【実施例】
【0045】
以下、図面を参照しながら、評価装置、出力方法及びコンピュータプログラムの実施例について説明する。尚、以下では、本発明の評価装置、出力方法及びコンピュータプログラムが、被験者900の自律神経機能を評価する評価装置10を備える評価システム1に適用された実施例について説明を進める。但し、本発明の評価装置、出力方法及びコンピュータプログラムは、自律神経機能とは異なる被験者900の生体機能を評価する任意の評価装置に適用されてもよい。
【0046】
(1)評価システム1の構成
図1を参照して、本実施例の評価システム1の構成について説明する。
図1は、本実施例の評価システム1の構成を示すブロック図である。
【0047】
図1に示すように、評価システム1は、人間等の被験者900の自律神経機能を評価するための評価試験を行うシステムである。評価システム1は、評価装置10と、血流計20と、ディスプレイ30とを備える。
【0048】
評価装置10は、制御部11と、取得部12と、指示部13と、評価部14とを備えている。尚、制御部11、取得部12、指示部13及び評価部14は、例えば専用のICチップ等によって物理的に実現されてもよい。或いは、制御部11、取得部12、指示部13及び評価部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)上で動作するソフトウェアによって論理的に実現されてもよい。
【0049】
制御部11は評価装置10全体の動作を制御する。
【0050】
取得部12は、血流計20が出力する被験者900の血流情報を取得する。血流情報は、被験者900の血流量を示す情報である。例えば、血流情報は、血流量の時間波形(つまり、血流量の推移(言い換えれば、血流量の時間的な変化)を示す血流波形)を示す情報を含んでいる。
【0051】
指示部13は、評価装置10によって自律神経機能が評価される被験者900に対して、所望の指示を出力する。本実施例では、指示部13は、所望の指示を、ディスプレイ30上に表示される画像(例えば、所望の指示を文字や図形等で示す画像)として出力する。但し、指示部13は、所望の指示を、その他の態様で出力してもよい。例えば、指示部13は、所望の指示を、スピーカから出力される音声(例えば、所望の指示を通知する音声等)として出力してもよい。
【0052】
評価部14は、取得部12が取得する血流情報に基づいて、被験者900の自律神経機能を評価する。評価部14は、その内部に物理的に又は論理的に実現される処理ブロックとして、パラメータ演算部141と、評価結果出力部142とを備える。
【0053】
パラメータ演算部141は、取得部12が取得する血流情報に基づいて、自律神経機能を評価するために用いられる評価パラメータを算出する。
【0054】
評価結果出力部142は、パラメータ演算部141が算出した評価パラメータに基づいて、被験者900の自律神経機能を評価する。加えて、評価結果出力部142は、被験者900の自律神経機能の評価結果を出力する。本実施例では、評価結果出力部142は、自律神経機能の評価結果を、ディスプレイ30上に表示される画像(例えば、自律神経機能の評価の結果を文字や図形等で示す画像)として出力する。但し、評価結果出力部142は、自律神経機能の評価結果を、その他の態様(例えば、音声等)で出力してもよい。
【0055】
血流計20は、被験者900の血流量を検出する。血流計20は、被験者900の頭部の血流量(或いは、頭部の近傍にある血管の血流量)を検出することが好ましい。血流計20は、被験者900に装着される。血流計20は、当該検出した血流量を示す血流情報を評価装置10(特に、取得部12)に出力する。血流計20としては、例えばレーザードップラーフローメトリー法を用いて血流波形を検出するレーザー血流計が一例としてあげられる。
【0056】
ディスプレイ30は、所望の画像を表示する装置である。例えば、本実施例では、ディスプレイ30は、評価システム1の動作状態を示すための画像(言い換えれば、画面)や、指示部13から出力される所望の指示を示す画像(画面)や、評価結果出力部142から出力される自律神経機能の評価の結果を示す画像(画面)等を表示する。
【0057】
(2)評価装置10の動作
続いて、
図2から
図6を参照しながら、本実施例の評価装置10の動作について説明する。
【0058】
(2−1)評価装置10の動作の全体の流れ
初めに、
図2を参照して、本実施例の評価装置10の動作の全体の流れについて説明する。
図2は、本実施例の評価装置10の動作の全体の流れを示すフローチャートである。
【0059】
図2に示すように、自律神経機能の評価試験が開始される前であっても、血流計20が血流情報を出力している場合には、取得部12は、血流情報を取得してもよい(ステップS11)。評価試験が開始される前に取得された血流情報は、後に詳述する評価部14が評価パラメータを算出する際に評価部14によって参照されてもよい。尚、ステップS11の動作は、必ずしも行われなくともよい。
【0060】
その後、制御部11は、評価試験の開始を指示する操作が、評価システム1のユーザ(例えば、医師等の医療従事者又は被験者900等)によって行われたか否かを判定する(ステップS12)。
【0061】
ステップS12の判定の結果、評価試験の開始を指示する操作が行われていないと判定される場合には(ステップS12:No)、ステップS11の動作が繰り返される。つまり、評価試験の開始の指示が行われるまでは、評価装置10は実質的に待機することになる。
【0062】
他方で、ステップS12の判定の結果、評価試験の開始を指示する操作が行われたと判定される場合には(ステップS12:Yes)、続いて、指示部13は、座位開始時刻Taに座位姿勢をとると共にその後第1維持時間だけ(或いは、第1維持時間以上)座位姿勢を維持し続けることを被験者900に指示するための姿勢統制指示を出力する(ステップS13)。その結果、被験者900は、姿勢統制指示に従って、座位開始時刻Taに座位姿勢をとると共に、座位姿勢を第1維持時間以上維持する。尚、「座位姿勢」の一例として、椅子等の器具に被験者900が座っている姿勢があげられる。「座位姿勢」の他の一例として、被験者900の体重を折り曲げた下肢で支えるように被験者900が座っている姿勢(言い換えれば、しゃがみこんでいる姿勢)があげられる。「座位姿勢」の他の一例として、下肢を折り曲げた状態で椅子等の器具に被験者900が座っている姿勢があげられる。
【0063】
その後、制御部11は、座位開始時刻Taを起点として、第1維持時間が経過したか否かを判定する(ステップS14)。つまり、制御部11は、被験者900が第1維持時間以上座位姿勢を維持し続けたか否かを判定する。
【0064】
ここで、後に詳述するように、本実施例では、被験者900が座位姿勢から立位姿勢に移行した後の血流量の変化の態様に基づいて、被験者900の自律神経機能が評価される。従って、高精度な(言い換えれば、信頼性の高い)評価を行うという観点からは、立位姿勢に移行する直前の被験者900の血流量は、十分に安定している(言い換えれば、変動が少ない)ことが好ましい。つまり、立位姿勢に移行する直前の被験者900の血流量には、座位姿勢を取る前の被験者900の活動状況(例えば、運動状況)に起因したノイズ成分が重畳されていないことが好ましい。このため、第1維持時間は、被験者900の血流量が十分に安定するようになるまでに必要な時間に応じて設定されることが好ましい。あるいは、立位姿勢に移行する直前の座位姿勢を、足を台座に乗せる姿勢やしゃがむ姿勢とする場合は、被験者900は、その姿勢をとる以前に座位姿勢にて所定時間の安静を行った後に足を台座に乗せる姿勢やしゃがむ姿勢をとり、立位姿勢に移行することが好ましい。
【0065】
ステップS14の判定の結果、第1維持時間が経過していないと判定される場合には(ステップS14:No)、評価装置10は、第1維持時間が経過するまで待機する。従って、被験者900は、座位姿勢を維持し続ける。
【0066】
他方で、ステップS14の判定の結果、第1維持時間が経過したと判定される場合には(ステップS14:Yes)、指示部13は、立位開始時刻Tsに座位姿勢から立位姿勢に移行すると共にその後第2維持時間だけ(或いは、第2維持時間以上)立位姿勢を維持し続けることを被験者900に指示するための姿勢統制指示を出力する(ステップS15)。その結果、被験者900は、姿勢統制指示に従って、立位開始時刻Tsに座位姿勢から立位姿勢に移行すると共に、立位姿勢を第2維持時間以上維持する。尚、「立位姿勢」の一例として、被験者900が下肢を概ね伸ばした状態で立っている姿勢又は立ち上がった姿勢(つまり、下肢を概ね延ばした状態で被験者900の体重を足で支えている姿勢)があげられる。
【0067】
このとき、被験者900は、被験者900自身の筋肉を使用することで立ち上がる能動起立を行うことで、座位姿勢から立位姿勢に移行してもよい。或いは、被験者900は、例えば他者の力を借りて立ち上がる受動起立(例えば、電動ベッドに寝ている被験者900が、電動ベッドが自動的に起き上がる力を借りて立ち上がる受動起立やヘッドアップチルトを用いた受動起立等)を行うことで、座位姿勢から立位姿勢に移行してもよい。
【0068】
その後、制御部11は、立位開始時刻Tsを起点として、第2維持時間が経過したか否かを判定する(ステップS16)。つまり、制御部11は、被験者900が第2維持時間以上立位姿勢を維持し続けたか否かを判定する。
【0069】
ここで、後に詳述するように、本実施例では、被験者900が立位姿勢に移行することで減少した血流量が回復する態様に基づいて、被験者900の自律神経機能が評価される。具体的には、立位開始時刻Tsから被験者900が立位姿勢に移行することで減少した血流量が立位姿勢に移行する前の所定期間中の血流量の平均値Fave(或いは、任意の所定量)にまで回復した回復時刻Tr(或いは、所定のカットオフ時刻Tc)までの間の血流量の変化の態様に基づいて、被験者900の自律神経機能が評価される。従って、第2維持時間は、立位開始時刻Tsから回復時刻Tr(或いは、カットオフ時刻Tc)までの間の時間よりも長いことが好ましい。
【0070】
ステップS16の判定の結果、第2維持時間が経過していないと判定される場合には(ステップS16:No)、評価装置10は、第2維持時間が経過するまで待機する。従って、被験者900は、立位姿勢を維持し続ける。
【0071】
他方で、ステップS16の判定の結果、第2維持時間が経過したと判定される場合には(ステップS16:Yes)、パラメータ演算部141は、ステップS13からステップS16の動作が行われている間に取得部12によって取得された血流情報に基づいて、自律神経機能を評価するために用いられる評価パラメータを算出する(ステップS17)。尚、ステップS17においてパラメータ演算部141によって評価パラメータが算出されることを考慮すれば、
図2では明示的に記載していないものの、取得部12は、ステップS13からステップS16の動作が行われている間も血流情報を取得する。
【0072】
ここで、
図3(a)から
図3(c)を参照しながら、ステップS13からステップS16の動作が行われている間に取得部12によって取得される血流情報が示す血流量の一例について説明する。
図3(a)から
図3(c)は、夫々、血流情報が示す血流量の時間波形を示すグラフである。
【0073】
図3(a)は、被験者900が立位姿勢に移行することで減少した血流量が立位姿勢に移行する前の所定期間中の血流量の平均値Faveにまで回復するために要する時間が相対的に短い場合に取得される血流情報(血流量の時間波形)を示す。このような血流情報は、被験者900が健常者である(つまり、被験者900の自律神経機能が悪化していない)場合に取得される。
図3(a)に示すように、被験者900が座位姿勢から立位姿勢に移行すると、血流量は減少する。なぜならば、立位姿勢への移行時に重力による血液の下方シフトが生じるからであり、また、被験者900が座位姿勢をとっている間に生じていた膝関節の曲げ等による血管の圧迫が、被験者900が立位姿勢に移行することで解消されるからである。従って、被験者900の姿勢が座位姿勢から立位姿勢に移行するという動作(状態変化)は、被験者900の血流量を変化させるための状態変化の一例に相当する。その後、被験者900の血圧調整機能に起因して、血流量は再び増加していく。その結果、血流量は、平均値Faveにまで回復する。
図3(a)に示す血流量の時間波形は、通常回復型の時間波形に分類される。尚、被験者900が健常者である場合には、立位開始時刻Tsから回復時刻Trまでの間の期間の長さは、概ね十数秒程度になる。
【0074】
尚、
図3(a)では、説明の便宜上、立位姿勢に移行する前の所定期間中の血流量の平均値Faveが、被験者900が座位姿勢をとっている所定期間中の血流量の平均値Faveであるものとする。以下の説明においても同様である。
【0075】
図3(b)は、被験者900が立位姿勢に移行することで減少した血流量が平均値Faveにまで回復するために要する時間が相対的に長い場合に取得される血流情報(血流量の時間波形)を示す。このような血流情報は、被験者900の自律神経機能が悪化している場合に取得される。
図3(b)に示すように、被験者900が座位姿勢から立位姿勢に移行すると、血流量は減少する。その後、被験者900の血圧調整機能に起因して、血流量は再び増加していく。しかしながら、自律神経機能の悪化に起因して血圧調整機能もまた悪化しているがゆえに、血流量が増加していく速度は、被験者900が健常者である場合に血流量が増加していく速度よりも遅い。従って、被験者900の自律神経機能が悪化している場合に血流量が平均値Faveにまで回復するために要する時間は、被験者900が健常者である場合に血流量が平均値Faveにまで回復するために要する時間よりも長くなる。
図3(b)に示す血流量の時間波形は、回復遅延型の時間波形に分類される。
【0076】
図3(c)は、被験者900が立位姿勢に移行することで減少した血流量が所定時間(例えば、30秒から60秒の範囲内の任意の時間)以内に平均値Faveにまで回復しない場合に取得される血流情報(血流量の時間波形)を示す。このような血流情報は、被験者900の自律神経機能が悪化している場合に取得される。
図3(c)に示すように、被験者900が座位姿勢から立位姿勢に移行すると、血流量は減少する。その後、被験者900の血圧調整機能に起因して、血流量は再び増加していく。しかしながら、自律神経機能の悪化に起因して血圧調整機能もまた悪化しているがゆえに、血流量が増加していく速度は、被験者900が健常者である場合に血流量が増加していく速度よりも遅い。その結果、
図3(c)に示す例では、血流量は、立位開始時刻Tsから所定時間以内に(
図3(c)に示す例では、カットオフ時刻Tc以前に)平均値Faveにまで回復することはない。
図3(c)に示す血流量の時間波形は、不完全回復型の時間波形に分類される。
【0077】
尚、カットオフ時刻Tcは、自律神経機能が悪化している被験者900が立位姿勢に移行してから当該被験者900の血流量が平均値Faveにまで回復するために要した時間に基づいて設定されることが好ましい。例えば、自律神経機能が悪化している複数の被験者900を対象に立位姿勢に移行してから血流量が平均値Faveにまで回復するために要した時間が計測され、当該計測された時間の平均値が算出され、立位開始時刻Tsから当該算出された平均値に相当する時間だけ進んだ時刻がカットオフ時刻Tcに設定されてもよい。或いは、例えば、立位開始時刻Tsから当該算出された平均値に対して所定のマージン(例えば、当該算出された平均値の標準偏差に基づいて算出されるマージン)を加算若しくは減算することで得られる値に相当する時間だけ進んだ時刻がカットオフ時刻Tcに設定されてもよい。或いは、例えば、立位開始時刻Tsから当該算出された平均値に対して所定の係数を掛け合わせることで得られる値に相当する時間だけ進んだ時刻がカットオフ時刻Tcに設定されてもよい。
【0078】
再び
図2において、評価結果出力部142は、ステップS17で算出された評価パラメータに基づいて、被験者900の自律神経機能を評価する(ステップS18)。例えば、評価結果出力部142は、評価パラメータが閾値TH1未満である場合には、被験者900の自律神経機能が「優(めまい度:低)」であると判定してもよい。例えば、評価結果出力部142は、評価パラメータが閾値TH1以上であり且つ閾値TH2(但し、TH2>TH1)未満である場合には、被験者900の自律神経機能が「良(めまい度:中)」であると判定してもよい。例えば、評価結果出力部142は、評価パラメータが閾値TH2以上である場合には、被験者900の自律神経機能が「悪(めまい度:高)」であると判定してもよい。
【0079】
その後、評価結果出力部142は、自律神経機能の評価結果を出力する(ステップS18)。例えば、評価結果出力部142は、自律神経機能の評価結果を、ディスプレイ30上に表示される画像(例えば、自律神経機能の評価結果を文字や図形等で示す画像)として出力する。但し、評価結果出力部142は、自律神経機能の評価結果を、必ずしも出力しなくともよい。
【0080】
その後、制御部11は、再度の評価試験(つまり、再試験)の開始を指示する操作が、評価システム1のユーザによって行われたか否かを判定する(ステップS19)。ステップS19の判定の結果、再度の評価試験の開始を指示する操作が行われたと判定される場合には(ステップS19:Yes)、ステップS13以降の動作が繰り返される。他方で、ステップS19の判定の結果、再度の評価試験の開始を指示する操作が行われていないと判定される場合には(ステップS19:No)、評価システム1の動作が終了する。
【0081】
(2−2)評価パラメータの算出動作の流れ
続いて、
図4及び
図5(a)から
図5(c)を参照しながら、
図2のステップS17で行われる評価パラメータの算出動作について説明する。
図4は、評価パラメータの算出動作の流れを示すフローチャートである。
図5(a)から
図5(c)は、夫々、評価パラメータの算出動作で用いられる中間パラメータを、血流情報が示す血流量の時間波形上で示すグラフである。
【0082】
図4に示すように、パラメータ演算部141は、
図2のステップS13からステップS16の動作が行われている間に取得部12が取得した血流情報に基づいて、以下に説明するステップS172からステップS179に示す動作を実行する。
【0083】
具体的には、パラメータ演算部141は、被験者900が立位姿勢に移行する前の所定期間中の血流量の平均値Fave(
図5(a)から
図5(c)参照)を算出する(ステップS172)。尚、上述したように、説明の便宜上、平均値Faveは、被験者900が座位姿勢をとっている所定期間中の血流量の平均値Faveであるものとする。
【0084】
パラメータ演算部141は、更に、被験者900が立位姿勢に移行した後の血流量の最小値Fmin(
図5(a)から
図5(c)参照)を算出する(ステップS173)。更に、パラメータ演算部141は、血流量が最小値Fminとなった最小時刻Tmin(
図5(a)から
図5(c)参照)を算出する(ステップS173)。例えば、パラメータ演算部141は、血流量の微分結果に基づいて、最小値Fmin及び最小時刻Tminを算出してもよい。具体的には、パラメータ演算部141は、血流量の微分結果がマイナスからプラスに変化する時刻を算出すると共に、当該算出した時刻を最小時刻Tminに設定してもよい。更に、パラメータ演算部141は、算出した最小時刻Tminにおける血流量を、最小値Fminに設定してもよい。
【0085】
その後、パラメータ演算部141は、ステップS172で算出した平均値Fave及びステップS173で算出した最小値Fminに基づいて、被験者900が立位姿勢に移行したことに起因した血流量の減少量ΔF(
図5(a)から
図5(c)参照)を算出する(ステップS174)。具体的には、パラメータ演算部141は、減少量ΔF=平均値Fave−最小値Fminという数式を用いて、減少量ΔFを算出する。
【0086】
パラメータ演算部141は、更に、被験者900が立位姿勢に移行したことに起因して減少した血流量が平均値Faveにまで回復した回復時刻Tr(
図5(a)から
図5(b)参照)を算出する(ステップS175)。例えば、パラメータ演算部141は、立位開始時刻Tsよりも後において血流量が平均値Faveと一致した時刻を算出すると共に、当該算出した時刻を回復時刻Trに設定してもよい。
【0087】
尚、血流量の時間波形が不完全回復型の時間波形である場合には、被験者900が立位姿勢に移行することで減少した血流量が平均値Faveにまで回復しない可能性がある(
図5(c)参照)。この場合には、パラメータ演算部141は、回復時刻Trを算出することができない。従って、パラメータ演算部141は、立位開始時刻Tsよりも後において血流量が平均値Faveと一致しない場合には、回復時刻Trを無限大(或いは、カットオフ時刻Tcよりも大きい任意の値)に設定してもよい。但し、血流量の時間波形が不完全回復型の時間波形である場合であっても、被験者900が立位姿勢に移行することで減少した血流量が、カットオフ時刻Tc以降に平均値Faveにまで回復する場合もある。この場合には、パラメータ演算部141は、実際の回復時刻Trを算出してもよい。但し、この場合の回復時刻Trは、当然にカットオフ時刻Tcよりも大きくなる。
【0088】
その後、パラメータ演算部141は、回復時刻Trがカットオフ時刻Tcよりも早いか否か(つまり、ステップS175で算出した回復時刻Trがカットオフ時刻Tc未満であるか否か)を判定する(ステップS176)。
【0089】
ステップS176の判定の結果、回復時刻Trがカットオフ時刻Tcよりも早いと判定される場合には(ステップS176:Yes)、血流量の時間波形が通常回復型(
図5(a)参照)又は回復遅延型(
図5(b)参照)の時間波形であると推定される。この場合には、パラメータ演算部141は、血流量の時間波形のうち立位開始時刻Tsから回復時刻Trまでの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と平均値Faveとが囲む所定領域(
図5(a)又は
図5(b)の網掛け部分)の面積Sを算出する(ステップS177)。言い換えれば、血流量をyとし、時間をtとし、血流波形がy=f(t)という関数で表される場合には、パラメータ演算部141は、y=f(t)というグラフと、y=Faveというグラフと、t=Tsというグラフと、t=Trというグラフとが囲む所定領域の面積を算出する。
【0090】
パラメータ演算部141は、例えば、立位開始時刻Tsから回復時刻Trまでの間の期間における血流量と平均値Faveとの差分の積分値を算出すると共に、当該積分値を面積Sとして取り扱ってもよい。より具体的には、パラメータ演算部141は、数式1を用いて面積Sを算出してもよい。
【0091】
【数1】
【0092】
他方で、ステップS176の判定の結果、回復時刻Trがカットオフ時刻Tcよりも早くないと判定される場合には(ステップS176:No)、血流量の時間波形が不完全回復型(
図5(c)参照)の時間波形であると推定される。この場合には、パラメータ演算部141は、血流量の時間波形のうち立位開始時刻Tsからカットオフ時刻Tcまでの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と平均値Faveとが囲む所定領域(
図5(c)の網掛け部分)の面積Sを算出する(ステップS178)。言い換えれば、パラメータ演算部141は、y=f(t)というグラフと、y=Faveというグラフと、t=Tsというグラフと、t=Tcというグラフとが囲む所定領域の面積を算出する。
【0093】
パラメータ演算部141は、例えば、立位開始時刻Tsからカットオフ時刻Tcまでの間の期間における血流量と平均値Faveとの差分の積分値を算出すると共に、当該積分値を面積Sとして取り扱ってもよい。より具体的には、パラメータ演算部141は、数式2を用いて面積Sを算出してもよい。
【0094】
【数2】
【0095】
その後、パラメータ演算部141は、ステップS174で算出した減少量ΔFを用いてステップS177又はステップS178で算出した面積Sを正規化することで、正規化面積RAを算出する(ステップS179)。具体的には、パラメータ演算部141は、正規化面積RA=面積S/減少量ΔFという数式を用いて、面積Sを正規化する(つまり、正規化面積RAを算出する)。
【0096】
但し、パラメータ演算部141は、平均値Faveと立位開始時刻Tsから回復時刻Tr(或いは、カットオフ時刻Tc)までの間の期間における血流量との差分を波形として示す差分血流波形に基づいて、面積S(正規化面積RA)を算出してもよい。この場合、面積Sは、差分血流波形と時間軸(
図5(a)から
図5(c)の夫々のグラフにおける横軸)とによって囲まれる領域の面積に相当する。更に、回復時刻Trは、立位開始時刻Ts以降に差分血流波形と時間軸とが交わる時刻に相当する。
【0097】
その後、パラメータ演算部141は、ステップS179で算出した正規化面積RAを、評価パラメータとして評価結果出力部142に出力する。その結果、評価結果出力部142は、正規化面積RAに基づいて、自律神経機能を評価する。例えば、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、血流量の時間波形が通常回復型である場合の正規化面積RAは、血流量の時間波形が回復遅延型である場合の正規化面積RAよりも小さくなる。例えば、
図5(b)及び
図5(c)に示すように、血流量の時間波形が回復遅延型である場合の正規化面積RAは、血流量の時間波形が不完全回復型である場合の正規化面積RAよりも小さくなる。従って、正規化面積RAと自律神経機能の良否との間には相関がある。従って、評価結果出力部142は、正規化面積RAに基づいて、自律神経機能を適切に評価することができる。
【0098】
(3)技術的効果
続いて、本実施例の評価装置10によって得られる技術的効果について説明する。
【0099】
上述したように、評価装置10は、被験者900の血流量の時間波形がどのような反応型であっても、「正規化面積RA」という共通の評価パラメータを用いて、自律神経機能を評価することができる。従って、評価装置10は、血流量の時間波形の反応型の違いに応じて選択される異なる複数のパラメータを用いて自律神経機能を評価する比較例の評価装置と比較して、反応型毎の評価精度のばらつきを抑制することができる。つまり、血流量の時間波形が通常回復型又は回復遅延型である場合の評価装置10の評価精度と、血流量の時間波形が不完全回復型である場合の評価装置10の評価精度とは一致する(或いは、大きく異なることはない)。従って、評価装置10は、比較例の評価装置と比較して、自律神経機能をより高精度に評価することができる。
【0100】
加えて、評価装置10は、面積Sを評価パラメータとして用いることに代えて、正規化面積RAを評価パラメータとして用いている。このため、評価装置10は、被験者900毎に減少量ΔFが異なる場合であっても、自律神経機能を適切に評価することができる。以下、
図6(a)から
図6(b)を参照しながら、正規化面積RAを評価パラメータとして用いることで得られる技術的効果について更に説明する。
図6(a)及び
図6(b)は、自律神経機能の悪化度合いと面積S及び正規化面積RAとの間の相関を示すグラフである。尚、
図6(a)及び
図6(b)に示す相関は、本願発明者等の実験によって得られた相関であり、ここでの「自律神経機能の悪化度合い」とは、より正確には本願発明者らの実験における糖尿病患者の神経障害の悪化度合いの評価結果に基づくものである。
【0101】
図6(a)は、自律神経機能の悪化度合いと面積Sとの間の相関を示している。
図6(a)に示すように、自律神経機能の悪化度合いと面積Sとの間には、一定の相関が存在する。しかしながら、
図6(a)に示すように、自律神経機能が重度に悪化している場合の面積Sは、理論的には自律神経機能が中度に悪化している場合の面積Sよりも大きくなるはずであるものの、実際には、自律神経機能が中度に悪化している場合の面積Sより小さくなってしまっている。この理由は、以下のとおりであると推定される。まず、面積Sは、血流量の反応型を決定付ける立位開始時刻Tsから回復時刻Trまでの期間の長さのみならず、減少量ΔFにも依存して変動する。従って、被験者900が健常者である場合(つまり、立位開始時刻Tsから回復時刻Trまでの期間の長さが十数秒となる場合)であっても、当該被験者900の減少量ΔFが相対的に大きい場合には、面積Sが相対的に大きくなる。従って、健常者であるはずの被験者900の血流量の反応型が、回復遅延型又は不完全回復型であると誤って判定される可能性がある。同様に、被験者900が健常者でない場合であっても、当該被験者900の減少量ΔFが相対的に小さい場合には、面積Sが相対的に小さくなる。従って、健常者でないはずの被験者900の血流量の反応型が、通常回復型であると誤って判定される可能性がある。つまり、面積Sが減少量ΔFに依存して変動するがゆえに、自律神経機能の悪化度合いと面積Sとの間の相関の精度が悪化する場合がある。
【0102】
一方で、
図6(b)は、自律神経機能の悪化度合いと正規化面積RAとの間の相関を示している。
図6(b)に示すように、自律神経機能の悪化度合いと正規化面積RAとの間には、自律神経機能の悪化度合いと面積Sとの間の相関よりも強い相関が存在する。これは、面積Sを減少量ΔFで正規化することで正規化面積RAが得られるがゆえに、正規化面積RAが減少量ΔFに依存して変動しにくくなるからである。従って、評価装置10は、このような正規化面積RAに基づいて自律神経機能を評価することで、被験者900の個体差の影響(特に、減少量ΔFに関連する個体差の影響)を受けることなく自律神経機能を適切に評価することができる。
【0103】
特に、
図6(a)及び
図6(b)は、夫々、自律神経機能の悪化度合い毎の面積S及び正規化面積RAの誤差(エラーバー)も合わせて示している。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、自律神経機能の悪化度合いに対する正規化面積RAの誤差は、自律神経機能の悪化度合いに対する面積Sの誤差よりも小さくなる。誤差が小さくなる理由は、上述した減少量ΔFでの正規化である。その結果、減少量ΔFでの正規化により、面積Sに基づく自律神経機能の悪化度合いの評価精度と比較して、正規化面積RAに基づく自律神経機能の悪化度合いの評価精度が高くなる。このように正規化面積RAの誤差が相対的に小さくなるという点においても、評価装置10は、正規化面積RAを評価パラメータとして用いることで、自律神経機能を適切に評価することができる。
【0104】
但し、
図6(a)に示すように、自律神経機能の悪化度合いと面積Sとの間には、一定の相関が存在することもまた事実である。従って、評価装置10は、正規化面積RAに加えて又は代えて、面積Sに基づいて自律神経機能を評価してもよい。
【0105】
加えて、面積Sを減少量ΔFで正規化することで正規化面積RAが得られるがゆえに、正規化面積RAの次元は、時間の次元と一致する。つまり、評価装置10は、被験者900の血流量の時間波形がどのような反応型であっても、血流量の反応型を決定付ける立位開始時刻Tsから回復時刻Trまでの期間の長さと同じ次元を有する「正規化面積RAという評価パラメータ」に基づいて、自律神経機能を評価することができる。この意味においても、評価装置10は、自律神経機能をより高精度に評価することができる。
【0106】
加えて、評価装置10は、カットオフ時刻Tcを採用することで、血流量の反応型が不完全回復型となる場合であっても、正規化面積RAを算出することができる。つまり、評価装置10は、カットオフ時刻Tcを採用することで、被験者900の血流量の時間波形がどのような反応型であっても、正規化面積RAという共通の評価パラメータに基づいて自律神経機能を評価することができる。
【0107】
(4)変形例
以下、本実施例の評価システム1の変形例について説明する。
【0108】
(4−1)第1変形例
初めに、
図7(a)から
図7(c)を参照しながら、第1変形例について説明する。
図7(a)から
図7(c)は、夫々、血流情報が示す血流量の時間波形上で第1変形例の面積Sを示すグラフである。
【0109】
上述した実施例では、評価パラメータ演算部141は、血流量の時間波形のうち立位開始時刻Tsから回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcまでの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と平均値Faveとが囲む所定領域の面積Sを算出する。一方で、第1変形例では、
図7(a)から
図7(c)に示すように、評価パラメータ演算部141は、血流量の時間波形のうち最小時刻Tminから回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcまでの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と平均値Faveとが囲む所定領域の面積Sを算出する。
【0110】
このような面積Sを用いる第1変形例においても、評価装置10は、上述した各種効果を享受することができる。
【0111】
加えて、被験者900が立位姿勢に移行することで減少した血流量が被験者900の血圧調整機能に起因して増加することは上述したとおりである。血圧調整機能は、自律神経機能に密接に関連することもまた上述したとおりである。従って、血流量の時間波形のうち被験者900が立位姿勢に移行することで減少した血流量が増加している期間中の波形部分は、血圧調整機能の悪化度合い(つまり、自律神経機能の悪化度合い)により密接に関連している可能性が相対的に高い。従って、第1変形例では、評価装置10は、自律神経機能を評価するために、血流量の時間波形のうち自律神経機能の悪化度合いにより密接に関連する波形部分に着目することができる。このため、評価装置10は、自律神経機能をより高精度に評価することができる。
【0112】
尚、評価パラメータ演算部141は、血流量の時間波形のうち立位開始時刻Tsと最小時刻Tminとの間の任意の時刻から回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcまでの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と平均値Faveとが囲む所定領域の面積Sを算出してもよい。評価パラメータ演算部141は、血流量の時間波形のうち最小時刻Tminと回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcとの間の任意の時刻から回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcまでの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と平均値Faveとが囲む所定領域の面積Sを算出してもよい。つまり、面積Sを規定する時間波形の開始部分を特定する時刻が任意に調整されてもよい。
【0113】
評価パラメータ演算部141は、血流量の時間波形のうち立位開始時刻Tsから立位開始時刻Tsと回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcとの間の任意の時刻までの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と平均値Faveとが囲む所定領域の面積Sを算出してもよい。つまり、面積Sを規定する時間波形の終了部分を特定する時刻が任意に調整されてもよい。
【0114】
評価パラメータ演算部141は、血流量の時間波形のうち立位開始時刻Tsと回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcとの間の任意の第1時刻から立位開始時刻Tsと回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcとの間の任意の第2時刻(但し、第2時刻は第1時刻よりも遅い)までの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と平均値Faveとが囲む所定領域の面積Sを算出してもよい。つまり、面積Sを規定する時間波形の開始部分及び終了部分の双方を特定する時刻が任意に調整されてもよい。
【0115】
(4−2)第2変形例
続いて、
図8(a)から
図8(c)を参照しながら、第2変形例について説明する。
図8(a)から
図8(c)は、夫々、血流情報が示す血流量の時間波形上で第2変形例の面積Sを示すグラフである。
【0116】
上述した実施例では、回復時刻Trは、被験者900が立位姿勢に移行したことに起因して減少した血流量が平均値Faveにまで回復した時刻である。一方で、第2変形例では、
図8(a)から
図8(c)に示すように、回復時刻Trは、被験者900が立位姿勢に移行したことに起因して減少した血流量が平均値Faveよりも小さい中間値Fcにまで回復した時刻である。従って、第2変形例では、評価パラメータ演算部141は、血流量の時間波形のうち立位開始時刻Tsから回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcまでの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と中間値Fcとが囲む所定領域の面積Sを算出する。
【0117】
中間値Fcは、平均値Faveに対して所定の係数RF2(但し、0≦RF2≦1)を掛け合わせることで得られる値であってもよい。係数RF2は、0.5以上であってもよいし、0.8以上であってもよい。係数RF2は、0.9以上であることが好ましい。係数RF2は、0.95以上であることがより好ましい。
【0118】
中間値Fcは、被験者900が立位姿勢に移行することで減少量ΔFだけ減少した血流量が、減少量ΔF×所定の係数RF1(但し、0≦RF1≦1)だけ回復したと仮定した場合の血流量であってもよい。つまり、中間値Fcは、平均値Fave−減少量ΔF+減少量ΔF×係数RF1=平均値Fave−減少量ΔF(1−係数RF1)という数式に基づいて定められてもよい。係数RF1は、0.5以上であってもよいし、0.8以上であってもよい。係数RF1は、0.9以上であることが好ましい。係数RF1は、0.95以上であることがより好ましい。
【0119】
このような面積Sを用いる第2変形例においても、評価装置10は、上述した各種効果を享受することができる。
【0120】
(4−3)第3変形例
続いて、
図9(a)から
図9(c)を参照しながら、第3変形例について説明する。
図9(a)から
図9(c)は、夫々、血流情報が示す血流量の時間波形上で第3変形例の面積Sを示すグラフである。
【0121】
上述した実施例では、評価パラメータ演算部141は、血流量の時間波形のうち立位開始時刻Tsから回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcまでの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と平均値Faveとが囲む所定領域の面積Sを算出する。一方で、第3変形例では、
図9(a)から
図9(c)に示すように、評価パラメータ演算部141は、血流量の時間波形のうち立位開始時刻Tsから最小時刻Tminまでの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と平均値Faveとが囲む所定領域の面積S1、及び、最小時刻Tminから回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcまでの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と平均値Faveとが囲む所定領域の面積S2を別個に算出する。その後、パラメータ演算部141は、減少量ΔFを用いて面積S1を正規化することで正規化面積RA1を算出し、減少量ΔFを用いて面積S2を正規化することで正規化面積RA2を算出する。
【0122】
その後、評価結果出力部142は、正規化面積RA1及びRA2に基づいて、自律神経機能を評価する。例えば、評価結果出力部142は、正規化面積RA1に基づいて自律神経機能を評価し、正規化面積RA2に基づいて自律神経機能を評価し、正規化面積RA1に基づく評価結果及び正規化面積RA2に基づく評価結果に基づいて、自律神経機能を評価してもよい。或いは、評価結果出力部142は、正規化面積RA1及びRA2から算出されるパラメータ(例えば、正規化面積RA1と正規化面積RA2との和又は比率等)に基づいて、自律神経機能を評価してもよい。
【0123】
このような面積を用いる第3変形例においても、評価装置10は、上述した各種効果を享受することができる。
【0124】
加えて、血流量の時間波形のうち被験者900が立位姿勢に移行することで減少した血流量が増加している期間中の波形部分が血圧調整機能の悪化度合い(つまり、自律神経機能の悪化度合い)により密接に関連している可能性が相対的に高いことは、第1変形例において上述したとおりである。つまり、正規化面積RA2は、自律神経機能の悪化度合いに関連している可能性が相対的に高い。一方で、血流量の時間波形のうち被験者900が立位姿勢に移行することで血流量が減少している期間中の波形部分もまた、血圧調整機能の悪化度合い(つまり、自律神経機能の悪化度合い)にある程度関連している可能性はある。例えば、血流量の時間波形のうち被験者900が立位姿勢に移行することで血流量が減少している期間中の波形部分は、血圧調整機能が作用し始めるまでに要する時間を示しているとも言える。従って、正規化面積RA1は、自律神経機能のうち血圧調整機能の立ち上げ(アクティベーション)と言う第1機能部分に関連しており、正規化面積RA2は、自律神経機能のうち血圧調整機能の立ち上げ後の動作という第2機能部分に関連していると言える。つまり、正規化面積RA1及びRA2は、夫々、自律神経機能の異なる機能部分の悪化度合いに関連している可能性が相対的に高いと言える。第3変形例では、パラメータ演算部141は、自律神経機能のうち異なる機能部分に夫々関連する複数の面積S(複数の正規化面積RA)を算出することができる。従って、評価装置10は、自律神経機能を高精度に評価することができる。
【0125】
尚、評価パラメータ演算部141は、3つ以上の面積S(言い換えれば、正規化面積RA)を算出してもよい。つまり、評価パラメータ演算部141は、血流量の時間波形のうち立位開始時刻Tsと回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcとの間における任意の期間#1中の血流量の変化(推移)を示す波形部分#1と平均値Faveとが囲む所定領域の面積S1と、血流量の時間波形のうち立位開始時刻Tsと回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcとの間における任意の期間#2中の血流量の変化(推移)を示す波形部分#2と平均値Faveとが囲む所定領域の面積S2と、・・・、血流量の時間波形のうち立位開始時刻Tsと回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcとの間における任意の期間#k(但し、kは、3以上の整数)中の血流量の変化(推移)を示す波形部分#kと平均値Faveとが囲む所定領域の面積Skとを算出してもよい。
【0126】
また、第3変形例においても、第2変形例と同様に、回復時刻Trは、被験者900が立位姿勢に移行したことに起因して減少した血流量が平均値Faveよりも小さい中間値Fcにまで回復した時刻であってもよい。つまり、評価パラメータ演算部141は、第2変形例と同様の算出態様で面積S1及びS2の夫々を算出してもよい。具体的には、
図10(a)から
図10(c)に示すように、評価パラメータ演算部141は、血流量の時間波形のうち立位開始時刻Tsから最小時刻Tminまでの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と中間値Fcとが囲む所定領域の面積S1、及び、最小時刻Tminから回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcまでの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と中間値Fcとが囲む所定領域の面積S2を別個に算出してもよい。
【0127】
また、第3変形例において、血流量が中間値Fcにまで回復した時刻が回復時刻Trとなる場合には、
図11(a)から
図11(c)に示すように、評価パラメータ演算部141は、血流量の時間波形のうち立位開始時刻Tsから最小時刻Tminまでの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と平均値Faveとが囲む所定領域の面積S1、及び、最小時刻Tminから回復時刻Tr又はカットオフ時刻Tcまでの間の期間中の血流量の変化(推移)を示す波形部分と中間値Fcとが囲む所定領域の面積S2を別個に算出してもよい。自律神経機能を評価してもよい。
【0128】
(4−4)第4変形例
続いて、第4変形例について説明する。上述した実施例では、被験者900の血流量を変化させる(具体的には、一時的に血流量を減少させる)ための状態変化として、被験者900の姿勢が座位姿勢から立位姿勢に移行するという状態変化が用いられている。しかしながら、被験者900の血流量を変化させるための状態変化として、被験者900の状態が任意の第1状態から任意の第2状態に移行するという任意の状態変化が用いられてもよい。以下、被験者900の血流量を変化させるための状態変化の他の一例について説明する。
被験者900の血流量を変化させるための状態変化は、被験者900がベッド上での臥位姿勢から床へ立位姿勢をとるという状態変化であってもよい。この場合、状態変化が生ずる前の被験者900の第1状態は、被験者900が臥位姿勢をとっている状態である。一方で、状態変化が生じた後の被験者900の第2状態は、被験者900が立位姿勢であるという状態である。
【0129】
被験者900の血流量を変化させるための状態変化は、被験者900の下肢大腿部(或いは、その他任意の部位)を圧迫しているカフが取り外される又は緩められるという状態変化であってもよい。この場合、状態変化が生ずる前の被験者900の第1状態は、被験者900の下肢大腿部がカフで圧迫されているという状態である。一方で、状態変化が生じた後の被験者900の第2状態は、被験者900の下肢大腿部がカフで圧迫されていないという状態である。
【0130】
被験者900の血流量を変化させるための状態変化は、被験者900の下半身(その他任意の部位)を負圧環境下にさらすという状態変化であってもよい。この場合、状態変化が生ずる前の被験者900の第1状態は、被験者900の下半身が負圧環境下にさらされていないという状態である。一方で、状態変化が生じた後の被験者900の第2状態は、被験者900の下半身が負圧環境下にさらされているという状態である
被験者900の血流量を変化させるための状態変化は、被験者900の交感神経を刺激するという状態変化であってもよい。この場合、状態変化が生ずる前の被験者900の第1状態は、被験者900の交感神経が未だ刺激されていないという状態である。一方で、状態変化が生じた後の被験者900の第2状態は、被験者900の交感神経が既に刺激されているという状態である。尚、ここで言う刺激とは、被験者900の体に直接的に触れる物理的な刺激であってもよい。或いは、ここで言う刺激とは、被験者900の精神に影響を与える精神的な刺激であってもよい。
【0131】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う評価装置、出力方法、及び、コンピュータプログラムもまた本発明の技術思想に含まれる。