(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記機器間認証の確認を間欠的または連続的に実施し、前記確認がなされない場合は機器間のデータ通信が停止される請求項1または2に記載の薬液注入工法における施工管理システム。
前記機器間認証の確認を間欠的または連続的に実施し、前記確認がなされない場合は機器間のデータ通信が停止される請求項5または6に記載の薬液注入工法における施工管理方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
図1は本実施形態による薬液注入工法における施工管理システムの概略を示す図である。
【0020】
図1のように、薬液注入工法における施工管理システムは、改良対象地盤Gを削孔して溶液型の恒久薬液を注入することで地盤G内に固化体Cを形成し地盤を固化する薬液注入工法を施工する際の管理システムであり、各種のデータ・情報を受信し情報処理サービスを提供するクラウドサーバ1と、認証情報を受信し保存する認証サーバ2と、現場事務所に設置されインターネット接続のための通信機5を有するパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」とよぶ。)3と、管理事務所に設置されインターネット接続のための通信機5を有するパソコン4と、がインターネット10を介して接続可能に構成されている。
【0021】
図1において、薬液注入工法の施工現場における地盤削孔のための削孔機11には削孔位置を検出し計測する削孔用計測器が設けられ、その削孔位置情報が、データ収集機能と通信機能とを有するIoTモジュールを組み込んだ処理端末12からインターネット10を経由してクラウドサーバ1にデータ送信される。また、地盤内に溶液型の恒久薬液を注入する注入機21には、薬液注入速度・薬液注入量・薬液注入圧力等の薬液注入情報を計測する薬液注入用計測器が設けられ、その薬液注入情報がデータ収集機能と通信機能とを有するIoTモジュールを組み込んだ処理端末25からインターネット10を経由してクラウドサーバ1にデータ送信される。
【0022】
図1の管理システムによれば、通信機能を有する処理端末12,25により、削孔機11と注入機21の各計測器から出力される計測データをリアルタイムにインターネット10上のクラウドサーバ1に集約することで、パソコン3,4が設置された離れた場所の管理事務所等においても、リアルタイムに施工状況(削孔位置、薬液注入位置、薬液注入速度、薬液注入量、薬液注入圧力等)を確認することができる。
【0023】
図1の管理システムにおける機器構成について
図2を参照して説明する。
図2は、
図1の各機器の構成例を示すブロック図である。
【0024】
クラウドサーバ1は、コンピュータ機能を有し各種の情報処理サービスを提供する情報処理装置で、削孔機11や注入機21等からインターネット経由で受信した計測データを保存する施工情報データベース1aを有し、また、帳票形式のデータ生成やハッシュ値等のデータ認証情報の演算や3次元モデル表示等の情報処理を行う。なお、クラウドサーバとは、クラウド上に構築され情報処理サービスをインターネット経由で提供するサーバであり、ユーザはハードウェアの保守管理等が不要でかつ容量等が容易に拡張可能という特徴を有する。
【0025】
認証サーバ2は、コンピュータ機能を有し認証サービスを提供する情報処理装置で、公正性が保障された認証局2aを構成し、クラウドサーバ1からインターネット経由で受信したハッシュ値等によるデータ認証情報や管理履歴等を認証局2aで保存し管理する。
【0026】
パソコン3,4は、コンピュータ機能を有し、インターネット10を介して通信を行う通信機5と、情報処理を行う処理部6と、各種データや情報を表示する液晶等からなる表示器7と、を有する。
【0027】
削孔機11は、削孔用計測器として、削孔位置を検出するための固定式位置検出装置13と挿入式位置検出装置14とを備え、検出装置13,14で取得した削孔位置に関する計測データおよび時刻情報を処理端末12がRS-232Cやイーサネット等の通信規格による通信で受信する。これらの計測データをLTEや3G等の通信規格によるモバイル通信によってインターネット経由でクラウドサーバ1に送信する。また、トータルステーション(TS)等からなる測量機15による測量によって削孔機11の削孔開始点の位置データを取得し、その計測データを無線機16によりWi-FiやBluetooth(登録商標)の通信規格による通信で処理端末12に送り、処理端末12からLTEや3G等の通信規格によるモバイル通信によってインターネット経由でクラウドサーバ1に送信する。また、液晶等からなる表示器17に処理端末12からの各計測データを表示し、施工場所で削孔位置に関するデータ確認を行うことができるようになっている。
【0028】
また、複数の注入機21,22,23が設置され、薬液注入用計測器として各注入機21〜23に設けられた流量圧力計43(
図5)により施工中の薬液の流量・圧力のデータを取得し、これらの計測データを信号受信機21a、22a、23aが受信し、信号受信機21a〜23aからRS-232Cやイーサネット等の通信規格による通信により、パソコンやコントローラ(
図5)等から構成される集中管理装置24に集約し、かかる集約された計測データおよび時刻情報がRS-232Cやイーサネット等の通信規格による通信で処理端末25に送信される。これらの計測データは処理端末25からLTEや3G等の通信規格によるモバイル通信によってインターネット経由でクラウドサーバ1に送信される。また、液晶等からなる表示器26に処理端末25からの各計測データを表示し、施工場所で薬液注入に関するデータ確認を行うことができるようになっている。
【0029】
次に、
図1,
図2の削孔機および削孔機にセットされる削孔ツールスについて
図3,
図4を参照して説明する。
図3は、
図1,
図2の削孔機を概略的に示す図である。
図4は、
図3の削孔機にセットされる削孔ツールスの構成例を概略的に示す側面図である。
【0030】
削孔機11は、
図4の削孔ツールス31をセットし回転可能に固定する固定部11aと、削孔ツールス31を地盤内において回転させ押し込む駆動部(図示省略)と、を有する。
【0031】
図4のように、削孔ツールス31は、特殊鋼からなる複数の中空ロッド32aと、先端にテーパ面のあるロストビット33と、を備え、曲線削孔に用いられる。削孔ロッド32は各ロッド32aがジョイント部36で接続されることで全体として細長く構成される。また、削孔位置をリアルタイムに検出する
図2の固定式位置検出装置13を収容するための中空の収容ケース34が先端近傍に設けられている。なお、固定式位置検出装置13の給電とデータ通信のための導線(図示省略)が削孔ロッド32内に組み込まれている。
【0032】
図4の削孔ロッド32は、
図3の削孔機11の固定部11aにセットされた後、削孔機11から回転力と押し込み力が加えられて地盤内の曲線削孔を行う。所定位置まで削孔すると、先端のロストビット33をロストすることで、削孔ロッド32の全体をパイプ状にし、薬液注入のための注入外管を内部に挿入し建て込むことができる。
【0033】
固定式位置検出装置13は、加速度センサとジャイロとから構成され、削孔ロッド32の先端部における水平方向の相対的な方位角と絶対的な傾斜角と先端の回転角とを、削孔工程中にリアルタイムに検出し、ビット先端の3次元位置情報を得る。また、挿入式位置検出装置14は、
図4のように、削孔ロッド32の中空内に挿入されるように構成されたロッド状のセンサプローブであり、加速度センサとジャイロとから構成されている。削孔後、センサプローブを削孔ロッド32の先端まで挿入してから削孔口まで引き抜きながら三次元位置情報を取得し削孔ロッド32の全体の3次元形状を計測する。挿入式位置検出装置14の位置検出精度は、固定式位置検出装置13よりも高くなっている。なお、固定式位置検出装置13および挿入式位置検出装置14は、たとえば特開2012-97430号公報に具体例が開示されている。
【0034】
また、削孔機11には、施工現場での制御管理のためのコントローラ38と、その制御データや各種情報を表示し入力可能な液晶等からなる入力表示部39と、が接続されている。コントローラ38には、別経路で取得される、固定式位置検出装置13および挿入式位置検出装置14からの測定データを入力して入力表示部39に表示することができ、また、
図2の測量機15から測量データが無線機16、処理端末12を介して入力する。
【0035】
次に、
図1,
図2の注入機の具体例について
図5を参照して説明する。
図5は、
図1,
図2の注入機の概略構成例を示す図である。
【0036】
図5のように、注入機21は、溶液型の恒久薬液を攪拌混合するミキサ41と、恒久薬液を送り込むインジェクションポンプ42と、恒久薬液の流量と圧力を検出する流量圧力計43と、を備え、インジェクションポンプ42により溶液型の恒久薬液を、ホース44、二重管注入ホース45を介して、地盤G内に建て込まれた注入外管46に送り込むことで地盤G内に薬液注入を行い、固化体Cを形成する。流量圧力計43からの薬液の流量・圧力のデータは、信号受信機21aを介して集中管理装置24に集約される。
【0037】
集中管理装置24は、薬液注入の各種制御を実行するために、ミキサ41やインジェクションポンプ42を制御するコントローラ48と、その制御データや各種情報を表示し入力可能な液晶等からなる入力表示部48aと、流量圧力計43からのデータが入力されてチャート式記録紙に記録されるようにした薬液注入用流量圧力測定装置49と、を有する。
【0038】
なお、二重管注入ホース45は、薬液・セメントベントナイト・洗浄水の第1系統と、ダブルパッカー膨張のための水の第2系統とからなる二重管構造となっている。また、
図2の注入機22,23も
図5と同様に構成されてよい。
【0039】
なお、本実施形態において薬液注入工程を実施し管理する上での管理項目として、削孔に関しては、削孔位置、削孔角度、削孔長があり、これらの測定データは、固定式位置検出装置13,挿入式位置検出装置14および測量機15により、また、必要に応じて他の計測器等を用いて取得することができる。また、薬液注入に関しては、注入量、注入速度、注入圧力、注入位置、先端深度、セメントベントナイト充填があり、これらの測定データは、流量圧力計43により、また、必要に応じて他の計測器等を用いて取得でき、流量圧力測定装置49でチャート記録紙に記録することができる。
【0040】
本実施形態における曲がり削孔による薬液注入工法の施工工程について
図6,
図7を参照して説明する。
図6は、本実施形態における曲がり削孔による薬液注入工法の施工状況を概略的に示す図(a)〜(h)である。
図7は、本実施形態における薬液注入工法の施工工程S01〜S14を説明するためのフローチャートである。本実施形態における薬液注入工法は、削孔工程S02〜S06と、注入工程S07〜S14とに大別される。
【0041】
まず、事前準備S01として各機器や各資材の準備・搬入等が行われる。次に、
図6(a)のように、削孔機11を施工現場の所定位置に設置する(S02)。削孔機11には
図4の削孔ツールス31がセットされる。
【0042】
次に、削孔機11を駆動し、
図6(b)のように、削孔を鉛直方向から傾斜した方向に直線的に行い、途中、曲がるように向きが制御され、水平方向に行われる(S03)。このとき、
図4の固定式位置検出装置13により削孔ツールス31の削孔ロッド32の先端位置が検出されロッド先端の姿勢が制御される。なお、削孔ロッド32は必要長さに応じてロッド32a(
図4)が継ぎ足される。
【0043】
次に、
図4の挿入式位置検出装置14を削孔ロッド32内に先端まで挿入し、
図6(c)のように、挿入式位置検出装置14に接続されたワイヤ37を送出し巻取り装置18を通してウインチ19により巻き取ることで挿入式位置検出装置14を引き抜きながら削孔経路の位置計測を行う(S04)。削孔の位置情報は、この位置計測結果に置き換えられる。この位置計測は、たとえば、曲線削孔時には3〜6m毎、直線削孔時には9〜18m毎に行われる。
【0044】
上記位置情報に基づいて削孔位置が計画位置に到達したか否かが判断され(S05)、到達していないと判断されると、
図6(d)のように、上記位置情報が固定式位置検出装置13に引き継がれて、削孔が継続される。
【0045】
削孔位置が計画位置に到達したと判断されると、削孔が完了し、削孔機11を搬出する(S06)。
【0046】
次に、薬液注入のために
図5の注入機21を設置する(S07)。具体的には、
図6(e)のように、削孔機11により削孔ロッド32を逆回転させて先端のロストビット33を外してロストする。次に、
図6(f)のように、注入外管46を削孔ロッド32内に挿入する。次に、
図6(g)のように、削孔ロッド32を引き抜き、注入外管46を地盤G内に残置する。
【0047】
次に、注入時の薬液の逸走防止のため注入外管46にダブルパッカー式の注入装置を挿入し、セメントベントナイト等によるスリーブパッカー注入を行う(S08)。このときの注入速度と注入量を計測器(図示省略)により測定し確認する(S09)。所定の注入量を注入したか否かを判断し(S10)、満たない場合は注入を続け、満たした場合は注入を終了する。
【0048】
次に、
図5のように、ミキサ41で攪拌混合された溶液型の恒久薬液がインジェクションポンプ42によりホース44,45を通して注入外管46に送られ、注入外管46に設けられた注入口から地盤G内に注入される(S11)。かかる薬液注入により、
図6(h)のように、地盤G内に薬液が浸透し、固化体Cが形成される。
【0049】
なお、溶液型の恒久薬液としては例えばシリカ系水溶液型の薬液を用いることができ、たとえば、Na
2O/nSiO
2もしくはK
2O/nSiO
2とその硬化剤である無機塩類、有機塩類、金属酸化物、金属水酸化物、無機酸、有機酸、酸性塩、塩基性塩等とを組み合わせて調製したもの、または、シリカ微粒子とその硬化剤とを組み合わせて調製したものを用いることができる(特許文献1参照)が、これらに限定されるものではない。
【0050】
薬液注入における注入速度と注入量を
図5の流量圧力計43で測定し
図2の表示器26や
図5の流量圧力測定装置49により確認する(S12)。所定の注入量を注入したか否かを判断し(S13)、満たない場合は注入を続け、満たした場合は注入を終了する。次に、注入機を搬出する(S14)。
【0051】
上述のようにして、曲がり削孔による薬液注入工法を実施できるが、鉛直削孔による薬液注入工法も同様にして実行できる。すなわち、
図5のように、鉛直方向に削孔し、注入外管46を鉛直方向に建て込んでから、同様の工程を経ることで薬液注入を実施できる。なお、本薬液注入工法は、浸透固化処理工法として実施可能であり、
図7の施工工程S01〜S14については非特許文献1に詳述されている。
【0052】
本実施形態では
図2の各計測器とインターネットによるデータ送信に関係する各機器と表示器や測定装置等との間で機器間認証をすることで、機器のすり替えや表示部や測定装置等でのデータ改ざんを防止するようになっている。かかる機器間認証について
図8〜
図11を参照して説明する。
図8は、本実施形態における機器間認証の構成例を説明するためのフローチャートである。
図9は、
図8の機器間認証の具体例を説明するための図である。
図10は、
図9の機器間認証の具体例で中間の機器をすり替えた場合を説明するための図である。
図11は、
図9の機器間認証の具体例で機器間に改ざん目的の機器が入った場合を説明するための図である。
【0053】
図8のように、機器Aが機器Bに接続される場合の機器間認証を例にすると、まず、接続される側の機器Aが乱文を生成し(S21)、機器Bへ乱文を送信する(S22)。次に、機器Bは、機器Bの持つ公開鍵で乱文を暗号文にし(S23)、機器Aに返送する(S24)。次に、機器Aは機器Bから送られてきた暗号文を機器Aの持つ秘密鍵で復号化する(S25)。次に、機器Aは、機器Aで作成した乱文と複合化した暗号文とを比較し(S26)、両者が一致すれば、機器間接続を許可する。不一致であれば機器間接続を許可しない。なお、機器Bは、機器Bが機器Aへ接続可能な端末であれば、必ず一致する公開鍵を持っている。
【0054】
図9を参照して、機器Aと機器Bと機器Cとの機器間認証について具体的に説明する。機器Aは認証装置aを有し暗号化をし、機器Bは認証装置bを有し復号化をし、機器Cは認証装置cを有し復号化をするようになっている。機器Aと機器Bと機器Cは、通信ケーブル51でデータ通信可能に接続されるとともに、通信ケーブル51により機器間認証のための信号を送受信する。すなわち、
図9の開始パルス51aのように機器Aの認証装置aから通信開始時に暗号認証に必要なパルス信号を機器Bに送信する。機器Bが受信すると、認証装置bで復号化し、認証をする。同様に、機器Cが受信すると、認証装置cで復号化し、認証をする。また、
図9の中間パルス51bのように、機器A〜C間でデータ通信を行っている間にも機器Aからパルス信号を機器B,Cに送信し、同様に、認証をする。パルス51aとパルス51bとの時間間隔は、適宜設定可能で、パルス51bは、ほぼ連続的に発生させるようにでき、また、間欠的に発生させるようにしてもよい。
【0055】
図9の機器Aと機器Bと機器Cにおいて、
図10のように、機器Bを改ざん目的で機器B’にすり替えた場合、機器Aの認証装置aから暗号認証に必要なパルス信号を機器B’に送信しても、機器B’は機器Aと一致する公開鍵を持っていないので、正しく復号化できず、認証ができないため、
図10の機器B’から機器Cへの出力52aのように、出力零で、機器Cへデータを送信することができない。
【0056】
また、
図9の機器Aと機器Bと機器Cにおいて、
図11のように、機器AとBとの間に改ざん目的の機器ABが入った場合、機器Aの認証装置aからパルス51a,51bのように、パルス信号を送信しても、機器ABは機器Aと一致する公開鍵を持っていないので、機器Bの認証装置bで復号化できず、その結果、機器Bへの出力51cのように、出力零で、機器Bへデータを送信することができない。
【0057】
以上のように、
図9のように機器Aと機器Bと機器Cとの機器間認証がなされると、
図10のように中間にある機器をすり替えた場合や
図11のように機器間に改ざん目的で機器を入れた場合、認証が行われないため、データ通信が不能になり、管理システム構成の改ざんを防止することができる。
【0058】
なお、
図9〜
図11において、たとえば、機器Aを注入機21の流量圧力計43(
図5)、機器Bを集中管理装置24,機器Cを表示器26とすることができるが、これらは一例であって、
図2の薬液注入工程の管理システムを構成する他の機器、すなわち、信号受信機21a,処理端末25,流量圧力測定装置49(
図5)を機器間認証の対象としてもよい。また、
図2の削孔工程における管理システムを構成する固定式位置検出装置13、挿入式位置検出装置14、処理端末12、表示器17、測量機15および無線機16を機器間認証の対象としてもよい。
【0059】
また、削孔工程に関するデータを取得するための削孔用計測器としては、固定式位置検出装置13と挿入式位置検出装置14と測量機15があり、削孔工程に関するデータをインターネット経由で送信するための第1送信手段としては、処理端末12と無線機16があり、また、データ表示手段としては表示器17があるが、これらのすべて、もしくは、その一部、または、少なくとも削孔用計測器と第1送信手段の一部とを機器間認証するように構成することができる。
【0060】
また、薬液注入工程に関するデータを取得するための薬液注入用計測器としては流量圧力計43があり、データ記録手段としてはチャート記録式流量圧力測定装置49があり、薬液注入工程に関するデータをインターネット経由で送信するための第2送信手段としては、信号受信機21a,集中管理装置24,処理端末25があり、また、データ表示手段としては表示器26があるが、これらのすべて、もしくは、その一部、または、少なくとも流量圧力計43と第2送信手段の一部とを機器間認証するように構成することができる。
【0061】
次に、
図7の本実施形態による薬液注入工法の削孔工程S02〜S06におけるデータ処理について
図12,
図13を参照して説明する。
図12は、本実施形態による薬液注入工法の削孔工程におけるデータ処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図13は、
図12の削孔工程においてクラウドサーバが生成する帳票形式のデータ(帳票データ)の例を示す図である。
【0062】
図12のように、まず、削孔計画値を入力し(S31)、
図2,
図3の削孔機11への初期値(削孔口座標、方位、計画線)を入力する(S32)。これらの入力は処理端末12に行う。次に、削孔開始点の位置情報を
図2のトータルステーション等からなる測量機15にて取得し、無線機16から送信し、処理端末12が受信し、
図3のコントローラ38にも送られる。
【0063】
次に、削孔機11により削孔ロッド32を駆動することで削孔作業を開始する(S33)。所定区間(たとえば、3〜18mの範囲)を掘削しながら固定式位置検出装置13で測定したビット先端33aの座標値(X,Y,Z)、方位、およびそのときの時刻を含む掘削位置データを処理端末12が取得する(S34)。また、
図8〜
図11と同様にして、工程S31〜S34の間に、たとえば、固定式位置検出装置13,処理端末12,表示器17の機器間で機器間認証が行われる。
【0064】
固定式位置検出装置13による掘削位置計測データ(削孔開始点の位置情報を含む)は、機器間認証がなされているので、処理端末12からインターネット10を介してクラウドサーバ1へ送信され(S35)、施工情報データベース1aに保存される。
【0065】
クラウドサーバ1は受信した計測データのうち座標値に基づいて掘削管路およびビット先端33aの位置情報を3次元モデル化し、その3次元モデル情報をインターネット10を介して送信し現場事務所や管理事務所の情報処理端末3,4の表示器7に表示することで、最新の施工状況をいつでもリアルタイムに確認できる。なお、3次元モデル化のための情報処理は、情報処理端末3,4で行ってもよい。
【0066】
次に、削孔機11が所定区間を掘削し終えたと判断されると(S36)、挿入式位置検出装置14で高精度にビット先端33aの座標値(X,Y,Z)、方位およびそのときの時刻を含む掘削位置計測データを処理端末12が取得する(S37)。
【0067】
挿入式位置検出装置14による掘削位置計測データは、工程S35と同様に機器間認証がなされているので、処理端末12からインターネット10を介してクラウドサーバ1へ送信され(S38)、施工情報データベース1aに保存される。
【0068】
クラウドサーバ1が受信した挿入式位置検出装置14による高精度の計測データのうち座標値に基づいて掘削管路およびビット先端33aの位置情報を同様にして3次元モデル化し、その3次元モデル情報をインターネット10経由で送信し現場事務所や管理事務所の情報処理端末3,4の表示器7に表示することで、最新の施工状況をいつでもリアルタイムに確認できる。
【0069】
次に、固定式位置検出装置13による計測データに基づくビット先端33aの座標値(X,Y,Z)、方位は、挿入式位置検出装置14による高精度の計測データにより補正されるが、その補正値を確認する(S39)。
【0070】
削孔機11による掘削が所定区間の削孔最終位置に到達したと判断される(S40)まで工程S33〜S40が繰り返される。
【0071】
削孔工程の施工結果は、クラウドサーバ1がビット先端の座標値(X,Y,Z)の軌跡をデータベース1aより抽出し、グラフおよび計画線からのずれを自動計算し、
図13のような帳票データとして出力した後、データベース1aに保存される。帳票データはインターネット10を介して送信され現場事務所や管理事務所の情報処理端末3,4の表示器7に表示される。
【0072】
なお、削孔工程のたとえば工程S33の削孔作業開始前に機器間認証を実行したが機器間認証がなされない場合、固定式位置検出装置13や挿入式位置検出装置14の計測データの通信が実行されず、削孔機11が作動しない。
【0073】
次に、
図7の本実施形態による薬液注入工法の薬液注入工程S07〜S14におけるデータ処理について
図14〜
図16を参照して説明する。
図14は、本実施形態による薬液注入工法の薬液注入工程におけるデータ処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図15は、
図14の薬液注入工程における計画データの例を示す図である。
図16は、
図14の薬液注入工程における三次元モデル表示例を概略的に示す図である。
【0074】
図14のように、まず、
図5の注入機21の入力表示部48aから
図15のような計画の流量、注入量および圧力をコントローラ48に入力する(S51)。
【0075】
次に、注入機21を作動させ、地盤内への薬液注入作業を開始する(S52)。施工中の薬液の流量、注入量および圧力の計測データを流量圧力計43(
図5)が取得し(S53)、信号受信機21aから集中管理装置24にて集約する。また、
図8〜
図11と同様にして、工程S51〜S53の間に、たとえば、流量圧力計43,集中管理装置24,処理端末25の機器間で機器間認証が行われる。
【0076】
集約された計測データは、機器間認証がなされているので、集中管理装置24,処理端末25からインターネット10を介してクラウドサーバ1へ送信され(S54)、施工情報データベース1aに保存される。
【0077】
クラウドサーバ1は、受信した計測データに基づいて、薬液注入位置の3次元モデル表示情報、および、データベース1aから抽出した現在の流量、注入量および圧力の帳票データ情報を生成し、これらの情報をインターネット10を介して送信し現場事務所や管理事務所の情報処理端末3,4の表示器7に表示することで、最新の施工状況をいつでもリアルタイムに確認できる。薬液注入位置の3次元モデル表示は、たとえば、
図16のようになされ、地盤内における注入完了位置、未注入位置、現在注入位置が視覚的に把握できるように色別に表示される。なお、3次元モデル表示のための情報処理は、情報処理端末3,4で行ってもよい。
【0078】
注入機21による薬液注入が
図15の計画注入量に達したと判断される(S55)まで工程S52〜S55が繰り返される。
【0079】
薬液注入工程の施工結果は、クラウドサーバ1がグラフでの時系列表示および計画との差異を自動計算した表を帳票データとして作成し、データベース1aへ保管される。また、帳票データはインターネット10を介して送信され現場事務所や管理事務所の情報処理端末3,4の表示器7に表示される。
【0080】
なお、薬液注入工程のたとえば工程S52の注入作業開始前に機器間認証を実行したが機器間認証がなされない場合、流量圧力計43の計測データの通信が実行されず、注入機21が作動しない。
【0081】
また、
図7の工程S08〜S10のように、薬液注入に先立って、スリーブパッカー注入が行われるが、上述の工程S51〜S55と同様にして実施され、施工結果は、クラウドサーバ1がグラフでの時系列表示および計画との差異を自動計算した表を帳票データとして作成し、データベース1aに保管される。
【0082】
次に、
図12,
図14のような帳票データの作成後のデータ改ざんを防ぐための構成例について
図17を参照して説明する。
図17は、本実施形態の管理システムにおけるデータ改ざんを防ぐための構成例を説明するためのフローチャートである。
【0083】
図17のように、クラウドサーバ1がデータベース1aに保存された計測データに基づいて削孔位置・薬液注入に関する帳票テータを自動作成し(S61)、データベース1aに保存し、また、作成された帳票データからハッシュ関数を用いてハッシュ値Mを得る(S62)。このハッシュ値Mを認証サーバ2へインターネット経由でアップロードする(S63)。認証サーバ2はハッシュ値を保管履歴とともに保存し管理する。
【0084】
次に、データ閲覧者は、クラウドサーバ1のデータベース1aから帳票データをダウンロードし(S64)、クラウドサーバ1と同じハッシュ関数を用いてダウンロードした帳票データからハッシュ値Nを得る(S64)。
【0085】
認証サーバ2に保存されているハッシュ値Mをダウンロードし、そのハッシュ値Mとデータ閲覧者が得たハッシュ値Nとを比較し(S66)、両者が一致すれば、認証がなされ(S67)、不一致であれば、認証がなされない(S68)。このように、帳票データの作成後のデータ改ざんの有無を確認することができる。
【0086】
なお、ハッシュ関数とは、データの受け渡しや保管の際に、そのデータが改変されていないかを確認するための公知技術で、所定の計算手順からなる。データが異なれば同じハッシュ値が生成されず、1文字でもデータが改変されると、ハッシュ値MとNは同じにならない。また、ハッシュ値からは元のデータを復元できない。
【0087】
以上の本実施形態による薬液注入工法における施工管理システム・方法によれば、施工場所の管理システムにおいてIoT機器を接続した処理端末12,25から削孔工程・薬液注入工程に関する計測データをリアルタイムにインターネット上のクラウドサーバ1に集約することで、現場事務所のみならず離れた場所にある管理事務所等においても施工状況(削孔位置、薬液注入位置、薬液注入速度、薬液注入量、薬液注入圧力)をリアルタイムに確認することができる。
【0088】
また、クラウドサーバ1に集約した計測データを随時自動的に情報処理し、リアルタイムに客観性の高い帳票データを自動生成することで、施工管理を確実に行うことができ、不具合対応も迅速に行うことができる。
【0089】
また、自動生成された帳票データからハッシュ値等のデータ認証情報を生成し、かかるデータ認証情報を公正性の保障された認証サーバ2に保管することで、帳票データの改ざんの有無を検証でき、後日のデータ改ざんを防止することができる。
【0090】
また、削孔工程・薬液注入工程に関する計測データを取得する測定装置・計測器と、その計測データをクラウドサーバ1に送信するに至るまでの送信手段と、表示器と、チャート記録式測定装置等との間で、連続的または間欠的に機器間認証を行うので、管理システムの構成を改ざんできず、機器のすり替えや挿入を防止でき、管理システムの無断な改造を防止できる。この機器間認証がなされないとデータ通信ができないので、不正なデータがクラウドサーバ1に送信されることはなく、表示器17,26に表示されず、また、チャート記録式測定装置49に記録されない。
【0091】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、本実施形態では情報処理サーバとして、クラウドサーバを用いたが、本発明はこれに限定されず、他のサーバを用いてもよく、たとえば、自社サーバやレンタルサーバであってもよい。