(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算式又は前記テーブルは、前記車体姿勢の時間変化が大きくなるほどに前記変化開始時期が早まる傾向を、前記バンク角が小さいときほど強くするように設定されている、請求項1に記載の乗物。
前記制御部は、同じバンク角において、前記車幅方向一方側に前記車体をバンクさせる向きの前記車体姿勢の時間変化が大きくなるほど前記車体のバンク角に対する前記補助灯の光の明るさの変化率を大きくする、請求項5又は6に記載の乗物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車体をバンクさせてから照射範囲が変化するまでには遅れが生じる。そのため、車体を急速にバンクさせると運転者が照射範囲の変化に遅れを感じることがあり、その際の路面視認性を向上することが望まれる。しかし、照射範囲の変化の遅れを防ぐために変化開始時期を単に早めると、対向車両、周辺車両又は歩行者等(以下、単に「対向車両等」と呼ぶ)に眩惑を与えてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、乗物において、旋回時の路面視認性を向上しつつ、対向車両等に対する眩惑を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る乗物は、直立状態から車幅方向一方側に車体をバンクさせて旋回する乗物であって、前記車体の前方に設定されたランプ照射領域を照射するランプと、走行中における前記車体姿勢の時間変化を検出する姿勢時間変化検出部と、前記姿勢時間変化検出部によって検出される前記車体姿勢の時間変化に基づいて、前記ランプ照射領域を変化させるように前記ランプを制御する制御部と、を備える。
【0009】
前記構成によれば、走行中に検出される車体姿勢の時間変化に応じてランプの照射領域が変化することで、将来の車体姿勢にとって好適な照射領域を照射するようにランプを点灯させることができる。これにより、旋回走行中において、路面視認性を向上しつつ、対向車両等への眩惑を防ぐことができる。
【0010】
前記形態において、前記制御部は、前記車幅方向一方側に前記車体をバンクさせる向きの前記車体姿勢の時間変化が大きくなるほど前記ランプ照射領域の変化開始時期を早めてもよい。
【0011】
前記構成によれば、車幅方向一方側に車体をバンクさせる向きに車体姿勢の時間変化が大きくなるほど、即ち、車幅方向一方側に車体を急速にバンクさせるという車体姿勢の変化が検出された場合、ランプ照射領域の変化開始時期を早めることができる。
【0012】
前記形態において、前記車体のバンク角を検出するバンク角検出部を更に備え、前記制御部は、前記姿勢時間変化検出部によって検出される前記車体姿勢の時間変化と前記バンク角検出部によって検出される前記バンク角とに基づいて、前記ランプ照射領域の変化開始時期を決定する。
【0013】
前記構成によれば、制御部は、車体姿勢の時間変化に加えて、バンク角に基づいてランプ照射領域の変化開始時期を決定するため、運転者が車体をどれほどバンクさせて走行しているかを更に参照することによって、所定の車体姿勢においてランプが好適なランプ照射領域を照射するように当該照射領域の変化開始時期を精度良く決定することができる。
【0014】
前記形態において、前記制御部は、前記車幅方向一方側に前記車体をバンクさせる向きの前記車体姿勢の時間変化又は前記バンク角が上限値を超えると、前記ランプ照射領域の変化を制限してもよい。
【0015】
前記構成によれば、車幅方向一方側に車体をバンクさせる向きの車体姿勢の時間変化又はバンク角が上限値を超えると、ランプ照射領域の変化を制限することで、当該照射領域の変化が過剰となることを防ぐことができる。また、ランプ照射領域の変化開始時期が過度に早くなって瞬間的なグレアが発生し、対向車両等に対して眩惑を与えるのを防ぐことができる。
【0016】
前記形態において、前記制御部は、前記車幅方向一方側に前記車体をバンクさせる向きの前記車体姿勢の時間変化又は前記バンク角が下限値未満であると、前記ランプ照射領域の変化を制限してもよい。
【0017】
前記構成によれば、車幅方向一方側に車体をバンクさせる向きの車体姿勢の時間変化又はバンク角が下限値未満である場合、ランプ照射領域の変化を制限することで、車体姿勢の変化が小さい場合でのランプ照射領域の変化を防ぐことができる。また、ランプ照射領域の変化開始時期が過度に早くなってグレアが発生し、対向車両等に対して眩惑を与えるのを防ぐこともできる。
【0018】
前記形態において、前記ランプは、前照灯と、前記前照灯の車幅方向外側に配置される補助灯と、を有し、前記ランプ照射領域は、前記前照灯が照射する前照灯照射領域と、前記前照灯照射領域よりも前方に設定されて前記補助灯が照射する補助灯照射領域とを有し、前記制御部は、前記車体姿勢の時間変化に基づいて、前記補助灯を点灯させることで前記ランプ照射領域を変化させてもよい。
【0019】
前記構成によれば、車体姿勢の時間変化に応じて補助灯が点灯することで、将来の車体姿勢にとって好適な照射領域を補助灯に照射させることができる。これにより、旋回走行中において、路面視認性を向上しつつ、補助灯の点灯時期を単に早めることによる対向車両等への眩惑を防ぐことができる。
【0020】
前記形態において、前記制御部は、前記車体姿勢の時間変化に基づいて、前記補助灯の点灯開始時期を決定することで前記ランプ照射領域を変化させてもよい。
【0021】
前記構成によれば、車体姿勢の時間変化に応じて補助灯の点灯開始時期が決定されることで、将来の車体姿勢にとって好適なタイミングで補助灯に点灯開始指令を与えることができる。
【0022】
前記形態において、前記制御部は、前記補助灯の点灯開始時期から前記バンク角が大きくなるにつれて前記補助灯の光の明るさを徐々に大きくする初期制御を行ってもよい。
【0023】
前記構成によれば、補助灯が点灯開始時期から点灯するときに、バンク角に応じて徐々に光の明るさも大きくなることで、補助灯の光の明るさが急激に変化するのを防ぐことができ、補助灯が唐突に点灯することによって運転者が覚える違和感を抑制できる。 前記形態において、前記制御部は、前記車幅方向一方側に前記車体をバンクさせる向きの前記車体姿勢の時間変化が大きくなるほど前記車体のバンク角に対する前記補助灯の光の明るさの変化率を大きくしてもよい。
【0024】
前記構成によれば、車幅方向一方側に車体をバンクさせる向きの車体姿勢の時間変化が大きくなるほど、即ち、車幅方向一方側に車体を急速にバンクさせるという車体姿勢の変化が検出された場合、車体のバンク角に対する補助灯の光の明るさの変化率も大きくすることで、補助灯の点灯遅れによって運転者が覚える違和感を抑制しつつ、将来の車体姿勢に応じて補助灯の光の明るさを設定することができる。
【0025】
前記形態において、前記制御部は、前記車体が予め定められる設定傾斜状態であることが検出されると前記補助灯を所定の光の明るさで点灯させる設定点灯状態とし、前記車体が前記設定傾斜状態に達する前の先行傾斜状態であることが検出されると前記補助灯を前記設定点灯状態よりも小さい光の明るさで点灯させる先行点灯状態としてもよい。
【0026】
前記構成によれば、車体姿勢の時間変化に応じて補助灯の点灯開始時期を設定するだけでなく、予め定められる設定傾斜状態より小さい先行傾斜状態まで車体がバンクすると、補助灯の点灯動作において、設定点灯状態より光の明るさが小さい先行点灯状態を実現することによって、設定点灯状態となる前に進行方向に補助灯の点灯による補助灯照射領域を照射することができる。これにより、旋回走行中における路面視認性を更に向上しつつ、補助灯点灯時の違和感を更に軽減することができる。
【0027】
前記形態において、前記ランプは、前照灯であり、前記ランプ照射領域は、前記前照灯が照射する前照灯照射領域であり、前記制御部は、前記車体姿勢の時間変化に基づいて、前記車体がバンクする方向とは逆方向に前記前照灯照射領域を回転させることで前記ランプ照射領域を変化させてもよい。
【0028】
前記構成によれば、車体姿勢の時間変化に応じて前照灯照射領域を回転させることで、将来の車体姿勢にとって好適な照射領域を前照灯に照射させることができる。これにより、旋回走行中において、路面視認性を向上しつつ、前照灯照射領域の回転時期を単に早めることによる対向車両等への眩惑を抑制することができる。
【0029】
本発明の一形態に係る乗物は、直立状態から車幅方向一方側に車体をバンクさせて旋回する乗物であって、前記車体の前方に設定された前照灯照射領域を照射する前照灯と、前記前照灯の前記車幅方向一方側において前記前照灯照射領域よりも前方に設定された補助灯照射領域を照射する補助灯と、走行中における前記車体姿勢の時間変化を検出する姿勢時間変化検出部と、前記姿勢時間変化検出部によって検出される前記車体姿勢の時間変化に基づいて、前記補助灯の消灯開始時期を決定する制御部と、を備える。
【0030】
前記構成によれば、補助灯の消灯開始時期が走行中に検出される車体姿勢の時間変化に応じて決定されることで、将来の車体姿勢にとって好適なタイミングで補助灯に消灯開始指令を与えることができる。これにより、旋回走行中において、補助灯の消灯期間を過剰にすることなく対向車両等に対する眩惑を抑制できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、乗物において、旋回時の路面視認性を向上しつつ、対向車両等に対する眩惑を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。なお、同一の又は対応する要素には全ての図を通じて同一の符号を付して重複する詳細説明を省略する。
【0034】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る自動二輪車1の正面図である。
図1に示すように、自動二輪車1は、その車体10を覆うカウル2を備える。カウル2は、フロントカウル2aと、サイドカウル2bとを有する。フロントカウル2aは、前輪3と下端部にて回転可能に接続されているフロントフォーク4の上側を覆っている。サイドカウル2bは、フロントカウル2aより後方で、自動二輪車1の車体10を車幅方向外側から覆っている。
【0035】
フロントカウル2aの前部には、前照灯5と複数の補助灯6とを有するランプ20が設けられている。本実施形態では、前照灯5は、光源としてLED(Light Emitting Diode)光源を用いたヘッドランプである。なお、前照灯5の光源はLED光源に限られず、ハロゲンランプ又はディスチャージランプ等であってもよい。
【0036】
複数の補助灯6は、前照灯5の車幅方向両側に設けられている。本実施形態では、各補助灯6の光源はそれぞれ、前照灯5と同様にLED光源である。また、補助灯6の光源としては、ハロゲンランプ又はディスチャージランプを用いてもよい。なお、補助灯6が有する光源の個数に限定はなく、2個以上有していてもよい。
【0037】
車体10が直立状態から車幅方向一方側にバンクするように傾斜すると、所定のバンク角で補助灯6が点灯する。他方、車体10がバンクした状態から直立状態に向けて傾斜すると、所定のバンク角で補助灯6が消灯する。ここで、バンク角θは、前輪3と路面15との接地点Tから鉛直方向に延びる鉛直線Vと、車体10の車幅方向中央で車幅方向と直交して延びる車体10の中心線L1とがなす角度である。また、以下の説明では、車体10が直立状態から車幅方向一方側に傾斜する方向を正の方向とし、車体10がバンクした状態から直立状態に向けて傾斜する方向を負の方向とする。
【0038】
補助灯6は、前照灯5に対して車幅方向一方側(本実施形態では、運転者から見て左側)に第1の補助灯6a、第2の補助灯6b及び第3の補助灯6cを有し、前照灯5の車幅方向他方側(本実施形態では、運転者から見て右側)に第1の補助灯6d、第2の補助灯6e及び第3の補助灯6fを有する。各補助灯6a〜6fは、互いに同一の構造に形成されている。なお、各補助灯6a〜6fは互いに異なる構造であってもよい。また、前照灯5に対して車幅方向一方側に設けられる補助灯6の個数は3個に限らず、少なくとも2個以上であることが好ましいが、当該補助灯6の個数は1個であってもよい。
【0039】
補助灯6d〜6fは、車体の車幅方向中央で車幅方向と直交して延びる車体の中心線Lに対して補助灯6a〜6cと左右対称に配置されている。なお、補助灯6d〜6fは、中心線Lに対して補助灯6a〜6cと左右対称に配置されていなくてもよい。
【0040】
ここで、第1の補助灯6a,6dは、上位補助灯である。また、第2の補助灯6b,6eは、第1の補助灯6a,6dより下方に位置する中位補助灯である。更に、第3の補助灯6c,6fは、第2の補助灯6b,6eよりも下方に位置する下位補助灯である。なお、
図1に示す第1の補助灯6a,6d、第2の補助灯6b,6e及び第3の補助灯6c,6fの配置関係は一例であり、当該配置関係に限られない。また、以下の説明では、第1の補助灯6a,6d、第2の補助灯6b,6e、第3の補助灯6c,6fを区別する必要が無い場合は補助灯6a〜6fを補助灯6と称する。
【0041】
補助灯6は走行中に発生する自動二輪車1(乗物)の現象に応じて、その点消灯動作が制御される。本実施形態では、補助灯6の点消灯動作は車体10の傾斜状態に応じて制御される。補助灯6の点消灯動作を制御するとは、後述する点灯制御部8bが補助灯6を点灯又は消灯させることに加えて、点灯時における補助灯6の光の明るさを制御することである。
【0042】
このような前照灯5及び補助灯6によって構成されたランプ20は、車体10の前方の路面15に設定されたランプ照射領域40を照射する。ランプ照射領域40は、前照灯5が照射する前照灯照射領域50と、補助灯6が照射する補助灯照射領域60と、を有する(
図2参照)。
【0043】
本稿では、補助灯照射領域60を照射する補助灯6の光の明るさを光度(cd、カンデラ)によって表す。なお、補助灯6の光の明るさは光度によって表すことに限られず、照度(lx、ルクス)又は光束(lm、ルーメン)によって表してもよい。ここで、補助灯照射領域60は、当該照射領域60の配光分布における最大光度の95%以上100%以下の光度を有する最大光度部(図示せず)を備える。補助灯6の光度は、300cd以上の値に設定されていることが好ましく、具体的には、補助灯照射領域60の最大光度部を照射する光度が300cd以上で、前照灯5の最大光度よりも小さい値に設定されている。補助灯6の光度は、300cd以上の値に設定されていることが好ましい。
【0044】
以下では、車体10が車幅方向一方側(本実施形態では、運転者から見て左側)に車体10をバンクさせた場合の補助灯6a〜6cの点灯動作の制御について説明する。本実施形態では、補助灯6d〜6fの点灯動作は補助灯6a〜6cの点灯動作と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
図2は、車体10が車幅方向一方側にバンクした状態で自動二輪車1が旋回走行中における前照灯5及び補助灯6の各照射領域50,60を表した模式図である。
図2に示すように、車体10が車幅方向一方側にバンクした状態で、自動二輪車1がカーブ又は交差点等を旋回走行する場合、前照灯5及び補助灯6が共に点灯し、前照灯5の照射領域である前照灯照射領域50と補助灯6の照射領域である補助灯照射領域60が照射される。前照灯照射領域50は、ハイビーム照射領域とロービーム照射領域とを有し、運転者の操作によってハイビーム照射領域とロービーム照射領域とが切り替えられる。以下では、ロービーム照射領域を前照灯照射領域50として説明する。
【0046】
前照灯5は、点灯時にカットオフライン50aを形成している。カットオフライン50aは、対向車両等に対して眩惑を与えるのを防止するために前照灯5の照射領域50のうち上方向に照射される部分をカットするライン(明暗境界線)である。車体10が直立状態のとき、前照灯5のカットオフライン50aは車幅方向と平行(水平方向)に直線状に延びている。車体10が車幅方向一方側にバンクした状態で走行しているとき、当該カットオフライン50aは車幅方向一方側(運転者から見て左下がり)に傾斜している。
【0047】
また、車幅方向一方側において、補助灯6が照射する補助灯照射領域60は、前照灯照射領域50よりも車体10の前方の路面15に設定されている。また、補助灯照射領域60の大きさは、前照灯照射領域50の大きさよりも小さい。各補助灯6a〜6cは、予め定められる設定バンク角において、補助灯照射領域61〜63を照射する。このように、各補助灯6a〜6cが順に点灯することでランプ照射領域40が変化していく。ここで、車体10が設定バンク角までバンクした状態を設定傾斜状態と呼ぶ。車体10が設定傾斜状態であることが検出されると、補助灯6は設定点灯状態で点灯する。即ち、設定バンク角は、補助灯6が設定点灯状態となる基準のバンク角であり、車体10が設定バンク角までバンクした時点が、補助灯6が設定点灯状態となる開始時期(以下、点灯開始時期と呼ぶ)である。
【0048】
設定バンク角は、各補助灯6a〜6c毎に予め定められており、第1の設定バンク角θ10と、第2の設定バンク角θ20と、第3の設定バンク角θ30とを有する。第2の設定バンク角θ20は、第1の設定バンク角θ10よりも大きい値に設定され、第3の設定バンク角θ30は、第2の設定バンク角θ20よりも大きい値に設定されている。各補助灯6a~6cはそれぞれ、対応する設定バンク角に応じて予め水平面に対して傾けて車体10に取り付けられている。各設定バンク角の値については後述する。
図2は、第3の設定バンク角θ30まで車体10がバンクした状態で自動二輪車1が走行している場合であり、補助灯6a〜6cが全て点灯している。
【0049】
第2の補助灯6bが照射する第2の補助灯照射領域62は、最初に点灯する第1の補助灯6aが照射する第1の補助灯照射領域61よりも車体10の前方に設定されている。また、第3の補助灯6cが照射する第3の補助灯照射領域63は、第2の補助灯照射領域62よりも車体10の前方に設定されている。このように、各補助灯6a〜6cが補助灯照射領域61〜63を照射することによって、前照灯5(直前に点灯していた別の補助灯がある場合は、前照灯5及び当該別の補助灯)によって照射されなくなった進行方向前方の領域を補完して、進行方向前方の路面視認性を向上させる。なお、補助灯照射領域61〜63には、前照灯照射領域50と同様にカットオフラインが形成されてもよい。
【0050】
次に、補助灯6の点灯動作を制御する構成について説明する。
図3は、補助灯6の点灯動作を制御するための構成を説明するためのブロック図である。
図3に示すように、自動二輪車1は、センサ7と、制御装置8と、調光器9とを備える。センサ7は、車体10の傾斜状態を検出する傾斜状態検出部である。具体的に、センサ7は、車体10の傾斜状態として、車体10の前後方向に延びる軸線(ロール軸)周りのバンク角速度を検出する。なお、傾斜状態検出部としての機能を有するセンサ7は、バンク角又はバンク角加速度を検出するセンサであってもよい。センサ7は、例えば、ジャイロセンサである。
【0051】
また、センサ7は、走行中における車体姿勢の時間変化を検出する姿勢時間変化検出部として機能する。ここで、車体姿勢の時間変化とは、バンク角の単位時間当たりの変化量である。即ち、車体姿勢の時間変化は、バンク角の角度変化のn回時間微分(nは、自然数)である。本実施形態では、車体姿勢の時間変化は、バンク角速度である。なお、車体姿勢の時間変化は、バンク角加速度であってもよい。センサ7は、制御装置8と電気的に接続されている。なお、センサ7は、制御装置8に備えられていてもよい。
【0052】
制御装置8は、バンク角算出部8aと、点灯制御部8bと、バンク角速度算出部8cと、補正量算出部8dと、補正量リミッタ部8eと、補正量決定部8fとを有する。バンク角算出部8aは、センサ7から出力されるバンク角速度を積分することで、バンク角θを算出する。このように、本実施形態では、センサ7が出力するバンク角速度をバンク角算出部8aにおいて積分することで車体10のバンク角θを算出しているため、車体10のバンク角θを検出するバンク角検出部は、センサ7及びバンク角算出部8aによって構成されている。算出されたバンク角θの値は点灯制御部8bに入力される。
【0053】
点灯制御部8bは、バンク角θの値に応じて、補助灯6の点灯動作を制御する制御信号を調光器9に出力する。例えば、バンク角θが設定バンク角の値となると、点灯制御部8bは調光器9に対して点灯開始の制御信号を出力する。調光器9は、点灯制御部8bの出力する制御信号に基づき単位時間あたりに増減する補助灯6の光度を調整する。具体的には、調光器9は補助灯6に供給する電流を制御することによって光度を調整する。なお、調光器9は、補助灯6に対してデューティー比(オン/オフ割合)を変えることで光度を調整する制御を行ってもよい。また、調光器9は、制御装置8又は補助灯6に備えられていてもよい。
【0054】
このような補助灯6の点灯動作の制御を行う構成では、補助灯6が所定の光度で点灯するまでの応答時間(遅れ時間)がかかる。ここで、応答時間は、一例として、ジャイロセンサ7がバンク角算出部8aに検出信号を出力するまでの遅れ時間、バンク角算出部8aがジャイロセンサ7の出力する信号を読み出す時間、点灯制御部8bが調光器9に制御信号を出力するまでの時間、調光器9によって補助灯6の光源が所定の光度で発光する時間等を合算したものである。
【0055】
例えば、車体10を車幅方向一方側に急速にバンクさせて旋回走行すると、点灯遅れ時間の影響で運転者は補助灯6の点灯遅れを感じる。即ち、車体10を急速にバンクさせると、ランプ照射領域40の変化開始時期が遅れる。そこで、本実施形態では、車体10を車幅方向一方側にバンクさせる際のバンク角速度に応じて、補助灯6の点灯動作における設定バンク角を補正する。即ち、バンク角速度に応じて、補助灯6の点灯開始時期を変化させる。ここで、補助灯6の点灯動作において、設定バンク角を補正するとは、バンク角速度に応じて好適なタイミングで補助灯6を点灯させることであり、検出されたバンク角速度によっては補正量がゼロである場合を含むものとする。
【0056】
本実施形態では、補助灯6の点灯遅れを解消するために、補助灯6の点灯開始時期を早めるように設定バンク角が補正されることにより、補助灯6の点灯状態が変化する。即ち、補正後の設定バンク角(以下、補正バンク角と呼ぶ)は、補正前の設定バンク角よりも値が小さい。具体的に、補正バンク角は、以下の数式1に基づいて決定される。
補正バンク角=設定バンク角−補正量 ・・・ (数式1)
【0057】
上述の数式1に基づく補正バンク角の算出は、点灯制御部8bにおいて行われる。点灯制御部8bは、数式1に基づく補正バンク角を算出し、当該補正バンク角で補助灯6が点灯を開始するように制御信号を出力する。このように、点灯制御部8bは、車体姿勢の時間変化に基づいて、ランプ照射領域40を変化させるように補助灯6を制御する制御部としての機能を有している。具体的には、点灯制御部8bは、バンク角速度に基づいて、補助灯6の点灯開始時期を決定することでランプ照射領域40を変化させる。
【0058】
次に、制御装置8において、補正量が決定される構成について説明する。バンク角速度算出部8cは、ジャイロセンサ7から出力されるバンク角速度に関する検出信号に基づき、車体10が直立状態から設定傾斜状態に至るまでのバンク角速度を算出する。ここで、車体10は正の方向に傾斜しているため、ジャイロセンサ7から出力されるバンク角速度の値も正の値である。バンク角速度算出部8cは、算出したバンク角速度を補正量算出部8dに出力する。
【0059】
また、バンク角速度算出部8cに加えてバンク角算出部8aが、算出したバンク角を補正量算出部8dに出力している。例えば、車体10を直立状態からバンクさせる場合、バンク角が小さいほど、その後に運転者は車幅方向一方側に車体10を急速にバンクさせる可能性がある。そのため、本実施形態では、バンク角の値も参照し、設定バンク角の補正量が決定される。
【0060】
補正量算出部8dは、バンク角算出部8aが算出したバンク角、バンク角速度算出部8cが算出したバンク角速度及び補助灯6が点灯するまでの上記応答時間に基づいて、暫定補正量を算出する。具体的には、補正量算出部8dは、以下の数式2に基づき、バンク角速度に係数を乗じたものを暫定補正量として算出する。ここで、係数は、一例として、現在のバンク角の値に応じて設定される所定値に補助灯6が点灯するまでの応答時間を乗じた値である。応答時間は、予め定められた所定時間が補正量算出部8dにおいて記憶されている。
暫定補正量=バンク角速度×係数 ・・・ (数式2)
【0061】
このように、設定バンク角の補正量は車体姿勢の時間変化(バンク角速度)及びバンク角を変数として規定された演算式から算出される。車体姿勢の時間変化が第1時間変化で、かつ、バンク角が第1角度(例えば、10°)であるときの補正量の絶対値は、車体姿勢の時間変化が第1時間変化よりも小さい第2時間変化で、かつ、バンク角が第1角度よりも大きい第2角度(例えば、30°)であるときの補正量の絶対値よりも大きい値となるように決定される。よって、バンク角速度の絶対値が車体10を車幅方向一方側にバンクさせる向きに大きく、かつ、バンク角の絶対値が小さいほど補正量も大きくなり、点灯制御部8bは補助灯6の点灯開始時期を早めるような制御信号を調光器9に出力する。
【0062】
なお、本実施形態では、補正量算出部8dにて暫定補正量を演算式により算出する構成について説明したが、この構成に限られず、予めバンク角速度(及びバンク角)と補正量との対応関係を記憶したテーブルを用意しておき、当該テーブルから補正量を読み出すことで暫定補正量を算出してもよい。
【0063】
補正量リミッタ部8eは、設定バンク角の補正量を所定の下限値以上で、かつ、所定の上限値以下に制限する。本実施形態では、車幅方向一方側に車体10をバンクさせる向きの補正量の上限値は3°に設定され、下限値は0°に設定されている。なお、補正量リミッタ部8eは、補正量を下限値以上で、かつ、上限値以下に制限する構成に限らず、補正バンク角を下限値以上で、かつ、上限値以下に制限する構成であってもよい。
【0064】
そして、補正量決定部8fは、補正量算出部8dによって算出された暫定補正量と補正量リミッタ部8eの上限値及び下限値とを比較し、適切な補正量を決定する。具体的には、暫定補正量が下限値未満であると判定されると、補正量をゼロとして決定する。また、補正量決定部8fは、暫定補正量が上限値を超えているか否かを判定し、暫定補正量又は上限値のいずれかを設定バンク角の補正量として決定する。補正量決定部8fは、決定した補正量の絶対値を点灯制御部8bに出力する。
【0065】
図4は、車体10のバンク角と補助灯6の光の明るさ(光度)との関係を示した図である。横軸は、バンク角である。バンク角0°は車体10が直立状態であることを示している。また、縦軸は、車体10が所定のバンク状態の際に点灯する補助灯6の光度の最大光度に対する割合(パーセント)である。
【0066】
本実施形態では、例として、第1の設定バンク角θ10は10°、第2の設定バンク角θ20は20°、第3の設定バンク角θ30は30°に設定されている。補助灯6の設定点灯状態において、点灯制御部8bは、点灯開始時期(設定バンク角)からバンク角が大きくなるにつれて、補助灯6の光の明るさを徐々に大きくする初期制御を行う。
【0067】
以下では、補助灯6の設定点灯状態について、第1の補助灯6aにおける第1の設定点灯状態L1(
図4に示す実線部分)を例に説明する。第1の設定バンク角θ10が算出されるまで車体10がバンクすると、第1の補助灯6aは点灯を開始する。その後、車体10が第1の点灯完了バンク角θ11までバンクすると、第1の補助灯6aの光の明るさは100%となる。
【0068】
ここで、点灯完了バンク角とは、補助灯6の光度が設定点灯状態の最大光度未満から最大光度に達した時点のバンク角のことである。第1の補助灯6aは、車体10が第1の点灯完了バンク角θ11までバンクしたときに最大光度で点灯する。本実施形態では、例として、第1の点灯完了バンク角θ11は13°であり、バンク角が10°〜13°の範囲では、バンク角に比例して光の明るさが徐々に増加する。なお、バンク角に対する第1の補助灯6aの光の明るさ(光度)の変化率は変化させてもよい。また、本実施形態では、例として、第2の点灯完了バンク角θ21は23°であり、第3の点灯完了バンク角θ31は33°である。点灯完了バンク角以降のバンク角では、補助灯6は最大光度で点灯し続ける。
【0069】
図5は、補助灯6の点灯動作において、設定バンク角を補正する制御のフローチャートである。以下では、
図4及び5を参照しながら、設定バンク角を補正する手順と、設定バンク角を補正した後の補助灯6の点灯動作について説明する。本実施形態では、第1の設定バンク角から順に第3の設定バンク角まで補正される。まず、運転者によって、前照灯スイッチがONされたか否か判定される(ステップS1)。前照灯スイッチは前照灯5を点灯させるスイッチであり、自動二輪車1における前照灯スイッチは、例えば、車体10に設けられるイグニッションスイッチである。イグニッションスイッチがONと判定されると、前照灯5が点灯する状態となる。
【0070】
次に、自動二輪車1がカーブ又は交差点等を旋回走行し、車体10が車幅方向一方側にバンクすると、バンク角速度算出部8cによってバンク角速度が算出されると共に、バンク角算出部8aによってバンク角が算出される(ステップS2)。そして、補正量算出部8dにおいて、上述の数式2に基づき、暫定補正量が算出される(ステップS3)。ステップS3において、暫定補正量が算出されると、補正量決定部8fによって暫定補正量が下限値未満であるか否かが判定される(ステップS4)。
【0071】
ステップS4において、暫定補正量が下限値未満であると判定されると、補正量決定部8fは第1の設定バンク角θ10の補正量を下限値である0°として決定する(ステップS5)。他方、ステップS4において、暫定補正量が下限値を超えていると判定されると、当該暫定補正量が上限値を超えているか否かが判定される(ステップS6)。ステップS6において、暫定補正量が上限値を超えていると判定されると、補正量決定部8fは第1の設定バンク角θ10の補正量を上限値である3°として決定する(ステップS7)。他方、ステップS6において、暫定補正量が上限値を超えていないと判定されると、補正量決定部8fは当該暫定補正量を補正量として決定する(ステップS8)。
【0072】
そして、ステップS5,7及び8において決定された補正量に基づき、点灯制御部8bが第1の設定バンク角θ10を補正して補正バンク角θ10′を算出し、当該補正バンク角θ10′にて第1の補助灯6aが点灯するように制御する(ステップS9)。なお、
図5では省略されているが、点灯完了バンク角も同様に補正される。具体的には、第1の補助灯6aの点灯動作において、第1の設定バンク角θ10の値が小さくなるように補正される(
図4において矢印で示す方向)。本実施形態では、第1の補助灯6aの点灯動作において、第1の設定バンク角θ10の補正量が上限値である3°として決定されたものとする。この場合、第1の設定バンク角θ10は3°だけ小さくなった7°に補正されて(
図4に示す二点鎖線)、第1の補助灯6aの設定点灯状態L1の開始時期が早まる。
【0073】
その後、ステップS2に戻り、第3の設定バンク角θ30が補正されるまでステップS2〜ステップS9の手順を繰り返す。但し、
図5に示すフローチャートの実行中に、運転者がイグニッションスイッチをOFFにすると、設定バンク角を補正する制御は終了する。
【0074】
以上のように構成された自動二輪車1は、以下の効果を奏する。
【0075】
補助灯6を有するランプ20を備えた自動二輪車1において、補助灯6の点灯開始時期がバンク角速度に応じて決定されることで、将来の車体姿勢にとって好適なタイミングで点灯した補助灯6によってランプ照射領域40を変化させることができる。これにより、旋回走行中において、補助灯6の点灯期間を過剰にすることなく路面視認性を向上できる。
【0076】
また、車幅方向一方側に車体10をバンクさせる向きのバンク角速度の値が大きくなるほど、即ち、車体10を急速にバンクさせるような車体姿勢が検出されると、設定バンク角の補正量を大きくして、補助灯6の点灯開始時期を早める。これにより、補助灯6の点灯遅れを解消することができる。補助灯6の点灯遅れを解消することによって、補正前の設定バンク角において予定の補助灯照射領域60を照射することができなくなることを防ぎ、進行方向(旋回方向)のできるだけ遠方に視線を向ける運転者に対して、旋回時の路面視認性を高めることができる。
【0077】
また、点灯制御部8bは、バンク角速度とバンク角とに基づいて補助灯6の点灯開始時期を決定することにより、車体10が所定のバンク状態である場合において、補助灯6が好適な点灯状態で点灯するように点灯開始時期を精度良く設定することができる。即ち、バンク角速度に加えてバンク角によって補正量を決定するため、運転者が車体10をどれほどバンクさせて走行しているかを参照することにより予測されるバンク角速度も反映させた、補正量を決定することができる。
【0078】
バンク角速度が正の値である場合、即ち、車体10をバンクさせる場合、バンク角が小さいほど、運転者はその後に車体を急速にバンクさせる可能性がある。そのため、バンク角の値が第2角度(例えば、30°)よりも小さい第1角度(例えば、10°)まで車体10がバンクすると、車体10をバンクさせる向きにバンク角速度が大きくなることを反映させた補正量を決定し、設定バンク角の値を小さくすることで補助灯6が点灯するタイミングを早めることができる。
【0079】
また、設定バンク角を補正する補正量が上限値を超えた場合、補助灯6の点灯状態の変化が制限することで、当該点灯状態の変化が過剰となることを防ぐことができる。また、補助灯6の点灯状態の変化を制限することで、補助灯6の点灯開始時期が過度に早くなることで瞬間的なグレアが発生し、対向車両等に対して眩惑を与えるのを防ぐことができる。本実施形態では、補正量決定部8fにおいて、設定バンク角の補正量が、補正量算出部8dによって算出される暫定補正量又は補正量リミッタ部8eが制限する上限値のいずれかに決定される。これにより、上限値を超えた補正量によって設定バンク角が補正されるのを防ぐことができる。
【0080】
また、設定バンク角を補正する補正量が下限値未満である場合、補助灯6の点灯状態の制限することで、車体10を徐々にバンクさせ、車体姿勢の変化が小さい場合での補助灯の点灯状態の変化を防ぐことができる。また、バンク角速度又はバンク角が小さい場合、補助灯6の点灯開始時期が過度に早くなることでグレアが発生し、対向車両等に対して眩惑を与えるのを防ぐこともできる。本実施形態では、補正量決定部8fにおいて、暫定補正量が下限値未満であると判定されると、補正量をゼロに決定し、設定バンク角を補正しないことで補助灯6の点灯状態が変化するのを防ぐことができる。
【0081】
また、点灯制御部8bは、補助灯6の点灯開始時期からバンク角が大きくなるにつれて補助灯6の光度を徐々に大きくする初期制御を行う。これにより、補助灯6が点灯開始時期から点灯するときに、バンク角に応じて徐々に光の明るさも大きくなることで、補助灯6の光の明るさが急激に変化するのを防ぐことができ、補助灯6の点灯に対して運転者が覚える違和感を抑制しつつ、点灯開始時期を仮に早め過ぎた場合に光の明るさを徐々に大きくすることで対向車両等に対する眩惑を抑制することができる。
【0082】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る自動二輪車は、第1実施形態に係る補助灯6の点灯動作の制御を一部変形したものである。以下では、第2実施形態に係る補助灯6の点灯動作の制御について、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0083】
以下では、第1の補助灯6aにおいて、第2実施形態に係る点灯動作の制御を行った場合について説明する。
図6(a)は、第2実施形態に係る第1の補助灯6aの点灯動作の制御を行った場合の
図4相当の図である。
図6(a)に示すように、第2実施形態では、バンク角速度に応じてバンク角に対する第1の補助灯6aの光度の変化率を変化させている。具体的には、車幅方向一方側に車体10をバンクさせる傾向を有するバンク角速度が大きくなるほど、即ち、車幅方向一方側に車体10を急速にバンクさせるという車体姿勢が検出されると、バンク角に対する第1の補助灯6aの光度の変化率が大きくなるように変更し(
図6(a)に示す2点鎖線)、第1の補助灯6aの光度が早期に最大光度に達するようにする。
【0084】
図6(b)は、第2実施形態の変形例を示す
図4相当の図である。
図6(b)に示すように、第1の設定バンク角θ10が上限値である3°だけ小さくなるように補正された後(
図6(b)に示す破線)、バンク角に対する第1の補助灯6aの光度の変化率が大きくなり、第1の補助灯6aの光度が最大光度に達する点灯完了バンク角θ11が小さくなるように変更されてもよい(
図6(b)に示す二点鎖線)。バンク角に対する補助灯6の光度の変化率、即ち、補助灯6の点灯速度は、点灯制御部8bがバンク角速度に応じて調光器9を制御することによって、変更可能となる。
【0085】
このような第2実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。更に、車幅方向一方側に車体10をバンクさせる向きのバンク角速度が大きくなるほど、バンク角に対する補助灯6の光の明るさの変化率が大きくなるように変化する。これにより、車幅方向一方側に車体10を急速にバンクさせることが検出されると、バンク角に対する補助灯6の光の明るさの変化率も大きくすることで、補助灯6の点灯遅れによって運転者が覚える違和感を抑制しつつ、バンク角速度に応じて補助灯6の光の明るさを設定することができる。
【0086】
具体的には、バンク角速度が大きくなるほど、補助灯6の光度の点灯速度が大きくなるように点灯制御部8bが調光器9を制御することによって、補助灯6が最大光度に達するタイミングを変化することができる。これにより、バンク角速度に応じて、設定バンク角を補正するだけでなく、バンク角に対する補助灯6の光度の変化率も変更することで、補助灯6が点灯する好適なタイミングを設定しやすくなる。
【0087】
特に、算出されたバンク加速度の値に基づき、補正量決定部8fによって決定された補正量が上限値であった場合、車体10のバンク角に対する補助灯6の光度の変化率をバンク角速度に応じて変更することで、補助灯6が最大光度で点灯するタイミングを更に早めることができる。これにより、車体10を急速にバンクさせるほど、できるだけ進行方向前方に視線を向けようとする運転者に対して光度が大きい補助灯照射領域60を照射でき、路面視認性を更に向上することができる。
【0088】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る自動二輪車は、第1実施形態に係る補助灯6の点灯動作の制御を一部変形したものである。以下では、第3実施形態に係る補助灯6の点灯動作の制御について、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0089】
補助灯6が設定バンク角まで車体10がバンクしたときに点灯を開始する構成である場合、当該設定バンク角において補助灯6が点灯するまでは進行方向に光が照射されない。また、設定バンク角において補助灯6が唐突に点灯すると、運転者が違和感を覚える。
【0090】
本実施形態では、補助灯6の点灯状態は、バンク角の値に応じて光度が互いに異なる先行点灯状態と設定点灯状態とを有する。先行点灯状態は、車体10が設定傾斜状態に達する前の先行傾斜状態であることが検出されると、設定点灯状態よりも低い光度で補助灯6が点灯する状態のことである。また、先行傾斜状態は、設定バンク角よりも値の小さい先行バンク角が算出されるまで車体10がバンクした状態のことである。即ち、本実施形態では、設定傾斜状態に達する前の先行傾斜状態において、補助灯6を先行点灯状態で点灯させる。
【0091】
図7は、第3実施形態に係る補助灯6の点灯動作の制御を行った場合の
図4相当の図である。
図7に示すように、各補助灯6a〜6cの点灯動作において、先行バンク角が算出されるまで車体10が傾斜したことが検出されると、当該各補助灯6a〜6cは先行点灯状態P1〜P3で点灯する。先行バンク角は、補助灯6が先行点灯状態となる基準のバンク角である。先行バンク角は、設定バンク角と同様に各補助灯6a〜6cごとに定められており、第1の先行バンク角θ12と、第2の先行バンク角θ22と、第3の先行バンク角θ32とを有する。ここで、補助灯6のうち第1の補助灯6aが最初に点灯するが、対向車両等への眩惑の発生を防止するために、第1の先行バンク角θ12の値は5°以上に設定されることが好ましい。
【0092】
更に、各補助灯6a〜6cは、先行傾斜状態を脱した傾斜状態(以下、消灯傾斜状態と呼ぶ)が検出されると消灯する。ここで、消灯傾斜状態とは、消灯バンク角が算出されるまで車体10が傾斜した状態のことである。消灯バンク角は、補助灯6が消灯する基準となるバンク角である。消灯バンク角も各補助灯6a〜6cごとに定められており、第1の消灯バンク角θ13と、第2の消灯バンク角θ23と、第3の消灯バンク角θ33とを有する。ここで、消灯バンク角よりも先行バンク角が大きい値に設定されている。即ち、先行傾斜状態を脱したと検出されて補助灯6を消灯させる際の傾斜状態よりも先行傾斜状態に達したと検出されて補助灯6を検出させる際の傾斜状態が大きい。
【0093】
本実施形態の先行点灯状態について、第1の補助灯6aにおける第1の先行点灯状態P1を例に説明する。第1の先行点灯状態P1では、第1の先行バンク(6°)が算出されるまで車体10がバンクした場合に第1の補助灯6aが点灯する。先行点灯状態P1における第1の補助灯6aの光度は、300cd以上の値に設定されている。なお、
図7に示す先行点灯状態P1における補助灯6の光度は一例であり、上記範囲の値であれば
図7に示す光度よりも小さくてもよい。
【0094】
第1の先行バンク角において第1の補助灯6aが点灯した後、第1の設定バンク角θ10が算出されるまで(車体10が設定傾斜状態となるまで)の間、その光度は一定となっている。また、先行点灯状態P1では、バンク角が第1の消灯バンク角(5°)が算出されるまで車体10がバンクすると消灯する。このように、先行点灯状態P1では、補助灯6を一定の光度で点灯させるため、バンク角に比例して補助灯6の光度を変化させる制御を行わなくてもよい。
【0095】
また、本実施形態では、第1の設定点灯状態L1と第2の設定点灯状態L2との間で、第2の補助灯6bが第2の先行点灯状態P2で点灯し、第2の設定点灯状態L2と第3の設定点灯状態L3との間で第3の補助灯6cが第3の先行点灯状態P3で点灯している。
【0096】
このような第3実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。更に、予め定められる設定傾斜状態に達する前の先行傾斜状態まで車体10がバンクすると、補助灯6の点灯動作において、設定点灯状態よりも光の明るさが小さい先行点灯状態を実現することによって、補助灯6が設定点灯状態となる前に進行方向に補助灯6の点灯による補助灯照射領域60を照射することができる。これにより、旋回走行中における路面視認性を更に向上しつつ、補助灯点灯時の違和感を更に軽減することができる。
【0097】
更に、補助灯6は、先行点灯状態で点灯させた後に設定点灯状態へと移行するので、補助灯6の光の明るさの変化を緩和することができ、補助灯6の点灯に対するシームレス感を向上させ、補助灯6が設定点灯状態で唐突に点灯して運転者が違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0098】
また、応答時間の影響で補助灯6が点灯するまでに時間がかかる場合でも、補助灯6を設定点灯状態よりも前に先行点灯状態とすることで早期に補助灯6を点灯させることが可能となる。
【0099】
また、自動二輪車1は、設定点灯状態となる設定バンク角が互いに異なる複数の補助灯6a〜6cを備えている。本実施形態では、第1の設定点灯状態L1と第2の設定点灯状態L2との間で、第2の補助灯6bを第2の先行点灯状態P2で点灯させると共に、第2の設定点灯状態L2と第3の設定点灯状態L3との間で、第3の補助灯6cを第3の先行点灯状態で点灯させることで、補助灯6a〜6cが各設定傾斜状態のみで点灯し、段階的に点灯するのを防ぎ、補助灯の点灯のシームレス感を改良し、運転者が違和感を覚えるのを抑制することができる。
【0100】
また、先行傾斜状態に達して補助灯6を点灯させる状態が、先行傾斜状態を脱して補助灯6を消灯させる状態よりも大きい。即ち、補助灯6を点灯させる際の車体10のバンク角は、補助灯6を消灯させる際のバンク角よりも大きい。これにより、補助灯6が点灯する状態と、補助灯6が消灯する状態とが異なる傾斜状態に設定されることで、補助灯6の点灯動作においてヒステリシスを設けることができる。よって、点灯する状態と消灯する状態との境界付近で補助灯6が点消灯を繰り返すのを防ぐことができる。
【0101】
なお、補助灯6a〜6cの点灯順については前述の第1〜第3実施形態に限定されず、照射されなくなった進行方向前方の領域を補完するように補助灯照射領域60が照射されれば、補助灯6a〜6cの点灯順は変更してもよい。また、前述の実施形態では、補助灯6の設定点灯状態L1,L2では、光の明るさが車体10のバンク角に対して直線的に比例することで増加する構成であったが、線形に比例してもよい。また、設定点灯状態L1,L2において、補助灯6の光の明るさは、バンク角に対して階段状に増加してもよく、曲線的に比例することで増加してもよい。
【0102】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る自動二輪車は、第1実施形態に係る補助灯6の点消灯動作の制御を一部変形したものである。以下では、第4実施形態に係る補助灯6の点消灯動作の制御について、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0103】
第4実施形態に係る補助灯6の点消灯動作の制御では、バンク角速度に応じて補助灯6の消灯開始時期を変化させる。車体10がバンクした状態から直立状態に向けて傾斜する際に、補助灯6は所定のバンク角にて消灯する。本実施形態の補助灯6の消灯動作では、消灯バンク角は、補助灯6の点灯動作における設定バンク角と同一の値である。また、補助灯6が消灯を開始するバンク角は、補助灯6の点灯動作における点灯完了バンク角と同一の値である。ここで、補助灯6の光度が最大光度から最大光度未満になった時点のバンク角を消灯開始バンク角と呼ぶこととする。
【0104】
補助灯6が消灯するまでには、補助灯6が点灯するまでに発生する応答時間と同様に遅れ時間が発生する。例えば、車体10をバンク状態から直立状態に向けて急速に傾斜させた場合、補助灯6の消灯が遅れると、対向車両等に対して眩惑を与えてしまう可能性がある。
【0105】
図8は、第4実施形態に係る補助灯6の消灯動作の制御を行った場合の
図4相当の図である。なお、以下では、第1の補助灯6aにおいて、第4実施形態に係る消灯動作の制御を行った場合について説明する。
図8に示すように、第1の補助灯6aの消灯動作において、最大光度で点灯している第1の補助灯6aは、車体10が第1の消灯開始バンク角θ11にて消灯を開始すると、車体10が第1の消灯バンク角θ10となるまで、補助灯6の光度は徐々に低下する。そして、第1の消灯バンク角θ10において、第1の補助灯6aの光度が0cd(光の明るさが0%)となると補助灯6は消灯する。
【0106】
本実施形態では、補助灯6の消灯遅れを解消するために、補助灯6の消灯開始時期を早めるように消灯開始バンク角が補正される。即ち、補正後の消灯開始バンク角θ11′(以下、補正バンク角と呼ぶ)は、補正前の消灯開始バンク角よりも値が大きい。具体的に、消灯開始バンク角は、以下の数式3に基づいて決定され、消灯開始バンク角に補正量を加算した値が補正バンク角となる。
補正バンク角=消灯開始バンク角+補正量 ・・・ (数式3)
【0107】
数式3に基づく補正バンク角の算出は、点灯制御部8bにおいて行われる。そして、点灯制御部8bは補正バンク角を算出した後、当該補正バンク角で補助灯6が消灯を開始するように制御信号を出力する。このように、点灯制御部8bは、車体姿勢の時間変化(本実施形態では、バンク角速度)に基づいて、補助灯6の消灯開始時期を決定する制御部としての機能を有している。
【0108】
ここで、点灯制御部8bに入力される補正量は、補正量決定部8fにおいて決定された補正量の絶対値であり、当該補正量決定部8fは、上述の数式2に基づき算出された暫定補正量と補正量リミッタ部8eの制限値とを比較し、適切な補正量を決定する。本実施形態では、車体10が負の方向に傾斜しているため、算出されるバンク角速度は負の値である。上述の数式2における係数は、車体10を負の方向に傾斜させる場合、バンク角が大きいほど消灯開始時期が早まるように設定される。具体的には、バンク角速度が負の値である場合、バンク角が第2角度(例えば、30°)であるときの補正量の絶対値が、バンク角が第1角度(例えば、10°)であるときの補正量の絶対値よりも大きくなるように係数が設定される。
【0109】
補助灯6の消灯開始バンク角が補正されると、第1の補助灯6aの消灯動作において、補正量決定部8fによって決定された補正量に基づき、当該第1の補助灯6aの消灯開始時期が変化している。具体的には、第1の補助灯6aの消灯動作において、消灯開始バンク角の値が大きくなるように補正されている(
図8において矢印で示す方向)。
図8では、第1の補助灯6aの消灯動作において、消灯開始バンク角θ11′の補正量は、上限値である3°と補正量決定部8fによって決定されたものとする。この場合、第1の補助灯6aの消灯動作において、消灯開始バンク角は、上限値である3°だけ大きくなるように補正されて(
図8に示す二点鎖線)、第1の補助灯6aの消灯開始時期が早まる。このとき、消灯バンク角θ10も消灯開始バンク角も同様に補正され、第1の補助灯6aが消灯する時期も早まる。
【0110】
このような第4実施形態に係る補助灯6の消灯動作の制御を行うことにより、以下の効果を奏する。
【0111】
補助灯6の消灯開始時期がバンク角速度に応じて決定されることで、将来の車体姿勢にとって好適なタイミングで補助灯6に消灯開始指令を与えることができる。これにより、旋回走行中において、補助灯6の消灯期間を過剰にすることなく対向車両等に対する眩惑を抑制することができる。
【0112】
また、車体10がバンクした状態から直立状態に向けて急速に傾斜している場合、消灯開始バンク角の値が大きくなるように補正量を大きくすることで、補助灯6の消灯開始時期を早める。これにより、補助灯6の消灯遅れによって、補正前の消灯開始バンク角において補助灯6が点灯し続けることを防ぎ、対向車両等に対する眩惑を抑制することができる。
【0113】
また、バンク角速度に加えてバンク角に基づいて、補助灯6の消灯開始時期を決定するため、車体10が所定のバンク状態である場合において、補助灯6が好適な消灯状態で消灯するように、補助灯6の消灯開始時期を精度良く設定することができる。即ち、バンク角速度に加えてバンク角によって補正量を決定するため、運転者が車体10をどれほどバンクさせて走行しているかを参照することにより予測されるバンク角速度も反映させた補正量を決定することができる。
【0114】
車体10がバンクした状態から直立状態に向けて傾斜する場合、バンク角が大きいほど、運転者はその後に車体10を急速に直立状態に向けて傾斜させる可能性がある。そのため、車体10が第1角度(例えば、10°)よりも大きい第2角度(例えば、30°)までバンクした状態であれば、車体10を直立状態に向けて傾斜させる向きにバンク角速度が大きくなることを反映させた補正量を決定し、消灯開始バンク角の値を大きくすることで、補助灯6の消灯開始時期を早めることができる。
【0115】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る自動二輪車501のランプ520は、補助灯を有さず前照灯505のみを有し、ランプ照射領域540は前照灯照射領域550のみを有する点で、第1実施形態に係るランプ20と異なる。以下では、第5実施形態に係るランプ520の点灯動作の制御について、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0116】
図9は、第5実施形態に係る自動二輪車501が旋回走行中における前照灯照射領域550を表した模式図である。
図9に示すように、本実施形態では、車体10が左側にバンクした状態で、自動二輪車501がカーブを旋回走行する場合、車体10のバンクする方向とは逆方向(この例では、右側(時計回り))に回転した前照灯照射領域550が照射される。これにより、旋回走行中において、進行方向前方の路面視認性を確保することができる。
【0117】
図10は、第5実施形態に係る前照灯505の点灯動作を制御するための構成を表すブロック図である。
図10に示すように、前照灯505は、レンズ505aと、発光体であるバルブ505bと、レンズ505a及びバルブ505bを回転駆動するモータ505cと、を有する。また、制御装置8の点灯制御部8bは、バンク角θの値に応じて、モータ505cを制御する制御信号を出力する。例えば、バンク角θが設定バンク角の値となると、点灯制御部8bは、モータ505cに対して駆動開始の信号を出力する。これにより、モータ505cが駆動し、当該モータ505cの駆動力が伝達されることでレンズ505a及びバルブ505bが、車体10がバンクする方向とは逆方向に回転する。その結果、車体10が左側(背面視で反時計回り)にバンクした状態では、前照灯照射領域550が直立状態から右側(背面視で時計回り)に回転するように変化する。
【0118】
本実施形態では、前照灯505の点灯遅れを解消するために、バンク角速度及びバンク角に応じて設定バンクを補正することによって、前照灯照射領域550を変化させる。例えば、バンク角速度の値が大きくなるほど、設定バンク角の補正量を大きくして前照灯照射領域550の変化開始時期を早める。即ち、車体10が急速にバンクするほど、点灯制御部8bは、モータ505cに対して駆動開始時期を早めるような制御信号を出力し、レンズ505a及びバルブ505bの回転時期も早める。これ以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0119】
このような第5実施形態においても上述の実施形態と同様の効果を奏する。具体的には、バンク角速度に応じて前照灯照射領域550を回転させることで、将来の車体姿勢にとって好適な前照灯照射領域550を前照灯505に照射させることができる。これにより、旋回走行中において、路面視認性を向上でき、前照灯照射領域550の変化開始時期を単に早めることによる対向車両等への眩惑を抑制することができる。
【0120】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加又は削除することができる。また、前記各実施形態は互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよい。また、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。例えば、補助灯6を備えた自動二輪車1において、点灯遅れ及び消灯遅れの両方に対応するように補助灯6が制御されてもよい。
【0121】
前述の実施形態では、暫定補正量は上述の数式2によって算出していたが、この算出方法に限られず、例えば、以下の数式4に基づいて算出されてもよい。
暫定補正量 = バンク角速度+係数 ・・・ (数式4)
【0122】
ここで、係数はバンク角の値に応じて設定される値である。即ち、数式4では暫定補正量をバンク角速度の単位として算出してもよい。この場合、補正量決定部8f又は点灯制御部8bにおいて、補助灯6が点灯又は消灯するまでの所定の応答時間を暫定補正量に乗じることで、最終の補正量が決定される。また、数式4に基づいて暫定補正量を算出する場合、補正量リミッタ部8eは、最終の補正量を決定するにあたってのバンク角速度を所定の下限値以上で、かつ、所定の上限値以下に制限する。
【0123】
前述の実施形態では、走行中における車体姿勢の時間変化としてバンク角速度を例に挙げ、当該バンク角速度に応じて補助灯6の点灯開始時期又は消灯開始時期を決定していたが、この構成に限られず、他の車体姿勢の時間変化によって、補助灯6の点灯開始時期又は消灯開始時期を決定することができれば好適である。例えば、カーブ又は交差点の進入直前は減速することによって、車体10の前部が沈み込むように車体姿勢が変化する。他方、カーブ又は交差点の進入後は、出口に近づくにつれて徐々に加速することによって、車体10の前部が持ち上がるように車体姿勢が変化する。このように車体のピッチング運動による車体姿勢の変化を走行中における車体姿勢の時間変化として検出することによって、カーブ又は交差点の進入直前又は出口直前のいずれを車両が走行しているか否かを判定し、補助灯6の点灯開始時期又は消灯開始時期を変化してもよい。
【0124】
具体的には、車体10の左右方向に延びる軸線(ピッチング軸)周りのジャイロセンサを姿勢時間変化検出部として設ける。そして、車体10のピッチング運動によるピッチング加速度を検出し、カーブ又は交差点の進入直前又は出口直前のいずれを走行しているか否かを判定する。なお、ピッチング加速度を検出するにあたっては、車体前部の上下方向加速度を検出する加速度センサを設けてもよいし、フロントサスペンション(又はリアサスペンション)のストローク変位量を検出するセンサを設けてもよい。
【0125】
そして、ピッチング加速度の値に基づき、車体10の前部が沈み込むように車体姿勢が変化したことが検出されると、その後、車幅方向一方側に車体10をバンクさせるという車体姿勢の変化が予測されるため、補助灯6の点灯開始時期を早めることで点灯遅れを防いでもよい。このように、ピッチング運動による車体姿勢の変化は、車幅方向一方側に車体10をバンクさせるという傾向を有する。他方、車体10の前部が後方に持ち上がるように車体姿勢が変化したことが検出されると、その後、車体10を直立状態に向けて傾斜させるという車体姿勢の変化が予測されるため、補助灯6の消灯開始時期を早めることで消灯遅れを防ぎ、対向車両等に対する眩惑を抑制してもよい。ピッチング運動による車体姿勢の変化は、車体10をバンク状態から直立状態に向けて傾斜させるという傾向も有する。
【0126】
また、バンク角速度及びバンク角に加えて、車両状態に応じて設定バンク角の補正量を決定してもよい。ここで、車両状態とは、車速、エンジン回転数、ギヤ比、走行モード、ブレーキ操作、スロットル開度等の運転操作を意味し、これらの少なくとも1つを車両状態検出部が検出する。このような運転操作に基づいて、例えば、車体10のバンク角の時間変化が大きくなる状況であることが判断されると、補助灯6の点消灯開始時期を早めてもよい。また、運転者がスラローム走行を多用する等、単位期間中に車体姿勢の時間変化が大きい状態が続く場合にも、補助灯6の点消灯開始時期を早めてもよい。
【0127】
また、前述の実施形態では、バンク角速度及びバンク角に応じて設定バンク角の補正量を決定していたが、バンク角速度のみで設定バンク角の補正量を決定してもよい。この場合、点灯制御部8bは、バンク角速度の絶対値が第1値であるときの補正量の絶対値を、バンク角速度の絶対値が第1値よりも小さい第2値であるときの補正量の絶対値よりも大きい値に決定する。また、上述の数式2における係数は、バンク角に代えて車速に基づいて設定される値であってもよいし、バンク角及び車速両方の値に基づいて設定されてもよい。また、前述の第1〜第4実施形態では、車体10を車幅方向一方側に傾斜させた場合に前照灯5の車幅方向一方側に配置された補助灯6a〜6cを点灯させていたが、この構成に限られず、前照灯5の車幅方向他方側に配置されている補助灯6d〜6fを点灯させてもよい。また、補助灯6を点灯させる際には、車体10のバンク角の大きさに対応した角度だけ補助灯6のレンズを回転させる構成とすることで旋回先の路面を照射してもよい。また、前照灯5の前方において、車体10の前後方向に直交するようにスクリーンを配置し、このスクリーンに対して前照灯5及び補助灯6を照射した場合、車体10がバンク状態のときのスクリーン上に設定される前照灯照射領域及び補助灯照射領域の位置関係は、車体10がバンク状態のときの路面15に設定される前照灯照射領域50及び補助灯照射領域60の位置関係と略同様である。
【0128】
また、前述の実施形態では、乗物として自動二輪車に特定して説明したが、この構成に限られず、例えば、旋回走行時に車体10をバンクさせる乗物であれば三輪車や四輪車(例えば、全地形対応車等)等の他の車両であってもよいし、小型滑走艇等のような船舶であってもよい。例えば、乗物が四輪車の場合、車体の上下方向に延びる軸線(ヨー軸)周りのヨーイング角速度又はヨー角度に基づき、補助灯6の点灯開始時期(又は消灯開始時期)を変化させてもよい。