の部位よりも上方に立ち上がるように形成されている。
また、取付ブラケット24には、保持片24aにアウターケーブル7bを保持されたケーブル7のインナーケーブル7aを、取付ブラケット24の下方に挿通可能とする開口24bが保持片24aの前側に形成されている。つまり、インナーケーブル7aは、取付ブラケット24の開口24bを通ってケーブル接続部6aの接続穴6eに接続されることとなる。
【0040】
また、
図8に示すように、取付ブラケット24における開口24bよりも前側の部位には、リンク回動軸6cの両端を支持する支持ブラケット27が2本のビス27cによって取り付けられている。支持ブラケット27は、前面視略コの字状に形成されており、本体27aと、本体27aのシート幅方向の両端部に下方に向けて折り曲がって形成された一対の取付片27bを有する。この一対の取付片27bによって、リンク回動軸6cの両端が支持されている。
【0041】
ロック解除リンク6は、コイルばね6dによって、フロア当接部6bが下方に傾斜する向きに、付勢されている。
具体的には、コイルばね6dの一端は、ロック解除リンク6における箱状に形成されたフロア当接部6bの内側の一部に固定されており、コイルばね6dの他端は、支持ブラケット27の一部に固定されている。
【0042】
このようにコイルばね6dが固定されていることで、ロック解除リンク6において、フロア当接部6bに対して、リンク回動軸6cを挟んで後方にあるケーブル接続部6aは、上方に付勢されることとなる。
つまり、コイルばね6dは、ケーブル接続部6aの端部に設けられた接続穴6eが接続穴6eの後ろ側上方にある保持片24aに近接する位置に向かう方向に、ロック解除リンク6が回動するように、ロック解除リンク6を付勢している。このように、コイルばね6dに付勢された状態で、上記の自然状態にあるときには、接続穴6eが保持片24aに近接する位置にあることで、接続穴6eに接続されたインナーケーブル7aは、シート部材間ロック部L2を係合可能な方向に第1リンク21を押し出すこととなる。すなわち、ロック解除リンク6が下部フロアF2側から離間したときに、シート部材間ロック部L2をロック可能にすることができる。
【0043】
一方、フロア当接部6bが使用者によって操作されるか、又は下部フロアF2に当接して、ケーブル接続部6aがリンク回動軸6cを中心として下方に回動して保持片24aから離間したときには、ロック解除リンク6がインナーケーブル7aを引くこととなる。このようにして引かれたインナーケーブル7aは、後述するようにシート部材間ロック部L2のロックを解除するように作用することとなる。
【0044】
また、ケーブル7の下方であって、保持片24aよりも後方には、ケーブル7の変形位置を規制するワイヤ部材28がシート幅方向に配設されている。具体的には、ワイヤ部材28は、上面視略M字状に形成されており、シート幅方向中央側においてシート前後方向にパイプフレーム25に取り付けられた板ばね26と、パイプフレーム25のうちシートクッションS1のサイド側に延在する部位とに両端部を溶接されて取り付けられている。
ケーブル7は、ロック解除リンク6のケーブル接続部6aが下方に回動して、ケーブル接続部6aの接続穴6eによってインナーケーブル7aが引かれることによって下方に変形する。この場合でも、ケーブル7の下方にワイヤ部材28が設けられていることで、他の部材に干渉しない位置にケーブル7の変形位置を規制することができる。
【0045】
<着座可能状態からダイブダウン状態への変更の際におけるシート部材間ロック部L2について>
車両用シートSの着座可能状態からダイブダウン状態への変更の際におけるシート部材間ロック部L2について、
図2及び
図7に加えて、
図9〜
図11を主に参照して説明する。
図9は、着座可能状態におけるシート部材間ロック部L2の状態を説明する説明図、
図10は、ロック解除リンク6によって、シート部材間ロック部L2のロックが解除された状態を示す説明図である。そして、
図11は、ダイブダウン状態におけるシート部材間ロック部L2の状態を説明する説明図である。
【0046】
使用者は、車両用シートSが着座可能状態にあるときに、
図2に示す肩口レバー3を引くと、ケーブル3bが引かれてラッチ装置L1のロックが解除されることによって、シートバックS2が車体Bから離間可能となる。
【0047】
そして、シートバックS2は、不図示のスプリングによって倒伏方向に付勢されていることによって、
図2(a)から
図2(b)に示す向きに、フロア側回動支持部材2を中心として倒伏する。なお、このとき、係合突起22aが係合溝10aに係合していることで、シート部材間ロック部L2はロックした状態を維持している。このため、シートクッションS1及びシートバックS2は互いに距離を保った状態、つまり両者が展開した状態で倒伏する。
【0048】
そして、
図2(b)に示すように、ロック解除リンク6のフロア当接部6bが、下部フロアF2に当接する位置まで車両用シートSが倒伏すると、ロック解除リンク6のシート部材間ロック部L2のロック解除機能が作動することとなる。
【0049】
具体的には、ロック解除リンク6のフロア当接部6bは、下部フロアF2に当接することによって下部フロアF2から受ける荷重によって、上方に変位、つまり、
図7に示す時計回り方向に回動する。このフロア当接部6bの回動に伴い、フロア当接部6bと一体的に形成されたケーブル接続部6aも時計回りに回動し、下方に変位することとなる。
このケーブル接続部6aの変位により、ケーブル接続部6aの端部にある接続穴6eが下方に変位し、インナーケーブル7aの前端側を保持片24aから下方に引くこととなる。
【0050】
そして、ロック解除リンク6によって、前端側を引かれた前後方向に延在するインナーケーブル7aは、後端側に接続された
図9に示す第1リンク21を引いて、スプリング43の付勢に抗する方向に、回動軸21aを中心に第1リンク21を回動させる。
第1リンク21の回動によって、第1リンク21が第2リンク22に当接し、第2リンク22を回動軸22bを中心に回動させ、係合溝10aに係合していた係合突起22aを、
図10に示すように、係合溝10aから離脱する位置まで変位させる。
このようにして、シート部材間ロック部L2のロックが解除される。そして、シートクッションS1は、さらに下方に移動する際に、傾斜して形成された段差FaにシートクッションS1の後端部が摺接してガイドされることにより、前方にも移動することになる。最終的に、
図2(c)及び
図11に示す、シートクッションS1にシートバックS2が近接する位置、つまり、シートクッションS1とシートバックS2とが折り畳まれた状態となる位置に移動することとなる。
【0051】
上記のように、車両用シートSを着座可能状態からダイブダウン状態にさせる際に、ロック解除リンク6が下部フロアF2側に当接してシート部材間ロック部L2のロックを自動的に解除される。このため、使用者が特別な操作をせずとも、シートクッションS1とシートバックS2間のロックを解除することができる。
【0052】
なお、車両用シートSをダイブダウン状態から着座可能状態にする場合には、使用者は、シートバックS2を持ち上げて、ラッチ装置L1にロックする位置まで回動させればよい。
このように、使用者によってシートバックS2を持ち上げられれば、クッション側ブラケット20によって接続されたシートクッションS1も持ち上がることとなり、ロック解除リンク6が下部フロアF2から離間することとなる。ロック解除リンク6が下部フロアF2から離間すると、
図7に示すコイルばね6dの付勢によって、ロック解除リンク6は、
図7上反時計回りに回動し、ケーブル接続部6aが上方に変位することとなる。
このケーブル接続部6aの変位により、ケーブル接続部6aの端部にある接続穴6eが上方に変位し、インナーケーブル7aの前端側を保持片24aから上方に押すこととなる。
【0053】
そして、ロック解除リンク6によって、前端側を押された前後方向に延在するインナーケーブル7aは、後端側に接続された
図9に示す第1リンク21を引く方向の荷重負荷を解除する。このため、第1リンク21は、スプリング43の付勢によって、回動軸21aを中心に回動する。
第1リンク21の回動によって、第1リンク21が第2リンク22に当接し、第2リンク22を回動軸22bを中心に回動させ、係合溝10aから離間していた係合突起22aを、
図9に示すように、係合溝10aに係合する位置まで変位させる。
このようにして、シート部材間ロック部L2のロックがされ、
図2(a)及び
図9に示す、シートクッションS1にシートバックS2が離間する位置、つまり、シートクッションS1とシートバックS2とが展開した状態に保持されることとなり、着座可能状態となる。
【0054】
一方、車両用シートSをダイブダウン状態からチップアップ状態にする場合には、使用者は、ロック解除リンク6をシートクッションS1側に押し上げた状態で、シートクッションS1及びシートバックS2をフロア側回動支持部材2を中心に回動させる。そして、シートバックS2をラッチ装置L1でロックする位置に至らせた後、ロック解除リンク6から手を離して、シート部材間ロック部L2のロックを作動させればよい。
【0055】
<チップアップ状態におけるシート部材間ロック部L2について>
チップアップ状態におけるシート部材間ロック部L2について、
図3及び
図7に加えて、
図12を主に参照して説明する。なお、
図12は、チップアップ状態におけるシート部材間ロック部L2の状態を説明する説明図である。
【0056】
使用者は、車両用シートSが着座可能状態にあるときに、
図3に示すロック解除リンク6のフロア当接部6bをシートクッションS1に近づくように上方に押すと、上記において下部フロアF2にロック解除リンク6が当接した場合と同様に、シート部材間ロック部L2のロックが解除される。
具体的には、使用者がフロア当接部6bを上方に押すと、インナーケーブル7aが引かれて、第1リンク21をスプリング43の付勢に抗する方向に、回動軸21aを中心に回動させる。上記のように、第1リンク21の回動によって、第1リンク21が第2リンク22に当接し、第2リンク22を、回動軸22bを中心に回動させる。このとき、第2リンク22に形成された係合突起22aが、バック側ブラケット10に形成された係合溝10aから離間して係合が解除される位置に移動する。
このようにしてシート部材間ロック部L2のロックが解除されることによって、シートクッションS1をシートバックS2側に折り畳むことが可能となる。
【0057】
そして、第2リンク22のバック側ブラケット10に対する相対位置が変わり、チップアップ状態となったときに、
図12に示すように、係合突起22aが係合溝10bに対向する位置となる。このため、スプリング43からの付勢力によって回動する第1リンク21、及びこれに連結された第2リンク22が回動することによって、係合突起22aが係合溝10bに係合するように自動的に進出することとなる。つまり、シートクッションS1とシートバックS2とが折り畳まれた状態で、シート部材間ロック部L2のロックが機能することとなる。
【0058】
上記のように、シート部材間ロック部L2によれば、シートクッションS1とシートバックS2とを着座可能状態及びチップアップ状態となる位置で保持し、及び保持の解除をすることができる。なお、ダイブダウン状態においては、シート部材間ロック部L2のロックは、ロック解除リンク6が作用することによって、解除された状態に維持される。この場合、車両用シートSの折畳み状態は、シートバックS2の自重によって維持されることとなる。
特に、着座可能状態において、シート部材間ロック部L2が機能してロック状態を保持することによって、シートバックS2から展開したシートクッションS1の状態を保持することができる。このため、シートクッションS1を支持するための不図示の脚部材に剛性の低いものを用いることも可能となる。
さらには、シートクッションS1に脚部材を取り付ける必要がなくなる。このため、重量を軽減でき、さらには脚部材を取り付けないことで部材点数を削減できる。
【0059】
なお、車両用シートSをチップアップ状態から着座可能状態にする場合には、ロック解除リンク6をシートクッションS1に近接する方向である後方に押して、シート部材間ロック部L2のロックを解除した後、シートクッションS1を、回動軸30を中心に、前方、かつ下方に回動させればよい。
一方、車両用シートSをチップアップ状態からダイブダウン状態にする場合には、ラッチ装置L1のロックを解除して、シートクッションS1及びシートバックS2を、フロア側回動支持部材2を中心に、前方、かつ下方に回動させればよい。
【0060】
なお、上記実施形態においては、クッション側ブラケット20は、シートバックS2側の端部がシートバックS2に対して回動可能に取り付けられ、シートクッションS1側の端部がシートクッションS1に固定された構成について説明した。しかし、クッション側ブラケット20はこのような構成に限定されず、シートクッションS1側の端部もシートクッションS1に回動可能に取り付けられていてもよい。
【0061】
また、クッション側ブラケット20に第1リンク21及び第2リンク22が取り付けられ、バック側ブラケット10に係合溝10a,10bが形成されているものとして説明した。しかし、シート部材間ロック部L2は、このような構成に限定されず、係合機能及び係合解除機能を有していればよい。例えば、バック側ブラケット10とクッション側ブラケット20及びクッション側ブラケット20に取り付けられた第1リンク21及び第2リンク22等のリンクを構成する部材とを逆に配置する構成にしてもよい。