特許第6761245号(P6761245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6761245-有機性排水の処理方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6761245
(24)【登録日】2020年9月8日
(45)【発行日】2020年9月23日
(54)【発明の名称】有機性排水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/28 20060101AFI20200910BHJP
   C02F 3/10 20060101ALI20200910BHJP
【FI】
   C02F3/28 B
   C02F3/10 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-257157(P2015-257157)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-119253(P2017-119253A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年8月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 太一
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 吉昭
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−324132(JP,A)
【文献】 特開2006−000785(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0279702(US,A1)
【文献】 特開2014−100680(JP,A)
【文献】 特開2012−110821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/28−3/34
C02F 3/02−3/10
C02F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性排水を流動床式反応槽により嫌気条件で生物処理する有機性排水の処理方法であって、
前記生物処理を立ち上げる際には、前記反応槽内に、脱窒微生物及び前記脱窒微生物が産出する粘着性生産物が生物膜となって付着している担体を投入することを特徴とする有機性排水の処理方法。
【請求項2】
前記反応槽は撹拌型反応槽であることを特徴とする請求項1に記載の有機性排水の処理方法。
【請求項3】
前記反応槽へ投入する担体はゲル状担体であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の有機性排水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水を流動床式反応槽により嫌気条件で生物処理する有機性排水の処理方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
嫌気性流動床式排水処理は、担体に嫌気性微生物を付着させ、反応槽内で流動させることにより、排水と担体との接触効率を高め、安定且つ高効率な処理を可能とする処理方法である。しかし、このような方法では、担体への嫌気性微生物の付着に時間が掛かり、生物処理の立ち上げに多大な時間を要するという問題がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、遠心装置に嫌気性微生物の母液と担体とを入れ、これら母液と担体とを遠心処理することによって担体に嫌気性微生物を付着させ、嫌気性微生物を付着させた担体を固定床として用いる有機性排水の処理方法が開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2,3には、担体を保持する反応槽の立ち上げに際して、該反応槽に担体と嫌気性グラニュールとを共存させて、有機性排水の通水を開始し、その後、有機性排水の通水を継続することにより、反応槽内のグラニュールの一部を解体、分散化させる有機性排水の処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−190985号公報
【特許文献2】特開2012−110821号公報
【特許文献3】特開2014−100680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の遠心処理では、担体から嫌気性微生物が剥がれやすい。特に、流動床式で用いた場合には、固定床式より担体の流動性が高くなるため、嫌気性微生物の剥離がより進行する可能性がある。剥離した嫌気性微生物が処理水と共に流出すれば、反応槽内の微生物量が変動し、例えば、過負荷となった場合には、嫌気性微生物の成長が阻害されるため、結果的に生物処理の立ち上げに多くの時間を要する場合がある。
【0007】
また、特許文献2,3の方法では、嫌気性グラニュールが解体、分散化しているため、処理水と共に嫌気性グラニュールが流出すれば、前述の通り、生物処理の立ち上げに多くの時間を要する場合がある。
【0008】
本発明は、有機性排水を流動床式反応槽により嫌気条件で生物処理する有機性排水の処理方法において、生物処理の立ち上げ期間の長期化を抑制することが可能な有機性排水の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、有機性排水を流動床式反応槽により嫌気条件で生物処理する有機性排水の処理方法であって、前記生物処理を立ち上げる際には、前記反応槽内に、脱窒微生物及び前記脱窒微生物が産出する粘着性生産物が生物膜となって付着している担体を投入する有機性排水の処理方法である。
【0011】
また、前記有機性排水の処理方法であって、前記反応槽は撹拌型反応槽であることが好ましい。
【0012】
また、前記有機性排水の処理方法であって、前記反応槽へ投入する担体はゲル状担体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、有機性排水を流動床式反応槽により嫌気条件で生物処理する有機性排水の処理方法において、生物処理の立ち上げ期間の長期化を抑制することが可能な有機性排水の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の有機性排水の処理方法に用いる排水処理装置の構成の一例を示す模式図である。
図2】本実施形態の有機性排水の処理方法に用いる排水処理装置の構成の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本実施形態の有機性排水の処理方法に用いる排水処理装置の構成の一例を示す模式図である。図1に示す排水処理装置1は、流動床式反応槽10を備えており、流動床式反応槽10内には、担体12が投入されている。流動床式反応槽10の入口には、排水流入ライン14が設置され、流動床式反応槽10の出口には、処理水排出ライン16が設置されている。
【0017】
図1に示す流動床式反応槽10は、槽内の担体12を流動させながら、嫌気条件下で、有機性排水を生物処理するものである。図1に示す流動床式反応槽10は、撹拌型反応槽であり、槽内に略垂直に設置され上下が開口したドラフトチューブ18と、槽内の担体12を撹拌する撹拌装置20とを備える。図1に示す撹拌装置20は、モータ22、撹拌翼24、モータ22と撹拌翼24を接続するシャフト26を備えており、撹拌翼24がドラフトチューブ18内に配置されている。撹拌装置20は、流動床式反応槽10内の担体12を撹拌することが可能な装置構成であれば、上記構成に制限されるものではない。また、担体12の流動性を向上させる点で、ドラフトチューブ18を設置することが好ましいが、必ずしもドラフトチューブ18を設置する必要はない。
【0018】
担体12は、非嫌気性微生物が生物膜となって付着している担体を含む。ここで、生物膜とは、非嫌気性微生物と、非嫌気性微生物が産出する菌体外多糖等の生産物等が集合した膜状構造体であって、少なくとも10μm以上の膜厚、好ましくは20μm以上の膜厚を有するものである。上記膜厚は、担体12表面上からの厚みであり、10個〜20個の担体12の平均値である。なお、菌体外多糖等の生産物は、アルカリを用いて生物膜から多糖類を抽出し、抽出液中の糖濃度をAnthrone法により測定することが可能である。菌体外多糖等の生産物は粘着性を有し、生物膜の付着性に影響を与えるものであると考えられ、例えば、生物膜中に20ppm以上存在していることが好ましく、50ppm以上存在していることがより好ましい。
【0019】
嫌気条件又は嫌気性とは、排水中に溶存酸素や、硝酸性窒素などの結合酸素等が存在しない状態を意味している。そして、非嫌気性微生物とは、排水中に溶存酸素や、硝酸性窒素などの結合酸素がある状態で生存することができる微生物を意味する。言い換えれば、非嫌気性微生物とは、嫌気条件下で生存することができない(死滅する)微生物を意味する。
【0020】
本実施形態の排水処理装置1は、例えば、流動床式反応槽10の排出口を囲むように設置されるスクリーン(不図示)を備えることが好ましい。当該スクリーンにより、流動床式反応槽10からの担体12の流出を防ぐことが可能となる。スクリーンは、例えば、ウエッジワイヤースクリーン、金網、パンチングメタル等が挙げられる。
【0021】
図1に示す排水処理装置1を用いて、本実施形態の有機性排水の処理方法を説明する。
【0022】
本実施形態の処理対象である有機性排水は、例えば、食品製造工場、電子産業工場、パルプ製造工場、化学工場等から排出される有機物を含有する排水である。有機物は、生分解可能な有機物であり、例えば、可溶性タンパク質、糖類、アミノ酸類、アルコール類、有機酸類、脂肪酸類等が挙げられる。
【0023】
生物処理の立ち上げにおいて、有機性排水が、排水流入ライン14から流動床式反応槽10に導入される。この有機性排水の通水開始前又は後において、流動床式反応槽10に、担体12が投入される。また、有機性排水の通水開始前又は後において、種汚泥として嫌気性微生物を含む汚泥(グラニュール汚泥を含む)が添加されることが好ましい。そして、流動床式反応槽10内では、撹拌装置20により、担体12及び有機性排水が撹拌されながら、嫌気条件で生物処理が行われる。なお、本実施形態では、撹拌翼24がドラフトチューブ18内で撹拌されるため、ドラフトチューブ18内に下向流が形成され、ドラフトチューブ18の外壁面と流動床式反応槽10の内壁面との間に上向流が形成されている。流動床式反応槽10で生物処理された処理水は、処理水排出ライン16から系外へ排出される。このような処理を継続して、予め設定した負荷に達した段階で、生物処理の立ち上げが終了となる。生物処理の立ち上げが終了した後は、例えば、生物処理の立ち上げ期間で到達した負荷を維持しながら、有機性排水の生物処理(本処理)が実行される。生物処理立ち上げ期間における到達負荷は、例えば、CODcr容積負荷で2kg/m/day以上に設定されることが好ましく、10kg/m/day以上に設定されることがより好ましい。
【0024】
本実施形態では、生物処理の立ち上げにおいて、非嫌気性微生物が生物膜となって付着している担体を投入(担体12を投入)し、嫌気条件下で生物処理が行われるため、生物膜中の非嫌気性微生物は徐々に死滅する。しかし、菌体外多糖等の粘着性を有する生産物は担体上に残っているため、排水中の嫌気性微生物が、死滅した非嫌気性微生物と入れ替わるように担体に付着すると考えられる。そのため、微生物が全く付着していない担体を投入した場合と比較して、嫌気性微生物の担体への付着性を向上させ、嫌気性微生物の処理水への流出を抑えることが可能となる。これにより、流動床式反応槽内の嫌気性微生物量の変動が抑えられるため、微生物が全く付着していない担体を投入した場合と比較して、過負荷になり難く、嫌気性微生物の成長が阻害され難くなると考えられ、生物処理の立ち上げ期間が長期化することを抑制することが可能となる。なお、生物膜中に含まれる菌体外多糖等の生産物は粘着性を有するため、流動している担体からの剥離は抑えられる。
【0025】
本実施形態では、通水開始直後に反応槽内に嫌気性微生物を多く保持できるという点等から、嫌気性微生物を含む汚泥(グラニュール汚泥も含む)等を主汚泥として投入することが望ましく、投入する主汚泥の量は、例えば、反応槽容積に対して1〜30%の範囲が好ましく、5〜20%の範囲がより好ましい。主汚泥の投入量が1%未満の場合には主汚泥を投入する利点が得られない場合があり、30%を超える場合には、処理水の水質悪化等が引き起こされる場合がある。
【0026】
本実施形態では、非嫌気性微生物が生物膜となって付着している担体に加えて、例えば、嫌気性微生物が生物膜となって付着している担体や微生物が全く付着していない担体等を投入してもよいが、非嫌気性微生物が生物膜となって付着している担体の投入率は、流動床式反応槽10に投入する担体の総量に対して20%〜95%の範囲が好ましく、20%〜70%の範囲がより好ましい。非嫌気性微生物が生物膜となって付着している担体の投入率が95%を超えると、上記範囲を満たす場合と比較して、死滅した非嫌気性微生物が処理水へ流出して、処理水の水質が悪化する場合がある。また、非嫌気性微生物が生物膜となって付着した担体は、一般的に製造コストが高いため、結果的に生物処理に掛かるコストも高くなる場合がある。一方、非嫌気性微生物が生物膜となって付着している担体の投入率が20%未満であると、上記範囲を満たす場合と比較して、生物処理の立ち上げ期間の長期化を抑制する効果が低減する場合がある。
【0027】
非嫌気性微生物が生物膜となって付着している担体は、例えば、有機性排水や窒素含有排水に、微生物が付着していない担体を浸漬させて長期間馴養している馴養装置等から確保される。また、例えば、担体を用いて有機性排水や窒素含有排水を長期的に生物処理している他の処理装置から確保される。
【0028】
非嫌気性微生物は、例えば排水中に溶存酸素がある状態で生存(好ましくは増殖)する好気性微生物や、硝酸性窒素などの結合酸素がある状態で生存(好ましくは増殖)する脱窒微生物等が挙げられる。好気性微生物と脱窒微生物とを比較した場合、脱窒微生物の方が、嫌気条件での耐性が高く、嫌気性微生物の担体への付着効果を長く持続させることができると考えられる。したがって、非嫌気性微生物は、嫌気性微生物の担体への付着効果の点等で、好気性微生物より脱窒微生物の方が好ましい。一方、好気性微生物は脱窒微生物より増殖速度が速く、且つ菌体収率も高い。したがって、非嫌気性微生物が生物膜となって付着している担体を確保し易い点等で、好気性微生物を活用する方が好ましい。
【0029】
流動床式反応槽10内に投入する担体12の総量は、槽容積に対して10〜50%の範囲が好ましい。担体12の総量が槽容積に対して10%未満であると反応速度が小さくなる場合があり、50%を超えると担体12の流動性が低下し、長期運転における汚泥の閉塞等で有機性排水がショートパスし、処理水の水質が悪化する場合がある。
【0030】
流動床式反応槽10内に投入する担体12の沈降速度は、100〜200m/hrであることが好ましい。沈降速度が100m/hr未満であると、槽内に投入された担体12が浮上し、槽内から流出しやすくなり、200m/hrを超えると、流動状態が悪くなり、有機性排水がショートパスしたり、撹拌のエネルギーが大きくなったりする場合がある。
【0031】
流動床式反応槽10内に投入する担体12の比重は、槽内部で流動状態を形成するために、例えば、1.0より大きく、真比重として、1.1以上、あるいは見かけ比重として1.01以上のものが好ましい。
【0032】
生物膜を付着させる前の担体(以下、素担体と称する場合がある)は、従来嫌気性生物処理で使用される担体であれば特に制限されるものではなく、例えば、プラスチック製担体、スポンジ状担体、ゲル状担体等が挙げられる。これらの中では、例えば、生物膜の付着性、担体の流動性等の点、高負荷処理が可能である点等から、ゲル状担体が好ましい。ゲル状担体としては、特に限定されるものではないが、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリウレタン等を含んでなる吸水性高分子ゲル状担体等が挙げられる。
【0033】
素担体の形状は、特に限定されるものではないが、0.5mm〜20mm程度の径の球状または立方体状(キューブ状)、長方体、円筒状等のものが好ましい。特に、3〜8mm程度の径の球状、または円筒状のゲル状担体が好ましい。
【0034】
本実施形態では、有機性排水を生物処理するに当たり、排水のpHは6.0〜8.0の範囲が好ましく、7.0〜8.0の範囲がより好ましい。排水のpH調整は、例えば、pH調整剤供給ライン(図示せず)から、有機性排水を貯留した原水槽(図示せず)にpH調整剤を供給することにより行われる。有機性排水のpHが上記範囲外であると、生物処理による有機物の分解反応速度が低下する場合がある。
【0035】
pH調整剤としては、塩酸等の酸剤、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤等、特に制限されるものではない。また、pH調整剤は、例えば、緩衝作用を持つ重炭酸ナトリウム、燐酸緩衝液等であってもよい。
【0036】
本実施形態では、有機性排水を生物処理するに当たり、嫌気性微生物の分解活性を良好に維持する点等から、例えば、有機性排水に栄養剤を添加することが好ましい。栄養剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、炭素源、窒素源、その他無機塩類(Ni,Co,Fe等)等が挙げられる。
【0037】
本実施形態では、流動床式反応槽10内の水温を20℃以上となるように温度調整することが好ましい。通常、20℃未満であると、分解反応速度が低下する傾向にある。流動床式反応槽10内の水温の温度調整方法は、特に制限されるものではないが、例えば、流動床式反応槽10にヒータ等の加熱装置を設置して、ヒータ等の熱により流動床式反応槽10内の水温を調整する方法等が挙げられる。
【0038】
図2は、本実施形態の有機性排水の処理方法に用いる排水処理装置の構成の他の一例を示す模式図である。図2に示す排水処理装置2において、図1に示す排水処理装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図2に示す排水処理装置2は、上向流型の流動床式反応槽38を備えており、流動床式反応槽38内には、前述の担体12が投入されている。図2に示す流動床式反応槽38は、槽内の底部付近に設けられる排水供給部40を供え、排水供給部40には排水流入ライン14が接続されており、排水流入ライン14及び排水供給部40を通して槽内に有機性排水が通水される。また、図2に示す流動床式反応槽38は、槽内の上部に設けられる越流式の処理水取出部42を備え、処理水取出部42には、処理水排出ライン16が接続されおり、排水を嫌気処理することで得られた処理水が処理水取出部42、処理水排出ライン16を通して系外に排出される。また、図2に示す流動床式反応槽38は、循環ライン44及び循環ポンプ46を備えている。循環ライン44の一端は流動床式反応槽38に接続され、他端は、排水流入ライン14に接続されており、槽内の有機性排水が、循環ライン44を介して循環されるように構成されている。なお、上向流型の流動床式反応槽は、有機性排水を上向流で嫌気処理する装置構成であれば、図2に示す流動床式反応槽38の装置構成に限定されるものではない。
【0039】
図2に示す排水処理装置2では、有機性排水が、排水供給部40から流動床式反応槽38内に導入され、また、循環ポンプ46の作動により、循環ライン44を介して循環されることで、担体12が流動されて、有機性排水が嫌気処理される。
【0040】
本実施形態で用いられる流動床式反応槽としては、有機性排水と担体12との接触効率が高い点、高い油脂濃度やSS濃度を有する有機性排水でも処理が可能である点等から、上向流型より撹拌型の流動床式反応槽が好ましい。また、流動床式反応槽は、上向流型、撹拌型に制限されるものではなく、担体12が流動する形式のものであれば特に制限されるものではない。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
図1に示す排水処理装置を用いて試験を行った。容積600mLのアクリル製反応槽に、脱窒微生物が生物膜となって付着している担体を反応槽の容積に対して30%投入し、嫌気性グラニュール汚泥を反応槽の容積に対して10%投入した。生物膜付着前の担体(素担体)として、球状のポリビニルアルコール性ゲル状担体(細孔径4〜20μm、直径4mm、比重1.025、沈降速度4cm/sec)を用いた。生物処理の対象排水として、スクロース、カツオエキスを主成分とした食品工場排水(CODcr2500〜3000mg/L)を使用し、上記反応槽への通水を開始した。
【0043】
(比較例)
脱窒微生物が生物膜となって付着している担体を投入する代わりに、生物膜が付着していない担体(素担体)を反応槽の容積に対して30%投入し、嫌気性グラニュール汚泥を反応槽の容積に対して10%投入したこと以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0044】
<生物処理立ち上げ期間の結果>
実施例1では、処理水のCODcr濃度を低く維持しながら負荷を上昇させることができ、有機性排水の通水開始から30〜40日で、CODcr負荷が、運転安定化の基準となる2kg/m/dayに達した。そして、運転76日目には、16kg/m/dayとなった。これに対し、比較例では、有機性排水の通水開始から徐々に負荷を上昇させたが、運転30〜40日を過ぎても処理水CODcr濃度が低下せず、負荷を大幅に上場させることが困難であった。そして、運転70日目で、CODcr負荷が運転安定化の基準となる2kg/m/dayに達し、最終的に、運転100日目で、CODcr負荷が16kg/m/dayに達した。以上により、実施例1は、比較例より短期間で生物処理の立ち上げを終了することが可能であることが言える。すなわち、実施例1は、生物処理の立ち上げ期間の長期化を抑えることが可能であると言える。
【符号の説明】
【0045】
1,2 排水処理装置、10,38 流動床式反応槽、12 担体、14 排水流入ライン、16 処理水排出ライン、18 ドラフトチューブ、20 撹拌装置、22 モータ、24 撹拌翼、26 シャフト、40 排水供給部、42 処理水取出部、44 循環ライン、46 循環ポンプ。
図1
図2