特許第6761177号(P6761177)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761177
(24)【登録日】2020年9月8日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】トーン検出装置およびトーン検出方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20200910BHJP
【FI】
   H04B1/16 Z
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-230293(P2016-230293)
(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-88590(P2018-88590A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100174573
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 知美
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 一浩
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 和宜
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−198662(JP,A)
【文献】 特開平05−183951(JP,A)
【文献】 特開平09−051557(JP,A)
【文献】 特開2000−324519(JP,A)
【文献】 米国特許第06731745(US,B1)
【文献】 特開2009−005210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トーン信号に割り当てられる複数の割当周波数のいずれかに、それぞれが対応付けられる複数の周波数帯域を用い、前記周波数帯域ごとに、該周波数帯域に含まれる入力信号の成分に応じた基準値を算出する基準値算出部と、
前記基準値算出部で算出された前記周波数帯域ごとの前記基準値の総和を算出する総和算出部と、
前記周波数帯域ごとの前記基準値の最大値を検出する最大値検出部と、
前記基準値の最大値が、前記基準値の総和から前記基準値の最大値をひいた差分に既定の演算を施した結果である比較値より大きい場合に、該最大値である前記基準値が算出された前記入力信号の成分を含む前記周波数帯域に対応付けられた前記割当周波数を、前記入力信号に含まれる前記トーン信号の周波数として検出する周波数検出部と、
を備えるトーン検出装置。
【請求項2】
前記周波数検出部において、前記比較値は、前記差分に等しい請求項1に記載のトーン検出装置。
【請求項3】
前記周波数検出部において、前記比較値は、前記差分に1より大きい係数を乗算した値である請求項1に記載のトーン検出装置。
【請求項4】
前記基準値算出部は、
それぞれ、前記複数の割当周波数のいずれかを含む互いに異なる通過帯域を有し、1つの前記入力信号が分岐されて入力される複数のフィルタと、
それぞれの前記フィルタで濾波された通過信号に、既定の信号処理を行って、前記フィルタごとに該通過信号に応じた前記基準値を算出する通過信号演算部と、
を備え、
前記総和算出部は、前記通過信号演算部で算出された前記フィルタごとの前記基準値の総和を算出し、
前記最大値検出部は、前記フィルタごとの前記基準値の最大値を検出し、
前記周波数検出部は、前記基準値の最大値が、前記比較値より大きい場合に、該最大値である前記基準値が算出された前記通過信号を出力した前記フィルタの前記通過帯域に含まれる前記割当周波数を、前記入力信号に含まれる前記トーン信号の周波数として検出する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のトーン検出装置。
【請求項5】
前記通過信号演算部は、前記基準値として前記通過信号の既定の区間における二乗平均を算出する請求項4に記載のトーン検出装置。
【請求項6】
前記通過信号演算部は、前記基準値として前記通過信号の既定の区間における絶対値平均を算出する請求項4に記載のトーン検出装置。
【請求項7】
前記基準値算出部は、前記入力信号に対して高速フーリエ変換を行い、前記周波数帯域ごとに、前記基準値として、前記入力信号のパワースペクトルを算出する請求項1から3のいずれか1項に記載のトーン検出装置。
【請求項8】
トーン信号に割り当てられる複数の割当周波数のいずれかに、それぞれが対応付けられる複数の周波数帯域を用い、前記周波数帯域ごとに、該周波数帯域に含まれる入力信号の成分に応じた基準値を算出する基準値算出ステップと、
前記基準値算出ステップにおいて算出された前記周波数帯域ごとの前記基準値の総和を算出する総和算出ステップと、
前記周波数帯域ごとの前記基準値の最大値を検出する最大値検出ステップと、
前記基準値の最大値が、前記基準値の総和から前記基準値の最大値をひいた差分に既定の演算を施した結果である比較値より大きい場合に、該最大値である前記基準値が算出された前記入力信号の成分を含む前記周波数帯域に対応付けられた前記割当周波数を、前記入力信号に含まれる前記トーン信号の周波数として検出する周波数検出ステップと、
を備えるトーン検出方法。
【請求項9】
前記周波数検出ステップにおいて、前記比較値は、前記差分に等しい請求項8に記載のトーン検出方法。
【請求項10】
前記周波数検出ステップにおいて、前記比較値は、前記差分に1より大きい係数を乗算した値である請求項8に記載のトーン検出方法。
【請求項11】
前記基準値算出ステップは、
前記周波数帯域ごとに、前記周波数帯域を通過帯域として前記入力信号を濾波するフィルタリングステップと、
前記フィルタリングステップで濾波された通過信号に、既定の信号処理を行って、前記周波数帯域ごとに該通過信号に応じた前記基準値を算出する通過信号演算ステップと、
を備える、
請求項8から10のいずれか1項に記載のトーン検出方法。
【請求項12】
前記通過信号演算ステップにおいて、前記基準値として前記通過信号の既定の区間における二乗平均を算出する請求項11に記載のトーン検出方法。
【請求項13】
前記通過信号演算ステップにおいて、前記基準値として前記通過信号の既定の区間における絶対値平均を算出する請求項11に記載のトーン検出方法。
【請求項14】
前記基準値算出ステップにおいて、前記入力信号に対して高速フーリエ変換を行い、前記周波数帯域ごとに、前記基準値として、前記入力信号のパワースペクトルを算出する請求項8から10のいずれか1項に記載のトーン検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号に含まれるトーン信号を検出するトーン検出装置およびトーン検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線機に搭載されるトーン検出装置は、入力信号に含まれるトーン信号を検出する。例えば、アナログ無線機に搭載されるトーン検出装置は、音声帯域300Hz〜3kHzの音声信号に重畳された、音声帯域外の周波数のトーン信号を検出する。アナログ無線機は、トーン検出装置で検出されたトーン信号の周波数が、設定されたスケルチ周波数と一致する場合にトーンスケルチを開き、スピーカから音声信号を出力する。上記方式は、CTCSS(Continuous Tone Code Squelch System)といわれる。
【0003】
特許文献1に開示されるトーン検出回路には、2100Hzおよび400Hzの内いずれか一方の周波数で送出される電話交換回線からのトーン信号が入力される。該トーン検出回路は、400Hzトーンを検出している間は、2100Hzトーンの検出回路に設けられたスイッチを開くことで、400Hzトーンに含まれる高調波歪成分による2100Hzトーンの検出回路の誤作動を抑制する。
【0004】
特許文献2には、従来のトーン検出方式として、バンドパスフィルタで抽出した周波数成分のパワーが閾値Thより大きい状態が連続すればダイアルトーンと判断し、該状態が断続すればビジートーンと判断する方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−220862号公報
【特許文献2】特開2000−184404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
信号品質は、SINAD(Signal-to-Noise And Distortion)比で表される。SINAD比は、信号の平均電力とノイズの平均電力と歪成分の平均電力とを加算した値を、ノイズの平均電力と歪成分の平均電力とを加算した値で除算した値である。すなわち、SINAD比は、信号の平均電力をノイズの平均電力と歪成分の平均電力とを加算した値で除算した値に、1を加算した値である。そのため、SINAD比は、所望の信号の平均電力とその他の信号の平均電力の比とみなすことができる。SINAD比が低くなると、トーン検出装置において、トーン検出対象の信号の信号レベルまたはパワーと固定の閾値との差が小さくなる。そのため、特許文献1,2に開示されるトーン検出方法では、誤ってノイズをトーン信号として検出することがあり、また検出すべきトーン信号を検出できないことがある。
【0007】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、トーン検出の精度を向上させることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るトーン検出装置は、
トーン信号に割り当てられる複数の割当周波数のいずれかに、それぞれが対応付けられる複数の周波数帯域を用い、前記周波数帯域ごとに、該周波数帯域に含まれる入力信号の成分に応じた基準値を算出する基準値算出部と、
前記基準値算出部で算出された前記周波数帯域ごとの前記基準値の総和を算出する総和算出部と、
前記周波数帯域ごとの前記基準値の最大値を検出する最大値検出部と、
前記基準値の最大値が、前記基準値の総和から前記基準値の最大値をひいた差分に既定の演算を施した結果である比較値より大きい場合に、該最大値である前記基準値が算出された前記入力信号の成分を含む前記周波数帯域に対応付けられた前記割当周波数を、前記入力信号に含まれる前記トーン信号の周波数として検出する周波数検出部と、
を備える。
【0009】
好ましくは、前記周波数検出部において、前記比較値は、前記差分に等しい。
【0010】
好ましくは、前記周波数検出部において、前記比較値は、前記差分に1より大きい係数を乗算した値である。
【0011】
好ましくは、前記基準値算出部は、
それぞれ、前記複数の割当周波数のいずれかを含む互いに異なる通過帯域を有し、1つの前記入力信号が分岐されて入力される複数のフィルタと、
それぞれの前記フィルタで濾波された通過信号に、既定の信号処理を行って、前記フィルタごとに該通過信号に応じた前記基準値を算出する通過信号演算部と、
を備え、
前記総和算出部は、前記通過信号演算部で算出された前記フィルタごとの前記基準値の総和を算出し、
前記最大値検出部は、前記フィルタごとの前記基準値の最大値を検出し、
前記周波数検出部は、前記基準値の最大値が、前記比較値より大きい場合に、該最大値である前記基準値が算出された前記通過信号を出力した前記フィルタの前記通過帯域に含まれる前記割当周波数を、前記入力信号に含まれる前記トーン信号の周波数として検出する。
【0012】
好ましくは、前記通過信号演算部は、前記基準値として前記通過信号の既定の区間における二乗平均を算出する。
【0013】
好ましくは、前記通過信号演算部は、前記基準値として前記通過信号の既定の区間における絶対値平均を算出する。
【0014】
好ましくは、前記基準値算出部は、前記入力信号に対して高速フーリエ変換を行い、前記周波数帯域ごとに、前記基準値として、前記入力信号のパワースペクトルを算出する。
【0015】
本発明の第2の観点に係るトーン検出方法は、
トーン信号に割り当てられる複数の割当周波数のいずれかに、それぞれが対応付けられる複数の周波数帯域を用い、前記周波数帯域ごとに、該周波数帯域に含まれる入力信号の成分に応じた基準値を算出する基準値算出ステップと、
前記基準値算出ステップにおいて算出された前記周波数帯域ごとの前記基準値の総和を算出する総和算出ステップと、
前記周波数帯域ごとの前記基準値の最大値を検出する最大値検出ステップと、
前記基準値の最大値が、前記基準値の総和から前記基準値の最大値をひいた差分に既定の演算を施した結果である比較値より大きい場合に、該最大値である前記基準値が算出された前記入力信号の成分を含む前記周波数帯域に対応付けられた前記割当周波数を、前記入力信号に含まれる前記トーン信号の周波数として検出する周波数検出ステップと、
を備える。
【0016】
好ましくは、前記周波数検出ステップにおいて、前記比較値は、前記差分に等しい。
【0017】
好ましくは、前記周波数検出ステップにおいて、前記比較値は、前記差分に1より大きい係数を乗算した値である。
【0018】
好ましくは、前記基準値算出ステップは、
前記周波数帯域ごとに、前記周波数帯域を通過帯域として前記入力信号を濾波するフィルタリングステップと、
前記フィルタリングステップで濾波された通過信号に、既定の信号処理を行って、前記周波数帯域ごとに該通過信号に応じた前記基準値を算出する通過信号演算ステップと、
を備える。
【0019】
好ましくは、前記通過信号演算ステップにおいて、前記基準値として前記通過信号の既定の区間における二乗平均を算出する。
【0020】
好ましくは、前記通過信号演算ステップにおいて、前記基準値として前記通過信号の既定の区間における絶対値平均を算出する。
【0021】
好ましくは、前記基準値算出ステップにおいて、前記入力信号に対して高速フーリエ変換を行い、前記周波数帯域ごとに、前記基準値として、前記入力信号のパワースペクトルを算出する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、周波数帯域に含まれる入力信号の成分に応じた基準値の最大値が、基準値の総和から基準値の最大値をひいた差分に既定の演算を施した結果より大きい場合に、該最大値である基準値が算出された入力信号の成分を含む周波数帯域に対応付けられた割当周波数を、入力信号に含まれるトーン信号の周波数として検出することで、トーン検出の精度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係るトーン検出装置の構成例を示すブロック図
図2】実施の形態に係る基準値算出部の構成例を示すブロック図
図3】実施の形態に係る周波数検出部の構成例を示すブロック図
図4】実施の形態に係る比較部への入力の例を示す図
図5】実施の形態に係る比較部への入力の例を示す図
図6】実施の形態におけるトーン信号の変化の例を示す図
図7】実施の形態に係るトーン検出装置が行うトーン検出処理の動作の一例を示すフローチャート
図8】実施の形態に係る基準値算出部の他の構成例を示すブロック図
図9】実施の形態に係る基準値算出部の他の構成例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係るトーン検出装置の構成例を示すブロック図である。トーン検出装置1は、入力信号に含まれるトーン信号の周波数を検出する。トーン検出装置1を備える無線機は、アンテナで受信した信号を復調して復調信号を生成し、A−D(Analogue-to-Digital)変換した復調信号に含まれるトーン信号の周波数を、トーン検出装置1を用いて検出する。すなわち、A−D変換された復調信号がトーン検出装置1に対する入力信号である。
【0026】
トーン信号の周波数は、例えば、ALE(Automatic Link Establishment)、CTCSS(Continuous Tone Code Squelch System)、2 Tone、5 Toneなどの規格に応じて定められた複数の割当周波数のいずれかである。トーン検出装置1は、入力信号に含まれるトーン信号の周波数が、割当周波数のいずれであるかを検出する。
【0027】
トーン検出装置1は、トーン信号に割り当てられる複数の割当周波数のいずれかに、それぞれが対応付けられる複数の周波数帯域を用い、周波数帯域ごとに、該周波数帯域に含まれる入力信号の成分に応じた基準値を算出する基準値算出部10を備える。トーン検出装置1は、基準値算出部10で算出された周波数帯域ごとの基準値の総和を算出する総和算出部13、周波数帯域ごとの基準値の最大値を検出する最大値検出部14、ならびに、基準値の総和および基準値の最大値に基づいて入力信号に含まれるトーン信号の周波数を検出する周波数検出部15をさらに備える。周波数検出部15は、基準値の最大値が、基準値の総和から基準値の最大値をひいた差分に既定の演算を施した結果である比較値より大きい場合に、該最大値である基準値が算出された入力信号の成分を含む周波数帯域に対応付けられた割当周波数を、入力信号に含まれるトーン信号の周波数として検出する。
【0028】
図1の例では、基準値算出部10は、1つの入力信号が分岐されて入力される複数のフィルタ11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11h、およびフィルタ11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11hのそれぞれで濾波された通過信号に、既定の信号処理を行って、該通過信号に応じた基準値を算出する通過信号演算部12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12hを備える。以下の説明において、フィルタ11は、フィルタ11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11hの内、任意のフィルタを意味し、通過信号演算部12は、通過信号演算部12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12hの内、任意の通過信号演算部を意味する。総和算出部13は、通過信号演算部12で算出されたフィルタ11ごとの基準値の総和を算出する。最大値検出部14は、フィルタ11ごとの基準値の最大値を検出する。
【0029】
トーン検出装置1の各部は、コントローラ20によって制御される。コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)21、RAM(Random Access Memory)23、およびROM(Read-Only Memory)24を備える。複雑化を避け、理解を容易にするために、コントローラ20から各部への信号線が省略されている。コントローラ20はトーン検出装置1の各部にI/O(Input/Output)22を介して接続しており、それらの処理の開始、終了、処理内容の制御を行う。ROM24は、コントローラ20がトーン検出装置1の動作を制御するための制御プログラムを格納する。コントローラ20は、制御プログラムに基づいて、トーン検出装置1を制御する。トーン検出装置1の各部について説明する。
【0030】
フィルタ11の通過帯域は互いに異なる。フィルタ11の通過帯域はそれぞれ、トーン信号に割り当てられる複数の割当周波数のいずれかを含む。ALEでは、トーン信号に割り当てられる割当周波数は、750Hz、1000Hz、1250Hz、1500Hz、1750Hz、2000Hz、2250Hz、2500Hzである。例えば、ALEに応じたトーン信号が用いられる場合、BPF(Band-Pass Filter:帯域通過フィルタ)であるフィルタ11の共振周波数がALEの規格に応じて定められる。例えば、フィルタ11aの共振周波数が750Hzであり、フィルタ11bの共振周波数が1000Hzであり、フィルタ11cの共振周波数が1250Hzであり、フィルタ11dの共振周波数が1500Hzであり、フィルタ11eの共振周波数が1750Hzであり、フィルタ11fの共振周波数が2000Hzであり、フィルタ11gの共振周波数が2250Hzであり、フィルタ11hの共振周波数が2500Hzである。
【0031】
本実施の形態においては、通過信号演算部12は、基準値として、フィルタ11で濾波された通過信号の既定の区間における二乗平均を算出する。図2は、実施の形態に係る基準値算出部の構成例を示すブロック図である。通過信号演算部12は、二乗平均演算部31およびLPF(Low-Pass Filter:低域通過フィルタ)32を備える。二乗平均演算部31は、フィルタ11から出力された通過信号の二乗平均を出力する。二乗平均演算部31が出力する、通過信号の二乗平均は、LPF32で濾波され、図1に示す総和算出部13および最大値検出部14に送られる。基準値として通過信号の二乗平均を用いることで、ノイズの影響を低減することが可能である。
【0032】
図1に示すように、通過信号演算部12のそれぞれが算出した基準値は総和算出部13および最大値検出部14に送られる。総和算出部13は、基準値の総和、すなわち、フィルタ11で濾波された通過信号の二乗平均の総和を算出する。総和算出部13は算出した基準値の総和を周波数検出部15に送る。最大値検出部14は、基準値の最大値、すなわち、フィルタ11で濾波された通過信号の二乗平均の最大値を検出する。最大値検出部14は、検出した基準値の最大値および該最大値である基準値が算出された通過信号を出力したフィルタ11についての情報を周波数検出部15に送る。周波数検出部15は、最大値検出部14で検出された基準値の最大値が、総和算出部13で算出された基準値の総和から基準値の最大値をひいた差分に既定の演算を施した結果である比較値より大きい場合に、該最大値である基準値が算出された通過信号を出力したフィルタ11の通過帯域に含まれる割当周波数を、入力信号に含まれるトーン信号の周波数として検出する。
【0033】
ALEでは、トーンの時間長は8ミリ秒と定められている。ALEで既定されるトーン信号を検出する場合、通過信号演算部12における既定の区間は、8ミリ秒以下の定められた時間である。総和算出部13および最大値検出部14は、通過信号演算部12における既定の区間に応じた一定の間隔で上述の演算処理を繰り返し行って、演算結果をメモリに記憶してもよい。この場合に、周波数検出部15が8ミリ秒ごとに、メモリに記憶された演算結果に基づいて、基準値の最大値と比較値とを比較し、トーン信号の周波数の検出を行ってもよい。
【0034】
図3は、実施の形態に係る周波数検出部の構成例を示すブロック図である。周波数検出部15は、総和算出部13が算出した基準値の総和から最大値検出部14が検出した基準値の最大値をひいた差分を出力する減算器41、減算器41が出力する差分に既定の演算を施して比較値を算出する調節部42ならびに、調節部42が算出した比較値および最大値検出部14が検出した基準値の最大値に基づいて入力信号に含まれるトーン信号の周波数を検出する比較部43を備える。比較部43は、最大値検出部14が検出した基準値の最大値が調節部42が算出した比較値より大きい場合に、該最大値である基準値が算出された通過信号を出力したフィルタ11の通過帯域に含まれる割当周波数を、入力信号に含まれるトーン信号の周波数として検出する。調節部42は、減算器41の出力に1を乗算して比較値を算出することで、比較値を減算器41が出力する差分に等しい値としてもよい。また調節部42は、減算器41が出力する差分に1より大きい係数を乗算して比較値を算出してもよい。
【0035】
本実施の形態においては、比較部43は、最大値検出部14が検出した基準値の最大値が調節部42の出力より大きい場合に、該最大値である基準値が算出された通過信号を出力したフィルタ11の共振周波数をトーン信号の周波数として検出する。例えば、通過信号演算部12dが算出した基準値が、基準値の最大値であり、かつ、基準値の総和から基準値の最大値をひいた差分に既定の演算を施した結果より大きい場合、周波数検出部15は、フィルタ11dの共振周波数を、入力信号に含まれるトーン信号の周波数として検出する。
【0036】
図4は、実施の形態に係る比較部への入力の例を示す図である。図4は、時間の経過に伴う、基準値の最大値および調節部42の出力の変化を示す図である。図4の例では、調節部42の出力は、減算器41の出力に等しい。図4において、横軸が時間を示し、縦軸が基準値の最大値および差分の値を示す。図4において、細い実線が、最大値検出部14が検出した基準値の最大値であり、太い実線が、減算器41が出力する差分である。図4は、トーン検出装置1に音声信号およびホワイトノイズが入力されている場合の、比較部43への入力の例を示す図である。ホワイトノイズの二乗平均は全ての周波数において同じである。ホワイトノイズの影響により、基準値の最大値は変動する。ホワイトノイズの影響が小さく、基準値の最大値が増大する場合、減算器41が出力する差分は減少する。またホワイトノイズの影響が大きく、基準値の最大値が減少する場合、減算器41が出力する差分は増大する。すなわち、基準値の最大値の変動に応じて、減算器41が出力する差分も変動する。
【0037】
比較部43は、基準値の最大値と、基準値の最大値の変動に応じて変動する減算器41の出力との比較によりトーン信号を検出する。そのため、本実施の形態に係るトーン検出装置1によるトーン信号の検出の精度は、通過信号の二乗平均と固定値である閾値とを比較してトーン信号を検出する場合よりも高い。また比較部43では、基準値の最大値が減算器41の出力を超えた回数または基準値の最大値が減算器41の出力より大きい状態が継続する時間を測定する必要がなく、トーン検出の構成を簡易化することが可能である。
【0038】
図5は、実施の形態に係る比較部への入力の例を示す図である。図の見方は図4と同様である。図5は、トーン検出装置1にホワイトノイズのみが入力されている場合の、比較部43への入力の例を示す図である。ホワイトノイズの変動に応じて、減算器41が出力する差分が変動し、減算器41の出力が基準値の最大値より大きい状態が維持されるため、ホワイトノイズのみが入力されている場合に誤ってトーン信号を検出することが抑制される。
【0039】
図6は、実施の形態におけるトーン信号の変化の例を示す図である。図6は、時間の経過にともなって、トーン信号の周波数が変化する場合の、通過信号演算部12が算出する基準値および調節部42の出力の例を示す図である。図4および図5の例と同様に、図6の例では、調節部42の出力は、減算器41の出力に等しい。図6において、横軸が時間を示し、縦軸が基準値および差分の値を示す。図6において、細い実線が、通過信号演算部12が算出する基準値であり、太い実線が、減算器41が出力する差分である。図6における細い実線の値の最大値が、最大値検出部14が検出する基準値の最大値である。入力信号に単一のトーン信号が含まれる場合と比べて、入力信号に複数のトーン信号が含まれる、すなわち歪率が高い場合に、減算器41の出力は増大する。減算器41の出力の増大により、入力信号に複数のトーン信号が含まれる場合に誤ってトーン信号を検出することが抑制される。
【0040】
図7は、実施の形態に係るトーン検出装置が行うトーン検出処理の動作の一例を示すフローチャートである。通過信号演算部12は、フィルタ11で濾波された通過信号に、既定の信号処理を行って、該通過信号に応じた基準値を算出する(ステップS11)。総和算出部13は、フィルタ11ごとに算出された基準値の総和を算出する(ステップS12)。最大値検出部14は、フィルタ11ごとに算出された基準値の最大値を検出する(ステップS13)。周波数検出部15の減算器41は、基準値の総和から基準値の最大値をひいた差分を算出し、周波数検出部15の調節部42は、差分に既定の演算を施して比較値を算出する(ステップS14)。周波数検出部15の比較部43は、基準値の最大値が比較値より大きい場合に(ステップS15;Y)、最大値である基準値が算出された通過信号を出力したフィルタ11の通過帯域に含まれる割当周波数を、入力信号に含まれるトーン信号の周波数として検出する(ステップS16)。周波数検出部15の比較部43は、基準値の最大値が比較値以下である場合は(ステップS15;N)、ステップS16のトーン信号の周波数検出は行わない。トーン検出装置1は、定められた間隔で上述の処理を繰り返し行う。
【0041】
図8は、実施の形態に係る基準値算出部の他の構成例を示すブロック図である。基準値の算出方法は上述の例に限られず、通過信号演算部12は、基準値として、通過信号の絶対値平均を算出してもよい。図8に示す通過信号演算部12は、通過信号の絶対値平均を算出する絶対値平均演算部33およびLPF32を備える。絶対値平均演算部33が出力する、該通過信号の絶対値平均は、LPF32で濾波され、図1に示す総和算出部13および最大値検出部14に送られる。総和算出部13、最大値検出部14、および周波数検出部15の処理は、上述の例と同様である。
【0042】
図9は、実施の形態に係る基準値算出部の他の構成例を示すブロック図である。図1に示す基準値算出部10をFFT(Fast Fourier Transformation:高速フーリエ変換)演算部16によって実現してもよい。FFT演算部16は、入力信号の高速フーリエ変換を行い、図1におけるフィルタ11で濾波された通過信号の既定の区間における二乗平均に相当する、定められた周波数帯域ごとに、基準値として、入力信号のパワースペクトルを算出する。FFT演算部16は、算出した入力信号のパワースペクトルを基準値として、総和算出部13および最大値検出部14に出力する。該周波数帯域は、割当周波数に応じて定められる。FFT演算部16の出力の数は、FFT演算におけるサンプリング点数に応じて定められる。図9の例では、FFT演算のサンプリング点数が16であり、FFT演算部16の出力は8点である。総和算出部13、最大値検出部14、および周波数検出部15の処理は、上述の例と同様である。
【0043】
以上説明したとおり、実施の形態に係るトーン検出装置1によれば、周波数帯域に含まれる入力信号の成分に応じた基準値の最大値が、基準値の総和から基準値の最大値をひいた差分に既定の演算を施した結果より大きい場合に、該最大値である基準値が算出された入力信号の成分を含む周波数帯域に対応付けられた割当周波数を、入力信号に含まれるトーン信号の周波数として検出することで、トーン検出の精度を向上させることが可能である。
【0044】
本発明の実施の形態は上述の実施の形態に限られない。上述の実施の形態における回路構成は一例である。
【符号の説明】
【0045】
1 トーン検出装置
10 基準値算出部
11,11a,11b,11c,11d,
11e,11f,11g,11h フィルタ
12,12a,12b,12c,12d,
12e,12f,12g,12h 通過信号演算部
13 総和算出部
14 最大値検出部
15 周波数検出部
16 FFT演算部
20 コントローラ
21 CPU
22 I/O
23 RAM
24 ROM
31 二乗平均演算部
32 LPF
33 絶対値平均演算部
41 減算器
42 調節部
43 比較部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9